JP2004034277A - 微細加工装置及び該装置に用いるカンチレバーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一端を支持されるカンチレバー部12、該カンチレバー部12から突設された突出部13及び該突出部13にその突出方向に貫通形成された微小開口15とを有するカンチレバー3aを具備する装置であって、前記突出部13の内部から前記微小開口15を介して流体4を流出することを特徴とする微細加工装置1。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡に用いられるカンチレバー、特に、微小開口が貫通形成されているカンチレバーを使用して、前記微小開口から流体を流出させることを特徴とする微細加工装置、及び前記微小開口を具備したカンチレバーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、原子レベルでの試料表面状態の超高解像観察や光学的物性の測定を可能にするために、AFM(原子間力顕微鏡、Atomic Force Microscope )に代表される走査型プローブ顕微鏡の研究が盛んに行われている。
【0003】
この走査型プローブ顕微鏡の多くは、カンチレバーと呼ばれる深針を試料表面に極微接近させたり接触させることによって、試料の表面情報を正確に検出するものである。従って、深針となるカンチレバーの構造が観察精度や測定される光学的物性量と強い相関性を有している。
【0004】
カンチレバーとは、文字通りいわゆる片持ち梁を意味している。即ち、このカンチレバーは、片持ち支持されるカンチレバー部と、先端に突設された突出部とから構成され、突出部の先端を先鋭に形成して深針点とし、この深針点を試料表面に極微接近ないし接触させて試料の表面情報を検出するものである。
【0005】
AFMの操作では、前記カンチレバーの一端を片持ち支持して前記深針点を試料表面に極微接近させ、試料表面と平行に走査ピエゾ等により走査させることにより、試料表面と前記深針点との相互作用(原子間力)によって生じるカンチレバーの変位を、レーザー光を用いた光てこ方式等により検出され、AFM測定が行われる。
【0006】
また、このようなAFMの原理を応用したSNOM(走査型近接場光学顕微鏡、Scanning Nearfield Optical Microscope )の研究も盛んに行われている。これは、前記カンチレバーの先端に形成された微小開口の先端から滲み出すエバネッセント光を利用し、前記微小開口に接近させた試料表面のエバネッセント場の有する高周波情報を引き出すことにより、種々の光学的物性を評価可能にしたものである。
【0007】
さらに、このSNOMの原理を応用して、カンチレバーの微小開口から滲み出すエバネッセント光を記録媒体やレジスト等に照射し、従来の光の回折限界を超えた超高密度のストレージ装置や超微細加工装置の開発も始まっている。
【0008】
さて、このような走査型プローブ顕微鏡の研究において核となるのが、前記カンチレバー先端の微小開口の作製技術である。従来の代表的な微小開口作製技術として、光ファイバーやガラスキャピラリ等にCO2レーザ光を照射したり、放電電極間に配置したりすることにより、熱的に溶融させて中心軸方向に延伸させて切断し、先端を尖鋭化した後、中心軸周りに回転させながら、横方向から金属をコーティングすることにより先端に金属膜厚の薄い部分を形成し、これを微小開口とする方法がある。また、電子線露光装置やステッパー(投影縮小露光装置)等を用いた半導体製造プロセスを利用して、チップ化された光動波路光プローブの先端部を微小開口とする方法もある。
【0009】
いずれにしても、このようなカンチレバー3fは、図12、13に示すように、カンチレバー部13と該カンチレバー部13の先端に突設された突出部14から構成されている。
【0010】
前記突出部13の内部には空洞部14が形成され、前記突出部13は薄い壁体から構成されている。前記突出部の先端には微小開口15が貫通形成されている。従って、前記突出部13の先端は前記微小開口15の断面となっており、この断面を実効深針面として、断面方向と対向配置されている試料5の表面に極微接触させることによって、AFM測定が可能となり、一方、前記断面から滲み出るエバネッセント光を前記試料5の表面に照射することによって、SNOM測定や前記試料5の表面の超微細加工が可能となっている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような超微細加工では、いずれも光ビーム、X線ビーム、電子ビームまたはイオンビーム等の粒子ビームや波動ビームやレーザー等の電磁波を使用しており、前記電磁波によって試料表面を露光加工する方法が唯一である。
