JP2004035626A - 接着樹脂組成物および積層体 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明に係る接着樹脂組成物は、4−メチル−1− ペンテン系重合体樹脂が本来的に有する優れた耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性、液切れ性を損なうことなく、ヒートシール強度、耐衝撃性等に優れ、しかも、積層体製造用接着剤として好適である。前記積層体は、層間接着強度が高く、耐衝撃性、落下強度特性等に優れ、しかも、優れた耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性、液切れ性、ヒートシール性等の各特性を、その積層体の態様に対応して発揮することができる。
【選択図】なし
Description
【発明の技術分野】
本発明は、接着樹脂組成物およびその積層体に関し、さらに詳しくは、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂が本来的に有する優れた耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性および液切れ性を損なうことなく、ヒートシール強度、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂のみならず他の樹脂との接着性にも優れ、積層体製造用に好適に使用される接着樹脂組成物、およびその樹脂組成物を用いてなる各種ボトル等の容器、フィルム、シートなどの積層体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性などの特性に優れているため、電子レンジ用食器、フレキシブルプリント基板製造用離型フィルム、合成皮革用工程紙、ベーキングカートン、医療用注射器、あるいは医農薬、化粧品、血液等の保存容器、または測定用器具、青果保存容器などの各種用途への展開が図られていたが、ヒートシール強度や耐衝撃性が劣るという問題点があり、実用物性としてより一層の向上が望まれていた。
【0003】
そこで、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂と他の熱可塑性樹脂、たとえばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどとの多層化が検討された。たとえば4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂の特性と、ヒートシール性、耐衝撃性に優れた他のポリオレフィン樹脂との特性を互いに補完させる多層化が検討された。しかしながら、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂は、表面張力が低いため、他の樹脂たとえばエチレン系重合体との接着性においても同じオレフィン系重合体であるにも拘わらず、接着力が低く、直接接着し多層化することは困難であった。
【0004】
このため、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂からなる層とエチレン系重合体からなる層との間に介在させる接着剤層の形成に用いる接着性樹脂が種々検討された。その結果として数種類の樹脂ないし組成物、たとえば特開昭60−145844号公報に開示されている、特定のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(樹脂)、特公平2−59768号公報に開示されている、特定のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とポリ4−メチル−1−ペンテンとを特定割合で含有している組成物、および特開平9−268243号公報に開示されている、4−メチル−1−ペンテン系重合体(A)20〜60重量部と、エチレン・ブテン共重合体(B)30〜60重量部と、1−ブテン系重合体(C)5〜40重量部と、プロピレン・ブテン共重合体(D)0〜30重量部[成分(A)〜(D)の合計量は100重量部]からなる4−メチル−1−ペンテン系重合体組成物が見い出された。
【0005】
しかしながら、これらの公報に開示されている樹脂ないし組成物により一定の成果を得たものの、使用分野や新たな分野においてより一層の性能の向上が要求される用途が残されており、更に物性バランスの良い4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂組成物、およびその樹脂組成物を用いた積層体の出現が望まれている。また、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂たとえばポリエステル、ポリアミド(ナイロン)についても、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂と多層化することが検討された(特開平2−107438号公報、前記特開平9−268243号公報)。なお、この特開平2−107438号公報に開示されている積層体では、接着剤層は、特定のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体と、粘着付与剤と、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィンとを特定割合で含有する組成物から形成される。
【0006】
しかしながら、これらの公報に開示されている樹脂ないし組成物では、未だ層間接着性が充分ではなく、更なる改良が求められている。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、積層体製造用接着性樹脂組成物、すなわち他の樹脂層との接着性に優れる接着樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0008】
より詳細には、4−メチル−1− ペンテン系重合体樹脂からなる層と、ヒートシール性、耐衝撃性に優れた特性を持つ樹脂(たとえばポリオレフィン)からなる層のいずれの層に対しても高い接着強度を発現させる接着樹脂組成物、さらには、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂からなる層と、耐熱性、ガスバリヤ性、透明性に優れた樹脂(たとえばナイロン、ポリエステル等)からなる層のいずれの層に対しても高い接着強度を発現させる接着樹脂組成物を提供することを目的としている。
また、本発明の他の目的は、上記接着樹脂組成物からなる接着剤層を有する積層体を提供することにある。
【0009】
【発明の概要】
本発明に係る接着樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)80〜95重量部と、粘着剤(B)5〜20重量部を含有してなる樹脂組成物である。
