JP2004043961A - 高温強度に優れた490MPa級高張力鋼ならびにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼成分が質量%で、C:0.005%以上0.04%未満、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Mo:0.3〜1.5%、Nb:0.03〜0.15%、B:0.0005〜0.003%、Al:0.06%以下、N:0.006%以下、かつ、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。さらに、常温の降伏応力により高温時の降伏応力を無次元化した高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、鋼材温度T(℃)が600℃以上800℃以下の範囲で、p≧−0.0033×T+2.80を満足することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築、土木、海洋構造物、造船、貯槽タンクなどの一般的な構造物に用いる600℃以上800℃以下の温度範囲において、1時間程度の比較的短時間における高温強度が優れた低合金炭素添加の建築構造用高張力鋼(鋼板、鋼管、形鋼、線材)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、建築、土木などの分野においては、各種建築用鋼材として、JIS等で規格化された鋼材等が広く利用されている。なお、一般の建築構造用鋼材は、約350℃から強度低下するため、その許容温度は約500℃となっている。
【0003】
すなわち、ビルや事務所、住居、立体駐車場などの建築物に前記の鋼材を用いた場合は、火災における安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すことが義務付けられており、建築関連諸法令では、火災時に鋼材温度が350℃以上にならないように規定されている。
【0004】
これは、前記鋼材では、350℃程度で耐力が常温の2/3程度になり、必要な強度を下回るためである。鋼材を建造物に利用する場合、火災時において鋼材の温度が350℃に達しないように耐火被覆を施して使用される。そのため、鋼材費用に対して耐火被覆工費が高額となり、建設コストが大幅に上昇することが避けられない。
【0005】
上記の課題を解決するため、高温耐力を備えた耐火鋼が開発されている。
【0006】
600℃以上での高温強度がある鋼の場合、一般に耐火鋼と呼称されており、600℃で常温降伏強度の2/3以上の高温強度を有する耐火鋼(例えば、特許文献1参照)や、700℃で高温強度が優れた耐火鋼(例えば、特許文献2参照)が提案されている。その他の600℃耐火鋼に関する発明の例でも、600℃での降伏強度を常温降伏強度の2/3以上とすることが一般的となっている。
【0007】
しかしながら、700℃耐火鋼、800℃耐火鋼は、現時点では高温強度の設定(常温降伏強度との比率)に一般則が見られない。例えば、特許文献1では、相当量のMoとNbを添加した鋼で、600℃の耐力が常温耐力の70%以上を確保するものであるが、700℃〜800℃の耐力は示されていない。また、600℃の耐力が常温耐力の70%程度では、火災時の温度上昇を考慮すると、耐火被覆量の低減は可能であるものの、省略が可能となる建造物は立体駐車場やアトリウムなどの開放的空間に限定されるため、無耐火被覆での使用は著しく限定される。
【0008】
また、特許文献2では、相当量のMoとNbを添加した鋼でミクロ組織をベイナイトとすることにより、700℃の耐力が常温耐力の56%以上を確保するものであるが、800℃の耐力は示されていない。
【0009】
すなわち、これらの例のように600℃程度の高温強度を確保した鋼は、すでに市場でも使用されており、700℃で一定の強度を確保する鋼材の発明がなされているが、700℃〜800℃での高温強度を確保できる実用鋼の安定的な製造は困難であった。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−77523号公報
【特許文献2】
特開平10−68044号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように建築物に鋼材を利用する場合、通常の鋼では高温強度が低いため、無被覆や耐火被覆軽減で利用することができず、高価な耐火被覆を施さなければならなかった。
【0012】
また、新しく開発された鋼でも、耐火温度は600〜700℃までの保証が限界であり、700℃〜800℃での無耐火被覆使用およびこれによる耐火被覆工程の省略が可能となる鋼材の開発が望まれていた。
【0013】
本発明の目的は600℃以上800℃以下の温度範囲における高温強度及び溶接性に優れた高張力鋼及び当該鋼を工業的に安定して供給可能な製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を克服するために、ミクロ組織と添加合金元素量等を最適範囲とすることで目的を達成したもので、その要旨は以下に示す通りである。
【0015】
(1) 鋼成分が質量%で、
C:0.005%以上0.04%未満、
Si:0.5%以下、
