JP2004036488A - 炭化水素吸着材の状態判定装置 - Google Patents

炭化水素吸着材の状態判定装置 Download PDF

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宮原 泰行
Eiji Yamazaki
山崎 英治
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Abstract

【課題】排気ガスの流速の変化に起因する炭化水素吸着材の水分吸着能力の変動を補償でき、排気ガスの流速の変化にかかわらず、炭化水素吸着材の劣化を含む状態を精度良く判定できる炭化水素吸着材の状態判定装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の排気系2に設けられ、排気ガス中の炭化水素および水分を吸着可能な炭化水素吸着材16の状態を判定する炭化水素吸着材の状態判定装置であって、炭化水素吸着材16を通過した排気ガスの湿度VHUMRを検出する湿度検出手段22と、排気ガスの流速を表す流速パラメータVgradを検出する流速パラメータ検出手段24、25、26と、検出された排気ガスの湿度および流速パラメータに応じて、炭化水素吸着材16の状態を判定する吸着材状態判定手段25と、を備えている。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気系に設けられ、排気ガス中の炭化水素および水分を吸着可能な炭化水素吸着材の劣化を含む状態を判定する炭化水素吸着材の状態判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関には、その排気系に、排気ガス中の炭化水素を始動時に吸着する吸着材を備えたものがある。この吸着材は、表面に例えばゼオライトを有し、排気ガス中の炭化水素は、吸着材を通過する際、ゼオライトの細孔に入り込むことによって吸着材に吸着される。また、このような吸着材は、排気ガスにより所定温度以上(例えば100〜250℃)に加熱されると、一旦吸着した炭化水素を脱離し、脱離された炭化水素は、EGRとともに内燃機関へ再循環されることなどによって、大気中に排出されることなく処理されるようになっている。このように、吸着材では、炭化水素の吸着および脱離が繰り返されるため、長期間の使用により、脱離しきれなかった炭化水素の残留量が次第に多くなったり、吸着材の細孔が壊れたりすることがある。その場合には、吸着材が劣化することで、炭化水素の吸着能力が低下した状態になり、吸着材に吸着されなかった炭化水素が大気中に排出されるおそれがあるため、吸着材の状態、特にその劣化を判定する必要がある。
【0003】
このような吸着材の劣化を含む状態を判定する従来の吸着材の状態判定装置として、例えば、本出願人が開示した特開2001−323811号公報が知られている。この状態判定装置は、吸着材における炭化水素および水分の吸着能力が互いに高い相関性を有すること、および吸着材を通過した排気ガスの湿度が吸着材の水分吸着能力を反映することに着目し、この排気ガスの湿度を湿度センサで検出することによって、吸着材の炭化水素の吸着能力の低下、すなわち吸着材の劣化を判定するものである。具体的には、この状態判定装置では、内燃機関の始動後、排気ガス中の水分が吸着材に吸着され、その後、吸着材が飽和するのに伴い、吸着材を通過した排気ガスの検出湿度が所定値分だけ上昇するのに実際に要した時間を計測し、この計測時間が所定の判定時間よりも短いときに、検出湿度の上昇タイミングが早く、水分吸着能力が低下しているとして、吸着材が劣化していると判定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、この状態判定装置では、内燃機関の始動後に、吸着材を通過した排気ガスの湿度が所定値分だけ上昇するのに要した時間を、吸着材の水分吸着能力を表すパラメータとして用い、吸着材の劣化を含む状態が判定される。しかし、吸着材の水分吸着能力は、内燃機関の運転状態などによって変化する排気ガスの流速に応じても変化し、例えば排気ガスの流速が大きいほど低下する。これは、排気ガスの流速が大きくなると、吸着材に対する排気ガスの接触確率および接触時間が小さくなる(すり抜けやすくなる)ことで、吸着材の見かけ上の水分吸着能力が低下するためと考えられる。このため、この状態判定装置では、排気ガスの流速が大きい場合に、吸着材の水分吸着能力が見かけ上、低めに評価されることで、吸着材が正常であるにもかかわらず誤って劣化していると判定され、逆に、排気ガスの流速が小さい場合には、水分吸着能力が高めに評価されることで、吸着材が劣化しているにもかかわらず正常と判定されることがあるなど、吸着材の劣化の判定精度を十分に確保できないおそれがあり、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、排気ガスの流速の変化に起因する炭化水素吸着材の水分吸着能力の変動を補償でき、それにより、排気ガスの流速の変化にかかわらず、炭化水素吸着材の劣化を含む状態を精度良く判定することができる炭化水素吸着材の状態判定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、内燃機関1の排気系2に設けられ、排気ガス中の炭化水素および水分を