JP2004043261A - 酸化第二セリウム粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】一次粒径が100nm以下であり、スラリーにした場合に沈降の少ない酸化第二セリウム粉末を加圧条件を用いることなく製造する方法を提供する。
【解決手段】塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中でセリウム塩を焼成する酸化第二セリウム粉末の製造方法。以下の工程からなる前記の製造方法。
工程1:セリウム塩を仮焼し、仮焼品を得る工程
工程2:該仮焼品を、塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中で焼成する工程
一次粒子径が100nm以下であり、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の一次粒子を含まないことを特徴とする酸化第二セリウム粉末。
【選択図】 なし
【解決手段】塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中でセリウム塩を焼成する酸化第二セリウム粉末の製造方法。以下の工程からなる前記の製造方法。
工程1:セリウム塩を仮焼し、仮焼品を得る工程
工程2:該仮焼品を、塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中で焼成する工程
一次粒子径が100nm以下であり、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の一次粒子を含まないことを特徴とする酸化第二セリウム粉末。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨剤用途に適した酸化第二セリウム粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化第二セリウム(CeO2)粉末は、ガラスの研磨、半導体の製造工程におけるシリコンウエハの研磨等の研磨材として用いられている。低品位の酸化第二セリウム粉末は、天然のバストネサイト鉱石を焼成することにより製造されているが、高純度で微粒であることが必要な半導体製造等用のものは、硝酸第一セリウム、塩化第一セリウム等のセリウム塩を焼成することにより製造されている。しかし、得られた酸化第二セリウム粉末の平均一次粒径が100nmより大きいために、研磨後の研磨面の表面粗さが大きいという問題と、粉末を水等に分散させて研磨用のスラリーとしたときに粒子が沈降しやすいという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、平均一次粒径が100nm以下の微粒を製造する方法が提案されており、例えば特開平8−81218号公報には、水と水酸化第二セリウムを耐圧容器に入れて1MPa(10気圧)の加圧下において180℃の温度で加熱する水熱処理による製造方法が開示されている。この製造方法により、平均一次粒径が30nmの酸化第二セリウム粒子が得られおり、研磨用のスラリーとしたときの沈降も少ない。しかし、反応容器としてコスト高となる耐圧容器が必要であるので、加圧条件を用いることなく、100nm以下の微粒の酸化第二セリウム粉末を製造する方法が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一次粒径が100nm以下の微粒であり、スラリーにした場合に沈降の少ない酸化第二セリウム粉末を加圧条件を用いることなく製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる状況下鋭意検討した結果、塩化水素と酸素を含む雰囲気中でセリウム塩を焼成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、塩化水素と酸素を含有する雰囲気中でセリウム塩を焼成することを特徴とする酸化第二セリウム粉末の製造方法を提供する。また本発明は、以下の工程からなる前記製造方法を提供する。
工程1:セリウム塩を仮焼し、仮焼品を得る工程
工程2:該仮焼品を、塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中で焼成する工程
さらに本発明は、一次粒子径が100nm以下であり、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の一次粒子を含まない酸化第二セリウム粉末を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法においては、塩化水素を含む雰囲気中でセリウム塩を焼成する。セリウム塩として、例えば、炭酸第一セリウム、硝酸第一セリウム、硫酸第一セリウム、硫酸第二セリウム、蓚酸第一セリウム、塩化第一セリウム、硝酸セリウム(III)アンモニウム((NH4)2Ce(NO3)5、(NH4)3Ce2(NO3)9、(NH4)5Ce(NO3)8)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム((NH4)2Ce(NO3)6)等が挙げられるが、好ましくは炭酸第一セリウム(Ce2(CO3)3)である。用途により高純度が必要な場合は、純度が高いセリウム塩を用いることができる。
【0008】
セリウム塩はそのまま焼成することもできるが、水分除去あるいは酸化物とするために350℃以上550℃未満の温度範囲で仮焼することができる。仮焼時間は、通常は1時間以上10時間以下、好ましくは1時間以上5時間以下である。仮焼は通常は空気雰囲気中で行うが、雰囲気は限定されず、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素からなる雰囲気またはそれらから選ばれる2種以上からなる雰囲気を用いることができる。また、理由は不明であるが、仮焼温度が高いほど塩化水素雰囲気中での焼成後に得られる酸化第二セリウム粒子の粒径は大きくなる傾向がある。
