JP2004051820A - インクジェット捺染用水性インク及びインクジェット捺染方法 - Google Patents

インクジェット捺染用水性インク及びインクジェット捺染方法 Download PDF

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工藤 圭
Toshiya Takagi
高木 利也
Tomomi Yoshizawa
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Abstract

【課題】プリント後の汗堅牢性、摩擦堅牢度共に優れているインクジェット捺染用水性インクを提供し、且つ、該インクジェット捺染用水性インクを用いて、前処理フリー、後処理フリーであるインクジェット捺染方法を提供する。
【解決手段】少なくとも顔料と樹脂を含む着色微粒子の分散体を含有することを特徴とするインクジェット捺染用水性インク。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット捺染用水性インク及びインクジェット捺染方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、捺染とは、繊維(主として布帛)に対して、多色の図柄を染める方法の総称であり、その方法には様々なものがある。
【0003】
例えば、直接捺染法は最も一般的な捺染法で、白布または染色布の色数に応じた捺染糊を順次印捺して図柄を描く方法である。印捺機としては、ロータリースクリーン捺染機、ローラ捺染機、全自動フラットスクリーン捺染機、ハンドフラットスクリーン捺染台等が挙げられる。その他にも、防染法、防抜染法、抜染法、転写捺染法、ローケツ染め等の様々な方法が使用されている。
【0004】
しかしこれらは、図柄の変更毎に、スクリーン、彫刻ローラ等を交換する必要があり、その作製には多くの費用が発生し、更に作製には通常1ヶ月以上の期間が必要となる。近年、消費者のニーズの多様化から、小ロット多品種生産及びクイックレスポンスの要求が増大しており、従来の捺染加工の方式ではこれらの要求を満たす事は困難になってきている。
【0005】
そのような市場の要求に対し、新たな捺染方法としてインクジェットプリント法が提案されており、各メーカーにより商品化が進んでいる。
【0006】
インクジェットプリント法とは、インクジェット記録液(以下、単にインクともいう)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて記録材料(この場合、主に布帛)に付着させ、画像、文字などの画像形成を行うものであり、以下の利点を有している。
【0007】
CD−ROMやMO、スキャナで読み込んだ写真などからデザインパターンを起こし、その情報を直接記録媒体(繊維布帛)上にプリントできるため、従来の捺染方法のような色ごとの版を作製する必要がない。そして、少ない製作時間で、いくつもの見本バリエーションが作製でき、全工程をパソコン処理できるので、デザインから仕上げまでが短時間で行えるという特徴を有している。
【0008】
しかし、インクジェット捺染においても、滲み防止糊剤等の水溶性高分子を布へ前もって付与する前処理工程、画像をインクジェット印捺するプリント工程、乾燥工程、スチーミングや高温処理による固着工程、未反応染料の除去、前処理剤等の薬剤の除去を行う洗浄工程、各種堅牢性向上の為のフィックス工程などが必須であり、そのための専門の技術や、規模の大きな設備が必要であり、これがインクジェット捺染の足かせとなっているという問題点が残っている。
【0009】
例えば、木綿や絹の染色にインクジェット捺染する際、滲み防止や染料固着を行うために、特公平4−33913号に記載されているような水溶性金属塩、アルカリ性物質や、特公昭63−31594号に記載されているような水溶性高分子等の前処理剤を前もって布へ付与する前処理工程が行われており、それにより前処理工程のみで無く、プリント後に前処理剤を水洗除去する後処理工程が必須となり、かなりの作業的、時間的な負担が生じている。
【0010】
また、主に木綿染色に使用される反応性染料や、絹や羊毛染色に使用される酸性染料等の水溶性染料は、その構造上、プリント堅牢度、特にはアルカリ汗や酸性汗環境下での汚染が起こりやすい問題を抱えている。対策として、カチオン系FIX剤やタンニン酸系FIX剤等により染料を不溶化させ汗堅牢度を高める事が行われているが、FIX処理自体の手間、及びFIX前後での色変化や耐光性の低下などの問題を抱えている。
【0011】
一部、顔料インクにおいては前処理フリーでのインクジェット印捺が行われているが、現状では十分なプリント堅牢度が得られていないのが現状である。耐光性、汗堅牢性は性能を満たしているものの、摩擦堅牢度においては1〜2級レベルと非常に性能が悪く、全ての要求を満たせているわけでは無い。
【0012】
更には、濃度、画質(滲み)上の問題を抱えており、後処理に関しては、前処理無しの布帛の場合のみ加熱定着だけで済むが、実際の所、高画質化の為には布帛への前処理は必須であり、その結果、洗浄工程も必須となってしまっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プリント後の汗堅牢性、摩擦堅牢度共に優れているインクジェット捺染用水性インクを提供し、且つ、該インクジェット捺染用水性インクを用いるインクジェット捺染方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成1〜6により達成された。
【0015】
1.顔料と樹脂とを少なくとも含む着色微粒子の分散体を含有することを特徴とするインクジェット捺染用水性インク。
【0016】
2.顔料が、有機顔料を含むことを特徴とする前記1に記載のインクジェット捺染用水性インク。
【0017】
3.着色微粒子の分散体が、コア/シェル構造を有する着色微粒子を含むことを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット捺染用水性インク。
【0018】
4.着色微粒子の体積平均粒径が10nm〜100nmであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染用水性インク。
【0019】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染用水性インクを用いて布帛にプリントする工程、次いで、該布帛を加熱する工程を有することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【0020】
6.前記加熱する工程での布帛の加熱温度が、150℃〜230℃であることを特徴とする前記5に記載のインクジェット捺染方法。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット捺染用水性インクは、少なくとも顔料と樹脂を含む着色微粒子の分散体を含有することが特徴である。
【0022】
請求項2に記載のように、顔料としては後述する有機顔料を用いることが好ましく、また、摩擦堅牢度の更なる向上の観点から、請求項3に記載のように、着色微粒子がコアシェル構造を有することが好ましいが、前記コアシェル構造の形成時において、コアポリマーとシェルポリマーのLogPや溶解性パラメータ(SP値)等の数値を適切なバランスに調整することによりコア部とシェル部の接着性が強固になるため、安定なコアシェル粒子が得られることがわかった。
【0023】
上記の着色微粒子の分散体を用いて調製した、本発明のインクジェット捺染用水性インクを用いて、画像形成を行うと、プリント後の汗堅牢性、摩擦堅牢度共に優れた画像が得られることがわかった。
【0024】
《着色微粒子の分散体》
本発明に係る着色微粒子の分散体について説明する。
【0025】
本発明に係る着色微粒子は、各種の方法で調製することができる。例えば、顔料を樹脂(ポリマーともいう)と混練し、その後水系で分散し、樹脂被覆された顔料である、着色微粒子を作製する方法、樹脂を有機溶剤に溶解した溶液を顔料分散液に加えた後、減圧で溶剤を除去し樹脂被覆して、着色微粒子を作製する方法等が挙げられる。
