JP2004044723A - 変速機の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機の潤滑構造において、簡易な構成にて当該歯車に潤滑穴を形成することを可能とすることにある。
【解決手段】筒状の歯部をプレート11の外周端部で支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、プレート11の外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路11aを形成することを特徴とするものであり、この潤滑路11aによりリングギヤR1に潤滑穴14が構成される。これにより、筒状の歯部の曲面に潤滑穴を形成することを不要とすることができるから、簡易な構成にてリングギヤR1に潤滑穴を形成することができる。
【選択図】 図4
【解決手段】筒状の歯部をプレート11の外周端部で支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、プレート11の外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路11aを形成することを特徴とするものであり、この潤滑路11aによりリングギヤR1に潤滑穴14が構成される。これにより、筒状の歯部の曲面に潤滑穴を形成することを不要とすることができるから、簡易な構成にてリングギヤR1に潤滑穴を形成することができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動車用の自動変速機の歯車変速装置においては、図6に示すように、歯車変速装置内の潤滑のために、例えば遊星歯車組4に使用されるリングギヤRなどに代表されるように、筒状の歯部100をプレート101の外周端部で支持する歯車では、一般的に、筒状の歯部100に潤滑穴100aが形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような筒状の歯部に潤滑穴を設けるためには、歯車の外形を加工後に、穴あけ加工により曲面に潤滑穴を形成する必要があることから、加工が困難であるとともに工数も嵩むという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法において、簡易な構成にて当該歯車に潤滑穴を形成することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的のため本発明による変速機の潤滑構造は、請求項1に記載のごとく、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造において、前記プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成することを特徴とするものである。
【0006】
【発明の効果】
かかる本発明の構成によれば、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造において、当該プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成するから、例えばプレスでプレートを形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路の大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0007】
なお、本発明の変速機の潤滑構造は、請求項2に記載のように、前記潤滑路を、前記筒状の歯部に形成する潤滑穴に代えて設けても良く、このようにすれば、筒状の歯部の曲面に潤滑穴を形成することを不要とすることができる。従って、穴あけ加工工程を無くすことができて工数も削減することができる。
【0008】
また、本発明の変速機の潤滑構造の製造方法は、請求項3に記載のように、プレートの外周端部で筒状の歯部を支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、前記プレートがそのプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるように形成されるプレス工程と、前記プレートが前記歯車の筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられるプレート取付工程とを行なうことを特徴とするものである。
【0009】
かかる本発明の製造方法によれば、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、プレス工程で、当該プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成され、プレート取付工程で、プレートが歯車の筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられるから、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車の歯の形成およびプレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路の形成を容易に行なえる。しかも、プレス工程でプレートを形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路の大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0010】
また、本発明の変速機の潤滑構造は、請求項4に記載のように、本発明の変速機の潤滑構造プレートの外周端部で筒状の歯部を支持するリングギヤを具える変速機に用いられる潤滑構造において、前記プレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなる前記プレートが、前記リングギヤの筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられることを特徴とするものである。
【0011】
かかる本発明の変速機の潤滑構造によれば、プレス工程によりプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるように形成されたプレートが、リングギヤの筒状の歯部の内周面の一端に溶接により容易に取り付けられるとともに、プレス工程によりプレートを形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路の大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の変速機の潤滑構造の製造方法の一実施の形態により製造された、本発明の一実施の形態になる変速機の潤滑構造を具えた自動車用自動変速機の歯車変速機構を示し、図2は、その選択変速段と変速用摩擦要素の締結論理との関係を示す図面である。
