JP2004049227A - 霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。 - Google Patents

霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。 Download PDF

Info

Publication number
JP2004049227A
JP2004049227A JP2003151839A JP2003151839A JP2004049227A JP 2004049227 A JP2004049227 A JP 2004049227A JP 2003151839 A JP2003151839 A JP 2003151839A JP 2003151839 A JP2003151839 A JP 2003151839A JP 2004049227 A JP2004049227 A JP 2004049227A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
fetus
complex
primate
administration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003151839A
Other languages
English (en)
Inventor
Shin Nakamura
中村 伸
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyoto University
Original Assignee
Kyoto University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyoto University filed Critical Kyoto University
Priority to JP2003151839A priority Critical patent/JP2004049227A/ja
Publication of JP2004049227A publication Critical patent/JP2004049227A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】霊長類胎仔への安全な遺伝子導入方法及びそのための複合体を提供すること。
【解決手段】リポソーム性ベクターと、霊長類胎仔へ導入すべき所望の遺伝子を含む核酸との複合体から成る、霊長類胎仔への遺伝子導入用複合体を提供した。
【効果】本発明の方法により、霊長類の胎仔に所望の遺伝子を導入することが可能になったので、遺伝子治療や遺伝子ワクチンによる免疫付与への道が開かれた。また、実験動物用の霊長類、とりわけ、サル(特に旧世界ザル及び新世界ザル)はヒトに近い胎盤構造を持っていることから、サルに対して本発明の方法を適用することにより、ヒトにおいても、胎児に対する積極的な遺伝子治療やDNAワクチンの効果等を研究することもできる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子治療とは、正常な遺伝子を細胞に補い、あるいは遺伝子の欠陥を修復・修正することで疾患を治療する手法である。遺伝子疾患はすでに多数が知られ、また高血圧などの生活習慣病や癌、神経難病等も遺伝子の影響を受けることが解明されつつあり、そのような観点から、胎児への遺伝子導入は、遺伝子治療研究の最重要課題となっている。
【0003】
その一方で、ヒトの妊娠時に遺伝子治療を施す場合の、胎児への影響という観点からの安全性についても、十分考慮する必要がある。
【0004】
これまで動物胎仔への遺伝子導入実験(ウイルス性ベクターを含む)では、羊水内投与や臍帯内投与、胎仔腹腔内投与、胎仔気管内投与、胎仔心室内投与が試されているが、投与方法自体に困難が伴い、臨床で用いるには母体や胎児に対してあまりにも危険性が高すぎるという問題点があった。
【0005】
胎盤は、母体胎仔間での酸素、炭酸ガスをはじめ種々の生体物質の交換や種々の生体機能物質・因子を産出する器官である。動物によりこの胎盤の形状や子宮内分布に違いが見られる。動物の胎盤は、母体血と胎仔血との間に存在する関門構造の特徴から、大まかに▲1▼上皮絨毛胎盤、▲2▼結合織絨毛胎盤、▲3▼内皮絨毛胎盤及び▲4▼血絨毛胎盤に区分けされる。霊長類(ただし原猿類は除く)、齧歯類は、いずれも、血絨毛胎盤のグループに属している。
【0006】
物質の胎盤通過で問題になるのは、血絨毛胎盤の胎仔毛細血管内皮細胞層と母胎血との間に存在する胎仔側細胞層の数である。この胎仔側細胞層は、マウス、ラットでは、胎仔毛細血管内皮細胞層と母胎血との間に3層の栄養膜層が存在するが、ヒト、類人猿、旧世界ザル、新世界ザルでは1層である。すなわち、旧世界ザルや新世界ザルは、マウス、ラット等の汎用実験動物と比較すれば、よりヒトに近い胎盤関門を持っているということができる。したがって、マウス、ラットでは胎盤通過が認められなかった薬剤等が、霊長類の胎盤を通過する可能性が考えられる。
【0007】
