JP2004033820A - 油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法 - Google Patents

油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】香味の発現に優れた、油溶性化合物含有乳化組成物(ソルビトール又はキシリトール構造物など)の製造方法を提供する。
【解決手段】油溶性化合物と乳化剤とを含有する糖アルコール組成物を加熱溶融した後、該加熱溶融物を5〜40℃で保持して、油溶性化合物が乳化剤により被覆されて糖アルコール中に分散されてなる構造物を得ることを特徴とする油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
油溶性化合物としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ミント油、バニラのような精油類、メントールのようなアルコール類、バニリンのようなアルデヒド類、エチルヘキサノエートのようなエステル類、ジメチルサルファイドのような含硫化合物、カニフレーバー、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバー、バターフレーバーのような各種調合香料の1種以上を挙げることができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、医薬部外品、食品、食品添加物及びドリンクなど広範囲の用途に用いることができる油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医薬品、医薬部外品、食品及びドリンクなどの用途に用いる「油溶性化合物含有のソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール」の粉末或いは造粒物は、通常、水を添加して、一旦、乳化組成物を製造し、次に、スプレ一ドライ装置(SD装置)、流動層造粒装置等により、水を除去、乾燥して製造されている。
【0003】
しかしながら、この方法によって製造された油溶性化合物含有糖アルコ一ル粉末或いは造粒物は、香料の低沸点部の保留性に欠け、香味成分の発現性のコントロールにも限界があり、更に、口腔内において特有のざらつきがあるなどの課題がある。
【0004】
一方、特公昭34−5600号公報、特表平7−502187号公報等には、油溶性化合物含有ガラスカプセルが開示されている。これらの公報に記載される油溶性化合物含有ガラスカプセルは、密閉容器中で、香味料と固体マトリックス成分(タンパク質、ハイドロコロイド、変性セルロースなどの高分子重合体、デキストリン、コーンシロップ固形物、セルラン、マルトースシロッブ固形物、高フルクトースコーンシロップ固形物)などの中程度の分子量の化合物、水、アルコール、グリセロール、水素添加した糖類、砂糖、有機酸などの可塑化剤、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセロールエステル、中鎖トリグリセリドなどの乳化剤から選ばれる成分を混合し、加熱撹拌して溶融物を生成させ、少量物質の融点以上、基質のガラス温度以上で穴の開いたプレートを通して冷却したイソプロピルアルコールなどの溶媒中に押し出し、棒状粒子に成形し、ミルなどで整粒粉砕し、溶剤を遠心分離後、真空乾燥し、長期間保存しても結晶化しないガラス状物質として製造されている。
また、特開昭58−76062号公報には、キシリトールと少なくとも1種のフレーバーとの混合からなり、前記フレーバーがキシリトール内部に含有されていることを特徴とするフレーバー複合物、並びに、その製法はキシリトールを150℃以上、好ましくは150〜230℃の温度で加熱し、そのキシリトールを約80℃付近まで冷却し、この冷却段階のキシリトールに少なくとも1種のフレーバーを添加して、フレーバー複合物を回収することを特徴とするものである。
【0005】
しかしながら、上記前者の公報に記載される方法等により得られるガラスカプセルは、低沸点油溶性化合物の保留性が良いことはよく知られているが、香味成分がガラス質に封入されているため、その発現性に課題がある。更に、ガラスカプセル化法の欠点等は、脱水および冷却剤としてイソプロピルアルコール等の溶剤を用いることであり、冷却後、製品中に微量のイソプロピルアルコール等の溶剤が残留する点等に課題がある。
また、上記後者の公報に記載されるフレーバー複合物、並びに、その製法では、このフレーバー複合物を口腔内のモデルとなる水に浸漬すると、油分が水に浮く(油分が遊離する)ことからも明らかなように、ロに油の感触が広がり香味の発現性が悪い点に課題がある。