JP2004043024A - ベントスロット付きボトルの口部構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形時における樹脂の流れを悪化させたり、口部天面のフラット性を損なったりすることのないベントスロット付きボトルの口部構造を提供する。
【解決手段】ホットパック充填用のペットボトルや店頭で加温販売されるペットボトル等に適したベントスロット付きボトルの口部構造である。口部外周に形成されたネジ山3の円周360度の範囲内に、最大深さをネジ山高さの20%−80%とした4個以上の凹溝2を設ける。各凹溝2の断面がなだらかな曲面形状であることが好ましく、各凹溝2のネジ山に沿った幅の合計値が、ネジ山全長の30%−70%であることが好ましい。これにより開栓時のキャップ飛びを防止でき、白化結晶化の段階で結晶化変形が発生することもない。
【選択図】 図1
【解決手段】ホットパック充填用のペットボトルや店頭で加温販売されるペットボトル等に適したベントスロット付きボトルの口部構造である。口部外周に形成されたネジ山3の円周360度の範囲内に、最大深さをネジ山高さの20%−80%とした4個以上の凹溝2を設ける。各凹溝2の断面がなだらかな曲面形状であることが好ましく、各凹溝2のネジ山に沿った幅の合計値が、ネジ山全長の30%−70%であることが好ましい。これにより開栓時のキャップ飛びを防止でき、白化結晶化の段階で結晶化変形が発生することもない。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットパック充填用のペットボトルや店頭で加温販売されるペットボトル等に好適なベントスロット付きボトルの口部構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平10−1150号公報
【特許文献2】特開2001−311696号公報
【0003】
スクリューキャップ式のペットボトルのうち、炭酸飲料が充填されるペットボトルの口部ネジには、従来からベントスロットと呼ばれる凹溝群が設けられている。これらのベントスロットはガス抜きの目的で設けられるものであり、ペットボトルが異常な内圧を受けた場合にキャップとの隙間から内圧を逃がすことにより、キャップが飛ぶ危険を防止するものである。ベントスロットをキャップ側に設けた一例が特許文献1である特開平10−1150(1998−1150)号公報に記載されており、ボトル側に設けた一例が特許文献2である特開2001−311696号公報に記載されている。
【0004】
このような炭酸飲料用のペットボトルのベントスロット形状については、米国のアルコア社の規格969−1810(以下、アルコア規格と記す)が全世界で共通して採用されており、ペットボトルメーカーはこのアルコア規格に基づいて成形用金型を設計・製作し、成形されたペットボトルの管理もこのアルコア規格に基づいてなされている。
【0005】
図5と図6はアルコア規格に基づいて成形されたベントスロット付きのペットボトルの口部11の構造を示すもので、口部11のネジ山13が円周360度の範囲内に4箇所において所定幅にわたり完全に切断されて凹溝12が形成されており、これらの凹溝群によりベントスロットが形成されている。このようにアルコア規格ではベントスロットを形成する凹溝12の深さはネジ山の高さに等しく、凹溝12の底面はペットボトルの口部11の外周面と同一面となっている。
【0006】
一方、ホットパック充填用のペットボトルについては、炭酸飲料用のペットボトルとは異なり従来ベントスロットは必要がないと考えられてきた。その理由は、ホットパック充填用のペットボトルは口部を白化結晶化させて耐熱性を持たせたプリフォームをブロー成形したものであり、通常は87℃で内容物のホットパック充填が行なわれる。このためその後に室温まで冷却されるに連れてペットボトルの内部は減圧された状態となっている。従って内圧の存在する炭酸飲料用のペットボトルとは異なり、ベントスロットを設けなくてもキャップが飛ぶおそれがないからである。
【0007】