吸着可能な炭化水素吸着材16の状態を判定する炭化水素吸着材の状態判定装置であって、炭化水素吸着材16を通過した排気ガスの湿度(実施形態における(以下、本項において同じ)下流側検出値VHUMR)を検出する湿度検出手段(下流側湿度センサ22)と、排気ガスの流速を表す流速パラメータ(排気ガス流速Vgrad)を検出する流速パラメータ検出手段(クランク角センサ24、吸気圧センサ26、ECU25、図5のステップ25、図6のステップ38〜40)と、検出された排気ガスの湿度および流速パラメータに応じて、炭化水素吸着材16の状態を判定する吸着材状態判定手段(ECU25、図5のステップ36、図6のステップ41〜44)と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この吸着材状態判定装置によれば、炭化水素吸着材を通過した排気ガスの湿度を検出するとともに、排気ガスの流速を表す流速パラメータを検出し、これらの検出された排気ガスの湿度および流速パラメータに応じて、炭化水素吸着材の状態を判定する。炭化水素吸着材における炭化水素および水分の吸着能力は、互いに高い相関性を有するとともに、炭化水素吸着材を通過した排気ガスの湿度は、炭化水素吸着材の水分吸着能力を反映する。また、前述したように、炭化水素吸着材の水分吸着能力は、排気ガスの流速に応じても変化する。したがって、上記のように、炭化水素吸着材の状態判定のパラメータとして、これを通過した排気ガスの湿度に加えて、流速パラメータを用いることによって、排気ガスの流速の変化に起因する炭化水素吸着材の水分吸着能力の変動を補償することができる。その結果、炭化水素吸着材の劣化などを含む状態を、排気ガスの流速にかかわらず、精度良く判定することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の炭化水素吸着材の状態判定装置において、吸着材状態判定手段は、内燃機関1の始動時からの湿度検出手段の検出値の変化状態に応じて、炭化水素吸着材16の状態を判定する(図5のステップ36、図6のステップ37〜44)ことを特徴とする。
【0009】
排気ガス中の水分は、内燃機関の始動後の初期においては炭化水素吸着材に吸着され、その後、炭化水素吸着材がその水分吸着能力に応じて飽和した時点で、吸着不能の分が炭化水素吸着材を通過するようになる。このため、炭化水素吸着材を通過した排気ガスの湿度は、飽和するまでは低湿度状態に維持され、飽和直後に高湿度側に変化するので、その変化タイミングを含む変化状態は、炭化水素吸着材の水分吸着能力を反映する。したがって、この構成によれば、内燃機関の始動時からの湿度検出手段の検出値の変化状態に応じて、炭化水素吸着材の状態をより精度良く判定することができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2の炭化水素吸着材の状態判定装置において、炭化水素吸着材16の温度状態(エンジン水温TW)を検出する温度状態検出手段(エンジン水温センサ23)をさらに備え、吸着材状態判定手段は、温度検出手段により検出された内燃機関1の始動時における炭化水素吸着材16の温度状態にさらに応じて、炭化水素吸着材16の状態を判定する(図3のステップ12、図4、図6のステップ42)ことを特徴とする。
【0011】
炭化水素吸着材の水分吸着能力は、その温度状態によって変化する。したがって、この構成によれば、内燃機関の始動時における炭化水素吸着材の温度状態にさらに応じて、炭化水素吸着材の状態を判定することによって、内燃機関の始動時および始動後における炭化水素吸着材の実際の温度状態を反映させながら、その状態判定をさらに精度良く行うことができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかの炭化水素吸着材の状態判定装置において、排気系2の炭化水素吸着材16よりも上流側に、炭化水素吸着材16に流入する排気ガスの湿度(上流側検出値VHUMF)を検出する上流側湿度検出手段(上流側湿度センサ21)をさらに備え、吸着材状態判定手段は、上流側湿度検出手段の検出結果にさらに応じて、炭化水素吸着材16の状態を判定する(図5のステップ30〜35、図6のステップ37〜45)ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、炭化水素吸着材を通過した排気ガスの湿度に加えて、炭化水素吸着材の上流側において、それに流入する排気ガスの湿度(上流側湿度)を検出し、検出された上流側湿度にさらに応じて、炭化水素吸着材の状態を判定する。したがって、この上流側湿度の検出結果から、始動後に排気ガスが炭化水素吸着材に実際に到達したタイミングなどを正確に推定でき、それにより、炭化水素吸着材の状態判定をさらに精度良く行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による排気ガス浄化装置を適用した内燃機関を示している。この内燃機関(以下「エンジン」という)1は、図示しない車両に搭載された、例えば4気筒4サイクルエンジンである。エンジン1の吸気管1aには、気筒ごとにインジェクタ1bが設けられており、その燃料噴射時間Toutは、後述するECU25によって制御される。
【0015】