前記エチレン系重合体(A)が、エチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレン含量が60〜90モル%、メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.84〜0.885g/cm3であることを特徴とする接着樹脂組成物である。
前記粘着剤(B)が、石油樹脂、ロジン系樹脂、テンペル系樹脂からなることを特徴とする接着樹脂組成物である。
上記の、本発明に係る接着樹脂組成物は、積層体製造の際に、接着樹脂組成物として好適に用いられる。
前記積層体を形成する熱可塑性樹脂として4−メチル−1−ペンテン系重合体のようなオレフィン系重合体樹脂を用いることができ、また、極性基含有重合体樹脂を用いることもできる。
本発明に係る積層体は、容器であってもよいし、またフィルム、シートであってもよい。
また、本明細書中、本発明に係る積層体における「積層体」は、積層体ないし積層成型品の両方を意味するものである。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る接着樹脂組成物およびその積層体について具体的に説明する。
本発明に係る接着樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)80〜95重量部と、粘着剤(B)5〜20重量部を含有してなる。まず、これらの成分について説明する。
【0011】
エチレン系重合体(A)
本発明で用いられるエチレン系共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位含有量(エチレン含有量)が60〜90モル%である。特に70〜85モル%の範囲内にあるエチレン系共重合体(A)を用いることにより、接着性に優れる接着剤層を形成することができる。
エチレンとの共重合で用いられるα−オレフィンとしては、たとえばプロピレン、1−ブテン、イソブテン、2−ブテンなどが挙げられる。中でも、プロピレンが特に好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。エチレン系共重合体(A)の上記組成は、13C−NMR法により測定することができる。
エチレン系共重合体(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,荷重2.16kg、温度230℃)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜20g/10分である。上記範囲内にあるメルトフローレートを有するエチレン系共重合体(A)を用いることにより、粘着剤成分との混合性がよくなり、高い接着性能を有する接着樹脂組成物が得られる。
【0012】
粘着剤(B)
本発明で用いられる粘着剤(B)は、ロジン系樹脂、テンペル樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂などの合成樹脂である。中でも脂環族飽和炭化水素樹脂が特に好ましい。これらの粘着剤は、1種単独、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
粘着剤の軟化点(環球法)は、80〜160℃、好ましくは100〜140℃である。軟化点が80℃未満、または160℃以上では接着強度が不足するため好ましくない。
【0013】
接着樹脂組成物
本発明に係る接着樹脂組成物では、合計量100重量部に対して、エチレン系重合体(A)は、70〜98重量部、好ましくは80〜95重量部の割合で用いられ、粘着剤(B)は、2〜30重量部、好ましくは5〜20重量部の割合で用いられる。これらの成分を上記のような割合で用いると、高い接着性能を発揮する接着樹脂組成物が得られる。
本発明に係る接着樹脂組成物は、高い接着性能が得られるという点から、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,荷重5.0kg、温度260℃)が、1.0〜100g/10分の範囲にあることが好ましく、中でも、2〜50g/10分の範囲にあることが特に好ましい。本発明に係る接着樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ剤、核剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに添加して使用される各種配合剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0014】
接着樹脂組成物の調製
本発明に係る接着樹脂組成物の調製は、エチレン系重合体(A)、粘着剤(B)、および必要に応じて添加される各種配合剤を、所定の割合で、種々公知の方法、たとえばV型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダーで混合した後、単軸押出機もしくは複軸押出機、または、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押出機等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕
する方法に従って行なうことができる。
【0015】
積層体
上記のような方法によって得られた接着樹脂組成物は、少なくとも3層以上の積層体、例えば、樹脂層A/接着層/樹脂層B、または樹脂層A/接着層/樹脂層B/接着層/樹脂層C/接着層/樹脂層D、または樹脂層A/接着層/樹脂層B/接着層/樹脂層B/接着層/樹脂層Aのような3種3層、または5種7層、または3種7層フィルムの接着層の形成に使用することにより、積層体を作製することができる。ここで各樹脂層は、4−メチル−1−ペンテン系重合体などの熱可塑性樹脂やポリエチレンテレフタレートなどの極性基含有樹脂である。
【0016】
積層体の層間接着強度は、各層の厚みに依存するが、たとえば4−メチル−1−ペンテン系重合体/接着剤層/ポリエステル系重合体層(各層の厚みの比)=20μm/20μm/20μmでは、層間接着強度を5N/15mm以上とすることができる。
【0017】
このような積層体は、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層(I)とポリエステル系重合体層(III)との積層物であるにも拘わらず、層間接着強度に優れ、機械的強度特性に優れた強固な積層構造体を形成するとともに、耐熱性、透明性等にも優れた性能を示す。また、この積層体を成形体とした場合においても、耐衝撃性、落下強度特性等にも優れている。
しかも、たとえば4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層(I)/接着剤層(II)/ポリオレフィン樹脂層(熱可塑性樹脂層(III))の層構成を有する積層体においては、ガス透過性にも優れ、積層体のポリオレフィン樹脂層、たとえばエチレン系樹脂層同士をヒートシールすると、ガス透過性に優れた丈夫な袋を製作することができる。