ところが、消費者がいったん開栓した後に内容物を残したままでリシールする場合があり、この際に腐敗菌が侵入して腐敗が進行すると、内容物の分解ガスによって0.7MPa程度の内圧が発生する場合があることが判明した。また最近多くなりつつある店頭での電子レンジなどによる加熱販売を行なうケースにおいても、ペットボトルに異常な内圧が発生する場合があることが判明した。このようにベントスロットのないペットボトルに高い内圧が加わった場合には、開栓時にキャップ飛び等の市場トラブルが発生する可能性がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するためには、炭酸飲料用のペットボトルと同様のベントスロットをホットパック充填用のペットボトルの口部にも形成すればよいと考えられる。このためには、口部にベントスロットを設けたプリフォームをインジェクション成形したうえ、耐熱性を持たせるための口部の白化結晶化を行なわねばならない。しかし、ネジ山にベントスロットを設けるとインジェクション成形時における樹脂の流れが悪化し、ウエルドと呼ばれるしわ状の欠陥が発生し易くなる。またインジェクション成形時における樹脂の充填密度の不均一が発生し易くなるため、白化結晶化の際に口部が不均一に変形して口部天面のフラット性が不完全となり、シール性が損なわれる等の問題が発生する。このため、ホットパック充填用のペットボトルや加熱販売用のペットボトルの口部には、ベントスロットを付けることが容易ではなく、前記したような市場トラブルが発生する可能性が残されていた。
【0009】
従って本発明の目的は、インジェクション成形時における樹脂の流れを悪化させたり、口部天面のフラット性を損なったりすることなく、白化結晶化が必要なペットボトルの口部にベントスロットを付けることを可能とし、これによってキャップ飛び等の市場トラブルを確実に防止することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した従来の課題を解決するためになされたものであり、口部外周にキャップ係合用のネジ山を備えたペットボトルの口部構造において、ネジ山の円周360度の範囲内に4個以上の凹溝を備え、各凹溝の最大深さをネジ山高さの20%−80%としたことを特徴とするものである。
【0011】
このような凹溝により構成されたベントスロットは、異常な内圧を受けた場合に内圧を逃がすために役立ち、キャップ飛び等の市場トラブルを確実に防止することができる。しかも本発明においてはベントスロットを構成する各凹溝の最大深さをアルコア規格の20%−80%としたので、インジェクション成形時における樹脂の流れを悪化させたり、白化結晶化のための熱処理時に口部天面のフラット性が損なわれたりすることがない。
【0012】
本発明においては、各凹溝が周方向に略等間隔で設けられていることが好ましい。これによってキャップの保持力が均等に作用し、より優れたキャップ飛び防止効果を得ることができる。また本発明においては、隣接する上下のネジ山に形成された凹溝が略同一列に配置されていることが好ましい。これによってガスの流動抵抗が小さくなり、より優れたガス抜き効果を得ることができる。
【0013】
また本発明においては、各凹溝のネジ山に沿った断面がなだらかな曲面形状であることが好ましい。これによって、アルコア規格のように各凹溝をシャープな形状とした場合よりもインジェクション成形時における樹脂の流れが良くなり、ウエルドと呼ばれる筋状の欠陥が発生しにくくなる。また、インジェクション成形時における樹脂の充填密度が均一になるため、白化結晶化の際に口部天面が変形することが防止でき、フラット性が損なわれることがない。さらに本発明においては、各凹溝のネジ山に沿った幅の合計値が、ネジ山全長の30%−70%であることが好ましい。これによって、キャップの保持性能と開栓時のキャップ飛び防止性能とを両立させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1と図2は本発明の第1の実施形態を示すもので、ホットパック充填用のペットボトルまたは加温販売用のペットボトルの口部1のみが示されている。
口部1にはピルファープルーフ式のスクリューキャップを螺合させるためのネジ山3が形成されている。この実施形態ではネジ山3は一条ネジであり、ネジ始め部4、第1ネジ山5、第2ネジ山6、図1の背面側に位置するネジ終端部とからなるものである。ネジ山の下方には従来と同様にサポートリング7と、環状突起8とが形成されている。
【0015】