【0009】
次に焼成について説明する。
本発明において焼成は塩化水素と酸素を含む雰囲気中で実施される。雰囲気中の塩化水素の濃度は1体積%以上95体積%以下が好ましく、さらに好ましくは5体積%以上30体積%以下である。雰囲気に含まれる塩化水素以外のガスとしては、セリウム塩を酸化物とするため必要な酸素を含んでいる必要がある。酸素の濃度は1体積%以上99体積%以下が好ましく、5体積%以上50体積%以下がさらに好ましい。その他のガスは不活性なガス、例えば、窒素、アルゴン等を含んでいてもよい。なお、セリウム塩を仮焼により酸化物とした場合であっても、酸化第二セリウムを製造するためには、焼成雰囲気に若干の酸素を含む必要があり、酸素の好ましい濃度範囲は前記と同じである。
【0010】
焼成における温度は、550℃以上1200℃以下の温度範囲が好ましく、600℃以上1000℃以下の温度範囲がさらに好ましい。保持時間は焼成の温度によるが、通常は0.5時間以上5時間以下程度である。
【0011】
ところで、セリウム塩または仮焼品として微粒の種晶を含有せしめたものを用いることにより、生成する酸化第二セリウムの平均一次粒径を小さくすることができる。種晶としては、平均一次粒子径が100nm以下の酸化第二セリウム粉末を用いることができる。種晶の含有量を増大すると、粒径は小さくなる傾向がある。セリウム塩または仮焼品に種晶を含有せしめる方法としては、ボールミル、ダイノーミル、振動ミル、バーチカルグラニュレーター、ヘンシェルミキサー等の工業的に通常用いられる混合装置により、セリウム塩または仮焼品と種晶とを混合する方法を用いることができる。混合は乾式、湿式どちらの方法も用いることができる。セリウム塩または仮焼品中の種晶の含有量は、0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以上10重量%以下である。
【0012】
また、セリウム塩または仮焼品を粉砕すると、生成する酸化第二セリウムの平均一次粒径が小さくなる傾向がある。粉砕の条件を変えることにより酸化第二セリウム粒子の平均一次粒径が変化することがある。
【0013】
さらに、高純度であることが必要ない場合には、セリウム塩または仮焼品として粒成長抑制剤を含有せしめたものを用いることにより、生成する酸化第二セリウムの一次粒子径を小さくすることができる。粒成長抑制剤は結晶性の酸化第二セリウムの粒子が形成された後に起こる粒成長を抑制し、平均一次粒径を小さくする添加物で、例えば、シリカが挙げられる。粒成長抑制剤はセリウム塩または仮焼品に通常工業的に使用されているボールミル、振動ミル等の混合装置を用いて混合することによりセリウム塩に含有せしめることができる。含有量は、セリウム塩または仮焼品に対して通常は0.1重量%以上30重量%以下であり、好ましくは1重量%以上10重量%以下である。添加量が増大すると粒径が小さくなる傾向がある。セリウム塩または仮焼品として粒成長抑制剤と種晶の両方を含有せしめたものを用いることもできる。
【0014】
本発明の製造方法により、理由は明らかではないがセリウム塩から直接、形状の均一な多面体粒子からなり、平均一次粒径が10〜100nmであり、スラリーにした場合に沈降の少ない酸化第二セリウム粉末が得られる。
【0015】
ここで、本発明の製造方法により得られた酸化第二セリウムを用いて研磨用のスラリーを調製する方法としては、工業的に通常用いられるボールミル、振動ミル、ダイナミックミル、ダイノーミル等を用いる方法が挙げられる。本発明の製造方法により得られる酸化第二セリウム粉末は凝集が弱いため、従来の酸化第二セリウム粉末と比べて短時間で調製することができる。また、短時間で調製できるので、調整に用いる装置のボールのチッピング(欠け)等による不純物の混入が少なくなり、高純度で分散性に優れた、研磨用スラリーを調製することができる。
【0016】
本発明の製造方法により得られた酸化第二セリウム粉末は、平均一次粒径が100nm以下であるだけではなく、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の粒子を含まないので、シリコンウエハの研磨用として好適である。ここで、本発明において0.5μm以上の粒子を含まないとは、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定した場合において、0.5μm以上の粒子の含有量が0.1重量%未満であることをいう。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1. 粒子形状の観察
一次粒子の形状と平均一次粒径は粉末をSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製T−300)またはTEM(透過型電子顕微鏡、日本電子製JEM4000FX)により写真を撮影し、その写真上の画像から形状を判断し、また平均一次粒径を求めた。
2. 平均二次粒径の測定および0.5μm以上の粒子の含有量の測定
平均二次粒径および0.5μm以上の粒子の含有量は、マルバーン社製のレーザー回折散乱法による粒度分布測定装置マスターサイザー2000型により測定した。
3. BET比表面積の測定
BET比表面積は島津製作所製フローソーブ2300II型により測定した。
【0018】
実施例1
