JP2004035370A - フッ素化熱処理装置、被処理物の処理方法及び処理物 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ化物膜等の被処理物のフッ素欠損を著しく減少させて真空紫外域の透過率を向上させるフッ素化熱処理装置を提供すること。
【解決手段】フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器1と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉3と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管2とを備えるフッ素化熱処理装置であって、少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、クロム、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器1と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉3と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管2とを備えるフッ素化熱処理装置であって、少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、クロム、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不純物汚染を無くしたフッ素雰囲気を形成して被処理物の処理を行うフッ素化熱処理装置、被処理物の処理方法及びこの処理方法により処理された処理物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フッ化物材料は、窒化物や酸化物とは異なり、波長180nm以下の真空紫外領域においても透明であるため、真空紫外領域用のレンズやプリズムなどの光学素子、それら光学素子表面にコートされた反射防止膜、偏向膜又は反射膜などの光学薄膜として不可欠である。
【0003】
近年の半導体集積回路の高集積化、高密度化に伴い、精細な回路パターンをフォトリソグラフィで製造するためには、真空紫外光を露光光源とした半導体回路製造用縮小投影露光装置の開発が必須となってきている。真空紫外光用縮小投影露光装置には、フッ化物の各種光学素子並びに光学薄膜が用いられる。
【0004】
縮小投影露光装置では、レーザ光源から半導体回路が露光されるウエハまでの間に、数十枚にもおよぶ様々な形状・用途のフッ化物光学素子が配置されており、これら光学素子表面にはそれぞれ目的に応じたフッ化物薄膜がコートされている。光学素子材料及びフッ化物薄膜には、多少の光吸収があるので、最終的にウエハ面上へ到達する光量はかなり小さくなる。露光性能、生産性向上のためには、この光量減少をできる限り小さくしなければならない。即ち、各光学素子及び薄膜の光吸収を小さくすればするほど、露光装置の性能が向上する。
【0005】
光学素子材料そのものは長年にわたり鋭意研究開発されてきた結果、光吸収の原因となる欠陥や不純物の含有量は極力抑えられ、また、研磨技術の発達により素子表面での散乱も極力低下している。
一方、光学薄膜は、これまでに抵抗加熱ないしは電子ビーム溶解による真空蒸着、イオンアシストを併用する真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、イオンビームスパッタリングなどの各種PVD法により比較的低温で簡便に成膜されている。ここで基板となる光学素子を比較的低温の加熱にとどめて薄膜を形成しなければならない理由は、高温に加熱すると、光学素子に熱変形が生じ、光学素子表面の加工寸法精度にくるいが生じて所望の結像性能が得られないためである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように比較的低温な加熱にとどめられた光学素子上に形成されたフッ化物光学薄膜は、高温下で時間をかけて生成されたバルク状フッ化物固体に比べて、著しく光吸収が大きくなっている。バルクに対して薄膜の真空紫外光吸収が格段に大きくなっている原因は、化学量論組成に比べてフッ素が欠損してダングリングボンドが生じていること、フッ素欠損した原子サイトに酸素原子あるいは水酸基が結合して光を吸収していること、バルクと比較して結晶性に乏しく構造欠陥を多く含んでいること、バルクに比べて比表面積が大きいために水分や有機物の吸着量が非常に多くこれら吸着物が光を吸収することが挙げられる。
【0007】
光学薄膜は光学素子の両面にコートされていることから、コート面数は光学素子数の2倍になる。従って、フッ素欠損、構造不整、酸化・水酸化、水分・有機物吸着を伴い光吸収の大きな光学薄膜が上記真空紫外用露光装置に搭載された場合には、これら光学薄膜を数十コートにわたって通り抜けてウエハ面に到達した光量は、もとの光源光量の数%程度と極端に低くなる。従って、露光時間が長くなり、生産性が極端に悪くなる。即ち、露光性能は光学薄膜により決定される。また、フッ素欠損のあるフッ化物薄膜、あるいは、フッ素欠損と酸素含有のあるフッ化物薄膜は、構造欠陥や不純物含有のためにレーザ耐久性が高くないため、光学素子部品交換の頻度が多くなり、露光装置の生産性を更に悪化させる。
【0008】
本発明の課題は、フッ化物薄膜等の被処理物のフッ素欠損を著しく減少させて真空紫外域の透過率を向上させるフッ素化熱処理装置、フッ化物薄膜等の被処理物の処理方法、及びこの処理方法により処理された処理物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者は、鋭意研究の結果、フッ素ガスは全元素中で最も反応性が高いために、フッ素ガス供給ラインや処理装置内の各種物質とフッ素ガスとの間で化学反応が発生していること、及び化学反応の結果生成された物質の中には、処理装置内に格納している光学素子そのものを汚染してしまう物質が存在するため、フッ素化熱処理による透過率向上の効果を最大限に引き出せていないことを明らかにした。そして、以下のフッ素化熱処理装置、被処理物の処理方法及びこの処理方法により処理された被処理物の発明を完成させた。
【0010】
請求項1記載のフッ素化熱処理装置は、フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管とを備えるフッ素化熱処理装置であって、少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、クロムの含有濃度が1%以下である材料により構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載のフッ素化熱処理装置は、フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管とを備えるフッ素化熱処理装置であって、少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載のフッ素化熱処理装置は、前記材料が、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0013】
本請求項1〜請求項3記載のフッ素化熱処理装置によれば、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物のフッ素欠損を補うと共に不純物を減少させて、被処理物を化学量論組成のフッ化物に変化させることができる。また、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物の結晶性を向上させ構造欠陥を減少させることができる。更に、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物のレーザ耐性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項4記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記フッ素化熱処理装置の前記反応炉内を所定の全圧及びフッ素分圧に制御する圧力制御工程と、前記反応炉内を所定の温度に制御する温度制御工程とを含むことを特徴とする。
また、請求項5記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物を所定の温度に加熱する加熱工程とを含むことを特徴とする。
