JP2004033524A - シリコーンシート及びこれを用いた外科用包帯 - Google Patents

シリコーンシート及びこれを用いた外科用包帯 Download PDF

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原沢 政純
Yutaka Soneta
曾根田 裕
Toru Takamura
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Abstract

【解決手段】(A)1分子当たり平均2個の珪素原子と結合するアルケニル基をもち、RSiO単位、RR’SiO単位、RSiO1/2単位、R’RSiO1/2単位、SiO単位から選ばれる単位を主要構成単位とするポリオルガノシロキサン;
(B)RHSiO単位、RSiO単位、RXSiO1/2単位及びSiO単位から選ばれる単位を主要構成単位とするオルガノハイドロジェンポリシロキサン;(C)ヒドロシリル化反応触媒
を含有するオルガノポリシロキサンゲル形成用組成物を硬化して得られるシリコーンゲル層に、酸素透過率が3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下の層を接着、積層してなるシリコーンシート。
【効果】これを外科用包帯として使用した場合、患部への粘着性、保護性及び追随性に優れ、かつ全体としての物理的強度に優れる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に外科用包帯として好適に用いられ、適用患部に対する粘着性、保護性及び追随性に優れ、かつ物理的強度にも優れたシリコーンシート及び該シートからなる外科用包帯に関する。
【0002】
【従来の技術】
火傷やその他の外傷等の傷害を受けた皮膚を保護し、傷の治癒を促進させる目的で外科用包帯が使用される。かかる外科用包帯のうち、肥厚性瘢痕やケロイド等の治療には、その患部を外界から完全に保護しつつ関節運動等の機能が妨げられないようにする目的で圧迫包帯が広く使用されている。しかし、この圧迫包帯は関節運動等に追随できず、患者の運動機能を損なわせるという問題がある。これに対し、Burns,第9巻,p201−204には、人体の外形に容易に適合し粘着し得るシリコーンゲルの応用が記載されている。
【0003】
しかしながら、かかるシリコーンゲルは、強い粘着性と良好な追随性を有するが故にべたついて取り扱いにくく、物理的強度が弱く、シートにしたときに破れてしまうという問題がある。この物理的強度を補完すべく、特開平1−34370号公報にはシリコーンゲルシートとシリコーンエラストマーの積層品が提案され、上記欠点は改良されたが、肥厚性瘢痕やケロイド等の治療に時間がかかり、まだ充分とはいえない。
【0004】
これらの欠点を改良するための方法として、有用な示唆がある。そのひとつは、R.Hirshowitzら;Plast.Reconst.Sug.101(5)1173,1998に述べられている。即ち、肥厚性又はケロイド瘢痕を持つ患者では、正常対象者と比較し、血漿中のヒスタミン濃度や瘢痕中の肥満細胞数が増加していることが分かっている。これが瘢痕形成や色素沈着の原因となっていることが肥厚やケロイドの病態であるとみなされている。実際、血漿中のヒスタミンなどの低下により、痒みや不快感の軽減に伴い瘢痕の軟化や退色が見られる。
【0005】
R.Hirshowitzらは、シリコーンから生ずる静電電位が肥満細胞の膜の不安定化をもたらす過酸化酸素などを緩和するためヒスタミンなどの遊離を抑制し、このため肥厚性又はケロイド瘢痕の修復改善を促進するのであろうと推測している。
【0006】
従って、酸素透過度を低下させた膜を被覆することで、傷あとやケロイドの修復改善を妨害する過酸化酸素の発生を抑制できるため、肥厚性又はケロイド瘢痕の修復改善に有用であると考えられる。
【0007】
もうひとつは、大浦 武彦編著;ケロイドと肥厚性瘢痕の治療;克誠堂出版、1994で、大浦は自身のシリコーンゲルの治療結果の考察で以下のようにその保湿性の重要性について述べている。
【0008】
「局所の保湿により瘢痕の治療に効果があることは、古くから認められてきた。Thomsonらは、熱可塑性のあるプラスチックを用いて瘢痕の圧迫療法を行なった結果、治療の初期の段階では局所が浸軟して、それが瘢痕のたい縮に良い結果を与えているとし、圧迫ばかりでなく、局所の保湿が瘢痕の治療に影響していると述べている。Robertsonらは圧迫療法において、局所の保湿と圧迫のいずれかが瘢痕の治療に効果があるかを調査したところ、いずれも良い結果を与えているであろうと推察している。シリコーンゲルの経験から、Daveyはhydration and occlusionが最も大きな作用機序であろうと推察し、Mustoeもhydrationが要因であろうと述べている。富士森はシリコーンゲルと異なるが、やはり保湿作用を主たる目的としたハイドロコロイドパップ材を開発して良好な成績を上げている。彼もこの作用機序について局所の保湿であろうと述べ、アミノ酸軟膏の文入らも局所の保湿作用を重視している。これらの調査からシリコーンなども含めて、局所の保湿が重要な役割をしているものと考えられる。」
