JP2004045062A - 絶対反射率と絶対透過率同時測定光学系 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】4枚の凹面鏡CM1、CM2、CM3、CM4と、4枚の補助鏡SM1、SM2、SM3、SM4から選択された少なくとも4枚以上の鏡と、2枚のビーム切換鏡RM1、RM2を組み合わせ、試料に対して表面と裏面からそれぞれ光を入射することにより、表面入射と裏面入射に対する絶対反射率及び表面入射と裏面入射に対する絶対透過率のいずれも測定可能とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザやマイクロ波光源のような外部光源と検出器からなる系に、或いは分散型分光光度計又はフーリエ変換型分光光度計中に組み込むことで、絶対反射率と絶対透過率の同時測定を可能にする対称X型光学系である。
【0002】
【従来の技術】
光テクノロジーは、IT産業においては高速大容量光通信や画像処理等、医療産業においてはレーザメスやガン治療等、製造加工業においてはレーザを用いたナノテクノロジーや同位体分離や表示器照明器等、学術分野では精密光計測や情報処理技術開発等、現代生活において非常に重要な技術である。
【0003】
この光テクノロジーを支える基盤技術は、物質の光学定数(屈折率と消衰係数)、あるいは同じことであるが複素誘電率、の決定である。この2つの未知数(屈折率と消衰係数)を決定するためには、2つの独立な測定が必要である。
【0004】
そのひとつの方法は、誘電体のような透明試料の場合にはある特定の1つの角度で絶対反射率と絶対透過率の2つを測り、これらの連立方程式を解いて光学定数を決定する方法である。金属のような不透明試料では、2つの異なった入射角度に対して絶対反射率を測定して、これらの連立方程式を解いて光学定数を決定する方法である。これらの方法は、直感的で有用な方法である。
【0005】
従来から分散型分光光度計やフーリエ変換型分光光度計では、多くの場合試料の反射率と透過率測定で異なった光学系を用いている。このために、2つの量(反射率と透過率)を測定するためには、途中で光学系を『差し替え』なければならず、煩雑である。さらにこの『差し替え』は、測定結果の大きな誤差要因でもある。
【0006】
ところで、この絶対反射率測定のためには、検出器は固定のままで追加の鏡を移動させる方法(V−N法やV−W法)と、検出器を移動させる方法(ゴニオメトリック法)と、が開発されている。
【0007】
図5は、従来のゴニオメトリック法による絶対反射率の測定方法を説明する図である。この従来のゴニオメトリック法によると、分光光度計等(図中では「光源部」)から出射した光を試料支持台SHの所に集光する。この試料支持台SHには、ブランクの穴と試料が取り付けてあり、スライドしてどちらかを選べるようになっている。この時の入射角度をθとする。まず、この試料支持台SHを選び、バックグラウンド信号を検出器で測定する。
【0008】
次に、試料支持台SHをスライドして試料を選び、試料を中心に検出器を(180°−2θ)度回転して、試料からの反射のサンプル信号を測定する(図5(b)参照)先ほどのバックグランド信号との比を取ることで、入射角度θに対する絶対反射率が求まる。
【0009】
従来のゴニオメトリック法では、絶対透過率も測定できる。図5でこの測定方法を説明する。図中の光源部から出射した光を試料支持台SHの所に集光する。この時、入射角度をθとする。まず、この試料支持台SHはブランクを選び、バックグランド信号を検出器で測定する。次に試料支持台SHはスライドして試料を選ぶと、検出器はほぼ同じ場所で試料を透過したサンプル信号を測定できる。これら2つの比として入射角度θに対する絶対透過率が求まる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の光学(反射と透過)測定には、次のような問題がある。絶対透過率は、入射光軸上の試料の有・無による光強度の比として求められる。この時、入射光の光軸上に試料と検出器を一列に並べればよいので、測定は容易である。一方、絶対反射率の測定でも、試料の有・無による光強度の比として求められる。しかし、試料無しの時は、光は入射光の方向に進むが、試料有りの時は、反射のために、反射光の進行方向は元の入射光の方向とは異なる。
【0011】
上述の絶対反射率測定のための検出器は固定のままで追加の鏡を移動させる方法(V−N法やV−W法)では、絶対透過率測定と絶対反射率測定は、全く別の光学系を用いてきた。このために、両方を測定するには、その度に光学系の『差し替え』が必要であった。
