JP2004043662A - フイルムの表面処理方法および積層フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フレキシブルなフイルム上に微細構造物(ICチップ)を組み付けるためのセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムに関して、基材フィルムと微細構造を形成する紫外線硬化型樹脂組成物との接着性を向上させるための基材フィルムの表面処理方法、その処理方法を使用する積層フィルムの製造方法およびそれに好適な材料並びにそれらにより製造した積層フイルムの提供。
【解決手段】基材フィルムである環状オレフィン系樹脂フィルムの表面を、管球材質が合成石英である低圧水銀灯により放射線照射して、36〜44mN/mの表面エネルギー値を持つように処理する表面処理方法を採用すると共に、紫外線硬化型樹脂組成物として、重合性化合物が分子中に2以上の重合性官能基を有し、かつ環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートを含む組成物を使用した積層フィルムの製造方法とする。
【選択図】 なし。
【解決手段】基材フィルムである環状オレフィン系樹脂フィルムの表面を、管球材質が合成石英である低圧水銀灯により放射線照射して、36〜44mN/mの表面エネルギー値を持つように処理する表面処理方法を採用すると共に、紫外線硬化型樹脂組成物として、重合性化合物が分子中に2以上の重合性官能基を有し、かつ環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートを含む組成物を使用した積層フィルムの製造方法とする。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細構造物(例えば、集積回路素子など)をセルフ・アセンブルする際に使用する積層フィルムに関する。さらに詳しくは、有機プラスティック、特には環状オレフィン系樹脂のフィルムないしは基板上に紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜を積層した積層フィルムにあって、硬化膜を積層させる際のフィルム前処理としての表面処理方法、また、その表面処理方法を使用して、微細構造物形状に相補的な窪みである凹部を硬化膜表面に形成してセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フイルムないしは基板(以下、この積層フイルムないしは基板を、単に、積層フィルムと称す)を製造する方法、さらには、その製造方法に使用する紫外線硬化型樹脂組成物、並びにそれらにより製造した積層フィルムとに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙とPDA(携帯端末)の長所を兼ね備え、携帯できる電子ディスプレィとして、電子ペーパーに関する提案・開発が活発になってきている(日経マイクロデバイス、2001年2月号、p.113等)。そこでは、表示機能を持つものとして、液晶、有機EL,電気泳動等の素子が挙げられている。一方、これらの表示素子を駆動する集積回路素子を基板上に形成する方法として、(1)ガラス基板上に、無機の多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層を形成し、無機のトランジスタを形成してゆく方法、(2)フイルム上に有機物のペンタセン等を結晶成長させて、薄膜有機トランジスタを形成する方法(日経エレクトロニクス、2001年10月8日号、p.55)、(3)角錐台ブロック状のICチップ(一般的には、微細構造物)を形成して置き、そのICチップをアルコール水溶液中に分散させてスラリーとする。そのスラリー中に、ICチップ形状に対して相補的な形状の凹部・窪み(セルフ・アセンブル型微細構造という)を有する基板を浸漬し、ICチップをセルフ・アセンブルする。これにより、基板上にICチップを埋め込む方法(AM−LCD‘01、P.81)、等の提案がある。
【0003】
(1)は、シリコン層の形成の為に、高温プロセスが必要であり、基板としてフレキシビリティのあるプラスチック基板に適用出来ないという欠点が有る。
(2)は、大面積の有機結晶を形成することが極めて困難であり、また、キャリア移動度は3cm2/Vsが限度と考えられており(J.H.Shonら、Science,Vol.287,P.1022,2000年)、無機単結晶シリコンの(正孔)移動度500cm2/Vsに比較し、桁違いに移動度が低く、表示の動作周波数を高めることが出来ない欠点がある。
【0004】
前二者に対して(3)は、移動度の高い単結晶シリコン等を使用し、既に確立された集積回路形成プロセスにより、1つの単結晶シリコン等の基板上に、多数個のICを形成し、その後、角錐台形状とした個別のICチップとして切り出すものである。この方法は、既存のシリコン集積回路プロセス等を応用しながら、高性能なシリコンICチップを、フィルムないしは基板上に、簡便かつ安価に、組み付けること(セルフ・アセンブル)ができるという特徴を持つ。
該方法(3)のプロセスの詳細は、米国特許5,545,291、米国特許5,783,856、特開平9−120943号、および米国特許6,274,508に開示がある。
【0005】
ここで特に、米国特許6,274,508には、ICチップ組み付け用の窪みであるセルフ・アセンブル型微細構造を有するフイルムの作成方法に関する開示がある。その方法は、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂フイルムを、テンプレート或いはローラーを通すことで形成するウェブプロセスである。
しかしながら、該方法では、精度の良いセルフ・アセンブル型微細構造を高速に形成してゆくことが出来ず、より生産性の高い方法が求められていた。
【0006】
本発明者らは、特願2002−103682で、耐熱性・寸法安定性が高く、紫外線透過性にも優れた環状オレフィン系樹脂よりなるフイルム上に、接着性の良好な紫外線硬化型樹脂より成り、金型と貼り合わせることにより微細構造が転写される層を形成し、次いでフイルムを通して紫外線硬化させ、最後に金型からフイルムを剥離することによりセルフ・アセンブル型微細構造を作る(一般的に2P成形法と呼ばれる)方法を提案した。しかし、分子内に極性基を持たない分子構造である環状オレフィン系樹脂フイルムの場合には、次のa)およびb)の問題点を有していた。
a)紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜が20μmを越えて厚くなる場合には、フイルムの表面処理が必要であると共に、表面処理後の経過時間によっては積層した紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との接着性が不十分となる。
b)フイルムの表面処理を行っても、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の厚みが100μmを越えると接着性が悪くなり、厚みのマージンが大きくとれない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明の目的は、ICチップをフレキシブルなフイルム上に形成する為のセルフ・アセンブル型微細構造を有するフイルムの製造方法において、微細構造としての凹部を形成する紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の膜厚を厚くした場合でも接着性が良好であり、かつ、フイルム表面処理後の時間が長く経過しても、例えば、工程トラブルにより工程ストップした場合などでもフイルムへの接着性が確保できて接着不良による不良品の発生を防止できるフイルムの表面処理方法、また、該表面処理方法を用いたセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フイルムの製造方法の提供である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に、本発明者らは、環状オレフィン系樹脂フィルム表面の表面処理方法に関して鋭意検討した結果、環状オレフィン系樹脂フィルムの表面に対して特定の水銀灯による放射線照射を行い、該表面が特定の表面エネルギー値を持つものとすることにより、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との間で所望の接着性が確保できることを見出し、また、その表面処理方法を用いてセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フイルムの製造方法とすることで、工程トラブル等による不良品の発生が防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、環状オレフィン系樹脂フィルム表面に紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜を積層する際の、環状オレフィン系樹脂フィルム表面を放射線照射して処理する表面処理方法であって、前記環状オレフィン系樹脂フィルム表面を、水銀灯管球の材質が合成石英である低圧水銀灯を用いて放射線照射することにより、36〜44mN/mの表面エネルギー値となるように処理する環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理方法の提供である。