【0013】
本実施の形態になる歯車変速機構は図1に示すように、入力軸1およびこれを取り巻くよう同軸に配置した中空の出力軸2を具え、入力軸1には図の右端から図示せざるエンジンの回転を入力する。そして、入出力軸1,2に同軸に配置してエンジンに近い側から順次ラビニョウ型プラネタリギヤセット3および減速用遊星歯車組4を設ける。
【0014】
減速用遊星歯車組4はサンギヤS1、リングギヤR1、およびこれらギヤに噛合したピニオンP1を回転自在に支持するキャリアC1とよりなる単純遊星歯車組とし、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3は、相互に噛合したロングピニオンP2およびショートピニオンP3と、ロングピニオンP2に噛合したサンギヤS2およびショートピニオンP3に噛合したサンギヤS3と、ロングピニオンP2に噛合したリングギヤR3と、ロングピニオンP2を回転自在に支持したキャリアC2と、ロングピニオンP2およびショートピニオンP3を回転自在に支持したキャリアC3とで構成する。ここで、キャリアC2およびキャリアC3は一体物とする。
【0015】
入力軸1から減速用遊星歯車組4およびラビニョウ型プラネタリギヤセット3を経由して出力軸2に至る伝動経路(選択変速段)を決定する変速用摩擦要素を以下に説明するに、入力軸1はリングギヤR1に結合し、出力軸2は一端をリングギヤR3に結合すると共に他端を出力歯車5に結合する。そして、サンギヤS1は変速機ケース6に常時固定し、キャリアC1をロークラッチL/CによりサンギヤS3に結合可能にすると共に3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/CによりサンギヤS2に結合可能にするほか、サンギヤS2を2速、6速ブレーキ2・6/Bにより変速機ケース6に固定可能とする。また、キャリアC2,C3はローワンウエイクラッチL/OWCによりエンジンと逆向きの回転を阻止すると共にローリバースブレーキLR/Bにより適宜に固定可能とし、更にハイクラッチH/Cにより適宜入力軸1に結合可能にする。
【0016】
上記の構成になる歯車変速機構においては、減速用遊星歯車組4が、エンジンからの入力回転を減速してキャリアC1に出力し、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3が減速用遊星歯車組4(キャリアC1)からの減速回転を後述のごとくに変速してリングギヤR3へ出力することにより多段変速が可能である。
【0017】
上記変速用摩擦要素、つまりロークラッチL/Cと、3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cと、2速、6速ブレーキ2・6/Bと、ローワンウエイクラッチL/OWCと、ローリバースブレーキLR/Bと、ハイクラッチH/Cは、図2に示す締結(○で示す)の組み合わせにより前進第1速〜第6速および後退の変速段を、以下に概略説明するごとくに選択することができる。
【0018】
第1速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち入力軸1の回転はリングギヤR1に伝達され、リングギヤR1は固定のサンギヤS1を反力受けとしてキャリアC1を入力回転と同じ方向へ減速下に回転させ、この減速回転をロークラッチL/CによりサンギヤS3に伝達する。
【0019】
サンギヤS3は、キャリアC2がローワンウエイクラッチL/OWCの係合によりエンジン回転と逆方向の回転を阻止されていて反力受けの用をなすため、ショートピニオンP3およびロングピニオンP2を介してリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ減速下に回転させ、前進第1速選択状態を実現することができる。
【0020】
この第1速選択状態では、エンジンブレーキを作用させるべき走行時にキャリアC2がエンジン回転と同じ方向に回転されて反力受けの用をなさなくなるためエンジンブレーキを作用させることができない。そこで第1速選択状態においてエンジンブレーキが必要な時は、図2に(○)で示すようにローリバースブレーキLR/Bを締結させてキャリアC2がエンジン回転と同じ方向にも回転しないようにし、これにより第1速でのエンジンブレーキが得られるようにする。
【0021】
第2速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/Cおよび2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1への入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、ロークラッチL/Cを経てサンギヤS3に達する。
【0022】
サンギヤS3は、サンギヤS2が2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結により回転を阻止されていて反力受けの用をなすため、ショートピニオンP3およびロングピニオンP2を介してリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ減速下に、しかし第1速選択時よりも高速で回転させ、前進第2速選択状態を実現することができる。
【0023】
第3速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/Cおよび3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、この減速回転はロークラッチL/Cを経てサンギヤS3に、また3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cを経てサンギヤS2にも達する。
【0024】
従ってサンギヤS2およびサンギヤS3は一体回転されることとなり、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にサンギヤS2およびサンギヤS3と同じ速度で、しかし第2速選択時よりも高速で回転させ、前進第3速選択状態を実現することができる。
【0025】
第4速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/CおよびハイクラッチH/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、これからの減速回転はロークラッチL/Cを経てサンギヤS3に達する。