Mn:0.1%以上0.5%以下、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Mo:0.3〜1.5%、
Nb:0.03〜0.15%、
B:0.0005〜0.003%、
Al:0.06%以下、
N:0.006%以下、
かつ、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0016】
(2) 質量%で、更に、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜1.0%、
Ti:0.005〜0.025%、
V:0.01〜0.1%
の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0017】
(3) 質量%で、更に、
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.004%、
Mg:0.0001〜0.006%
のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0018】
(4) 常温の降伏応力により高温時の降伏応力を無次元化した高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、鋼材温度T(℃)が600℃以上800℃以下の範囲で、p≧−0.0033×T+2.80を満足することを特徴とする上記(1)〜(3)の内のいずれかに記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0019】
(5) 常温においてフェライト及びベイナイトの混合組織であり、火災相当の高温加熱時に、オーステナイトに逆変態する温度(Ac1)が800℃超であることを特徴とする上記(1)〜(4)の内のいずれかに記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0020】
(6) フェライト及びベイナイトの混合母相組織中で高温において熱力学的に安定な炭窒化析出相をモル分率にて5×10− 4以上保持するとともに、BCC相中に固溶するMo、Nbの合計量がモル濃度にて2×10− 3以上であることを特徴とする上記(5)に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0021】
(7) フェライト及びベイナイトの混合母相組織中で高温において熱力学的に安定な炭窒化析出相をモル分率にて5×10−4以上保持するとともに、BCC相中に固溶するMo、Nb、V、Tiの合計量がモル濃度にて2×10−3以上であることを特徴とする上記(5)に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0022】
(8) フェライトとベイナイトの混合組織として、ベイナイトの分率が20〜90%であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
【0023】
(9) 上記(1)〜(3)の内のいずれか1項に記載の鋼成分からなり、
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+
Mo/15+V/10+5B
と定義する溶接割れ感受性組成PCMが0.18%以下であることを特徴とする高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼。
【0024】
(10) 上記(4)〜(7)の内のいずれか1項に記載の特徴を有するとともに、フェライトとベイナイトの混合組織として、ベイナイトの分率が20〜90%であることを特徴とする上記(9)記載の高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼。
【0025】
(11) 旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることを特徴とする上記(9)または(10)記載の高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼。
【0026】
(12) 上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする高温強度に優れた490MPa級高張力鋼の製造方法。
【0027】
(13) 上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks−1以上として、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする上記(4)〜(7)のいずれか1項に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼の製造方法。
【0028】
(14) 上記(8)に記載の鋼成分からなる鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼の製造方法。
【0029】
(15) 上記(8)に記載の鋼成分からなる鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks−1以上として、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする上記(10)または(11)記載の高温強度及び溶接性に優れた低降伏比490MPa級高張力鋼の製造方法。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0031】
