JP2004028215A - フォーセットバルブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】互いに摺動する2つの弁体20、30のいずれもが非晶質体で形成するとともに、弁体20、30の摺動面における互いのユニバーサル硬度を異ならしめる。また、非晶質体の摺動面におけるユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaの範囲とする。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シングルレバー混合栓、サーモスタット混合栓をはじめとする水栓や湯水混合栓、医療用サンプリングバルブ、薬液用バルブ等を構成する可動弁体と固定弁体とからなるフォーセットバルブに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、水栓や湯水混合栓、あるいは医療用サンプリングバルブや薬液用バルブを構成するフォーセットバルブは、2枚の円盤状をした可動弁体と固定弁体を具備し、この2つの弁体を互いに摺接させた状態で相対摺動させることによって、各弁体に形成した流体通路の開閉を行うようになっている。そして、この種のフォーセットバルブは互いが絶えず摺り合わされた状態で使用されることから、フォーセットバルブを構成する可動弁体や固定弁体は耐摩耗性及び耐食性に優れるアルミナ質焼結体により形成したものが用いられていた。
【0003】
また、上記フォーセットバルブは、弁体同士の操作力を低減するために弁体間にグリース等の潤滑剤を介在させて使用されていた。
【0004】
ところが、潤滑剤を使用したフォーセットバルブでは、弁体同士の摺動により比較的短い期間で潤滑剤が流出して無潤滑状態となるため、摺動面間で引っかかりや異音を生じるとともに、徐々にレバーの操作力が上昇して、ついには互いの弁体同士が貼り付いて動かなくなるリンキング(凝着)を生じるといった課題があった。しかも、潤滑剤の種類によっては長期使用中に劣化し、ゴミ等の付着が発生して摺動特性を悪化させる恐れがあるとともに、吐水時に潤滑剤が流出すると人体に害を与える恐れもあった。
【0005】
そこで、近年、無潤滑状態でも摺動させることが可能なフォーセットバルブとして、互いに摺動する弁体のうち、少なくともいずれか一方の弁体の摺動面に自己潤滑性を有するとともに、耐摩耗性に優れた非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を被着したフォーセットバルブが提案されている(特開平3−223190号公報)。
【0006】
しかしながら、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜は、弁体を形成するセラミック焼結体との密着性がそれほど良くないという問題点があり、弁体の表面を若干粗くすることによりアンカー効果でもって弁体との密着力を向上させるようになっていた。
【0007】
ところが、水栓や湯水混合栓等のように浄水器を組み付けたものにあっては、水栓や湯水混合栓内部の水圧が上昇して摺動面間に若干の隙間ができ、水漏れを生じる恐れがあるために、弁体の摺動面をより平滑に仕上げるとともに、弁体同士の押圧力を高める必要があるが、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜の表面を平滑に仕上げるためには弁体の表面も平滑に仕上げなければならず、その結果、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜の密着力が得られず、剥離するといった問題があった。
【0008】
そこで、平滑に仕上げた弁体表面に非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を形成するために、特開平5−79069号公報、特開平6−227882号公報、特開平9−292039号公報、特開平10−89506号公報では、弁体と非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜との間に例えば窒化物等の中間層を介在させて接合することにより密着性を高めるようにしたフォーセットバルブが提案されている。
【0009】
これらの提案においては、少なくとも一方の弁体の摺動面に、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を被着しているのみの記載があり、他方の弁体は多結晶体からなるセラミック焼結体か、あるいは両方の弁体の摺動面が非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜で形成していると考えられるが、いずれにせよ従来から双方の弁体の硬度を同一の硬さのものを用いていた。
【0010】
従って、硬度が高く、同一の硬度の弁体同士を互いに摺動させると、スティックスリップ現象と呼ばれる動作時の微妙な引っかかりや、操作時に「キュッ、キュッ」といった異音が発生するといった課題があった。
【0011】
即ち、硬さが同じ弁体だと、片側の弁体が相手側を摩耗できず、両方の弁体が同時に摩耗しようとする。しかし、硬い弁体同士であるので、その重なる摺動面が部分的にリンキングを起こし、その状態でむりやり摺動させため、振動が発生し、異音となると考えられる。
【0012】
特に、汚い水質にて操作を繰り返した場合、水中の炭酸カルシウムや鉄分、亜鉛、クロム、ナトリウム、塩素成分などが、長期使用の際に弁体の摺動面に付着し、その付着物が原因で弁体間に隙間が形成され、付着物の上を弁体が摺動する。そして、付着物とその他の弁体との摩擦係数が異なる為、動作時に振動が生じ、異音となると考えられる。あるいは、付着物があることによって、摺動面の平面度が損なわれ、動作時に振動が生じ、異音が発生するという問題点があった。