【0026】
本発明に係る着色微粒子の分散体は、請求項1に記載のように、少なくとも顔料と樹脂とを構成成分として含む着色微粒子を含有することが必須要件であるが、好ましくは、請求項2に記載のように、顔料としては、後述する有機顔料を含むことが好ましく、更には、請求項3に記載のように、着色微粒子の分散体が、コア/シェル構造を有する着色微粒子を含むことが好ましい。
【0027】
(コア/シェル構造を有する着色微粒子)
本発明に係る着色微粒子がコア/シェル構造を形成する場合、コア部とシェル部の構成としては下記のような組み合わせがある。
【0028】
Figure 2004051820
(コア/シェルを形成する樹脂の割合)
コアシェル構造の安定性向上(コアの一部が粒子表面に現れるのを防止し、また、コア部の顔料保護性を向上させる)の観点から、シェルに用いられる樹脂量が総樹脂量の5質量%〜95質量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、10質量%〜90質量%である。
【0029】
(顔料と樹脂の比率)
インク吐出後の画像濃度を適性に保ちながら、且つ、顔料に対する樹脂の保護能を十分に機能させる観点から、顔料の質量は総樹脂量に対して20質量%〜1000質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
(着色微粒子の粒径)
本発明において、色材である顔料をコアシェル樹脂中に確実に封入し、また、着色微粒子がインクとして用いられた時のヘッドへの詰まりやすさを低減し、インク中での着色微粒子の沈降を防止し、且つ、インクの停滞安定性を向上させる観点から、着色微粒子の体積平均粒子径は、5nm〜200nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは、10nm〜100nmの範囲である。
【0031】
(体積平均粒子径の測定方法)
ここで、着色微粒子の体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求められる。体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求められる。或いは、動的光散乱法を利用して変動係数を求めることも出来る。例えば、大塚電子製レーザー粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて求める事が出来る。
【0032】
(粒子径の変動係数)
粒子径の変動係数は、粒子径の標準偏差を粒子径で割った値であるが、この値が大きいほど粒子径の分布が広い事を意味する。
【0033】
コアシェルの厚みの均一性を高め、粒子間の表面物性を均一化して粒子の凝集を低減させ、インクジェットヘッドの詰まりを防止する効果、メディア上での色材の不用な光散乱を防止して画質の低下を抑制する効果を共に得る観点から、粒子径の変動係数は、80%未満が好ましく、更に好ましくは、50%以下であり、特に好ましくは、30%以下である。
【0034】
《コアシェル構造の形成方法》
本発明に係るコア/シェル構造を有する着色微粒子は、最初に顔料を含有する樹脂コアを作製した後、樹脂シェルを設ける方法と、コア及びシェルを同時に設ける手法等が挙げられる。
【0035】
(a)コア作製後にシェルを設ける方法
コアとなる顔料または、顔料含有(顔料を含むともいう)樹脂は、各種の手法で調製することができる。例えば、顔料のみをコアをして用いる場合には、顔料を市販の分散機等を用いて直接分散する方法等が用いられ、顔料含有樹脂をコアにする場合には、顔料と樹脂とを混練し、その後、水系で分散し樹脂被覆顔料を作製する手法等が挙げられる。
【0036】
次いで、上記のコアにシェルを設ける手法としては、コアの水系サスペンションに水溶性の樹脂分散剤を添加し吸着させる手法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法、あるいは、有機溶剤に溶解した樹脂を徐々に滴下し、析出と同時にコア表面に吸着させる方法などがある。
【0037】
本発明においては、コア(顔料のみ、顔料を含む樹脂の場合等がある)の水系サスペンションにモノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法が特に好ましい。
【0038】
(b)コアとシェルを同時に設ける方法
コアとなる樹脂と色材(顔料)を、重合後にシェルとなるモノマーに溶解または分散し、水中で懸濁後重合する手法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合していく手法などもある。モノマーがコア、樹脂がシェルとなってもよい。あるいは、重合後にコアとなりうるモノマーとシェルとなりうるモノマー混合液に顔料を溶解または分散し、懸濁重合あるいは乳化重合する手法もある。
【0039】
(コアシェル構造の評価方法)
着色微粒子が実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明では後述するように、着色微粒子の個々の粒子径が200nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られたものとなる。
【0040】
このような目的に沿う分析手法としては、TEM(透過型電子顕微鏡)やTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)などが適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物である樹脂の種類のみではコントラスト差が小さい場合があるため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロロスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色することが好ましい。
【0041】
コアだけの微粒子を染色し、そのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。更に、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致するかを確認する。
【0042】
TOF−SIMSのような質量分析装置では、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の色材量がコアだけの時よりも減少していることを確認する。色材にコアシェルの樹脂に含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。
【0043】
即ち、色材含有率(濃度)は、TOF−SIMSを用いて、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1,000の範囲におけるイオンの総量を測定し、その中で顔料に含有されるコアシェルの樹脂に含有されていない元素に由来するイオンの総量との比を算出する。次いで、この方法をシェルとコア/シェル化を行っていないコア、各々の色材含有率とを比較することにより各々の色素含有率(濃度)を測定できる。
【0044】
TOF−SIMSでは、表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため、コア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0045】
上記のような特定元素がない場合でも、適当な染色剤を用いてシェル中の色材含有量をシェルを設けていないもの粒子と比較、検討することができる。
【0046】
また、コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に埋胞し、ミクロトームで超薄切片を作製、染色を行うことでコアシェル化をより明瞭に観察できる。上記のように、樹脂や、色材にプローブとなりうる元素がある場合、TOF−SIMSやTEMによってコアシェルの組成、色材のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0047】