更に、このフレーバー複合物は、油溶性化合物(フレーバー)がキシリトール結晶の間に吸着している構造であるため、保持できる油分の量は少なく、高含油の粉末香料を製造することができないという課題も有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、油溶性化合物をソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール中で均一に分散せしめてなる構造物からなる香味の発現に優れた油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、従来におけるガラスカプセル化法で使用する固体マトリックス成分としての高分子重合体や中程度の分子量の化合物、並びに、可塑剤としての水やアルコールなどを使用することなく、油溶性化合物を乳化剤と共に、糖アルコール中で加熱溶融後、特定の条件下等で処理することにより、上記目的の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法が得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 油溶性化合物と乳化剤を含有する糖アルコール組成物を加熱溶融した後、該加熱溶融物を5〜40℃に保持して、油溶性化合物が乳化剤により被覆されて糖アルコール中に分散されてなる構造物を得ることを特徴とする油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
(2) 油溶性化合物が精油類、アルコール類、アルデヒド類、エステル類、フレーバー類から選ばれる少なくとも1種である上記(1)記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
(3) 乳化剤がレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセロールエステル、中鎖トリグリセリドから選ばれる少なくとも1種である上記(1)又は(2)に記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
(4) 糖アルコールがソルビトール又はキシリトールである上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
(5) エクストルーダー成形機を用いて製造する上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法(以下、単に「本発明方法」という)は、油溶性化合物と乳化剤とを含有する糖アルコール組成物を加熱溶融した後、該加熱溶融物を5〜40℃で冷却保持して、油溶性化合物が乳化剤により被覆されて糖アルコール中に分散されてなる構造物を得ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明方法で用いることができる油溶性化合物は、特に限定されるものでなく、油溶性の天然抽出物及び合成香味料のいずれも使用することができる。
油溶性化合物としては、例えば植物油、動物油、具体的には、オレンジ油、レモン油、ミント油、バニラのような精油類、メントールのようなアルコール類、バニリンのようなアルデヒド類、エチルヘキサノエートのようなエステル類、カニフレーバー、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバー、バターフレーバーのようなフレーバー類の1種以上を挙げることができる。
これらの油溶性化合物の含有量は、得られる構造物全量に対して、1〜25重量%、好ましくは、2〜20重量%とすることが望ましい。
この油溶性化合物の含有量が1重量%未満であると、香味の力価が弱くなり、また、25重量%を越えると、油分のカプセル化が不十分となり、好ましくない。
【0010】
本発明方法で用いることができる乳化剤は、油溶性化合物を糖アルコール中に均一に分散せしめるために含有するものであり、種々の乳化剤を用いることができる。
乳化剤としては、例えば、食品添加物として許可されたものを任意に使用できるが、特に、油分の含有量を上げる点から、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセロ一ルエステル、中鎖トリグリセリドなどを用いることが好ましい。
これらの乳化剤の含有量は、得られる構造物全量に対して、0.05〜5重量%、好ましくは、0.2〜3重量%とすることが望ましい。
この油溶性化合物の含有量が0.05重量%未満であると、油溶性化合物の分散効果が十分でなく、本発明の効果が得られず、また、5重量%を越えると、香味に影響を与えるもの、すなわち、香味の発現性が悪く、好ましくない。
【0011】
本発明方法に用いることができる糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、マルチトール、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1種(単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。
好ましい糖アルコールとしては、医薬品、医薬部外品、食品、食品添加物及びドリンクなどに用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、香味の点から、ソルビトール、キシリトールの使用が望ましい。
これらの糖アルコールの含有量は、得られる構造物全量に対して、70〜98重量%、好ましくは、75〜97重量%とすることが望ましい。
この糖アルコールの含有量が70重量%未満であると、油分のカプセル化が不十分となり、また、98重量%を越えると、香味の力価が弱くなり、好ましくない。
【0012】
その他の添加剤としては、必要に応じて、 酸化防止剤、食用色素等を適宜含有することができる。
酸化防止剤としては、食品添加物として許容されているもの、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー、セージの抽出物等を用いることができる。