また、請求項6記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記反応炉内の水分を脱気する水分脱気処理工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記被処理物を取り出す取出工程とを含む被処理物の処理方法において、前記水分脱気処理工程における処理温度は、100〜170℃であり、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度は10〜150℃、フッ素濃度は1000ppm〜100%であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項7記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記反応炉内の水分を脱気する水分脱気処理工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、前記反応炉内に格納された前記被処理物を所定の温度に加熱する加熱処理工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記被処理物を取り出す取出工程とを含む被処理物の処理方法において、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度は10〜150℃、フッ素濃度は1000ppm〜100%であり、前記加熱処理工程における前記反応炉内の温度は、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度よりも高く、前記加熱処理工程における前記反応炉内のフッ素濃度は、前記フッ素化反応工程におけるフッ素濃度よりも低いことを特徴とする。
【0016】
また、請求項8記載の被処理物の処理方法は、前記被処理物が、フッ化物薄膜、フッ化物粉体、フッ化物固体及びフッ化物光学素子の何れか一つであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項9記載の被処理物の処理方法は、前記フッ化物薄膜、前記フッ化物粉体、前記フッ化物固体及び前記フッ化物光学素子は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ランタン、フッ化アルミニウム、フッ化ネオジム、フッ化ガドリニウム、フッ化イットリウム、フッ化ディスプロシウム、フッ化バリウム、フッ化ナトリウム、フッ化ビスマス、フッ化ストロンチウム、フッ化鉛、フッ化セレン、クライオライト及びチオライトの群から選ばれた少なくとも一つから構成されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項10記載の被処理物の処理方法は、前記フッ素が、純フッ素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの希ガスのうち少なくとも一種以上で希釈したフッ素ガス、予めフッ素化させた前記反応炉内面から処理中に放出するフッ素原子、予めフッ素化させた金属あるいはフッ素過剰合金あるいはフッ素過剰フッ化物を前記反応炉内に設置して処理中に放出するフッ素原子、金属フッ化物の電気分解によって発生させたフッ素ガス、XeF2, XeF4, XeF6のフッ素―希ガス化合物を昇華・蒸発させたもの及びこれらフッ素―希ガス化合物の分解によって発生したフッ素ガス、及び炭素−フッ素化合物、イオウ−フッ素化合物、窒素−フッ素化合物のうちの少なくとも1種類以上を乖離させて発生するフッ素ラジカル及びフッ素イオン等の活性フッ素の中の少なくとも一つを使用することを特徴とする。
【0019】
本請求項4〜請求項10記載の被処理物の処理方法によれば、被処理物のフッ素欠損を補うと共に不純物を減少させて、被処理物を化学量論組成のフッ化物に変化させることができる。また、被処理物の結晶性を向上させ構造欠陥を減少させることができる。更に、被処理物のレーザ耐性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項11記載の処理物は、請求項4〜請求項10の何れか一項に記載の被処理物の処理方法により処理されたことを特徴とする。本請求項11記載の処理物、即ち、フッ化物薄膜、フッ化物粉体、フッ化物固体及びフッ化物光学素子は、フッ素欠損が補われ不純物が減少されて、化学量論組成のフッ化物に変化している。また、結晶性を向上させ、構造欠陥を減少させ、レーザ耐性を向上させたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態にかかるフッ素化熱処理装置について説明する。なお、本実施の形態においては、被処理物としてフッ化物薄膜が形成されたフッ化物光学素子を用い、フッ化物光学素子に対してフッ素化熱処理を行う場合について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態にかかるフッ素化熱処理装置の構成図である。図中符号1で示すものは、ニッケル−銅合金のモネル合金で製造されたフッ素ガス貯蔵供給容器である。このフッ素ガス貯蔵供給容器1には、モネル合金により製造されたガス配管(フッ素ガス配管)2の一端が接続されている。また、ガス配管2の他端には反応炉3が接続されている。
【0023】
ガス配管2には、接ガス部(実際にフッ素ガスが接する部位)がニッケルメッキされたバルブ4,5,6が設けられており、バルブ5を介してフッ素ガスを希釈するためのヘリウムガスを供給するヘリウムガスボンベ7が接続されている。このバルブ4,5,6の開閉を制御することにより、反応炉3に対して、フッ素ガス貯蔵供給容器1からガス配管2を介してフッ素ガス、ヘリウムガス、及びフッ素/ヘリウム混合ガスが供給される。
【0024】
反応炉3は、純度99%以上のニッケルで製造されており、その内部には、純度99%以上のニッケルで製造された光学素子固定治具8が設けられている。光学素子固定治具8には、フッ素欠損のあるフッ化物光学薄膜9がコートされたフッ化物光学素子10が固定されている。また、この反応炉3の上部には、温度計測用熱電対11が設けられている。またフッ素ガス貯蔵供給容器1及び反応炉3の外周部には、PID制御可能な外部ヒータ12が設けられている。
【0025】
反応炉3には、排気管13の一端が接続されており、この排気管13には、バルブ14、排気系を構成する圧力計15、流量制御及び圧力制御装置16及びフッ素除去装置17が接続されている。ここで排気管13のうち反応炉3からバルブ14まではモネル合金により形成されており、バルブ14の接ガス部には、ニッケルメッキが施されている。
【0026】
このフッ素化熱処理装置においては、フッ素ガス貯蔵供給容器1がニッケル−銅合金のモネル合金で製造されており、ガス配管2及び排気管13のうち反応炉3からバルブ14までの部分がモネル合金により製造されており、バルブ4,5,6,14の接ガス部には、ニッケルメッキが施されており、反応炉3及び光学素子固定治具8が純度99%以上のニッケルで製造されている。即ち、フッ素ガス貯蔵供給容器1からバルブ14に至る領域のうちフッ素ガスに触れる部分の全てが、クロム、チタンの含有濃度が1%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である材料により構成されている。
【0027】
なお、この実施の形態のフッ素化熱処理装置においては、フッ素ガス貯蔵供給容器1、ガス配管2、反応炉3及び光学素子固定治具8は、クロム、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されているが、フッ素ガス貯蔵供給容器1、ガス配管2、反応炉3及び光学素子固定治具8を構成する材料の少なくとも実際にフッ素ガスが接する部位について、クロム、チタンの含有濃度が1%以下であればよい。
【0028】
また、フッ化物光学素子に形成されているフッ化物薄膜は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ランタン、フッ化アルミニウム、フッ化ネオジム、フッ化ガドリニウム、フッ化イットリウム、フッ化ディスプロシウム、フッ化バリウム、フッ化ナトリウム、フッ化ビスマス、フッ化ストロンチウム、フッ化鉛、フッ化セレン、クライオライト及びチオライトの群から選ばれた少なくとも一つから構成される。
【0029】
また、フッ素ガス貯蔵供給容器1から供給されるフッ素としては、純フッ素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの希ガスのうち少なくとも一種以上で希釈したフッ素ガス、予めフッ素化させた前記反応炉内面から処理中に放出するフッ素原子、予めフッ素化させた金属あるいはフッ素過剰合金あるいはフッ素過剰フッ化物を前記反応炉内に設置して処理中に放出するフッ素原子、金属フッ化物の電気分解によって発生させたフッ素ガス、XeF2, XeF4, XeF6のフッ素―希ガス化合物を昇華・蒸発させたもの及びこれらフッ素―希ガス化合物の分解によって発生したフッ素ガス、及び炭素−フッ素化合物、イオウ−フッ素化合物、窒素−フッ素化合物のうち少なくとも1種類を乖離させて発生するフッ素ラジカル及びフッ素イオン等の活性フッ素の中の少なくとも一つが使用されている。
【0030】
次に、このフッ素化熱処理装置を用いたフッ素欠損のあるフッ化物薄膜がコートされたフッ化物光学素子のフッ素化熱処理について説明する。まず、反応炉3内には、予めフッ素系ガスを導入し加熱して、反応炉3の内壁及び光学素子固定治具8をフッ素化させて、表面にフッ化ニッケルを析出させて不働態化しておく。
【0031】
フッ素化熱処理は、第1工程としての被処理物の格納処理、第2工程としての反応炉内の水分脱気処理、第3工程としてのフッ素化反応処理、第4工程としての加熱処理、第5工程としての冷却処理、第6工程としての被処理物の取り出し処理により行われる。
【0032】