本発明者らはすでに、600℃、700℃の高温強度が優れた鋼を見出した。600℃の高温強度が優れた鋼はすでに建築分野で使用されているが、市場では更に高温に耐える鋼への極めて強い要求がある。
【0032】
高温強度増加に対しては、Mo、Nbの複合添加により高温にて安定な炭窒化物の析出を促進するとともに、ミクロ組織のベイナイト化により転位密度の増大し、さらには固溶Mo及びNbにより転位回復の遅延を図ることが有効である。しかし、硬質ベイナイトの分率が過剰であると、常温の強度が過大となるため、所要の常温強度に応じて、ミクロ組織を適切なベイナイト分率を有するフェライトとベイナイトの混合組織とする。適切なミクロ組織を造り込み、所要の常温強度範囲を達成するには低C化が有効である。低C化は、フェライトとベイナイトの混合母相組織の高温における熱力学的安定性を高め、オーステナイトへの逆変態温度(Ac1)を上昇させる効果も持つ。しかし、この場合、ミクロ組織及び材質が圧延条件とその後の冷却条件により影響を受けやすく、安定的な製造が困難であることが判明した。ミクロ組織制御と高温強度の増加に取り組んだ結果、適量のB添加が製造安定化に有効であることを知見し、本発明に至った。
【0033】
一般的な溶接構造用鋼として、溶接性や低降伏強度比等の特性は、従来と同様に具備する必要があるため、700℃〜800℃の高温強度が優れた鋼は極めて困難な課題であった。この課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討し、700℃、800℃の高温強度はMo、Nb、V、Ti等の合金元素の複合添加による析出強化とミクロ組織のベイナイト化による転位密度の増大、さらには固溶Mo、Nb、V、Tiによる転位回復遅延が有効であり、Tiも若干の効果があることを突き止めた。従って、700℃〜800℃の強度と常温の強度、常温と高温の強度比(YS比=高温強度/常温強度)の全てを同時に確保するためには、ミクロ組織を適切なフェライトとベイナイトの混合組織とするとともに、添加合金元素量を最適範囲として、高温における母相組織の熱的安定性と適切な整合析出強化効果及び転位回復遅延効果を得ることが重要であることを見出した。
【0034】
鋼材の降伏強度は、一般に450℃近傍から急激に低下するが、これは、温度上昇に伴い熱活性化エネルギーが低下し、転位のすべり運動に対して低温では有効であった抵抗が無効となるためである。本発明者らはMo、Nb、V、Tiの複合炭窒化物は、転位のすべり運動に対して600℃程度の高温まで有効な抵抗として作用することを見出した。さらに、BCC相中に固溶したMo、Nb、V、Tiは、転位回復遅延に対して有効であり、降伏強度の急激な低下が始まる温度を高温化する効果を持つことを知見するに至った。したがって、700℃〜800℃において、鋼材温度をT(℃)として、高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、p≧−0.0033×T+2.80を満足する、すなわち、降伏応力比がそれぞれ49%、16%以上となるためには、当該温度における鋼中に成分元素として含有されるMo、Nb、V、Tiの複合炭窒化物はモル分率にて5×10−4以上であるとともに、BCC相中に固溶する成分元素であるMo、Nb、V、Tiの合計量がモル濃度にて2×10−3以上でなければならない。
【0035】
高温強度発現に重要である複合炭窒化析出相の組成は、例えば電子顕微鏡やEDXによる分析により容易に同定可能である。
【0036】
また、熱力学的に安定な析出相の平衡生成量及びBCC相中の固溶合金元素量については、市販の熱力学計算データベースソフト等利用することにより、添加合金元素量より容易に算出可能である。
【0037】
ミクロ組織におけるフェライトの分率が増加し、ベイナイトの分率が20%未満に低下すると、常温及び高温の強度が低下し、Mo、Nb、Ti、V等の合金元素をより多く添加する必要が生じる。ミクロ組織に占めるフェライトの分率が過大となると、添加合金元素の増加による常温及び高温の強度確保は困難になる。逆にミクロ組織におけるフェライトの分率が低下し、ベイナイトの分率が増加すると常温及び高温の強度が上昇し、Mo、Nb、Ti、V等の合金元素添加量を低減する必要が生じる。さらに、ミクロ組織に占めるベイナイト分率が90%を超え過大となると、高温強度については達成可能であるが、常温強度の上昇、HAZ靭性の劣化、溶接性の劣化が顕著となり添加合金元素の低減による所要の強度範囲、HAZ靭性及び溶接性の確保が困難となる。
【0038】
このため、本発明鋼ではミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とし、ベイナイトの分率を20%〜90%の範囲内とするが、30〜70%の範囲内とすることが好ましい。
【0039】
本発明者らは、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とし、かつ、ベイナイト分率を安定的に20〜90%の範囲に保つ方法について検討し、適量のB添加が必須であることを見出した。
【0040】
