JP2004036393A - 筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置 Download PDF

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井戸側 正直
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渡辺 健二
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Abstract

【課題】燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えて空燃比を理論空燃比に一致させるに際し、過剰な燃料増量補正が行われることに起因する空燃比の乱れを抑制する。
【解決手段】電子制御装置50は、目標空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定して圧縮行程に燃料噴射を行う圧縮行程噴射モードから目標空燃比を理論空燃比に設定して吸気行程に燃料噴射を行う吸気行程噴射モードに内燃機関10の燃焼モードを切り替える。排気センサ46は、排気通路13に設けられてリーン程度及びリッチ程度に応じた大きさの検出信号を出力する。電子制御装置50は、燃焼モードが圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えられた時点から所定期間が経過するまで排気センサ46の検出信号に基づくフィードバック補正を禁止する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替え可能であり、吸気行程噴射モード時には実空燃比を理論空燃比に一致させるべく排気通路に設けられた排気センサの検出信号に基づいて空燃比のフィードバック補正を実行する筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼室内に燃料を直接噴射するようにした筒内噴射式の内燃機関にあっては、燃焼室内に燃料濃度の異なる混合気層を形成するなどして、混合気の燃料濃度が極めて薄い状況下で良好な燃焼を成立させることが可能になる。このため、こうした筒内噴射式内燃機関は、その燃料消費率の低減を図る等、吸気ポート噴射式内燃機関と比較して効率的な機関運転を行うことができる。
【0003】
しかしながら、こうした筒内噴射式内燃機関にあっては、燃料を燃焼室内に直接噴射供給するようにしている関係から、冷間始動時やその直後など燃焼室の温度が低いときには、噴射燃料の霧化が促進され難くなり、排気中に含まれる燃料の未燃成分が増大する傾向にある。
【0004】
このため、例えば特開2000−314338号公報等に記載されるように、冷間始動直後には、目標空燃比を理論空燃比よりも僅かにリーン側に設定するとともに、圧縮行程に燃料噴射を行う圧縮行程噴射モードに内燃機関の燃焼モードを設定するものが提案されている。このように目標空燃比を理論空燃比よりもリーン側に設定することにより、排気中の酸素濃度が通常よりも高くなるため、排気通路に排出された燃料未燃成分は、この酸素と反応して排気通路や特に同通路に設けられている触媒装置において燃焼するようになる。このように排気通路中において燃料未燃成分が排気中の酸素と反応して燃焼する現象は「後燃え」と称される。上記圧縮行程噴射モード時には、こうした後燃えの発生を促進させることにより、燃料未燃成分を外部に排出することなく燃焼して処理するとともに、その燃焼熱によって触媒装置を速やかに温度上昇させることができ、その早期活性化を図ることができるようになる。即ち、冷間始動時等のように、燃焼室から多くの燃料未燃成分が排出される状況下にあっては、こうした後燃えの促進が同燃料未燃成分がそのまま外部に排出されることを抑制するうえで極めて有効である。
【0005】
但し、この圧縮行程噴射モードにあっては、通常、こうした後燃えの促進を図るために、点火時期を大幅に遅角させて混合気の燃焼を緩慢なものにすることにより排気温度を極力高めるようにしている。このため、目標空燃比を理論空燃比に設定して燃料噴射を吸気行程に行うようにした通常の吸気行程噴射モードと比較すると、機関出力の低下が避けきれず、燃料消費率の増大を招くこととなる。
【0006】
このため、内燃機関の燃焼モードを圧縮行程噴射モードに所定期間保持することにより、触媒装置が温度上昇して所定の浄化性能が確保されると判断されるときには、燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えてこうした燃料消費率の増大を極力抑えるようにするのが望ましい。
【0007】
ところで、吸気行程噴射モード時には、混合気の実空燃比を理論空燃比に一致させることで上記触媒装置による排気浄化性能を最大限に高めるための燃料噴射量補正、即ち空燃比のフィードバック補正が実行される。この空燃比フィードバック制御では、排気通路に設けられた排気センサによって排気の酸素濃度が検出され、この酸素濃度から燃焼に供されている混合気の実空燃比が理論空燃比よりもリッチか或いかリーンであるかが判断される。
【0008】
そして、その判断結果に基づいてフィードバック補正を行うための燃料噴射量補正係数を設定し、同補正係数に基づいて燃料噴射量を増量補正或いは減量補正することにより、実空燃比と理論空燃比とのずれを補償してこれらを一致させるようにしている。尚、このように、排気の酸素濃度に基づいて判断される混合気の実空燃比を以下では「排気空燃比」と称する。通常、内燃機関が定常運転状態にあるときには、この排気空燃比と実空燃比とは略一致するようになる。
【0009】
図10は、上記排気センサを用いた空燃比のフィードバック補正についてその一例を示している。尚、同図は、排気空燃比の変化、それに伴うセンサの検出信号(出力電圧)の変化、並びにフィードバック補正係数について、それら推移を示すものであり、ここでは内燃機関が定常運転状態にある場合についてその一例を示している。
【0010】
同図10に示されるように、排気空燃比が理論空燃比よりもリーン側にある領域からリッチ側の領域に移行するのに伴って、センサの出力電圧はその基準電圧よりも低い状態から高い状態に移行する。この移行タイミングはスキップタイミングと称され、このスキップタイミングでは、フィードバック補正係数の値が所定のスキップ値Sをもって減少させられる。そして、このスキップタイミングから排気空燃比が再びリーン領域に移行するスキップタイミングまでの期間(積分期間)では、所定の積分値をもってフィードバック補正係数が徐々に減少させられるようになる。
【0011】
一方、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にある領域からリーン側の領域に移行するスキップタイミングでは、フィードバック補正係数の値が所定のスキップ値Sをもって増大させられる。そして、その後の積分期間では、所定の積分値をもってフィードバック補正係数が徐々に増大させられるようになる。
【0012】
このように、空燃比フィードバック制御に用いられる一般の排気センサは、基本的には、排気空燃比が理論空燃比を基準としてそれよりもリーン領域にあるか或いはリッチ領域にあるか、換言すればそれら領域を跨いで排気空燃比が変化するタイミングのみをその検出対象するものである。因みに、こうした排気センサとしては、例えば濃淡電池式のものがその代表例である。
【0013】
従って、この種のセンサでは、リーン領域或いはリッチ領域においてそのリーン程度やリッチ程度に応じた大きさの検出信号を出力するものではなく、仮に排気空燃比が理論空燃比よりもリッチ側或いはリーン側に大幅にずれた場合であっても、そのずれ量に応じた制御を行うことは基本的にはできない。従って、この種のセンサを用いた空燃比フィードバック制御についても、上述したように、リーン・リッチの両領域間の切り替えタイミングに合わせてフィードバック補正係数を予め定められたスキップ値や積分値をもって変化させる、といった制御態様を採用せざるを得ない。
【0014】
これに対して、近年では、より精密な空燃比フィードバック制御を行うために、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチ領域にあるか或いはリーン領域にあるかのみならず、そのリッチ程度やリーン程度に応じた大きさの検出信号を出力可能な排気センサも採用されつつある。こうしたセンサを採用することにより、排気空燃比と理論空燃比とのずれ量に応じてフィードバック補正係数を設定することが可能になる。具体的には、そのずれ量に所定のフィードバックゲインを乗じたものをフィードバック補正係数として設定するなど、そのずれ量の大きさに基づいてこれを木目細かく設定することができ、燃料噴射量についてもこれに基づいてより精密に増減補正することが可能になる。
【0015】
特に、筒内噴射式内燃機関のように、理論空燃比のみならず、同理論空燃比よりもリーン側の空燃比からリッチ側の空燃比まで幅広く目標空燃比が変化する内燃機関にあっては、こうした排気センサの採用により精密な空燃比のフィードバック補正を行うことが可能になる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このようにリーン程度或いはリッチ程度に応じてその検出信号の大きさが変化する排気センサを採用することにより、空燃比のフィードバック補正における精度や即応性を高めることができ、一般にはその補正精度の向上を図ることができるようになる。