【0009】
このように保湿性が傷あとやケロイドの修復改善に大きく影響を与えると考えられていることを考慮すれば、シリコーンゲルシートの透過性はできる限り低く、保湿性が高くなるようにすることで治療効果が大きくなることが考えられる。
【0010】
従来のシリコーンゲルシートは可塑性が高いため、粘着層と剥離紙の離脱性が悪く、そのため、シリコーンシートを剥離する時、必要以上に伸展し、傷あとに貼付した後、徐々に縮むことがあるため局所がひきつれたり不快感をもたれることがあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、シリコーンゲル本来の粘着性、患部保護性、患部追随性に優れた性能を保ちつつ、シリコーンシートの物理的強度を向上させ、取り扱いが容易で、酸素透過が少なく、保湿性に優れた皮膚障害又は疾病の治療に有用な外科用包帯として好適に用いられるシリコーンシート及び外科用包帯を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記の特定のオルガノポリシロキサンゲル形成用組成物を硬化して得られるシリコーンゲル層に、酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下の層を接着させることにより、皮膚への適用面においてはシリコーンゲルの優れた性能を保ち、かつ他方の面では粘着性がなく、取り扱いが容易で全体としての物理的強度が増強された外科用包帯として有用なシリコーンシートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
従って、本発明は、
(A)1分子当たり平均2個の珪素原子と結合するアルケニル基をもち、但し珪素原子と結合するアルケニル基を1個より多くもつ珪素原子はなく、残余の珪素原子と結合する有機基がアルキル基又はアリール基から選択され、RSiO単位、RR’SiO単位、RSiO1/2単位、R’RSiO1/2単位、SiO単位(ここに、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又はアリール基、R’は炭素原子数2〜6のアルケニル基である)から選ばれる単位を主要構成単位とする、25℃で100〜100000csの粘度をもつポリオルガノシロキサン;
(B)1分子当たり少なくとも2個の珪素原子と結合する水素原子をもち、RHSiO単位、RSiO単位、RXSiO1/2単位及びSiO単位(式中、Rは先に述べたのと同じ意義をもち、XはH又はRを表す)から選ばれる単位を主要構成単位とし、且つ25℃で1000cs以下の粘度をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
(C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒
を含有してなり、(A),(B)成分の割合が、(A)成分中のアルケニル基1個当たり、(B)成分により提供される珪素原子と結合する水素原子の数が0.5〜1.0個存在する割合であるオルガノポリシロキサンゲル形成用組成物を硬化して得られるシリコーンゲル層に、酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下の層を接着、積層してなることを特徴とするシリコーンシートを提供する。
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係るオルガノポリシロキサンゲル形成用組成物の(A)成分のポリオルガノシロキサンは、オルガノポリシロキサンゲル(シリコーンゲル)形成用組成物の主剤(ベースポリマー)であり、1分子当たり平均2個の珪素原子と結合するアルケニル基をもち、但し珪素原子と結合するアルケニル基を1個より多くもつ珪素原子はなく、残余の珪素原子と結合する有機基がアルキル基又はアリール基から選択され、RSiO単位、RR’SiO単位、RSiO1/2単位、R’RSiO1/2単位、SiO単位から選ばれる単位を主要構成単位とする。
【0015】
この場合、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又はアリール基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、フェニル、トリル、キシリル等が挙げられる。また、R’は炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、具体的にはビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル等が挙げられる。
【0016】
ここで、上記単位の割合は適宜選定し得るが、(A)成分のオルガノポリシロキサンが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンである場合は、好ましくは下記の通りである。
SiO単位:90〜99.99モル%、特に95〜99.9モル%、
RR’SiO単位:0〜10モル%、特に0〜5モル%、
SiO1/2単位:0〜5モル%、特に0〜1モル%、