《樹脂》
本発明に係る樹脂について説明する。
【0048】
着色微粒子の分散体を構成する着色微粒子の形成に用いられる樹脂としては、顔料等の色材との相溶性、親和性が高いことは勿論のこと、色調、保存性を良くするための相互作用が強いこと、分散系を保つために適度な疎水性を有し、且つ、分散安定性を向上するための適度な親水性を同時に有し、更に、耐光性を上げるためにはガラス転移点(Tg)が高いことなど(但し分散安定性を上げるためには低Tgである方がよい)多様な性質が要求される。従来、染料や顔料という色材と共に用いられてきた複合樹脂粒子においては、例えば、染料、顔料に対して相溶性または親和性の高い樹脂を用いることが色調のよい着色微粒子を得る上では好ましい。
【0049】
(LogP:疎水性、親水性パラメータ)
本発明者等は、インクに用いられるこういった着色微粒子に要求される多様な性質を最適化し、それぞれ、高度に実現するには、1種類の樹脂でも、また、複数の異なる樹脂を用いてもよいが、基本的には各々の性質に応じてこれらの樹脂成分を内部、外部に分布させることにより、例えば、着色微粒子の物理的強度を高める、すなわち、コア部とシェル部の接着安定性を高めながら、且つ、インク媒体中での着色微粒子の分散安定性をも同時に向上させ、更に、色調や、インクとしての耐光性を向上させる等、従来はトレードオフとなるような各要求を同時に制御できる1つの手段として樹脂のLogPに注目した。
【0050】
(コアに含まれる樹脂、シェルに含まれる樹脂)
本発明に係る、コア/シェル構造を有する着色微粒子の作製において、好ましい分散粒子径に調製するためには、処方の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。処方は用いる色材、樹脂によって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成する樹脂よりシェルを構成する樹脂の方が一般的に親水性が高いことが好ましい。また、シェルを構成する樹脂に含有される色材は、前記のようにコアを構成する樹脂中より少ないことが好ましく、また、後述する顔料もシェルを構成する樹脂よりも親水性が低いことが好ましい。
【0051】
本発明において、コア部とシェル部の疎水性、親水性を調製するための一手段として、LogP値を用いて制御することが出来る。即ち、LogP値が小さい樹脂は、水に対する親和性が大きいため、着色微粒子の外側に近い部位に用い、逆にLogP値が大きい樹脂は顔料等との親和性が高いほうが顔料を好ましく被覆出来るので、粒子内部(例えば、コア等)に用いることが好ましい。
【0052】
しかしながら、コア部の樹脂のLogP1とシェル部の樹脂のLogP2との差が甚だしく大きすぎると、コア/シェルの界面での接着性が低下しやすくなり、着色微粒子の物理的強度の低下や分散安定性の低下につながるため、|LogP1−LogP2|が4以下であることが好ましい。
【0053】
従って、被覆効果と分散安定性の高い樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリビニルブチラールの様な樹脂を外側(シェル層)に、ポリビニルブチラールよりもLogP値の大きい、顔料や染料との親和性が高い樹脂を内側に分布させることが好ましい。
【0054】
LogP値とは、化合物の親水性−疎水性の尺度を表すパラメータであり、数値が大きいほど疎水性であることを示し、逆に数値が小さいほど親水性であることを示している。LogP値は広く知られた化合物のパラメータであり、常法によって測定することができるし、計算により近似値を求めることもできる。
【0055】
本発明では、コア部に用いる樹脂とシェル部に用いる樹脂のLogP値の差が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは、3.5以下である。樹脂の種類が異なるということは、構造的に異なった部分を有し、マクロな或いはミクロなレベルで、顔料分子や染料分子との相互作用が異なっている、或いは、分子量が異なっていて、熱力学的な性質や、染料分子との或いは樹脂成分同士での相互作用のレベルで異なっていると考えられるものをいう。
【0056】
従って、同じ樹脂同士でも、一部が、変性されているもの、また共重合体であっても各モノマー成分の組成比が異なっているもの、更にモノマー単位(共重合体でもよいが)が構造的に同じであっても分子量分布が明らかに異なり、例えば軟化点や、融点、更には溶解性等の熱力学的な性質、また、化学的な親和性等が異なっているものなども異なった樹脂と考えられる。本発明はこの様にやや異なった樹脂を混合しても用いることに特徴があり、余り近い性質を有するものを混合しても本発明の効果は得られない。
【0057】
また、後述するように、計算されるLogP値は完全にn−オクタノールと水への2つの溶媒系における物質の以下の式で定義できる分配係数と一致するものではなく、計算値と、測定値にやや差がある場合もあり、実際は異なった樹脂であって、ミクロな或いはマクロな性質が異なっているものも同じ値となる場合もあり、LogPで幾つ以上というのは正確ではないが、LogPでみたとき、概ね0.1程度は異なっているものが好ましい。
【0058】
ここで、LogPとは、疎水性/親水性を表すパラメータであり、通常n−オクタノールと水への2つの溶媒系における物質の以下の式で定義できる分配係数より求めることが出来る。
【0059】
LogPo/w,Po/w=So/Sw
So:25℃でn−オクタノール中での該有機化合物の溶解度
Sw:25℃で純水中での該有機化合物の溶解度
これらは化学領域増刊122号「薬物の構造活性相関」(南江堂)73〜103頁に詳しく記載されている。近年LogPを計算により求める方法が提案されており、分子軌道計算をベースにするものや基本的にはC.Hanschのデータを利用するフラグメント法、また、HPLCによる方法等がある。
【0060】
本発明において用いるLogPの計算プログラムは富士通株式会社のCACheという分子計算パッケージの中のProject Leaderであり、A.K.Ghost、et al,J.Comput.Chem.9:80(1988)のフラグメント法をベースにしている方法である。
【0061】
(樹脂の分子量)
本発明において用いられるこれらの樹脂(ポリマー)としてはその数平均分子量が500〜100,000、特に1,000〜30,000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンションの形成性の点から好ましい。
【0062】
該ポリマーのTgは、各種用いることが可能であるが、用いるポリマーのうち、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。
【0063】
本発明においては、一般に知られているすべてのポリマーを使用可能であるが、好ましいポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマーおよびエステル基を有するポリマーなどであり、特にアセタール基を含有するポリマー、中でもポリビニルブチラールが好ましい。
【0064】
上記のポリマーは、置換基を有していてもよく、その置換基は直鎖状、分岐、あるいは環状構造をとっていてもよい。また、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。また、これらの共重合体は、例えば1つのポリマー分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0065】
また、重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーのラジカル重合によって得られたポリマーも好ましく用いられる。エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸等、アクリルアミド類等のラジカル重合によって得られるポリマー、例えば、スチレン/アクリル酸エチル、或いはアクリル酸ブチル等の共重合体ポリマー、また、スチレン/メタアクリル酸エチルヘキシル等の共重合体ポリマー、更にはスチレン/メタクリル酸エチルヘキシル/ヒドロキシエチルアクリレート等の共重合体ポリマー等が例としてあげられる。