これまでに2つの研究グループがマウスを実験動物として用い、妊娠マウスに投与したプラスミドDNAが胎盤経由で胎仔へ移行することを示している。
【0008】
TsukamotoらはリポソームDNA複合体を投与した妊娠マウス97匹全てにおいて導入遺伝子が胎仔へ移行したことを報告した(非特許文献1)。彼らはまた、発現プラスミドリポポリアミン複合体を妊娠マウスに1回静脈内投与し、導入遺伝子が胚へ移行すること、そして遺伝子発現が胎仔や出生後のマウスでも見られたことを報告している(非特許文献2)。Shubbertらは、妊娠マウスにM13ファージ或いはpEGFP−C1プラスミドを単に食べさせ、胎仔や新生仔の様々な臓器で導入遺伝子の断片は検出したが、導入遺伝子の発現は認めることができなかった(非特許文献3)。
【0009】
これとは対照的に、Gaenslerらは妊娠ラットに陽イオン性リポソーム−DNA複合体を静脈内投与し、胎仔組織においてレポーター遺伝子の発現を認めることができなかった(非特許文献4)。齧歯類においてさえも、リポソーム形成DNAが胎盤を通過し胎仔へ移行するかどうかは定まっていない。母体−胎仔移行は胎盤構造に依存し、その胎盤構造は霊長類と齧歯類とでは異なっている。そのため、霊長類モデルにおけるリポソーム−DNA複合体の胎盤通過に関する研究が必要とされる。しかしながら、今日まで霊長類においては、このような複合体の母体−胎仔に関する知見の蓄積が全くなかった。
【0010】
【非特許文献1】
Tsukamoto M, Ochiya T, Yoshida S, et al. Gene transfer and expression inprogeny after intravenous DNA injection into pregnant mice. Nat Genet 1995; 9: 243−248.
【非特許文献2】
Ochiya T, Takahama Y, Baba−Toriyama H, et al. Evaluation of cationic liposome suitable for gene transfer into pregnant animals. Biochem Biophys Res Commun 1999; 258: 358−365.
【非特許文献3】
Schubbert R, Hohlweg U, Renz D, et al. On the fate of orally ingested foreign DNA in mice: chromosomal association and placental transmission tothe fetus. Mol Gen Genet 1998; 259: 569−576.
【非特許文献4】
Gaensler KML, Tu G, Bruch S, et al. Fetal gene transfer by transuterine injection of cationic liposome−DNA complexes. Nat Biotechnol 1999; 17: 1188−1192.
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、霊長類胎仔への安全な遺伝子導入方法及びそのための複合体を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、鋭意研究の結果、リポソーム性ベクターと、霊長類胎仔に導入すべき所望の遺伝子を含む核酸との複合体を、妊娠霊長類に投与することにより、霊長類胎仔に前記所望の遺伝子を安全に導入することができることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、リポソーム性ベクターと、霊長類胎仔へ導入すべき所望の遺伝子を含む核酸との複合体から成る、霊長類胎仔への遺伝子導入用複合体を提供する。また、本発明は、上記本発明の遺伝子導入用複合体を、妊娠霊長類(ヒトを除く)に投与することを含む、霊長類胎仔への遺伝子導入方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記の通り、本発明の霊長類胎仔への遺伝子導入用複合体は、リポソーム性ベクターと、霊長類胎仔へ導入すべき所望の遺伝子を含む核酸との複合体から成る。
本発明の遺伝子導入用複合体に含まれる核酸は、霊長類胎仔へ導入すべき所望の 遺伝子を含むものである。ここで、導入すべき所望の遺伝子は、何ら限定されるものではなく、遺伝病の治療のための遺伝子や遺伝子ワクチンを挙げることができる。導入すべき所望の遺伝子の具体例としては、例えば、血友病や免疫異常症等の先天的遺伝子異常疾患治療のための遺伝子並びにサルBウイルスやヒトヘルペスウイルス感染症に対する遺伝子ワクチン(主要ウイルス抗原の糖蛋白質−Dをコードする遺伝子)、および花粉症・喘息などアレルギー症治療のための遺伝子ワクチンを挙げることができる。あるいは、機能不明の遺伝子を実験用霊長動物(ヒトは含まない)に導入して、その遺伝子の機能を解明するために本発明を適用することも可能である。この場合には、導入すべき所望の遺伝子は、機能を解明しようとする遺伝子である。導入すべき所望の遺伝子は、哺乳動物細胞用の発現ベクターのクローニング部位に挿入されて組換えベクター中に含まれることが好ましい。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、周知であり、種々のものが市販されている。これらの市販の発現ベクターを用いることができる。なお、哺乳動物細胞用の発現ベクターには、ウイルス由来の領域を主体とするウイルスベクターと、プラスミド由来の領域を主体とするプラスミドベクターがあるが、安全性の観点から、プラスミドベクターが好ましい。