また、下層材料としての環状オレフィン系樹脂フィルムと上層材料としての紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との積層体構造を採り、かつ前記紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の表面にセルフ・アセンブル型微細構造を形成した積層フィルムの製造方法であって、
▲1▼環状オレフィン系樹脂フィルム表面を表面処理する工程、
▲2▼表面処理した環状オレフィン系樹脂フィルム表面に前記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(A)、または、少なくとも1つ以上の微細構造物形状としての凸部を形成した金型表面に前記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(B)のうちのいずれかの工程、
▲3▼前記工程(A)による前記組成物の塗布面と前記組成物が未塗布である凸部を形成した前記金型表面とを貼り合わせる工程(C)、または、前記組成物が未塗布である前記環状オレフィン系樹脂フィルムと前記工程(B)による前記組成物を塗布した凸部が形成された前記金型表面とを貼り合わせる工程(D)のうちのいずれかの工程、
▲4▼前記(C)または(D)のいずれかの工程により、フィルム/組成物/金型、すなわち、組成物を介してフィルムと金型とを貼り合わせた構造物とした後、環状オレフィン系樹脂フィルム側より紫外線を照射して前記組成物を硬化させて硬化膜とする工程、および、
▲5▼前記硬化膜を形成した後に、環状オレフィン系樹脂フィルムと紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜とで構成される積層フィルムを金型から剥離させることにより、金型の凸部が型として打ち抜かれた窪みであって、組み付け部品である微細構造物に対して相補的な形状の窪みである凹部を紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の表面に形成した積層フィルムとする工程、
によるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法において、前記▲1▼の工程における環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理が、請求項1記載の表面処理方法であるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法の提供である。
さらには、上記製造方法に用いる重合性化合物と光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物であって、重合性化合物が、分子中に2以上の重合性官能基を有し、かつ環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートである紫外線硬化型樹脂組成物の提供である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるフイルムは、分子内に極性基を持たない分子構造の、透明で耐熱性の高い環状オレフィン系樹脂よりなるものであり、例えば、日本ゼオン社より、ノルボルネン誘導体をモノマーとした環状オレフィン系樹脂をフイルム化したものとして、商品名「ゼオノア」が上市されている(シーエムシー社刊「機能材料」2000年8月号)。一方、ジェイエスアール社より、分子内に極性基を有するノルボルネン構造の環状オレフィン系樹脂をフイルム化したものとして、商品名「アートン」(「機能材料」1993年1月号)が上市されている。本発明に係わるこれらフィルムの厚さは、特に制限はなく、適宜選択して使用可能である。
【0011】
これらの環状オレフィン系樹脂は、紫外線領域でも透過率が高いという特徴を有していて、フイルムを通して紫外線照射し紫外線硬化型樹脂を硬化させるのに適している。しかしながら、分子内に極性基を持たない分子構造の、透明で耐熱性の高い環状オレフィン系樹脂よりなるものでは、塗布して形成する紫外線硬化型樹脂の膜厚が20μmを越えて厚くなる場合には、フイルムの表面処理が必要となる。例えば、日本ゼオン社の「ゼオノア1600R」フイルムの場合は、プラズマ処理をした上で、少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤を含有する紫外線硬化型樹脂として環状オレフィン系樹脂フイルム上へ塗布する必要性があった。さらに、厚みが100μmを越えて厚くなる場合には、接着がより困難となった。また、フイルム表面処理後の経過時間によっては、厚みが20〜100μmの範囲内であっても、接着性が確保できないという問題があった。
本発明は、分子内に極性基を持たない分子構造である環状オレフィン系樹脂よりなるフイルムにおける上記問題を解決する方策として、その表面処理方法に関し、格別に有効なる方法を見出し提案するものであり、その表面処理方法を工程の一部とした、2P成形方法によるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法を提供するものである。
【0012】
一般に、環状オレフィン系樹脂以外においても、▲1▼コロナ放電処理、▲2▼プラズマ処理、▲3▼エキシマUV処理等の表面処理方法で、フイルム表面に−COO及び−COの極性基を生じさせ、塗布物の接着性を向上させることが知られている。しかし、分子内に極性基を持たない分子構造の環状オレフィン系樹脂よりなるフイルムでは、前記方法は有効ではない。そのため、各種の表面処理方法を検討した結果、次の方法を見出した。すなわち、バルブの材質を合成石英とした低圧水銀灯処理により、フイルムの表面エネルギーを36mN/mから44mN/mの間に制御する、方法である。この方法に依れば、UV層厚みが100μmを越えても、接着性を確保することが出来る。また、表面処理後の経過時間が長くなっても、他の表面処理方法に比較し、接着性を良好に確保出来ることも見出した。ここで、フイルム表面を46mN/m以上の高エネルギー表面にすると、接着性は低下する。これは、表面に出来た−COO基又は−CO基が多くなり、本発明の紫外線硬化型樹脂が、光重合開始剤のベンゾフェノン構造による水素引き抜き作用により、環状オレフィン系樹脂フイルムと強固に密着する作用を逆に弱めるためと推定される。また逆に、フイルム表面の表面エネルギーが34mN/m以下の場合には、紫外線硬化型樹脂の濡れが不十分となることにより、20μm以上の厚膜では接着性が確保し難くなるものと推測される。
【0013】
本発明で使用する低圧水銀灯処理装置は、水銀灯のバルブ材質が、180nmの紫外線を80%以上透過する様な合成石英ガラスよりなり、この水銀灯により発生する活性酸素がフイルム表面に作用する様に意図されたものである。このランプの発生線185nmの輝線が、空気中の酸素分子を分解し、オゾン分子を作り出し、更に同時発生している254nmの輝線により、オゾン分子が分解され活性酸素を作り出し、フイルム表面にこの活性酸素が付加されるものである。フイルム表面に、付加された酸素により、接着性に有効とされる−COO基又は−CO基が作られることになる。
【0014】
このような性能を有する水銀灯としては、例えば、セン特殊光源社から低圧水銀ランプSUVシリーズ、EUVシリーズとして市販されている。卓上型の実験装置として市販されているものは、同じくセン特殊光源社の低圧水銀ランプSUV110GS−36があり、それを搭載したSSP16−110なる表面処理装置が容易に入手可能である。
【0015】
また、本発明で用いる紫外線硬化型樹脂は、(A)少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤、(B)重合性化合物、(C)その他の成分、より成る。
(A)成分
工業的に紫外線硬化に使用されるラジカル重合系光重合開始剤を大別すると、▲1▼開裂型と▲2▼水素引き抜き型に分けられる。紫外線硬化型樹脂の環状オレフィン系樹脂フイルムへの接着性について検討した結果、光重合開始剤として、少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤を使用することが必須であることが判った。
本発明において使用される(A)成分の光重合開始剤は、ベンゾフェノン、ベンゾイルベンゾイックアシッド、3,3’−ジメチルー4−メトキシベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、4−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド以外のベンゾフェノン系化合物を単独で使用する場合、(B)成分によっては、塗膜にクラック等が入り正常な塗膜が得られない場合もあり、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドを併用することにより、この様な問題は回避できる。或いは、光重合開始助剤としてのトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メチルエチル−n−プロピルアミン等のトリアルキルアミン化合物、2−ジエチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物、N,N−ジメチルアリルアミン、メチルジアリルアミン、トリアリルアミン等のアリルアミン化合物、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン等のジアミン化合物、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン等のトリアミン化合物、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等のピペリジン化合物、ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン;(メタ)アクリレート化合物との重合性反応基を持つ脂肪族系三級アミン化合物としての、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物、アクリロイルモルホリン、モルホリノエチルアクリレート等の脂肪族系アミン化合物を併用することによっても、上記の様な問題は回避できることを見出した。