第1工程(被処理物の格納処理)においては、フッ化物光学薄膜9が予め成膜されているフッ化物光学素子10を用意する。用意したフッ化物光学素子10を洗浄した後、反応炉3内の光学素子固定治具8に固定する。
【0033】
第2工程(反応炉内の水分脱気処理)においては、反応炉3内を排気系により10−5Paまで排気した後、反応炉3内にガス配管2を通じてヘリウムガスを流しながら、外部ヒータ12を用いて反応炉3内を150℃まで加熱しながら12時間保持して、水分を脱気する。温度計測には温度計測用熱電対11を用いる。なお、この水分脱気工程における反応炉3内の温度は、100〜170℃であってもよい。
【0034】
第3工程(フッ素化反応処理)においては、反応炉3内の温度を100℃とし、フッ素ガス貯蔵供給容器1から供給されるフッ素ガスを、ヘリウムガスにより所望の濃度(1000ppm〜100%)に希釈し、ガス配管2及びバルブ6を介して反応炉3内に導入してフッ素化反応を進行させる。反応炉3よりも下流側に設置された流量制御及び圧力制御装置16を用いて、圧力計15の指示値が所望の値(所定の全圧及びフッ素分圧)となるように調節して、計時を開始する。この際に排気系を開放してガスを流しつづける開放系反応炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系反応炉としてもよい。フッ素化反応中は、反応炉3内の温度が100℃で一定となるようにする。この状態で所定時間経過させる。なお、このフッ素化反応処理における反応炉3内の温度は、10〜150℃であってもよい。
【0035】
第4工程(加熱処理)においては、一旦、反応炉3内のフッ素ガスを排気し、ヘリウムガスにて置換する。そして、再び、フッ素ガス貯蔵供給容器1から供給されるフッ素ガスを、ヘリウムガスにより所望の濃度に希釈し、ガス配管2及びバルブ6を通じて反応炉3内に導入する。この際、反応炉3へ導入される希釈フッ素ガスの濃度は、第3工程(フッ素化反応処理)における希釈フッ素濃度よりも低くする。反応炉3内の温度を300℃まで、即ちフッ素化反応処理における反応炉3内の温度よりも高い温度まで上昇させる。300℃に到達後に、反応炉3よりも下流側に設置された流量制御及び圧力制御装置16を用いて、圧力計15の指示値が所望の値となるように調節して、加熱処理の計時を開始する。この際に排気系を開放してガスを流しつづける開放系反応炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系反応炉としてもよい。加熱処理中は、反応炉3内の温度が300℃で一定となるようにする。この状態で所定時間経過させる。
【0036】
第5工程(冷却処理)においては、反応炉3内の加熱を止めて、第4工程(加熱処理)と同一のフッ素希釈濃度のまま、反応炉3の冷却を開始する。反応炉3内の温度が150℃まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、反応炉3内を排気し、ヘリウムガスで置換する。反応炉3内の温度が室温まで下がった時点で冷却を終える。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系反応炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系反応炉としてもよい。
【0037】
第6工程(被処理物の取り出し処理)においては、ヘリウムガス置換を止めて反応炉3を開放して、フッ素化熱処理を施した被処理物を取り出す。
【0038】
第3工程(フッ素化反応)において、被処理物中の酸素、水酸基、その他の不純物が取り除かれてフッ素化され、また、被処理物中のフッ素欠損領域が完全にフッ素化されて化学量論組成のフッ化物となる。
【0039】
続く第4工程(加熱処理)において、フッ素―非フッ素元素間の化学結合が安定化される。特に薄膜や多孔物質である場合には、加熱によりその物質全体の構造が緻密化して、大気露出面積が減少し、処理後に大気暴露した際の水分などとの反応による劣化を著しく低減できる。
【0040】
フッ素化反応工程時間及び加熱処理工程時間は、選択したフッ素ガス分圧及び処理温度において、用意した薄膜や粉末の厚み分をフッ素拡散させるのに十分な時間であればよく、これまでの実験からそれぞれの工程とも1時間程度でよいことが判明している。第1工程〜第6工程を経た被処理物、即ち、処理物は、フッ素欠損が補われ不純物が減少されて、化学量論組成のフッ化物に変化している。また、結晶性を向上させ、構造欠陥を減少させ、レーザ耐性を向上させたものである。
【0041】
なお、この実施の形態においては、被処理物としてフッ化物薄膜が形成されたフッ化物光学素子を用い、フッ化物光学素子に対してフッ素化熱処理を行う場合について説明しているが、被処理物としてフッ化物薄膜、フッ化物粉体又はフッ化物固体等を用い、フッ化物薄膜、フッ化物粉体又はフッ化物固体等に対してフッ素化熱処理を行うようにしてもよい。
【0042】
【実施例1】
本発明の実施例1においては、ガス配管2及び排気管13のうち反応炉3からバルブ14までの区間の材質をニッケル―銅合金のモネル合金とした。ステンレス鋼製のバルブ4,5,6,14を分解して、接ガス部にニッケルメッキを施して、クロムとフッ素が触れないようにした。これにより、フッ素ガス供給系―反応系全体が完全クロムレスになった。サンプルには、MgF2,LaF3の単層膜をそれぞれ150nmの膜厚で蛍石基板上へ成膜したものを用いた。100℃のフッ素化反応工程では、濃度100%のフッ素ガスを導入した。即ち、ヘリウムによる希釈を行わなかった。続く300℃の加熱工程では、ヘリウムガスで希釈したフッ素濃度10ppmのフッ素ガスを導入した。反応炉内の全圧は、フッ素化反応工程及び加熱工程を通じて、0.1MPa、即ち大気圧とした。
【0043】
フッ素化熱処理前後の膜損失変化とフッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度を図2に示す。ここでいう光学損失は、F2レーザ波長(157nm)における透過率T(%)と反射率R(%)を測定し、100%から差し引いた値、即ち、100−(T+R)(%)とする。フッ素化熱処理前後の光学損失変化値とは、フッ素化熱処理後の光学損失から、フッ素化熱処理前の光学損失を差し引いた値であり、この値が負ならばフッ素化熱処理によって光学損失が低減できたことを意味し、逆に、この値が正ならばフッ素化熱処理によって光学損失がかえって増加したことを意味する。一方、クロム濃度は、極微量元素分析を得意とする時間飛行型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を駆使して算出した。
【0044】
MgF2,LaF3膜のいずれも膜損失変化値が負の値になり、フッ素化熱処理によって膜損失を大幅に低減することに成功した。また、MgF2膜表面から検出されたクロム濃度は、わずかに13ppmであった。なお、クロム濃度の検出と同様な方法でMgF2膜表面から検出されたチタン濃度は、20ppmであった。また、実施例1において、クロム濃度とチタン濃度について検出を行ったのは、クロム、チタン以外の金属の濃度は非常に低濃度であり問題とならないためである。
【0045】
次に、フッ素化熱処理を行う前のLaF3、ならびに、実施例1の実験装置にてフッ素化熱処理を施した後のLaF3膜について、膜の深さ方向のO原子濃度、OH濃度をSIMSで測定した結果を図3に示す。この測定においては、プラスイオンを加速して膜に照射することで、膜をスパッタしながら深さ方向の分析を行った。グラフ横軸のスパッタリング時間とは膜の深さ方向を意味しており、スパッタリング時間が長くなるほど、より膜の深いところの情報をあらわしている。グラフ左端のスパッタリング時間0sとは即ち膜表面のことで、グラフ右端は膜最深部で基板との界面である。フッ素化熱処理前後のO濃度、OH濃度に違いがないのは、唯一膜表面(スパッタリング時間0s)だけである。フッ素化熱処理を施すと、膜内部全域において、O濃度は10分の1に低下しており、OH濃度にいたっては100分の1にまで低下できている。膜を完全にフッ素化して、真空紫外領域で吸収を引き起こす酸素、水酸基濃度を図3のように顕著に減少できているからこそ、図2に示したような大幅な膜損失低減が達成できた。
【0046】
なお、本実施例1では、バルブ4,5,6,14の材質を、単なるステンレス鋼から、内側の接ガス部をニッケルでメッキしたステンレス鋼に変更することで大きな成果が得られたが、ステンレス鋼にニッケルメッキを施したバルブの代わりに、モネル合金、ニッケル、ニッケル系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、銅、銅系合金で特別生産したバルブを用いても同等の成果が得られる。
【0047】
【比較例】
比較例(従来例)1として、フッ素ガス供給系にステンレス鋼配管とステンレス鋼バルブを用いて、フッ素化熱処理を行った。また、比較例(従来例)2として、フッ素ガス供給系のガス配管の材質をステンレス鋼からモネル合金に変更し、バルブのみステンレス鋼のままとして(この場合には、ステンレス鋼のクロム含有濃度は、18%である)、フッ素化熱処理を行った。比較例1、2ともに、サンプルには、MgF2, LaF3の単層膜をそれぞれ150nmの膜厚で蛍石基板上へ成膜したものを用いた。100℃のフッ素化反応工程では、濃度100%のフッ素ガスを導入した。即ち、ヘリウムによる希釈を行わなかった。続く300℃の加熱工程では、ヘリウムガスで希釈したフッ素濃度10ppmのフッ素ガスを導入した。反応炉内の全圧は、フッ素化反応工程及び加熱工程を通じて、0.1MPa即ち大気圧とした。