【0015】
本発明の遺伝子導入用複合体に用いられるリポソーム性ベクターは、霊長類の胎盤を介して胎仔に遺伝子を導入できるものであれば限定されないが、生きた霊長類に安全に遺伝子を導入する観点から、少なくとも陽イオン性脂質(カチオニックリピッド)を含む混合ハイブリッドリポソームベクターを用いることが好ましい。リポソームベクターを形成するためのカチオニックリピッド自体は、この分野において周知であり、市販もされている。例えば、Roche Diagnostics社から市販されているDOTAP(物質名:N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート)等の市販のカチオニックリピッドを好ましく用いることができる。リポソームベクターは、上記核酸及びカチオニックリピッドに加え、例えば、バーキットストロマウイルス−Gタンパク質(VSV−G)(Abe, A., et al, J. Virol., 72: 6159−6163 (1998))のような他のタンパク質及びポリブレン(ヘキサジメトリンブロミド)のようなポリカチオンをさらに混合することが好ましい。VSV−Gのようなタンパク質を加える目的は、VSV−Gが遺伝子導入する細胞・組織の細胞膜を構成するリン脂質(特に、ホスファティジールセリン)と強く結合して、細胞内への遺伝子導入効率を高めるためであり、ポリブレンのようなポリカチオンを加える目的は、遺伝子導入する細胞・組織の細胞表層に存在するヘパリン様ペプチドグリカン類の荷電状態を中和して、遺伝子・DNAの細胞表層への結合効率ひいては細胞内への遺伝子導入効率を高めるためである。なお、上記核酸、カチオニックリピッド、VSV−Gのようなタンパク質、及びポリブレンの混合比率(重量比)は、特に限定されないが、通常、核酸を1とした場合、カチオニックリピッドが1/5〜2.0、VSV−Gのような他のタンパク質が1/40〜1/10、ポリブレンのようなポリカチオンが1/10〜1/2が適当である。これらを混合することにより、上記核酸と混合ハイブリッドリポソームベクターの複合体が形成され、効率的な遺伝子導入が可能になる。
【0016】
本発明の遺伝子導入用複合体は、霊長類であればいずれの動物に投与することも可能である。例えば、ヒト;マカク類(ニホンザル、アカゲザル、カニクイザル等)やヒヒ類等の旧世界ザル;キヌザル、マーモセット、ヨザル、オマキザル、クモザル等の新世界ザル;メガネザル、キツネザル、ロリス等の原猿類;チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザル等の類人猿等を挙げることができる。
【0017】
投与経路は、特に限定されないが、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与等の非経口投与が好ましく、とりわけ、皮下投与及び静脈内投与、特に皮下投与が好ましい。投与量は、特に限定されず、遺伝子導入の目的や、導入効率等に応じて適宜設定されるが、通常、体重1kg当たり、複合体の投与量で50μg〜500μg程度が適当である。本発明の複合体は、通常、液状であるので、そのまま注射することもできるし、生理緩衝液等の緩衝液に懸濁又は乳濁させたものを投与してもよい。
【0018】
投与の時期は、妊娠中であれば、特に限定されないが、遺伝子導入の効率の観点から妊娠末期、すなわち、全妊娠期間の最後の20%以内の期間に投与することが好ましい。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
動物
コモンマーモセットは通常2卵性の双子を産することがよく知られている。3.5〜5.0歳,体重310〜460gの3頭のコモンマーモセットメス(妊娠メス2頭,非妊娠メス2頭)を用いた。これらは京都大学霊長類研究所(KUPRI)で繁殖したもので,新世界ザル用固形飼料SPS(オリエンタル酵母社製)と適宜果物を与えた。3頭中2頭は妊娠しており,交尾からの日数及び触診により妊娠末期であると判断した。融合性リポソーム−DNA複合体投与や採血は0.01mg/gのケタミン麻酔下で行った。組織採集のためのサルの安楽死は,KUPRI動物の飼育と使用のためのガイドラインに従って行われた。研究プロトコールは文部省,KUPRIバイオハザード委員会,動物福祉/動物飼育委員会により認証された。実験はKUPRIバイオセーフティレベル2施設内で行われた。
【0021】
プラスミドDNAの投与
哺乳動物用レポータープラスミド,pEGFP−C1(Clontech Laboratories Japan,Tokyo, Japan)をDH5a(recA1 endA1)株 Escherichia coliで増幅し,エンドトキシンフリープラスミド精製キット(Qiagen K. K., Tokyo, Japan)を用い精製した。