【0012】
ゴニオメトリック法では絶対反射率と絶対透過率の測定が可能である。
【0013】
しかし、これら全ての絶対反射率測定では、検出器か鏡の移動が必要であった。この検出器か鏡の移動の再現性が、測定誤差に大きな影響を与えている。
【0014】
このように、絶対反射率測定では、一般に測定精度が悪かった。市販の分光光度計をもちいる絶対反射率測定では精度は数%であり、熟練者が試料と測定系に特別の注意を払って測定した時に、先ほどの精度の10分の1程度の測定精度が達成できるのが現状である。
【0015】
本発明では、このような従来の問題を解決することを目的とするものであり、広範に用いられている分散型分光光度計(主に、近赤外の波長より短い波長域で利用されている)やフーリエ変換型分光光度計(主に、近赤外の波長より長い波長域で利用されている)等で、より簡便に、より精度良く物質の光学定数を決定するために、その物質の絶対反射率と絶対透過率を同時に測定できる対称X型光学系を実現することを課題とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、試料に対して対称なX型に配置された4枚の凹面鏡及び4枚の補助鏡、並びに試料に対して入射側及び出射側に配置された2枚のビーム切換鏡から構成され、上記4枚の凹面鏡と上記4枚の補助鏡から選択された少なくとも4枚以上の鏡と、上記2枚のビーム切換鏡を組み合わせて絶対反射率と絶対透過率を同時に測定することが可能である対称X型光学系であって、上記試料に対して表面と裏面からそれぞれ光を入射することにより、表面入射と裏面入射に対する絶対反射率及び表面入射と裏面入射に対する絶対透過率のいずれもが測定可能であることを特徴とする対称X型光学系を提供する。
【0017】
上記対称X型光学系は、分散型分光光度計又はフーリエ変換型分光光度計に組み込めることを特徴とする。
【0018】
上記表面入射と裏面入射に対する絶対反射率及び表面入射と裏面入射に対する絶対透過率をそれぞれ比較して、測定誤差を求め、この誤差の情報から光学測定が正確に行われているかどうかを自己判断可能とすることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる対称X型光学系の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は、本発明の対称X型光学系の実施例1を示す図であり、この対称X型光学系は、2個のビーム切換鏡RM1、RM2と、4個の凹面鏡CM1、CM2、CM3、CM4と、4個の補助鏡SM1、SM2、SM3、SM4と試料支持台SHからなる。
【0021】
図1の本発明の対称X型光学系は、試料に対する任意の入射角度(θ)で入射させる光学配置である。試料支持台SHを、分散型或いはフーリエ変換型分光光度計のオリジナルな焦点の位置に配置する。この光学系の入射側と出射側を結ぶ軸(オリジナルな光軸O)上に、2個のビーム切換鏡RM1、RM2、試料支持台SHが一列に配置されており、試料支持台SHを挟んで、ビーム切換鏡RM1は入射側に、ビーム切換鏡RM2は出射側に夫々配置されている。
【0022】
4個の凹面鏡(CM1〜CM4)は、試料支持台SHに対して対称なX型に配置されており、試料に対して表裏から等しい入射角度θで入射し、等しい角度θで出射するように、等距離(凹面鏡の曲率半径程度か少し短い距離)に配置されている。
【0023】
4個の凹面鏡(CM1〜CM4)の向きは、夫々凹面鏡への入射角度(φ)が小さくなるようにする。4枚の補助鏡(SM1〜SM4)は、RMx(x=1、2)とSMx(x=1〜4)で反射された後の焦点を、分散型或いはフーリエ変換型分光光度計のオリジナルな光軸O上になるように補助鏡SMxの位置を調整し、さらに凹面鏡への入射角度が、ほぼφになるように配置する。
【0024】
このように配置することで、対称X型光学系のRM1に入射した光は一旦オリジナルな光軸O上に集光されたのち、凹面鏡CM2又はCM1で再度試料面Sに集光される。そして試料面Sで反射又は透過した光は、凹面鏡CM3又はCM4で再々度オリジナルな光軸O上に集光されたのち、RM2で反射して元の分散型或いはフーリエ変換型分光光度計の光軸O上を進む。この結果、この配置では鏡による色収差が小さくなり、楕円面鏡でなく凹面鏡(CM1〜CM4)でも高精度な測定ができる。
【0025】