炭酸第一セリウム(和光純薬製、試薬特級)(Ce2(CO3)3)を400℃で仮焼し、鉄芯入りナイロンボールにより粉砕した後、HCl:10体積%−空気:90体積%からなる雰囲気中において常圧で600℃で焼成し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は27.2m2/g、平均一次粒径は30nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.11μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0019】
実施例2
焼成温度を700℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は17.3m2/g、平均一次粒径は50nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.11μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0020】
実施例3
焼成温度を800℃とした以外は、実施例1と同様の方法で実施し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は14.3m2/g、平均一次粒径は80nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.12μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0021】
実施例4
仮焼温度を500℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は16.9m2/g、平均一次粒径は50nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.12μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0022】
比較例1
炭酸第一セリウム(和光純薬製、試薬特級)を400℃で仮焼し、鉄芯入りナイロンボールにより粉砕し、塩化水素を含まない空気雰囲気中において常圧で700℃で焼成し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は不定形な形状を有した粒子からなっていた。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.13μmであり、0.5μm以上の粒子は1重量%検出された。
【0023】
比較例2
炭酸第一セリウム(ニッキ株式会社製)に純水を加えて分散させ、スラリーとした後に35重量%塩酸を加えて炭酸第一セリウムを溶解した。得られた溶液と28重量%のアンモニア水とをそれぞれポンプを用いて純水を入れた容器に同時に滴下し、水酸化第二セリウムを析出させた。析出中の容器内の液のpHが8となり、温度が60℃となるようにポンプを調整して析出を行った。得られた沈殿物を濾過し、得られたケーキを純水で洗浄した後、ケーキを130℃で乾燥させて水酸化セリウム粉末を得た。得られた水酸化セリウム粉末を、HCl:10体積%−空気:90体積%からなる雰囲気中において常圧で900℃で焼成した後、乾式ボールミルにより粉砕し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末のBET比表面積は5.4m2/g、平均一次粒径は0.2μmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.47μmであり、0.5μm以上の粒子は48重量%であった。
【0024】
実施例5
実施例1と比較例1で得られた粉末を用い、沈降試験を行なった。湿式ボールミルで酸化第二セリウム粉末を粉砕してスラリーを作製し、酸化第二セリウムの濃度が5重量%になるように調製したスラリー100mlをメスシリンダーに分取し、超音波を照射して分散させた後、静置しその後の時間の経過とともに最上部の上澄み15mlを分取し、その中に含有される酸化第二セリウムの濃度を測定した。その結果を表1に記載した。
【0025】
【表1】
(重量%)
【0026】
実施例6
実施例1と比較例1で得られた粉末によるシリコンウエハの研磨速度を測定した。研磨速度の測定は次の方法で行なった。酸化第二セリウム粉末に分散剤としてSNデスパーザント5468(商品名、株式会社サンノプコ製)を酸化第二セリウム粉末100重量部に対して1.5重量部添加し、水を加えて酸化第二セリウムとして2重量%の濃度に調整した。このスラリーを用いて、次のような条件で研磨試験を行なった。結果を表2に示した。比較例1で得られた酸化第二セリウム粉末を用いた場合に比較して、実施例1で得られた酸化第二セリウム粉末を用いた場合は、研磨速度が高くなり、しかも表面粗さは小さくなった。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、多面体形状を有した粒子からなり、その形状が均一であり、分散性に優れ、平均一次粒径が100nm以下であり、0.5μm以上の粗粒が極めて少ない酸化第二セリウム粉末が得られる。本発明の粉末を用いて研磨用スラリーを調製すると、沈降が少なく安定なスラリーが得られ、本発明の粉末を用いて研磨すると研磨速度が速くしかも研磨面の表面粗さが小さくなるので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨剤用途に適した酸化第二セリウム粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化第二セリウム(CeO2)粉末は、ガラスの研磨、半導体の製造工程におけるシリコンウエハの研磨等の研磨材として用いられている。