本発明が、請求項の通りに鋼成分および製造方法を限定した理由について説明する。
【0041】
常温と高温の強度を同時に確保するためには、相当量の合金元素の添加が必要であり、490MPa級高張力鋼では、Mo:0.3〜1.5%、Nb:0.03〜0.15%が必要である。
【0042】
また、高温強度の向上に対して、さらに、Ti:0.005〜0.025%、V:0.01〜0.1%の範囲の添加が有効である。
【0043】
Mo、Nb、Ti、V等は主に高温強度の確保のためであり、SiとMnの範囲限定は常温強度を所定の範囲に抑制するためである。
【0044】
鋼の加熱温度はMo、Nb、Ti、Vをできるだけ固溶状態とするために高い温度が望ましいが、母材の靭性確保の観点から1100〜1250℃に限定した。
【0045】
圧延終了温度を1100℃以下で850℃以上としたのは、低温域の圧下でMo、Nb、Ti、Vが炭化物として析出するため850℃が下限の温度であり、また、1100℃を超える温度で圧延を終了すると靭性が不足するためである。
【0046】
なお、本発明鋼を製造後、脱水素などの目的でAc1変態点以下の温度に再加熱しても、本発明鋼の特徴は何ら損なわれることはない。
【0047】
次に、本説明に関わるその他の成分元素とその添加量について説明する。
【0048】
Cは、鋼材の特性に最も顕著な効果を及ぼすもので、狭い範囲に制御されなければならない。0.005以上0.04%未満が限定範囲である。0.005%未満のC量では強度が不足し、0.04%以上となると圧延終了後の冷却速度が過大の場合はベイナイトの生成分率が増加し強度が超過、逆に冷却速度が過小の場合はベイナイトの生成分率が低下して強度が不足する。さらに、火災相当の高温加熱時に、フェライトとベイナイトの混合母相組織を熱力学的に安定に保ち、Mo、Nb、V、Tiの複合炭窒化析出物との整合性を維持して、強化効果を確保する上でもCを0.04%未満とする必要がある。
【0049】
Siは、脱酸上鋼に含まれる元素であり、置換型の固溶強化作用を持つことから常温での母材強度向上に有効であるが、特に600℃超の高温強度を改善する効果はない。また、多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化するため、上限を0.5%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alのみでも可能であり、HAZ靭性、焼入性などの観点から低いほど好ましく、必ずしも添加する必要はない。
【0050】
Mnは、強度、靭性を確保する上で不可欠な元素ではあるが、置換型の固溶強化元素であるMnは、常温での強度上昇には有効であるが、特に600℃超の高温強度にはあまり大きな改善効果はない。したがって、本発明のような比較的多量のMoを含有する鋼において溶接性向上すなわちPCM低減の観点から0.9%以下とする必要がある。さらに、建築用490MPa級高張力鋼に対しては、常温強度上限を考慮し、0.5%以下に限定した。Mnの上限を低く抑えることにより、連続鋳造スラブの中心偏析の点からも有利となる。なお、下限については、母材の強度、靭性調整上、0.1%以上の添加が必要である。したがって、Mnは0.1〜0.5%の範囲とした。
【0051】
また、常温の降伏強度及び引張り強度を490MPa級高張力鋼の所要範囲とするためには、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks−1以上とする必要がある。すなわち、約25mm未満の比較的薄い鋼板は空冷または加速冷却(水冷)プロセスにて、約25mm超の比較的厚い鋼板は加速冷却(水冷)プロセスを適用して製造することができる。
【0052】
Pは、本発明鋼においては不純物であり、P量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.02%とした。
【0053】
Sは、Pと同様本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.01%とした。
【0054】
Moは、700℃、800℃の高温強度を確保する上で必要不可欠の元素で、本発明においては最も重要な元素の一つである。高温強度のみの考慮であれば、下限の緩和は可能であるが、後述する低降伏比化の観点から、フェライト+オーステナイトの二相域熱処理、およびその後必要に応じ焼き戻しを行っても、なお常温での高強度、高靭性を確保するため、下限を0.3%とした。一方、1.5%超の添加は、母材材質の制御(ばらつきの制御や靭性の劣化)が困難になるとともに、経済性を失するため、0.3〜1.5%が限定範囲である。
【0055】
Nbは、Moを比較的多量添加する本発明においては、700℃、800℃の高温強度を確保するために重要な役割を演ずる元素である。まず、一般的な効果として、オーステナイトの再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮する上で有用な元素である。また、圧延に先立つ再加熱や焼きならしや焼き入れ時の加熱オーステナイトの細粒化にも寄与する。さらに、析出強化及び転位回復抑制による高温強度向上効果を有し、Moとの複合添加により高温強度向上に寄与する。0.03%未満では700℃及び800℃における析出硬化及び転位回復抑制の効果が少なく、0.15%を超えると添加量に対し効果の度合いが減少し、経済的にも好ましくない。また、溶接時の靭性も低下する。よって0.03〜0.15%が限定範囲である。