【0017】
しかしながら、本発明者らの実験の結果、こうした排気センサを上述したような冷間始動直後に燃焼モードの切り替えを行う内燃機関の空燃比制御に単に適用するようにすると、一時的にせよ、以下のような不都合が生じることが判明した。
【0018】
図11(a)〜(e)は、上述したような燃焼モードの切り替えが行われる場合について、その燃焼モードの切替要求、目標空燃比、排気空燃比、フィードバック補正係数、並びに最終的な燃料噴射量の推移をそれぞれ示している。
【0019】
同図11に示されるように、触媒装置が温度上昇して所定の浄化性能が確保できると判断されると、圧縮行程噴射モードの要求が解除されて内燃機関の燃焼モードは吸気行程噴射モード(圧縮行程噴射モード要求:「OFF」)に切り替えられる(同図(a)参照)。そして、この燃焼モードの切替要求に合わせて目標空燃比(同図(b))はリーン空燃比から理論空燃比に変更されるとともに、燃料噴射も圧縮行程噴射から吸気行程噴射に切り替えられるようになる。更に、燃料噴射量(同図(c))もこうした目標空燃比の変更に見合う分だけ所定量増量されるようになる(タイミングt1)。
【0020】
このように目標空燃比の変更に合わせて実空燃比がリーン空燃比から理論空燃比に変更されると、排気空燃比もリーン空燃比から理論空燃比に向けて変化するようになる。但し、この場合、排気空燃比は、実空燃比と同期したかたちで即座に変化するようなことはなく、同図(c)の実線に示されるように、応答遅れをもってリーン空燃比から徐々に理論空燃比にまで変化するようになる(タイミングt1〜タイミングt2)。
【0021】
この場合、リッチ領域とリーン領域との切り替わりのみを検出するタイプの排気センサを採用している場合には、所定の積分量をもってフィードバック補正係数が徐々にしか増大することはない。このため、このフィードバック補正係数に基づいて補正される燃料噴射量についても一度に大幅な増量がなされることはなく、同フィードバック補正係数の増大に合わせて徐々に増量補正されるようになる(同図(d)及び同図(e)の実線参照)。
【0022】
一方、リーン・リッチ程度に応じてその検出信号の大きさが変化する排気センサを採用する制御にあっては、燃焼モードの変更に伴って目標空燃比がリーン空燃比から理論空燃比に切り替えられた時点で、排気空燃比にはその目標値である理論空燃比との間に大きなずれが生じている旨の判断がなされる。このため、このずれを補償すべくそのずれ量(排気空燃比−理論空燃比)に基づいてフィードバック補正係数が算出される。その結果、フィードバック補正による補正分(同図(e)参照)が極めて大きな値となり、これに合わせて燃料噴射量についても一度に大幅な増量補正が行われるようになる。
【0023】
しかしながら、上述したように燃焼モードの切り替え時に生じる排気空燃比の目標空燃比に対するずれは、実際の燃焼に供されている混合気の実空燃比のずれを正確に反映するものではない。即ち、排気通路途中には圧縮行程噴射モード時にリーン空燃比のもとで燃焼した排気が残存しており、また燃焼室から排出された排気がセンサ近傍に到達するのにもある程度の時間を要する。このため、実際の空燃比の変化に対して排気空燃比の変化には所定の応答遅れが存在することになる。従って、こうした排気空燃比のずれをそのまま空燃比のフィードバック補正に反映させるようにすると、過剰な燃料増量操作が行われて実際の空燃比は過度にリッチ側に変更されてしまうようになる。その結果、こうした過度な補正によって、燃料未燃成分の排出量が増大するなどの排気性状の悪化や、ひいては燃焼状態の悪化を招くこととなる。更に、こうした過度な補正による影響もやはり所定の応答遅れをもって排気空燃比の変化としてその後に現われるようになるため、これに基づいてフィードバック補正が行われると、ハンチング等、制御の不安定化を招くおそれもある。
【0024】
この発明は、燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切替可能であり、排気通路に設けられて少なくとも理論空燃比よりもリーン側の領域において排気の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する排気センサを備えた筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置をその前提としている。そして、こうした内燃機関の空燃比制御装置にあって、上記燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えて空燃比を理論空燃比に一致させるに際し、過剰な燃料増量補正が行われることに起因する空燃比の乱れを抑制することをその目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための構成及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1記載の発明では、目標空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定して圧縮行程に燃料噴射を行う圧縮行程噴射モードから目標空燃比を理論空燃比に設定して吸気行程に燃料噴射を行う吸気行程噴射モードに内燃機関の燃焼モードを切り替える切替手段と、排気通路に設けられて理論空燃比よりも少なくともリーン側の領域において排気の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する排気センサと、前記内燃機関の燃焼モードが前記吸気行程噴射モードに切り替えられているときに実空燃比を理論空燃比に一致させるための燃料噴射量補正係数を前記排気センサの検出信号に基づいて算出し、同燃料噴射量補正係数に基づくフィードバック補正を実行するフィードバック制御手段とを備える筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置において、前記切替手段により燃焼モードが前記圧縮行程噴射モードから前記吸気行程噴射モードに切り替えられた時点から所定期間が経過するまで前記フィードバック制御手段の前記フィードバック補正に制限を加える制限手段を備えるようにしている。
【0026】
同構成では、内燃機関の燃焼モードが圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えられた時点から所定期間が経過するまで、空燃比にかかるフィードバック補正に制限を加えるようにしている。このため、仮に燃焼モードの切り替えた時点で排気空燃比が応答遅れの影響によって理論空燃比よりもリーン側に大きくずれるような状況下においても、そのずれに基づく燃料噴射量の増量補正が制限されるようになる。従って、過剰な燃料増量操作によって実際の空燃比が過度にリッチ側に補正され、それに起因して空燃比に乱れが生じるのを抑制することができるようになる。尚、請求項1記載の発明において「所定期間」は、燃焼モードの切り替えに際して発生する実空燃比と排気空燃比とのずれ量がその影響を無視できる所定量以下に減少するまでの期間になるように設定される。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置において、前記制限手段は前記所定期間が経過するまで前記フィードバック補正を禁止するものであるとしている。
【0028】
同構成によれば、上記燃焼モードの切替時点から所定期間が経過するまでフィードバック補正を禁止するようにしているため、請求項1記載の発明による作用効果をより確実なものとすることができるようになる。
【0029】
また、上記フィードバック補正に制限を加える際の具体的な態様としては、請求項2に記載されるような構成の他、請求項3に記載される発明によるように、前記制限手段は前記所定期間が経過するまで前記フィードバック補正による燃料噴射量の補正度合が低下するように前記燃料噴射量補正係数を変更する、といった構成を採用することもできる。
【0030】
ところで、上述したような応答遅れによって生じる実空燃比と排気空燃比との間のずれは、燃焼モードを切り替えた直後に最も大きく、その後は徐々に小さくなって最終的にはその影響は殆ど無視できる範囲にまで減少するようになる。換言すると、排気センサの検出信号は、燃焼モードを切り替えた直後においては実際の空燃比の状態を示すものとしてその信頼性が低いものの、その後の経過時間が長くなるほど、その信頼性は高くなり、実際の空燃比の状態を反映したものになる。
【0031】
請求項4記載の発明はこの点を考慮したものであり、請求項3記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置において、前記制限手段は燃焼モードが前記圧縮行程噴射モードから前記吸気行程噴射モードに切り替えられた時点からの時間の経過に伴って前記補正度合を低下させる際の低下率が減少するように前記燃料噴射量補正係数を変更するものであるとしている。
【0032】
同構成によれば、燃焼モードの切り替え直後にあっては、不必要な燃料増量を抑制すべくフィードバック補正の補正度合が相対的に小さく設定される一方、その後は徐々に同フィードバック補正の制限が緩和され、通常の燃料噴射量補正係数に基づくフィードバック補正に円滑に移行することができるようになる。従って、燃焼モードの切り替えに伴う過剰な燃料増量補正を抑制しつつ、こうした燃焼モードの切り替えに伴う応答遅れとは無関係に発生する、実空燃比と目標空燃比、即ち理論空燃比との間に実際に生じるずれについても対処することが可能になる。