【0022】
プラスミドDNAの質及び量はUVスペクトロフォトメトリー,アガロースゲル電気泳動によって調べた。プラスミドDNA(25 μg)に12.5μlのN−[1−(2,3−ジオレオイロキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP; Roche Diagnostics, Tokyo, Japan)を混合した。トランスフェクションを促進するため,これに5μgの陽イオン ヘキサジメトリンブロミド(ポリブレン; Sigma−Aldrich Japan, Tokyo, Japan)を加えた(Arcasoy SM et al. Gene Ther 1997, 4: 3238; Andreadis S et al., Hum Gene Ther 1997; 10: 285291.)。更に1.25 μgのリコンビナント水疱性口内炎ウィルスGタンパク質 (VSV−G; 恵美宣彦博士(名大・医)より提供)を,トランスフェクション効率を上げる目的で加えた(Abe A et al., J Virol 1998; 72: 61596163)。このように融合性DOTAP/ポリブレン/ VSV−G リポソームに複合させたプラスミドpEGFP−C1(最終量: 150 μl)を妊娠マーモセット背部3箇所に皮内注射した。なお、追加実験では,非妊娠マーモセットに300 μg/ 個体のpEGFP−C1を静脈内注射した。
【0023】
egfp 遺伝子の検出
投与18時間後に,妊娠マーモセットをケタミン,ペントバルビタールナトリウムで麻酔し,子宮全摘出した。摘出された子宮は,母親の血液を除去するために生理食塩水で洗浄し,摘出したのとは別の実験者に渡された。子宮漿膜を切開し,胎仔表面を汚染しないように細心の注意を払い2匹の胎仔を取り出した。胎仔体重は24〜29 g であった。心臓穿刺で胎仔血(0.8〜1.5 ml)を採取し,胎仔臓器を摘出した。血液サンプル中のDNAは,Blood Mini−Prep Purification Kit (Quiagen)を用いて精製した。胎仔臓器は液体窒素で凍結し,破砕した。得られた組織粉末を20 mg/mlのRnase A 及び100 mg/mlのproteinase K を含む抽出バッファー(10mMTris−HCl, pH 8.0, 0.1M EDTA, pH 8.0, 0.5% SDS)中に散開させ,56℃で2時間,37℃一晩インキュベートした。これより,飽和−Tris フェノール抽出1回,フェノール /クロロホルム / イソアミルアルコール抽出3回,クロロホルム / イソアミルアルコール抽出1回を行い,DNAを精製し,エタノール沈殿させ回収した。プラスミドpEGFP−C1中のegfp遺伝子270bpを増幅するため,センスプライマー(5’−cagccacaacgtctatatcatgg−3’),アンチセンスプライマー(5’−agctcgtccatgccg agatg−3’)を用い,初回変性94℃10分,[94℃20秒,62℃30秒,72℃1分]35サイクル,最終エクステンション72℃7分の条件でPCR法を行った。PCR産物を5%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し,SYBR Green I (宝酒造社製)で染色した。得られたPCR産物の信頼性はシークエンシングにより確証した。
【0024】
green fluorescent タンパク質 (GFP)の検出
プラスミド pEGFP−C1 は改変型クラゲGFPをコードしており,このEGFPは507nmを主波長とした蛍光を発する。摘出した胎仔臓器(心臓,腎臓,肝臓,肺等)はOCTコンパウンドに包埋し,液体窒素中で急速凍結した。凍結切片(4 ml)中のGFPをFluoView ソフトウェア(Olympus, Tokyo, Japan)を用い,共焦点レーザー走査顕微鏡(Olympus BX50, Olympus)で直接観察した。また,抗GFPマウスモノクローナル抗体(Berkeley Antibody, Richmond, CA, USA)を用い,免疫組織化学的にGFPを検出した。組織切片を 0.5 mg/ml の抗GFPモノクローナル抗体と4℃で一晩インキュベートし,結合した抗体を市販のアルカリフォスファターゼ / 抗アルカリフォスファターゼ(APAAP)法キット(DAKO Japan, Kyoto, Japan)で検出した。簡潔には,抗GFPモノクローナル抗体と反応させた切片を,ウサギ抗マウスIgG抗体と,更にAPAAP複合体と反応させ,Fast Red TR 塩で染色した。また、対照染色にはヘマトキシリンを用いた。
【0025】
結果
胎仔サンプルegfp遺伝子の検出