この試料支持台SHには、2つの同じ大きさの穴がある。一方は試料無しのブランク(貫通穴)で、他方はその穴を完全に覆うように試料を取り付けることのできる試料挿入穴である。この試料支持台SHは、光軸上に試料又はブランクが置かれるようにスライドして切り替わる。このスライド式は、図5のゴニオメトリック法と同じである。これにより試料無しと試料有りの切替が可能になる。この時ビーム切換鏡(RM1とRM2)も連動して動作するように構成されている。この結果、検出器や鏡の移動が無くなり、従来必要であった『差し替え』も不要となり、絶対反射率と絶対透過率のデータの再現性も向上し、測定誤差が小さくなる。
【0026】
(作用)
本発明に係る対称X型光学系の実施例1の作用を説明する。本発明に係る対称X型光学系では、4枚の凹面鏡は対称なX(エックス)型に配置されており、その中心に試料支持台SHが固定されている。試料の表面が、凹面鏡CM1と凹面鏡CM3で作る面を向き、さらにこの面に平行になるように置かれている。この光学系で、表面入射と裏面入射に対する試料の反射率を、図1に基づいて説明する。
【0027】
まず、『CM1、CM4、CM3の凹面鏡の組み合わせ』で求まる表面からの反射率をrとし、次に『CM2、CM3、CM4の凹面鏡の組み合わせ』で求まる裏面からの反射率をr’とする。
【0028】
具体的に、表面からの反射率測定について説明する。分光光度計等(図中では「光源部」)からの光をビーム切換鏡RM1が受けて、補助鏡SM2に送り、さらに凹面鏡CM1に送る。CM1はこの光を試料支持台SHの所に集光する。バックグラウンド信号測定のためにSHはブランクを選び、全ての光を、凹面鏡CM4で集めて、補助鏡SM3に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をI0とする。
【0029】
次に試料有りのサンプル信号を測定するために試料支持台SHは、試料を選び、入射光は試料により反射されて、凹面鏡CM3に送られ、CM3はこの光を集めて、補助鏡SM4に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をIrとする。表面からの反射率rは、r=Ir/I0として求まる。
【0030】
次に、裏面からの反射率測定について説明する。分光光度計等(図中では「光源部」)からの光を回転したビーム切換鏡RM1が受けて、補助鏡SM1に送り、さらに凹面鏡CM2に送る。CM2はこの光を試料支持台SHの所に集光する。バックグラウンド信号測定のためにSHはブランクを選び、全ての光を、凹面鏡CM3で集めて、補助鏡SM4に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をI’0とする。
【0031】
次に、試料有りのサンプル信号を測定するために試料支持台SHは、試料を選び、入射光は試料により反射されて、凹面鏡CM4に送られ、CM4はこの光を集めて、補助鏡SM3に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をI’rとする。裏面からの反射率r’は、r’=I’r/I’0として求まる。両面が鏡面研磨されたバルク試料でも、一般に、表面からの反射率と裏面からの反射率は等しくない(r≠r’)。この点については、段落0045の測定結果の箇所で詳しく説明する。
【0032】
次に、この対称X型光学系を用いて、透明試料の場合に表面からの透過率と、裏面からの透過率を測定する。まず、凹面鏡CM1とCM4を用いて、ブランクと試料有りでそれぞれ光強度を測定し、その比から表面からの透過率tを求める。次に、凹面鏡CM2とCM3を用いて、ブランクと試料有りでそれぞれの光強度を測定し、その比から裏面からの透過率t’を求める。
【0033】
具体的に、表面からの透過率測定について説明する。分光光度計等(図中では「光源部」)からの光をビーム切換鏡RM1が受けて、補助鏡SM2に送り、さらに凹面鏡CM1に送る。CM1はこの光を試料支持台SHの所に集光する。バックグラウンド信号測定のためにSHはブランクを選び、全ての光を、凹面鏡CM4で集めて、補助鏡SM3に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をI0とする。
【0034】
次に、試料有りのサンプル信号を測定するために試料支持台SHは、試料を選び、入射光のうち試料を透過した光を、同じ凹面鏡CM4で集めて、補助鏡SM3に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をItとする。表面からの透過率tは、t=It/I0として求まる。