【0012】
また、通常、試料表面にはナノメートルオーダーの凹凸の起伏があるのに対し、上述したような方法で作製された微小開口の開口径は、せいぜい数100nm程度であるため、走査型プローブ顕微鏡の分解能は数100nm程度とかなり大きくなってしまい、クリアーに試料表面の凹凸の起伏形状が観測することができなかった。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電磁波以外の媒質を用いてカンチレバーを使用した超微細加工を行うことのできる装置を提供することを第1の技術課題とし、また、超微小な開口径の微小開口を具備したカンチレバーを容易に作製する方法を提供することを第2の技術課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記技術課題を解決するための具体的手段は、次のようなものである。すなわち、請求項1に記載する微細加工装置は、一端を支持されるカンチレバー部、該カンチレバー部から突設された突出部及び該突出部にその突出方向に貫通形成された微小開口とを有するカンチレバーを具備する装置であって、前記突出部の内部から前記微小開口を介して流体を流出することを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に記載する微細加工装置は、一端を支持されるカンチレバー部、該カンチレバー部から突設された突出部、該突出部の先端部に先鋭に形成された深針点及び該深針点の近傍位置で前記深針点を残しながら前記突出部にその突出方向に貫通形成された微小開口とを有するカンチレバーを具備する装置であって、前記突出部の内部から前記微小開口を介して流体を流出することを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に記載する微細加工装置は、一端を支持されるカンチレバー部、該カンチレバー部から突設された突出部、該突出部に基端部を固定して先端部を突出させたナノチューブ及び該ナノチューブの近傍位置で前記突出部にその突出方向に貫通形成された微小開口とを有するカンチレバーを具備する装置であって、前記突出部の内部から前記微小開口を介して流体を流出することを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に記載する微細加工装置は、請求項1乃至3に記載する構成において、前記流体が液体状のInまたはGaであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載する微細加工装置は、請求項1乃至3に記載する構成において、前記流体がInとGaの合金であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に記載する微細加工装置は、請求項1乃至3に記載する構成において、前記流体が液体有機物であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項7に記載する微細加工装置は、請求項1乃至3に記載する構成において、前記流体が反応性ガスであることを特徴とするものである。
【0021】
請求項8に記載する製造方法は、カンチレバー部または該カンチレバー部と突出部から少なくとも構成されたカンチレバーを集束イオンビーム室に配置し、前記カンチレバー部または前記突出部に集束イオンビームを照射し、前記カンチレバー部または前記突出部に貫通する微小開口を形成することを特徴とする微小開口を具備したカンチレバーを製造する方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態に係る微細加工装置1を図面に基づいて説明する。本発明の第1の実施形態に係る微細加工装置1は、図1に示すように、ホルダ2、該ホルダ2に支持されたカンチレバー3、該カンチレバー3に導入されている流体4、試料5が載置されているステージ6、前記カンチレバー3を自励発振させる発振回路7、該発振回路7の電圧を検出する検波回路8、前記ステージ6の垂直方向を制御し、前記カンチレバー3からの距離を一定に保持させるZサーボ回路9、前記ステージ6の水平方向を制御するXY走査回路10、及び入出力部であるコンピュータ11とから構成されている。以下、図面に基づいて更に詳細に説明する。
【0023】
前記カンチレバー3は、図2、3に示すように、前記ホルダ2に一端を支持された前記カンチレバー部12と該カンチレバー部12の先端に突設された前記突出部13とから構成されたカンチレバー3aとなっている。
【0024】