エンジン1の排気系2は、排気マニホルド3を介してエンジン1に接続された排気管4を有しており、この排気管4の途中には、排気ガスを浄化するための2つの三元触媒5、5を有する触媒装置6と、炭化水素を吸着するための炭化水素吸着装置7が設けられている。2つの三元触媒5、5は、排気管4に沿って互いに隣接して配置されており、所定温度(例えば300℃)以上に昇温された活性化状態で、触媒装置6を通過する排気ガス中の有害物質(HC(炭化水素)、COおよびNOx)を、酸化・還元作用によって浄化する。
【0016】
一方、炭化水素吸着装置7は、排気管4の触媒装置6よりも下流側に配置されており、三元触媒5、5が活性化していない冷間状態でのエンジン1の始動期間(例えば、始動後の約30〜40秒間)に、排気ガス中の炭化水素を吸着することによって、大気中に排出される炭化水素量を低減する。図1および図2に示すように、炭化水素吸着装置7は、排気通路切替装置8を介して、触媒装置6の下流端部に連結されており、円筒状のケース11と、このケース11内に配置されたバイパス排気管12と、このバイパス排気管12の途中に配置され、流入した排気ガス中の炭化水素を吸着するための円柱状の炭化水素吸着材(以下、単に「吸着材」という)16と、を備えている。
【0017】
図2に示すように、ケース11とバイパス排気管12との間の断面環状の空間によって、メイン通路13が構成されるとともに、バイパス排気管12の内部スペースによって、バイパス通路14が構成されている。また、ケース11は、その上流端部が上下に二股に分かれており、上側の開口部11aがメイン通路13と連通する一方、下側の開口部11bがバイパス通路14と連通している。
【0018】
バイパス排気管12は、その上流端部がケース11の下側の開口部11bの内面に、下流端部がケース11の下流端部の内面に、それぞれ気密状態で連結されている。また、バイパス排気管12の下流端部には、長孔状の複数(例えば5個)の連通孔12aが、周方向に形成されており、これらの連通孔12aを介して、メイン通路13およびバイパス通路14の下流端部同士が連通している。
【0019】
吸着材16は、表面にゼオライトを担持した金属製のハニカムコア(図示せず)で構成され、炭化水素とともに水分を吸着する特性を有していて、バイパス通路14に流入した排気ガスが吸着材16の内部を通過する際に、その排気ガス中の炭化水素および水分をゼオライトに吸着する。ゼオライトは、高耐熱性を有しており、低温状態(例えば100℃未満)のときに炭化水素を吸着し、所定温度以上(例えば100〜250℃)では、吸着した炭化水素を脱離するという特性を有する。
【0020】
排気通路切替装置8は、触媒装置6の下流側の排気通路を、三元触媒5の活性状態に応じて、メイン通路13とバイパス通路14に選択的に切り替えるためのものである。この排気通路切替装置8は、円筒状の連結管18と、この連結管18内に設けられた回動自在の切替バルブ15とを有している。切替バルブ15は、ECU25により制御される切替バルブ駆動装置19(切替バルブ駆動手段)(図1参照)によって駆動され、図2の実線位置に位置するときには、排気通路をメイン通路13側に切り替える一方、2点鎖線位置に位置するときには、排気通路をバイパス通路14側に切り替える。
【0021】
また、連結管18とエンジン1の吸気管1aとの間には、排気ガスの一部をエンジン1に再循環させるためのEGR管17が連結されており、その途中にEGR制御弁20が取り付けられている。このEGR制御弁20をECU25で制御することによって、EGRの作動・停止およびEGR量が制御される。
【0022】
以上の構成によれば、エンジン1の冷間始動直後には、排気通路切替装置8の切替バルブ15によって、排気通路がバイパス通路14側に切り替えられる。これにより、触媒装置6を通過した排気ガスは、バイパス通路14に導かれ、炭化水素が吸着材16に吸着された後、大気中に排出される。その後、吸着材16への炭化水素の吸着が完了したときに、後述する切替タイミングで、切替バルブ15によって排気通路がメイン通路13側に切り替えられる。これにより、排気ガスは、メイン通路13に導かれ、大気中に排出される。また、EGR制御弁20が開弁し、EGRが作動することによって、排気ガスの一部がEGRガスとして、バイパス通路14およびEGR管17を介して、吸気管1aに再循環される。吸着材16から脱離した炭化水素は、このEGRガスによって吸気管1aに送られ、エンジン1で燃焼される。
【0023】
また、炭化水素吸着装置7のケース11には、吸着材16の上流側および下流に、上流側湿度センサ21(第2湿度検出手段)および下流側湿度センサ22(湿度検出手段)がそれぞれ取り付けられている。湿度センサ21、22のセンサ素子21a、22a(図2参照)は、バイパス通路14内に臨むように取り付けられており、上流側湿度センサ21は、吸着材16に流入する排気ガスの湿度を表す検出値(以下「上流側検出値」という)VHUMFを、下流側湿度センサ22は、吸着材16を通過した排気ガスの湿度を表す検出値(以下「下流側検出値」という)VHUMRを、それぞれECU25に出力する。また、各センサ素子21a、22aは、例えばアルミナやチタニアなどから成るポーラス体で構成されており、その細孔に吸着された水分の量に応じて抵抗値が変化するという特性を利用して湿度を検出し、それに対応した電圧値を検出信号として出力するタイプのものである。このため、図7に示すように、上流側検出値VHUMFおよび下流側検出値VHUMRはともに、湿度が高いほど、それに応じたより低い値を示し、すなわち、実際の湿度とは逆の増減特性を示す。また、下流側湿度センサ22は、温度センサ一体型のものであり、吸着材16を通過した排気ガスの温度THCMを検出し、ECU25に出力する。
