JP2004036705A - バタフライ弁及びこれを用いた貯水槽 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この発明のバタフライ弁1は、中空部を流路5とする筒状の弁箱2と、弁体6とを備えている。弁体6は、回動軸7を中心として回動し得るものとなされている。弁箱2の周壁部3には、流路5に大気が流入する複数個の大気流入孔8が周方向に並んで設けられている。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、上水、下水、工水、農水等の水に対して使用されるバタフライ弁及びこれを用いた貯水槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、送水管内を流れる水の流量を弁によって制限すると、弁よりも下流側では急激且つ局所的に圧力が低下する。この圧力の低下によって水中に含まれる溶存ガスが析出して気泡が現れ始め、この気泡が一定量を超えると凝集し空洞となる。この空洞は圧力低下が回復するのに伴って崩壊していく。このような現象をキャビテーションと呼んでいる。このキャビテーションが発生すると、衝撃音や振動が発生したり、弁や配管に壊食等のダメージを与えるという問題が生じる。
【0003】
このキャビテーションの防止対策として、従来より様々な方法が提案されており、その一つとして、キャビテーションをもたらす圧力低下領域に大気を注入する方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、配水槽や減圧水槽等の貯水槽内の水に対してその流量や圧力を制御する弁として、例えばバタフライ弁が広く用いられている。しかしながら、このバタフライ弁は、他の弁(例えばグローブ弁)と比較すると、キャビテーションが発生し易いという問題をかかえている。
【0005】
そこで、キャビテーションの防止対策を講じるため、バタフライ弁に対して上述した大気注入方法を適用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、バタフライ弁は、一般に、その弁体の開度が増減するに伴って圧力低下領域の位置が移動するという特性を有しており、そのため、大気の圧力低下領域への注入位置を決定することは困難であり、キャビテーションを効果的に抑制することができなかった。
【0007】
この発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、圧力低下領域に空気を確実に注入し得て、キャビテーションを効果的に防止することのできるバタフライ弁及びこれを用いた貯水槽を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1発明は、中空部を流路とする筒状の弁箱と、該弁箱の流路内に回動軸を中心として回動自在に設けられた弁体とを備えたバタフライ弁において、弁箱の周壁部に、流路に大気が流入する複数個の大気流入孔が周方向に並んで設けられていることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
このバタフライ弁では、弁箱の周壁部に、複数個の大気流入孔が周方向に並んで設けられていることから、弁開度の増減に伴って圧力低下領域の位置が移動した場合であっても、これら複数個の大気流入孔のうち、圧力低下領域に近接した位置にある少なくとも1個の大気流入孔から大気(即ち、大気圧の空気又はこれに近い圧力の空気)が流路に流入し得るものとなる。そのため、圧力低下領域に大気を確実に注入することができて、キャビテーションを効果的に防止することができる。
【0010】
また、前記複数個の大気流入孔は、弁箱の周壁部のノズル側の略半周部における、その周長の半分の長さ位置を境としその両側に位置する2つの略1/4周部のうち少なくとも一方に、ノズル側の開口部を流通する水の最速部分の、弁開度の増減に伴い移動する軌跡線に沿って周方向に並んで設けられていることが望ましい(請求項2)。
【0011】