前記突出部13は薄い壁体から構成されており、約60度の角度で開いている略四角錐の形状を有している。前記突出部13の背面側内部には、空洞部14が形成され、前記突出部13の先端部には、その突出方向に微小開口15が貫通形成されている。つまり、前記突出部13の先端部は前記微小開口15の断面となっている。前記微小開口15は、20〜500nmの開口径(断面直径)を有する円形の超微小孔となっている。ただし、前記微小開口15の形成位置は前記突出部13の頂点先端部に制限されることはなく、前記突出部13の頂点先端部の近傍付近であっても良い。
【0025】
前記空洞部14の内部には、In、GaまたはIn−Ga(InとGaの合金)等の流体4が導入されている。ただし、InまたはGaは常温では固体であるため、加熱等により液体状にしたものとなっている。ここで述べた前記流体4とは、真空中でも蒸発しない液体若しくは気体状の物質の総称であり、単体は勿論のこと、化合物や混合物等も包含している。また、前記流体4を液体有機物として、前記空洞部14の内部に導入していても良い。ここで述べた液体有機物とは、真空中でも蒸発しない液体状の有機物であり、化合物や混合物等も包含していることは云うまでもない。また、前記空洞部14の内部に導入される物質は上記に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における種々のものを用いても良い。前記流体4は、前記微小開口15の開口径が超微小であることと、前記流体4の相が液体または気体であるために前記流体4の各粒子のファン・デル・ワールス力等の凝集力によって弱いながらもそれぞれの粒子は結合していることにより、単に前記空洞部14の内部に導入しただけでは、前記微小開口15から流出することはない。
【0026】
また、前記空洞部14の表面には、At等のマスク16を成膜(塗布)していても良い。前記マスク16は、前記空洞部14の内部に導入されている前記流体4等の物質の表面張力を低減させる効果を有しており、その成分や膜圧等は種々選択することができる。
【0027】
前記ステージ6の水平方向の位置決めは、XY走査回路10にて電圧制御される。また、前記ステージ6の垂直方向の位置決め、即ち、前記カンチレバー3の垂直方向の位置決めは、前記検波回路8で検出された前記発振回路7の電圧を前記発振回路7内でループさせ、前記微小開口15と前記試料5の表面との距離を一定に保持させ、前記微小開口15を前記試料5の表面に接触させることがないように、前記Zサーボ回路9で電圧制御されている。さらに、前記Zサーボ回路9にて前記カンチレバー3の垂直方向の位置決めを制御している電圧パルスを利用することで、前記流体4の各粒子の結合力を切断し、前記流体4を前記微小開口15から流出させると共に、前記流体4の流出量を制御することができる。
【0028】
一方、図4は、カンチレバーに微小開口を穿孔するときの概略説明図である。微小開口無しのカンチレバー3bは、シリコン、シリコンナイトライドまたは窒化シリコン等の材料で形成されるのが通常である。この微小開口無しのカンチレバー3bを集束イオンビーム室17に設置し、集束イオンビームIを照射することにより、超微小直径の前記微小開口15を穿孔形成することができる。
【0029】
この微小開口無しのカンチレバー3bに前記集光イオンビームIを超微焦点で照射するには、イオンビームを自在に集束して対象物を加工できるFIB装置(集束イオンビーム装置)を利用する。
【0030】
前記FIB装置は、通常Ga原子をイオン化し、そのイオンに電界を印圧して加速させ、このイオンビームを電界レンズで集束させながらイオンビーム断面を超微小化にして高エネルギー密度にし、この集束イオンビームをターゲットに照射してターゲットを加工する装置である。これらの機能を発揮するために、前記FIB装置は、イオン源、加速装置、ビーム集束装置及びビーム走査装置等の部分装置から構成されている。
【0031】
前記FIB装置では、加速電圧は自由に調節でき、前記集束イオンビームIのエネルギーを任意に設定できる。前記微小開口無しのカンチレバー3bの突出部13の厚さに応じて、任意に前記集束イオンビームIのエネルギーを可変させ、前記突出部13を穿孔することが可能である。また、ここでは、Ga原子をイオン化にして前記集束イオンビームIとしたが、これに限定されることはなく、InやAr等の原子をイオン化して用いても良い。
【0032】
また、図4では、前記空洞部14の側から前記集束イオンビームIを照射しているが、逆方向から照射しても構わない。前記微小開口15の開口径を小さくするには、前記集束イオンビームIのビーム直径を微細に絞れば良い。前記集束イオンビームIの断面直径を可変にすることによって、前記微小開口15の断面直径を任意に大小変化させることができる。