【0024】
また、エンジン1の本体には、エンジン水温センサ23およびクランク角センサ24が取り付けられている。エンジン水温センサ23(温度状態検出手段)は、エンジン1のシリンダブロック内を循環する冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを検出し、その検出信号をECU25に出力する。クランク角センサ24(流速パラメータ検出手段)は、エンジン1のクランクシャフト(図示せず)の回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号を、それぞれの所定のクランク角度ごとにECU25に出力する。ECU25は、このCRK信号に基づいてエンジン1の回転数(以下「エンジン回転数」)NEを算出する。また、ECU25には、吸気管1aに設けられた吸気圧センサ26(流速パラメータ検出手段)から、吸気管1a内の絶対圧(以下「吸気管内絶対圧」という)PBAを表す検出信号が、吸気温センサ27から吸気管1a内の吸気温TAを表す検出信号が、それぞれ出力される。さらに、ECU25には、吸着材16が劣化していると判定されたときに点灯する警告ランプ28が接続されている。
【0025】
ECU25は、本実施形態において、流速パラメータ検出手段および吸着材状態判定手段を構成するものである。ECU25は、I/Oインターフェース、CPU、バックアップRAMを含むRAM、およびROM(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されており、さらに、エンジン1の始動後の経過時間を計時する始動後タイマ25aなどを備えている。上述した各種センサからの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。
【0026】
CPUは、各種センサで検出されたエンジンパラメータ信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判別するとともに、その判別結果に応じ、TDC信号の発生に同期して、燃料噴射時間Toutを算出し、その算出結果に基づく駆動信号をインジェクタ1bに出力する。また、CPUは、各種センサの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムやテーブルなどに従って、切替バルブ駆動装置19による切替バルブ15の開閉制御などを行うとともに、吸着材16の状態判定として、その劣化判定処理を実行する。
【0027】
次に、図3〜図7を参照しながら、吸着材16の劣化判定処理について説明する。図3は、吸着材16の劣化判定を実行するか否かを判定するとともに、劣化判定用の各種パラメータを初期化する処理を示している。この処理は、エンジン1の始動直後に1回のみ実行される。
【0028】
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、エンジン水温TWが所定の下限値TWTRSL(例えば0℃)以上でかつ上限値TWTRSH(例えば40℃)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、始動時のエンジン水温TWが、上下限値TWTRSL/Hで規定される所定の温度範囲から外れているときには、吸着材16の劣化判定の実行条件が成立していないとして、劣化判定許可フラグF_MCNDTRSを「0」にセットし(ステップ2)、本処理を終了する。
【0029】
前記ステップ1の答がYESで、エンジン水温TWが所定の温度範囲にあるときには、前回の運転時において、吸着材16からの炭化水素の脱離処理が完全に行われたか否かを判別する(ステップ3)。この判別は、例えば、前回の始動時の脱離処理時に、下流側湿度センサ22の温度検出値THCMが吸着材16の脱離温度(例えば220℃)に達したか否か、あるいはEGR量が所定量に達したか否かに基づいて行われる。このステップ3の答がNOで、前回の運転時に脱離処理が完全に行われていないときには、吸着材16に炭化水素が残留しているために、吸着材16の劣化判定を適正に行えないおそれがあるとして、前記ステップ2を実行し、劣化判定を禁止する。
【0030】
上記ステップ3の答がYESのときには、エンジン1が完全ソーク状態であるか否か、すなわちエンジン1の前回の停止時から今回の始動時までの停止時間(ソーク時間)が十分に長いか否かを判別する(ステップ4)。この判別は、例えば、始動時のエンジン水温TWと吸気温TAとの差TW−TAが、所定温度(例えば5度)以内であるか否かに基づいて行われる。このステップ4の答がNOで、エンジン1が完全ソーク状態でないときには、吸着材16の温度が十分に低下していないために、やはり劣化判定を適正に行えないおそれがあるとして、前記ステップ2を実行し、劣化判定を禁止する。
【0031】
一方、前記ステップ4の答がYESのときには、吸着材16の劣化判定の実行条件が成立しているとして、劣化判定許可フラグF_MCNDTRSを「1」にセットする(ステップ5)。