【0033】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置において、前記制限手段は前記フィードバック補正により燃料噴射量が増量補正されるときにのみその制限を行うものであるとしている。
【0034】
燃焼モードが圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えられることにより生じる空燃比の乱れは、基本的には燃焼モードの切り替え直後の排気空燃比がリーン領域にあるため、実空燃比も同リーン領域にある旨誤判断され、その誤判断に基づいて燃料噴射量の増量補正が行われることに起因する。従って、燃焼モードの切り替え直後の排気空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を示しているときには、こうした燃焼モードの切り替えではなく別の理由に起因して実空燃比と理論空燃比との間に実際にずれが生じている可能性が高い。即ち、このような場合には寧ろ、フィードバック補正、即ち燃料噴射量の減量補正を行うことにより、こうした空燃比のリッチ傾向を打ち消すようにしたほうが望ましいことがある。
【0035】
上記請求項5記載の構成によれば、フィードバック補正により燃料噴射量が増量補正されるときにのみ同フィードバック補正を制限するようにしているため、フィードバック補正に対して不必要な制限が加えられるのを回避することができるようになる。
【0036】
請求項6記載の発明では、請求項1乃至5のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置において、前記制限手段は前記所定期間を前記内燃機関の吸入空気量に基づいて設定するものであるとしている。
【0037】
上述したように、燃焼モードが切り替えられるときに発生する実空燃比に対する排気空燃比の応答遅れは、排気通路途中に排気が残存していること、並びに燃焼室の排気がセンサ近傍に到達するのにある程度の時間を要すること等がその要因となっている。このため、吸入空気量が多くなれば、それに伴って排気の流速が増大するため、排気通路に残存する排気は速やかにその下流側に流れて排出されるようになり、また燃焼室から排出された排気がセンサ近傍に到達するのに要する時間も短くなるため、結果的に上記応答遅れ時間は短くなる。このように、吸入空気量と上記応答遅れ時間とは相関を有している。
【0038】
この点、請求項6記載の構成では、例えばフィードバック補正に制限を加える際の上記所定期間を吸入空気量が多いときほどこれを短く設定する等、これを吸入空気量に基づいて設定するようにしている。このため、同所定期間をより適切なものに設定することができ、フィードバック補正に対して不必要な制限が加えられるのを極力回避しつつ、燃焼モードの切り替えに際しての空燃比の乱れについてもこれを一層好適に抑制することができるようになる。
【0039】
また、上記応答遅れが発生する要因として、圧縮行程噴射モード中に発生した排気が排気通路に残存している点や、燃焼室から排出された排気が排気センサの近傍に到達するまでに時間を要する点については上述したが、この応答遅れについてはこれら他、以下の点についても更に考慮するのが望ましい。即ち、燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替える要求があった場合、燃焼モードが実際に吸気行程噴射モードに切り替えられ、同モードのもとで燃焼が行われた後、その排気が排気行程において燃焼室から排出されるまでにもある程度の時間を要する。例えば、機関回転速度が低速である場合には、燃焼モードの切替要求が出されてから吸気行程噴射モードのもとでの燃焼により発生した排気が排気通路に排出されるまでの時間は相対的に長くなるため、結果的に上記応答遅れは長くなる。一方、機関回転速度が高速である場合には、逆にこの時間は相対的に短くなるため、上記応答遅れもこれに合わせて短くなる。
【0040】
この点、請求項7記載の構成では、例えばフィードバック補正に制限を加える際の上記所定期間を機関回転速度が高速であるときほどこれを短く設定する等、これを機関回転速度に基づいて設定するようにしている。このため、同所定期間をより適切なものに設定することができ、フィードバック補正に対して不必要な制限が加えられるのを極力回避しつつ、燃焼モードの切り替えに際しての空燃比の乱れについてもこれを一層好適に抑制することができるようになる。
【0041】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0042】
図1は本実施形態にかかる空燃比制御装置及び同装置の制御対象となる筒内噴射式多気筒内燃機関の構成を概略的に示している。
同図1に示されるように、内燃機関10の燃焼室12(同図にはその一つのみを示す)には、吸気通路11及び排気通路13がそれぞれ接続されている。吸気通路11にはモータ(図示略)により開閉駆動されるスロットルバルブ26が設けられている。このスロットルバルブ26により調量された吸入空気が吸気バルブ21の開弁に伴って燃焼室12に導入される。燃料噴射弁20から燃焼室12に直接噴射された燃料は、この導入された吸入空気と混合された後、点火プラグ22により点火され、燃焼した後、排気バルブ23の開弁に伴って排気通路13に排出される。
【0043】
排気通路13には排気浄化機能を有する触媒装置16が設けられており、同触媒装置16によって排気に含まれる未燃成分等が浄化される。この触媒装置16は、三元触媒装置とNOx吸蔵還元触媒装置といった2つの触媒装置によって構成されている(図1ではこれら各触媒装置を1つにまとめて図示している)。三元触媒装置は、主に排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)をその酸化還元作用を通じて浄化する機能を有している。これに対して、NOx吸蔵還元触媒装置は、リーン空燃比のもとで燃焼が行われているときに排気中のNOxを吸蔵する一方、この吸蔵されるNOxをリッチ空燃比或いは理論空燃比のもとで燃焼が行われているときの排気に含まれるHC及びCOによって還元してこれを浄化する機能を有している。
【0044】
燃料噴射弁20は、各気筒の燃焼室12内に燃料を直接噴射供給する筒内噴射式のものであり、デリバリパイプ24から高圧の燃料が供給されている。デリバリパイプ24は、図示しない高圧ポンプを介してフィードポンプ、燃料タンクに順に接続されており、同高圧ポンプにより加圧された燃料が供給される。
【0045】
また、内燃機関10には、機関運転状態等を検出するための各種センサが設けられている。例えば、吸気通路11においてスロットルバルブ26よりも上流側の部分には、吸入空気量を検出する吸入空気量センサ42が設けられている。機関ピストン14の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト(図示略)の近傍には、その回転速度(機関回転速度)と回転位相(クランク角)を検出するクランク角センサ43が設けられている。また、アクセルペダル60の近傍にはその踏込量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ44が設けられている。更に、内燃機関10の本体17には機関冷却水温を検出する水温センサ45が設けられている。
【0046】
また、排気通路13において触媒装置16より上流側の部分には、排気の酸素濃度を検出する、換言すれば排気空燃比を検出するための排気センサ46が設けられている。この排気センサ46は、いわゆる限界電流式の酸素濃度センサであり、排気空燃比に応じてその検出信号が変化する。
【0047】
図2は、この排気センサ46の出力特性を示すグラフである。同図に示されるように、排気センサ46は、リッチ領域及びリーン領域の双方において、そのリッチ程度或いはリーン程度に応じて検出信号(出力電流値、通常「限界電流値」と称される)が連続的(線形的)に変化する出力特性を有している。従って、この排気センサ46の検出信号に基づいてリッチ・リーンの切り替えタイミングのみならず、排気空燃比について理論空燃比との差、換言すればそのリッチ程度或いはリーン程度まで検出することができる。
【0048】
また、排気センサ46の内部には、ヒータ(図示略)が内蔵されている。排気センサ46では、このヒータを通電制御して発熱させ、排気センサ46の検出部を温度上昇させることにより、その早期活性化を図るようにしている。
【0049】
これら各センサ42〜46の検出信号は内燃機関10の各種制御を統括して実行する電子制御装置50に取り込まれる。電子制御装置50は、これら検出信号に基づいて、燃料噴射弁20、点火プラグ22、スロットルバルブ26を駆動するモータ等のアクチュエータを駆動することにより、燃焼モードの切替制御や空燃比制御といった各種制御を実行する。電子制御装置50は、これら各種制御にかかる制御プログラムやその実行に必要となる関数マップ、並びにそれに基づく制御結果を記憶するためのメモリ52を備えている。
【0050】
例えば、燃焼モードの切替制御では、機関始動時の機関冷却水温が所定温度以下である等をその実行条件として、内燃機関10の始動完了後、所定期間が経過するまでの間、圧縮行程噴射モード要求フラグXINJCが「ON」に設定され、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定される。このように燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定されると、目標空燃比が理論空燃比よりも僅かにリーン側に設定される。更に、排気温度を上昇させるために、点火時期が機関運転状態に基づいて設定される時期よりも大幅に遅角側の時期に設定されるとともに、それに合わせて燃料噴射時期も遅角側の時期に設定される。