R’RSiO1/2単位:0〜5モル%、特に0〜1モル%
でかつ、RSiO1/2単位とR’RSiO1/2単位との合計が0.01〜5モル%、特に0.1〜1モル%であることが好ましい。
【0017】
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンがSiO単位及び/又は三官能性シロキサン単位(オルガノシルセスキオキサン単位)を含有する、分岐状又は三次元網状構造のものである場合には、上記単位の割合は、好ましくは下記の通りである。
SiO単位:40〜60モル%、特に45〜55モル%、
R’RSiO1/2単位:1〜20モル%、特に2〜10モル%、
SiO1/2単位:0〜59モル%、特に2〜58モル%
でかつ、RSiO1/2単位とR’RSiO1/2単位との合計が40〜60モル%、特に45〜55モル%であることが好ましい。
【0018】
なお、上記の各シロキサン単位に加えて更にRSiO単位、RR’SiO単位、RSiO3/2単位、R’SiO3/2単位の1種又は2種以上を0〜30モル%程度含有することは任意である。
【0019】
上記ポリオルガノシロキサンの粘度は、25℃で100〜100000cs、好ましくは500〜50000cs、更に好ましくは1000〜20000csである。
【0020】
次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子当たり少なくとも2個、好ましくは3個以上の珪素原子と結合する水素原子(SiH基)をもち、RHSiO単位、RSiO単位、RXSiO1/2単位及び必要に応じてSiO単位(式中、Rは先に述べたのと同じ意義をもち、XはH(水素原子)又はRを表す)を含む。
【0021】
この場合、これら単位の割合は、適宜選定し得るが、好ましくは下記のものを使用することができる。
RHSiO単位:0〜100モル%、特に1〜99モル%、
SiO1/2単位:0〜50モル%、特に0〜2モル%、
HSiO1/2単位:0〜100モル%、特に0〜2モル%、
SiO単位:0〜60モル%、
SiO単位:0〜99モル%
が好ましい。
【0022】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度は、25℃で1000cs以下、好ましくは500cs以下である。この場合、粘度の下限は0.1cs以上、特に0.5cs以上であることが好ましい。
【0023】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、一分子中に2個以上、好ましくは3個以上の珪素原子に結合した水素原子(SiHで表されるヒドロシリル基)を有する必要があり、通常、3〜500個、好ましくは3〜200個、より好ましくは3〜100個程度のSiH基を有することが好ましい。
【0024】
一分子中に2個以上、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、得られるシリコーンゴムの物理特性、組成物の取扱作業性の点から、一分子中の珪素原子の数(又は重合度)は通常2〜300個、好ましくは4〜150個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、0.1〜1000mPa・s、より好ましくは0.5〜500mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが使用される。
【0025】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0026】
上記(A),(B)成分の割合は、(A)成分中のアルケニル基1個当たり、(B)成分中の珪素原子と結合する水素原子(SiH基)の数が0.5〜1.0個、特に0.7〜1.0個存在する割合である。SiH基が少なすぎるとシリコーンゲル硬化物(オルガノポリシロキサンゲル硬化物)が軟らかすぎて取扱いが困難となる場合があり、多すぎると該ゲル硬化物が硬くなりすぎて、粘着性、追従性に劣る場合がある。
【0027】
(C)成分のヒドロシリル化反応触媒としては、従来より公知の白金族金属系触媒が使用でき、白金又は白金化合物が好ましい。その添加量は触媒量であり、通常白金族金属として、(A),(B)成分の総量1000000重量部に対して0.1〜1000重量部、好ましくは1〜500重量部の割合で用いることができる。
【0028】
また、オルガノポリシロキサン形成用組成物には、任意成分として、シリカエアロジル、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、結晶性シリカ(石英粉)、溶融シリカ、破砕シリカ等のシリカ系無機質充填剤や、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子)等の有機樹脂微粒子等の充填剤を好ましくは透明性を損なわない範囲で、適宜配合することができる。
【0029】
なお、シロキサンゲル形成用組成物には、アセチレンアルコール、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の付加反応制御剤を適宜添加することができる。
【0030】