【0056】
Bは、ベイナイトの生成分率を介して強度を制御する上で極めて重要である。すなわち、Bはオーステナイト粒界に偏析してフェライトの生成を抑制することを介して焼入性を向上させ、空冷のような冷却速度が比較的小さい場合においてもベイナイトを安定的に生成させるのに有効である。この効果を享受するため、最低0.0005%以上必要である。しかし、多すぎる添加は焼入性向上効果が飽和するだけでなく、旧オーステナイト粒界の脆化や靭性上有害となるB析出物を形成する可能性があるため、上限を0.003%とした。なお、タンク用鋼などとして、応力腐食割れが懸念されるケースでは、母材および溶接熱影響部の硬さの低減がポイントとなることが多く(例えば、硫化物応力腐食割れ(SCC)防止のためにはHRC≦22(HV≦248)が必須とされる)、そのようなケースでは焼入性を増大させる過剰なB添加は好ましくない。
【0057】
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない(0%を含む)。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.06%とした。
【0058】
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、後述するTiやNbを添加した場合、TiNを形成して鋼の性質を高め、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させる。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加はHAZ靭性、溶接性に極めて有害であり、本発明鋼においてはその上限は0.006%である。
【0059】
次に、必要に応じて含有することができるNi、Cu、Cr、Ti、V、Ca、REM、Mgの添加理由と添加量範囲について説明する。
【0060】
基本となる成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがって、その添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
【0061】
Niは、溶接性、HAZ靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な添加すると経済性を損なうだけでなく、溶接性に好ましくないため、上限を1.0%とした。
【0062】
Cuは、Niとほぼ同様の効果、現象を示し、上限の1.0%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため規制される。下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで0.05%である。
【0063】
Crは、母材の強度、靭性をともに向上させる。しかし、添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性を劣化させるため、限定範囲を0.05〜1.0%とした。
【0064】
上記、Cu、Ni、Crは、母材の強度、靭性上の観点のみならず、耐候性にも有効であり、そのような目的においては、溶接性を損ねない範囲で添加することが好ましい。
【0065】
TiもNbと同様に高温強度上昇に有効である。とくに、母材および溶接部靭性に対する要求が厳しい場合には、添加することが好ましい。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi2O3を主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の核となり溶接部靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のγ粒の粗大化を抑え圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし多すぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.025%である。
【0066】
Vは、Nbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。また、Vは焼き入れ性にも影響を及ぼし、高温強度向上にも寄与する。Nbと同様の効果は0.01%未満では効果が少なく、上限は0.1%まで許容できる。
【0067】
Ca、REMは不純物であるSと結合し、靭性の向上や溶接部の拡散水素による誘起割れを抑制する働きを有するが、多すぎると粗大な介在物を形成し悪影響を及ぼすので、それぞれ0.0005〜0.004%、0.0005〜0.004%が適正範囲である。
【0068】
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、微細化する作用があり、溶接部の強靭化が図れる。このような効果を享受するためには、Mgは0.0001%以上必要である。一方、添加量が増えると添加量に対する効果代が小さくなり、経済性を失するため、上限は0.006%とした。
【0069】