【0066】
本発明において特に好ましいポリマーとしてはアセタール基を含有するポリマー(ポリビニルアセタール)であり、このうち特にポリビニルブチラールが染料および顔料等の色材に対する溶解性や親和性等の相互作用の点で好ましく、本発明において用いられる複数の樹脂のうち1つはポリビニルブチラールであることが好ましく、これらに加えて前記のポリマーのうち1つ以上をポリビニルブチラールと異なった樹脂成分として混合して用いることが好ましい。また同じポリビニルブチラール樹脂同士であっても、平均重合度の異なるものや分子量分布の異なるもの等を組み合わせてもよい。
【0067】
本発明において好ましい着色微粒子の分散体においては、前記2種以上の樹脂成分が色材を包含しており、微粒子表面乃至表面層は比較的親水性を有する樹脂で構成されるために着色微粒子の水分散体としての安定性が保持され、樹脂の存在によって色材の堅牢性や色調の向上がもたらされている。この着色微粒子の水分散体はこれを用いてインクジェットインクを形成することができるが、更に長期に亘って該着色微粒子の分散体の凝集を防止し、微粒子のインクサスペンションとしての安定性を向上させ、メディアに印画したときの画像の色調や光沢、更に耐光性等、画像に堅牢性を付与するために、該着色微粒子をコアとして、更に有機ポリマーからなるシェルを形成するのが好ましい。
【0068】
《溶解性パラメータ》
本発明の着色微粒子を構成する樹脂、顔料等
着色微粒子の作製時に、コア部での顔料と樹脂との親和性向上、且つ、前記顔料、前記樹脂を含むコア部とシェル部の樹脂との親和性向上(良好な相溶状態を発現させるともいう)の観点から、本発明に係る樹脂は、溶解性パラメータ(SP値)が16(MPa)1/2〜20(MPa)1/2であることが好ましく、更に好ましくは、17(MPa)1/2〜19(MPa)1/2であり、特に好ましくは、17.5(MPa)1/2〜18.5(MPa)1/2である。
【0069】
本発明に係る溶解性パラメータについて説明する。
溶解性パラメータは有機溶剤に対する非電解質の溶け易さを評価する際によく用いられるHildebrandの溶解性パラメータにより得られる値である。この溶解性パラメータについてはJ.H.Hildebrand,J.M.Prausnitz.R.L.Scott著“Regular and Related Solutions”,Van Nostrand−Reinhold,Princeton(1970年)、「高分子データハンドブック基礎編」 高分子学会を参照。各種溶剤の溶解性パラメータの値はA.F.M.Barton,“Handbook of Solrbility Parameters and Other Cohesion Parameters”,CRC Press,Boca Raton/Florida(1983年)、「高分子データハンドブック基礎編」高分子学会に記載されている。
【0070】
物質の溶解性パラメータは、
SP=(δE/V)1/2
で定義されており、δEはモル当たりの凝集エネルギーであり、Vはモル体積である。
【0071】
溶解性パラメータは、溶解度から求める方法、或いは蒸発潜熱法、蒸気圧法、膨潤法、表面張力法、熱膨潤係数法、屈折率法等幾つかの方法で求めることができる。
【0072】
本発明に於いては、以下の方法により求めたいずれかの溶解性パラメータを用いるものとする。また、単位としては、本発明において(MPa)1/2で表すものとする。
【0073】
溶解性パラメータは各種のSP値が既知の溶媒中への溶解度から求めることができる。この溶媒中への溶解度によって溶解性パラメータを求める方法は、色素等の構造が未知の場合には有効である。
【0074】
本発明の染料においては、例えば、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等、SP値既知の各種の溶剤を用い、最も溶解度の高い溶剤のSP値から溶質としての染料のSP値を求める溶解法を用いる。この方法では、最も溶解度の高いグループの溶剤各々のSP値の各成分であるδd(分散力項)、δp(極性項)、δh(水素結合項)をそれぞれ各項毎に分けてプロットし、各項毎に中心値を求める。染料のSP値の各項の値としてこの中心値をそれぞれ用いて染料のSP値を求めることが出来る。C.M.Hansen,J.Paint Technol.,39(505)104(1967)、C.M.Hansen,J.Paint Technol.,39(511)505(1967)溶剤溶解性の低い顔料では溶解法でSP値を正確に求めることは難しいが、前記文献に懸濁状態を利用した測定が示されている。即ち、SP値の近い溶剤ほど顔料を良く濡らすことから、溶剤と顔料を混合後、良く振って懸濁状態の良好(沈降しない)な溶剤を、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等SP値既知の各種の溶剤のなかから選び(複数でよい)、懸濁状態の良好な溶剤各々のδd(分散力項)、δp(極性項)、δh(水素結合項)をそれぞれ各項毎に分けてプロットし、各δd(分散力項)、δp(極性項)、δh(水素結合項)項の中心値をそれぞれ算出し、算出した各項の中心値を、求める顔料のSP値の各項とすることで顔料のSP値を求めることが出来る。
【0075】
溶解性パラメータは構造が既知の場合には計算により求めることができる。
Smallは化学組成とSP値を関係付け、分子中のモル引力定数ΔFの総和をモル体積Vで割ることでSP値が求められる計算方法を提案した。この方法ではΔFは各原子団に割り当てることが出来るため簡易に計算できる。
【0076】
S=(ΣΔF)/V
しかし、Smallの式では分散力から生じた凝集エネルギーのみしか含まないため、上記計算方法の精度を更に上げるために、Rheinneck、Hoy、Krevelen、Fedorsらは各々異なった修正ΔFを提案している。また、Hansenは3次元に分解したパラメータを提唱した。各修正パラメータにより数値は若干変動するが本発明で定義している2種の色材の差としてみた時の誤差は小さい。構造が既知の場合は前記修正パラメータを用いた計算で求めた溶解性パラメータを用いることが出来る。本発明において用いている計算プログラムは富士通株式会社製のCACheという分子計算パッケージ中のProject Leaderである。
【0077】
これらのいずれかの方法によって、算出した溶解性パラメータを本発明においては用いる。溶解性パラメータの値は、例えば溶媒に対する溶解度から求めた場合、採用する溶剤の溶解パラメータの値が、求める方法によってはやや異なる場合があり、色材のSP値もこれに伴ってやや異なってくる。しかしながら、その値の違いはそれ程大きくないので、色材同士のSP値の差としてはその差が、一番小さくなるものを採用すればよい。
【0078】
従って、構造既知の染料或いは顔料の場合には、前記の計算による方法を用いるのがよい。この様にして求めた2種以上の色材の溶解性パラメータの差が4.0(MPa)1/2以内であれば、色材同士は適度な親和性をもち、且つ、ただ1種の色材の場合のような分子同士の凝集力の強さによって樹脂との親和性が低下するといったことがなく、樹脂との相溶性が向上する効果があるため好ましい。
【0079】
ちなみに、本発明に係る溶解性パラメータの具体的な数値は、原則として、J.BRANDRUP and E.H.IMMERGUT,“POLYMER HANDBOOK”,THIRD EDITION,JOHN WILEY &SONS(1989)に記載の数値を用いた。但し、前記文献に記載のないものについては、計算(シュミレーション)により求めた数値を使用した。
【0080】
また、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンションの形成性向上の観点から、コアで用いられる樹脂は、その数平均分子量が500〜100,000の範囲であることが好ましく、特に好ましくは、1,000〜30,000である。
【0081】