【0048】
図2に、フッ素化熱処理前後のMgF2,LaF3膜の光学損失変化値と、フッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度を表す。
結果は、図2から明らかなように、比較例1、比較例2ともに、MgF2,LaF3膜の両サンプルについて、フッ素化熱処理を行うことで光学損失が減少するどころか、かえって増加した。ただし、ガス配管をモネル合金に変更し、バルブのみステンレス鋼のままとした比較例2の方が、光学損失の増加量は小さかった。一方、フッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度は、比較例1では30,000ppm、比較例2では3,000ppmだった。比較例1、比較例2のいずれのMgF2膜とも、クロムは表面にのみ析出しており、膜内部にはほとんど存在していないことも膜の深さ方向TOF―SIMS分析で明らかになった。要するに、フッ素化熱処理中に、クロムが発生し膜表面に析出して、光学損失を増加させてしまったと結論付けられる。なお、クロム濃度の検出と同様の方法によりフッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたチタン濃度は、比較例1では80ppm、比較例2では75ppmだった。
【0049】
【考察】
比較例1及び比較例2がなぜ上述のような結果になったのかについて、以下のように詳細に解明した。
【0050】
まず、比較例1及び比較例2のMgF2膜表面から検出されたクロムの結合状態を、X線光電子分光分析で突き止めた。膜表面のクロムは、酸化クロムCr2O3として存在していた。真空紫外光を吸収して透過しない酸化クロムCr2O3が膜表面に析出したために、フッ素化熱処理後に膜損失が増加したことが判明した。なお、この酸化クロムCr2O3は、フッ化物膜表面と強固に化学結合しているので、洗浄によりフッ化物膜はそのまま残して酸化クロムだけを除去することはできなかった。従って、研磨により酸化クロムとフッ化物膜とを同時に除去するしか仕方がなかった。
【0051】
そして、フッ素雰囲気で熱処理を行っているのに、なぜ、酸化クロムCr2O3が膜表面に析出してしまうのかという理由をわれわれは明らかにした。
【0052】
F2ガスがステンレス鋼と触れると、ステンレス鋼を構成する元素のうちの一つであるクロムと次に示す化学反応を起こして、フッ化クロムCrF5が生成する。
2Cr + 5F2 → 2CrF5 ↑ (1)
このフッ化クロムCrF5は気体であるためにガス流にのって反応炉3内へ輸送されて、反応炉3内壁や光学素子固定治具8、フッ化物薄膜表面9に吸着する。さらに、フッ素化熱処理を終えヘリウムガス置換を経て、反応炉3が開放されたときに、吸着しているフッ化クロムCrF5ガスは、大気中の酸素ガスや水蒸気と次に示す化学反応を起こして固体の酸化クロムCr2O3となり、膜上に析出してしまう。
2CrF5 + 3H2O → Cr2O3 ↓ + 6HF ↑ + 2F2 ↑ (2)
4CrF5 + 3O2 → 2Cr2O3 ↓ + 10F2 ↑ (3)
以上、比較例の結果がよくなかった原因を踏まえて、われわれは、フッ素ガス発生源からガス配管を経由して反応炉に至るまでのフッ素ガス供給系―反応系全体にわたって、接ガス表面及び近傍からクロムをできる限り取り除くことが重要であることを明らかにした。
【0053】
【実施例2】
実施例1にて達成された完全クロムレス実験設備を利用して、F2リソグラフィ用反射防止膜をフッ素化熱処理した。MgF2、LaF3の交互積層からなる反射防止膜を平行平板(厚み3mm)の蛍石基板の両面に成膜した光学素子について、分光透過率測定結果を図4に示す。本発明のフッ素化熱処理を行うことで、185nm以下の真空紫外領域の透過率が如実に向上していることが容易にわかる。波長が短くなるほどフッ素化熱処理有無の差が顕著になった。157nmでの透過率差は4%にもなった。一枚の光学素子でも4%の透過率差が生じるということは、数十枚に及ぶ光学素子で構成される半導体露光装置の全光学素子に対して、本発明のフッ素化熱処理を施せば、回路パターンが転写露光されるウエハ上へ到達する光強度は数十%増になり、露光性能・スループットを著しく向上できる。
【0054】
更に図4と同等の光学素子を5枚並べてF2レーザ照射しながら透過率を測定しつづけた結果を図5に示す。フッ素化熱処理を施していない光学素子では、レーザショット数とともに透過率は減少していくが、フッ素化熱処理を施した光学素子ではレーザ照射による透過率低下が一切認められない。即ち、本発明のフッ素化熱処理を施すことで、真空紫外レーザ光に対する耐性が大幅に強化できたことをこのデータは示している。真空紫外領域での光吸収要因となるO、OH濃度を大幅に低減できているからこそ、レーザ耐性が顕著に向上したのである。ゆえに、本発明のフッ素化熱処理技術を利用すれば、露光性能・スループットを著しく向上できるばかりか、光学素子寿命を伸ばし、素子交換のためのメンテナンス回数を大幅に減らすことも可能になる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物のフッ素欠損を補うと共に不純物を減少させて、被処理物を化学量論組成のフッ化物に変化させることができる。また、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物の結晶性を向上させ構造欠陥を減少させることができる。従って、光学吸収端波長は短波長側へシフトして理想結晶のそれに近づき、欠陥や不純物に起因する吸収も減少するので、真空紫外領域での透過率が増加し、レーザ耐性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる実験装置の構成を説明するための図である。
【図2】各実験条件でフッ素化熱処理を行った際の、フッ素化熱処理前後の膜損失変化とフッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度を示すグラフである。
【図3】フッ素化熱処理を施す前後のLaF3膜について、膜の深さ方向のO原子濃度、OH濃度をSIMSで測定した結果を示すグラフである。
【図4】MgF2、LaF3の交互積層からなる反射防止膜を平行平板(厚み3mm)の蛍石基板の両面に成膜した光学素子についての分光透過率測定結果を示すグラフである。
【図5】図4と同等の光学素子を5枚並べてF2レーザ照射しながら透過率を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 フッ素ガス貯蔵供給容器
2 ガス配管
3 反応炉
4,5,6 バルブ
7 ヘリウムガスボンベ
8 光学素子固定治具
9 フッ化物光学薄膜
10 フッ化物光学素子
11 温度計測用熱電対
12 外部ヒータ
13 排気管
14 バルブ
15 圧力計
16 流量制御及び圧力制御装置
17 フッ素除去装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、不純物汚染を無くしたフッ素雰囲気を形成して被処理物の処理を行うフッ素化熱処理装置、被処理物の処理方法及びこの処理方法により処理された処理物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フッ化物材料は、窒化物や酸化物とは異なり、波長180nm以下の真空紫外領域においても透明であるため、真空紫外領域用のレンズやプリズムなどの光学素子、それら光学素子表面にコートされた反射防止膜、偏向膜又は反射膜などの光学薄膜として不可欠である。
【0003】
近年の半導体集積回路の高集積化、高密度化に伴い、精細な回路パターンをフォトリソグラフィで製造するためには、真空紫外光を露光光源とした半導体回路製造用縮小投影露光装置の開発が必須となってきている。真空紫外光用縮小投影露光装置には、フッ化物の各種光学素子並びに光学薄膜が用いられる。
【0004】
縮小投影露光装置では、レーザ光源から半導体回路が露光されるウエハまでの間に、数十枚にもおよぶ様々な形状・用途のフッ化物光学素子が配置されており、これら光学素子表面にはそれぞれ目的に応じたフッ化物薄膜がコートされている。光学素子材料及びフッ化物薄膜には、多少の光吸収があるので、最終的にウエハ面上へ到達する光量はかなり小さくなる。露光性能、生産性向上のためには、この光量減少をできる限り小さくしなければならない。即ち、各光学素子及び薄膜の光吸収を小さくすればするほど、露光装置の性能が向上する。
【0005】
光学素子材料そのものは長年にわたり鋭意研究開発されてきた結果、光吸収の原因となる欠陥や不純物の含有量は極力抑えられ、また、研磨技術の発達により素子表面での散乱も極力低下している。