【0016】
一方、光重合開始助剤として一般的に使用される芳香族系アミン化合物を併用した場合は、それとベンゾフェノン系化合物とが励起体を造りやすく、ベンゾフェノン系化合物による環状オレフィン系樹脂への接着促進作用を減殺するので、芳香族系アミン化合物の併用は好ましくない。
更に、上記光重合開始剤以外にも、▲1▼に属する光重合開始剤を更に併用することも出来るが、フイルムへの接着性に関しては、劣化する方向に働く。特に塗膜の厚みが厚くなる場合には、更に紫外線硬化型樹脂のフイルムへの接着性が悪くなる。その為これらは、光重合開始剤総量の中で10質量%以下に限定される。▲1▼の開裂型光重合開始剤としては、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらの中では、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが透明性、硬化性の観点から好ましい。
【0017】
また、上記分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤以外にも▲2▼の光重合開始剤として、2,4−ジエチルキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系の光重合開始剤も併用可能であり、上記▲1▼とは、逆に紫外線硬化型樹脂のフイルムへの接着性が良くなるが、硬化塗膜の着色が有るために、フイルム外観に透明性が要求される場合に併用は極少量に限られる。
【0018】
(A)成分の使用割合は、(A)〜(C)成分の固形分合計量100質量部中、3〜8質量部、好ましくは4〜6質量部である。(A)成分がこの使用範囲より少ない場合は、紫外線硬化型樹脂の環状オレフィン系樹脂フイルムに対する接着性が十分確保できない傾向があり、逆に多い場合は、紫外線硬化型樹脂の塗布厚が厚い時に、光源から離れた(深さ)方向の塗膜部分の硬化が不十分となる。
【0019】
(B)成分
本発明で用いられる重合性化合物としては、(B−1)1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能オリゴマー、(B−2)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー、(B−3)1分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する1〜2官能モノマーを挙げることができる。
【0020】
(B−1)成分としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明の紫外線硬化性組成物中に含有するオリゴマー成分として、構造中にポリエーテル構造を持つものの使用は、あまり好ましくない。光重合開始剤の配合量、オリゴマー中のポリエーテル濃度等により、ポリエーテル構造を持つオリゴマーを配合することは可能であるが、少量配合が好ましい。
これは、環状オレフィン系樹脂フイルムへの接着付与が水素引き抜き作用によるものと推測されるからである。ポリエーテル構造が存在すると、含有する光重合開始剤の水素引き抜き作用が、ポリエーテル部分に働き、環状オレフィン系樹脂フイルムと紫外線硬化型樹脂の接着性は劣化する。
本発明のフイルムには、また可撓性が要求される。その為、紫外線硬化型樹脂の硬化膜弾性率、強靭性等の観点からオリゴマー成分としては、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
(B−2)成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(B−2)成分は、耐擦傷性、耐薬品性、耐熱性向上に関しては良好であり、それぞれ単独、或いは2種以上を組み合わせて使用することができるが、硬化塗膜の弾性率を上げ、フイルムの可撓性を劣化させる傾向がある。その為、後述するように使用量には上限がある。なお、好ましい(B−2)成分としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがある。硬化収縮が小さく、フイルムのカールの防止の観点からは、環状構造を持つトリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0022】
(B−3)成分としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン等の1官能(メタ)アクリレートモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)フタレート等の2官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0023】
上記1〜2官能モノマーは、フイルムのカール、要求される塗膜物性・硬化性等の観点から、配合量が決定される。上記したモノマーの中で2官能モノマーとしては、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(変性モル数nは、6以下が好ましい)、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の環状構造を持つモノマーの配合が好ましい。1官能モノマーとしては、環状構造を持つものとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートがあるが、他のモノマーとの組み合わせ、配合量によって、硬化塗膜の弾性率が大きくなるので、配合量に上限がある。これらの1〜2官能モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(B)成分中の(B−1)、(B−2)、(B−3)の成分の割合は、求められる硬化塗膜の物性(弾性率等)により変わるが、一般的には、紫外線硬化型樹脂の基材として使用される環状オレフィン系樹脂フイルムの弾性率よりも小さい方がフイルムのカール、フイルムの可撓性の点から好ましい。従って、(B−1)は、(B)成分中0〜30質量%。(B−2)は、(B)成分中0〜30質量%。(B−3)成分は、(B)成分中40〜100質量%の範囲で配合されるのが好ましい。
【0025】
(C)成分
本発明で用いる紫外線硬化型樹脂は、そのままで用いることもできるが、環状オレフィン系樹脂フイルムは、低エネルギー表面を持つ為、フイルム上に塗布する時に良好な塗布品質を得るには、界面活性剤、塗料添加剤の添加が必要である。例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、変性シリコーン系界面活性剤、ビニル系重合体塗料添加剤、アクリル重合体塗料添加剤等を紫外線硬化性組成物に単独或いは併用添加することにより、紫外線硬化型樹脂の濡れが改良される。
【0026】
また、2P成形金型は、一般的に、Ni(ニッケル)等の金属で作製される為、紫外線硬化型樹脂には、金属との接着性増強剤の添加を避ける必要がある。例えば、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート、また、エチレンオキシド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸基ジ(メタ)アクリレート等のリン酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートを添加することは、紫外線硬化型樹脂の金属への接着を増強する為、避けなければならない。
【0027】
本発明の紫外線硬化型樹脂の粘度は、塗布方法にもよるが、2P成形の転写性、金型へのフイルムのラミネートによる膜厚のばらつき等の要因から、100〜800mPa・sの粘度が好ましい。100mPa・sより低粘度であると、2P成形転写性は良好なものの、ラミネートによる紫外線硬化型樹脂の流動が起こり、膜厚のばらつきを生じ易くなる。一方、800mPa・sより高粘度であると、膜厚のばらつきは少なくなるが、気泡等の混入がある場合に、抜けきれずに欠陥を生ずる等の問題がある。
【0028】
本発明の紫外線硬化型樹脂を環状オレフィン系樹脂フイルム又は金型に塗布する方法としては、特に限定されないが、ICチップが精度良くセルフ・アセンブルされる為には、凹部以外の表面が平滑である必要がある。その為、フイルム上に、マイクログラビアコーター、ロールコーター等で塗布することが好ましい。
【0029】
本発明のフイルムの微細構造にセルフ・アセンブルされるICは、<111>の結晶方位を利用して、角錐台状に1チップ化される。そして、アルコール水溶液等の液体にチップを分散した状態での分散状態とチップの欠損等を考慮して、チップサイズに応じたチップ厚みが決定される。そこで、このICチップがフイルムの微細構造に出っぱりもなく、またへこんだ状態でもなく、適正に配置される凹部が形成される厚みが確保される様に、本発明の紫外線硬化型樹脂より成る層を環状オレフィン系樹脂フイルム上に形成する必要がある。一般的には、20〜100μmの厚みで塗布形成される。