酸化防止剤の含有量は、油溶性化合物の重量に対し0.1〜2重量%とすると良い。
【0013】
本発明方法は、まず、ニーダー、耐圧容器を有する押出機、エクストルーダーなどを用いて、上述の油溶性化合物と乳化剤とを、ソルビトールやキシリトールなどの糖アルコール中100℃以上、好ましくは、110〜150℃で、加熱溶融せしめて油溶性化合物と乳化剤とを、ソルビトールやキシリトールなどの糖アルコール中に満遍なく分散させる。
次いで、得られた加熱溶融物を取り出し、該加熱溶融物を5〜40℃にて冷却保持することにより、目的の構造特性を有する乳化組成物が得られることとなる。すなわち、上記温度範囲(5〜40℃の範囲)で加熱溶融物を保持することにより、初めて、油溶性化合物が乳化剤により被覆されて糖アルコール中に分散されてなる構造物が得られることとなり、上記温度範囲外(5〜40℃の範囲外)の場合は、目的の構造物が得られないものとなる。
本発明方法により得られる上記構造特性を有する乳化組成物は、上記温度範囲で24時間以上、好ましくは96時間以上保持すれば得られることとなる。上記加熱溶融物の押し出しは、好ましくは、作業効率、揮発成分の散逸防止の点等から、1つ以上のスクリューを有するニーダー、エクストルーダー、耐圧容器を有する押出機の何れかで行われることが望ましい。
【0014】
特に、本発明方法では、作業性、生産性、連続性などの点からエクストルーダー成形機を用いて製造することが特に好ましい。
用いるエクストルーダー成形機としては、一軸型エクストルーダー、二軸型エクストルーダーなどを使用することができる。このようなエクストルーダー成形機としては、神戸製鋼所社製、幸和工業社製、栗田鉄工所社製、スエヒロEMP社製、日本製鋼所社製など市販のものを使用することができる。
好ましいエクストルーダー成形機としては、二軸以上の回転軸を有しL/D=12以上を備えたものが望ましい。
【0015】
本発明方法により得られる構造物は、医薬品、医薬部外品、食品、食品添加物及びドリンクなどの用途に応じて、粉砕機などにより所定の粒径になるように調製して目的の油溶性化合物含有乳化組成物を得ることができる。
上記温度範囲での保持時間が24時間(1日)未満であると、構造物が生成しないことがあり、好ましくない。なお、この保持時間が24時間(1日)以上であれば、目的の構造物がえられるものであるが、目的の効果を得るためには結晶構造を確定、すなわち、結晶構造の変動がない状態にするために、好ましくは96時間(4日)以上保持することが望ましい。
【0016】
このように構成される本発明方法では、従来におけるガラスカプセル化法で使用する固体マトリックス成分としての高分子重合体や中程度の分子量の化合物、並びに、可塑剤としての水やアルコールなどを使用することなく、ソルビトールやキシリトールなどの糖アルコールと、乳化剤を用いて、油溶性化合物との加熱溶融物を得、次いで、5〜40℃で保持すれば、油溶性化合物が乳化剤により被覆されていてソルビトールやキシリトールなどの糖アルコール中に均一に分散されている油溶性化合物含有乳化物(構造物)が得られるものとなる。
本発明方法により得られる構造物は、従来のガラスカプセルや、キシリトールと少なくとも1種のフレーバーとの混合からなり、前記フレーバーがキシリトール内部に含有されているフレーバー複合物とは、その構造が相違するものであり、水中に浸漬しても油分が水に浮く(油分が遊離する)ものでなく、かつ香味の発現が強い油溶性化合物含有乳化組成物が得られるものとなる。
【0017】
本発明方法により得られる構造物が従来のガラスカプセルと較べて、何故香味の発現に優れているかは、次の理由によるものと推察される。
すなわち、本発明方法では、油溶性化合物を乳化剤と共に、ソルビトールやキシリトールなどの糖アルコール中で加熱溶融せしめた後、冷却すれば、油溶性化合物が乳化剤により被覆されて糖アルコール中に分散された、O/W型様のエマルションが形成されるものとなる。この物は、水の添加によって油浮きの無いエマルションとなることからも判る。
これを急激に冷却固化すれば、従来の「ガラスカプセル」が生成することになるが、本発明方法では、加熱溶融物を5〜40℃の温度で保持することにより、「ソルビトールやキシリトールなどの糖アルコールが結晶化した構造物」が生成することとなる。
【0018】
本発明方法により得られる油溶性化合物含有乳化組成物は、従来のガラスカプセルに較べて、口腔内で溶解性がよく、かつ、香味の発現に優れたものとなるものである。
上記の推察等は、本発明方法で得られた各構造物を電子顕微鏡(JSM−T220A、JEOL社製、3500倍)で確認したところ、径が0.1〜10μm(多くは1〜2μm)の穴が見られ、含油量に比例してその数が増加し、更に含油量が増えると、蜂の巣状に存在していた点からも整合するものである。
【0019】
【実施例】
次に、実施例及び比較例等により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、「部」は重量部を示す。
【0020】
(実施例1)
配合処方:
(1)  ソルビトール             96.5部
(2)  メントール               2.5部
(3)  ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2)   1.0部