第1実験では, 25 μgのプラスミドpEGFP−C1を含むDOTAP / polybrene / VSV−G 融合性リポソームを妊娠マーモセットに皮内投与した。投与翌日,2匹の胎仔から心臓と肝臓を摘出した。その臓器よりDNAを抽出し,PCR法の対象とした。母親血液より抽出したDNAをテンプレートとしてPCR法を行うと,270bp の断片が増幅された。さらに,胎仔肝臓,心臓から抽出したDNAでも 270−bp のPCR産物が得られた。薄いバンドではあるが,これらは胎仔臓器に検出可能なレベルのegfp遺伝子が含まれていることを示しており,ネガティブコントロールの水をテンプレートとした場合には,PCR産物は見られなかった。
【0026】
2番目の実験では,別の妊娠ザルにプラスミドpEGFP−C1を投与し,2匹の胎仔より胎仔血液,心臓,腎臓,肝臓,肺を採集した。母親のサンプルでは,投与前の血液DNAからは産物が得られず,一方投与後の血液,胎盤より精製したDNAから270bpの産物が得られた。両方の胎仔血液DNAより 270bp のPCR産物が得られ,胎仔循環血中のegfp遺伝子の存在が示された。バンドの強度は一方の胎仔(fetus 1)の方が,他方の胎仔(fetus 2)のものよりも弱かった。Fetus 2 から得られた臓器DNAサンプルはポジティブである一方で,fetus 1 からのものはネガティブであった。これらの結果は,母親から両方の胎仔へegfp遺伝子が移行したが,その量に胎仔での違いがあったことを示唆している。
【0027】
胎仔肺におけるGFPの検出
マーモセット胎仔でegfp遺伝子が発現しているかどうかを調べるため,2番目の実験では,凍結組織切片を共焦点レーザー走査顕微鏡で直接観察した。Fetus 2 の肺血管周囲の細胞で明らかな緑色蛍光が観察された。しかしながら,この胎仔の心臓,腎臓,肝臓切片では,不明瞭なバックグラウンド蛍光があるのみで,明確な蛍光は見られなかった。これらのサンプルのバックグラウンド蛍光は同様に弱いものであった。次に,抗原性のあるGFPポリペプチドが発現しているかどうかを調べるために,切片を抗GFPモノクローナル抗体で染色した。Fetus 2 の肺で,特に血管内皮細胞において赤い沈積が観察され,抗GFP抗体の存在が認められた。抗GFPモノクローナル抗体の替わりに,ノーマルマウスIgGを用いたコントロール切片では赤い沈積は見られなかった。これらの結果は,fetus 2 の肺血管内皮細胞でGFPが産生されたことを強く示唆している。同時に肺実質細胞で見られる弱いバックグラウンド蛍光はGFPによるシグナルではないことも示唆している。Fetus 2 の心臓,腎臓,肝臓では,不明瞭なバックグラウンド蛍光しか見られず,また免疫染色でもGFPは検出できなかった。
【0028】
静脈内投与による導入遺伝子発現
上記2つの実験では,母体に投与したプラスミドが胎盤を経由して胎仔へ移行したと思われる。これは胎仔へ静脈内投与したのと同様な状況である。そのため,我々は,成体マーモセットに静脈内投与した場合に肺でGFPが発現するかどうか調べる追加実験を行った。300 μgのプラスミドpEGFP−C1を含むDOTAP / polybrene / VSV−G複合体を非妊娠マーモセットの静脈内に投与した。PCR法で分析した結果,投与前の血液DNAはネガティブであり,投与18時間後の血液,肺,子宮から抽出したDNAは検出可能なレベルのegfp遺伝子を含んでいることが示された。更に肺組織切片を抗GFPモノクローナル抗体で免疫染色し,肺の内皮細胞でGFPが発現していることを認めた。これは2番目の実験のfetus 2 で得られた結果と一致するものである。プラスミドpEGFP−C1を投与した非妊娠マーモセットでは,肺に加え,卵巣でもGFPが発現していた。その他の臓器(小脳,大脳,心臓,腎臓,肝臓,脾臓;データ不掲載)では特異的な染色像は得られなかった。
【0029】
以上のように、本発明により、妊娠末期でマーモセット母体に投与したDNAプラスミドが胎仔へ移行すること,調べた4つの胎仔臓器の中でも特に肺で導入遺伝子がエンコードするタンパク質が発現していることが示された。また,プラスミドpEGFP−C1を非妊娠マーモセットに静脈内投与し,肺の内皮細胞でGFPが発現することを認めた。すなわち、本発明は初めて導入遺伝子が,霊長類において肺に選択的に発現することを示唆したものである。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、霊長類胎仔への安全な遺伝子導入方法及びそのための複合体が初めて提供された。本発明の方法により、霊長類の胎仔に所望の遺伝子を導入することが可能になったので、遺伝子治療や遺伝子ワクチンによる免疫付与への道が開かれた。また、実験動物用の霊長類、とりわけ、サル(特に旧世界ザル及び新世界ザル)はヒトに近い胎盤構造を持っていることから、サルに対して本発明の方法を適用することにより、ヒトにおいても、胎児に対する積極的な遺伝子治療やDNAワクチンの効果等を研究することもできる。また、ヒト妊娠時において遺伝仔投与を受けた際の胎児への影響を研究することができるなど、ヒトでの胎児遺伝子治療・遺伝子ワクチンなど臨床応用の研究を行うこともできる。さらに、機能が未知の遺伝子を導入することにより、霊長類における該遺伝子の機能を調べることも可能である。
【0031】
【配列表】
Figure 2004049227
【0032】
Figure 2004049227
【0033】
Figure 2004049227