その結果、鮮度保持包装等の用途に新たに用いることができる。積層体の酸素透過度は、各層の厚みに依存するが、たとえば4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層(I)/接着剤層(II)/エチレン系重合体樹脂層=20μm/10μm/20μmの3層フィルムでは、7000cc/m2・24hr・atm程度である。また、上記3層フィルムのヒートシール強度は、15N/15mm程度である。
【0018】
また、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層/極性基含有重合体樹脂からなる熱可塑性樹脂層など、4−メチル−1− ペンテン系重合体樹脂層と、たとえばポリエステル、ポリアミド等の含酸素系熱可塑性樹脂からなる層との間に、本発明に係る接着樹脂組成物からなる接着剤層を介在させた積層体においては、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層の離型性と、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂層とのガスバリヤ性、耐熱性、高温剛性を兼ね備え、かつ、透明性、耐衝撃性、落下強度特性にも優れた材料となるため、たとえば、離型性とガスバリヤ性の両方を要求されるようなボトル、容器、フィルム、バッグなどの用途に特に好適である。
【0019】
樹脂層(I)の形成に用いられる4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1− ペンテン含有量が80〜100重量%である、4−メチル−1−ペンテン単独重合体または4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィンとからなる4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体である。特に接着性の向上の観点からは4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく、4−メチル−1−ペンテン含有量が99.9重量%以下であることが好ましい。
【0020】
4−メチル−1−ペンテンとの共重合に用いられる他のα−オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。中でも、1−デセン、1−ドデカン、1−テトラデカン、1−ヘキサデカン、1−オクタデカン、1−エイコセンが好ましい。このような他のα−オレフィンは、1種単独、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
また、このような4−メチル−1−ペンテン系重合体は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,荷重5.0kg、温度260℃)が、一般には0.1〜200g/10分の範囲内にあることが好ましく、1.0〜150g/10分の範囲内にあることが特に好ましい。また、その4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂層(I)の酸素透過係数は、通常、1400〜2000cc・mm/m2・24hr・atmの範囲内にある。
【0022】
樹脂層(III)の形成に用いられる熱可塑性樹脂がオレフィン系重合体樹脂である場合、そのオレフィン系重合体樹脂の製造の際に用いられるオレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィンなどが挙げられる。
【0023】
このようなα−オレフィン重合体樹脂としては、炭素原子数2〜4のα−オレフィンあるいはこれらのα−オレフィンを主成分とするポリオレフィン、すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1− ブテンの他、エチレン、プロピレン、1−ブテンを主成分とする共重合体、すなわち、これらのα−オレフィンから導かれる構成単位含有量が50重量%以上100重量%未満である共重合体が好ましい。
【0024】
上記ポリエチレンの具体例としては、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、高密度ポリエチレン(HDPE)などが挙げられる。
また、エチレンを主成分とする共重合体の具体例としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0025】
上記ポリプロピレンの具体例としては、プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等のプロピレンランダムコポリマー(プロピレンから導かれる構成単位含有量が通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(エチレンから導かれる構成単位含有量が通常5〜30モル%)などが挙げられる。これらの中では、ホモポリマー、ランダムコポリマーが透明性に優れるため好ましい。
【0026】
また、上記ポリ−1−ブテンの具体例としては、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、1−ブテン・4−メチル−1−ペンテン共重合体などが挙げられる。
また、上記のα−オレフィン重合体樹脂のほか、熱可塑性樹脂として、以下のような極性基含有重合体樹脂、中でも含酸素系樹脂が好適な熱可塑性樹脂として挙げられる。
【0027】
たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルないしコポリエステル(テレフタレート成分をジカルボン酸成分の内80重量%以上含有し、アルキレン基がブチレン基ないしエチレン基、特にエチレン基よりなるものが好ましい。);ポリアルキレンナフタレートポリエステルないしコポリエステル等の熱可塑性ポリエステル類(なお、ポリエステルには、少量のシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジカルボン酸が含有されていてもよい。);ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ナイロン4,6、ナイロン11、ナイロン6,10、ナイロン6,12等の脂肪族系ポリアミド;ナイロン6・T、ナイロン6・I、メタキシレンジアミンアジパミド等の芳香族系ポリアミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド等の含酸素系熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらの内でも、ポリエステルおよびポリアミドが好ましく、特にポリエステルが好ましい。
【0028】
これらの含酸素系熱可塑性樹脂の極限粘度[η]は0.5〜3dl/gの範囲内にあることが好ましい。