上記(1)〜(3)の成分を混合してオートクレーブ(AC−40、アルブ社製)を用いて、120℃、30分間、加熱溶融した。
次いで、この溶融物を室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物1を得た。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、粒子状構造物1を得た。
この粒子状構造物1を官能評価(パネラー8名、以下同様)したところ、メントールの苦みが少なく、香味の発現が強かった。また、0.14gの粒子状構造物1を5mlの水に溶解したところ、油の析出のない、均一な乳化組成物が得られたことが判った(以後、本方法を「水溶解試験」という)。
【0021】
(比較例1)
上記実施例1と同じ配合量なるソルビトール、メントール、ショ糖脂肪エステルを混合して、120℃、30分間加熱溶融した。0℃以下に急冷して固体を得た。これをミルで16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、比較例1の粒子状構造物を得た。
この比較例1を官能評価したところ、メントールの苦味を強く感じ、香味の発現に欠けるものであった。
【0022】
(比較例2)
上記実施例1と同じ配合量となるソルビトール、メントール、ショ糖脂肪酸エステルを混合して、120℃、30分間加熱溶融した。−5℃に96時間(4日間)放冷後、柔らかい物性の比較例2を得た。
この比較例2を官能評価したところ、メントールの苦味を強く感じ、香味の発現に欠けるものであった。これは、低温(−5℃)では構造物の生成反応が抑制されるため考えられる。
【0023】
(実施例2)
配合処方:
(1)  ソルビトール                86.0部
(2)  メントール                  2.0部
(3)  ミントオイル                 1.0部
(4)  ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2)      1.0部
上記(1)〜(4)の成分を混合して上記実施例1と同様の装置を用いて、120℃、30分間、加熱溶融した。
次いで、この溶融物を室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物2を得た。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、粒子状構造物2を得た。
この粒子状構造物2を官能評価したところ、メントールの苦みが少なく、香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0024】
(実施例3)
上記実施例1において、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2)の代わりに、HLB=15のショ糖エステルを用いた以外は、実施例1と同じ条件で行い、粒子状構造物3を得た。
この粒子状構造物3を官能評価したところ、メントールの苦みが少なく、香味の発現が強かった。また、水溶解試験では、均一な乳化組成物となり、油やその固形物の析出は無く、粒子状構造物1の場合より、透明に近いエマルション状態になった。
【0025】
(実施例4)
配合処方:
(1)  ソルビトール                   84.0部
(2)  メントール                    12.0部
(3)  ショ糖脂肪酸エステル(HLB=15)        4.0部
上記(1)〜(3)の成分を上記実施例1と同様に処理して粒子状構造物4を得た。
この粒子状構造物4を官能評価したところ、メントールの苦味が少なく香味の発現が強かった。 また、水溶解試験では、均一な乳化組成物となり油やその固形物の析出は無かった。
【0026】
(実施例5)
配合処方:
(1)  ソルビトール                78.0部
(2)  メントール                 20.0部
(3)  ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2)      2.0部
上記(1)〜(3)の成分を混合して上記実施例1と同様の装置を用いて、120℃、45分間、加熱溶融した。
次いで、この溶融物を室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物5を得た。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、粒子状構造物を得た。
この粒子状構造物5を官能評価したところ、メントールの苦みが少なく、香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0027】
(比較例3)
上記実施例5と同じ操作で得られた加熱溶融物を80〜90℃(>40℃)に冷却後、撹拌したところ、油成分が流出して構造物5は得られなかった。これは高含油の組成物を溶融後、結晶化前に機械的に撹拌すると、構造物が破壊され、その中の油分が流出するためである。
従って、本発明範囲となる実施例5で得られた構造物は、均一な状態のガラスカプセルではなく、結晶性の構造物であると考えられる。
【0028】
(実施例6)
配合処方:
(1)  キシリトール                96.0部