低品位の酸化第二セリウム粉末は、天然のバストネサイト鉱石を焼成することにより製造されているが、高純度で微粒であることが必要な半導体製造等用のものは、硝酸第一セリウム、塩化第一セリウム等のセリウム塩を焼成することにより製造されている。しかし、得られた酸化第二セリウム粉末の平均一次粒径が100nmより大きいために、研磨後の研磨面の表面粗さが大きいという問題と、粉末を水等に分散させて研磨用のスラリーとしたときに粒子が沈降しやすいという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、平均一次粒径が100nm以下の微粒を製造する方法が提案されており、例えば特開平8−81218号公報には、水と水酸化第二セリウムを耐圧容器に入れて1MPa(10気圧)の加圧下において180℃の温度で加熱する水熱処理による製造方法が開示されている。この製造方法により、平均一次粒径が30nmの酸化第二セリウム粒子が得られおり、研磨用のスラリーとしたときの沈降も少ない。しかし、反応容器としてコスト高となる耐圧容器が必要であるので、加圧条件を用いることなく、100nm以下の微粒の酸化第二セリウム粉末を製造する方法が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一次粒径が100nm以下の微粒であり、スラリーにした場合に沈降の少ない酸化第二セリウム粉末を加圧条件を用いることなく製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる状況下鋭意検討した結果、塩化水素と酸素を含む雰囲気中でセリウム塩を焼成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、塩化水素と酸素を含有する雰囲気中でセリウム塩を焼成することを特徴とする酸化第二セリウム粉末の製造方法を提供する。また本発明は、以下の工程からなる前記製造方法を提供する。
工程1:セリウム塩を仮焼し、仮焼品を得る工程
工程2:該仮焼品を、塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中で焼成する工程
さらに本発明は、一次粒子径が100nm以下であり、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の一次粒子を含まない酸化第二セリウム粉末を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法においては、塩化水素を含む雰囲気中でセリウム塩を焼成する。セリウム塩として、例えば、炭酸第一セリウム、硝酸第一セリウム、硫酸第一セリウム、硫酸第二セリウム、蓚酸第一セリウム、塩化第一セリウム、硝酸セリウム(III)アンモニウム((NH4)2Ce(NO3)5、(NH4)3Ce2(NO3)9、(NH4)5Ce(NO3)8)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム((NH4)2Ce(NO3)6)等が挙げられるが、好ましくは炭酸第一セリウム(Ce2(CO3)3)である。用途により高純度が必要な場合は、純度が高いセリウム塩を用いることができる。
【0008】
セリウム塩はそのまま焼成することもできるが、水分除去あるいは酸化物とするために350℃以上550℃未満の温度範囲で仮焼することができる。仮焼時間は、通常は1時間以上10時間以下、好ましくは1時間以上5時間以下である。仮焼は通常は空気雰囲気中で行うが、雰囲気は限定されず、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素からなる雰囲気またはそれらから選ばれる2種以上からなる雰囲気を用いることができる。また、理由は不明であるが、仮焼温度が高いほど塩化水素雰囲気中での焼成後に得られる酸化第二セリウム粒子の粒径は大きくなる傾向がある。
【0009】
次に焼成について説明する。
本発明において焼成は塩化水素と酸素を含む雰囲気中で実施される。雰囲気中の塩化水素の濃度は1体積%以上95体積%以下が好ましく、さらに好ましくは5体積%以上30体積%以下である。雰囲気に含まれる塩化水素以外のガスとしては、セリウム塩を酸化物とするため必要な酸素を含んでいる必要がある。酸素の濃度は1体積%以上99体積%以下が好ましく、5体積%以上50体積%以下がさらに好ましい。その他のガスは不活性なガス、例えば、窒素、アルゴン等を含んでいてもよい。なお、セリウム塩を仮焼により酸化物とした場合であっても、酸化第二セリウムを製造するためには、焼成雰囲気に若干の酸素を含む必要があり、酸素の好ましい濃度範囲は前記と同じである。
【0010】
焼成における温度は、550℃以上1200℃以下の温度範囲が好ましく、600℃以上1000℃以下の温度範囲がさらに好ましい。保持時間は焼成の温度によるが、通常は0.5時間以上5時間以下程度である。
【0011】
ところで、セリウム塩または仮焼品として微粒の種晶を含有せしめたものを用いることにより、生成する酸化第二セリウムの平均一次粒径を小さくすることができる。種晶としては、平均一次粒子径が100nm以下の酸化第二セリウム粉末を用いることができる。種晶の含有量を増大すると、粒径は小さくなる傾向がある。セリウム塩または仮焼品に種晶を含有せしめる方法としては、ボールミル、ダイノーミル、振動ミル、バーチカルグラニュレーター、ヘンシェルミキサー等の工業的に通常用いられる混合装置により、セリウム塩または仮焼品と種晶とを混合する方法を用いることができる。混合は乾式、湿式どちらの方法も用いることができる。セリウム塩または仮焼品中の種晶の含有量は、0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以上10重量%以下である。