一方、光学薄膜は、これまでに抵抗加熱ないしは電子ビーム溶解による真空蒸着、イオンアシストを併用する真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、イオンビームスパッタリングなどの各種PVD法により比較的低温で簡便に成膜されている。ここで基板となる光学素子を比較的低温の加熱にとどめて薄膜を形成しなければならない理由は、高温に加熱すると、光学素子に熱変形が生じ、光学素子表面の加工寸法精度にくるいが生じて所望の結像性能が得られないためである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように比較的低温な加熱にとどめられた光学素子上に形成されたフッ化物光学薄膜は、高温下で時間をかけて生成されたバルク状フッ化物固体に比べて、著しく光吸収が大きくなっている。バルクに対して薄膜の真空紫外光吸収が格段に大きくなっている原因は、化学量論組成に比べてフッ素が欠損してダングリングボンドが生じていること、フッ素欠損した原子サイトに酸素原子あるいは水酸基が結合して光を吸収していること、バルクと比較して結晶性に乏しく構造欠陥を多く含んでいること、バルクに比べて比表面積が大きいために水分や有機物の吸着量が非常に多くこれら吸着物が光を吸収することが挙げられる。
【0007】
光学薄膜は光学素子の両面にコートされていることから、コート面数は光学素子数の2倍になる。従って、フッ素欠損、構造不整、酸化・水酸化、水分・有機物吸着を伴い光吸収の大きな光学薄膜が上記真空紫外用露光装置に搭載された場合には、これら光学薄膜を数十コートにわたって通り抜けてウエハ面に到達した光量は、もとの光源光量の数%程度と極端に低くなる。従って、露光時間が長くなり、生産性が極端に悪くなる。即ち、露光性能は光学薄膜により決定される。また、フッ素欠損のあるフッ化物薄膜、あるいは、フッ素欠損と酸素含有のあるフッ化物薄膜は、構造欠陥や不純物含有のためにレーザ耐久性が高くないため、光学素子部品交換の頻度が多くなり、露光装置の生産性を更に悪化させる。
【0008】
本発明の課題は、フッ化物薄膜等の被処理物のフッ素欠損を著しく減少させて真空紫外域の透過率を向上させるフッ素化熱処理装置、フッ化物薄膜等の被処理物の処理方法、及びこの処理方法により処理された処理物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者は、鋭意研究の結果、フッ素ガスは全元素中で最も反応性が高いために、フッ素ガス供給ラインや処理装置内の各種物質とフッ素ガスとの間で化学反応が発生していること、及び化学反応の結果生成された物質の中には、処理装置内に格納している光学素子そのものを汚染してしまう物質が存在するため、フッ素化熱処理による透過率向上の効果を最大限に引き出せていないことを明らかにした。そして、以下のフッ素化熱処理装置、被処理物の処理方法及びこの処理方法により処理された被処理物の発明を完成させた。
【0010】
請求項1記載のフッ素化熱処理装置は、フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管とを備えるフッ素化熱処理装置であって、少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、クロムの含有濃度が1%以下である材料により構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載のフッ素化熱処理装置は、フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管とを備えるフッ素化熱処理装置であって、少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載のフッ素化熱処理装置は、前記材料が、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0013】
本請求項1〜請求項3記載のフッ素化熱処理装置によれば、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物のフッ素欠損を補うと共に不純物を減少させて、被処理物を化学量論組成のフッ化物に変化させることができる。また、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物の結晶性を向上させ構造欠陥を減少させることができる。更に、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物のレーザ耐性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項4記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記フッ素化熱処理装置の前記反応炉内を所定の全圧及びフッ素分圧に制御する圧力制御工程と、前記反応炉内を所定の温度に制御する温度制御工程とを含むことを特徴とする。
また、請求項5記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物を所定の温度に加熱する加熱工程とを含むことを特徴とする。
また、請求項6記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記反応炉内の水分を脱気する水分脱気処理工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記被処理物を取り出す取出工程とを含む被処理物の処理方法において、前記水分脱気処理工程における処理温度は、100〜170℃であり、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度は10〜150℃、フッ素濃度は1000ppm〜100%であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項7記載の被処理物の処理方法は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、前記反応炉内の水分を脱気する水分脱気処理工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、前記反応炉内に格納された前記被処理物を所定の温度に加熱する加熱処理工程と、前記反応炉に格納された前記被処理物の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記被処理物を取り出す取出工程とを含む被処理物の処理方法において、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度は10〜150℃、フッ素濃度は1000ppm〜100%であり、前記加熱処理工程における前記反応炉内の温度は、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度よりも高く、前記加熱処理工程における前記反応炉内のフッ素濃度は、前記フッ素化反応工程におけるフッ素濃度よりも低いことを特徴とする。
【0016】
また、請求項8記載の被処理物の処理方法は、前記被処理物が、フッ化物薄膜、フッ化物粉体、フッ化物固体及びフッ化物光学素子の何れか一つであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項9記載の被処理物の処理方法は、前記フッ化物薄膜、前記フッ化物粉体、前記フッ化物固体及び前記フッ化物光学素子は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ランタン、フッ化アルミニウム、フッ化ネオジム、フッ化ガドリニウム、フッ化イットリウム、フッ化ディスプロシウム、フッ化バリウム、フッ化ナトリウム、フッ化ビスマス、フッ化ストロンチウム、フッ化鉛、フッ化セレン、クライオライト及びチオライトの群から選ばれた少なくとも一つから構成されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項10記載の被処理物の処理方法は、前記フッ素が、純フッ素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの希ガスのうち少なくとも一種以上で希釈したフッ素ガス、予めフッ素化させた前記反応炉内面から処理中に放出するフッ素原子、予めフッ素化させた金属あるいはフッ素過剰合金あるいはフッ素過剰フッ化物を前記反応炉内に設置して処理中に放出するフッ素原子、金属フッ化物の電気分解によって発生させたフッ素ガス、XeF2, XeF4, XeF6のフッ素―希ガス化合物を昇華・蒸発させたもの及びこれらフッ素―希ガス化合物の分解によって発生したフッ素ガス、及び炭素−フッ素化合物、イオウ−フッ素化合物、窒素−フッ素化合物のうちの少なくとも1種類以上を乖離させて発生するフッ素ラジカル及びフッ素イオン等の活性フッ素の中の少なくとも一つを使用することを特徴とする。
【0019】