【0026】
一方でハイクラッチH/Cの締結によりキャリアC3がエンジン回転と同速で回転されるため、サンギヤS3への減速回転とによりラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ、しかし第3速選択時よりも高速で回転させ、前進第4速選択状態を実現することができる。
【0027】
第5速の選択に際しては、図2に示すごとく3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/CおよびハイクラッチH/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、これからの減速回転は3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cを経てサンギヤS2に達する。
【0028】
一方でハイクラッチH/Cの締結によりキャリアC3がエンジン回転と同速で回転されるため、サンギヤS2への減速回転とによりラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ、しかし第4速選択時よりも高速で回転させ、前進第5速選択状態を実現することができる。
【0029】
第6速の選択に際しては、図2に示すごとくハイクラッチH/Cおよび2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、ハイクラッチH/Cの締結によりキャリアC3がエンジン回転と同速で回転され、2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結によりサンギヤS2が回転を阻止され反力要素として機能するため、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ、しかし第5速選択時よりも更に高速で回転させ、前進第6速選択状態を実現することができる。
【0030】
後退の選択に際しては、図2に示すごとく3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/CおよびローリバースブレーキLR/Bの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は遊星歯車組4により減速され、これからの減速回転は3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cを経てサンギヤS2に達する。
【0031】
一方でローリバースブレーキLR/Bの締結によりキャリアC2が回転を阻止され、反力要素として機能するため、サンギヤS2への減速回転がロングピニオンP2により反転されてリングギヤR3に達し、この逆回転を出力軸2および出力歯車5から取り出すことができ、後退選択状態を実現することができる。
【0032】
出力歯車5からの出力回転はカウンターギヤ7、カウンターシャフト8、ファイナルドライブギヤ組9およびディファレンシャルギヤ装置10を順次経て図示せざる左右駆動輪に伝達される。
【0033】
そして、本実施の形態の製造方法においては、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車として、上記した遊星歯車組4のリングギヤR1に本発明の着想を適用するものとして、このリングギヤR1を以下のように構成する。
【0034】
図3(a),(b)は、後述する図4に示すリングギヤR1の斜視図および(a)に示すリングギヤR1が具えるプレート11の正面図である。図3(a)に示すリングギヤR1が具えるプレート11は、プレス工程において、鋼板にプレス加工により形成されたものであり、図3(b)に示すように、このプレート11は、円環状であって、内周部が入力軸1にスプライン嵌合してその回転を伝達可能とされるとともに、その外周部にその厚さ方向に貫通する複数個(図では8個)の角形の潤滑路11aを外周縁に開口するように形成している。そして、前記プレス工程に引き続くプレート取付工程において、プレート11がリングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられて図3(a)に示すリングギヤR1が構成される。このように構成することにより、潤滑路11aの開口が筒状の歯部13の内周面で閉じられてリングギヤR1の潤滑穴14が構成される。なお、リングギヤR1の筒状の歯部13は、従来の一般的な加工方法により形成するが、前述のように筒状の歯部13の潤滑路11aでリングギヤR1に潤滑穴14を形成できるので、この筒状の歯部13には、従来一般的に形成していた潤滑穴を形成していない。
【0035】
従って、上記製造方法に製造された潤滑構造にあっては、プレート11の外周端部で筒状の歯部13を支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、プレート11の外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなるプレート11が、リングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられた構成となる。
【0036】
図4は、上記のように構成されたリングギヤR1を具えた歯車変速機構の一部を実態構成により示す断面図である。ここに示す構成は、先に図1において説明したように、サンギヤS1、リングギヤR1、ピニオンP1およびキャリアC1より成る減速用遊星歯車組4からの(詳しくはキャリアC1からの)減速回転を、ロークラッチL/Cが、その締結により、図1に示すラビニョウ型プラネタリギヤセット3のサンギヤS3へ伝達し、3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/C(図4では図示せず)が、遊星歯車組4(キャリアC1)からの減速回転を図1に示すラビニョウ型プラネタリギヤセット3のサンギヤS2へ伝達する。そして、減速用遊星歯車組4とロークラッチL/Cと後退用クラッチ3・5・R/Cとをクラッチドラム12により包套してユニット化して、このユニットを変速機ケース6(図4では図示せず)に収納して入力軸1上に配置する。
【0037】