上記、シロキサンゲル形成用組成物は、これを好ましくはシート状に形成、硬化してシリコーンゲル層を得るが、この場合、硬化は60〜150℃、特に80〜120℃で、1〜30分、特に5〜10分という条件を採用することができる。なお、シートに形成する場合、その厚さは0.1〜10mm、好ましくは0.2〜10mm、特に1〜5mmであることが好ましい。
【0031】
また、本発明のシリコーンシートのシリコーンゲル層の硬度は、JISK2220或いはASTMD1403(1/4コーン)に規定される針入度が10以上であることが好ましく、特に20〜200であるのが好ましい。この針入度が10未満であると、粘着性、形状追随性に乏しく、逆に針入度が200を超えると、あまりにも柔らかすぎるために得られるゲルの取り扱いが極めて困難となる場合がある。本発明のシートのシリコーンゲル層は一般に粘着性を有するが、その粘着力は特に限定されない。
【0032】
本発明のシリコーンシートは、上記付加反応硬化型のシロキサンゲル形成用組成物を例えばシート状とし、硬化したのち又は硬化前に酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下、好ましくは1×10−12〜3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg、更に好ましくは1×10−11〜1×10−9cc・cm/cm・sec・cmHgの層を接着、積層し、組成物硬化前に該層を積層した場合であれば、その後組成物を硬化してシリコーンゲル層の片面に低酸素透過率層が形成されたシリコーンシートを得る。
【0033】
この場合、上記低酸素透過率層の形成には、片面に粘着剤がコーティングしてある酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下のフィルム又は接着剤を使用することができる。
【0034】
具体的に、片面に粘着剤がコーティングしてある酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下のフィルムにおいて、粘着剤としては、アクリル系、ポリオレフィン系、特殊合成ゴム系、合成ゴム系、ゴム系、ペトロラクタム系、ブチルゴム系、シリコーン系の粘着剤がある。また、酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下のフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリイミド系、テトラフルオロエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリビニル酢酸アルコールエーテル系等が使用出来る。本発明のシリコーンシートを外科用包帯として用いる場合、フィルムの厚さは重要で、患部に十分追従する必要があり、0.03〜0.3mmが好ましく、特に0.05〜0.10mmが好ましい。
【0035】
なお、上記フィルムの粘着剤の粘着力は限定されず、極めて低いものから極めて高いものまで使用でき、要はシリコーンゲル層と肌との粘着力よりもシリコーンゲル層と粘着剤の粘着力が大きければ良い。
【0036】
また、酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下のフィルムは、透明から半透明のものを用いたほうが、外科用包帯としての臨床での使用に際して患部が包帯上から観察でき、望ましい。
【0037】
一方、酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下の接着剤層としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂類や、変性シリコーンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、チオコール、天然ゴム等があるが、透明性、柔軟性から変性シリコーンゴムが望ましい。付加反応硬化型シロキサンゲル形成用組成物(シリコーンゲルとなる組成物)を薄膜状に展開し、硬化又は硬化させずにその上に前記接着剤を塗布、積層してシート状となし、組成物を硬化させるか又はそのままで製造できる。また、離型処理したPETフィルム上に前記接着剤をコーティングし、未硬化又は硬化させたのち付加反応硬化型シロキサンゲル形成用組成物(シリコーンゲルとなる組成物)を薄膜状に展開し、同時硬化して得られる。
【0038】
本発明シートは、その片面がシリコーンゲル層となっているので、凹凸のある面への密着性に優れており、かかる必要性のある種々の用途に用いることができるが外科用包帯として用いるのが好ましい。これを外科用包帯として用いる場合は、ゲル面に剥離性材料を貼着しておき、使用直前にこれを剥がして使用することが望ましい。このような剥離材として、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの有機樹脂フィルム、これらの有機樹脂を被覆した紙、離型処理したフィルム/紙等が挙げられる。
【0039】