本請求項4〜請求項10記載の被処理物の処理方法によれば、被処理物のフッ素欠損を補うと共に不純物を減少させて、被処理物を化学量論組成のフッ化物に変化させることができる。また、被処理物の結晶性を向上させ構造欠陥を減少させることができる。更に、被処理物のレーザ耐性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項11記載の処理物は、請求項4〜請求項10の何れか一項に記載の被処理物の処理方法により処理されたことを特徴とする。本請求項11記載の処理物、即ち、フッ化物薄膜、フッ化物粉体、フッ化物固体及びフッ化物光学素子は、フッ素欠損が補われ不純物が減少されて、化学量論組成のフッ化物に変化している。また、結晶性を向上させ、構造欠陥を減少させ、レーザ耐性を向上させたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態にかかるフッ素化熱処理装置について説明する。なお、本実施の形態においては、被処理物としてフッ化物薄膜が形成されたフッ化物光学素子を用い、フッ化物光学素子に対してフッ素化熱処理を行う場合について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態にかかるフッ素化熱処理装置の構成図である。図中符号1で示すものは、ニッケル−銅合金のモネル合金で製造されたフッ素ガス貯蔵供給容器である。このフッ素ガス貯蔵供給容器1には、モネル合金により製造されたガス配管(フッ素ガス配管)2の一端が接続されている。また、ガス配管2の他端には反応炉3が接続されている。
【0023】
ガス配管2には、接ガス部(実際にフッ素ガスが接する部位)がニッケルメッキされたバルブ4,5,6が設けられており、バルブ5を介してフッ素ガスを希釈するためのヘリウムガスを供給するヘリウムガスボンベ7が接続されている。このバルブ4,5,6の開閉を制御することにより、反応炉3に対して、フッ素ガス貯蔵供給容器1からガス配管2を介してフッ素ガス、ヘリウムガス、及びフッ素/ヘリウム混合ガスが供給される。
【0024】
反応炉3は、純度99%以上のニッケルで製造されており、その内部には、純度99%以上のニッケルで製造された光学素子固定治具8が設けられている。光学素子固定治具8には、フッ素欠損のあるフッ化物光学薄膜9がコートされたフッ化物光学素子10が固定されている。また、この反応炉3の上部には、温度計測用熱電対11が設けられている。またフッ素ガス貯蔵供給容器1及び反応炉3の外周部には、PID制御可能な外部ヒータ12が設けられている。
【0025】
反応炉3には、排気管13の一端が接続されており、この排気管13には、バルブ14、排気系を構成する圧力計15、流量制御及び圧力制御装置16及びフッ素除去装置17が接続されている。ここで排気管13のうち反応炉3からバルブ14まではモネル合金により形成されており、バルブ14の接ガス部には、ニッケルメッキが施されている。
【0026】
このフッ素化熱処理装置においては、フッ素ガス貯蔵供給容器1がニッケル−銅合金のモネル合金で製造されており、ガス配管2及び排気管13のうち反応炉3からバルブ14までの部分がモネル合金により製造されており、バルブ4,5,6,14の接ガス部には、ニッケルメッキが施されており、反応炉3及び光学素子固定治具8が純度99%以上のニッケルで製造されている。即ち、フッ素ガス貯蔵供給容器1からバルブ14に至る領域のうちフッ素ガスに触れる部分の全てが、クロム、チタンの含有濃度が1%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である材料により構成されている。
【0027】
なお、この実施の形態のフッ素化熱処理装置においては、フッ素ガス貯蔵供給容器1、ガス配管2、反応炉3及び光学素子固定治具8は、クロム、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されているが、フッ素ガス貯蔵供給容器1、ガス配管2、反応炉3及び光学素子固定治具8を構成する材料の少なくとも実際にフッ素ガスが接する部位について、クロム、チタンの含有濃度が1%以下であればよい。
【0028】
また、フッ化物光学素子に形成されているフッ化物薄膜は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ランタン、フッ化アルミニウム、フッ化ネオジム、フッ化ガドリニウム、フッ化イットリウム、フッ化ディスプロシウム、フッ化バリウム、フッ化ナトリウム、フッ化ビスマス、フッ化ストロンチウム、フッ化鉛、フッ化セレン、クライオライト及びチオライトの群から選ばれた少なくとも一つから構成される。
【0029】
また、フッ素ガス貯蔵供給容器1から供給されるフッ素としては、純フッ素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの希ガスのうち少なくとも一種以上で希釈したフッ素ガス、予めフッ素化させた前記反応炉内面から処理中に放出するフッ素原子、予めフッ素化させた金属あるいはフッ素過剰合金あるいはフッ素過剰フッ化物を前記反応炉内に設置して処理中に放出するフッ素原子、金属フッ化物の電気分解によって発生させたフッ素ガス、XeF2, XeF4, XeF6のフッ素―希ガス化合物を昇華・蒸発させたもの及びこれらフッ素―希ガス化合物の分解によって発生したフッ素ガス、及び炭素−フッ素化合物、イオウ−フッ素化合物、窒素−フッ素化合物のうち少なくとも1種類を乖離させて発生するフッ素ラジカル及びフッ素イオン等の活性フッ素の中の少なくとも一つが使用されている。
【0030】
次に、このフッ素化熱処理装置を用いたフッ素欠損のあるフッ化物薄膜がコートされたフッ化物光学素子のフッ素化熱処理について説明する。まず、反応炉3内には、予めフッ素系ガスを導入し加熱して、反応炉3の内壁及び光学素子固定治具8をフッ素化させて、表面にフッ化ニッケルを析出させて不働態化しておく。
【0031】
フッ素化熱処理は、第1工程としての被処理物の格納処理、第2工程としての反応炉内の水分脱気処理、第3工程としてのフッ素化反応処理、第4工程としての加熱処理、第5工程としての冷却処理、第6工程としての被処理物の取り出し処理により行われる。
【0032】
第1工程(被処理物の格納処理)においては、フッ化物光学薄膜9が予め成膜されているフッ化物光学素子10を用意する。用意したフッ化物光学素子10を洗浄した後、反応炉3内の光学素子固定治具8に固定する。
【0033】
第2工程(反応炉内の水分脱気処理)においては、反応炉3内を排気系により10−5Paまで排気した後、反応炉3内にガス配管2を通じてヘリウムガスを流しながら、外部ヒータ12を用いて反応炉3内を150℃まで加熱しながら12時間保持して、水分を脱気する。温度計測には温度計測用熱電対11を用いる。なお、この水分脱気工程における反応炉3内の温度は、100〜170℃であってもよい。
【0034】
第3工程(フッ素化反応処理)においては、反応炉3内の温度を100℃とし、フッ素ガス貯蔵供給容器1から供給されるフッ素ガスを、ヘリウムガスにより所望の濃度(1000ppm〜100%)に希釈し、ガス配管2及びバルブ6を介して反応炉3内に導入してフッ素化反応を進行させる。反応炉3よりも下流側に設置された流量制御及び圧力制御装置16を用いて、圧力計15の指示値が所望の値(所定の全圧及びフッ素分圧)となるように調節して、計時を開始する。この際に排気系を開放してガスを流しつづける開放系反応炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系反応炉としてもよい。フッ素化反応中は、反応炉3内の温度が100℃で一定となるようにする。この状態で所定時間経過させる。なお、このフッ素化反応処理における反応炉3内の温度は、10〜150℃であってもよい。
【0035】
第4工程(加熱処理)においては、一旦、反応炉3内のフッ素ガスを排気し、ヘリウムガスにて置換する。そして、再び、フッ素ガス貯蔵供給容器1から供給されるフッ素ガスを、ヘリウムガスにより所望の濃度に希釈し、ガス配管2及びバルブ6を通じて反応炉3内に導入する。この際、反応炉3へ導入される希釈フッ素ガスの濃度は、第3工程(フッ素化反応処理)における希釈フッ素濃度よりも低くする。反応炉3内の温度を300℃まで、即ちフッ素化反応処理における反応炉3内の温度よりも高い温度まで上昇させる。300℃に到達後に、反応炉3よりも下流側に設置された流量制御及び圧力制御装置16を用いて、圧力計15の指示値が所望の値となるように調節して、加熱処理の計時を開始する。この際に排気系を開放してガスを流しつづける開放系反応炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系反応炉としてもよい。加熱処理中は、反応炉3内の温度が300℃で一定となるようにする。この状態で所定時間経過させる。
【0036】
第5工程(冷却処理)においては、反応炉3内の加熱を止めて、第4工程(加熱処理)と同一のフッ素希釈濃度のまま、反応炉3の冷却を開始する。反応炉3内の温度が150℃まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、反応炉3内を排気し、ヘリウムガスで置換する。反応炉3内の温度が室温まで下がった時点で冷却を終える。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系反応炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系反応炉としてもよい。
【0037】
第6工程(被処理物の取り出し処理)においては、ヘリウムガス置換を止めて反応炉3を開放して、フッ素化熱処理を施した被処理物を取り出す。