上記のネジ山3には、円周360度の範囲内に4個以上の凹溝2が形成され、これらの凹溝群によりベントスロットが形成されている。この実施形態では凹溝2はネジ山3の円周360度の範囲内に略等間隔に形成されている。ネジ山3の円周360度の範囲内における凹溝2の数が4未満であると、十分なガス抜き効果が得られない。ただし凹溝2の数を増加させるとネジ山3の有効ネジ山長さが短くなりキャップの保持力が減少するので、凹溝2の数は4−10とすることが好ましい。凹溝2を略等間隔に配置するのは、キャップ保持力を均等にしてキャップ飛び防止効果を高めるためである。
【0016】
図2に示されるように、各凹溝2のネジ山3の長手方向に沿った断面形状は、なだらかな曲面形状となっており、その最大深さdはネジ山高さhの20%−80%となっている。前記したように、アルコア規格ではベントスロットを形成する凹溝の深さdはネジ山高さhに等しくなっているが、本発明ではこのように凹溝2をアルコア規格の20%−80%と浅く形成することによって、インジェクション成形時における樹脂の流れ悪化を防止するとともに、充填密度を均一化し、口部の白化結晶化時における口部天面の変形を防止する。最大深さdをネジ山高さhの20%未満とするとガス流路が確保できず、十分なキャップ飛び防止効果が得られない。逆に80%を越えるとウエルドを発生させたり、白化結晶化による口部天面の変形を招いたりする。
【0017】
また、各凹溝2のネジ山3の長手方向に沿った断面形状をなだらかな曲面形状とすることによって、インジェクション成形時における樹脂の流れ悪化を防止することができる。この実施形態では口部1の外径が27mmであり、各凹溝2の断面形状は曲率半径が4mmの円弧状となっている。
【0018】
図1に示されるように、隣接する上下のネジ山3に形成された凹溝2を略同一列上に配置することが好ましい。すなわち、第1ネジ山5と第2ネジ山6の凹溝2、2の位置が上下方向に一致しており、ガスが直線的に流出できるようにしておくことが好ましい。ただしネジ始め部4やネジ終端部では、ネジ本来の特性や成形上の問題から必ずしも同一列上に配置する必要はなく、多少位置をずらしたり、省略したりしてもよい。
【0019】
このようにして形成された各凹溝2のネジ山3に沿った幅の合計値は、ネジ山全長の30%−70%とすることが好ましい。30%未満であると十分なキャップ飛び防止効果が得られず、70%を越えるとキャップ保持性能が低下するので好ましくない。この実施形態ではこの比率は約40%となっている。
このほか、各凹溝2の断面積の合計値は、図6に示したアルコア規格における凹溝12の断面積の40%−60%程度とすることが好ましい。小さ過ぎるとガス抜きが十分に行われず、大きすぎるとシール性能に問題が生ずるので好ましくはない。
【0020】
図3と図4に示す第2の実施形態では、第1ネジ山5と第2ネジ山6の凹溝2、2の位置が上下方向に半ピッチずらしてある。このような構造ではガスの流れは斜め方向あるいはジグザグ状になるが、各凹溝2の最大深さをネジ山高さの20%−80%とし、かつ各凹溝2のネジ山3に沿った幅の合計値は、ネジ山全長の30%−70%とすることにより、十分なキャップ飛び防止効果を得ることができる。
【0021】
以上に説明した本発明の効果を確認するため、以下の実験を行なった。
(実験1)
ネジ山3の円周360度の範囲内における凹溝2の数を8とした第1の実施形態の通りの構造(A)、ネジ山3の円周360度の範囲内における凹溝2の数を9とした構造(B)、第2の実施形態の通りの構造(C)の3種類の口部構造を成形するための金型を試作し、プリフォームをインジェクション成形した。いずれも樹脂の流れは良好で、ウエルドの発生はなかった。またこれらのプリフォームの口部を加熱して白化結晶化させたが、口部天面が変形することもなく、インジェクション成形における充填の不均質や充填不足は発生しなかった。これに対して図5、図6に示したアルコア規格の通りの口部構造を持つプリフォームをインジェクション成形した場合にはウエルドが発生し、また白化結晶化の段階で結晶化変形が発生し、口部天面が変形して満足なシール性を得ることができなかった。
【0022】
(実験2)