【0051】
こうした圧縮行程噴射モードのもとで機関燃焼が行われると、上述したような後燃えが生じるため、燃料未燃成分を外部に排出することなく排気通路13内においてこれを燃焼して処理することができるようになる。更に、その燃料未燃成分の燃焼に伴って発生する燃焼熱によって触媒装置16を速やかに温度上昇させることができ、その早期活性化を図ることができるようになる。
【0052】
このように燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定されることにより、触媒装置16が活性化し、その所定の排気浄化機能が確保できると判断されると、圧縮行程噴射モード要求フラグXINJCが「OFF」に設定される。尚、この圧縮行程噴射モード要求フラグXINJCを「OFF」とする判断は、例えば、上述したように、燃焼モードを圧縮行程噴射モードに切り替えてから所定時間が経過したことの他、
・圧縮行程噴射モード中における総燃料噴射量が所定量を超えたこと。
等々の条件が全て或いはそれらの少なくとその一つが満たされていることをもって行うことができる。因みに、上記所定時間や総燃料噴射量を機関冷却水温に応じて可変設定する等の方法も、所定の排気浄化機能が確保できる状態に触媒装置16が移行したことをより正確に判断するうえで有効である。
【0053】
次に、本実施形態にかかる装置の空燃比制御について図3〜図5を併せ参照して説明する。尚、図3及び図4は、この装置による空燃比制御の処理手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、電子制御装置50によって所定クランク角毎の割込処理として実行される。また、図5はこの空燃比制御に基づく燃料噴射量等の推移例を示すタイミングチャートである。
【0054】
この一連の処理に際しては、まず、圧縮行程噴射モード要求フラグXINJCが「OFF」であるか否かが判断される(ステップS100)。ここで、圧縮行程噴射モード要求フラグXINJCが「ON」である旨判断された場合には(ステップS100:NO)、内燃機関10の燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定される(図4 ステップS200 図5 タイミングt1以前)。
【0055】
そして、次に排気センサ46が活性化しているか、即ち同センサ46が所定の活性化温度にまで温度上昇しているか否かが判断される。この排気センサ46の活性化判断は、例えばそのヒータの内部抵抗値を検出し、その検出結果に基づいて排気センサ46の温度を推定する、或いはヒータの通電時間等に基づいて行うことができる。
【0056】
ここで、排気センサ46が活性化している旨判断された場合には(ステップS210:YES)、それ以降、同センサ46の検出結果を燃料噴射量の算出に反映させる空燃比のフィードバック補正が開始されるようになる。
【0057】
尚、上述したように機関始動後、所定期間が経過するまで燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定され、その後、同燃焼モードは吸気行程噴射モードに切り替えられるが、通常はこうした燃焼モードの切り替えがなされる以前に排気センサ46の活性化は完了する。このため、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに切り替えられている期間(図5のタイミングt1以前)において、その前半の期間では排気センサ46の検出結果を反映させないオープンループ制御が実行され、その後の後半の期間では同検出結果を反映したフィードバック補正が実行される。従って、上記燃焼モードの切り替えは、圧縮行程噴射モードでのフィードバック補正が実行されているときに行われる。
【0058】
このフィードバック補正にかかる一連の処理に際しては、まず、排気センサ46の検出結果、即ち排気空燃比と目標空燃比との偏差ΔRAFに基づいて空燃比フィードバック補正係数FAFが以下の演算式(1)を通じて算出される。ここでは、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定されているため、目標空燃比は理論空燃比よりも僅かにリーンに設定されている。尚、フィードバック補正係数FAFはその基準値「1.0」を中心として、その上限値FAFMAX及び下限値FAFMINが予め定められており、それら上限値FAFMAX及び下限値FAFMINに間の範囲に収まるようにその変化量が規制されている。
【0059】
FAF←1.0+KP・(ΔRAF) ・・・(1)
KP:補正係数(比例ゲイン)
因みに、このフィードバック補正係数FAFは、機関運転状態及び目標空燃比から求められる基本燃料噴射量QBASEが排気空燃比を目標空燃比に一致させるものとして適切な値となるように補正するものである。ここでは、このフィードバック補正係数FAFを基本燃料噴射量QBASEに乗じてその燃料噴射量にかかる補正を行うものとしているため、排気空燃比と目標空燃比との間にずれが全く存在していない場合には、このフィードバック補正係数FAFはその基準値「1.0」に収束するようになる。
【0060】
一方、排気空燃比が目標空燃比よりもリーンである場合には、上式(1)の右辺第2項は正の値になるため、フィードバック補正係数FAFは「1.0」よりも大きな値に設定される。従ってこの場合には、このフィードバック補正係数FAFに基づいて燃料噴射量の増量補正が行われる。
【0061】
他方、排気空燃比が目標空燃比よりもリッチである場合には、上式(1)の右辺第2項は負の値になるため、フィードバック補正係数FAFは「1.0」よりも小さな値に設定される。従ってこの場合には、このフィードバック補正係数FAFに基づいて燃料噴射量の減量補正が行われる。
【0062】
このように排気空燃比と目標空燃比との間の偏差ΔRAFに基づき、それに見合う大きさにフィードバック補正係数FAFが算出されることにより、そのときどきの排気空燃比と目標空燃比との間のずれが打ち消されるように燃料噴射量が適切に設定され、空燃比のフィードバック補正がなされる。
【0063】
またここで、燃料噴射系の個体差や経時変化等に起因して基本燃料噴射量QBASEと排気空燃比を目標空燃比と一致させるのに必要な燃料噴射量との間に定常的な偏差が生じている場合には、上記フィードバック補正係数FAFはその基準値「1.0」からずれるようになる。このように制御対象値とその目標値との間に定常的な偏差が生じている場合に、上式(1)にて求められるようなフィードバック補正係数FAF、即ち偏差ΔRAFの大きさに比例して変化する、いわゆる比例項に、この定常偏差を補償する機能を持たせることは制御の安定性を確保するうえでは好ましくない。
【0064】
そこで、本実施形態にかかる空燃比制御にあっては、こうした定常偏差が生じている場合には、これを補償するための補正量(以下、これを「空燃比学習値KG」と称する)をその定常偏差の大きさに基づいて求めるようにしている。そして、この空燃比学習値KGに基づく燃料噴射量補正を通じて上記定常偏差を補償するとともに、外乱による排気空燃比と目標空燃比との一時的なずれについては、これをフィードバック補正係数FAFに基づく燃料噴射量補正を通じて補償するようにしている。尚、こうした上記定常偏差は通常は機関負荷状態に応じて変化する傾向があるため、空燃比学習値KGは機関負荷(例えば吸入空気量)について複数に区分された領域毎に各別に用意されている。
【0065】
先のステップS210において、排気センサ46が活性されている旨判断された場合には(ステップS210:YES)、以下の演算式(2)に基づいて空燃比学習値KGの更新が行われ、その更新値が新たな空燃比学習値KGの値として現在の機関負荷領域に電子制御装置50のメモリ52に記憶される。即ち、ここでは、空燃比学習値KGについて機関負荷領域毎にその学習が行われる(ステップS220)。
【0066】
KG←KI・ΣΔRAF(i) ・・・(2)
KI:補正係数(積分ゲイン)
ここで、上式(2)の「ΣΔRAF」は、予め定められた所定期間における上記偏差ΔRAFの積算値であり、添え字「i」はその所定期間中の各制御周期において算出される偏差ΔRAFの値をそれぞれ示している。同式(2)から明らかなように、仮にフィードバック補正係数FAFに基づく燃料噴射量補正が実行されている場合に、排気空燃比と目標空燃比との間に定常的な偏差が存在していると、空燃比学習値KGは徐々に増大し或いは減少するようになる。
【0067】
そして、こうした空燃比学習値KGの学習更新が行われることにより、排気空燃比と目標空燃比との間に定常的な偏差が存在する傾向が生じても、その傾向は空燃比学習値KGに基づく燃料噴射量補正を通じて打ち消されるようになる。
【0068】
このようにして燃焼モードが圧縮行程噴射モードに切り替えられているときに、空燃比学習値KGが機関負荷領域毎に求められた後、次の演算式(3)に基づいて最終的な燃料噴射量QINJが算出される(ステップS230)。
【0069】
QINJ←QBASE・(FAF+KG) ・・・(3)