該樹脂のTgは、各種用いることが可能であるが、用いる樹脂のうち、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。
【0082】
本発明においては、一般に知られているすべての樹脂を使用可能であるが、特に好ましい樹脂は、主な官能基としてアセタール基を含有する樹脂、炭酸エステル基を含有する樹脂、水酸基を含有する樹脂およびエステル基を有する樹脂である。上記の樹脂は、置換基を有していてもよく、その置換基は直鎖状、分岐、あるいは環状構造をとっていてもよい。また、上記の官能基を有する樹脂は、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。また、これらの共重合体は、例えば1つの樹脂分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他の樹脂と縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0083】
本発明に係る着色微粒子の分散体においては、樹脂コアは、主として色材を包含し、その堅牢性や色調を保持するのに寄与するが、一方樹脂シェルは色材を包含した微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増す事に寄与し、さらにメディア上での色材の定着を促進、凝集を防止し、画質の向上に寄与する。また、色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0084】
シェルにおける色材含有率(濃度)は、コアにおける色材含有率(濃度)の0.8質量%以下が好ましく、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0085】
顔料含有率(濃度)は、前述のようにTOF−SIMSのような質量分析装置で測定する事ができ、TOF−SIMSでは、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に起因するイオンの総量から、色材含有率を求めることができる。シェルとコア/シェル化を行っていないコア、各々の色材含有率を比較する。TOF−SIMSでは、表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため本発明の様なコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0086】
本発明のコア/シェルの形態を有する着色微粒子においては、色材の保護能が適切であり、サスペンションインクとしての保守安定性の向上、インクジェットノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘防止、サスペンションの凝集によるプリンタヘッドの目詰まり防止の観点から、全着色微粒子を構成する全樹脂量の本発明の水系インク全体での含有量は、0.5質量%〜50質量%であることが好ましく、更に好ましくは、0.5質量%〜30質量%である。
【0087】
一方、上記顔料の色材としては、十分な印字濃度を付与し、サスペンションの経時安定性の向上、凝集等による粒径増大の抑制の観点から、全着色微粒子を構成する全着色剤(顔料ともいう)の本発明の水系インク全体での含有量は、1質量%〜30質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1.5質量%〜25質量%である。
【0088】
《顔料》
本発明に係る顔料について説明する。
【0089】
本発明に係る顔料の色相としてはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ブルー、グリーン、レッドが好ましく用いられ、好ましくはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの顔料であり、また、顔料としては有機顔料が特に好ましく用いられる。
【0090】
本発明に係る有機顔料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例としては、
(ブラック顔料)
ブラック顔料としては、三菱化成社製 No.2300,No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B、コロンビア社製 Raven700、Raven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、キャボット社製 Regal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400、デグサ社製 Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4、関西熱化学(株)社製 マックスソーブ G−40、マックスソーブ G−15、マックスソーブ G−08等が挙げられる。
【0091】
(イエロー顔料)
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.PigmentYellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 75、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 98、C.I.Pigment Yellow 114、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154等。
【0092】
(マゼンタ顔料)
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red
202等が挙げられる。
【0093】
(シアン顔料)
シアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:34、C.I.Pigment Blue 16、C.I.PigmentBlue 22、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Vat
Blue 4、C.I.Vat Blue 60等が挙げられる。
【0094】
《各種添加剤》
本発明のインクジェット捺染用水性インクは、水を媒体とし、上記顔料を封入した樹脂のサスペンションからなり、該サスペンションには従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系等の消泡剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤及び/又はEDTA等のキレート剤、また、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されていてもよい。
【0095】
ここで、上記湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルサルフォキサイドの一種又は二種以上を使用することができる。これらの湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記水性インク中に、0.1質量%〜50質量%配合することが好ましく、更に好ましくは、0.1質量%〜30質量%配合することである。
【0096】
また、上記分散剤としては、特に制限されないが、そのHLB値が8〜18の範囲内の数値を示すことが、分散剤としての効果が発現し、サスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0097】
分散剤として市販品も使用することができる。そのような市販品としては、例えば花王(株)製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、P(商品名)が挙げられる。
【0098】
分散剤の配合量に特に制限はないが、本発明の水性インク中に、0.01〜10質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化するおそれがあるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0099】