Claims (11)

  1. リポソーム性ベクターと、霊長類胎仔へ導入すべき所望の遺伝子を含む核酸との複合体から成る、霊長類胎仔への遺伝子導入用複合体。
  2. 前記核酸が、プラスミドである請求項1記載の複合体。
  3. 皮下投与用である請求項1又は2記載の複合体。
  4. 静脈内投与用である請求項1又は2記載の複合体。
  5. 妊娠末期の霊長類投与用である請求項1又は2記載の複合体。
  6. 請求項1又は2記載の遺伝子導入用複合体を、妊娠霊長類(ヒトを除く)に投与することを含む、霊長類胎仔への遺伝子導入方法。
  7. 皮下投与により投与する請求項6記載の方法。
  8. 静脈内投与により投与する請求項6記載の方法。
  9. 妊娠末期に投与する請求項6ないし8のいずれか1項に記載の方法。
  10. サルに投与する請求項6ないし9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記サルは、旧世界ザル又は新世界ザルである請求項10記載の方法。
JP2003151839A 2002-05-29 2003-05-29 霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。 Pending JP2004049227A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003151839A JP2004049227A (ja) 2002-05-29 2003-05-29 霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002195271 2002-05-29
JP2003151839A JP2004049227A (ja) 2002-05-29 2003-05-29 霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004049227A true JP2004049227A (ja) 2004-02-19