鋼の個々の成分を限定しても、成分系全体が適切でないと優れた特性は得られない。このため、PCMの値を0.18%以下の範囲に限定する。PCMは溶接性を表す指標で、低いほど溶接性は良好である。本発明鋼においては、PCMが0.18%以下の範囲であれば優れた溶接性の確保が可能である。なお、溶接割れ感受性組成PCMは以下の式により定義する。
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+
Mo/15+V/10+5B
【0070】
なお、Mo、Nb、Ti、Vと同様に、Wを適当量添加して、高温強度を確保することも本発明鋼の特性を向上させる有効な手段である。
【0071】
さらに、鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置において、最終変態組織の旧オーステナイト粒径を平均円相当直径で120μm以下に限定する。これは、旧オーステナイト粒径が組織とともに靭性に大きな影響を及ぼすためで、特に本発明のような比較的多量のMo添加鋼において靭性を高めるためには、旧オーステナイト粒径を小さく制御することは重要かつ必須である。前記旧オーステナイト粒径の限定理由は、発明者らの製造条件を種々変更した実験結果に基づくもので、平均円相当直径で120μm以下であれば、本発明よりも低Moである鋼と遜色ない靭性を確保できる。なお、旧オーステナイト粒は、その判別が必ずしも容易ではないケースも少なからずある。このような場合には、板厚1/4厚位置を中心として、鋼板の最終圧延方向と直角方向に採取した切り欠き付き衝撃試験片、例えば、JIS Z 2202 4号試験片(2mmVノッチ)などを用い、十分低温で、脆性破壊させた際の破面単位を旧オーステナイト粒径と読み替え得る有効結晶粒径と定義し、その平均円相当直径を測定することとし、この場合でも同様に120μm以下であることが必要である。
【0072】
【実施例】
転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の鋼板(厚さ15〜50mm)を製造し、その強度、降伏比(YR)、靭性、700℃、800℃における降伏強さ、予熱なし(室温)におけるy割れ試験時のルート割れの有無等を調査した。
【0073】
表1及び表2に比較鋼とともに本発明鋼の鋼成分を、表3に鋼板の製造条件および組織、表4に諸特性の調査結果を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
本発明鋼No.1〜18の例では、全てミクロ組織がフェライト・ベイナイトの混合組織となっており、かつ旧オーステナイト粒径の平均円相当直径が120μm以下である。さらに、490MPa級鋼の常温の強度レベルを満足し、降伏比(YR)も71〜76%で80%未満である。また、700℃、800℃のYSが常温での規格降伏強度のそれぞれ、67%、25%以上の良好な値で、実績高温常温降伏強度比(p)についても、700℃、800℃でそれぞれ64%、23%以上の優れた値である。
【0079】
これに対し、比較鋼No.19では、Cが過剰であり、ベイナイト分率が過大となって、常温の降伏強度が490MPa級の上限を超える結果であった。また、高温強度については、絶対値としては高い値が得られているが、オーステナイトへの逆変態開始温度Ac1 が800℃以下となるため、700℃における常温/高温の降伏強度比(p)はp<−0.0033×T+2.80である。
【0080】
比較鋼No.20では、Cが不足であり、常温、高温ともに490MPa級として降伏強度が不足である。さらに、600℃以上の高温における複合炭窒化相の生成量が5×10−4未満であり、700℃、800℃における常温/高温の降伏強度比(p)もp<−0.0033×T+2.80と低い。
【0081】
比較鋼No.21では、Mn量が0.5%を超えているため、常温での固溶強化効果が過剰となって、常温の降伏強度が490MPa級の規格値上限を超え、YRも80%超であった。また、Ac1が800℃未満となり、十分な整合/半整合析出強化効果が得られたかったため、700℃、800℃において、常温/高温降伏強度比(p)がp<−0.0033×T+2.80である。
【0082】
逆に、比較鋼No.22では、Mn量が0.1%未満のため、常温での固溶強化効果が不足となって、常温及び700℃の降伏強度、常温の引張り強度が490MPa級の規格値下限を下回った。
【0083】
比較鋼No.23では、Pが0.02%を超えているため、母材の延性脆性遷移温度、0℃での再現HAZの吸収エネルギー値ともに劣化している。
【0084】
比較鋼No.24では、Sが0.01%を超えているため、比較鋼No.23と同様に、母材の延性脆性遷移温度、0℃での再現HAZの吸収エネルギー値ともに劣化している。
【0085】
比較鋼No.25ではMoの添加量不足により、炭窒化析出相、BCC相中固溶Moがともに不足したため、常温強度、YR等は良好な結果であるが、700℃の降伏強度が217MPa(490MPa級常温規格強度の2/3)未満で、800℃の強度も62MPa(490MPa級常温規格強度の2/9)未満と低い。また、実績の高温/常温降伏強度比(p)も700℃、800℃について、それぞれ、45%、15%と低く、p<−0.0033×T+2.80である。
【0086】