【0035】
次に、裏面からの透過率測定について説明する。分光光度計等(図中では「光源部」)からの光をビーム切換鏡RM1が受けて、補助鏡SM1に送り、さらに凹面鏡CM2に送る。CM2はこの光を試料支持台SHの所に集光する。バックグラウンド信号測定のためにSHはブランクを選び、全ての光を、凹面鏡CM3で集めて、補助鏡SM4に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸O上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をI’ 0とする。
【0036】
次に、試料有りのサンプル信号を測定するために試料支持台SHは、試料を選び、入射光のうち試料を透過した光を、同じ凹面鏡CM3で集めて、補助鏡SM4に送り、さらにビーム切換鏡RM2に送り、RM2の反射光を元の分光光度計光軸上に一致させる。このようにして光は検出器に集められる。この時の出力をI’tとする。裏面からの透過率t’は、t’=I’t/I’0として求まる。理想的な試料では、表面からの透過率と裏面からの透過率は等しい(t=t’)。
【0037】
この対称X型光学系は、従来の光学測定系に比べて、光学系の『差し替え』が無いために、測定時間を1/2以下に短縮できる。これに伴う試料の脱着が不要なため、測定データの再現性に優れており、測定精度の向上が見込める。さらに標準試料を使わずに絶対反射率と絶対透過率が測定可能である。そして、一様な試料の場合、実測値の2つの反射率(rとr’)の差、2つの透過率(tとt’)の差から、各々の測定誤差を見積もることも可能となる。この誤差の情報から光学測定が正しく行われたかどうかを自己判定できる。
【0038】
(実施例2)
図2は、本発明の対称X型光学系の実施例2を示す図であり、この対称X型光学系は、2個のビーム切換鏡RM1、RM2と、4個の凹面鏡CM1、CM2、CM3、CM4と、4個の補助鏡SM1、SM2、SM3、SM4と試料支持台SHからなる。実施例1と基本的な構成はほぼ同じであるが、この実施例2に係る対称X型光学系では、光源部からの光がビーム切換鏡RM1とRM2の上に集光されている光学系である。
【0039】
試料に対する任意の入射角度(θ)として。実施例2の対称X型光学系をさらに説明する。4個の凹面鏡(CM1〜CM4)は、試料支持台SHに対して等しい入射角度θで、等距離(凹面鏡の曲率半径程度か少し短い距離)でX型に配置する。さらに凹面鏡への入射角度(φ)が小さくなるようにする。分散型或いはフーリエ変換型分光光度計(図中では「光源部」)からの光を最初のビーム切換鏡(RM1)の上に集光させる。
【0040】
補助鏡SM2は、RM1からSM2を経由してCM1までの光路長が、CM1からSHまでの光路長に等しく、さらに凹面鏡への入射角度が、ほぼφになるように配置する。残りのSM2、SM3とSM4も同じように配置する。
【0041】
このような配置では、最初にRM1に集光された光は、補助鏡(SM2、SM1)と凹面鏡(CM1、CM2)を経たのち、再度試料に集光される。試料面で反射か透過した光は、凹面鏡(CM3、CM4)と補助鏡(SM4、SM3)を経たのち集光される位置にビーム切換鏡RM2を置き、RM2によって反射された光は、元の分散型或いはフーリエ変換型分光光度計の光軸O上を進む。この結果、この配置では鏡による色収差が小さくなり、楕円面鏡でなく凹面鏡でも高精度な測定ができる。
【0042】
この試料支持台SHには、2つの同じ大きさの穴がある。一方は試料無しのブランク(貫通穴)で、他方はその穴を完全に覆うように試料を取り付けることのできる試料挿入穴である。この試料支持台SHは、光軸上に試料又はブランクが置かれるようにスライドして切り替わる。このスライド式は、図5のゴニオメトリック法と同じである。これにより試料無しと試料有りの切替が可能になる。この時ビーム切換鏡(RM1とRM2)も連動して動作するように構成されている。この結果、検出器や鏡の移動が無くなり、従来必要であった『差し替え』も不要となり、絶対反射率と絶対透過率のデータの再現性も向上し、測定誤差が小さくなる。
【0043】
(実験例)
対称X型光学系を用いた測定結果:
室温の純粋シリコン試料の透過率の測定結果を図3に示す。図中の2つの実線(ほとんど重なっている)が、それぞれ表面と裏面入射の透過率(T(FB)とT(BF))である。点線がデータブックから計算した透過率である。この結果、透過率が測定誤差±0.4%以内で測定できていることがわかる。この良い一致は、各々の透過率測定でバックグラウンド信号とサンプル信号で、同じ光路と同じミラーの組み合わせを使うからである。『対称X型光学系』で得られるこのような小さい測定誤差のために、光学測定の自己診断機能が有効に使える。