一方、先のステップS210において、排気センサ46が活性化していない旨判断された場合には(ステップS210:NO)、空燃比のフィードバック補正は停止される。即ち、フィードバック補正係数FAFはその基準値である「1.0」に設定され、これに基づくフィードバック補正が停止される。但し、以下の演算式(4)に示されるように、この場合にあっても空燃比学習値KGのみに基づく燃料噴射量補正は継続して実行される(ステップS240)。
【0070】
QINJ←QBASE・(1.0+KG ・・・(4)
従って、燃料噴射系の個体差や経時変化によって基本燃料噴射量QBASEが機関運転状態や目標空燃比に見合う適正値から定常的にずれている場合であっても、これを補償することができるようになる。
【0071】
このようにしてステップS230,S240において、最終燃料噴射量QINJが算出されると、これに基づいて燃料噴射が実行される。そして、この一連の処理は一旦終了される。
【0072】
尚、ここでは、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定されているときに実行される空燃比制御について説明したが、同燃焼モードが吸気行程噴射モードであるときも同様の態様をもって同制御が実行される。但し、空燃比学習値KGについては、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定されているときに更新されるものとは別のものとして算出され、メモリ52の別の記憶領域に格納される。
【0073】
先の図3に示されるステップS100において、燃焼モードを圧縮行程噴射モードに設定する必要がないとき、即ち、先の圧縮行程噴射モード要求フラグXINJCが「OFF」に設定されている場合には(ステップS100:YES)、燃焼モードが吸気行程噴射モードに設定される(図3 ステップS110)。従って、目標空燃比がリーン空燃比から理論空燃比に切り替えられる(図5 タイミングt1)。そして、この切り替えに伴って基本燃料噴射量QBASEが所定量だけ増量されるとともに、スロットルバルブ26の開度がより大きな開度に変更され、それに合わせて吸入空気量の増量が図られるようになる。但し、このように目標空燃比が理論空燃比に変更されても排気空燃比は実空燃比よりも遅れて変化するため、同排気空燃比は理論空燃比に向けて徐々にしか変化しない(図5(c) タイミングt1〜t2)。
【0074】
そして次に、燃焼モードが圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替わってからの経過時間に相当する経過時間カウンタ値CSが次式(5)に基づいて算出される。即ち、現在の経過時間カウンタ値CSに対して所定値αが加算され、その加算値(CS+α)が新たな経過時間カウンタ値CSとして設定される(S120)。
【0075】
CS←CS+α ・・・(5)
従って、この経過時間カウンタ値CSは本処理の実行タイミングが到来する度に、所定量αをもって徐々に増大するようになる。尚、この一連の処理が所定クランク角毎の割込処理として行われているため、上記所定値αは経過時間カウンタ値CSに加算される値が時間換算したときに常に一定になるように、機関回転速度に基づき、これと反比例するように設定されている。
【0076】
次に、上記経過時間カウンタ値CSが予め定められた判定値CSJと比較される。ここで、この判定値CSJは、燃焼モードが圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えられるのに際し、応答遅れに起因する実空燃比と排気空燃比との間のずれ量が無視できる所定量以下に減少するまでの期間に設定されている。尚、この期間は、例えば燃焼室12から排気センサ46までの距離、排気通路13の流路抵抗、内燃機関10の排気量等々に応じて変化するが、ここでは実験やシミュレーション等を通じてこれら要素を総合的に考慮した一定の値として設定される。
【0077】
そして、ここで、経過時間カウンタ値CSが判定値CSJに達していない旨の判断がなされた場合には(S130:NO)、空燃比のフィードバック補正が禁止され、先のステップS240と同様に、上式(4)に基づいて最終燃料噴射量QINJが算出される(ステップS145)。即ち、燃料噴射量の補正に際し空燃比学習値KGのみを用いた空燃比のオープンループ制御が行われる(図5 タイミングt1〜t2)。
【0078】
一方、経過時間カウンタ値CSが判定値CSJ以上である旨の判断がなされた場合には(ステップS130:YES)、空燃比のフィードバック補正が許可される(ステップS140 図5 タイミングt2以降)。従って、この場合には、先のステップS230と同様に、上式(3)に基づいて最終燃料噴射量QINJが算出される。従って、燃焼モードの切り替えに伴って一時的に禁止していた空燃比のフィードバック補正が再開される。尚、これら各式(3),(4)に基づいて最終燃料噴射量QINJを算出するに際には、機関負荷状態の他、吸気行程噴射モードに対応する空燃比学習値KGが用いられる。
【0079】
このようにして最終燃料噴射量QINJが算出されると、これに基づいて燃料噴射が実行される。そして、この一連の処理は終了される。
このように、上記一連の処理によれば、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定され、排気センサ46が活性化するのに伴って空燃比のフィードバック補正が一旦開始されていても、同燃焼モードが吸気行程噴射モードに切り替えられると、その時点から所定期間(図5 「フィードバック補正禁止期間TFBS」)が経過して、実空燃比(理論空燃比)に対する排気空燃比の応答遅れが十分に低下するまでフィードバック補正が一時的に禁止される。
【0080】
以上説明した態様をもって内燃機関10の空燃比を制御するようにした本実施形態にかかる装置によれば以下の作用効果を奏することができる。
・本実施形態によれば、燃焼モードが圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えられた時点から所定期間が経過するまでの期間、空燃比のフィードバック補正を禁止することにより、同補正に制限を加えるようにしている。このため、仮に燃焼モードの切り替えた時点で排気空燃比が応答遅れの影響によって理論空燃比よりもリーン側に大きくずれるような状況下においても、そのずれに基づく燃料噴射量の増量補正が制限されるようになる。従って、過剰な燃料増量操作によって実空燃比が過度にリッチ側にされるのに起因する空燃比の乱れを抑制することができるようになる。
【0081】
・特に、本実施形態では、上記フィードバック補正を制限するに際して同補正を禁止するようにしているため、こうした過剰な燃料増量操作に起因する空燃比の乱れをより確実に抑制することができるようになる。
【0082】
・また、燃焼モードが圧縮行程噴射モードに設定されている場合でも、空燃比学習値KGの更新を行うようにし、排気センサ46が活性化する前は、この空燃比学習値KGによる燃料噴射量の補正を行うようにしている。従って、燃料噴射系の個体差や経時変化によって基本燃料噴射量QBASEが目標空燃比(ここではリーン空燃比)に見合う適正値から定常的にずれている場合であっても、これを補償することができるようになる。従って、燃焼モードが吸気行程噴射モードに設定されているときのみならず、圧縮行程噴射モードに設定されているときにあっても、空燃比の乱れを抑制することができるようになる。
【0083】
[第2の実施形態]
次に、本発明にかかる第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0084】
上記第1の実施形態では、燃焼モードを圧縮行程噴射モードから吸気行程噴射モードに切り替えるに際して実空燃比に対する排気空燃比の応答遅れが無視できる量にまで減少したことを判定する判定値CSJを一定の値に設定するようにした。
【0085】
ここで、こうした応答遅れは、大きくは以下の2つの要因によって生じていると考えられる。
即ち、一つの要因は、燃焼モードの切替要求が生じた時点から目標空燃比がリーン空燃比から理論空燃比に切り替えられ、その理論空燃比のもとでの燃焼により生じた排気が排気行程において燃焼室12から排気通路13に実際に排出されるようになるまでの第1の期間T1が存在することによる。
【0086】
またもう一つの要因は、このようにして排気が燃焼室12から排気通路13に排出された時点からその排気が排気センサ46の近傍にまで到達して同排気センサ46の出力値がその排気濃度に応じた値に変化するまでの第2の期間T2が存在することによる。
【0087】
そして、これら第1の期間T1及び第2の期間T2はいずれも一定ではなく、そのときどきの機関運転状態に基づいて変化する。従って、経過時間カウンタ値CSと上記判定値CSJとの比較に基づいて、排気空燃比の応答遅れが無視できる量にまで減少したことを正確に判定するうえでは、これら機関運転状態に応じた上記各期間T1,T2の変化を把握し、その変化を判定値CSJの設定にそれぞれ反映させるのが望ましい。
【0088】
そこで、本実施形態では、この判定値CSJをこれら各期間T1,T2と相関を有するパラメータの関数として定め、これらパラメータに基づいて同判定値CSJを設定するようにしている。
【0089】
以下、本実施形態におけるこの判定値CSJの設定手順について、図3の他、図6及び図7を参照して説明する。図6は、判定値CSJの設定手順を示すフローチャートであり、先の図3のステップ120〜ステップS130までの処理について、その変更部分のみを示している。
【0090】