また、上記消泡剤としては、特に制限なく、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F(商品名)等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明の水性インク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、また、インク内での小泡の除去が難しく、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0100】
《インクジェット捺染用水性インクの調製方法》
次に、本発明のインクの製造において用いられる乳化方法について説明する。本発明のインクは、例えばコアとなる顔料粒子の製造において、各種の乳化法を用いることができる。乳化法としては、各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の86ページの記載にまとめられている。本発明においては、特に、超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
【0101】
超音波による乳化分散では、いわゆるバッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、たとえば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、各々の照射時間の合計としてもとめられる。超音波の照射時間は実際上は10000秒以下である。また、10000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。さらに好ましくは、10秒以上、2000秒以内である。
【0102】
高速回転せん断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の255〜256ページに記載されているような、ディスパーミキサーや、251ページに記載されているようなホモミキサー、256ページに記載されているようなウルトラミキサーなどが使用できる。
【0103】
これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転せん断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くはできないので、せん断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5m/秒〜150m/秒の範囲であれば、乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/秒にするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。さらに好ましくは、20m/秒〜100m/秒である。
【0104】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)などが使用できるが、その乳化・分散能力は、試料にかけられる圧力に依存する。圧力は10kPa〜5×10kPaの範囲が好ましい。また、必要に応じて数回乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、また、圧力を5×10kPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。さらに好ましくは5×10kPa〜2×10kPaの範囲である。
【0105】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサなども単独では本発明の目的を達成できないが、本発明の装置との組み合わせにより、短時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0106】
本発明のインクジェット捺染用水性インクを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0107】
《インクジェット捺染方法》
本発明のインクジェット捺染方法について説明する。
【0108】
本発明のインクジェット捺染用水性インクを用いた画像形成方法においては、例えば、インクジェット記録用水系インクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させ記録媒体に付着させることで、インクジェットプリントが得られる。
【0109】
インクジェット画像記録媒体としては、布帛に限らず前記色材と染着性のあるものであれば特に制限されるものではない。特には、木綿、絹、麻、レーヨン、羊毛、ポリエステル、ジアセテート、トリアセテート、ポリ塩化ビニル、ビニリデン、ポリアミド、アクリル、ビニロン、ポリウレタン等、が好ましい。
【0110】
上述した支持体の素材或いは形状に特に限定されるものではなく、例えばシート状に形成されたもの以外に立体的な構造を有するものであってもよい。
【0111】
長尺の布帛に長時間印字し続ける場合などは、布帛が延々と出てくるため床などに、印字した布帛が重なっていき場所をとり不安全であり、また予期せず汚れてしまう場合があるために、印字後巻き取り操作が必要となる場合がある。この操作時に布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んでもかまわない。ただし途中で切断する場合や短い布帛に対しては必ずしも巻き取る必要はない。
【0112】
本発明のインクジェット捺染用水性インクは、インク出射後印字された布帛に、加熱工程を付与することが望ましい。インクジェット捺染において、インクを布帛に印字し、ただ放置しておくだけでは十分に固着しなく、加熱工程を経る事により布帛繊維表面上又は繊維表面から内部へと顔料が浸透し固着される。加熱方法としては、通常捺染において使用されている、高圧スチーミング法、高温スチーミング法、サーモゾル法等が適応できる。加熱工程の際の温度としては、100℃乃至250℃が好ましく、特には150℃乃至230℃が好ましい。加熱工程の時間としては、30分以内、特に好ましくは15秒〜10分が好ましい。
【0113】
加熱温度が低いまたは、加熱時間が少ないと顔料の繊維への付着及び繊維中への拡散が不十分となり、その結果繊維表面に固着していない顔料が多く残る事になり、摩擦堅牢度が低くなってしまう。また、加熱温度が高い又は加熱時間が長すぎる場合は、布帛の風合いを落としてしまう事があり好ましくない。
【0114】
本発明においては、特に前処理剤の付与は必須要件ではなく、高堅牢度なプリント物を得ることができる。詳細なメカニズムは定かではないが、以下の原理によると推測される。本発明以外の、顔料を用いるインクジェット捺染用水性インクは、顔料そのものが粒子状態として分散している為、粒子表面が比較的堅くなっており、インクジェット吐出し布帛へ着弾した際に、布帛表面上に顔料粒子が付着しているだけであり、加熱後も繊維表面に顔料そのものがむき出しに存在する事になる。その結果、プリント物の使用時、顔料粒子が直接的に摩擦を受けるために摩擦堅牢度の低下を招来していると考えられる。
【0115】
それに対し、本発明のインクジェット捺染用水性インクでは、樹脂を顔料で着色した着色微粒子、顔料を樹脂粒子で被覆した着色微粒子、または、コア/シェル構造によりコア部の顔料粒子を被覆、保護した形態の着色微粒子であるために、比較的表面が柔らかい状態にあり、布帛へ着弾した際にその衝撃で、着色微粒子の形態が変形し、繊維上および繊維間へ絡みつきやすくなるため、吸着力が増大し、更には加熱処理後に布帛の最表面上の樹脂の上に薄い樹脂膜が形成されやすく、プリント物の使用時でも、直接的に顔料粒子が擦られることが無く、劇的に摩擦堅牢度が上がると考えられる。また、汗堅牢度に関しては、顔料が水不溶性であることや、更に顔料が親油性の高い樹脂により被覆包埋されるため、高堅牢度が得られると推定している。
【0116】