この極限粘度[η]は、含酸素系熱可塑性樹脂がポリエステルである場合、25℃のo−ジクロロベンゼン溶液中で、含酸素系熱可塑性樹脂がポリアミドである場合、30℃の濃硫酸溶液中で、含酸素系熱可塑性樹脂がポリカーボネートである場合、20℃の塩化メチレン溶液中で、含酸素系熱可塑性樹脂がポリフェニレンオキシドである場合、25℃のクロロベンゼン中でそれぞれ測定することができる。
【0029】
本発明に係る積層体を構成する樹脂層(I)、熱可塑性樹脂層(III)および接着剤層(II)の各層の厚みの比は特に限定されるものでなく、積層体の形状、大きさ、用途に応じて適宜選択することができるが、例えば通常、その各層の厚みの比[(I):(III):(II)]は、1〜100:1〜100:1〜100程度の範囲である。
【0030】
また、積層体の厚みも、特に限定されるものでなく、その形状、大きさ、用途に応じて適宜選択することができるが、通常、積層体の総厚みは、0.015〜13mm程度である。
特に、積層体成型品がボトル等の容器である場合は、前記各層の厚みの比が1〜20:1〜20:1〜20程度であり、総厚みが0.25〜7.5mm程度であることが好ましい。
【0031】
また、積層体成型品がフィルムである場合には、前記各層の厚みの比が1〜50:1〜50:1〜50程度であり、総厚みが0.02〜0.2mm程度であることが好ましい。
本発明に係る積層体は、上記3層を必須構成層とするものであるが、その他の層が更に積層された4層以上の層構成としてもよい。
【0032】
積層体の調製
本発明に係る積層体の調製方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、積層フィルムないしシートの調製方法としては、各樹脂と接着樹脂を共押出成型する方法、予め、プレス成形、押出成形等により作製した各樹脂フィルムないしシートをプレス成形により積層する方法等を例示することができる。
また、積層ボトル等の容器の調製方法としては、多層ブロー成形、プレス成形等の成型方法を例示することができる。
このように、本発明に係る接着樹脂組成物を用いて得られた、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層(I)/接着剤層(II)/オレフィン系重合体層の層構成を有する積層体(多層構造体)は、オレフィン系重合体層同士を互いにヒートシールすることができ、層間接着強度も高く、丈夫なバッグが得られるので、各種の包装材の用途に使用できる。たとえば4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂層(I)のガス透過性や耐熱性が高いので、各種の青果物保存用バッグや青果物保存容器用の蓋材、および瞬時の耐熱性が要求させる殺菌工程に利用するバッグ等に使用できる。更には4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂組成物の液切れ性の良い特徴を活かして農薬や化粧品用のボトル等に好適に利用することができる。
また、4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂層/本発明に係る接着樹脂組成物からなる樹脂層の層構成を有する2層フィルムないしシートは、オレフィン系重合体からなる容器に対してヒートシールできる蓋材等としても使用することができる。
また、4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂層(I)と、極性基含有重合体たとえばポリエステル、ポリアミド等の含酸素系樹脂からなる熱可塑性樹脂層(III)との間に、本発明に係る接着樹脂組成物からなる接着剤層(II)を介在させた積層体においては、4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂層(I)の離型性とポリエステル、ポリアミド等の樹脂層(III)とのガスバリヤ性、耐熱性、高温剛性を兼ね備え、かつ、透明性、耐衝撃性、落下強度特性にも優れた材料となるため、たとえば、離型性とガスバリヤ性の両方を要求されるようなボトル、容器、フィルム、バッグなどの用途に特に好適である。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係る接着樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)80〜95重量部と、粘着剤(B)5〜20重量部を含有してなる接着樹脂組成物である。これは、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂のみならず他の樹脂との接着性にも優れ、積層体製造用接着樹脂組成物、とりわけ、4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂層と他のオレフィン系重合体樹脂ないし極性基含有重合体樹脂からなる熱可塑性樹脂層との積層体製造の際に用いる接着用樹脂組成物として好適である。
【0034】
本発明に係る積層体(積層体成型品を含む)は、本発明に係る接着樹脂組成物から接着剤層(II)を形成しているので、4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂層(I)と熱可塑性樹脂層(III)との層間接着強度が高く、耐衝撃性、落下強度特性等の機械的特性に優れ、しかも、優れた耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性、液切れ性、ヒートシール性等の各特性を、その積層体の態様に対応して発揮することができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例に示した接着樹脂組成物の調製、3層フィルムの成形は、下記の方法に従って行なった。また、実施例に示した物性の測定方法と条件は、下記の通りである。
(1)接着組成物の調製
所定量をヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、65mmφの押出機で溶融混練して接着樹脂組成物を調製した。
(2)3層フィルムの成形
次の原料を用いて3層のフィルム成形機を用いて総厚み60μmの3層フィルムを成形した。ダイス温度は280℃、ダイのクリアランスは0.5mmに設定した。なお、各原料の押出温度は以下の通りである。
【0036】
<原料押出温度>
4−メチル−1−ペンテン系重合体(PMP):280℃
接着樹脂組成物(TL):280℃
エチレン系重合体(PE):250℃
プロピレン系重合体(PP):250℃、
ポリエチレンテレフタレート(PET):290℃
(3)物性測定試験
1)MFR
各々の所定量を2軸押出機を用いて混練して調製した接着樹脂組成物のMFRは、ASTM D 1238に準拠して荷重5kg、温度260℃の条件で測定した。
2)層間接着強度
3層フィルムのT字型剥離試験を次の条件下で行ない、剥離強度を測定し層間接着強度とした。
【0037】
<試験条件>