この場合には、圧力低下領域に大気を更に確実に注入し得るものとなる。その理由は次のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明者の研究によれば、バタフライ弁においては、キャビテーションをもたらす圧力低下領域は、ノズル側の開口部を流通する水の最速部分の下流側近傍で形成されることが判明した。さらに、当該水の最速部分は、弁開度が極めて小さい場合には、下流側へ回動した弁体の半部の先端部の近傍位置に存在しているが、弁開度が増大するのに伴い、当該位置から弁箱の周壁部の回動軸との交差部側へと移動するとともに、この水の最速部分の移動に伴い、圧力低下領域も回動軸側へと移動することが本発明者の研究により判明した。そこで、この発明では、複数個の大気流入孔を、弁体の周壁部のノズル側の略半周部における2つの略1/4周部のうち少なくとも一方に、前記水の最速部分の、弁開度の増減に伴い移動する軌跡線に沿って周方向に並べて設けることとした。こうすることにより、弁開度が増減した場合であっても、複数個の大気流入孔のうち、水の最速部分に近接した位置にある少なくとも1個の大気流入孔から大気が流路に流入し得るものとなり、そのため、大気を圧力低下領域に更に確実に注入し得るものとなる。この結果、キャビテーションがより効果的に防止されるものとなる。
特にこの発明に係るバタフライ弁では、大気流入孔の個数は3個以上であって、これら3個以上の大気流入孔が、前記略1/4周部において、下流側に凸の略円弧状に周方向に並んでいることが望ましい。
【0013】
また、前記各大気流入孔の最小部の孔径は、流路の口径に対して1/500〜1/100の範囲に設定されていることが望ましい(請求項3)。
【0014】
その理由は次のとおりである。すなわち、大気流入孔の最小部の孔径が流路の口径に対して1/500未満である場合には、大気流入孔の最小部の孔径が小さすぎるために大気が流路に流入し難くなるからであり、一方、1/100を超えた場合には、流路を流れる水がこの大気流入孔を通って流出し易くなるからである。
【0015】
また、前記各大気流入孔に大気吸入管が接続されるとともに、この大気吸入管に逆止め弁が大気の吸入方向への流れを許容する向きに設けられていることが望ましい(請求項4)。
【0016】
この場合には、大気吸入管に逆止め弁が所定の向きにして設けられているので、大気は大気吸入管を通って流路に流入し得るものとなる一方、流路を流れる水は大気流入孔を通って流出できなくなる。そのため、流路を流れる水の漏出を防止することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、第2発明は、水位自動制御装置を備え、該水位自動制御装置に上記第1発明に係るバタフライ弁を用いた貯水槽であって、前記バタフライ弁の各大気流入孔に大気吸入管が接続されるとともに、この大気吸入管の吸入口が貯水槽内の水の水面位置よりも高位置にて該貯水槽に接続されていることを特徴としている(請求項5)。
【0018】
この場合には、大気吸入管の吸入口が貯水槽内の水の水面位置よりも高位置にて該貯水槽に接続されているので、もし仮に流路を流れる水が大気流入孔を通って流出した場合であっても、この流出した水は貯水槽内に入り込み、外部に漏出するのが防止される。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1において、(30)は、この発明の第1実施形態に係る貯水槽である。この貯水槽(30)は、配水槽や減圧水槽等として設置されるものであって、同図に示すように水位自動制御装置(20)を備え、この水位自動制御装置(20)によって貯水槽(30)内の水(W)の水位が制御されるものとなされている。この第1実施形態の貯水槽(20)では、水位自動制御装置(20)にバタフライ弁(1)が用いられている。なお、同図において、矢印Fは水の流れを示している。また、この貯水槽(30)には、該貯水槽(30)内に収容された水(W)を排出するための排出口(図示せず)が設けられている。
【0021】
この貯水槽(30)において、バタフライ弁(1)の入口側及び出口側には、図2に示すように、それぞれ流入管(35)及び流出管(36)がバタフライ弁(1)を挟んで配置されるとともに、この状態で、流入管(35)及び流出管(36)が、それらのフランジ部(35a)(36a)同士がボルト−ナット(39)により締結されることにより、互いに連結されており、これにより、バタフライ弁(1)の入口及び出口にそれぞれ流入管(35)及び流出管(36)が接続されている。さらに、流出管(36)は、図1に示すように貯水槽(30)内に向かって延びており、その流出口(37)が貯水槽(30)内に配置されている。
【0022】
図3は図2中のIII−III線から見た側面図、図4は図2中のIV−IV線から見た一部切欠き正面図である。また、図5はバタフライ弁(1)を全閉状態で示す、図3に対応する一部切欠き側面図、図6は図5中のVI−VI線から見た正面図である。
【0023】