そして、上記のように構成された歯車変速機構に油を潤滑させると、入力軸1から減速用遊星歯車組4に供給された油は、サンギヤS1、リングギヤR1、ピニオンP1およびキャリアC1を潤滑すると共に、図4中矢印で示すように、サンギヤS1の両端部のニードルベアリング15や、キャリアC1とプラネタリギヤP1との間に介挿されたピニオンワッシャー16等を潤滑した後、矢印αに示すように、潤滑路11aにより構成された潤滑穴14を通って、クラッチハブH4のスプライン溝g4やその他の部材を潤滑する。なお、本実施の形態においてはプレート11に代えて、プレート11の潤滑路11aの形状を図5に示すような外周に近づくにつれて広がりをもつ潤滑路17aのような形状に変更したプレート17を用いることもできる。
【0038】
従って、本実施の形態の変速機の潤滑構造によれば、リングギアR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、そのプレート11の外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路11aを形成しているから、プレス形状を変更することにより、潤滑路11aの大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴14の形や大きさの形成の自由度を増すことができる。
【0039】
さらに、本実施の形態の変速機の潤滑構造によれば、潤滑路11aを、筒状の歯部13に形成される潤滑穴に代えて設けているから、図3(a)に示すように筒状の歯部13の曲面に潤滑穴を形成することを不要とすることができる。従って、穴あけ加工工程を無くすことができて工数も削減することができる。
【0040】
また、本実施の形態の製造方法では、プレート11の外周端部で筒状の歯部13を支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、プレート11がそのプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるように形成されるプレス工程と、そのプレート11がリングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられるプレート取付工程とを行なう。従って、筒状の歯部13をプレート11の外周端部で支持するリングギヤR1の歯の形成およびプレート11の外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路11aの形成を容易に行なえる。しかも、プレス工程でプレート11を形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路11aの大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0041】
また、本実施の形態の変速機の潤滑構造にあっては、プレート11の外周端部で筒状の歯部13を支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、プレート11の外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなるプレート11が、リングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられる。このことから、プレス工程によりプレート11の外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるように形成されたプレート11が、リングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により容易に取り付けられるとともに、プレス工程によりプレート11を形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路11aの大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0042】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明の変速機の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法は、本実施の形態に示す構成のものに限られるものではない。例えば、本実施の形態では、プレート11の外周部の外周縁に開口するように潤滑路11aを形成しているが、外周部に形成したものであれば外周縁が開口する潤滑路に限られず外周縁が閉じた潤滑路、即ち、貫通穴により潤滑路を形成しても良い。また、本発明の潤滑構造を適用できる歯車は、上記実施の形態において適用したリングギヤR1に限られず、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車であれば良いので、例えばサンギヤ等のギヤが筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する構成のものであればこれにも本発明の潤滑構造を適用できるのは言うまでもない。また、上記実施の形態では、変速機として自動車用自動変速機に本発明の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法を適用しているがこれに限られず、上記筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機であれば適用できるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる変速機の潤滑構造を具えた自動車用自動変速機の変速歯車機構を模式的に示す略線図である。
【図2】同歯車変速機構における変速用摩擦要素の締結と選択変速段との関係を示す締結論理説明図である。
【図3】(a)は、上記実施の形態におけるリングギヤの斜視図であり、(b)は、(a)に示すリングギヤが具えるプレートの正面図である。
【図4】上記実施の形態におけるリングギヤを具えた歯車変速機構の一部を実態構成により示す断面図である。
【図5】上記実施の形態におけるプレートの変形例を示す正面図である。
【図6】従来の一般的な変速機の潤滑構造を説明するための自動車用自動変速機の潤滑構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 出力軸
3 ラビニョウ型プラネタリギヤセット
4 減速用遊星歯車組
5 出力歯車
6 変速機ケース
7 カウンターギヤ
8 カウンターシャフト
9 ファイナルドライブギヤ組
10 ディファレンシャルギヤ装置
11,17,101 プレート
11a 潤滑路
12 クラッチドラム
13,100 筒状の歯部
14,100a 潤滑穴
15 ニードルベアリング
16 ピニオンワッシャー
S1,S2,S3 サンギヤ
R,R1,R3 リングギヤ
P1 ピニオン
C1,C2,C3 キャリア
P2 ロングピニオン
P3 ショートピニオン
3・5・R/C 3速、5速、後退用クラッチ