実験1で作成したA,B,Cの3種類のプリフォームと、比較例としてベントスロットのないプリフォームとをブロー成形して4種類のペットボトルを10本ずつ製造し、それぞれに圧縮空気による0.7MPaの内圧を加えてキャップ飛びテストを行なった。比較例のペットボトルは10本全てがキャップ飛びしたが、A,B,Cのプリフォームから成形されたペットボトルは10本中、キャップ飛びした本数はそれぞれ2本、0本、1本であった。この実験により、凹溝が略同一列に配置されているA,Bの構造がCの構造よりも優れ、また凹溝の数が多い方が優れることが分かる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明のベントスロット付きボトルの口部構造によれば、ペットボトルをリシール使用して腐敗菌による内圧が発生したり、電子レンジなどの加熱により高い内圧が発生した場合にも内圧を逃がすことができ、開栓時のキャップ飛び等の市場トラブルを防止できる。しかもベントスロットによるシール性の低下のおそれもない。従って本発明は、ホットパック充填用のペットボトルや店頭で加温販売されるペットボトル等の口部構造として特に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すペットボトル口部の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示すペットボトル口部の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すペットボトル口部の正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すペットボトル口部の平面図である。
【図5】アルコア規格に基づいて成形された従来のベントスロット付きのペットボトルの口部構造を示す正面図である。
【図6】アルコア規格に基づいて成形された従来のベントスロット付きのペットボトルの口部構造を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ペットボトルの口部
2 凹溝
3 ネジ山
4 ネジ始め部
5 第1ネジ山
6 第2ネジ山
7 サポートリング
8 環状突起
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットパック充填用のペットボトルや店頭で加温販売されるペットボトル等に好適なベントスロット付きボトルの口部構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平10−1150号公報
【特許文献2】特開2001−311696号公報
【0003】
スクリューキャップ式のペットボトルのうち、炭酸飲料が充填されるペットボトルの口部ネジには、従来からベントスロットと呼ばれる凹溝群が設けられている。これらのベントスロットはガス抜きの目的で設けられるものであり、ペットボトルが異常な内圧を受けた場合にキャップとの隙間から内圧を逃がすことにより、キャップが飛ぶ危険を防止するものである。ベントスロットをキャップ側に設けた一例が特許文献1である特開平10−1150(1998−1150)号公報に記載されており、ボトル側に設けた一例が特許文献2である特開2001−311696号公報に記載されている。
【0004】
このような炭酸飲料用のペットボトルのベントスロット形状については、米国のアルコア社の規格969−1810(以下、アルコア規格と記す)が全世界で共通して採用されており、ペットボトルメーカーはこのアルコア規格に基づいて成形用金型を設計・製作し、成形されたペットボトルの管理もこのアルコア規格に基づいてなされている。
【0005】
図5と図6はアルコア規格に基づいて成形されたベントスロット付きのペットボトルの口部11の構造を示すもので、口部11のネジ山13が円周360度の範囲内に4箇所において所定幅にわたり完全に切断されて凹溝12が形成されており、これらの凹溝群によりベントスロットが形成されている。このようにアルコア規格ではベントスロットを形成する凹溝12の深さはネジ山の高さに等しく、凹溝12の底面はペットボトルの口部11の外周面と同一面となっている。
【0006】