バタフライ弁(1)は、図2及び図5に示すように偏心形のものであって、中空部を流路(5)とする円筒状の弁箱(2)と、該弁箱(2)の流路(5)を横断状に貫通して設けられた弁棒からなる回動軸(7)とを備えている。さらに、この回動軸(7)に略円板状の弁体(6)が弁箱(2)の流路(5)内にて固着されており、これにより、弁体(6)が回動軸(7)を中心として回動し得るものとなされている。また、弁箱(2)の周壁部(3)には、ゴム製シートリング(4)が装着されている。なお、この発明に係るバタフライ弁は、偏心形のものに限定されるものではなく、同心形のものをはじめ様々な形式のものであっても良いことはもちろんである。
【0024】
このバタフライ弁(1)において、図2に示すように、回動軸(7)の一端は弁箱(2)の外側に突出し、この突出部に略円形状のピニオン(15)が取り付けられている。さらに、図1及び図2に示すように、このピニオン(15)に扇形ギヤ(16)が噛合している。この扇形ギヤ(16)は、ボルトの軸部からなる支軸(16a)を介して、弁箱(2)に取り付けられた支持板(18)で支持されている。さらに、この扇形ギヤ(16)には揺動腕(17)が延設され、この揺動腕(17)の先端部が上下に移動することにより、扇形ギヤ(16)が支軸(16a)を中心として揺動し得るものとなされている。
【0025】
図1において、(32)は、貯水槽(30)内の水(W)の水面(S)と共に昇降するフロートである。このフロート(32)にはフロート軸(33)が上方突出状に設けられている。さらに、このフロート軸(33)の上端部には、リンク腕(34)を介して前記揺動腕(17)の先端部が連結されている。そして、貯水槽(30)内の水(W)の水位が増減するのに伴い、フロート軸(33)の上端部が上下に移動し、この移動に伴い、リンク腕(34)を介して揺動腕(17)の先端部が上下に移動し、これにより、扇形ギヤ(16)が上述したように支軸(16a)を中心に揺動し得るものとなる。そして、この扇形ギヤ(17)の揺動動作に伴い、これと噛合しているピニオン(15)が回転し、これにより、弁体(6)の開閉動作が行われるものとなされている。こうして弁体(6)の開閉動作が行われることにより、貯水槽(30)内の水位に応じて弁箱(2)の流路(5)を流れる水量が増減し、もって貯水槽(30)内の水位が自動的に制御されるものとなる。
【0026】
なお、この弁体(6)は、図5に示した全閉位置から同図において反時計回りに回動軸(7)を中心に回動することにより、その弁開度が増大し、水の貯水槽(20)への流入を許容するものとなされている。図5において、(19)は、弁体(6)とシートリング(4)とのシール部を示している。
【0027】
ここで、この明細書において、「ノズル側」とは、弁体(6)が全閉位置から開き方向へ回動する場合、回動軸(7)を境とし、下流側へ回動する弁体(6)の半部が存在する側であり、図4及び図5では回動軸(7)より下側である。一方、「オリフィス側」とは、弁体(6)が全閉位置から開き方向へ回動する場合、回動軸(7)を境とし、上流側へ回動する弁体(6)の半部が存在する側であり、図4及び図5では回動軸(7)より上側である。
【0028】
この弁箱(2)の周壁部(3)は、図4に示すように、ノズル側の略半周部(3A)(これを「ノズル側半周部」という。)と、オリフィス側の略半周部(3B)(これを「オリフィス側半周部」という。)とからなる。さらに、ノズル側半周部(3A)は、その周長の半分の長さ位置(矢印Hの位置)を境とし、その両側に位置する2つの略1/4周部(X)(Y)からなる。なお、各略1/4周部(X)(Y)は境部(矢印Hの位置の部分)を含むものとする。
【0029】
而して、この実施形態のバタフライ弁(1)においては、その弁開度は、順次、図7、図9、図11及び図13に示すように増大していくものであって、この弁開度の増大に伴って、ノズル側の開口部(12A)(即ち、弁箱(2)の周壁部(3)のノズル側半周部(3A)の内周面と、下流側へ回動する弁体(6)の半部の周縁部との間の開口部)を流通する水の最速部分(B)は、順次、図8、図10、図12及び図14に示すように、下流側へ回動する弁体(6)の半部の先端部の近傍位置から弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へと移動していく。これを説明すると次のとおりである。
【0030】
すなわち、弁体(6)が全閉位置から図7に示すように僅かに開いた場合、図8に示すようにノズル側の開口部(12A)は極めて細い略三日月状に形成される。このノズル側開口部(12A)を流通する水のうち最速部分(B)は、下流側へ回動する弁体(6)の半部の先端部の近傍位置に存在する。しかるに、この最速部分(B)の下流側近傍には、図7に示すようにキャビテーションをもたらす圧力低下領域(N)が発生する。なお、図8において、(C)は、ノズル側開口部(12A)の開口面積が狭すぎるために流速が遅い部分を示している。