【0030】
本発明の紫外線硬化型樹脂は、環状オレフィン系樹脂フイルムを通して、紫外線硬化ランプにより硬化される。硬化ランプとしては、硬化深度の大きく取れる長波長側に大きい紫外線強度を持つメタルハライドランプが好ましい。更に、環状オレフィン系樹脂フイルムに対する紫外線硬化型樹脂の接着に関しては、紫外線強度が大きい方が好ましく、ランプ入力電力として、120W/cm以上のもので紫外線硬化することが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1〜4、比較例1〜12≫
日本ゼオン社製「ゼオノア1600R」フイルム(DSCによるガラス転移温度163℃、100μm厚み)の表面を下記に示す方法1・表面処理方法:A〜D法で表面処理したサンプルを得、方法2・フィルム表面の表面エネルギー測定方法(濡れ性試験液法)により表面エネルギーを求めた。次に、前記表面処理した各サンプルを用いて、フイルム表面処理した直後と2日後に、フィルム表面の一部に約3mm幅のセロファンテープを貼り付けた後に下記組成物1の紫外線硬化型樹脂組成物を滴下し、スピンコート法により、膜厚が80μmの厚みとなる様に組成物を塗布した。次いで、コンベア式紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製集光型コールドミラー+メタルハライドランプM03−L31;入力電力120W/cm)にて、1パス0.5J/cm2(アイグラフィックス社製紫外線光量計UVPF−36にて計測)の条件下、3パスで紫外線硬化し、接着性試験用サンプルを得た。
このサンプルについて、下記方法3・接着性の評価方法に基づき、接着性を評価した。
【0032】
(方法1・表面処理方法)
A法:低圧水銀灯処理
セン特殊光源社製低圧水銀灯SUV110GS−36を搭載した表面処理装置PL−110により、ランプ距離5cmの条件で、照射時間を変えて処理を行った。
B法:コロナ放電処理
春日電機製高周波電源AGI−010にて、出力1.7KVA、ギャップ8mmで、放電フィラメント下をフイルム速度30m/minで処理を行った。
C法:プラズマ放電処理
表面をキーエンス社プラズマ表面処理装置ST−7000にて、ギャップ設定6mm,照射レベルHigh,外部空気の条件にて、1秒間のプラズマ照射を行った。
D法:エキシマUV(172nm)処理
ウシオ電機社製エキシマ光照射装置UER657813にて、照射窓−フイルム間距離1.6mm、照射窓照度9.2mW/cm2の条件で大気下、照射時間を変えて処理を行った。
【0033】
(方法2・フイルム表面の表面エネルギー測定方法)
フイルム表面の表面エネルギーは、JISK6768に準拠し、濡れ性試験液(和光純薬工業社製濡れ指数標準液)を使用して、フイルム表面を濡らし、30秒放置後も、濡れた面の縮退が見られない標準液の表面張力の値を、その値とした。
【0034】
(組成物1・紫外線硬化型樹脂組成物の配合組成)
BPE4−A 85質量部
IAA 10質量部
BP 3質量部
BMDS 2質量部
FZ−2188 0.2質量部
ここで、上記配合物の略号は、それぞれ以下の化合物を表す。
BPE4−A:エチレンオキシド変性(n=4)ビスフェノールAジアクリレートIAA:イソアミルアクリレート
BP:ベンゾフェノン
BMDS:4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド
FZ−2188:日本ユニカー社製・ポリエーテル変性シリコーンオイル
【0035】
(方法3・接着性の評価方法)
フィルム表面に貼付しておいた約3mm幅のセロファンテープを剥離し、フイルム上に塗膜の無い部分を表出し、その部分を起点として新たに塗膜上にセロファンテープを貼り、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜の剥離を試みた。
ここで、剥離したセロファンテープと共に、塗膜が剥がれる場合をNG(接着不良)とし、塗膜がフイルム上に残り、セロファンテープのみが剥がれる場合をOK(接着良好)として、評価した。
下記の表1に、フイルムの処理方法、照射時間を変えて行なった、濡れ性・接着性の評価結果を示す。
【0036】
【表1】
表1.硬化膜の膜厚=80μmにおける評価結果
【0037】
即ち、低圧水銀灯処理により、フイルム表面の表面エネルギーを36mN/mから44mN/mに制御することにより、表面処理後の経過時間が長くなっても、接着性の保持が可能となる。この為、工程トラブルにより製造ラインがストップしても、フイルムへの接着性が不良となることが無く、不良品の発生を防止できることが判る。
【0038】
次に、前記組成物1・紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜の膜厚を80μmから110μmに変更した以外は、上記と同様に試料調製を行い、接着性を評価した。
その結果を下記の表2に示す。
【0039】
【表2】
表2.硬化塗膜の膜厚=100μmにおける評価結果
【0040】
上記と同様に、低圧水銀灯処理により、表面エネルギーを36mN/mから44mN/mに制御することにより、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜が100μmを越えて厚くなっても、接着性が保持されており、接着力を向上させていることが判る。
【0041】
≪実施例5,6:積層フィルムの調製と評価≫(2P成形評価)
前記組成物1・紫外線硬化型樹脂組成物を、多数の角錐台(凸構造)を有するNi製スタンパ上に、塗布膜厚が80μmとなるように塗布した。
他方、本発明の表面処理方法(低圧水銀灯処理)により、「ゼオノア1600R」の表面を、表面エネルギーが36mN/m(実施例5)及び44mN/m(実施例6)となるように表面処理を行った。
次に、上記2水準の表面処理を行った「ゼオノア1600R」を、気泡が入らないようにして、上記Ni製スタンパ上に塗布した塗膜とラミネートした。
その後、フイルム側からコンベア式紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製集光型コールドミラー+メタルハライドランプM03−L31;入力電力120W/cm)にて、1パス0.5J/cm2(アイグラフィックス社製紫外線光量計UVPF−36にて計測)の条件下、3パスで紫外線を照射し、紫外線硬化型組成物を硬化した。
紫外線硬化型樹脂を硬化した後、フイルムをNiスタンパから剥離することにより、目的のセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムを得た。
このものについて、剥離状態の観察及び剥離後の形状転写性を顕微鏡観察し、評価した。
【0042】
両者の表面処理フイルムについても、剥離状態は、転写成形された紫外線硬化型樹脂がきれいにフイルムに付着した形で剥離し、「良好」と判断された。また、形状転写性は、形のくずれ等が無く、角錐台の大きさと転写された凹形状に大きな差が見られず、「良好」と判断された。
以上より、本発明のフイルム表面処理及び紫外線硬化型樹脂を使用して、2P成形を行った場合には、剥離状態が良好であり、また形状転写性に優れていることが判った。従って、本発明のフイルム表面処理方法及び紫外線硬化型樹脂並びに本発明の製造方法(2P法)を使用することにより、紫外線硬化型樹脂の接着性がより向上した精度の良い微細構造を環状オレフィン系樹脂フイルムに形成することが出来ることが判る。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、有機プラスチックフイルムないしは基板上に、集積回路素子をセルフ・アセンブルする際に使用される微細構造を有するフイルムを作製する際に、より厚膜の紫外線硬化型樹脂層を、良好な接着性を保持して形成することが可能となる。また同時に、接着性を確保出来るフイルム表面処理後の経過時間が長くとれる為、製造プロセスのトラブルによる工程ストップにも充分対処できて、接着不良による不良品の発生を回避できることが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細構造物(例えば、集積回路素子など)をセルフ・アセンブルする際に使用する積層フィルムに関する。さらに詳しくは、有機プラスティック、特には環状オレフィン系樹脂のフィルムないしは基板上に紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜を積層した積層フィルムにあって、硬化膜を積層させる際のフィルム前処理としての表面処理方法、また、その表面処理方法を使用して、微細構造物形状に相補的な窪みである凹部を硬化膜表面に形成してセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フイルムないしは基板(以下、この積層フイルムないしは基板を、単に、積層フィルムと称す)を製造する方法、さらには、その製造方法に使用する紫外線硬化型樹脂組成物、並びにそれらにより製造した積層フィルムとに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙とPDA(携帯端末)の長所を兼ね備え、携帯できる電子ディスプレィとして、電子ペーパーに関する提案・開発が活発になってきている(日経マイクロデバイス、2001年2月号、p.113等)。そこでは、表示機能を持つものとして、液晶、有機EL,電気泳動等の素子が挙げられている。一方、これらの表示素子を駆動する集積回路素子を基板上に形成する方法として、(1)ガラス基板上に、無機の多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層を形成し、無機のトランジスタを形成してゆく方法、(2)フイルム上に有機物のペンタセン等を結晶成長させて、薄膜有機トランジスタを形成する方法(日経エレクトロニクス、2001年10月8日号、p.55)、(3)角錐台ブロック状のICチップ(一般的には、微細構造物)を形成して置き、そのICチップをアルコール水溶液中に分散させてスラリーとする。そのスラリー中に、ICチップ形状に対して相補的な形状の凹部・窪み(セルフ・アセンブル型微細構造という)を有する基板を浸漬し、ICチップをセルフ・アセンブルする。これにより、基板上にICチップを埋め込む方法(AM−LCD‘01、P.81)、等の提案がある。