2・6/B 2速、6速ブレーキ
L/OWC ローワンウエイクラッチ
LR/B ローリバースブレーキ
H/C ハイクラッチ
L/C ロークラッチ
H4 クラッチハブ
g4 スプライン溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動車用の自動変速機の歯車変速装置においては、図6に示すように、歯車変速装置内の潤滑のために、例えば遊星歯車組4に使用されるリングギヤRなどに代表されるように、筒状の歯部100をプレート101の外周端部で支持する歯車では、一般的に、筒状の歯部100に潤滑穴100aが形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような筒状の歯部に潤滑穴を設けるためには、歯車の外形を加工後に、穴あけ加工により曲面に潤滑穴を形成する必要があることから、加工が困難であるとともに工数も嵩むという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法において、簡易な構成にて当該歯車に潤滑穴を形成することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的のため本発明による変速機の潤滑構造は、請求項1に記載のごとく、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造において、前記プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成することを特徴とするものである。
【0006】
【発明の効果】
かかる本発明の構成によれば、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造において、当該プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成するから、例えばプレスでプレートを形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路の大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0007】
なお、本発明の変速機の潤滑構造は、請求項2に記載のように、前記潤滑路を、前記筒状の歯部に形成する潤滑穴に代えて設けても良く、このようにすれば、筒状の歯部の曲面に潤滑穴を形成することを不要とすることができる。従って、穴あけ加工工程を無くすことができて工数も削減することができる。
【0008】
また、本発明の変速機の潤滑構造の製造方法は、請求項3に記載のように、プレートの外周端部で筒状の歯部を支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、前記プレートがそのプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるように形成されるプレス工程と、前記プレートが前記歯車の筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられるプレート取付工程とを行なうことを特徴とするものである。
【0009】
かかる本発明の製造方法によれば、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、プレス工程で、当該プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成され、プレート取付工程で、プレートが歯車の筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられるから、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車の歯の形成およびプレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路の形成を容易に行なえる。しかも、プレス工程でプレートを形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路の大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0010】
また、本発明の変速機の潤滑構造は、請求項4に記載のように、本発明の変速機の潤滑構造プレートの外周端部で筒状の歯部を支持するリングギヤを具える変速機に用いられる潤滑構造において、前記プレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなる前記プレートが、前記リングギヤの筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられることを特徴とするものである。
【0011】
かかる本発明の変速機の潤滑構造によれば、プレス工程によりプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるように形成されたプレートが、リングギヤの筒状の歯部の内周面の一端に溶接により容易に取り付けられるとともに、プレス工程によりプレートを形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路の大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の変速機の潤滑構造の製造方法の一実施の形態により製造された、本発明の一実施の形態になる変速機の潤滑構造を具えた自動車用自動変速機の歯車変速機構を示し、図2は、その選択変速段と変速用摩擦要素の締結論理との関係を示す図面である。
【0013】
本実施の形態になる歯車変速機構は図1に示すように、入力軸1およびこれを取り巻くよう同軸に配置した中空の出力軸2を具え、入力軸1には図の右端から図示せざるエンジンの回転を入力する。そして、入出力軸1,2に同軸に配置してエンジンに近い側から順次ラビニョウ型プラネタリギヤセット3および減速用遊星歯車組4を設ける。
【0014】
減速用遊星歯車組4はサンギヤS1、リングギヤR1、およびこれらギヤに噛合したピニオンP1を回転自在に支持するキャリアC1とよりなる単純遊星歯車組とし、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3は、相互に噛合したロングピニオンP2およびショートピニオンP3と、ロングピニオンP2に噛合したサンギヤS2およびショートピニオンP3に噛合したサンギヤS3と、ロングピニオンP2に噛合したリングギヤR3と、ロングピニオンP2を回転自在に支持したキャリアC2と、ロングピニオンP2およびショートピニオンP3を回転自在に支持したキャリアC3とで構成する。ここで、キャリアC2およびキャリアC3は一体物とする。