【0031】
次いで、弁体(6)の開度が図9に示すように少し増大した場合、図10に示すようにノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へ少し移動する。この水の最速部分(B)の移動に伴い、図9に示すようにキャビテーションをもたらす圧力低下領域(N)も回動軸(7)側へ少し移動することとなる。なお、図10において、(A)は、ノズル側開口部(12A)の開口面積が広すぎるために流速が遅くなった部分を示している。
【0032】
次いで、弁体(6)の開度が図11に示すように更に増大した場合、図12に示すようにノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へ更に少し移動する。この水の最速部分(B)の移動に伴い、図11に示すようにキャビテーションをもたらす圧力低下領域(N)も回動軸(7)側へ更に少し移動することとなる。なお、同図において、(12B)は、オリフィス側の開口部(即ち、弁箱(2)の周壁部(3)のオリフィス側半周部(3B)の内周面と、上流側へ回動する弁体(6)の半部の周縁部との間の開口部)を示している。
【0033】
次いで、弁体(6)の開度が図13に示すように更に一層増大した場合、図14に示すようにノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へ更に一層移動することとなる。この水の最速部分(B)の移動に伴い、図13に示すようにキャビテーションをもたらす圧力低下領域(N)も回動軸(7)側へ更に一層移動することとなる。
【0034】
以上のように、弁体(6)の開度が増大するのに伴って、ノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、下流側へ回動する弁体(6)の半部の先端部の近傍位置から弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へと移動することが分かる。図3及び図5において、(L)は、弁開度の増大に伴って移動する、略1/4周部(X)の外周面側から見た水の最速部分(B)の軌跡線を示している。
【0035】
而して、このバタフライ弁(1)では、図3及び図5に示すように、略1/4周部(X)には、流路(5)に大気が流入する4個の大気流入孔(8)が、前記軌跡線(L)に沿って周方向に並んで穿設されている。この実施形態では、前記4個の大気流入孔(8)は、図5に示すように、前記略1/4周部(X)におけるシール部(19)より下流側の部分において、下流側に凸の略円弧状に周方向に並んで穿設されている。
【0036】
さらに、図4に示すように、各大気流入孔(8)にはニップル(9)を介してプラスチック製又は金属製の大気吸入管(10)が接続されている。そして、図1に示すように、これら大気吸入管(10)が、貯水槽(30)に取り付けられた消音筒(38)内を通って貯水槽(30)内に入り込んでいる。そして、これら大気吸入管(10)の吸入口(11)が、貯水槽(30)内の水(W)の満水時の水面位置よりも高位置にて貯水槽(30)に臨んで該貯水槽(30)に接続されている。そのため、貯水槽(30)内の貯水量に関係なく、常時、吸入口(11)から大気を吸入し得るものとなされている。一方、もし仮に弁箱(2)の流路(5)から水が大気流入孔(8)を通って流出した場合であっても、この流出した水は、大気吸入管(10)を通って貯水槽(30)内へと流れ込むものとなり、外部へは漏出しないものとなされている。
【0037】
さらに、図4に示すように、各大気流入孔(8)の最小部の孔径であるニップル(9)の孔径(d)は、流路(5)の口径(D)に対して1/500〜1/100の範囲に設定されており、具体的に示すと、この孔径(d)は例えば2〜6mmの範囲に設定されている。なお、図5〜図14では、説明の便宜上、ニップル(9)及び大気吸入管(10)は図示されていない。
【0038】
次に、このバタフライ弁(1)の動作について説明する。
【0039】
貯水槽(30)内の水(W)が満水状態であるとき、図5及び図6に示すように弁箱(2)の流路(5)は弁体(6)によって完全に閉塞されており、すなわち弁体(6)は全閉位置にある。
【0040】