【0003】
(1)は、シリコン層の形成の為に、高温プロセスが必要であり、基板としてフレキシビリティのあるプラスチック基板に適用出来ないという欠点が有る。
(2)は、大面積の有機結晶を形成することが極めて困難であり、また、キャリア移動度は3cm2/Vsが限度と考えられており(J.H.Shonら、Science,Vol.287,P.1022,2000年)、無機単結晶シリコンの(正孔)移動度500cm2/Vsに比較し、桁違いに移動度が低く、表示の動作周波数を高めることが出来ない欠点がある。
【0004】
前二者に対して(3)は、移動度の高い単結晶シリコン等を使用し、既に確立された集積回路形成プロセスにより、1つの単結晶シリコン等の基板上に、多数個のICを形成し、その後、角錐台形状とした個別のICチップとして切り出すものである。この方法は、既存のシリコン集積回路プロセス等を応用しながら、高性能なシリコンICチップを、フィルムないしは基板上に、簡便かつ安価に、組み付けること(セルフ・アセンブル)ができるという特徴を持つ。
該方法(3)のプロセスの詳細は、米国特許5,545,291、米国特許5,783,856、特開平9−120943号、および米国特許6,274,508に開示がある。
【0005】
ここで特に、米国特許6,274,508には、ICチップ組み付け用の窪みであるセルフ・アセンブル型微細構造を有するフイルムの作成方法に関する開示がある。その方法は、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂フイルムを、テンプレート或いはローラーを通すことで形成するウェブプロセスである。
しかしながら、該方法では、精度の良いセルフ・アセンブル型微細構造を高速に形成してゆくことが出来ず、より生産性の高い方法が求められていた。
【0006】
本発明者らは、特願2002−103682で、耐熱性・寸法安定性が高く、紫外線透過性にも優れた環状オレフィン系樹脂よりなるフイルム上に、接着性の良好な紫外線硬化型樹脂より成り、金型と貼り合わせることにより微細構造が転写される層を形成し、次いでフイルムを通して紫外線硬化させ、最後に金型からフイルムを剥離することによりセルフ・アセンブル型微細構造を作る(一般的に2P成形法と呼ばれる)方法を提案した。しかし、分子内に極性基を持たない分子構造である環状オレフィン系樹脂フイルムの場合には、次のa)およびb)の問題点を有していた。
a)紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜が20μmを越えて厚くなる場合には、フイルムの表面処理が必要であると共に、表面処理後の経過時間によっては積層した紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との接着性が不十分となる。
b)フイルムの表面処理を行っても、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の厚みが100μmを越えると接着性が悪くなり、厚みのマージンが大きくとれない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明の目的は、ICチップをフレキシブルなフイルム上に形成する為のセルフ・アセンブル型微細構造を有するフイルムの製造方法において、微細構造としての凹部を形成する紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の膜厚を厚くした場合でも接着性が良好であり、かつ、フイルム表面処理後の時間が長く経過しても、例えば、工程トラブルにより工程ストップした場合などでもフイルムへの接着性が確保できて接着不良による不良品の発生を防止できるフイルムの表面処理方法、また、該表面処理方法を用いたセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フイルムの製造方法の提供である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に、本発明者らは、環状オレフィン系樹脂フィルム表面の表面処理方法に関して鋭意検討した結果、環状オレフィン系樹脂フィルムの表面に対して特定の水銀灯による放射線照射を行い、該表面が特定の表面エネルギー値を持つものとすることにより、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との間で所望の接着性が確保できることを見出し、また、その表面処理方法を用いてセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フイルムの製造方法とすることで、工程トラブル等による不良品の発生が防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、環状オレフィン系樹脂フィルム表面に紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜を積層する際の、環状オレフィン系樹脂フィルム表面を放射線照射して処理する表面処理方法であって、前記環状オレフィン系樹脂フィルム表面を、水銀灯管球の材質が合成石英である低圧水銀灯を用いて放射線照射することにより、36〜44mN/mの表面エネルギー値となるように処理する環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理方法の提供である。
また、下層材料としての環状オレフィン系樹脂フィルムと上層材料としての紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との積層体構造を採り、かつ前記紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の表面にセルフ・アセンブル型微細構造を形成した積層フィルムの製造方法であって、
▲1▼環状オレフィン系樹脂フィルム表面を表面処理する工程、
▲2▼表面処理した環状オレフィン系樹脂フィルム表面に前記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(A)、または、少なくとも1つ以上の微細構造物形状としての凸部を形成した金型表面に前記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(B)のうちのいずれかの工程、
▲3▼前記工程(A)による前記組成物の塗布面と前記組成物が未塗布である凸部を形成した前記金型表面とを貼り合わせる工程(C)、または、前記組成物が未塗布である前記環状オレフィン系樹脂フィルムと前記工程(B)による前記組成物を塗布した凸部が形成された前記金型表面とを貼り合わせる工程(D)のうちのいずれかの工程、
▲4▼前記(C)または(D)のいずれかの工程により、フィルム/組成物/金型、すなわち、組成物を介してフィルムと金型とを貼り合わせた構造物とした後、環状オレフィン系樹脂フィルム側より紫外線を照射して前記組成物を硬化させて硬化膜とする工程、および、
▲5▼前記硬化膜を形成した後に、環状オレフィン系樹脂フィルムと紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜とで構成される積層フィルムを金型から剥離させることにより、金型の凸部が型として打ち抜かれた窪みであって、組み付け部品である微細構造物に対して相補的な形状の窪みである凹部を紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の表面に形成した積層フィルムとする工程、
によるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法において、前記▲1▼の工程における環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理が、請求項1記載の表面処理方法であるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法の提供である。
さらには、上記製造方法に用いる重合性化合物と光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物であって、重合性化合物が、分子中に2以上の重合性官能基を有し、かつ環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートである紫外線硬化型樹脂組成物の提供である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるフイルムは、分子内に極性基を持たない分子構造の、透明で耐熱性の高い環状オレフィン系樹脂よりなるものであり、例えば、日本ゼオン社より、ノルボルネン誘導体をモノマーとした環状オレフィン系樹脂をフイルム化したものとして、商品名「ゼオノア」が上市されている(シーエムシー社刊「機能材料」2000年8月号)。一方、ジェイエスアール社より、分子内に極性基を有するノルボルネン構造の環状オレフィン系樹脂をフイルム化したものとして、商品名「アートン」(「機能材料」1993年1月号)が上市されている。本発明に係わるこれらフィルムの厚さは、特に制限はなく、適宜選択して使用可能である。