【0033】
以上のように構成された微細加工装置1の前記カンチレバー3を所定の位置まで移動させ、電圧パルスにて前記微小開口15から前記流体4を前記試料5の表面に流出させる。流出された前記流体4は超微粒子化されており、前記試料5の表面に付着し、前記試料5の表面にナノスケールの超微小ドットが形成される。また、流出された前記流体4が前記試料5の表面に付着する際に、前記試料5の表面との相互作用で化学反応等が励起されることによって、前記試料5の表面に様々な物質や形状等のナノスケールの超微小ドットが形成されることもある。また、前記ステージ6を連続的に移動させながら、前記流体4を前記試料5の表面に付着させると、ナノスケール幅を持つ超微細線が形成される。具体的には、前記流体4をIn、GaまたはIn−Gaとして流出、付着させると、GaAs、InGaAs、AlGaAs、InGaAsP等の化合物半導体の超微小ドットや超微細線が形成され、高速光通信用の半導体発光素子等が作製される。また、前記流体4を液体有機物とし、これを前記空洞部14の内部に注入し前記微小開口15から流出、付着させることで、前記試料5の表面との相互作用で種々の化学反応等が励起され、様々な物質や形状等の超微小ドットや超微細線が形成されたり、新たな物質を形成したりする。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る微細加工装置1を図面に基づいて説明する。本発明の第2の実施形態に係る微細加工装置1も、図1に示すように、ホルダ2、該ホルダ2に支持されたカンチレバー3、該カンチレバー3に導入されている流体4、試料5が載置されているステージ6、前記カンチレバー3を自励発振させる発振回路7、該発振回路7の電圧を検出する検波回路8、前記ステージ6の垂直方向を制御し、前記カンチレバー3からの距離を一定に保持させるZサーボ回路9、前記ステージ6の水平方向を制御するXY走査回路10、及び入出力部であるコンピュータ11とから構成されている。
【0035】
また、前記カンチレバー3は、図5、6に示すように、前記ホルダ2に一端を支持されたカンチレバー部12と、該カンチレバー部12から突設された突出部13と、該突出部13の背面側内部に形成された空洞部14と、前記突出部13の先端部に先鋭に形成された深針点18と、該深針点18の近傍位置で前記深針点18を残しながら前記突出部13にその突出方向に貫通形成された微小開口15とから構成されたカンチレバー3cとなっている。
【0036】
即ち、本実施形態に係る微細加工装置1は、上述した第1の実施形態に係る微細加工装置1と比較して、前記カンチレバー3の構成要素に相違がある。つまり、本実施形態に係る微細加工装置1の特徴は、前記突出部13の先端部に前記深針点18が付加された点と、前記深針点18の近傍位置で前記深針点18を残しながら前記突出部13にその突出方向に前記微小開口15を貫通形成された点とを特徴とした前記カンチレバー3cを具備している点にある。その他の構成については、上述した第1の実施形態に係る微細加工装置1と同様であるから、その詳細は省略する。
【0037】
前記深針点18は前記突出部13の先端部に形成されており、前記深針点18の先端は先鋭な形状で、その曲率半径は、現在では、10nm程度まで小さく加工できる。前記深針点18の形成位置は前記突出部13の先端に限ることはなく、前記突出部13の先端近傍付近であっても良い。また、後述するように、前記深針点18が前記試料5の表面と一点で接触することにより、前記試料5の表面情報を局所的に数nm程度の高分解能で検出することができる。
【0038】
一方、本実施形態では、前記深針点18を残存させながら、前記深針点18の近傍位置の前記突出部13に前記微小開口15が前記突出部13の突出方向に貫通状に形成される。前記微小開口15の開口径は加工方法に依存するが、前記FIB装置を利用した方法では数100nmから数10nmの微小直径を有した微小開口を開孔できるまでに達している。ここでは、上述したように、前記FIB装置を利用して、前記深針点18を残存させながら、20〜500nmの微小直径の前記微小開口15を前記深針点18の近傍に穿孔形成した。また、後述するように、前記微小開口15の位置が前記深針点18の位置に近いほど、前記深針点18で指定した前記試料5の表面の位置に対して前記微小開口15から前記流体4を流出させやすい。
【0039】