本発明シートからなる外科用包帯の寸法は特に限定されないが、外科用包帯としての取り扱い上、1〜5mmの厚さであることが好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、25℃で1000csの粘度を有するポリジメチルシロキサン100g、平均重合度が30で、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された主鎖中に3個のメチルハイドロジェンシロキサン単位を含有する、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体を5.5g、及び塩化白金酸から誘導されたビニル基含有シロキサン錯体を(A),(B)成分の合計重量に対して白金濃度10ppmになるように混合してシリコーンゲル形成用組成物を調製し、この組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に挟んで3mmの厚さになるようにシート状に加熱加圧加硫し、シリコーンゲル層を形成した後、片面のPETを剥がし、その上に低酸素透過率層として寺岡製作所製表面保護シートテープNo.947(酸素透過率:0.3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg)(0.07mmのポリエチレンフィルムにアクリル粘着剤付き)をエアーの入らないように積層し、反対面のPETを剥がし、剥離材としてエンボス加工されたポリエチレンフィルムを貼り付けることにより、ゲル状シートを得た。なお、上記組成物を硬化させて得られたシリコーンゲルの針入度(ASTMD1403)は106であった。
【0042】
このシートは、上面に剥離材としてエンボスポリエチレンフィルムが形成されており、エンボスポリエチレンフィルムからの取り外し、包帯としての取り扱いが容易で、患部への追随性に優れ、酸素透過度を低下させた層を形成することで、傷あとやケロイドの修復改善を妨害する過酸化酸素の発生を抑制できるため、肥厚性又はケロイド瘢痕の修復改善に有用で、更に保湿作用のある治療効果の極めて高いシリコーンゲル包帯となった。
【0043】
[実施例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、25℃で1000csの粘度を有するポリジメチルシロキサン50g、表面がトリメチルシリル基及びビニルジメチルシリル基で封鎖されたポリメチルシルセスキオキサン粒子50g、平均重合度が30で両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された主鎖中に3個のメチルハイドロジェンシロキサン単位を含有する、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体を5.5g、及び塩化白金酸から誘導されたビニル基含有シロキサン錯体を(A),(B)成分の合計重量に対して白金濃度10ppmになるように混合して、シリコーンゲル形成用組成物を調製し、この組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に挟んで3mmの厚さになるようにシート状加熱加圧加硫し、シリコーンゲル層を形成した後、片面のPETを剥がし、その上に低酸素透過率層として寺岡製作所製表面保護シートテープNo.948A(酸素透過率:0.3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg)(0.06mmのポリエチレンフィルムにポリオレフィン粘着剤付き)をエアーの入らないように積層し、反対面のPETを剥がし、剥離材としてエンボス加工されたポリエチレンフィルムを貼り付け、ゲル状シートを得た。なお、上記組成物を硬化させて得られたシリコーンゲルの針入度は68であった。
【0044】
このシートは、上面に剥離材としてエンボスポリエチレンフィルムが形成されており、エンボスポリエチレンフィルムからの取り外し、強度、粘着力があって、包帯としての取り扱いが容易で、患部への追随性に優れ、酸素透過度を低下させた層を形成することで、傷あとやケロイドの修復改善を妨害する過酸化酸素の発生を抑制できるため、肥厚性又はケロイド瘢痕の修復改善に有用で、更に保湿作用のある治療効果の極めて高いシリコーンゲル包帯となった。
【0045】
[実施例3]
離型処理されたPETフィルムの上に低酸素透過率層としての変性シリコーンゴム[スーパーXクリア((酸素透過率:1×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg)セメダイン製)]を0.1mmにコーティングし、120℃で10分硬化させ、次いで実施例1のシリコーンゲル形成用組成物をこの変性シリコーンゴムの上に流し込み、離型処理されたPETで挟み込み、3mmの厚さになるようにシート状に加熱加圧加硫し、シリコーンゲル層を形成して、積層シートを得た。シリコーンゲル層側のPETを剥がし、剥離材としてエンボス加工されたポリエチレンフィルムを貼り付けることにより、ゲル状シートを得た。
【0046】