【0011】
これらの環状オレフィン系樹脂は、紫外線領域でも透過率が高いという特徴を有していて、フイルムを通して紫外線照射し紫外線硬化型樹脂を硬化させるのに適している。しかしながら、分子内に極性基を持たない分子構造の、透明で耐熱性の高い環状オレフィン系樹脂よりなるものでは、塗布して形成する紫外線硬化型樹脂の膜厚が20μmを越えて厚くなる場合には、フイルムの表面処理が必要となる。例えば、日本ゼオン社の「ゼオノア1600R」フイルムの場合は、プラズマ処理をした上で、少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤を含有する紫外線硬化型樹脂として環状オレフィン系樹脂フイルム上へ塗布する必要性があった。さらに、厚みが100μmを越えて厚くなる場合には、接着がより困難となった。また、フイルム表面処理後の経過時間によっては、厚みが20〜100μmの範囲内であっても、接着性が確保できないという問題があった。
本発明は、分子内に極性基を持たない分子構造である環状オレフィン系樹脂よりなるフイルムにおける上記問題を解決する方策として、その表面処理方法に関し、格別に有効なる方法を見出し提案するものであり、その表面処理方法を工程の一部とした、2P成形方法によるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法を提供するものである。
【0012】
一般に、環状オレフィン系樹脂以外においても、▲1▼コロナ放電処理、▲2▼プラズマ処理、▲3▼エキシマUV処理等の表面処理方法で、フイルム表面に−COO及び−COの極性基を生じさせ、塗布物の接着性を向上させることが知られている。しかし、分子内に極性基を持たない分子構造の環状オレフィン系樹脂よりなるフイルムでは、前記方法は有効ではない。そのため、各種の表面処理方法を検討した結果、次の方法を見出した。すなわち、バルブの材質を合成石英とした低圧水銀灯処理により、フイルムの表面エネルギーを36mN/mから44mN/mの間に制御する、方法である。この方法に依れば、UV層厚みが100μmを越えても、接着性を確保することが出来る。また、表面処理後の経過時間が長くなっても、他の表面処理方法に比較し、接着性を良好に確保出来ることも見出した。ここで、フイルム表面を46mN/m以上の高エネルギー表面にすると、接着性は低下する。これは、表面に出来た−COO基又は−CO基が多くなり、本発明の紫外線硬化型樹脂が、光重合開始剤のベンゾフェノン構造による水素引き抜き作用により、環状オレフィン系樹脂フイルムと強固に密着する作用を逆に弱めるためと推定される。また逆に、フイルム表面の表面エネルギーが34mN/m以下の場合には、紫外線硬化型樹脂の濡れが不十分となることにより、20μm以上の厚膜では接着性が確保し難くなるものと推測される。
【0013】
本発明で使用する低圧水銀灯処理装置は、水銀灯のバルブ材質が、180nmの紫外線を80%以上透過する様な合成石英ガラスよりなり、この水銀灯により発生する活性酸素がフイルム表面に作用する様に意図されたものである。このランプの発生線185nmの輝線が、空気中の酸素分子を分解し、オゾン分子を作り出し、更に同時発生している254nmの輝線により、オゾン分子が分解され活性酸素を作り出し、フイルム表面にこの活性酸素が付加されるものである。フイルム表面に、付加された酸素により、接着性に有効とされる−COO基又は−CO基が作られることになる。
【0014】
このような性能を有する水銀灯としては、例えば、セン特殊光源社から低圧水銀ランプSUVシリーズ、EUVシリーズとして市販されている。卓上型の実験装置として市販されているものは、同じくセン特殊光源社の低圧水銀ランプSUV110GS−36があり、それを搭載したSSP16−110なる表面処理装置が容易に入手可能である。
【0015】
また、本発明で用いる紫外線硬化型樹脂は、(A)少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤、(B)重合性化合物、(C)その他の成分、より成る。
(A)成分
工業的に紫外線硬化に使用されるラジカル重合系光重合開始剤を大別すると、▲1▼開裂型と▲2▼水素引き抜き型に分けられる。紫外線硬化型樹脂の環状オレフィン系樹脂フイルムへの接着性について検討した結果、光重合開始剤として、少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤を使用することが必須であることが判った。
本発明において使用される(A)成分の光重合開始剤は、ベンゾフェノン、ベンゾイルベンゾイックアシッド、3,3’−ジメチルー4−メトキシベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、4−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド以外のベンゾフェノン系化合物を単独で使用する場合、(B)成分によっては、塗膜にクラック等が入り正常な塗膜が得られない場合もあり、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドを併用することにより、この様な問題は回避できる。或いは、光重合開始助剤としてのトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メチルエチル−n−プロピルアミン等のトリアルキルアミン化合物、2−ジエチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物、N,N−ジメチルアリルアミン、メチルジアリルアミン、トリアリルアミン等のアリルアミン化合物、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン等のジアミン化合物、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン等のトリアミン化合物、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等のピペリジン化合物、ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン;(メタ)アクリレート化合物との重合性反応基を持つ脂肪族系三級アミン化合物としての、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物、アクリロイルモルホリン、モルホリノエチルアクリレート等の脂肪族系アミン化合物を併用することによっても、上記の様な問題は回避できることを見出した。
【0016】
一方、光重合開始助剤として一般的に使用される芳香族系アミン化合物を併用した場合は、それとベンゾフェノン系化合物とが励起体を造りやすく、ベンゾフェノン系化合物による環状オレフィン系樹脂への接着促進作用を減殺するので、芳香族系アミン化合物の併用は好ましくない。
更に、上記光重合開始剤以外にも、▲1▼に属する光重合開始剤を更に併用することも出来るが、フイルムへの接着性に関しては、劣化する方向に働く。特に塗膜の厚みが厚くなる場合には、更に紫外線硬化型樹脂のフイルムへの接着性が悪くなる。その為これらは、光重合開始剤総量の中で10質量%以下に限定される。▲1▼の開裂型光重合開始剤としては、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらの中では、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが透明性、硬化性の観点から好ましい。
【0017】
また、上記分子内にベンゾフェノン構造を持つ光重合開始剤以外にも▲2▼の光重合開始剤として、2,4−ジエチルキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系の光重合開始剤も併用可能であり、上記▲1▼とは、逆に紫外線硬化型樹脂のフイルムへの接着性が良くなるが、硬化塗膜の着色が有るために、フイルム外観に透明性が要求される場合に併用は極少量に限られる。
【0018】
(A)成分の使用割合は、(A)〜(C)成分の固形分合計量100質量部中、3〜8質量部、好ましくは4〜6質量部である。(A)成分がこの使用範囲より少ない場合は、紫外線硬化型樹脂の環状オレフィン系樹脂フイルムに対する接着性が十分確保できない傾向があり、逆に多い場合は、紫外線硬化型樹脂の塗布厚が厚い時に、光源から離れた(深さ)方向の塗膜部分の硬化が不十分となる。
【0019】
(B)成分
本発明で用いられる重合性化合物としては、(B−1)1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能オリゴマー、(B−2)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー、(B−3)1分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する1〜2官能モノマーを挙げることができる。