剥離試験速度:300mm/分
剥離幅:15mm
温度:23℃
【0038】
【実施例1】
エチレン・プロピレン共重合体[EPR(1)、エチレン含有量=80モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、230℃)=2g/10分]90重量部、脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学(株)製、商品名:アルコンP125、軟化点:125℃]を配合し、ヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドした。
次いで、得られた混合物を270℃に設定した65mmφの二軸押出機で溶融混練し、接着樹脂組成物(TL1)を調製した。この組成物のMFRを前記条件にて測定した。その結果を第1表に示す。次に、この組成物(TL1)、4−メチル−1−ペンテン系重合体(ホモポリマー)[PMP;MFR(ASTM D 1238,荷重 5.0kg、260℃)=20g/10分]、およびポリエチレン系重合体(ホモポリマー)[PE;MFR(ASTM D 1238,荷重2.16kg、190℃)=2g/10分]を用いて3層フィルム成形機にて3層フィルムを調製した。
得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL1層/PE層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第
2表に示す。
【0039】
【実施例2】
実施例1において、ポリエチレン系重合体(PE)の代わりに、プロピレン系重合体(ホモポリマー)[PP;MFR(ASTM D 1238,荷重2.16kg、230℃)=7g/10分]を用いた以外は、実施例1と同様にして、3層フィルムを調製した。
得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL1層/PP層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0040】
【実施例3】
実施例1において、ポリエチレン系重合体(PE)の代わりに、ポリエチレンテレフタレート[PET;密度(ASTM D 1505)=1.4g/cm3、25℃のo−ジクロロベンゼン溶液中で測定した極限粘度[η]=1.4dl/g]を用いた以外は、実施例1と同様にして、3層フィルムを調製した。
得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL1層/PET層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0041】
【実施例4】
エチレン・プロピレン共重合体[EPR(2)、エチレン含有量=75モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、230℃)=5g/10分]90重量部、脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学(株)製、商品名:アルコンP125、軟化点:125℃]を配合し、ヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドした。
次いで、得られた混合物を270℃に設定した65mmφの二軸押出機で溶融混練し、接着樹脂組成物(TL2)を調製した。この組成物のMFRを前記条件にて測定した。その結果を第1表に示す。次に、この組成物(TL2)、4−メチル−1−ペンテン系重合体(ホモポリマー)[PMP;MFR(ASTM D 1238,荷重5.0kg、260℃)=20g/10分]、およびポリエチレン系重合体(ホモポリマー)[PE;MFR(ASTM D 1238,荷重2.16kg、190℃)=2g/10分]を用いて3層フィルム成形機にて3層フィルムを調製した。
得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL2層/PE層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0042】
【実施例5】
実施例4において、ポリエチレン系重合体(PE)の代わりに、プロピレン系重合体(ホモポリマー)[PP;MFR(ASTM D 1238,荷重2.16kg、230℃)=7g/10分]を用いた以外は、実施例4と同様にして、3層フィルムを調製した。
得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL2層/PE層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0043】
【実施例6】
実施例4において、ポリエチレン系重合体(PE)の代わりに、ポリエチレンテレフタレート[PET;密度(ASTM D 1505)=1.4g/cm3、25℃のo−ジクロロベンゼン溶液中で測定した極限粘度[η]=1.4dl/g]を用いた以外は、実施例4と同様にして、3層フィルムを調製した。
得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL2層/PET層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0044】
【比較例1】
実施例1において、脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学(株)製、商品名:アルコンP125、軟化点:125℃]の代わりにPMPと相容性が良好であるとされる1−ブテン系共重合体(PB−1、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン含有量=85モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、190℃)=0.2g/10分]に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物(TL3)を調製した。
以下、この組成物(TL3)を用い、実施例1と同様にして、3層フィルムを調製した。得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL3層/PE層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0045】
【比較例2】
実施例1において、脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学(株)製、商品名:アルコンP125、軟化点:125℃]の代わりにPMPと相容性が良好であるとされる1−ブテン系共重合体(PB−1、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン含有量=85モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、190℃)=0.2g/10分]に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物(TL3)を調製した。