(2)  メントール                  3.0部
(3)  ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2)      1.0部
上記(1)〜(3)の成分を混合して上記実施例1と同様の装置を用いて、100℃、60分間、加熱溶融した。次いで、この溶融物を室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物6を得た。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、粒子状構造物6を得た。
この粒子状構造物6を官能評価したところ、メントールの苦みが少なく、香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0029】
(比較例4、特開昭58−76062号公報に記載の方法に準拠したフレーバー複合物の調製)
一定量のキシリトールを120℃にて加熱溶融した。次ぎに、このキシリトールを約82℃まで冷却し、この点で理論量で10%に相当する一定量のペパーミントフレーバーを急速に混合した。混合の間フレーバーの発散が認められた。その後、キシリト一ル/フレーバー混合物をキャンデートレーの中に注ぐと、1分以内で固体に凝集した。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、比較例4のフレーバー複合物を得た。
【0030】
(実施例7)
配合処方:
(1)  ソルビトール             89.0部
(2)  レモンオイル             10.0部
(3)  ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2)   1.0部
上記(1)〜(3)の成分を混合して上記実施例1と同様の装置を用いて、112℃、20分間、加熱溶融した。
次いで、この溶融物を室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物7を得た。この固形物をミルで、16〜60メッシュの大きさになるように切断し、流動性に富む粒子状構造物7を得た。
この粒子状構造物7を官能評価したところ、トップが強く、香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0031】
(実施例8)
上記実施例7において、レモンオイルをペパーミントオイルに代えた以外は実施例6と同様に、粒子状構造物8を得た。
この粒子状構造物8を官能評価したところ、ペパーミントの香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0032】
(実施例9)
配合処方:
(1)  ソルビトール               95.5部
(2)  メントール                 2.5部
(3)  ペパーミントオイル             1.0部
(4)  ショ糖脂肪酸エステル            1.0部
上記(1)〜(4)の成分を二軸エクストルーダー(日本製鋼所社製)を用いて、バレル内の温度120℃、圧力2kg/cm、1分間、ホールドして加熱溶融した。次いで、この溶融物を排出後、室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物9を得た。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、粒子状構造物9を得た。
この粒子状構造物9を官能評価したところ、トップが強く、香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0033】
(実施例10)
配合処方:
(1) ソルビトール                 60部
(2) キシリトール                 37部
(3) ペパーミントオイル               2部
(4)  ショ糖脂肪酸エステル             1部
上記(1)〜(4)の成分を二軸エクストルーダー(日本製鋼所社製)を用いて、バレル内の温度  120℃、圧力 2kg/cm、1分間、ホールドして加熱溶融した。次いで、この溶融物を排出後、室温(15〜20℃)に96時間(4日間)放置して、構造物10を得た。
これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、粒子状構造物10を得た。
この粒子状構造物10を官能評価したところ、トップが強く、香味の発現が強かった。また、水溶解試験を行ったところ、均一な乳化組成物となり、油や固形物の析出はなかった。
【0034】
(比較例5)
配合処方:
(1) ソルビトール            88.0部
(2) メントール             10.0部
(3) ペパーミントオイル          1.0部
(4) ショ糖脂肪酸エステル         1.0部
上記(1)〜(4)の成分を二軸エクストルーダー(日本製鋼所社製)を用いて、バレル内の温度120℃、圧力2kg/cm、1分間、ホールドして加熱溶融した。次いで、この溶融物を排出後、0℃以下に急冷して固体を得た。これをミルで、16〜60メッシュの大きさになるように粉砕し、比較例5を得た。