【0020】
(B−1)成分としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明の紫外線硬化性組成物中に含有するオリゴマー成分として、構造中にポリエーテル構造を持つものの使用は、あまり好ましくない。光重合開始剤の配合量、オリゴマー中のポリエーテル濃度等により、ポリエーテル構造を持つオリゴマーを配合することは可能であるが、少量配合が好ましい。
これは、環状オレフィン系樹脂フイルムへの接着付与が水素引き抜き作用によるものと推測されるからである。ポリエーテル構造が存在すると、含有する光重合開始剤の水素引き抜き作用が、ポリエーテル部分に働き、環状オレフィン系樹脂フイルムと紫外線硬化型樹脂の接着性は劣化する。
本発明のフイルムには、また可撓性が要求される。その為、紫外線硬化型樹脂の硬化膜弾性率、強靭性等の観点からオリゴマー成分としては、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
(B−2)成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(B−2)成分は、耐擦傷性、耐薬品性、耐熱性向上に関しては良好であり、それぞれ単独、或いは2種以上を組み合わせて使用することができるが、硬化塗膜の弾性率を上げ、フイルムの可撓性を劣化させる傾向がある。その為、後述するように使用量には上限がある。なお、好ましい(B−2)成分としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがある。硬化収縮が小さく、フイルムのカールの防止の観点からは、環状構造を持つトリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0022】
(B−3)成分としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン等の1官能(メタ)アクリレートモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)フタレート等の2官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0023】
上記1〜2官能モノマーは、フイルムのカール、要求される塗膜物性・硬化性等の観点から、配合量が決定される。上記したモノマーの中で2官能モノマーとしては、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(変性モル数nは、6以下が好ましい)、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の環状構造を持つモノマーの配合が好ましい。1官能モノマーとしては、環状構造を持つものとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートがあるが、他のモノマーとの組み合わせ、配合量によって、硬化塗膜の弾性率が大きくなるので、配合量に上限がある。これらの1〜2官能モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(B)成分中の(B−1)、(B−2)、(B−3)の成分の割合は、求められる硬化塗膜の物性(弾性率等)により変わるが、一般的には、紫外線硬化型樹脂の基材として使用される環状オレフィン系樹脂フイルムの弾性率よりも小さい方がフイルムのカール、フイルムの可撓性の点から好ましい。従って、(B−1)は、(B)成分中0〜30質量%。(B−2)は、(B)成分中0〜30質量%。(B−3)成分は、(B)成分中40〜100質量%の範囲で配合されるのが好ましい。
【0025】
(C)成分
本発明で用いる紫外線硬化型樹脂は、そのままで用いることもできるが、環状オレフィン系樹脂フイルムは、低エネルギー表面を持つ為、フイルム上に塗布する時に良好な塗布品質を得るには、界面活性剤、塗料添加剤の添加が必要である。例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、変性シリコーン系界面活性剤、ビニル系重合体塗料添加剤、アクリル重合体塗料添加剤等を紫外線硬化性組成物に単独或いは併用添加することにより、紫外線硬化型樹脂の濡れが改良される。
【0026】
また、2P成形金型は、一般的に、Ni(ニッケル)等の金属で作製される為、紫外線硬化型樹脂には、金属との接着性増強剤の添加を避ける必要がある。例えば、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート、また、エチレンオキシド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸基ジ(メタ)アクリレート等のリン酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートを添加することは、紫外線硬化型樹脂の金属への接着を増強する為、避けなければならない。
【0027】
本発明の紫外線硬化型樹脂の粘度は、塗布方法にもよるが、2P成形の転写性、金型へのフイルムのラミネートによる膜厚のばらつき等の要因から、100〜800mPa・sの粘度が好ましい。100mPa・sより低粘度であると、2P成形転写性は良好なものの、ラミネートによる紫外線硬化型樹脂の流動が起こり、膜厚のばらつきを生じ易くなる。一方、800mPa・sより高粘度であると、膜厚のばらつきは少なくなるが、気泡等の混入がある場合に、抜けきれずに欠陥を生ずる等の問題がある。
【0028】
本発明の紫外線硬化型樹脂を環状オレフィン系樹脂フイルム又は金型に塗布する方法としては、特に限定されないが、ICチップが精度良くセルフ・アセンブルされる為には、凹部以外の表面が平滑である必要がある。その為、フイルム上に、マイクログラビアコーター、ロールコーター等で塗布することが好ましい。
【0029】
本発明のフイルムの微細構造にセルフ・アセンブルされるICは、<111>の結晶方位を利用して、角錐台状に1チップ化される。そして、アルコール水溶液等の液体にチップを分散した状態での分散状態とチップの欠損等を考慮して、チップサイズに応じたチップ厚みが決定される。そこで、このICチップがフイルムの微細構造に出っぱりもなく、またへこんだ状態でもなく、適正に配置される凹部が形成される厚みが確保される様に、本発明の紫外線硬化型樹脂より成る層を環状オレフィン系樹脂フイルム上に形成する必要がある。一般的には、20〜100μmの厚みで塗布形成される。
【0030】
本発明の紫外線硬化型樹脂は、環状オレフィン系樹脂フイルムを通して、紫外線硬化ランプにより硬化される。硬化ランプとしては、硬化深度の大きく取れる長波長側に大きい紫外線強度を持つメタルハライドランプが好ましい。更に、環状オレフィン系樹脂フイルムに対する紫外線硬化型樹脂の接着に関しては、紫外線強度が大きい方が好ましく、ランプ入力電力として、120W/cm以上のもので紫外線硬化することが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1〜4、比較例1〜12≫
日本ゼオン社製「ゼオノア1600R」フイルム(DSCによるガラス転移温度163℃、100μm厚み)の表面を下記に示す方法1・表面処理方法:A〜D法で表面処理したサンプルを得、方法2・フィルム表面の表面エネルギー測定方法(濡れ性試験液法)により表面エネルギーを求めた。次に、前記表面処理した各サンプルを用いて、フイルム表面処理した直後と2日後に、フィルム表面の一部に約3mm幅のセロファンテープを貼り付けた後に下記組成物1の紫外線硬化型樹脂組成物を滴下し、スピンコート法により、膜厚が80μmの厚みとなる様に組成物を塗布した。次いで、コンベア式紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製集光型コールドミラー+メタルハライドランプM03−L31;入力電力120W/cm)にて、1パス0.5J/cm2(アイグラフィックス社製紫外線光量計UVPF−36にて計測)の条件下、3パスで紫外線硬化し、接着性試験用サンプルを得た。
このサンプルについて、下記方法3・接着性の評価方法に基づき、接着性を評価した。
【0032】
(方法1・表面処理方法)
A法:低圧水銀灯処理
セン特殊光源社製低圧水銀灯SUV110GS−36を搭載した表面処理装置PL−110により、ランプ距離5cmの条件で、照射時間を変えて処理を行った。
B法:コロナ放電処理
春日電機製高周波電源AGI−010にて、出力1.7KVA、ギャップ8mmで、放電フィラメント下をフイルム速度30m/minで処理を行った。
C法:プラズマ放電処理
表面をキーエンス社プラズマ表面処理装置ST−7000にて、ギャップ設定6mm,照射レベルHigh,外部空気の条件にて、1秒間のプラズマ照射を行った。
D法:エキシマUV(172nm)処理
ウシオ電機社製エキシマ光照射装置UER657813にて、照射窓−フイルム間距離1.6mm、照射窓照度9.2mW/cm2の条件で大気下、照射時間を変えて処理を行った。
【0033】
(方法2・フイルム表面の表面エネルギー測定方法)
フイルム表面の表面エネルギーは、JISK6768に準拠し、濡れ性試験液(和光純薬工業社製濡れ指数標準液)を使用して、フイルム表面を濡らし、30秒放置後も、濡れた面の縮退が見られない標準液の表面張力の値を、その値とした。
【0034】
(組成物1・紫外線硬化型樹脂組成物の配合組成)
BPE4−A 85質量部
IAA 10質量部
BP 3質量部
BMDS 2質量部
FZ−2188 0.2質量部