【0032】
次いで、ステップ6〜12において、劣化判定用のパラメータを初期化する。まず、今回時に上流側湿度センサ21で検出された上流側検出値VHUMFを、その最大値VHUMF_MAXおよび前回値VHUMF_PREの各初期値として設定する(ステップ6、7)。同様に、今回時に下流側湿度センサ22で検出された下流側検出値VHUMRを、その最大値VHUMR_MAXおよび前回値VHUMR_PREの各初期値として設定する(ステップ8、9)。
【0033】
次に、上流側検出値VHUMFが高湿度側に変化した(立ち上がった)ことを「1」で表す上流側立上がりフラグF_HUMF_WETを「0」にリセットする(ステップ10)。また、後述する排気ガス流量積算値Vexを値0にリセットする(ステップ11)。次いで、エンジン水温TWに応じ、図4に示す劣化判定しきい値テーブル(以下「TRSDTテーブル」という)を検索することによって、吸着材16の劣化判定のための劣化判定しきい値TRSDTを設定し(ステップ12)、本処理を終了する。
【0034】
図4に示すように、このTRSDTテーブルでは、劣化判定しきい値TRSDTは、エンジン水温TWが前述した下限値TWTRSLのときには、第1所定値TRSDT1に、またエンジン水温TWが上限値TWTRSHのときには、第1所定値TRSDT1よりも小さな第2所定値TRSDT2に、それぞれ設定され、また、上下限値TWTRSH/Lの間では、TW値が低いほど、より大きな値に設定されている。
【0035】
図5および図6は、吸着材16の劣化判定処理を示している。この処理は、所定の時間間隔(例えば100ms)ごとに同期して実行される。まず、劣化判定許可フラグF_MCNDTRSが「1」であるか否かを判別し(ステップ21)、その答がNOで、劣化判定の実行条件が成立していないときには、そのまま本処理を終了する。
【0036】
また、ステップ21の答がYESで、劣化判定の実行条件が成立しているときには、今回の下流側検出値VHUMRが、その前回値VHUMR_PREよりも大きいか否かを判別する(ステップ22)。この答がYESで、VHUMR>VHUMR_PREのときには、今回の下流側検出値VHUMRを最大値VHUMR_MAXとして設定する(ステップ23)。このように、最大値VHUMR_MAXは、前回時よりも下流側検出値VHUMRが増大(湿度が低下)しているときに随時、更新されるので、吸着材16の下流側における排気ガスの湿度(以下「下流側湿度」という)が高湿度側へ立ち上がり始めるまでの最大値(下流側最低湿度相当値)を表す(図7参照)。上記ステップ22の答がNOのとき、または上記ステップ23の実行後には、ステップ24に進み、今回の下流側検出値VHUMRを前回値VHUMR_PREにシフトする。
【0037】
次いで、次式(1)によって排気ガス流量積算値Vexを算出する(ステップ25)。
Vex = Vex+C*NE*PBA  ・・・(1)
この式(1)から明らかなように、排気ガス流量積算値Vexは、その前回値にエンジン回転数NEと吸気管内絶対圧PBAとの積を累積加算したものであり、前述したように、エンジン1の始動時には、図3のステップ11において初期値0にリセットされている。したがって、この排気ガス流量積算値Vexは、始動後にエンジン1から排出された排気ガスの総流量を表す。なお、式(1)中のCは、エンジン回転数NEと吸気管内絶対圧PBAとの積を排気ガス流量に換算するための所定の換算係数である。
【0038】
次に、上流側立上がりフラグF_HUMF_WETが「1」であるか否かを判別する(ステップ26)。この答がNOで、上流側検出値VHUMFがまだ高湿度側に立ち上がっていないときには、前記ステップ22〜24の下流側検出値VHUMRの場合と同様に、今回の上流側検出値VHUMFが、その前回値VHUMF_PREよりも大きいか否かを判別し(ステップ27)、その答がYESで、VHUMF>VHUMF_PREのときには、今回の上流側検出値VHUMFを最大値VHUMF_MAXとして設定する(ステップ28)。したがって、この最大値VHUMF_MAXは、吸着材16の上流側における排気ガスの湿度(以下「上流側湿度」という)が高湿度側へ立ち上がり始めるまでの最大値(上流側最低湿度相当値)を表す(図7参照)。ステップ27の答がNOのとき、またはステップ28の実行後には、今回の上流側検出値VHUMFを前回値VHUMF_PREにシフトする(ステップ29)。
【0039】
次いで、今回の上流側検出値VHUMFが、前記ステップ28で設定された最大値VHUMF_MAXと所定の立上がり判定用偏差D_VHUMFとの差(=VHUMF_MAX−D_VHUMF)よりも小さいか否かを判別する(ステップ30)。その答がNOのときには(図7の時刻t1以前)、上流側検出値VHUMFがまだ高湿度側に立ち上がっていないとして、上流側立上がりフラグF_HUMF_WETを「0」に維持し(ステップ31)、本処理を終了する。
【0040】
一方、上記ステップ30の答がYESで、VHUMF<(VHUMF_MAX−D_VHUMF)が成立したときには(時刻t1)、上流側検出値VHUMFが高湿度側に立ち上がったとして、上流側立上がりフラグF_HUMF_WETを「1」にセットする(ステップ32)。
【0041】