【0015】
入力軸1から減速用遊星歯車組4およびラビニョウ型プラネタリギヤセット3を経由して出力軸2に至る伝動経路(選択変速段)を決定する変速用摩擦要素を以下に説明するに、入力軸1はリングギヤR1に結合し、出力軸2は一端をリングギヤR3に結合すると共に他端を出力歯車5に結合する。そして、サンギヤS1は変速機ケース6に常時固定し、キャリアC1をロークラッチL/CによりサンギヤS3に結合可能にすると共に3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/CによりサンギヤS2に結合可能にするほか、サンギヤS2を2速、6速ブレーキ2・6/Bにより変速機ケース6に固定可能とする。また、キャリアC2,C3はローワンウエイクラッチL/OWCによりエンジンと逆向きの回転を阻止すると共にローリバースブレーキLR/Bにより適宜に固定可能とし、更にハイクラッチH/Cにより適宜入力軸1に結合可能にする。
【0016】
上記の構成になる歯車変速機構においては、減速用遊星歯車組4が、エンジンからの入力回転を減速してキャリアC1に出力し、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3が減速用遊星歯車組4(キャリアC1)からの減速回転を後述のごとくに変速してリングギヤR3へ出力することにより多段変速が可能である。
【0017】
上記変速用摩擦要素、つまりロークラッチL/Cと、3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cと、2速、6速ブレーキ2・6/Bと、ローワンウエイクラッチL/OWCと、ローリバースブレーキLR/Bと、ハイクラッチH/Cは、図2に示す締結(○で示す)の組み合わせにより前進第1速〜第6速および後退の変速段を、以下に概略説明するごとくに選択することができる。
【0018】
第1速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち入力軸1の回転はリングギヤR1に伝達され、リングギヤR1は固定のサンギヤS1を反力受けとしてキャリアC1を入力回転と同じ方向へ減速下に回転させ、この減速回転をロークラッチL/CによりサンギヤS3に伝達する。
【0019】
サンギヤS3は、キャリアC2がローワンウエイクラッチL/OWCの係合によりエンジン回転と逆方向の回転を阻止されていて反力受けの用をなすため、ショートピニオンP3およびロングピニオンP2を介してリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ減速下に回転させ、前進第1速選択状態を実現することができる。
【0020】
この第1速選択状態では、エンジンブレーキを作用させるべき走行時にキャリアC2がエンジン回転と同じ方向に回転されて反力受けの用をなさなくなるためエンジンブレーキを作用させることができない。そこで第1速選択状態においてエンジンブレーキが必要な時は、図2に(○)で示すようにローリバースブレーキLR/Bを締結させてキャリアC2がエンジン回転と同じ方向にも回転しないようにし、これにより第1速でのエンジンブレーキが得られるようにする。
【0021】
第2速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/Cおよび2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1への入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、ロークラッチL/Cを経てサンギヤS3に達する。
【0022】
サンギヤS3は、サンギヤS2が2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結により回転を阻止されていて反力受けの用をなすため、ショートピニオンP3およびロングピニオンP2を介してリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ減速下に、しかし第1速選択時よりも高速で回転させ、前進第2速選択状態を実現することができる。
【0023】
第3速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/Cおよび3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、この減速回転はロークラッチL/Cを経てサンギヤS3に、また3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cを経てサンギヤS2にも達する。
【0024】
従ってサンギヤS2およびサンギヤS3は一体回転されることとなり、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にサンギヤS2およびサンギヤS3と同じ速度で、しかし第2速選択時よりも高速で回転させ、前進第3速選択状態を実現することができる。
【0025】
第4速の選択に際しては、図2に示すごとくロークラッチL/CおよびハイクラッチH/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、これからの減速回転はロークラッチL/Cを経てサンギヤS3に達する。
【0026】
一方でハイクラッチH/Cの締結によりキャリアC3がエンジン回転と同速で回転されるため、サンギヤS3への減速回転とによりラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ、しかし第3速選択時よりも高速で回転させ、前進第4速選択状態を実現することができる。
【0027】
第5速の選択に際しては、図2に示すごとく3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/CおよびハイクラッチH/Cの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は第1速選択時と同様にして遊星歯車組4により減速され、これからの減速回転は3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cを経てサンギヤS2に達する。
【0028】
一方でハイクラッチH/Cの締結によりキャリアC3がエンジン回転と同速で回転されるため、サンギヤS2への減速回転とによりラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ、しかし第4速選択時よりも高速で回転させ、前進第5速選択状態を実現することができる。