一方、ホットパック充填用のペットボトルについては、炭酸飲料用のペットボトルとは異なり従来ベントスロットは必要がないと考えられてきた。その理由は、ホットパック充填用のペットボトルは口部を白化結晶化させて耐熱性を持たせたプリフォームをブロー成形したものであり、通常は87℃で内容物のホットパック充填が行なわれる。このためその後に室温まで冷却されるに連れてペットボトルの内部は減圧された状態となっている。従って内圧の存在する炭酸飲料用のペットボトルとは異なり、ベントスロットを設けなくてもキャップが飛ぶおそれがないからである。
【0007】
ところが、消費者がいったん開栓した後に内容物を残したままでリシールする場合があり、この際に腐敗菌が侵入して腐敗が進行すると、内容物の分解ガスによって0.7MPa程度の内圧が発生する場合があることが判明した。また最近多くなりつつある店頭での電子レンジなどによる加熱販売を行なうケースにおいても、ペットボトルに異常な内圧が発生する場合があることが判明した。このようにベントスロットのないペットボトルに高い内圧が加わった場合には、開栓時にキャップ飛び等の市場トラブルが発生する可能性がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するためには、炭酸飲料用のペットボトルと同様のベントスロットをホットパック充填用のペットボトルの口部にも形成すればよいと考えられる。このためには、口部にベントスロットを設けたプリフォームをインジェクション成形したうえ、耐熱性を持たせるための口部の白化結晶化を行なわねばならない。しかし、ネジ山にベントスロットを設けるとインジェクション成形時における樹脂の流れが悪化し、ウエルドと呼ばれるしわ状の欠陥が発生し易くなる。またインジェクション成形時における樹脂の充填密度の不均一が発生し易くなるため、白化結晶化の際に口部が不均一に変形して口部天面のフラット性が不完全となり、シール性が損なわれる等の問題が発生する。このため、ホットパック充填用のペットボトルや加熱販売用のペットボトルの口部には、ベントスロットを付けることが容易ではなく、前記したような市場トラブルが発生する可能性が残されていた。
【0009】
従って本発明の目的は、インジェクション成形時における樹脂の流れを悪化させたり、口部天面のフラット性を損なったりすることなく、白化結晶化が必要なペットボトルの口部にベントスロットを付けることを可能とし、これによってキャップ飛び等の市場トラブルを確実に防止することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した従来の課題を解決するためになされたものであり、口部外周にキャップ係合用のネジ山を備えたペットボトルの口部構造において、ネジ山の円周360度の範囲内に4個以上の凹溝を備え、各凹溝の最大深さをネジ山高さの20%−80%としたことを特徴とするものである。
【0011】
このような凹溝により構成されたベントスロットは、異常な内圧を受けた場合に内圧を逃がすために役立ち、キャップ飛び等の市場トラブルを確実に防止することができる。しかも本発明においてはベントスロットを構成する各凹溝の最大深さをアルコア規格の20%−80%としたので、インジェクション成形時における樹脂の流れを悪化させたり、白化結晶化のための熱処理時に口部天面のフラット性が損なわれたりすることがない。
【0012】
本発明においては、各凹溝が周方向に略等間隔で設けられていることが好ましい。これによってキャップの保持力が均等に作用し、より優れたキャップ飛び防止効果を得ることができる。また本発明においては、隣接する上下のネジ山に形成された凹溝が略同一列に配置されていることが好ましい。これによってガスの流動抵抗が小さくなり、より優れたガス抜き効果を得ることができる。
【0013】
また本発明においては、各凹溝のネジ山に沿った断面がなだらかな曲面形状であることが好ましい。これによって、アルコア規格のように各凹溝をシャープな形状とした場合よりもインジェクション成形時における樹脂の流れが良くなり、ウエルドと呼ばれる筋状の欠陥が発生しにくくなる。また、インジェクション成形時における樹脂の充填密度が均一になるため、白化結晶化の際に口部天面が変形することが防止でき、フラット性が損なわれることがない。さらに本発明においては、各凹溝のネジ山に沿った幅の合計値が、ネジ山全長の30%−70%であることが好ましい。これによって、キャップの保持性能と開栓時のキャップ飛び防止性能とを両立させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1と図2は本発明の第1の実施形態を示すもので、ホットパック充填用のペットボトルまたは加温販売用のペットボトルの口部1のみが示されている。