加熱処理後は特に洗浄工程は必要では無いが、前処理剤を付与した際には、用途によっては洗浄を行うことが好ましい。また、洗浄後は乾燥を行うことが好ましい。例えば、洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。この一連の作用によりインクジェット捺染用インクとしての特徴が生かされ、美しい図柄が印字された布帛が出来上がる。
【0117】
本発明のインクジェット捺染用水性インクを用いたインクジェット捺染方法においては、例えば、インクジェット捺染用水性インクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させインク受容体に付着させることで、例えばインクジェット画像記録媒体上にインクジェット記録画像が形成されたインクジェットプリントが得られる。
【0118】
インクジェット画像記録媒体としては、例えば、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルムのいずれも使用することができ、なかでも例えば多孔質層が形成されている所謂空隙層を有する被記録媒体であれば好ましい。上述した支持体の素材或いは形状に特に限定されるものではなく、例えばシート状に形成されたもの以外に立体的な構造を有するものであってもよい。
【0119】
本発明のインクジェット捺染用水性インクは、インクジェット記録用のインクとして以外に、例えば、一般の万年筆、ボールペン、サインペン等の筆記具用のインクとしても使用可能である。また、本発明に係る着色微粒子の分散体、すなわち、サスペンションを乾燥し、微粒の粉体を得ることもできる。得られた粉体は、電子写真のトナーなどにも使用可能である。
【0120】
本発明のインクジェット捺染方法で用いることができるインクジェットプリンタのインクジェットヘッドはピエゾ型ヘッドが好ましい。
【0121】
図1、2に示すピエゾ型ヘッドについて説明する。図1はヘッドの一部破断面を有する概略斜視図であり、図2はヘッドのインク室部分の一例を示す概略断面図である。
【0122】
圧電材であるチタン酸ジルコン酸鉛による下部基板1bと上部基板1cを接着剤6により接着して形成する。下部基板1bと上部基板1cは逆方向に分極している。上部基板と下部基板にまたがって複数の細長い溝2を形成する。これにより複数の平行な隔壁4と溝2が形成される。
【0123】
複数溝の内面には蒸着により電極膜3を設ける。溝2に電極膜3を取りつけてから基板1の上面の一部を段加工して段部35を形成する。接着剤6により隔壁4の上面に蓋8を接着し、隔壁4の端面に接着剤により封溝片25を取りつける。複数溝の内面に形成された電極膜3の表面にパリレン等の絶縁膜17をコーティングし、絶縁膜17の表面を酸素プラズマ処理により親水化処理する。この親水化処理により炭酸ガスによる気泡がヘッド内に残存しにくくなり吐出安定性が向上する。溝2の開口する端面にノズル孔11を有するノズル板10を同じ接着剤6により接着して溝2の1つおきにインク室9を形成する。ノズル孔は各インク室に対応して設けられ、すなわち溝2に対応して1つおきに設けられている。蓋8の上部には共通溝5が彫られ、各インク室に連通するための孔12が設けられる。溝2は1つおきにノズル孔11と連通孔12をともに有する。蓋8の上部にはインク供給孔15を有する上板14が共通溝5の上部を覆うように接着剤6により接着される。
【0124】
電極膜はそれぞれ蓋8の段部35に露出している引出し配線7につながっている。
【0125】
インク供給孔15よりインクを供給し、図1、2の並列する溝2の1つおきに形成されたインク室9にインクを満たす。両隣のダミー溝9′にはインクは供給されない。
【0126】
引き出し線7に電気信号を送り、インク室2aの電極膜とその両側のダミー溝の電極膜の間にインク室の電極膜の電位が高電位となるように駆動電圧をかけるとインク室2aの両側の隔壁が内側に向けて変形し、インク室が収縮してインクが小滴となって吐出する。続いてインク室電極膜を接地すると、変形がなくなりインクがインク室に吸い込まれる。
【0127】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0128】
実施例1
《着色微粒子分散液の調製》
(着色微粒子分散液1の調製):顔料コアに樹脂シェル同時形成
メチルエチルケトン20g、グリセリン5g、C.I.Pigment Red 122を10g、スチレン/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレートの3元共重合体(80/10/10(質量比))の中和済み樹脂を6g、イオン交換水40gの混合液に平均粒子径が0.5mmのジルコニアビーズ250gを加え、メディア分散機(システムゼータ;(株)アシザワ製)を用いて分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを濾別して、顔料分散液を得た。
【0129】
上記の顔料分散液に純水40mlを加えて希釈した後、減圧留去によりメチルエチルケトンを除去し、コアシェル化した着色微粒子分散液1(平均粒子径:85nm)を得た。
【0130】
(着色微粒子分散液2の調製):顔料コアに樹脂シェルを被覆
C.I.Pigment Red 122を10g、重合性界面活性剤ラテムル(花王株式会社)7g、イオン交換水50gを加え、平均粒子径が0.5mmのジルコニアビーズ250gを用いてメディア分散機(システムゼータ;(株)アシザワ製)で分散した。
【0131】
分散終了後、分散液に0.1gの過硫酸カリウムを加えて溶解し、80℃に加温後、4gのスチレン、1gの2−ヒドロキシエチルメタクリレートの混合液を滴下しながら反応させて、顔料コアを樹脂でシェル化した着色微粒子分散液2(平均粒子径:90nm)を得た。
【0132】
ここで、上記の重合性界面活性剤ラテムル(花王株式会社)は、重合後は、顔料を被覆包埋する樹脂を形成する用途に用いられる。
【0133】
(コアシェル型着色微粒子分散液2の調製):樹脂被覆の顔料微粒子
上記で調製した着色微粒子の分散液に、0.1gの過硫酸カリウムを加えて溶解し、80℃に加温後、5gのスチレン及び、1gの2−ヒドロキシエチルメタアクリレートの混合液を滴下しながら反応させて樹脂でシェル化した着色微粒子分散液2(平均粒子径:93nm)を得た。
【0134】
《インクジェット捺染用水性インクの調製》
(インクジェット捺染用水性インク1の調製):本発明
上記の着色微粒子分散液1を顔料の含有量がインクジェット捺染用水性インクの仕上がり量に対して3質量%になるように秤量し、次いで、エチレングリコール15質量%、グリセリン15質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3質量%、サーフィノール465を0.3質量%、残りが純水になるように調製した後、2μmのメンブランフィルタを用いて濾過処理し、ゴミ及び粗大粒子を除去し、インクジェット捺染用水性インク1を得た。
【0135】
(インクジェット捺染用水性インク2の調製):本発明
上記の着色微粒子分散液1の調製において、着色微粒子分散液2を用いた以外は同様にして、インクジェット捺染用水性インク2を得た。
【0136】
(インクジェット捺染用水性インク3の調製):比較例
(顔料分散液1の組成)
C.I.ピグメントブルー15:3          25.0質量%
デモールC(花王製)                17.0質量%
ジエチレングリコール                25.0質量%
イオン交換水                    33.0質量%
上記成分を混合して、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料分散液1を得た。
【0137】
(インクの調製)
顔料分散液1                    11.0質量%
タケラックW−605(武田薬品(株)製;
固形分30%)                  26.7質量%
エチレングリコール                 10.0質量%
ジエチレングリコール                14.0質量%
エマルゲン913(花王製)              0.4質量%