【0044】
同じ測定系で同じ試料の反射率を測定した結果を図4に示す。図中の上下の実線が、それぞれ表面と裏面入射の反射率(R(FF)とR(BB))である。ここで表面と裏面入射の反射率が大きくかけ離れている(±8%)。この理由は、次に述べるが、そこで幾何平均反射率の求め方も導くが、この幾何平均反射率(R(S))は真中付近の実線である。点線がデータブックから計算した曲線である。この幾何平均反射率と点線は、測定誤差±0.4%以内で一致している。
【0045】
表面入射と裏面入射の2つの反射率測定では、測定誤差が±8%程度と非常に大きな値であった。これは、主に以下の4つの理由による。
(1)市販の分光光度計の光源から出てビーム切換鏡RM1に入射する光が中心対称のガウスビームの形からずれていて、この光が対称X型光学系の鏡に入射したときにその一部の光が鏡面から外れてしまい反射されずにロスとなる。
(2)多くの鏡を対称X型光学系内に組み込むことで、光路の一部が別の鏡により遮蔽されてロスになる。
(3)反射率測定ではバックグラウンド測定とサンプル測定で別々の鏡の組を使いこれらの鏡の反射率が同じでない。
(4)市販の分光光度計の検出器の受光面より、この検出器に集光されたビームの径の方が大きいことによりにロスが発生する。
【0046】
上記理由(3)のために、図1と図2の各鏡と試料の反射率をそれぞれ、R(RM1) 、R(RM2)、R(SM1)、R(SM2)、R(SM3)、R(SM4)、R(CM1)、R(CM2)、R(CM3)、R(CM4)とR(S)と表す。試料室から検出器までの間の市販の分光光度計中の鏡の反射率をR(2)と表す。
【0047】
さらに、上記理由(1)、(2)と(4)のために、図1と図2で、ビーム切換鏡RM1に入射した光パワー(Pin)が、RM1、SM2、CM1で反射されてサンプルホルダーに届く割合をL1Fとし、一方RM1、SM1、CM2で反射されてサンプルホルダーに届く割合をL1Bとする。
【0048】
次にサンプルホルダーに入射した光が、CM3、SM4、RM2で反射された後に市販の分光光度計中の鏡で反射されて検出器で検出される割合をL2Fとし、一方CM4、SM3、RM2で反射された後に市販の分光光度計中のミラーで反射されて検出器で検出される割合をL2Bとする。
【0049】
表面入射のバックグラウンド信号測定の出力I0は、次の式で表される。
I0=Pin×R(RM1)×R(SM2)×R(CM1)×L1F×R(CM4)×R(SM3)×R(RM2)×L2B×R2
一方、裏面入射のバックグラウンド信号測定の出力I’0も同じようにして次の式で表される。
I’0=Pin×R(RM1)×R(SM1)×R(CM2)×L1B×R(CM3)×R(SM4)×R(RM2)×L2F×R(2)
【0050】
表面入射の反射のサンプル信号測定の出力Irは、次の式で表される。
Ir=Pin×R(RM1)×R(SM2)×R(CM1)×L1F×R(S)×R(CM3)×R(SM4)×R(RM2)×L2F×R(2)
そして、裏面入射の反射のサンプル信号測定の出力Ir’も同じようにして次の式で表される。
I’r=Pin×R(RM1)×R(SM1)×R(CM2)×L1B×R(S)×R(CM4)×R(SM3)×R(RM2)×L2B×R(2)
表面入射に対する反射率R(FF)を、Irと次の数式1の比として定義すると、次の数式2を得る。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
一方、裏面入射に対する反射率R(BB)を、Ir’と数式1の比として定義すると、次の数式3を得る。
【0054】
【数3】
【0055】
この結果から一般には、R(FF)≠R(BB)である。ここで、R(FF)とR(BB)の積はR(S)2に等しい。このことから、試料の絶対反射率R(S)は、実測の2つの反射率の幾何平均として、次の数式4が求まる。
【0056】
【数4】
【0057】
測定の結果図4中のR(FF)、R(BB)とR(S)は、それぞれ数式2、数式3と数式4とから求めた値である。
【0058】
装置関数:
市販の分光光度計に対称X型光学系を組み込んだ反射率測定では、上述の理由(段落0045参照)のために、光のロスが発生するので、一様な試料の表面入射と裏面入射で測定された反射率(R(FF)とR(BB))は一般に異なる。ここで、一様な試料の表面入射と裏面入射の反射率の比の平方根として定義される次のような数式5の関数IFを考える。