この一連の処理に際し、図3に示されるステップS120において経過時間カウンタ値CSが算出されると、次に、図6に示されるステップS125において、機関回転速度及び吸入空気量に基づいて判定値CSJが算出される。具体的には、以下の式(6)に基づいて判定値CSJが算出される。
【0091】
CSJ←CSJNE+CSJQ ・・・(6)
ここで、上式(6)の右辺第1項である「CSJNE」は、先の第1の期間T1を判定値CSJの設定に反映させるためのものである(以下、これを「判定値第1項」と称する)。この判定値第1項CSJNEは機関回転速度の関数であり、そのときどきの機関回転速度に基づいて算出される。従って、この判定値第1項CSJNEは第1の期間T1に対応してその大きさが変化する。
【0092】
一方、上式(6)の右辺第2項である「CSJQ」は、先の第2の期間T2を判定値CSJの設定に反映させるためのものである(以下、これを「判定値第2項」と称する)。この判定値第2項CSJQは吸入空気量の関数であり、そのときどきの吸入空気量に基づいて算出される。従って、この判定値第2項CSJQは第2の期間T2に対応してその大きさが変化する。
【0093】
図7は、これら判定値第1項CSJNE及び判定値第2項CSJQの算出に際して用いられる関数マップを示している。この関数マップに示される判定値第1項CSJNEと機関回転速度との関係、並びに判定値第2項CSJQと吸入空気量との関係は電子制御装置50のメモリ52に記憶されている。
【0094】
同図7に示されるように、機関回転速度が低速である場合には、判定値第1項CSJNEは大きな値に設定され、同機関回転速度が高速になるにつれて判定値第1項CSJNEは減少するようになる。こうした機関回転速度と判定値第1項CSJNEとの関係は、上記第1の期間T1が短くなることに基づいている。
【0095】
一方、判定値第2項CSJQについてみると、吸入空気量が少ない場合には、判定値第2項CSJQは大きな値に設定され、同吸入空気量が多くなるにつれて判定値第2項CSJQは減少するようになる。こうした吸入空気量と判定値第2項CSJQとの関係は、吸入空気量が多くなるほど排気通路13を流れる排気の流速が増大し、この排気流速の増大に伴って上記第2の期間T2が短くなることに基づいている。
【0096】
また、ここで、図7に示されるように、判定値第1項CSJNE及び判定値第2項CSJQについては、機関回転速度及び吸入空気量の大きさに関わらず、常に以下の大小関係が成立している。
【0097】
CSJQ>CSJNE ・・・(7)
上式(7)から明らかなように、第1の期間T1、即ち燃焼モードの切替要求が出されてから排気行程に移行するまでの時間と比較して、第2の期間T2、即ち排気通路13に排出された排気が排気センサ46近傍に到達するまでの時間は相対的に常に大きいことになる。
【0098】
上式(6)に基づいて判定値CSJが算出されると(図6:ステップS125)、図3のステップS130において、経過時間カウンタ値CSと、機関回転速度及び吸入空気量に基づいて設定された判定値CSJとが比較される。そして、第1の実施形態と同様に、その比較結果に基づいて空燃比のフィードバック補正が許可或いは禁止される。
【0099】
以上説明した態様をもって空燃比を制御するようにした本実施形態にかかる装置によれば以下の作用効果を奏することができる。
・フィードバック補正の禁止期間を定める上記判定値CSJをそのときどきの吸入空気量の関数とし、吸入空気量が多くなるほどこの判定値CSJを小さく設定するようにした。従って、実空燃比に対する排気空燃比の応答遅れが排気流速に応じて変化しても、これに合わせて上記判定値CSJを適切に設定することができる。その結果、フィードバック補正が不必要に禁止されるのを極力回避しつつ、燃焼モードの切り替えに際しての空燃比の乱れについてもこれを一層好適に抑制することができるようになる。
【0100】
・更に、吸入空気量の他、上記判定値CSJをそのときどきの機関回転速度の関数とし、機関回転速度が高くなるほどこの判定値CSJを小さく設定するようにした。従って、実空燃比に対する排気空燃比の応答遅れが機関回転速度に応じて変化しても、これに合わせて上記判定値CSJを適切に設定することができる。その結果、フィードバック補正の不必要な禁止及び燃焼モードの切り替えに際しての空燃比の乱れを一層好適に抑制することができるようになる。
【0101】
[第3の実施形態]
次に、本発明にかかる第3の実施形態について上記第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0102】
上記第2の実施形態では、上記判定値CSJをそのときどきの機関回転速度及び吸入空気量に基づいて設定するようにした。従って、例えば、燃焼モードが切り替えられてから機関運転状態が略一定に維持される定常状態である場合には、実空燃比に対する排気空燃比の応答遅れを考慮しつつ、この判定値CSJを適切に設定することができる。
【0103】
但し、この応答遅れが発生している期間に機関運転状態が頻繁に変動する過渡状態である場合には、その変動の履歴を考慮するのが、判定値CSJをより適切な値に設定するうえでは望ましい。例えば、燃焼モードが切り替えられてから、機関回転速度が低く且つ吸入空気量が少ない状態が継続した後に、一時的に機関回転速度が上昇し、併せて吸入空気量も増大したような場合には、それに応じて判定値CSJも小さい値に変更される。しかしながら、このような場合、それ以前に機関回転速度が低く且つ吸入空気量が少ない状態が継続していたことが考慮されなくなる。即ち、こうした一時的な機関回転速度の上昇や吸入空気量の増大に合わせて判定値CSJを即座に小さく設定するのは、機関運転状態が過渡状態にあるときには実際的ではない。
【0104】
そこで、本実施形態では、図6に示すステップS125において、以下の演算式(8)に基づいて判定値CSJを算出するようにしている。
CSJ←CSJNE(NEAVE)+CSJQ(QAVE)・・・(8)
ここで、「NEAVE」、「QAVE」は燃焼モードの切り替えが行われてから現在の割込タイミングまでの期間における、機関回転速度の平均値、吸入空気量の平均値をそれぞれ示している。これら各平均値NEAVE,QAVEは例えば以下の各式に基づいてこれらを求めることができる。
【0105】
NEAVE←Σ(NE(i)・Δt(i))/T ・・・(9)
QAVE←Σ(Q(i)・Δt(i))/T ・・・(10)
上式(9)において、「NE(i)」、「Q(i)」は、現在の割込タイミング(i)における機関回転速度であり、「Δt(i)」は前回の割込タイミング(i−1)から今回の割込タイミング(i)までの期間を機関回転速度に基づいて時間換算した値である。また、「T」は燃焼モードの切り替えがなされた時点から現在の割込タイミング(i)までの期間を時間換算したものであり、Σ(Δt(i))と等しい。
【0106】
そして、このようにして求められた機関回転速度の平均値NEAVE、及び吸入空気量の平均値QAVEが算出された後、先の図7に示される関数マップに基づいて、これら各平均値NEAVE,QAVEに対応する判定値第1項CSJNE、判定値第2項CSJQが求められる。そして、これら判定値第1項CSJNE、判定値第2項CSJQから上式(8)に基づいて判定値CSJが算出される(図6:ステップS125)。
【0107】
上式(8)に基づいて判定値CSJが算出されると(図6:ステップS125)、図3のステップS130において、経過時間カウンタ値CSと機関運転状態に基づいて設定された判定値CSJとが比較され、第1の実施形態と同様に、その比較結果に基づいて空燃比のフィードバック補正が許可或いは禁止される。
【0108】
以上説明した態様をもって空燃比を制御するようにした本実施形態にかかる装置によれば以下の作用効果を奏することができる。
・本実施形態では、燃焼モードの切り替えがなされた時点からの機関回転速度及び吸入空気量についてそれらの平均値を算出し、これら平均値に基づいて判定値CSJを算出するようにしている。従って、燃焼モードの切り替えがなされた時点からの機関運転状態が変動するような場合であっても、そうした機関運転状態の変動履歴まで考慮しつつ、判定値CSJを設定することができる。その結果、判定値CSJの設定に際してこうした機関運転状態の変動に起因する悪影響を抑制しつつ、フィードバック補正の不必要な禁止及び燃焼モードの切り替えに際しての空燃比の乱れを一層好適に抑制することができるようになる。
【0109】
[第4の実施形態]
次に、本発明にかかる第4の実施形態について第1の実施形態と相違点を中心に説明する。
【0110】
上記各実施形態では、燃焼モードの切り替えがなされた時点から所定期間が経過するまで空燃比のフィードバック補正を禁止するようにしたが、本実施形態では同所定期間が経過するまで、このフィードバック補正に基づく燃料噴射量の増量補正に対してこれが小さくなるように制限を加えるようにしている。具体的には、燃焼モードの切り替えがなされた時点でフィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを「0」にまで一旦低下させ、その後、切り替え後の経過時間に応じてフィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを通常時の値にまで徐々に増大させるようにしている。
【0111】