貯水槽(30)内の水(W)が減少してその水位が低下すると、これに伴い、フロート軸(33)の先端部が降下する。これにより、上述したように揺動腕(17)の先端部が降下して扇形ギヤ(16)が支軸(16a)を中心として揺動され、これによりピニオン(16)が回転されて弁体(6)が開き方向に回動される。このように貯水槽(20)内の水(W)の水位が低下するのに伴って、弁体(6)の開度が順次、図7、図9、図11及び図13に示すように増大していく。
【0041】
而して、弁体(6)が全閉位置から図7に示すように僅かに開いた場合、ノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、図8に示すように下流側へ回動する弁体(6)の半部の先端部の近傍位置にあり、この水の最速部分(B)の下流側近傍にキャビテーションをもたらす圧力低下領域(N)が発生する(図7参照)。而して、この水の最速部分(B)の近傍には、4個の大気流入孔(8)のうち1個の大気流入孔(8d)が存在しており、そのため、4個の大気流入孔(8)のうち特に当該大気流入孔(8d)から大気が流路(5)内に流入しこれが圧力低下領域(N)に注入されるものとなる。そのため、この弁開度であってもキャビテーションを効果的に防止することができる。なお、この大気流入孔(8d)は、弁箱(2)の周壁部(3)のノズル側半周部(3A)の前記境部(H)に設けられている。
【0042】
次いで、弁体(6)の開度が図9に示すように少し増大した場合、図10に示すようにノズル側開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へ少し移動する。この移動に伴い、圧力低下領域(N)も図9に示すように回動軸(7)側へ少し移動する。而して、この水の最速部分(B)の近傍には、4個の大気流入孔(8)のうち1個の大気流入孔(8c)が存在しており、そのため、4個の大気流入孔(8)のうち特に当該大気流入孔(8c)から大気が流路(5)内に流入しこれが圧力低下領域(N)に注入されるものとなる。そのため、この弁開度であってもキャビテーションを効果的に防止することができる。
【0043】
次いで、弁体(6)の開度が図11に示すように更に増大した場合、図12に示すようにノズル側開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へ更に移動する。この移動に伴い、圧力低下領域(N)も図11に示すように回動軸(7)側へ更に移動することとなる。而して、この水の最速分部(B)の近傍には、4個の大気流入孔(8)のうち1個の大気流入孔(8b)が存在しており、そのため、4個の大気流入孔(8)のうち特に当該大気流入孔(8b)から大気が流路(5)内に流入しこれが圧力低下領域(N)に注入されるものとなる。そのため、この弁開度であってもキャビテーションを効果的に防止することができる。
【0044】
次いで、弁体(6)の開度が図13に示すように更に一層増大した場合、図14に示すようにノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)は、弁箱(2)の周壁部(3)の回動軸(7)との交差部(13)側へ更に一層移動する。この移動に伴い、圧力低下領域(N)も図13に示すように回動軸(7)側へ更に一層移動することとなる。而して、この水の最速分部(B)の近傍には、4個の大気流入孔(8)のうち1個の大気流入孔(8a)が存在しており、そのため、4個の大気流入孔(8)のうち特に当該大気流入孔(8a)から大気が流路(5)内に流入しこれが圧力低下領域(N)に注入されるものとなる。そのため、この弁開度であってもキャビテーションを効果的に防止することができる。
【0045】
なお、図11及び図13に示すように、弁体(6)の開度がある程度増大した場合には、オリフィス側の開口部(12B)を流通する水によって別の圧力低下領域(N’)が形成される。しかしながら、この圧力低下領域(N’)はその圧力低下量が小さく、そのため、もし仮にこの圧力低下領域(N’)でキャビテーションが発生した場合であっても、当該キャビテーションの発生による影響(例:衝撃音や振動の発生、弁や配管の壊食)は極めて小さい。そのため、この圧力低下領域(N’)で発生するキャビテーションについては、必ずしもその対策を講じることを要しない。
【0046】
以上の構成のバタフライ弁(1)によれば、弁箱(2)の周壁部(3)のノズル側半周部(3A)の略1/4周部(X)に、4個の大気流入孔(8)が周方向に並んで設けられているので、弁体(6)の開度の増減によって圧力低下領域(N)の位置が移動した場合であっても、4個の大気流入孔(8)のうち、圧力低下領域(N)に近接した位置にある少なくとも1個の大気流入孔から大気が流路(5)内に流入し得るものとなり、大気を圧力低下領域(N)に確実に注入し得て、キャビテーションを効果的に防止することができる。したがって、このバタフライ弁(1)を用いることによって、キャビテーションによる衝撃音や振動音の発生を防止することができる。