【0029】
第6速の選択に際しては、図2に示すごとくハイクラッチH/Cおよび2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、ハイクラッチH/Cの締結によりキャリアC3がエンジン回転と同速で回転され、2速、6速ブレーキ2・6/Bの締結によりサンギヤS2が回転を阻止され反力要素として機能するため、ラビニョウ型プラネタリギヤセット3はリングギヤR3を出力軸2および出力歯車5と共にエンジン回転と同じ方向へ、しかし第5速選択時よりも更に高速で回転させ、前進第6速選択状態を実現することができる。
【0030】
後退の選択に際しては、図2に示すごとく3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/CおよびローリバースブレーキLR/Bの締結により以下の伝動経路に沿い動力伝達を行わせる。すなわち、軸1の入力回転は遊星歯車組4により減速され、これからの減速回転は3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/Cを経てサンギヤS2に達する。
【0031】
一方でローリバースブレーキLR/Bの締結によりキャリアC2が回転を阻止され、反力要素として機能するため、サンギヤS2への減速回転がロングピニオンP2により反転されてリングギヤR3に達し、この逆回転を出力軸2および出力歯車5から取り出すことができ、後退選択状態を実現することができる。
【0032】
出力歯車5からの出力回転はカウンターギヤ7、カウンターシャフト8、ファイナルドライブギヤ組9およびディファレンシャルギヤ装置10を順次経て図示せざる左右駆動輪に伝達される。
【0033】
そして、本実施の形態の製造方法においては、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車として、上記した遊星歯車組4のリングギヤR1に本発明の着想を適用するものとして、このリングギヤR1を以下のように構成する。
【0034】
図3(a),(b)は、後述する図4に示すリングギヤR1の斜視図および(a)に示すリングギヤR1が具えるプレート11の正面図である。図3(a)に示すリングギヤR1が具えるプレート11は、プレス工程において、鋼板にプレス加工により形成されたものであり、図3(b)に示すように、このプレート11は、円環状であって、内周部が入力軸1にスプライン嵌合してその回転を伝達可能とされるとともに、その外周部にその厚さ方向に貫通する複数個(図では8個)の角形の潤滑路11aを外周縁に開口するように形成している。そして、前記プレス工程に引き続くプレート取付工程において、プレート11がリングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられて図3(a)に示すリングギヤR1が構成される。このように構成することにより、潤滑路11aの開口が筒状の歯部13の内周面で閉じられてリングギヤR1の潤滑穴14が構成される。なお、リングギヤR1の筒状の歯部13は、従来の一般的な加工方法により形成するが、前述のように筒状の歯部13の潤滑路11aでリングギヤR1に潤滑穴14を形成できるので、この筒状の歯部13には、従来一般的に形成していた潤滑穴を形成していない。
【0035】
従って、上記製造方法に製造された潤滑構造にあっては、プレート11の外周端部で筒状の歯部13を支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、プレート11の外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなるプレート11が、リングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられた構成となる。
【0036】
図4は、上記のように構成されたリングギヤR1を具えた歯車変速機構の一部を実態構成により示す断面図である。ここに示す構成は、先に図1において説明したように、サンギヤS1、リングギヤR1、ピニオンP1およびキャリアC1より成る減速用遊星歯車組4からの(詳しくはキャリアC1からの)減速回転を、ロークラッチL/Cが、その締結により、図1に示すラビニョウ型プラネタリギヤセット3のサンギヤS3へ伝達し、3速、5速、後退用クラッチ3・5・R/C(図4では図示せず)が、遊星歯車組4(キャリアC1)からの減速回転を図1に示すラビニョウ型プラネタリギヤセット3のサンギヤS2へ伝達する。そして、減速用遊星歯車組4とロークラッチL/Cと後退用クラッチ3・5・R/Cとをクラッチドラム12により包套してユニット化して、このユニットを変速機ケース6(図4では図示せず)に収納して入力軸1上に配置する。
【0037】
そして、上記のように構成された歯車変速機構に油を潤滑させると、入力軸1から減速用遊星歯車組4に供給された油は、サンギヤS1、リングギヤR1、ピニオンP1およびキャリアC1を潤滑すると共に、図4中矢印で示すように、サンギヤS1の両端部のニードルベアリング15や、キャリアC1とプラネタリギヤP1との間に介挿されたピニオンワッシャー16等を潤滑した後、矢印αに示すように、潤滑路11aにより構成された潤滑穴14を通って、クラッチハブH4のスプライン溝g4やその他の部材を潤滑する。なお、本実施の形態においてはプレート11に代えて、プレート11の潤滑路11aの形状を図5に示すような外周に近づくにつれて広がりをもつ潤滑路17aのような形状に変更したプレート17を用いることもできる。
【0038】
従って、本実施の形態の変速機の潤滑構造によれば、リングギアR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、そのプレート11の外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路11aを形成しているから、プレス形状を変更することにより、潤滑路11aの大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴14の形や大きさの形成の自由度を増すことができる。
【0039】
さらに、本実施の形態の変速機の潤滑構造によれば、潤滑路11aを、筒状の歯部13に形成される潤滑穴に代えて設けているから、図3(a)に示すように筒状の歯部13の曲面に潤滑穴を形成することを不要とすることができる。従って、穴あけ加工工程を無くすことができて工数も削減することができる。
【0040】