上記成分を混合、十分に攪拌した後に、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過して、インクジェット捺染用水性インク3(平均粒子径:110nm)を得た。
【0138】
(インクジェット捺染用水性インク4の調製):比較例
(反応性染料インクの組成)
C.I.リアクティブブルー72           13.0質量%
ジエチレングリコール                25.0質量%
サーフィノール465(日信化学製)          0.1質量%
イオン交換水                         残部
上記組成を混合し十分に攪拌した後に、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過して、インクジェット捺染用水性インク4を得た。
【0139】
(インクジェット捺染用水性インク5の調製):比較例
(酸性染料インクの組成)
C.I.アシッド ブルー9              6.0質量%
ジエチレングリコール                27.0質量%
サーフィノール465(日信化学製)          0.1質量%
イオン交換水                         残部
上記組成を混合し十分に攪拌した後に、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過して、インクジェット捺染用水性インク5を得た。
【0140】
得られたインクジェット捺染用水性インク1〜5を用いて下記に記載のようにプリント処理(捺染処理)を行った。
【0141】
《プリントの作製》
(プリント1の作製):本発明
インクジェット捺染用水性インク1を用い、インクジェットプリンタ(Nassenger KS−1600II(コニカ(株)製))を用いて、布帛にプリントを行った。プリント後、布帛を完全に乾燥し、サーモゾル法により180℃にて5分間固着処理した。また、布帛はシルケット加工した綿100%の平織り布を用いた。
【0142】
(プリント2の作製):本発明
プリント1の作製において、インクジェット捺染用水性インク1の代わりに、インクジェット捺染用水性インク2を用いた以外は同様にして、プリント2を作製した。
【0143】
(プリント3の作製):本発明
プリント1の作製において、インクジェット捺染用水性インク1の代わりに、インクジェット捺染用水性インク2を用い、サーモゾル法による加熱処理温度を130℃に変更した以外は同様にして、プリント3を作製した。
【0144】
(プリント4の作製)
プリント1の作製において、インクジェット捺染用水性インク1の代わりに、インクジェット捺染用水性インク3を用いた以外は同様にして、プリント4を作製した。
【0145】
(プリント5の作製)
プリント1の作製において、インクジェット捺染用水性インク1の代わりにインクジェット捺染用水性インク4を用い、布帛として、シルケット加工した綿100%の平織り布の代わりに下記の前処理布1を用い、次いで、下記の固着処理1を行った後に、後処理1を施した以外は同様にしてプリント5を作製した。
【0146】
(前処理布1)
綿布を20g/リットルのアルギン酸ナトリウム、30g/リットルの炭酸ナトリウム、及び100g/リットルの尿素を含む液体でパッド塗布(絞り率:70%)した後、乾燥を行い前処理布1を得た。
【0147】
(固着処理1)
上記の前処理布1を完全に乾燥し、飽和蒸気中、103℃で15分間固着させた。
【0148】
(後処理1)
固着後の試料に、捺染後(インクジェットプリント後)、冷水で5分、65℃で5分すすいだ後、3%のソーピング剤を溶解したソーピング液を用いて85℃で煮沸して洗い上げ、再度65℃で5分、そして冷水で5分すすいだ後、乾燥した。
【0149】
(プリント6の作製)
プリント1の作製において、インクジェット捺染用水性インク1の代わりにインクジェット捺染用水性インク5を用い、布帛として、シルケット加工した綿100%の平織り布の代わりに下記の前処理布2を用い、次いで、下記の後処理2を行った後に、固着処理2を施した以外は同様にしてプリント6を作製した。
【0150】
(前処理布2)
綿布を20g/リットルのアルギン酸ナトリウム、20g/リットルの硫酸アンモニウム、及び100g/リットルの尿素を含む液体でパッド塗布(絞り率:70%)した後、乾燥を行い前処理布2を得た。
【0151】
(固着処理2)
前処理布2を完全に乾燥し、飽和蒸気中、103℃で30分間固着させた。
【0152】
(後処理2)
固着処理後の試料に捺染後(インクジェットプリント後)、冷水で5分すすいだ後、3%のソーピング剤を溶解したソーピング液を用いて40℃にて湯洗いし、再度40℃で5分、そして冷水で5分すすいだ後、乾燥した。
【0153】
得られたプリント試料1〜6について、下記のようにして、汗堅牢度、摩擦堅牢度を各々評価した。
【0154】
《汗堅牢度評価》
汗堅牢度は、JIS(L0848−1996)に基づいて、試験片と添付白綿布とを酸性人工汗及びアルカリ性人工汗中へ投入し、所定の操作を行った後、添付白綿布への汚染具合をグレースケールと比較して、その堅牢度を下記のようにランク評価した。
【0155】
◎:3級以上
○:2級以上3級未満
×:2級未満
《摩擦堅牢度評価》
摩擦堅牢度は、摩擦試験機を用い、JIS(L0849−1996)に基づいて、試験片と摩擦用白綿布とを互いに摩擦し、摩擦用白綿布の着色の程度を汚染用グレースケールと比較して、その堅牢度を下記のようにランク評価した。
【0156】
◎:3級以上
○:2級以上3級未満
×:2級未満
得られた結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
Figure 2004051820
【0158】
表1から、比較に比べて、本発明の試料は、汗堅牢度、摩擦堅牢度共に優れていることが明らかであり、また、本発明のインクジェット捺染用水性インクを用いてプリントした試料は、前処理、後処理が不用であり、プリント作業において作業的、時間的な負担が軽減されることが明らかである。
【0159】
【発明の効果】
本発明により、プリント後の汗堅牢性、摩擦堅牢度共に優れているインクジェット捺染用水性インクを提供し、且つ、該インクジェット捺染用水性インクを用いるインクジェット捺染方法を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるヘッドの一部破断面を有する概略斜視図である。
【図2】本発明に用いられるヘッドのインク室部分の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 溝
2a インク室
3 電極膜
6 接着剤
8 蓋
9 インク室
9′ ダミー溝
14 上板
15 インク供給孔

Claims (6)

  1. 顔料と樹脂とを少なくとも含む着色微粒子の分散体を含有することを特徴とするインクジェット捺染用水性インク。
  2. 顔料が、有機顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット捺染用水性インク。
  3. 着色微粒子の分散体が、コア/シェル構造を有する着色微粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット捺染用水性インク。
  4. 着色微粒子の体積平均粒径が10nm〜100nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染用水性インク。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染用水性インクを用いて布帛にプリントする工程、次いで、該布帛を加熱する工程を有することを特徴とするインクジェット捺染方法。
  6. 前記加熱する工程での布帛の加熱温度が、150℃〜230℃であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット捺染方法。
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