次いで、ステップ33〜35において、上流側立上がり時(時刻t1)のパラメータを保存する。すなわち、そのときまでに積算された燃料噴射時間toutの積算値sum_toutを、上流側立上がり時の排気ガス熱量積算値Q1として設定し(ステップ33)、そのときの始動後タイマ25aの値tm_astを上流側立上がり時間T1として設定する(ステップ34)とともに、そのときまでに前記ステップ25で積算された排気ガス流量積算値Vexを、上流側立上がり時の排気ガス流量積算値V1として設定し(ステップ35)、本処理を終了する。上記の排気ガス熱量積算値Q1は、エンジン1の始動時から上流側立上がり時までに吸着材16に与えられた排気ガス総熱量を表すものであり、上記のように燃料噴射時間toutを始動時から積算することによって算出される。
【0042】
上記のように上流側検出値VHUMFの立上がりが確定した後には、前記ステップ32の実行により、前記ステップ26の答がYESになるので、その場合には、ステップ36に進み、前記ステップ30の上流側検出値VHUMFの場合と同様にして、下流側検出値VHUMRの立上がりを判別する。すなわち、今回の下流側検出値VHUMRが、前記ステップ23で設定された最大値VHUMR_MAXと所定の立上がり判定用偏差D_VHUMRとの差よりも小さいか否かを判別する。その答がNOのときには(図7の時刻t2以前)、下流側検出値VHUMRがまだ高湿度側に立ち上がっていないとして、そのまま本処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ36の答がYESで、VHUMR<(VHUMR_MAX−D_VHUMR)が成立したときには(時刻t2)、下流側検出値VHUMRが高湿度側に立ち上がったとして、図6のステップ37〜39において、上流側立上がり時から下流側立上がり時までの間(両センサ立上がり間)における各種パラメータの変化量を算出する。すなわち、そのときの燃料噴射時間toutの積算値sum_toutと上流側立上がり時の排気ガス熱量積算値Q1との差(=sum_tout−Q1)を、排気ガス熱量積算値変化量dQとして算出する(ステップ37)。したがって、この排気ガス熱量積算値変化量dQは、両センサ立上がり間に吸着材16に与えられた排気ガス総熱量を表す。また、そのときの始動後タイマ25aの値tm_astと上流側立上がり時間T1との差(=tm_ast−T1)を、時間差dTとして算出する(ステップ38)とともに、そのときの排気ガス流量積算値Vexと上流側立上がり時の排気ガス流量積算値V1との差(=Vex−V1)を、排気ガス流量積算値変化量dVとして算出する(ステップ39)。
【0044】
次に、上記の排気ガス流量積算値変化量dVを時間差dTで割った値(=dQ/dT)を、排気ガス流速Vgradとして設定する(ステップ40)。すなわち、排気ガス流速Vgradは、両センサ立上がり間における排気ガス流量の平均値であり、流路断面が経時的に不変であることから、両センサ立上がり間における排気ガスの平均流速を表す。
【0045】
次いで、この排気ガス流速Vgradと、前記ステップ37で算出した排気ガス熱量積算値変化量dQを用い、次式(2)によって劣化判定パラメータP_TRSを算出する(ステップ41)。
P_TRS = k*dQ*Vgrad  ・・・ (2)
ここで、kは、排気ガスの流速が吸着材16の水分吸着能力に及ぼす影響の度合を表す影響係数であり、実験により決定される。以上のように、この劣化判定パラメータP_TRSは、排気ガス熱量積算値変化量dQ、すなわち、両センサ立上がり間に排気ガスから吸着材16に与えられた排気ガス総熱量を基本値とし、さらにこれに、両センサ立上がり間における排気ガスの流速を表す排気ガス流速Vgradを乗じて補正したものである。したがって、劣化判定パラメータP_TRSは、排気ガス流速Vgradが大きいほど、より大きな値に設定される。
【0046】
次に、上記のようにして算出した劣化判定パラメータP_TRSが、図3のステップ12で設定した劣化判定しきい値TRSDTよりも小さいか否かを判別する(ステップ42)。この答がYESで、P_TRS<TRSDTのときには、下流側検出値VHUMRを立ち上がらせるのに十分な熱量が吸着材16に与えられていないにもかかわらず、下流側検出値VHUMRが早いタイミングで立ち上がったとして(例えば図7の破線VHUMR’)、吸着材16が劣化していると判定し、そのことを表すために、劣化フラグF_TRSDTを「1」にセットする(ステップ43)。
【0047】
一方、ステップ42の答がNOで、P_TRS≧TRSDTのときには、吸着材16に十分な熱量が与えられた後に初めて、下流側検出値VHUMRが立ち上がったとして(例えば図7の実線VHUMR)、吸着材16が劣化していないと判定し、劣化フラグF_TRSDTを「0」にセットする(ステップ44)。
【0048】
ステップ43または44に続くステップ45では、吸着材16の劣化判定が終了したことを受けて、劣化判定許可フラグF_MCNDTRSを「0」にセットし、本処理を終了する。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、劣化判定パラメータP_TRSを劣化判定しきい値TRSDTと比較することによって、吸着材16の劣化を判定する。前述したように、この劣化判定パラメータP_TRSは、排気ガス熱量積算値変化量dQを基本値とし、さらに排気ガス流速Vgradで補正したものである。したがって、劣化判定パラメータP_TRSに、吸着材16に与えられた排気ガス総熱量が反映されるとともに、排気ガスの流速の変化に起因する吸着材16の水分吸着能力の変動を補償することができる。その結果、吸着材16の劣化判定を、排気ガスの流速にかかわらず、精度良く行うことができる。