【0059】
【数5】
【0060】
この関数は、試料の光学的性質には依存していないので、装置関数と呼ぶことにする。
【0061】
表面と裏面の絶対反射率:
市販の分光光度計に対称X型光学系を組み込んだ反射率測定では、上述の理由(段落0045参照)のために、光のロスが発生する。一般の試料の表面入射と裏面入射で測定された反射率を、それぞれR(FF)とR(BB)とする。この試料の表面入射に対する絶対反射率RF(S)は、数式5に示す装置関数を使うと、次の数式6が求まり、裏面入射に対する絶対反射率RB(S)は数式7が求まる。
【0062】
【数6】
【0063】
【数7】
【0064】
理想的な一様な試料の場合には、この2つの絶対反射率RF(S)とRB(S)は等しい。実測の2つの絶対反射率(RF(S)とRB(S))の差を調べることで、光学測定の自己診断機能が有効に使える。一方、一様でない試料の時(例えば基板上の薄膜試料)は、RF(S)とRB(S)は一般に異なり、この2つ測定結果と絶対透過率の測定結果の3つを連立させることで、薄膜の光学定数と薄膜の厚さを決定することができる。
【0065】
以上実施例により本発明を説明したが、これらの実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術事項の範囲内でいろいろ実施例があることは言うまでもない。例えば、上記実施例では、分光光度計中に組み込んで用いた対称X型光学系について述べたが、図1と図2に示したように、光源部は、レーザーやマイクロ波光源でもよく、その光にあった光検出器を用いる。
【0066】
【発明の効果】
本発明にかかる対称X型光学系は以上のような構成であるから、今までに市販されている分光光度計に適した形に改造可能である。各分光器メーカーが自社分光光度計用に改造した製品を作ると期待できる。その結果、対称X型光学系は広く社会で使われ、社会・経済・学術の発展に役立つと期待できる。
【0067】
本発明にかかる対称X型光学系では、2つの絶対反射率と2つの絶対透過率を測定し、これらから測定誤差が求まる。この誤差の情報から、光学測定が正しく行われているかどうかを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1を説明する図であり、外部光源(例えばレーザやマイクロ波)と光検出器からなる系に、或いは分散型分光光度計又はフーリエ変換型分光光度計の光学系による焦点が、ビーム切換鏡上に一致しない時の対称X型光学系構成を説明する図である。
【図2】実施例2を説明する図であり、外部光源(例えばレーザやマイクロ波)と光検出器からなる系に、或いは分散型分光光度計又はフーリエ変換型分光光度計の光学系による焦点が、ビーム切換鏡上に一致している時の対称X型光学系構成を説明する図である。
【図3】本発明による光学系の実験例の純粋シリコン試料の透過率測定結果を示す図である。
【図4】本発明による光学系の実験例の純粋シリコン試料の反射率測定結果を示す図である。
【図5】従来のゴニオメトリック法による絶対反射率の測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
CM1、CM2、CM3、CM4 凹面鏡
SM1、SM2、SM3、SM4 補助鏡
RM1、RM2 ビーム切換鏡
SH 試料支持台
Claims (3)
- 試料に対して対称なX型に配置された4枚の凹面鏡及び4枚の補助鏡、並びに試料に対して入射側及び出射側に配置された2枚のビーム切換鏡から構成され、上記4枚の凹面鏡と上記4枚の補助鏡から選択された少なくとも4枚以上の鏡と、上記2枚のビーム切換鏡を組み合わせて絶対反射率と絶対透過率を同時に測定することが可能である対称X型光学系であって、
上記試料に対して表面と裏面からそれぞれ光を入射することにより、表面入射と裏面入射に対する絶対反射率及び表面入射と裏面入射に対する絶対透過率のいずれもが測定可能であることを特徴とする対称X型光学系。 - 上記光学系は、分散型分光光度計又はフーリエ変換型分光光度計に組み込めることを特徴とする対称X型光学系。
- 上記表面入射と裏面入射に対する絶対反射率及び表面入射と裏面入射に対する絶対透過率をそれぞれ比較して、測定誤差を求め、この誤差の情報から光学測定が正確に行われているかどうかを自己判断可能とすることを特徴とする対称X型光学系。
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