【0038】
第3工程(フッ素化反応)において、被処理物中の酸素、水酸基、その他の不純物が取り除かれてフッ素化され、また、被処理物中のフッ素欠損領域が完全にフッ素化されて化学量論組成のフッ化物となる。
【0039】
続く第4工程(加熱処理)において、フッ素―非フッ素元素間の化学結合が安定化される。特に薄膜や多孔物質である場合には、加熱によりその物質全体の構造が緻密化して、大気露出面積が減少し、処理後に大気暴露した際の水分などとの反応による劣化を著しく低減できる。
【0040】
フッ素化反応工程時間及び加熱処理工程時間は、選択したフッ素ガス分圧及び処理温度において、用意した薄膜や粉末の厚み分をフッ素拡散させるのに十分な時間であればよく、これまでの実験からそれぞれの工程とも1時間程度でよいことが判明している。第1工程〜第6工程を経た被処理物、即ち、処理物は、フッ素欠損が補われ不純物が減少されて、化学量論組成のフッ化物に変化している。また、結晶性を向上させ、構造欠陥を減少させ、レーザ耐性を向上させたものである。
【0041】
なお、この実施の形態においては、被処理物としてフッ化物薄膜が形成されたフッ化物光学素子を用い、フッ化物光学素子に対してフッ素化熱処理を行う場合について説明しているが、被処理物としてフッ化物薄膜、フッ化物粉体又はフッ化物固体等を用い、フッ化物薄膜、フッ化物粉体又はフッ化物固体等に対してフッ素化熱処理を行うようにしてもよい。
【0042】
【実施例1】
本発明の実施例1においては、ガス配管2及び排気管13のうち反応炉3からバルブ14までの区間の材質をニッケル―銅合金のモネル合金とした。ステンレス鋼製のバルブ4,5,6,14を分解して、接ガス部にニッケルメッキを施して、クロムとフッ素が触れないようにした。これにより、フッ素ガス供給系―反応系全体が完全クロムレスになった。サンプルには、MgF2,LaF3の単層膜をそれぞれ150nmの膜厚で蛍石基板上へ成膜したものを用いた。100℃のフッ素化反応工程では、濃度100%のフッ素ガスを導入した。即ち、ヘリウムによる希釈を行わなかった。続く300℃の加熱工程では、ヘリウムガスで希釈したフッ素濃度10ppmのフッ素ガスを導入した。反応炉内の全圧は、フッ素化反応工程及び加熱工程を通じて、0.1MPa、即ち大気圧とした。
【0043】
フッ素化熱処理前後の膜損失変化とフッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度を図2に示す。ここでいう光学損失は、F2レーザ波長(157nm)における透過率T(%)と反射率R(%)を測定し、100%から差し引いた値、即ち、100−(T+R)(%)とする。フッ素化熱処理前後の光学損失変化値とは、フッ素化熱処理後の光学損失から、フッ素化熱処理前の光学損失を差し引いた値であり、この値が負ならばフッ素化熱処理によって光学損失が低減できたことを意味し、逆に、この値が正ならばフッ素化熱処理によって光学損失がかえって増加したことを意味する。一方、クロム濃度は、極微量元素分析を得意とする時間飛行型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を駆使して算出した。
【0044】
MgF2,LaF3膜のいずれも膜損失変化値が負の値になり、フッ素化熱処理によって膜損失を大幅に低減することに成功した。また、MgF2膜表面から検出されたクロム濃度は、わずかに13ppmであった。なお、クロム濃度の検出と同様な方法でMgF2膜表面から検出されたチタン濃度は、20ppmであった。また、実施例1において、クロム濃度とチタン濃度について検出を行ったのは、クロム、チタン以外の金属の濃度は非常に低濃度であり問題とならないためである。
【0045】
次に、フッ素化熱処理を行う前のLaF3、ならびに、実施例1の実験装置にてフッ素化熱処理を施した後のLaF3膜について、膜の深さ方向のO原子濃度、OH濃度をSIMSで測定した結果を図3に示す。この測定においては、プラスイオンを加速して膜に照射することで、膜をスパッタしながら深さ方向の分析を行った。グラフ横軸のスパッタリング時間とは膜の深さ方向を意味しており、スパッタリング時間が長くなるほど、より膜の深いところの情報をあらわしている。グラフ左端のスパッタリング時間0sとは即ち膜表面のことで、グラフ右端は膜最深部で基板との界面である。フッ素化熱処理前後のO濃度、OH濃度に違いがないのは、唯一膜表面(スパッタリング時間0s)だけである。フッ素化熱処理を施すと、膜内部全域において、O濃度は10分の1に低下しており、OH濃度にいたっては100分の1にまで低下できている。膜を完全にフッ素化して、真空紫外領域で吸収を引き起こす酸素、水酸基濃度を図3のように顕著に減少できているからこそ、図2に示したような大幅な膜損失低減が達成できた。
【0046】
なお、本実施例1では、バルブ4,5,6,14の材質を、単なるステンレス鋼から、内側の接ガス部をニッケルでメッキしたステンレス鋼に変更することで大きな成果が得られたが、ステンレス鋼にニッケルメッキを施したバルブの代わりに、モネル合金、ニッケル、ニッケル系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、銅、銅系合金で特別生産したバルブを用いても同等の成果が得られる。
【0047】
【比較例】
比較例(従来例)1として、フッ素ガス供給系にステンレス鋼配管とステンレス鋼バルブを用いて、フッ素化熱処理を行った。また、比較例(従来例)2として、フッ素ガス供給系のガス配管の材質をステンレス鋼からモネル合金に変更し、バルブのみステンレス鋼のままとして(この場合には、ステンレス鋼のクロム含有濃度は、18%である)、フッ素化熱処理を行った。比較例1、2ともに、サンプルには、MgF2, LaF3の単層膜をそれぞれ150nmの膜厚で蛍石基板上へ成膜したものを用いた。100℃のフッ素化反応工程では、濃度100%のフッ素ガスを導入した。即ち、ヘリウムによる希釈を行わなかった。続く300℃の加熱工程では、ヘリウムガスで希釈したフッ素濃度10ppmのフッ素ガスを導入した。反応炉内の全圧は、フッ素化反応工程及び加熱工程を通じて、0.1MPa即ち大気圧とした。
【0048】
図2に、フッ素化熱処理前後のMgF2,LaF3膜の光学損失変化値と、フッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度を表す。
結果は、図2から明らかなように、比較例1、比較例2ともに、MgF2,LaF3膜の両サンプルについて、フッ素化熱処理を行うことで光学損失が減少するどころか、かえって増加した。ただし、ガス配管をモネル合金に変更し、バルブのみステンレス鋼のままとした比較例2の方が、光学損失の増加量は小さかった。一方、フッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度は、比較例1では30,000ppm、比較例2では3,000ppmだった。比較例1、比較例2のいずれのMgF2膜とも、クロムは表面にのみ析出しており、膜内部にはほとんど存在していないことも膜の深さ方向TOF―SIMS分析で明らかになった。要するに、フッ素化熱処理中に、クロムが発生し膜表面に析出して、光学損失を増加させてしまったと結論付けられる。なお、クロム濃度の検出と同様の方法によりフッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたチタン濃度は、比較例1では80ppm、比較例2では75ppmだった。
【0049】
【考察】
比較例1及び比較例2がなぜ上述のような結果になったのかについて、以下のように詳細に解明した。
【0050】
まず、比較例1及び比較例2のMgF2膜表面から検出されたクロムの結合状態を、X線光電子分光分析で突き止めた。膜表面のクロムは、酸化クロムCr2O3として存在していた。真空紫外光を吸収して透過しない酸化クロムCr2O3が膜表面に析出したために、フッ素化熱処理後に膜損失が増加したことが判明した。なお、この酸化クロムCr2O3は、フッ化物膜表面と強固に化学結合しているので、洗浄によりフッ化物膜はそのまま残して酸化クロムだけを除去することはできなかった。従って、研磨により酸化クロムとフッ化物膜とを同時に除去するしか仕方がなかった。
【0051】
そして、フッ素雰囲気で熱処理を行っているのに、なぜ、酸化クロムCr2O3が膜表面に析出してしまうのかという理由をわれわれは明らかにした。
【0052】
F2ガスがステンレス鋼と触れると、ステンレス鋼を構成する元素のうちの一つであるクロムと次に示す化学反応を起こして、フッ化クロムCrF5が生成する。
2Cr + 5F2 → 2CrF5 ↑ (1)
このフッ化クロムCrF5は気体であるためにガス流にのって反応炉3内へ輸送されて、反応炉3内壁や光学素子固定治具8、フッ化物薄膜表面9に吸着する。さらに、フッ素化熱処理を終えヘリウムガス置換を経て、反応炉3が開放されたときに、吸着しているフッ化クロムCrF5ガスは、大気中の酸素ガスや水蒸気と次に示す化学反応を起こして固体の酸化クロムCr2O3となり、膜上に析出してしまう。
2CrF5 + 3H2O → Cr2O3 ↓ + 6HF ↑ + 2F2 ↑ (2)
4CrF5 + 3O2 → 2Cr2O3 ↓ + 10F2 ↑ (3)