以上のように構成された微細加工装置1は、前記深針点18を用いて前記試料5の表面をAFM走査することにより、前記カンチレバー3cまたは前記試料5等の位置決めや前記試料5の表面の観測等を行うことができる。前記深針点18は先鋭な1点で構成されているから、前記試料5の表面を高精度に走査でき、正確に位置決めや観測等を行うことができる。その他の作用効果については、上述した第1の実施形態に係る微細加工装置1の作用効果と同様であるから、その詳細は省略する。さらに、前記微小開口15から流出された前記流体4によって前記試料5の表面に形成された超微小ドットや超微細線は、前記深針点18を用いてAFM走査を行われることにより、その形成位置や形状等が高分解能で観測検査(確認検査)される。
【0040】
次に、本発明の第3の実施形態に係る微細加工装置1を図面に基づいて説明する。本発明の第3の実施形態に係る微細加工装置1も、図1に示すように、ホルダ2、該ホルダ2に支持されたカンチレバー3、該カンチレバー3に導入されている流体4、試料5が載置されているステージ6、前記カンチレバー3を自励発振させる発振回路7、該発振回路7の電圧を検出する検波回路8、前記ステージ6の垂直方向を制御し、前記カンチレバー3からの距離を一定に保持させるZサーボ回路9、前記ステージ6の水平方向を制御するXY走査回路10、及び入出力部であるコンピュータ11とから構成されている。
【0041】
また、前記カンチレバー3は、図7、8に示すように、前記ホルダ2に一端を支持されたカンチレバー部12と、該カンチレバー部12から突設された突出部13と、前記突出部13の背面側内部に形成された空洞部14と、前記突出部13に基端部19aを固定して先端部19bを突出させたナノチューブ19と、該ナノチューブ19の近傍位置の前記突出部13にその突出方向に貫通形成された微小開口15とから構成されたカンチレバー3dとなっている。
【0042】
即ち、本実施形態に係る微細加工装置1は、上述した第2の実施形態に係る微細加工装置1と比較して、前記カンチレバー3の構成要素に相違がある。つまり、本実施形態に係る微細加工装置1の特徴は、前記深針点18の代わりに、前記ナノチューブ19が付加されたことを特徴とした前記カンチレバー3dを具備している点にある。その他の構成については、上述した第2の実施形態に係る微細加工装置1と同様であるから、その詳細は省略する。
【0043】
前記ナノチューブ19は、前記突出部13の後面壁13aに公知の方法で取付けられており、その先端部19bは前記突出部13の先端部より下方に突出している。つまり、前記ナノチューブ19は前記突出部13の先端部を通過して配置されていることになる。また、前記ナノチューブ19の開口径(断面直径)は1nmから種々選択でき、その取付け位置は前記突出部13の後面壁13aに制限されることなく、前記突出部13のどの面であっても良い。
【0044】
以上のように構成された微細加工装置1は、前記ナノチューブ19を用いて前記試料5の表面をAFMまたはSNOM走査することができる。つまり、前記ナノチューブ19の先端部19bが前記深針点18の代用としての実効深針点または実効微小開口となって、前記カンチレバー3dや前記試料5等の位置決めや前記試料5の表面の観測や物性評価等を正確に行うことができる。前記ナノチューブ19の開口径は極めて微小であるから、前記試料5の表面を極めて高精度にAFMまたはSNOM走査することができる。その他の作用効果については、上述した第2の実施形態に係る微細加工装置1の作用効果と同様であるから、その詳細は省略する。
【0045】
次に、本発明の第4の実施形態に係る微細加工装置1を図面に基づいて説明する。本発明の第4の実施形態に係る微細加工装置1は、図9に示すように、ホルダ2、該ホルダ2に支持されたカンチレバー3、タンク20、該タンク20に導入されている流体4、該流体4を前記カンチレバー3に給送する給送ノズル21、試料5が載置されているステージ6、前記カンチレバー3を自励発振させる発振回路7、該発振回路7の電圧を検出する検波回路8、前記ステージ6の垂直方向を制御し、前記カンチレバー3からの距離を一定に保持させるZサーボ回路9、前記ステージ6の水平方向を制御するXY走査回路10、及び入出力部であるコンピュータ11とから構成されている。
【0046】
また、前記カンチレバー3は、図10、11に示すように、前記ホルダ2に一端を支持されたカンチレバー部12と、該カンチレバー部12から突設された突出部13と、前記突出部13の背面側内部に形成された空洞部14と、前記突出部13の先端部に形成された微小開口15とから構成されたカンチレバー3eとなっており、前記給送ノズル21の先端部は、前記空洞部14に内設している。
【0047】
即ち、本実施形態に係る微細加工装置1の特徴は、上述した第1の実施形態に係る微細加工装置1と比較して、前記流体4は前記タンク20に封入されており、前記給送ノズル21を介して前記流体4を前記微小開口15から流出させる点にある。その他の構成については、上述した第1の実施形態に係る微細加工装置1と同様であるからその詳細は省略する。