Family

ID=31949476

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003151839A Pending JP2004049227A (ja) 2002-05-29 2003-05-29 霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004049227A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109125740A (zh) * 2017-06-28 2019-01-04 四川大学 一种新型的肿瘤疫苗及其用途

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109125740A (zh) * 2017-06-28 2019-01-04 四川大学 一种新型的肿瘤疫苗及其用途

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20020151004A1 (en) Delivery vehicles and methods for using the same
US8658778B2 (en) hTMC promoter and vectors for the tumor-selective and high-efficient expression of cancer therapeutic genes
CN108243607A (zh) 用于免疫疗法的巨噬细胞的遗传工程
CN101171337A (zh) 与基因表达的体内成像相关的方法和组合物
US20230067722A1 (en) Lipid nanoparticles
Mattar et al. Systemic gene delivery following intravenous administration of AAV9 to fetal and neonatal mice and late-gestation nonhuman primates
Knudson et al. Lipid-nanoparticle-encapsulated mRNA vaccines induce protective memory CD8 T cells against a lethal viral infection
JP2022548308A (ja) カーゴを標的細胞に送達するための組成物及び方法
CN107530383A (zh) 用于埃博拉病毒疫苗接种的方法和组合物
TW202130654A (zh) 使用耳畸蛋白雙載體系統治療感覺神經性聽力損失之組合物及方法
CN112639108A (zh) 治疗非综合征性感觉神经性听力损失的方法
KR20230050313A (ko) 지질 나노입자
WO2023102550A2 (en) Compositions and methods for efficient in vivo delivery
Endo et al. The developmental stage determines the distribution and duration of gene expression after early intra-amniotic gene transfer using lentiviral vectors
Kim et al. Real-time in vivo bioluminescence imaging of lentiviral vector–mediated gene transfer in mouse testis
KR20220102617A (ko) HPV mRNA 를 봉입한 핵산 지질 입자 백신
CA2412544A1 (en) Polypeptide delivery ii-2
US20200270638A1 (en) Exosomes as a vector for gene delivery in resistance to neutralizing antibody and methods of their manufacture
Henriques-Coelho et al. Targeted gene transfer to fetal rat lung interstitium by ultrasound-guided intrapulmonary injection
JP2004049227A (ja) 霊長類胎仔への遺伝子導入方法及びそのための複合体。
HU227667B1 (en) Novel expression vectors and uses thereof
CN116887868A (zh) 达农病的治疗
US20230128981A1 (en) Cd24-loaded vesicles for treatment of cytokine storm and other conditions
WO2022230971A1 (ja) コロナウイルスに対する免疫応答を誘発する人工アジュバントベクター細胞、および当該細胞を含む医薬組成物、並びにそれらの使用
WO1996011713A1 (en) Genetic material containing composition

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20040806

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20040811

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20040811

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051026

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080826

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081027

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20081028

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090217