以下、こうした燃料噴射量の増量補正に対する制限手法について図8及び図9を参照して説明する。図8は、燃料噴射量増量補正を制限する際の処理手順を示すフローチャートであり、先の図3のステップ120〜ステップS130までの処理について、その変更部分のみを示している。また、図9は、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXについて経過時間カウンタ値CSに基づく推移を示すグラフである。
【0112】
この一連の処理に際し、図3に示されるステップS120において経過時間カウンタ値CSが算出されると、その後、図8に示されるステップS132において、次式(11)に基づいてフィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXが補正される。
【0113】
FAFMAX←FAFMAXS・CS/CSJ ・・・(11)
但し CS≦CSJ
上式(11)において、「FAFMAXS」は、こうしたフィードバック補正にかかる制限が行われない場合における通常時の上限値FAFMAXの値(一定値)であり、ここでは、上式(11)において算出される補正後の上限値FAFMAXと区別するためにこのように表記している。
【0114】
また、上式(11)から明らかなように、右辺の「CS/CSJ」は時間の経過とともに増大して「1.0」に収束する。このため、図9に示されるように、補正後のフィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXはその通常時の上限値FAFMAXSよりも常に小さく設定され、経過時間カウンタ値CSの増大に伴って線形的に増加するようになる。因みに、このように上記上限値FAFMAXを経過時間カウンタ値CSに伴って増大させるようにしているのは以下の理由による。
【0115】
即ち、燃焼モードの切り替えによって生じる実空燃比に対する排気空燃比の応答遅れは、燃焼モードを切り替えた直後に最も大きく、その後は徐々に小さくなって最終的にはその影響は殆ど無視できる範囲にまで減少するようになる。
換言すると、排気空燃比と目標空燃比との偏差ΔRAF、更にそれに基づいて算出されるフィードバック補正係数FAFは、燃焼モードを切り替えた直後においては実際の空燃比と目標空燃比とのずれ度合を示すものとしての信頼性が低い。しかしながら、その後の経過時間が長くなると、これらの信頼性は徐々に高くなり、最終的には上記ずれ度合を好適に反映したものになる。
【0116】
従って、本実施形態では、経過時間カウンタ値CSの増大に合わせて上限値FAFMAXを徐々に増加させ、フィードバック補正の燃料増量補正にかかる制限を緩和するようにしている。
【0117】
このようにしてフィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを算出した後、次に先の式(1)に基づいて算出される吸気行程噴射モードに対応するフィードバック補正係数FAFと上式(11)から求められるその上限値FAFMAXとが比較される(ステップS134)。
【0118】
ここで、フィードバック補正係数FAFが補正後の上限値FAFMAXを上回っている場合には(ステップS134:YES)、この上限値FAFMAXがフィードバック補正係数FAFとして設定される(ステップS136)。従って、仮に、燃焼モードを切り替えた直後に排気空燃比が目標空燃比である理論空燃比よりも大幅にリーン側にずれているために、フィードバック補正係数FAFが大きな値に算出されても、この処理を通じて同フィードバック補正係数FAFは上限値FAFMAX未満に制限される。一方、フィードバック補正係数FAFが上限値FAFMAX以下である場合には、こうした制限は加えられない。
【0119】
このように本実施形態にかかる装置にあっては、フィードバック補正による燃料噴射量の補正度合が低下するように燃料噴射量補正係数(フィードバック補正係数FAF)が変更される。更に、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを燃焼モードの切替時点から徐々に増大させるようにしているため、その燃料噴射量補正度合の低下率は燃焼モードの切替時点から時間の経過とともに徐々に低下するようになる。
【0120】
このように必要に応じてフィードバック補正係数FAFに制限が加えられた後、図3に示されるステップS140の処理を通じて空燃比のフィードバック補正が実行される。従って、本実施形態にあっては、図3に示されるステップS145の処理は実行されず、燃焼モードの切り替えがなされたことのみに基づいて空燃比制御が一時的にオープンループ制御に切り替えられることはない。
【0121】
また因みに、上記処理では、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを経過時間カウンタ値CSに基づいて可変設定することにより、同フィードバック補正係数FAFの最大値についてはこれを制限するようにしているが、その最小値には特にこうした制限を設けるようにしていない。これは以下の理由による。
【0122】
即ち、燃焼モードの切り替えに起因して生じる空燃比の乱れは、燃焼モードの切り替え直後の排気空燃比がリーン領域にあるために、実空燃比も同様にリーン領域にある旨誤判断され、その誤判断に基づいて燃料噴射量の増量補正が行われることに起因する。従って、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を示しているときには、こうした燃焼モードの切り替えによる影響ではなく、別の理由に起因して実空燃比と理論空燃比との間に実際にずれが生じている可能性が高い。即ち、このような場合には寧ろ、フィードバック補正、即ち燃料噴射量の減量補正を行うことにより、こうした空燃比のリッチ傾向を打ち消すようにしたほうが望ましいことがある。
【0123】
このため、本実施形態にかかる装置では、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを可変設定の対象とすることにより、フィードバック補正により燃料噴射量が増量補正されるときにのみ、同補正を制限するようにしている。
【0124】
以上説明した態様をもって空燃比を制御するようにした本実施形態にかかる装置によれば以下の作用効果を奏することができる。
・本実施形態では、燃焼モードが切り替えられた時点でフィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを通常時の値FAFMAXSよりも低下させ、その後の経過時間に応じて上限値FAFMAXを増大させるようにしている。そして、この上限値FAFMAXに基づいてフィードバック補正係数FAFを制限することにより、その切り替え時点から所定時間が経過するまでは同フィードバック補正による燃料噴射量の補正度合を低下させるようにしている。このため、仮に燃焼モードの切り替えた時点で排気空燃比が応答遅れの影響によって理論空燃比よりもリーン側に大きくずれるような状況下においても、そのずれに基づく燃料噴射量の増量補正が制限されるようになる。従って、過剰な燃料増量操作によって実際の空燃比が過度にリッチ側にされるのに起因する空燃比の乱れを抑制することができるようになる。
【0125】
・また、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを燃焼モードの切替時点から徐々に増大させるようにしている。このため、燃焼モードの切り替え直後にあっては、不必要な燃料増量を抑制すべくフィードバック補正の補正度合が相対的に小さく設定される。そして、その後は徐々に同フィードバック補正の制限が緩和され、即ちフィードバック補正係数FAFが燃料噴射量の補正に対して徐々に反映されて通常のフィードバック補正に円滑に移行するようになる。従って、燃焼モードの切り替えに伴う過剰な燃料増量補正を抑制しつつ、こうした燃焼モードの切り替えに伴う応答遅れとは無関係に発生する実空燃比と理論空燃比とのずれについても対処することが可能になる。
【0126】
・また、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAX及び下限値FAFMINのうち、上限値FAFMAXについてのみ可変設定することにより、フィードバック補正を通じて燃料噴射量が増量補正されるときにのみその制限を行うようにしている。従って、フィードバック補正に対して不必要な制限が加えられるのを回避することができるようになる。
【0127】
以上、この発明の各実施形態について説明したが、これら各実施形態は以下のようにその制御構造の一部を変更して実施することもできる。
・第4の実施形態では、フィードバック補正係数FAFの上限値FAFMAXを経過時間カウンタ値CSに基づいて可変設定し、フィードバック補正係数FAFの最大値を制限することにより、フィードバック補正を禁止することなくこれに制限を加えるようにした。これに対して、以下の(a)〜(e)に示されるような態様をもって、こうしたフィードバック補正の制限を行うようにしてもよい。
【0128】
(a)経過時間カウンタ値CSが判定値CSJ未満であることを条件に、上式(1)に基づいて算出されるフィードバック補正係数FAFが所定値FAF1(>1.0)を超える場合に、そのフィードバック補正係数FAFをこの所定値FAF1と等しく設定する。
【0129】
(b)経過時間カウンタ値CSが判定値CSJ未満であることを条件に、上式(1)における補正係数(比例ゲイン)KPを通常時よりも小さく設定する。
(c)上記(b)において、補正係数(比例ゲイン)KPを経過時間カウンタ値CSに応じて可変設定する。具体的には、フィードバック補正係数FAFを上式(1)に替えて次式(12)に基づいて算出する。