【0048】
前記流体4は、図示していないが、反応性ガスとして前記タンク20に導入されている。ここで述べた反応性ガスとは、真空中でも蒸発せず、物質の表面と種々の化学反応を励起する気体状の物質の総称であり、単体は勿論のこと、化合物や混合物等も包含している。例えば、HFまたはHClに代表されるようなハロゲンガスやC4H5NまたはCH3CH2CNに代表されるようなシアン化ガス等を用いると好適であるが、これに限定されることはない。ただし、固体や液体のものは加熱等で気化する必要がある。また、前記タンク20は、図示していないが、通常は真空チャンバーとなっている。
【0049】
前記給送ノズル21は、図10、11に示すように、先端部が前記空洞部14に内設しており、他端は、前記タンク20と連結している中空管である。つまり、前記給送ノズル21は、前記タンク21に導入されている前記流体4を前記微小開口15から流出させるための前記タンク21と前記空洞部14とを接合している中空管となっている。また、前記給送ノズル21の先端部は、前記流体4前記微小開口15を介して流出しやすいように、微小孔を形成している。また、前記給送ノズル21の先端部は、前記微小開口15と連結していても良い。
【0050】
以上のように構成された微細加工装置1は、公知の方法によって、前記流体4を前記給送ノズル21の先端部から前記微小開口15を介して前記試料5の表面に流出させる。前記流体4は反応性ガスであるので、前記試料5の表面に付着すると、前記試料5の表面との相互作用で種々の化学反応等が励起され、前記試料5の表面にナノスケールの超微小ドットや超微細線が形成される。その他の作用効果については、上述した第1の実施形態に係る微細加工装置1の作用効果と同様であるから、その詳細は省略する。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る微細加工装置によれば、突出部の内部から微小開口を介して流体を試料表面に流出させ、前記試料表面に付着させることにより、前記試料表面にナノスケールの超微小ドットや超微細線が形成される。
【0053】
本発明の請求項2に係る微細加工装置によれば、上述した本発明の請求項1に係る微細加工装置の効果に加えて、前記突出部の先端部に深針点を形成し、該深針点の近傍位置で前記深針点を残しながら前記突出部にその突出方向に前記微小開口を貫通形成したカンチレバーを具備しているので、前記深針点を用いて前記試料表面をAFM走査することにより、前記カンチレバーや前記試料等の位置決め、及び前記試料表面の観測等を行うことができる。前記深針点は先鋭な1点で構成されているから、前記試料表面を高精度に走査でき、正確に位置決めや観測等を行うことができる。加えて、前記微小開口から流出された前記流体によって前記試料表面に形成された超微小ドットや超微細線は、前記深針点を用いてAFM走査を行われることにより、形成位置や形状等が高分解能で観測検査(確認検査)することができる。
【0054】
本発明の請求項3に係る微細加工装置によれば、上述した本発明の請求項2に係る微細加工装置の効果に加えて、ナノチューブが付加されたカンチレバーを具備しているので、前記ナノチューブを用いて前記試料表面をAFMまたはSNOM走査することにより、前記カンチレバーや前記試料等の位置決め、前記試料表面の観測、及び前記試料表面の物性評価等を正確に行うことができる。前記ナノチューブの開口径は極めて微小であるから、前記試料表面を極めて高精度にAFMまたはSNOM走査することができる。
【0055】
本発明の請求項4に係る微細加工装置によれば、上述した本発明の請求項1乃至3に係る微細加工装置の効果に加えて、前記流体を液体状のIn、Gaとして、突出部の内部から微小開口を介して試料表面に流出させ、付着させるので、GaAs、InGaAs、AlGaAs、InGaAsP等の化合物半導体の超微小ドットや超微細線が形成され、高速光通信用の半導体発光素子等を作製することができる。
【0056】
本発明の請求項5に係る微細加工装置によれば、上述した本発明の請求項1乃至3に係る微細加工装置の効果に加えて、前記流体をIn−Gaとして、突出部の内部から微小開口を介して流体を試料表面に流出させ、付着させることにより、In−Gaは常温で液体であるので、容易に、GaAs、InGaAs、AlGaAs、InGaAsP等の化合物半導体の超微小ドットや超微細線が形成され、高速光通信用の半導体発光素子等を作製することができる。
【0057】