比較鋼No.26では、Mo量が過剰で、ミクロ組織がベイナイト単相となり、常温の降伏強度及び引張り強度が490MPa級の規格値上限を超えている。さらに、母材材質の不均一性が増大し、溶接割れ感受性組成PCMが0.18%であるにも関わらず、予熱なしでのy割れ試験においてルート割れが発生した。また、再現HAZの吸収エネルギー値も低い。
【0087】
比較鋼No.27では、BCC相中の固溶Mo、Nb量、複合炭窒化相の生成量ともに十分であり、高温/常温降伏強度比(p)については、700℃、800℃ともにp≧−0.0033×T+2.80を満足しているが、Nb量が不足したため、490MPa級として700℃、800℃の降伏強度が不足した。
【0088】
逆に、比較鋼No.28では、Nb量が過剰であるため、高温強度については高い値が得られるが、再現HAZの吸収エネルギー値は低い。
【0089】
比較鋼No.29では、γ粒が粗大であるため、再現HAZの吸収エネルギー値は低い。
【0090】
比較鋼No.30では、Ti量が過剰であるため、母材の延性脆性遷移温度、再現HAZ吸収エネルギー値ともに劣化している。
【0091】
比較鋼No.31では、B添加量が不足し、十分な焼入れ性を得ることができず、ミクロ組織のベイナイト分率が過少のため、常温、高温ともに降伏強度が490MPa級の規格値下限を下回った。
【0092】
比較鋼No.32では、B添加量が過剰なため、母材の延性脆性遷移温度は0℃近傍にあり、再現HAZの吸収エネルギー値は低い。
【0093】
比較鋼No.33では、Al量が0.06%を超えているため、母材の延性脆性遷移温度は0℃近傍にあり、再現HAZ靭性も低い。
【0094】
比較鋼No.34では、N量が0.006%を超えているため、再現HAZ靭性は低い。
【0095】
比較鋼No.35では、PCM値が0.18%を超えており、予熱なしでのy割れ試験においてルート割れが発生した。また、再現HAZ吸収エネルギー値も低い。
【0096】
比較鋼No.36では、再加熱温度が1100℃未満のため、再加熱時に添加合金元素がオーステナイト中に固溶せずに十分な析出強化が得られず、常温については降伏強度、引張り強度、YRともに良好な結果であるが、700℃の降伏強度が217MPa(490MPa級常温規格強度の2/3)未満で、800℃の強度も72MPa(490MPa級常温規格強度の2/9)未満と低い。さらに、実績の高温/常温降伏強度比(p)は、700℃、800℃について、p<−0.0033×T+2.80である。
【0097】
比較鋼No.37では、再加熱温度が1250℃を超えたため、再加熱時にオーステナイト粒が粗大化し、再現HAZの吸収エネルギー値が低くなっている。
【0098】
比較鋼No.38では、本願発明鋼No.10と同成分であるが、1100℃以下での累積圧下量が30%未満のため、旧オーステナイト粒が粗大であり、再現HAZ靭性が低い。
【0099】
比較鋼No.39では、本願発明鋼No.10と同成分であるが、850℃未満の温度で圧延を行ったため、Nb、Ti、Vの析出が促進され十分な析出強化が得られず、常温強度については490MPa級の規格値を満足するが、高温の降伏強度が不足し、実績の高温/常温降伏強度比(p)は、700℃、800℃について、p<−0.0033×T+2.80である。
【0100】
比較鋼No.40では、再加熱温度が1250℃と高いため、圧延終了後のオーステナイト粒が120μm超と粗大であり、フェライトの変態が抑制され、ベイナイト単相のミクロ組織となり、高温強度については高い値が得られているが、常温の降伏強度が490MPa級の規格上限を超過した。
【0101】
比較鋼No.41では、圧延後水冷により冷却速度が過大となり、ベイナイト分率が過剰(>90%)となって、常温の降伏強度、引張り強度が490MPa級としての規格値上限を超え、YRも80%超であった。
【0102】
比較鋼No.42では、圧延後水冷を行うことにより常温強度の上昇を図ったが、板厚が大きく1/4厚部におけるγ/α変態温度近傍での冷却速度が不足のため、フェライト分率が過大(>80%:ベイナイト分率<20%)となり、常温での固溶強化効果が不足となって、常温の引張り強度が規格値下限を下回り、700℃、800℃の降伏強度が、それぞれ、217MPa未満、72MPa未満と低い。
【0103】
比較鋼No.43では、板厚25mm超であるため、加速冷却を適用し、0.3Ks−1以上の冷却速度の確保を図ったが、水冷開始温度が700℃未満であり、圧延終了後〜冷却開始(690℃)の冷却速度が0.3Ks−1以下となり、水冷開始前にフェライトの変態が進行したため、ベイナイト分率が20%未満となって、常温、高温ともに490MPa級として強度が不足した。
【0104】
比較鋼No.44では、Ti量とN量がともに少なく、かつ、再加熱温度も1250℃と高いため、再加熱時にオーステナイトが120μm超に粗大化し、フェライトの変態が抑制され、ベイナイト単相のミクロ組織となり、高温強度については高い値が得られているが、常温の降伏強度、引張り強度が490MPa級の規格上限を超過した。
【0105】
【発明の効果】
本発明の化学成分及び製造法で製造した鋼材は、ミクロ組織がフェライト・ベイナイトの混合組織であり、常温強度が490MPaの規格値を満足し、YRが80%以下、700℃、800℃の降伏強度がそれぞれ常温規格値の2/3以上、2/9以上等の特性を持ち、実績高温/常温降伏強度比(p)が、700℃〜800℃において、p≧−0.0033×T+2.80を満足し、建築用耐火鋼材としての必要な特性を兼ね備えており、従来になく全く新しい鋼材である。