ここで、上記配合物の略号は、それぞれ以下の化合物を表す。
BPE4−A:エチレンオキシド変性(n=4)ビスフェノールAジアクリレートIAA:イソアミルアクリレート
BP:ベンゾフェノン
BMDS:4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド
FZ−2188:日本ユニカー社製・ポリエーテル変性シリコーンオイル
【0035】
(方法3・接着性の評価方法)
フィルム表面に貼付しておいた約3mm幅のセロファンテープを剥離し、フイルム上に塗膜の無い部分を表出し、その部分を起点として新たに塗膜上にセロファンテープを貼り、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜の剥離を試みた。
ここで、剥離したセロファンテープと共に、塗膜が剥がれる場合をNG(接着不良)とし、塗膜がフイルム上に残り、セロファンテープのみが剥がれる場合をOK(接着良好)として、評価した。
下記の表1に、フイルムの処理方法、照射時間を変えて行なった、濡れ性・接着性の評価結果を示す。
【0036】
【表1】
表1.硬化膜の膜厚=80μmにおける評価結果
【0037】
即ち、低圧水銀灯処理により、フイルム表面の表面エネルギーを36mN/mから44mN/mに制御することにより、表面処理後の経過時間が長くなっても、接着性の保持が可能となる。この為、工程トラブルにより製造ラインがストップしても、フイルムへの接着性が不良となることが無く、不良品の発生を防止できることが判る。
【0038】
次に、前記組成物1・紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜の膜厚を80μmから110μmに変更した以外は、上記と同様に試料調製を行い、接着性を評価した。
その結果を下記の表2に示す。
【0039】
【表2】
表2.硬化塗膜の膜厚=100μmにおける評価結果
【0040】
上記と同様に、低圧水銀灯処理により、表面エネルギーを36mN/mから44mN/mに制御することにより、紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜が100μmを越えて厚くなっても、接着性が保持されており、接着力を向上させていることが判る。
【0041】
≪実施例5,6:積層フィルムの調製と評価≫(2P成形評価)
前記組成物1・紫外線硬化型樹脂組成物を、多数の角錐台(凸構造)を有するNi製スタンパ上に、塗布膜厚が80μmとなるように塗布した。
他方、本発明の表面処理方法(低圧水銀灯処理)により、「ゼオノア1600R」の表面を、表面エネルギーが36mN/m(実施例5)及び44mN/m(実施例6)となるように表面処理を行った。
次に、上記2水準の表面処理を行った「ゼオノア1600R」を、気泡が入らないようにして、上記Ni製スタンパ上に塗布した塗膜とラミネートした。
その後、フイルム側からコンベア式紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製集光型コールドミラー+メタルハライドランプM03−L31;入力電力120W/cm)にて、1パス0.5J/cm2(アイグラフィックス社製紫外線光量計UVPF−36にて計測)の条件下、3パスで紫外線を照射し、紫外線硬化型組成物を硬化した。
紫外線硬化型樹脂を硬化した後、フイルムをNiスタンパから剥離することにより、目的のセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムを得た。
このものについて、剥離状態の観察及び剥離後の形状転写性を顕微鏡観察し、評価した。
【0042】
両者の表面処理フイルムについても、剥離状態は、転写成形された紫外線硬化型樹脂がきれいにフイルムに付着した形で剥離し、「良好」と判断された。また、形状転写性は、形のくずれ等が無く、角錐台の大きさと転写された凹形状に大きな差が見られず、「良好」と判断された。
以上より、本発明のフイルム表面処理及び紫外線硬化型樹脂を使用して、2P成形を行った場合には、剥離状態が良好であり、また形状転写性に優れていることが判った。従って、本発明のフイルム表面処理方法及び紫外線硬化型樹脂並びに本発明の製造方法(2P法)を使用することにより、紫外線硬化型樹脂の接着性がより向上した精度の良い微細構造を環状オレフィン系樹脂フイルムに形成することが出来ることが判る。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、有機プラスチックフイルムないしは基板上に、集積回路素子をセルフ・アセンブルする際に使用される微細構造を有するフイルムを作製する際に、より厚膜の紫外線硬化型樹脂層を、良好な接着性を保持して形成することが可能となる。また同時に、接着性を確保出来るフイルム表面処理後の経過時間が長くとれる為、製造プロセスのトラブルによる工程ストップにも充分対処できて、接着不良による不良品の発生を回避できることが可能となる。
Claims (6)
- 環状オレフィン系樹脂フィルム表面に紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜を積層する際の、環状オレフィン系樹脂フィルム表面を放射線照射して処理する表面処理方法であって、前記環状オレフィン系樹脂フィルム表面を、水銀灯管球の材質が合成石英である低圧水銀灯を用いて放射線照射することにより、36〜44mN/mの表面エネルギー値となるように処理することを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理方法。
- 下層材料としての環状オレフィン系樹脂フィルムと上層材料としての紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜との積層体構造を採り、かつ前記紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の表面にセルフ・アセンブル型微細構造を形成した積層フィルムの製造方法であって、
▲1▼環状オレフィン系樹脂フィルム表面を表面処理する工程、
▲2▼表面処理した環状オレフィン系樹脂フィルム表面に前記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(A)、または、少なくとも1つ以上の微細構造物形状としての凸部を形成した金型表面に前記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(B)のうちのいずれかの工程、
▲3▼前記工程(A)による前記組成物の塗布面と前記組成物が未塗布である凸部を形成した前記金型表面とを貼り合わせる工程(C)、または、前記組成物が未塗布である前記環状オレフィン系樹脂フィルムと前記工程(B)による前記組成物を塗布した凸部が形成された前記金型表面とを貼り合わせる工程(D)のうちのいずれかの工程、
▲4▼前記(C)または(D)のいずれかの工程により、フィルム/組成物/金型、すなわち、組成物を介してフィルムと金型とを貼り合わせた構造物とした後、環状オレフィン系樹脂フィルム側より紫外線を照射して前記組成物を硬化させて硬化膜とする工程、および、
▲5▼前記硬化膜を形成した後に、環状オレフィン系樹脂フィルムと紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜とで構成される積層フィルムを金型から剥離させることにより、金型の凸部が型として打ち抜かれた窪みであって、組み付け部品である微細構造物に対して相補的な形状の窪みである凹部を紫外線硬化型樹脂組成物からなる硬化膜の表面に形成した積層フィルムとする工程、
によるセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法において、前記▲1▼の工程における環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理が、請求項1記載の表面処理方法であることを特徴とするセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルムの製造方法。 - 請求項2記載の製造方法に用いる重合性化合物と光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物であって、重合性化合物が、分子中に2以上の重合性官能基を有し、かつ環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートであることを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
- 光重合開始剤が、少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を有する請求項3記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
- 少なくとも分子内にベンゾフェノン構造を有する光重合開始剤の含有量が、組成物に対して、3〜8質量%である請求項4記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
- 請求項2に記載の製造方法を用い、かつ、請求項3〜5の何れかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物を使用して製造したことを特徴とするセルフ・アセンブル型微細構造を有する積層フィルム。
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