以上、比較例の結果がよくなかった原因を踏まえて、われわれは、フッ素ガス発生源からガス配管を経由して反応炉に至るまでのフッ素ガス供給系―反応系全体にわたって、接ガス表面及び近傍からクロムをできる限り取り除くことが重要であることを明らかにした。
【0053】
【実施例2】
実施例1にて達成された完全クロムレス実験設備を利用して、F2リソグラフィ用反射防止膜をフッ素化熱処理した。MgF2、LaF3の交互積層からなる反射防止膜を平行平板(厚み3mm)の蛍石基板の両面に成膜した光学素子について、分光透過率測定結果を図4に示す。本発明のフッ素化熱処理を行うことで、185nm以下の真空紫外領域の透過率が如実に向上していることが容易にわかる。波長が短くなるほどフッ素化熱処理有無の差が顕著になった。157nmでの透過率差は4%にもなった。一枚の光学素子でも4%の透過率差が生じるということは、数十枚に及ぶ光学素子で構成される半導体露光装置の全光学素子に対して、本発明のフッ素化熱処理を施せば、回路パターンが転写露光されるウエハ上へ到達する光強度は数十%増になり、露光性能・スループットを著しく向上できる。
【0054】
更に図4と同等の光学素子を5枚並べてF2レーザ照射しながら透過率を測定しつづけた結果を図5に示す。フッ素化熱処理を施していない光学素子では、レーザショット数とともに透過率は減少していくが、フッ素化熱処理を施した光学素子ではレーザ照射による透過率低下が一切認められない。即ち、本発明のフッ素化熱処理を施すことで、真空紫外レーザ光に対する耐性が大幅に強化できたことをこのデータは示している。真空紫外領域での光吸収要因となるO、OH濃度を大幅に低減できているからこそ、レーザ耐性が顕著に向上したのである。ゆえに、本発明のフッ素化熱処理技術を利用すれば、露光性能・スループットを著しく向上できるばかりか、光学素子寿命を伸ばし、素子交換のためのメンテナンス回数を大幅に減らすことも可能になる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物のフッ素欠損を補うと共に不純物を減少させて、被処理物を化学量論組成のフッ化物に変化させることができる。また、フッ素化熱処理を行うことにより、被処理物の結晶性を向上させ構造欠陥を減少させることができる。従って、光学吸収端波長は短波長側へシフトして理想結晶のそれに近づき、欠陥や不純物に起因する吸収も減少するので、真空紫外領域での透過率が増加し、レーザ耐性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる実験装置の構成を説明するための図である。
【図2】各実験条件でフッ素化熱処理を行った際の、フッ素化熱処理前後の膜損失変化とフッ素化熱処理後のMgF2膜表面から検出されたクロム濃度を示すグラフである。
【図3】フッ素化熱処理を施す前後のLaF3膜について、膜の深さ方向のO原子濃度、OH濃度をSIMSで測定した結果を示すグラフである。
【図4】MgF2、LaF3の交互積層からなる反射防止膜を平行平板(厚み3mm)の蛍石基板の両面に成膜した光学素子についての分光透過率測定結果を示すグラフである。
【図5】図4と同等の光学素子を5枚並べてF2レーザ照射しながら透過率を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 フッ素ガス貯蔵供給容器
2 ガス配管
3 反応炉
4,5,6 バルブ
7 ヘリウムガスボンベ
8 光学素子固定治具
9 フッ化物光学薄膜
10 フッ化物光学素子
11 温度計測用熱電対
12 外部ヒータ
13 排気管
14 バルブ
15 圧力計
16 流量制御及び圧力制御装置
17 フッ素除去装置
Claims (11)
- フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管とを備えるフッ素化熱処理装置であって、
少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、クロムの含有濃度が1%以下である材料により構成されていることを特徴とするフッ素化熱処理装置。 - フッ素ガスを貯蔵すると共にフッ素ガスを供給するフッ素ガス貯蔵供給容器と、被処理物のフッ素化熱処理を行う反応炉と、前記フッ素ガス貯蔵供給容器から前記反応炉までのフッ素ガス配管とを備えるフッ素化熱処理装置であって、
少なくともフッ素ガスが接する部位の材料が、チタンの含有濃度が1%以下である材料により構成されていることを特徴とするフッ素化熱処理装置。 - 前記材料は、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素化熱処理装置。
- 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、
前記フッ素化熱処理装置の前記反応炉内を所定の全圧及びフッ素分圧に制御する圧力制御工程と、
前記反応炉内を所定の温度に制御する温度制御工程と
を含むことを特徴とする被処理物の処理方法。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、
前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、
前記反応炉に格納された前記被処理物を所定の温度に加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする被処理物の処理方法。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、
前記反応炉内の水分を脱気する水分脱気処理工程と、
前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と、
前記反応炉に格納された前記被処理物の冷却を行う冷却工程と、
前記反応炉から前記被処理物を取り出す取出工程と
を含む被処理物の処理方法において、
前記水分脱気処理工程における処理温度は、100〜170℃であり、
前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度は10〜150℃、フッ素濃度は1000ppm〜100%であることを特徴とする被処理物の処理方法。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のフッ素化熱処理装置の前記反応炉に前記被処理物を格納する格納工程と、
前記反応炉内の水分を脱気する水分脱気処理工程と、
前記反応炉に格納された前記被処理物に対してフッ素化反応を行うフッ素化反応工程と
前記反応炉内に格納された前記被処理物を所定の温度に加熱する加熱処理工程と、
前記反応炉に格納された前記被処理物の冷却を行う冷却工程と、
前記反応炉から前記被処理物を取り出す取出工程と
を含む被処理物の処理方法において、
前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度は10〜150℃、フッ素濃度は1000ppm〜100%であり、
前記加熱処理工程における前記反応炉内の温度は、前記フッ素化反応工程における前記反応炉内の温度よりも高く、前記加熱処理工程における前記反応炉内のフッ素濃度は、前記フッ素化反応工程におけるフッ素濃度よりも低いことを特徴とする被処理物の処理方法。 - 前記被処理物は、フッ化物薄膜、フッ化物粉体、フッ化物固体及びフッ化物光学素子の何れか一つであることを特徴とする請求項4〜請求項7の何れか一項に記載の被処理物の処理方法。
- 前記フッ化物薄膜、前記フッ化物粉体、前記フッ化物固体及び前記フッ化物光学素子は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ランタン、フッ化アルミニウム、フッ化ネオジム、フッ化ガドリニウム、フッ化イットリウム、フッ化ディスプロシウム、フッ化バリウム、フッ化ナトリウム、フッ化ビスマス、フッ化ストロンチウム、フッ化鉛、フッ化セレン、クライオライト及びチオライトの群から選ばれた少なくとも一つから構成されることを特徴とする請求項8記載の被処理物の処理方法。
- 前記フッ素は、純フッ素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの希ガスのうち少なくとも一種以上で希釈したフッ素ガス、予めフッ素化させた前記反応炉内面から処理中に放出するフッ素原子、予めフッ素化させた金属あるいはフッ素過剰合金あるいはフッ素過剰フッ化物を前記反応炉内に設置して処理中に放出するフッ素原子、金属フッ化物の電気分解によって発生させたフッ素ガス、XeF2, XeF4, XeF6のフッ素―希ガス化合物を昇華・蒸発させたもの及びこれらフッ素―希ガス化合物の分解によって発生したフッ素ガス、炭素−フッ素化合物、イオウ−フッ素化合物、窒素−フッ素化合物のうちの少なくとも1種類以上を乖離させて発生するフッ素ラジカル及びフッ素イオンの活性フッ素の中の少なくとも一つを使用することを特徴とする請求項4〜請求項9の何れか一項に記載の被処理物の処理方法。
- 請求項4〜請求項10の何れか一項に記載の被処理物の処理方法により処理されたことを特徴とする処理物。
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