Claims (15)
- 鋼成分が質量%で、
C:0.005%以上0.04%未満、
Si:0.5%以下、
Mn:0.1%以上0.5%以下、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Mo:0.3〜1.5%、
Nb:0.03〜0.15%、
B:0.0005〜0.003%、
Al:0.06%以下、
N:0.006%以下、
かつ、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。 - 質量%で、更に、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜1.0%、
Ti:0.005〜0.025%、
V:0.01〜0.1%
の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。 - 質量%で、更に、
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.004%、
Mg:0.0001〜0.006%
のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。 - 常温の降伏応力により高温時の降伏応力を無次元化した高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、鋼材温度T(℃)が600℃以上800℃以下の範囲で、p≧−0.0033×T+2.80を満足することを特徴とする請求項1〜3の内のいずれかに記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
- 常温においてフェライト及びベイナイトの混合組織であり、火災相当の高温加熱時に、オーステナイトに逆変態する温度(Ac1)が800℃超であることを特徴とする請求項1〜4の内のいずれかに記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
- フェライト及びベイナイトの混合母相組織中で高温において熱力学的に安定な炭窒化析出相をモル分率にて5×10− 4以上保持するとともに、BCC相中に固溶するMo、Nbの合計量がモル濃度にて2×10− 3以上であることを特徴とする請求項5に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
- フェライト及びベイナイトの混合母相組織中で高温において熱力学的に安定な炭窒化析出相をモル分率にて5×10−4以上保持するとともに、BCC相中に固溶するMo、Nb、V、Tiの合計量がモル濃度にて2×10−3以上であることを特徴とする請求項5に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼。
- フェライトとベイナイトの混合組織として、ベイナイトの分率が20〜90%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高温強度に優れた低降伏比490MPa級高張力鋼。
- 請求項1〜3の内のいずれか1項に記載の鋼成分からなり、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+
Mo/15+V/10+5B
と定義する溶接割れ感受性組成PCMが0.18%以下であることを特徴とする高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼。 - 請求項4〜7の内のいずれか1項に記載の特徴を有するとともに、フェライトとベイナイトの混合組織として、ベイナイトの分率が20〜90%であることを特徴とする請求項9記載の高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼。
- 旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることを特徴とする請求項9または10記載の高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする高温強度に優れた490MPa級高張力鋼の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks−1以上として、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の高温強度に優れた490MPa級高張力鋼の製造方法。
- 請求項8に記載の鋼成分からなる鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする高温強度及び溶接性に優れた490MPa級高張力鋼の製造方法。
- 請求項8に記載の鋼成分からなる鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks−1以上として、ミクロ組織をフェライトとベイナイトの混合組織とすることを特徴とする請求項10または11記載の高温強度及び溶接性に優れた低降伏比490MPa級高張力鋼の製造方法。
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