【0050】
また、排気ガス熱量積算値変化量dQおよび排気ガス流速Vgradを、上流側および下流側検出値VHUMF、VHUMRの高湿度側への立上がり間の値として、算出するので、劣化判定パラメータP_TRSを、吸着材16の上流側および下流側の湿度の変化状態に応じた最適なタイミングで求めることができる。さらに、劣化判定パラメータP_TRSと比較される劣化判定しきい値TRSDTは、前述したように、始動時のエンジン水温TWが低いほど、すなわち吸着材16の温度を上昇させるのに必要な熱量が多いほど、より大きな値に設定されるので、吸着材16の劣化判定をより精度良く行うことができる。
【0051】
図8は、本発明を適用した他の構成の排気ガス浄化装置をブロック状に示している。この排気ガス浄化装置は、図1のそれと比較し、三元触媒および切替バルブの配置のみが異なるものであり、同一の構成または同等の機能を有する構成要素については、同じ参照番号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。同図に示すように、この排気ガス浄化装置では、エンジン1の排気系2の排気管4に、上流側および下流側の2つの三元触媒5A、5Bが設けられている。排気管4の三元触媒5A、5B間の部分は、メイン通路13と、これをバイパスするバイパス通路14に分岐しており、このバイパス通路14に吸着材16が配置されている。また、切替バルブ35は、メイン通路13に設けられており、その開閉は、切替バルブ駆動装置19を介して、ECU25によって制御される。また、図1の排気ガス浄化装置と同様、バイパス通路14には、吸着材16の上流側および下流側に、上流側湿度センサ21および下流側湿度センサ22がそれぞれ設けられている。他の構成は、吸着材16の劣化判定処理を含めて、図1の排気ガス浄化装置と同様である。
【0052】
以上の構成により、この排気ガス浄化装置では、エンジン1の冷間始動時に、切替バルブ35がメイン通路13を全閉する閉鎖位置に切り替えられる。この状態では、上流側三元触媒5Aを通過した排気ガスは、すべてバイパス通路14に通され、排気ガス中の炭化水素が吸着材16に吸着される。その後、上流側または下流側三元触媒5A、5Bが活性化したときに、切替バルブ35がメイン通路13を全開する開放位置に切り替えられる。この状態では、排気ガスは、活性化した上流側または下流側三元触媒5A、5Bにより、その酸化・還元作用によって浄化される。
【0053】
また、エンジン1の冷間始動時、排気ガスを吸着材16側に通した状態で、上流側および下流側湿度センサ21、22の上流側および下流側検出値VHUMF、VHUMRの変化状態に応じて、前述した図3〜図6の劣化判定処理を行うことにより、吸着材16の劣化を同様に判定することができる。したがって、この排気ガス浄化装置においても、図1の排気ガス浄化装置の場合の前述した効果を同様に得ることができる。すなわち、排気ガスの流速の変化に起因する吸着材16の水分吸着能力の変動を補償しながら、吸着材16の劣化判定を、排気ガスの流速にかかわらず精度良く行えるなどの効果を得ることができる。
【0054】
図9は、本発明を適用したさらに別の構成の排気ガス浄化装置を示している。この図においても、図1の排気ガス浄化装置と同一の構成または同等の機能を有する構成要素については、同じ参照番号を付している。同図に示すように、この排気浄化装置では、エンジン1の排気系2の排気管4に、三元触媒5が設けられるとともに、さらにその下流側に炭化水素吸着触媒36が設けられている。この炭化水素吸着触媒36は、図示しないが、炭化水素吸着材と三元触媒とを複合的に形成したハイブリッドタイプのものである。具体的には、ハニカム構造の担体の表面に、炭化水素吸着材としてのゼオライトをコーティングし、さらに、触媒としての白金、パラジウムやロジウムなどの貴金属を担持させることにより構成したものである。また、排気管4の吸着材16よりも上流側および下流側には、上流側湿度センサ21および下流側湿度センサ22がそれぞれ設けられている。他の構成は、図1の排気ガス浄化装置と同様である。
【0055】
したがって、この排気ガス浄化装置では、炭化水素吸着触媒36は、エンジン1の冷間始動時、その触媒が活性化していない状態では、炭化水素吸着材として機能し、排気ガス中の炭化水素を吸着材16に吸着し、その後、触媒が活性化した後には、三元触媒として機能し、排気ガスを酸化・還元作用によって浄化する。また、炭化水素吸着触媒36による炭化水素の吸着中に、上流側および下流側検出値VHUMF、VHUMRの変化状態に応じて、前述した劣化判定処理を行うことによって、炭化水素吸着触媒36の炭化水素吸着能力に関する劣化を同様に判定することができる。その結果、この排気ガス浄化装置においても、図1の排気ガス浄化装置の場合の前述した効果を同様に得ることができる。