【0047】
しかも、前記略1/4周部(X)において、4個の大気流入孔(8)は、ノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)の、弁開度の増減に伴い移動する軌跡線(L)に沿って周方向に並んでいるので、大気を圧力低下領域(N)に更に確実に注入することができる。
【0048】
さらに、大気流入孔(8)の最小部の孔径であるニップル(9)の孔径(d)は、流路(5)の口径(D)に対して1/500〜1/100の範囲に設定されているので、大気が流路(5)にスムーズに流入し得るものとなるし、その上、流路(5)を流れる水が大気流入孔(8)を通って流出する不具合を防止することができる。
【0049】
しかも、各大気流入孔(8)には大気吸入管(10)が接続されるとともに、その吸入口(11)が貯水槽(20)内の水(W)の満水時の水面位置よりも高位置にて該貯水槽(20)に接続されているので、もし仮に流路(5)を流れる水が大気流入孔(8)を通って流出した場合であっても、この流出した水を貯水槽(20)内に入れることができる。そのため、流出した水が外部に漏出するのを防止することができる。
【0050】
図15に示したこの発明の第2実施形態に係るバタフライ弁では、各大気流入孔(8)に接続された4個の大気吸入管(10)には、それぞれ逆止め弁(14)が大気の吸入方向への流れを許容する向きに設けられている。他の構成は上記第1実施形態のものと同じである。
【0051】
このバタフライ弁(1)では、大気は大気吸入管(10)を通って流路(5)に流入することができるが、流路(5)を流れる水は、逆止め弁(8)の作用によって大気吸入管(10)を通って流出することができなくなる。したがって、このバタフライ弁(1)によれば、流路(5)を流れる水の外部への漏出を防止することができる。
【0052】
以上でこの発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、様々に設定変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態のバタフライ弁(1)では、複数個の大気流入孔(8)は、弁箱(2)の周壁部(3)のノズル側半周部(3A)における2つの略1/4周部(33a)(33b)のうち一方の略1/4周部(X)に設けられているが、この発明のバタフライ弁では、この他に、他方の略1/4周部(Y)に設けられていても良いし、両方の略1/4周部(X)(Y)に設けられていても良い。
【0054】
もとより、この発明に係るバタフライ弁は、水以外の液体に対して使用されるものであっても良い。
【0055】
【発明の効果】
上述の次第で、この第1発明に係るバタフライ弁によれば、弁箱の周壁部に、流路に大気が流入する複数個の大気流入孔が周方向に並んで設けられているので、弁開度の増減に伴って圧力低下領域の位置が移動した場合であっても、これら複数個の大気流入孔のうち、圧力低下領域に近接した位置にある少なくとも1個の大気流入孔から大気が流路に流入し得るものとなり、そのため、圧力低下領域に大気を確実に注入することができて、キャビテーションを効果的に防止することができる。
【0056】
さらに、複数個の大気流入孔は、弁箱の周壁部のノズル側の略半周部における、その周長の半分の長さ位置を境としてその両側に位置する2つの略1/4周部のうち少なくとも一方に、ノズル側の開口部を流通する水の最速部分の、弁開度の増減に伴い移動する軌跡線に沿って周方向に並んで設けられている場合には、圧力低下領域に大気を更に確実に注入することができて、キャビテーションを更に効果的に防止することができる。
【0057】
さらに、各大気流入孔の最小部の孔径は、流路の口径に対して1/500〜1/100の範囲に設定されている場合には、大気を流路にスムーズに流入させることができるし、流路を流れる水がこの大気流入孔を通って流出するのを防止することができる。
【0058】
また、各大気流入孔に大気吸入管が接続されるとともに、この大気吸入管に逆止め弁が大気の吸入方向への流れを許容する向きに設けられている場合には、流路を流れる水の外部への漏出を防止することができる。
【0059】