口部1にはピルファープルーフ式のスクリューキャップを螺合させるためのネジ山3が形成されている。この実施形態ではネジ山3は一条ネジであり、ネジ始め部4、第1ネジ山5、第2ネジ山6、図1の背面側に位置するネジ終端部とからなるものである。ネジ山の下方には従来と同様にサポートリング7と、環状突起8とが形成されている。
【0015】
上記のネジ山3には、円周360度の範囲内に4個以上の凹溝2が形成され、これらの凹溝群によりベントスロットが形成されている。この実施形態では凹溝2はネジ山3の円周360度の範囲内に略等間隔に形成されている。ネジ山3の円周360度の範囲内における凹溝2の数が4未満であると、十分なガス抜き効果が得られない。ただし凹溝2の数を増加させるとネジ山3の有効ネジ山長さが短くなりキャップの保持力が減少するので、凹溝2の数は4−10とすることが好ましい。凹溝2を略等間隔に配置するのは、キャップ保持力を均等にしてキャップ飛び防止効果を高めるためである。
【0016】
図2に示されるように、各凹溝2のネジ山3の長手方向に沿った断面形状は、なだらかな曲面形状となっており、その最大深さdはネジ山高さhの20%−80%となっている。前記したように、アルコア規格ではベントスロットを形成する凹溝の深さdはネジ山高さhに等しくなっているが、本発明ではこのように凹溝2をアルコア規格の20%−80%と浅く形成することによって、インジェクション成形時における樹脂の流れ悪化を防止するとともに、充填密度を均一化し、口部の白化結晶化時における口部天面の変形を防止する。最大深さdをネジ山高さhの20%未満とするとガス流路が確保できず、十分なキャップ飛び防止効果が得られない。逆に80%を越えるとウエルドを発生させたり、白化結晶化による口部天面の変形を招いたりする。
【0017】
また、各凹溝2のネジ山3の長手方向に沿った断面形状をなだらかな曲面形状とすることによって、インジェクション成形時における樹脂の流れ悪化を防止することができる。この実施形態では口部1の外径が27mmであり、各凹溝2の断面形状は曲率半径が4mmの円弧状となっている。
【0018】
図1に示されるように、隣接する上下のネジ山3に形成された凹溝2を略同一列上に配置することが好ましい。すなわち、第1ネジ山5と第2ネジ山6の凹溝2、2の位置が上下方向に一致しており、ガスが直線的に流出できるようにしておくことが好ましい。ただしネジ始め部4やネジ終端部では、ネジ本来の特性や成形上の問題から必ずしも同一列上に配置する必要はなく、多少位置をずらしたり、省略したりしてもよい。
【0019】
このようにして形成された各凹溝2のネジ山3に沿った幅の合計値は、ネジ山全長の30%−70%とすることが好ましい。30%未満であると十分なキャップ飛び防止効果が得られず、70%を越えるとキャップ保持性能が低下するので好ましくない。この実施形態ではこの比率は約40%となっている。
このほか、各凹溝2の断面積の合計値は、図6に示したアルコア規格における凹溝12の断面積の40%−60%程度とすることが好ましい。小さ過ぎるとガス抜きが十分に行われず、大きすぎるとシール性能に問題が生ずるので好ましくはない。
【0020】
図3と図4に示す第2の実施形態では、第1ネジ山5と第2ネジ山6の凹溝2、2の位置が上下方向に半ピッチずらしてある。このような構造ではガスの流れは斜め方向あるいはジグザグ状になるが、各凹溝2の最大深さをネジ山高さの20%−80%とし、かつ各凹溝2のネジ山3に沿った幅の合計値は、ネジ山全長の30%−70%とすることにより、十分なキャップ飛び防止効果を得ることができる。
【0021】
以上に説明した本発明の効果を確認するため、以下の実験を行なった。
(実験1)