【0012】
また、セリウム塩または仮焼品を粉砕すると、生成する酸化第二セリウムの平均一次粒径が小さくなる傾向がある。粉砕の条件を変えることにより酸化第二セリウム粒子の平均一次粒径が変化することがある。
【0013】
さらに、高純度であることが必要ない場合には、セリウム塩または仮焼品として粒成長抑制剤を含有せしめたものを用いることにより、生成する酸化第二セリウムの一次粒子径を小さくすることができる。粒成長抑制剤は結晶性の酸化第二セリウムの粒子が形成された後に起こる粒成長を抑制し、平均一次粒径を小さくする添加物で、例えば、シリカが挙げられる。粒成長抑制剤はセリウム塩または仮焼品に通常工業的に使用されているボールミル、振動ミル等の混合装置を用いて混合することによりセリウム塩に含有せしめることができる。含有量は、セリウム塩または仮焼品に対して通常は0.1重量%以上30重量%以下であり、好ましくは1重量%以上10重量%以下である。添加量が増大すると粒径が小さくなる傾向がある。セリウム塩または仮焼品として粒成長抑制剤と種晶の両方を含有せしめたものを用いることもできる。
【0014】
本発明の製造方法により、理由は明らかではないがセリウム塩から直接、形状の均一な多面体粒子からなり、平均一次粒径が10〜100nmであり、スラリーにした場合に沈降の少ない酸化第二セリウム粉末が得られる。
【0015】
ここで、本発明の製造方法により得られた酸化第二セリウムを用いて研磨用のスラリーを調製する方法としては、工業的に通常用いられるボールミル、振動ミル、ダイナミックミル、ダイノーミル等を用いる方法が挙げられる。本発明の製造方法により得られる酸化第二セリウム粉末は凝集が弱いため、従来の酸化第二セリウム粉末と比べて短時間で調製することができる。また、短時間で調製できるので、調整に用いる装置のボールのチッピング(欠け)等による不純物の混入が少なくなり、高純度で分散性に優れた、研磨用スラリーを調製することができる。
【0016】
本発明の製造方法により得られた酸化第二セリウム粉末は、平均一次粒径が100nm以下であるだけではなく、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の粒子を含まないので、シリコンウエハの研磨用として好適である。ここで、本発明において0.5μm以上の粒子を含まないとは、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定した場合において、0.5μm以上の粒子の含有量が0.1重量%未満であることをいう。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1. 粒子形状の観察
一次粒子の形状と平均一次粒径は粉末をSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製T−300)またはTEM(透過型電子顕微鏡、日本電子製JEM4000FX)により写真を撮影し、その写真上の画像から形状を判断し、また平均一次粒径を求めた。
2. 平均二次粒径の測定および0.5μm以上の粒子の含有量の測定
平均二次粒径および0.5μm以上の粒子の含有量は、マルバーン社製のレーザー回折散乱法による粒度分布測定装置マスターサイザー2000型により測定した。
3. BET比表面積の測定
BET比表面積は島津製作所製フローソーブ2300II型により測定した。
【0018】
実施例1
炭酸第一セリウム(和光純薬製、試薬特級)(Ce2(CO3)3)を400℃で仮焼し、鉄芯入りナイロンボールにより粉砕した後、HCl:10体積%−空気:90体積%からなる雰囲気中において常圧で600℃で焼成し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は27.2m2/g、平均一次粒径は30nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.11μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0019】
実施例2
焼成温度を700℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は17.3m2/g、平均一次粒径は50nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.11μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0020】
実施例3
焼成温度を800℃とした以外は、実施例1と同様の方法で実施し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は14.3m2/g、平均一次粒径は80nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.12μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0021】
実施例4
仮焼温度を500℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は均一な多面体形状を有した粒子からなり、BET比表面積は16.9m2/g、平均一次粒径は50nmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.12μmであり、0.5μm以上の粒子は検出されず0.1重量%未満であった。
【0022】
比較例1