この第2発明に係る貯水槽によれば、上記第1発明に係るバタフライ弁の大気流入孔に大気吸入管が接続されるとともに、この大気吸入管の吸入口が、上流側又は下流側に設置された貯水槽内の水の水面位置よりも高位置にて該貯水槽に接続されているので、もし仮に流路を流れる水が大気流入孔を通って流出した場合であっても、この流出した水を貯水槽内に入れることができ、そのため、流出した水の外部への漏出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係るバタフライ弁を用いた貯水槽を示す断面図である。
【図2】同バタフライ弁の一部切欠き平面図である。
【図3】図2中のIII−III線から見たバタフライ弁の側面図である。
【図4】図2中のIV−IV線から見たバタフライ弁の一部切欠き正面図である。
【図5】同バタフライ弁を全閉状態で示す、図3に対応する一部切欠き側面図である。
【図6】図5中のVI−VI線から見たバタフライ弁の正面図である。
【図7】同バタフライ弁をその弁開度を僅かに増大した状態で示す一部切欠き側面図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線から見たバタフライ弁の正面図である。
【図9】同バタフライ弁をその弁開度を増大した状態で示す一部切欠き側面図である。
【図10】図9中のX−X線から見たバタフライ弁の正面図である。
【図11】同バタフライ弁をその弁開度を更に増大した状態で示す一部切欠き側面図である。
【図12】図11中のXII−XII線から見たバタフライ弁の正面図である。
【図13】同タフライ弁をその弁開度を更に一層増大した状態で示す一部切欠き側面図である。
【図14】図13中のXIV−XIV線から見たバタフライ弁の正面図である。
【図15】この発明の第2実施形態に係る貯水槽のバタフライ弁を示す、図3に対応する側面図である。
【符号の説明】
1…バタフライ弁
2…弁箱
3…周壁部
3A…ノズル側の略半周部
3B…オリフィス側の略半周部
X、Y…略1/4周部
6…弁体
7…回動軸
8…大気流入孔
10…大気吸入管
12A…ノズル側の開口部
12B…オリフィス側の開口部
20…水位自動制御装置
30…貯水槽
N…圧力低下領域
Claims (5)
- 中空部を流路(5)とする筒状の弁箱(2)と、該弁箱(2)の流路(5)内に回動軸(7)を中心として回動自在に設けられた弁体(6)とを備えたバタフライ弁(1)において、
弁箱(2)の周壁部(3)に、流路(5)に大気が流入する複数個の大気流入孔(8)が周方向に並んで設けられていることを特徴とするバタフライ弁。 - 前記複数個の大気流入孔(8)は、弁箱(2)の周壁部(3)のノズル側の略半周部(3A)における、その周長の半分の長さ位置(H)を境としその両側に位置する2つの略1/4周部(X、Y)のうち少なくとも一方に、ノズル側の開口部(12A)を流通する水の最速部分(B)の、弁開度の増減に伴い移動する軌跡線(L)に沿って周方向に並んで設けられている請求項1記載のバタフライ弁。
- 前記各大気流入孔(8)の最小部の孔径(d)は、流路(5)の口径(D)に対して1/500〜1/100の範囲に設定されている請求項1又は2記載のバタフライ弁。
- 前記各大気流入孔(8)に大気吸入管(10)が接続されるとともに、この大気吸入管(10)に逆止め弁(14)が大気の吸入方向への流れを許容する向きに設けられている請求項1〜3のいずれか1項記載のバタフライ弁。
- 水位自動制御装置(20)を備え、該水位自動制御装置(20)に請求項1〜3のいずれか1項記載のバタフライ弁(1)を用いた貯水槽(30)であって、
前記バタフライ弁(1)の各大気流入孔(8)に大気吸入管(10)が接続されるとともに、該大気吸入管(10)の吸入口(11)が貯水槽(20)内の水(W)の水面位置よりも高位置にて該貯水槽(20)に接続されていることを特徴とする貯水槽。
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JP2015203444A (ja) * | 2014-04-14 | 2015-11-16 | 株式会社栗本鐵工所 | バタフライ弁 |
JP2017176977A (ja) * | 2016-03-29 | 2017-10-05 | 新明和工業株式会社 | 高圧洗浄車 |
-
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- 2002-07-02 JP JP2002192883A patent/JP3749881B2/ja not_active Expired - Lifetime
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