ネジ山3の円周360度の範囲内における凹溝2の数を8とした第1の実施形態の通りの構造(A)、ネジ山3の円周360度の範囲内における凹溝2の数を9とした構造(B)、第2の実施形態の通りの構造(C)の3種類の口部構造を成形するための金型を試作し、プリフォームをインジェクション成形した。いずれも樹脂の流れは良好で、ウエルドの発生はなかった。またこれらのプリフォームの口部を加熱して白化結晶化させたが、口部天面が変形することもなく、インジェクション成形における充填の不均質や充填不足は発生しなかった。これに対して図5、図6に示したアルコア規格の通りの口部構造を持つプリフォームをインジェクション成形した場合にはウエルドが発生し、また白化結晶化の段階で結晶化変形が発生し、口部天面が変形して満足なシール性を得ることができなかった。
【0022】
(実験2)
実験1で作成したA,B,Cの3種類のプリフォームと、比較例としてベントスロットのないプリフォームとをブロー成形して4種類のペットボトルを10本ずつ製造し、それぞれに圧縮空気による0.7MPaの内圧を加えてキャップ飛びテストを行なった。比較例のペットボトルは10本全てがキャップ飛びしたが、A,B,Cのプリフォームから成形されたペットボトルは10本中、キャップ飛びした本数はそれぞれ2本、0本、1本であった。この実験により、凹溝が略同一列に配置されているA,Bの構造がCの構造よりも優れ、また凹溝の数が多い方が優れることが分かる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明のベントスロット付きボトルの口部構造によれば、ペットボトルをリシール使用して腐敗菌による内圧が発生したり、電子レンジなどの加熱により高い内圧が発生した場合にも内圧を逃がすことができ、開栓時のキャップ飛び等の市場トラブルを防止できる。しかもベントスロットによるシール性の低下のおそれもない。従って本発明は、ホットパック充填用のペットボトルや店頭で加温販売されるペットボトル等の口部構造として特に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すペットボトル口部の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示すペットボトル口部の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すペットボトル口部の正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すペットボトル口部の平面図である。
【図5】アルコア規格に基づいて成形された従来のベントスロット付きのペットボトルの口部構造を示す正面図である。
【図6】アルコア規格に基づいて成形された従来のベントスロット付きのペットボトルの口部構造を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ペットボトルの口部
2 凹溝
3 ネジ山
4 ネジ始め部
5 第1ネジ山
6 第2ネジ山
7 サポートリング
8 環状突起
Claims (5)
- 口部外周にキャップ係合用のネジ山を備えたペットボトルの口部構造において、ネジ山の円周360度の範囲内に4個以上の凹溝を備え、各凹溝の最大深さをネジ山高さの20%−80%としたことを特徴とするベントスロット付きボトルの口部構造。
- 請求項1に記載のベントスロット付きボトルの口部構造において、各凹溝が周方向に略等間隔で設けられていることを特徴とするベントスロット付きボトルの口部構造。
- 請求項1または請求項2に記載のベントスロット付きボトルの口部構造において、隣接する上下のネジ山に形成された凹溝が略同一列に配置されていることを特徴とするベントスロット付きボトルの口部構造。
- 請求項1から請求項3の何れかに記載のベントスロット付きボトルの口部構造において、各凹溝のネジ山に沿った断面がなだらかな曲面形状であることを特徴とするベントスロット付きボトルの口部構造。
- 請求項1から請求項4の何れかに記載のベントスロット付きボトルの口部構造において、各凹溝のネジ山に沿った幅の合計値が、ネジ山全長の30%−70%であることを特徴とするベントスロット付きボトルの口部構造。
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-
2003
- 2003-03-25 JP JP2003081794A patent/JP2004043024A/ja not_active Withdrawn
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