このシートは、上面に剥離材のエンボスポリエチレンフィルムが形成されており、エンボスポリエチレンフィルムからの取り外し、包帯としての取り扱いが容易で、患部への追随性に優れ、酸素透過度を低下させた層を形成することで、傷あとやケロイドの修復改善を妨害する過酸化酸素の発生を抑制できるため、肥厚性又はケロイド瘢痕の修復改善に有用で、更に保湿作用のある治療効果の極めて高いシリコーンゲル包帯となった。
【0047】
[比較例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、25℃で1000csの粘度を有するポリジメチルシロキサン100g、平均重合度が30であり、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された主鎖中に3個のメチルハイドロジェンシロキサン単位を含有する、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体を5.5g、塩化白金酸から誘導されたビニル基含有シロキサン錯体を(A),(B)成分の合計重量に対して白金濃度10ppmになるように混合して、シリコーンゲル形成用組成物を調製し、この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルムに挟んで3mmの厚さになるようにシート状となし、加熱加圧加硫し、ゲル状シートを得た。なお、この組成物を硬化させて得られたシリコーンゲルの針入度は110であった。このシートは、低酸素透過率層が形成されていないため、包帯としての取り扱いが困難で、治療作業中に破断してしまった。
【0048】
[比較例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、25℃で1000csの粘度を有するポリジメチルシロキサン50g、表面がトリメチルシリル基及びビニルジメチルシリル基で封鎖されたポリメチルシルセスキオキサン粒子50g、平均重合度が30であり、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された主鎖中に、メチルハイドロジェンシロキサン単位を3個含有する、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体を5.5g、及び塩化白金酸から誘導されたビニル基含有シロキサン錯体を(A),(B)成分の合計重量に対して白金濃度10ppmになるように混合して、シリコーンゲル形成用組成物を調製し、この組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に挟んで3mmの厚さになるようにシート状加熱加圧加硫することにより、ゲル状シートを得た。なお、この組成物を硬化させて得られたシリコーンゲルの針入度は70であった。このシートは、ゲルの強度、粘着力があり、何とか取り扱いが出来たが、患部の治療に長時間かかり、シリコーンゲル包帯としては満足できる効果を得るのに長時間を要した。
【0049】
【発明の効果】
本発明のシリコーンシートは、これを外科用包帯として使用した場合、患部への粘着性、保護性及び追随性に優れ、かつ全体としての物理的強度に優れ、効率よくこれを製造でき、取り扱い作業性に極めて優れ、治療効果の高いものである。

Claims (3)

  1. (A)1分子当たり平均2個の珪素原子と結合するアルケニル基をもち、但し珪素原子と結合するアルケニル基を1個より多くもつ珪素原子はなく、残余の珪素原子と結合する有機基がアルキル基又はアリール基から選択され、RSiO単位、RR’SiO単位、RSiO1/2単位、R’RSiO1/2単位、SiO単位(ここに、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又はアリール基、R’は炭素原子数2〜6のアルケニル基である)から選ばれる単位を主要構成単位とする、25℃で100〜100000csの粘度をもつポリオルガノシロキサン;
    (B)1分子当たり少なくとも2個の珪素原子と結合する水素原子をもち、RHSiO単位、RSiO単位、RXSiO1/2単位及びSiO単位(式中、Rは先に述べたのと同じ意義をもち、XはH又はRを表す)から選ばれる単位を主要構成単位とし、且つ25℃で1000cs以下の粘度をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
    (C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒
    を含有してなり、(A),(B)成分の割合が、(A)成分中のアルケニル基1個当たり、(B)成分により提供される珪素原子と結合する水素原子の数が0.5〜1.0個存在する割合であるオルガノポリシロキサンゲル形成用組成物を硬化して得られるシリコーンゲル層に、酸素透過率が25℃で3×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下の層を接着、積層してなることを特徴とするシリコーンシート。
  2. シリコーンゲル層の針入度が10以上である請求項1記載のシリコーンシート。
  3. 請求項1又は2記載のシリコーンシートからなる外科用包帯。
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