炭酸第一セリウム(和光純薬製、試薬特級)を400℃で仮焼し、鉄芯入りナイロンボールにより粉砕し、塩化水素を含まない空気雰囲気中において常圧で700℃で焼成し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末は不定形な形状を有した粒子からなっていた。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.13μmであり、0.5μm以上の粒子は1重量%検出された。
【0023】
比較例2
炭酸第一セリウム(ニッキ株式会社製)に純水を加えて分散させ、スラリーとした後に35重量%塩酸を加えて炭酸第一セリウムを溶解した。得られた溶液と28重量%のアンモニア水とをそれぞれポンプを用いて純水を入れた容器に同時に滴下し、水酸化第二セリウムを析出させた。析出中の容器内の液のpHが8となり、温度が60℃となるようにポンプを調整して析出を行った。得られた沈殿物を濾過し、得られたケーキを純水で洗浄した後、ケーキを130℃で乾燥させて水酸化セリウム粉末を得た。得られた水酸化セリウム粉末を、HCl:10体積%−空気:90体積%からなる雰囲気中において常圧で900℃で焼成した後、乾式ボールミルにより粉砕し、酸化第二セリウム粉末を得た。得られた粉末のBET比表面積は5.4m2/g、平均一次粒径は0.2μmであった。湿式ボールミルで分散後の平均二次粒径は0.47μmであり、0.5μm以上の粒子は48重量%であった。
【0024】
実施例5
実施例1と比較例1で得られた粉末を用い、沈降試験を行なった。湿式ボールミルで酸化第二セリウム粉末を粉砕してスラリーを作製し、酸化第二セリウムの濃度が5重量%になるように調製したスラリー100mlをメスシリンダーに分取し、超音波を照射して分散させた後、静置しその後の時間の経過とともに最上部の上澄み15mlを分取し、その中に含有される酸化第二セリウムの濃度を測定した。その結果を表1に記載した。
【0025】
【表1】
(重量%)
【0026】
実施例6
実施例1と比較例1で得られた粉末によるシリコンウエハの研磨速度を測定した。研磨速度の測定は次の方法で行なった。酸化第二セリウム粉末に分散剤としてSNデスパーザント5468(商品名、株式会社サンノプコ製)を酸化第二セリウム粉末100重量部に対して1.5重量部添加し、水を加えて酸化第二セリウムとして2重量%の濃度に調整した。このスラリーを用いて、次のような条件で研磨試験を行なった。結果を表2に示した。比較例1で得られた酸化第二セリウム粉末を用いた場合に比較して、実施例1で得られた酸化第二セリウム粉末を用いた場合は、研磨速度が高くなり、しかも表面粗さは小さくなった。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、多面体形状を有した粒子からなり、その形状が均一であり、分散性に優れ、平均一次粒径が100nm以下であり、0.5μm以上の粗粒が極めて少ない酸化第二セリウム粉末が得られる。本発明の粉末を用いて研磨用スラリーを調製すると、沈降が少なく安定なスラリーが得られ、本発明の粉末を用いて研磨すると研磨速度が速くしかも研磨面の表面粗さが小さくなるので、本発明は工業的に極めて有用である。
Claims (9)
- 塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中でセリウム塩を焼成することを特徴とする酸化第二セリウム粉末の製造方法。
- 以下の工程からなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
工程1:セリウム塩を仮焼し、仮焼品を得る工程
工程2:該仮焼品を、塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中で焼成する工程 - 仮焼温度が350℃以上550℃未満の温度範囲である請求項2記載の製造方法。
- セリウム塩が炭酸第一セリウムである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 雰囲気中の塩化水素濃度が1体積%以上95体積%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 焼成温度が550℃以上1200℃以下の温度範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- セリウム塩として種晶および/または成長抑制剤を含有せしめたセリウム塩を用いる請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 仮焼品として種晶および/または成長抑制剤を含有せしめた仮焼品を用いる請求項2または3に記載の製造方法。
- 平均一次粒径が100nm以下であり、一次粒子が多面体形状を有し、0.5μm以上の一次粒子を含まないことを特徴とする酸化第二セリウム粉末。
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JP2002205206A JP2004043261A (ja) | 2002-07-15 | 2002-07-15 | 酸化第二セリウム粉末の製造方法 |
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KR101056615B1 (ko) * | 2006-10-12 | 2011-08-11 | 주식회사 엘지화학 | Cmp 슬러리용 산화세륨 분말의 제조방법 및 이를 이용한cmp용 슬러리 조성물의 제조방법 |
-
2002
- 2002-07-15 JP JP2002205206A patent/JP2004043261A/ja active Pending
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