【0130】
FAF←1.0+KP・(ΔRAF)・CS/CSJ ・・・(12)
但し CS≦CSJ
(d)上記(b),(c)において、フィードバック補正係数FAFが「1.0」よりも大きいこと、即ち同フィードバック補正係数FAFが燃料噴射量を増量補正するものであることを更に条件とする。
【0131】
(e)フィードバック補正係数FAFの設定に際し、式(1)で示されるような比例項のみならず、偏差ΔRAFの変化速度に応じて変化する微分項まで考慮するようにした場合にあっては、この微分項に制限を設けるようにしてもよい。
【0132】
・第2の実施形態及び第3の実施形態では、フィードバック補正を制限する期間を定める判定値CSJについてこれを機関回転速度及び吸入空気量の関数としたが、例えば、この判定値CSJを吸入空気量のみの関数、或いは機関回転速度のみの関数とするようにしてもよい。
【0133】
・上記第1〜3の実施形態では、経過時間カウンタ値CSを増大させる際の加算値αを一定値としたが、これを機関回転速度、吸入空気量、或いはこれら双方の関数として設定するようにしてもよい。具体的には、機関回転速度が高いときほどこの加算値αを大きく設定する、或いは吸入空気量が多いときほどこの加算値αを大きく設定する、といった設定態様を採用するのが望ましい。こうした構成によれば、判定値CSJを一定値に設定していても、これと比較される経過時間カウンタ値CSの変化速度が機関回転速度や吸入空気量に応じて変化するようになる。このため、実質的に判定値CSJ、即ちフィードバック補正に制限を加える期間をこれら機関回転速度や吸入空気量に応じて可変設定した場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0134】
・空燃比学習値KGは、これにより排気空燃比と目標空燃比との間の偏差が打ち消されるように設定されるものであればよく、その算出方法が上式(2)に示した方法に限定されるものではない。例えば、フィードバック補正係数FAFがその上限値FAFMAX(>1.0)を超えたこと条件にこれを増大させる一方、同フィードバック補正係数FAFがその下限値FAFMIN(<1.0)よりも低下したことを条件にこれを減少させるといった簡易な算出方法を採用することもできる。或いは、以下の式(13)に示されるように、現在生じている偏差ΔRAFについて重み付けをした加重積算値によって上記空燃比学習値KGを求めることもできる。
【0135】
KG←KI・Σ(ΔRAFi・ai) ・・・(13)
ai:重み付け係数(a1<a2<・・・<an)
・第3の実施形態では、機関回転速度及び吸入空気量の平均値を求め、これらに基づいて判定値CSJを設定するようにした。これに対して次式(14)に基づいてこの判定値CSJを設定するようにしてもよい。
【0136】
CSJ←CSJAVE+ΔCSJ(NE,Q) ・・・(14)
NE:機関回転速度
Q:吸入空気量
上式(14)において、「CSJAVE」は、機関運転状態(機関回転速度及び吸入空気量)に応じて変化する判定値CSJの平均的な値であり、第1の実施形態と同様に、基本的には実験やシミュレーション等を通じてこれを求めることができる。また、上式(14)において、ΔCSJ(NE,Q)はこの平均値CSJAVEからの変化量を示すものである。そして、例えば、上記平均値CSJAVEを求めたときの機関回転速度や吸入空気量の標準値よりも実際の機関回転速度が高いときほど、また実際の吸入空気量が多いときほど、このΔCSJ(NE,Q)を負の値にしてより小さな値に設定する。一方、これら標準値よりも実際の機関回転速度が低いときほど、また実際の吸入空気量が少ないときほど、このΔCSJ(NE,Q)を正の値にしてより大きな値に設定する。
【0137】
・上記各実施形態では、排気センサとしてリーン領域及びリッチ領域の双方においてそのリーン程度、リッチ程度に応じて出力値の変化するセンサを用いるようにした。これに対し、例えばリーン領域においてのみその出力値がリーン程度に応じて変化する排気センサ、いわゆるリーンミクスチャセンサを採用した内燃機関においても本発明にかかる装置は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる内燃機関の空燃比制御装置についてその概要を示す概略構成図。
【図2】排気センサの出力特性を示すグラフ。
【図3】空燃比制御についてその処理手順を示すフローチャート。
【図4】同じく空燃比制御についてその処理手順を示すフローチャート。
【図5】本実施形態の空燃比制御に基づく燃料噴射量等の推移例を示すタイミングチャート。
【図6】空燃比制御についてその処理手順を示すフローチャート。
【図7】機関回転速度と判定値第1項との関係並びに吸入空気量と判定値第2項CSJQとの関係を示すグラフ。
【図8】空燃比制御についてその処理手順を示すフローチャート。
【図9】燃焼モードの切替後経過時間とフィードバック補正係数の上限値との関係を示す関数マップ。
【図10】濃淡電池式の排気センサの出力特性並びにフィードバック補正係数の推移を示すタイミングチャート。
【図11】従来の空燃比制御について目標空燃比、排気空燃比、フィードバック補正係数等の推移を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…燃焼室、13…排気通路、14…機関ピストン、16…触媒装置、17…本体、20…燃料噴射弁、21…吸気バルブ、22…点火プラグ、23…排気バルブ、24…デリバリパイプ、26…スロットルバルブ、42…吸入空気量センサ、43…クランク角センサ、44…アクセルセンサ、45…水温センサ、46…排気センサ(フィードバック制御手段)、50…電子制御装置(切替手段、フィードバック制御手段、制限手段)、52…メモリ、60…アクセルペダル、FAF…フィードバック補正係数、CS…経過時間カウンタ値、CSJ…判定値。

Claims (7)

  1. 目標空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定して圧縮行程に燃料噴射を行う圧縮行程噴射モードから目標空燃比を理論空燃比に設定して吸気行程に燃料噴射を行う吸気行程噴射モードに内燃機関の燃焼モードを切り替える切替手段と、排気通路に設けられて理論空燃比よりも少なくともリーン側の領域において排気の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する排気センサと、前記内燃機関の燃焼モードが前記吸気行程噴射モードに切り替えられているときに実空燃比を理論空燃比に一致させるための燃料噴射量補正係数を前記排気センサの検出信号に基づいて算出し、同燃料噴射量補正係数に基づくフィードバック補正を実行するフィードバック制御手段とを備える筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記切替手段により燃焼モードが前記圧縮行程噴射モードから前記吸気行程噴射モードに切り替えられた時点から所定期間が経過するまで前記フィードバック制御手段の前記フィードバック補正に制限を加える制限手段を備える
    ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 前記制限手段は前記所定期間が経過するまで前記フィードバック補正を禁止するものである
    請求項1記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 前記制限手段は前記所定期間が経過するまで前記フィードバック補正による燃料噴射量の補正度合が低下するように前記燃料噴射量補正係数を変更するものである
    請求項1記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置。
  4. 前記制限手段は燃焼モードが前記圧縮行程噴射モードから前記吸気行程噴射モードに切り替えられた時点からの時間の経過に伴って前記補正度合を低下させる際の低下率が減少するように前記燃料噴射量補正係数を変更するものである
    請求項3記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置。
  5. 前記制限手段は前記フィードバック補正により燃料噴射量が増量補正されるときにのみその制限を行うものである
    請求項1乃至4のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置。
  6. 前記制限手段は前記所定期間を前記内燃機関の吸入空気量に基づいて設定するものである
    請求項1乃至5のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の空燃比制御装置。
  7. 前記制限手段は前記所定時間を機関回転速度に基づいて設定するものである
    請求項1乃至6のいずれかに記載の筒内噴射式1内燃機関の空燃比制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009068503A (ja) * 2009-01-08 2009-04-02 Denso Corp 筒内噴射式内燃機関の制御装置
JP2009150381A (ja) * 2007-11-30 2009-07-09 Yamaha Motor Co Ltd 自動車両用酸素センサの制御装置およびそれを備えた空燃比制御装置ならびに自動車両

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