以下、この組成物(TL3)を用い、実施例2と同様にして、3層フィルムを調製した。得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL3層/PP層=20μm/20μm/20μmであった。
この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0046】
【比較例3】
実施例1において、脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学(株)製、商品名:アルコンP125、軟化点:125℃]の代わりにPMPと相容性が良好であるとされる1−ブテン系共重合体(PB−1、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン含有量=85モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、190℃)=0.2g/10分]に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物(TL3)を調製した。
以下、この組成物(TL3)を用い、実施例3と同様にして、3層フィルムを調製した。得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL3層/PET層=20μm/20μm/20μmであった。
この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0047】
【比較例4】
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体[エチレン含有量=80モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、230℃)=2g/10分]の配合量を100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物(TL4)を調製した。
以下、この組成物(TL4)を用い、実施例1と同様にして、3層フィルムを調製した。得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL4層/PE層=20μm/20μm/20μmであった。この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0048】
【比較例5】
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体[エチレン含有量=80モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、230℃)=2g/10分]の配合量を100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物(TL4)を調製した。
以下、この組成物(TL4)を用い、実施例2と同様にして、3層フィルムを調製した。得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL4層/PP層=20μm/20μm/20μmであった。
この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【0049】
【比較例6】
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体[エチレン含有量=80モル%、MFR(ASTM D 1238,荷重 2.16kg、230℃)=2g/10分]の配合量を100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物(TL4)を調製した。
以下、この組成物(TL4)を用い、実施例3と同様にして、3層フィルムを調製した。得られた3層フィルムの厚み構成は、PMP層/TL4層/PET層=20μm/20μm/20μmであった。
この3層フィルムの層間接着強度を上記方法に従って測定した。その結果を第2表に示す。
【表1】
本発明に係る接着剤樹脂組成物は、4−メチル−1− ペンテン系重合体樹脂が本来的に有する優れた耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性、液切れ性を損なうことなく、ヒートシール強度、耐衝撃性等に優れ、しかも、積層体製造用接着剤として好適である。
前記積層体は、層間接着強度が高く、耐衝撃性、落下強度特性等に優れ、しかも、優れた耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性、液切れ性、ヒートシール性等の各特性を、その積層体の態様に対応して発揮することができる。
Claims (9)
- エチレン系重合体(A)80〜95重量部と、粘着剤(B)5〜20重量部を含有してなる接着樹脂組成物。
- 前記エチレン系重合体(A)が、エチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレン含量が60〜90モル%、メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.84〜0.885g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の接着樹脂組成物。
- 前記粘着剤(B)が、石油樹脂、ロジン系樹脂、テンペル系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の接着樹脂組成物。
- 積層体製造の際に用いられる接着樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着樹脂組成物。
- 前記積層体を形成する熱可塑性樹脂がオレフィン系重合体樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
- 前記オレフィン系重合体樹脂が4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
- 前記積層体を形成する熱可塑性樹脂が極性基含有重合体樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
- 前記積層体が容器であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
- 前記積層体が、フィルムまたはシートであることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
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