本発明の請求項6に係る微細加工装置によれば、上述した本発明の請求項1乃至3に係る微細加工装置の効果に加えて、前記流体を液体有機物として、突出部の内部から微小開口を介して流体を試料表面に流出させ、付着させることにより、前記試料表面との相互作用で種々の化学反応等が励起され、様々な物質や形状等の超微小ドットや超微細線が形成されるだけでなく、新物質の創製などを促進できる。
【0058】
本発明の請求項7に係る微細加工装置によれば、上述した本発明の請求項1乃至3に係る微細加工装置の効果に加えて、前記流体を反応性ガスとして、突出部の内部から微小開口を介して流体を試料表面に流出させ、付着させることにより、液体状の物質だけでなく、気体状の物質も前記試料5の表面と相互作用させることができ、種々の化学反応等が励起し、様々な物質や形状等の超微小ドットや超微細線が形成されるだけでなく、新物質の創製などを促進できる。
【0059】
本発明の請求項8に係る製造方法によれば、集束イオンビームを用いるので、より超微小な微小開口を形成することができ、本発明の構成要素であるカンチレバーを安価且つ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1乃至3の実施形態に係る微細加工装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る微細加工装置のカンチレバーの概略構成を示す斜視図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】カンチレバーに微小開口を穿孔する概要説明図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る微細加工装置のカンチレバーの概略構成を示す斜視図。
【図6】図5のB−B線断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る微細加工装置のカンチレバーの概略構成を示す斜視図。
【図8】図7のC−C線断面図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る微細加工装置の概略構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る微細加工装置のカンチレバーの概略構成を示す斜視図。
【図11】図10のD−D線断面図。
【図12】従来のSNOM等で用いられるカンチレバーの概略構成を示す斜視図。
【図13】図12のE−E線断面図。
【符号の説明】
1 微細加工装置
3 カンチレバー
4 流体
5 試料
12 カンチレバー部
13 突出部
15 微小開口
17 集束イオンビーム室
18 深針点
19 ナノチューブ
20 タンク
21 給送ノズル
I 集束イオンビーム
Claims (8)
- 一端を支持されるカンチレバー部、該カンチレバー部から突設された突出部及び該突出部にその突出方向に貫通形成された微小開口とを有するカンチレバーを具備する装置であって、前記突出部の内部から前記微小開口を介して流体を流出することを特徴とする微細加工装置。
- 一端を支持されるカンチレバー部、該カンチレバー部から突設された突出部、該突出部の先端部に先鋭に形成された深針点及び該深針点の近傍位置で前記深針点を残しながら前記突出部にその突出方向に貫通形成された微小開口とを有するカンチレバーを具備する装置であって、前記突出部の内部から前記微小開口を介して流体を流出することを特徴とする微細加工装置。
- 一端を支持されるカンチレバー部、該カンチレバー部から突設された突出部、該突出部に基端部を固定して先端部を突出させたナノチューブ及び該ナノチューブの近傍位置で前記突出部にその突出方向に貫通形成された微小開口とを有するカンチレバーを具備する装置であって、前記突出部の内部から前記微小開口を介して流体を流出することを特徴とする微細加工装置。
- 前記流体が液体状のInまたはGaであることを特徴とする請求項1乃至3記載の微細加工装置。
- 前記流体がInとGaの合金であることを特徴とする請求項1乃至3記載の微細加工装置。
- 前記流体が液体有機物であることを特徴とする請求項1乃至3記載の微細加工装置。
- 前記流体が反応性ガスであることを特徴とする請求項1乃至3記載の微細加工装置。
- カンチレバー部または該カンチレバー部と突出部から少なくとも構成されたカンチレバーを集束イオンビーム室に配置し、前記カンチレバー部または前記突出部に集束イオンビームを照射し、前記カンチレバー部または前記突出部に貫通する微小開口を形成することを特徴とする微小開口を具備したカンチレバーの製造方法。
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