また、本実施の形態の製造方法では、プレート11の外周端部で筒状の歯部13を支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、プレート11がそのプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるように形成されるプレス工程と、そのプレート11がリングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられるプレート取付工程とを行なう。従って、筒状の歯部13をプレート11の外周端部で支持するリングギヤR1の歯の形成およびプレート11の外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路11aの形成を容易に行なえる。しかも、プレス工程でプレート11を形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路11aの大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0041】
また、本実施の形態の変速機の潤滑構造にあっては、プレート11の外周端部で筒状の歯部13を支持するリングギヤR1を具える変速機に用いられる潤滑構造において、プレート11の外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなるプレート11が、リングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により取り付けられる。このことから、プレス工程によりプレート11の外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路11aを外周縁に開口されるように形成されたプレート11が、リングギヤR1の筒状の歯部13の内周面の一端に溶接により容易に取り付けられるとともに、プレス工程によりプレート11を形成するに際し、プレス形状を変更することにより、潤滑路11aの大きさの調整が容易にでき、これにより構成される潤滑穴の形や大きさの自由度を増すことができる。
【0042】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明の変速機の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法は、本実施の形態に示す構成のものに限られるものではない。例えば、本実施の形態では、プレート11の外周部の外周縁に開口するように潤滑路11aを形成しているが、外周部に形成したものであれば外周縁が開口する潤滑路に限られず外周縁が閉じた潤滑路、即ち、貫通穴により潤滑路を形成しても良い。また、本発明の潤滑構造を適用できる歯車は、上記実施の形態において適用したリングギヤR1に限られず、筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車であれば良いので、例えばサンギヤ等のギヤが筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する構成のものであればこれにも本発明の潤滑構造を適用できるのは言うまでもない。また、上記実施の形態では、変速機として自動車用自動変速機に本発明の潤滑構造およびその潤滑構造の製造方法を適用しているがこれに限られず、上記筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機であれば適用できるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる変速機の潤滑構造を具えた自動車用自動変速機の変速歯車機構を模式的に示す略線図である。
【図2】同歯車変速機構における変速用摩擦要素の締結と選択変速段との関係を示す締結論理説明図である。
【図3】(a)は、上記実施の形態におけるリングギヤの斜視図であり、(b)は、(a)に示すリングギヤが具えるプレートの正面図である。
【図4】上記実施の形態におけるリングギヤを具えた歯車変速機構の一部を実態構成により示す断面図である。
【図5】上記実施の形態におけるプレートの変形例を示す正面図である。
【図6】従来の一般的な変速機の潤滑構造を説明するための自動車用自動変速機の潤滑構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 出力軸
3 ラビニョウ型プラネタリギヤセット
4 減速用遊星歯車組
5 出力歯車
6 変速機ケース
7 カウンターギヤ
8 カウンターシャフト
9 ファイナルドライブギヤ組
10 ディファレンシャルギヤ装置
11,17,101 プレート
11a 潤滑路
12 クラッチドラム
13,100 筒状の歯部
14,100a 潤滑穴
15 ニードルベアリング
16 ピニオンワッシャー
S1,S2,S3 サンギヤ
R,R1,R3 リングギヤ
P1 ピニオン
C1,C2,C3 キャリア
P2 ロングピニオン
P3 ショートピニオン
3・5・R/C 3速、5速、後退用クラッチ
2・6/B 2速、6速ブレーキ
L/OWC ローワンウエイクラッチ
LR/B ローリバースブレーキ
H/C ハイクラッチ
L/C ロークラッチ
H4 クラッチハブ
g4 スプライン溝
Claims (4)
- 筒状の歯部をプレートの外周端部で支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造において、
前記プレートの外周部にその厚さ方向に貫通する潤滑路を形成することを特徴とする変速機の潤滑構造。 - 請求項1において、前記潤滑路を、前記筒状の歯部に形成する潤滑穴に代えて設けることを特徴とする変速機の潤滑構造。
- プレートの外周端部で筒状の歯部を支持する歯車を具える変速機に用いられる潤滑構造の製造方法において、
前記プレートがそのプレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるように形成されるプレス工程と、
前記プレートが前記歯車の筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられるプレート取付工程と、
を行なうことを特徴とする変速機の潤滑構造の製造方法。 - プレートの外周端部で筒状の歯部を支持するリングギヤを具える変速機に用いられる潤滑構造において、
前記プレートの外周部に厚さ方向に貫通する潤滑路を外周縁に開口されるようにプレス工程により形成されてなる前記プレートが、前記リングギヤの筒状の歯部の内周面の一端に溶接により取り付けられることを特徴とする変速機の潤滑構造。
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