【0056】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、排気ガスの流速を表す流速パラメータとして、エンジン回転数NEと吸気管内絶対圧PBAから算出した排気ガス流量積算値Vexを時間で除することにより求めた排気ガス流速Vgradを用いているが、他の適当な手段により検出または算出したものを用いてもよい。例えば、排気ガスの流量を、エアフローメータで検出した吸入空気量や、あるいは燃料噴射量または燃料噴射量と空燃比検出値との組合わせなどを用いて、演算で求めてもよく、さらに、排気ガスの流速を流速センサで直接、検出してもよい。また、実施形態では、排気ガス流速Vgradを用いて、劣化判定パラメータP_TRSを補正したが、劣化判定しきい値TRSDTを補正してもよい。
【0057】
さらに、実施形態では、吸着材16への排気ガスの実際の到達タイミングをより正確に推定するために、吸着材16の上流側に上流側湿度センサ21を設けているが、この到達タイミングは、下流側湿度センサ22のみでも、大きな誤差なく推定できるので、上流側湿度センサ21は省略することが可能である。また、下流側湿度センサ22は、吸着材16を通過した排気ガスの湿度を検出できればよいので、その設置位置を、実施形態での吸着材16の下流側に代えて、吸着材16の途中としてもよい。さらに、エンジン1の始動時における吸着材16の温度状態を表すパラメータとして、エンジン水温を用いたが、これに代えて、下流側湿度センサ22の温度検出値THCMを用いてもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の炭化水素吸着材の状態判定装置は、排気ガスの流速の変化に起因する炭化水素吸着材の水分吸着能力の変動を補償でき、それにより、排気ガスの流速の変化にかかわらず、炭化水素吸着材の劣化を含む状態を精度良く判定することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による炭化水素吸着材の状態判定装置を適用した内燃機関を示す構成図である。
【図2】炭化水素吸着装置を拡大して示す断面図である。
【図3】吸着材の劣化判定の実行判定および初期化処理を示すフローチャートである。
【図4】始動時のエンジン水温TWに応じて劣化判定しきい値TRSDTを設定するための劣化判定しきい値テーブルである。
【図5】吸着材の劣化判定処理を示すフローチャートである。
【図6】図5の劣化判定処理の残りの部分を示すフローチャートである。
【図7】劣化判定処理によって得られる判定例を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明を適用した他の構成の排気ガス浄化装置を示すブロック構成図である。
【図9】本発明を適用したさらに別の構成の排気ガス浄化装置を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 排気系
16 炭化水素吸着材
21 上流側湿度センサ(上流側湿度検出手段)
22 下流側湿度センサ(湿度検出手段)
23 エンジン水温センサ(温度状態検出手段)
24 クランク角センサ(流速パラメータ検出手段)
25 ECU(流速パラメータ検出手段、吸着材状態判定手段)
26 吸気圧センサ(流速パラメータ検出手段)
36 炭化水素吸着触媒(炭化水素吸着材)
VHUMF 上流側検出値(上流側湿度検出手段の検出結果)
VHUMR 下流側検出値(湿度検出手段の検出値)
Vgrad 排気ガス流速(流速パラメータ)
NE エンジン回転数
PBA 吸気管内絶対圧
TW エンジン水温(炭化水素吸着材の温度状態)

Claims (4)

  1. 内燃機関の排気系に設けられ、排気ガス中の炭化水素および水分を吸着可能な炭化水素吸着材の状態を判定する炭化水素吸着材の状態判定装置であって、
    前記炭化水素吸着材を通過した排気ガスの湿度を検出する湿度検出手段と、
    前記排気ガスの流速を表す流速パラメータを検出する流速パラメータ検出手段と、
    前記検出された排気ガスの湿度および流速パラメータに応じて、前記炭化水素吸着材の状態を判定する吸着材状態判定手段と、
    を備えていることを特徴とする炭化水素吸着材の状態判定装置。
  2. 前記吸着材状態判定手段は、前記内燃機関の始動時からの前記湿度検出手段の検出値の変化状態に応じて、前記炭化水素吸着材の状態を判定することを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素吸着材の状態判定装置。
  3. 前記炭化水素吸着材の温度状態を検出する温度状態検出手段をさらに備え、
    前記吸着材状態判定手段は、前記温度検出手段により検出された前記内燃機関の始動時における前記炭化水素吸着材の温度状態にさらに応じて、前記炭化水素吸着材の状態を判定することを特徴とする、請求項2に記載の炭化水素吸着材の状態判定装置。
  4. 前記排気系の前記炭化水素吸着材よりも上流側に、前記炭化水素吸着材に流入する排気ガスの湿度を検出する上流側湿度検出手段をさらに備え、
    前記吸着材状態判定手段は、前記上流側湿度検出手段の検出結果にさらに応じて、前記炭化水素吸着材の状態を判定することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の炭化水素吸着材の状態判定装置。
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