この比較例5を官能評価したところ、メントールの苦味を強く感じ、香味の発現にかけるものであった。また、この比較例5の水溶解試験を行ったところ、油の析出があり、不均一な乳化組成物であった。
【0035】
(比較例6)
メントール、およびペパーミントオイルをレモンオイルに替えた以外は、上記比較例5と同様にして、比較例6を得た。
【0036】
(比較例7)
水150gにアラビアガム30g及びデキストリン(DE10)50gを加えて撹拌し、80℃で溶解殺菌後、40℃まで冷却した。
これにメントール20gを添加し、クレアミックス(エムテクニック社製)を用い、30〜40℃を維持しながら18000rpmにて1分間撹拌することにより乳化を行った。
得られた乳化液をスプレードライヤー(大川原化工機社製)を用い、送風温度150℃、排風温度80℃で噴霧乾燥し、90gのメントール粉末香料、比較例7を得た。
【0037】
(比較例8)
メントールをレモンオイルに替えた以外は、上記比較例7と同様にして、レモン粉末香料、比較例8を得た。
【0038】
(試験例1:タブレット試作品の官能評価)
上記で得たメントール含有乳化組成物など(実施例4、比較例5及び7)と、レモン含有乳化組成物など(実施例7、比較例6及び8)のそれぞれのオイルの量が一定(メントール賦香率:2.5%、レモンオイル賦香率:1.0%)になるように調合したタブレットを下記表1の処方にて行った。ソルビトール粉末、及び上記で製造した粉末香料などを添加し、常法に従って、打錠機にて、滑沢剤にショ糖脂肪酸エステルを用いて、錠菓を各々調製した。
この各錠菓(タブレット)を専門パネラー8名にて、香気香味の官能評価を行った。
これらの結果を下記表2に示す。
【0039】
【表1】
Figure 2004033820
【0040】
【表2】
Figure 2004033820
【0041】
(試験例2:ガム試作品の官能評価)
下記表3の処方にて(上記試験例1と同様のメントール含有乳化組成物などと、レモン含有乳化組成物などを用いて)、板ガムの香気香味評価を下記方法により行った。
まず、ガムベース、砂糖、ブドウ糖、コーンシロップを混合し、これに上記で得たメントール含有乳化組成物など(実施例4、比較例5及び7)と、レモン含有乳化組成物など(実施例7、比較例6及び8)のそれぞれのオイルの量が一定(メントール賦香率:2.5%、レモンオイル賦香率:1.0%)になるよう添加し、常法に従って高剪断ミキサーを用いて約50℃で混和し、冷却後ローラーにより圧展成形し、1枚3gとなる各々の板ガムを調製した。
この各板ガムを専門パネラー8名にて、香気香味の官能評価を行った。
これらの結果を下記表4に示す。
【0042】
【表3】
Figure 2004033820
【0043】
【表4】
Figure 2004033820
【0044】
上記表1〜4の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例4、7のメントール含有乳化組成物など又はレモン含有乳化組成物など含有の錠菓(タブレット)、板ガムは、本発明の範囲外となる比較例5〜8のメントール含有乳化組成物など又はレモン含有乳化組成物など含有の錠菓(タブレット)、板ガムと比較して、香味の発現に優れているものであった。
【0045】
(試験例3:ガム試作品の官能評価)
上記表3のB−4の処方〔ガムベース100g、砂糖200g、ブドウ糖40g、コーンシロップ(Bx.85)60g〕にて、但し、粉末香料は比較例4と実施例8のペパーミント粉末香料(各50g)を用いて、上記試験例2と同様に板ガムを調製し、板ガムの香気香味評価を行った。
実施例8の粉末香料を含有した板ガムは、トップの香味がとても強かった。 これに対して、比較例4の粉末香料を含有した板ガムは、トップの香味の発現に欠けることが判明した。
【0046】
【発明の効果】
本発明方法によれば、医薬品、医薬部外品、食品及びドリンクなどの用途に用いることができる香味の発現に優れた油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法が提供される。

Claims (5)

  1. 油溶性化合物と乳化剤を含有する糖アルコール組成物を加熱溶融した後、該加熱溶融物を5〜40℃に保持して、油溶性化合物が乳化剤により被覆されて糖アルコール中に分散されてなる構造物を得ることを特徴とする油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
  2. 油溶性化合物が精油類、アルコール類、アルデヒド類、エステル類、フレーバー類から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
  3. 乳化剤がレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセロールエステル、中鎖トリグリセリドから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
  4. 糖アルコールがソルビトール又はキシリトールである請求項1〜3の何れか一つに記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
  5. エクストルーダー成形機を用いて製造する請求項1〜4の何れか一つに記載の油溶性化合物含有乳化組成物の製造方法。
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