【0013】
この現象は、上述の固定弁体と可動弁体のいずれかの表面に被着する非晶質体と多結晶体との間で摺動が行われた場合に多く発生する。この理由は、多結晶体の表層に存在するボイドや欠陥に、アンカーとなって水中に含まれる炭酸カルシウム等の成分が付着しやすく、また、一度付着した成分が核となって、さらに付着が進行し、弁体間に隙間を形成すると考えられるからである。
【0014】
一方、双方の弁体の摺動面に非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を被着した場合、上述のように双方が同じ硬さを有しているので、硬い表層同士が摺動すると両表面が共に摩耗しやすく、硬質な表面同士が鏡面状態となり、リンキング(凝着)が発生しやすいという問題点もあった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を鑑み、本発明のフォーセットバルブは、互いに摺動する2つの弁体の双方の摺動面を非晶質体で形成するとともに、前記弁体の摺動面における互いのユニバーサル硬度を異ならしめたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明のフォーセットバルブは、前記非晶質体の摺動面におけるユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaであることを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明のフォーセットバルブは、前記一方の弁体の摺動面に非晶質ダイアモンド状硬質炭素膜を形成し、且つ前記他方の弁体の摺動面に非晶質シリコン膜を形成したことを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は本発明のフォーセットバルブ11を示す斜視図である。また、図2はフォーセットバルブ11の一部を拡大した部分断面図である。さらに、図3は本発明のフォーセットバルブ11を示す一実施例の図で、(A)はフォーセットバルブ11が閉じた状態を示す斜視図であり、(B)はファーセットバルブ11を開いた状態を示す斜視図である。
【0020】
可動弁体20は、図1に示すように、上下面を貫通する流体通路22を備えた円盤状をしたもので、アルミナ質焼結体により形成するとともに、その表面には図2に示すように、中間層23を介して非晶質体24を被着し、摺動面21を形成してある。
【0021】
固定弁体30は上下面を貫通する流体通路32を備え、可動弁体20より大きな円盤状をしたもので、可動弁体20同様、アルミナ質焼結体により形成するとともに、その表面に非晶質体34を被着して、摺動面31を形成してある。
また、非晶質体24、34とは、X線回折にて、非晶質の回折パターンを示すものであればよく、若干の結晶ピークを示すものであっても良い。
なお、可動弁体20と固定弁体30の説明上、以下に弁体20、弁体30と称すこともある。
【0022】
また、各弁体20,30の摺動面21、31は、水漏れ防止するためにその平面度を1μm以下とするとともに、表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で0.2μm以下としてある。即ち、双方の弁体20、30の摺動面21、31を算術平均粗さ(Ra)で0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下とし、かつその平面度を1μm以下としたのは、双方の弁体20,30の摺動面21,31における表面状態が上述した範囲を超えて粗くなると、特に浄水器を組み付けたものにあっては、弁体20、30間に大きな水圧が加わり、水漏れを生じる恐れがあるからである。
【0023】
本発明では、上記可動弁体20もしくは固定弁体30に非晶質体24、34を形成するとともに、その摺動面21、31における互いのユニバーサル硬度を異ならしめることで、無潤滑の使用に耐え、スティックスリップ現象や異音の発生がなく、長期間にわたって滑らかな摺動特性が得られるものである。
【0024】
この理由としては、非晶質体24、34は結晶の粒界やボイド等の欠陥を持たないので、結晶質の材質に比べてスムースな摺動特性を得られると考えられる。また、一方の硬度が高く、他方を低くしているので、炭酸カルシウム等の成分や異物等が非晶質体24、34間に介在しても、柔らかい非晶質体側で、上記成分等を硬い非晶質体によって適度に摩耗しながら摺擦力を吸収して摺動し、これにより摩擦係数が低減できスムーズな摺動特性が得られるものである。その結果、上記成分で隙間を発生させることがないので、摺動面が部分的にリンキングを起こすことなく、異常な力により摺動させることはない。従って、スティックスリップ現象や異音の発生がなく滑らに摺動させることができるものである。
この場合、どちらの弁体20、30の硬度を高くしても構わない。
【0025】
特に本発明はユニバーサル硬度が互いに異なるものであれば、その硬さの大小は問わない。その理由は、まず、少しでも差があれば同じ硬度同士のものに比べてスムーズな摺動特性となり、異音を抑えることが可能となるからである。
【0026】
また、好ましくは、弁体20、30の摺動面21、32におけるお互いのユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaとする。ユニバーサル硬度の差が5GPa未満の差であれば、弁体20、30間の硬度差があまり変わらなくなってくるので、硬いもの同士の摺動特性に近づいていき、グリスが介在しない状態では、両方の弁体20、30が共に激しく摩耗しやすい状態となる可能性が高くなる。また、ユニバーサル硬度の差を50GPaよりも大きくした場合、柔らかい硬度側のいずれかの摺動面21、31が著しく摩耗してしまい、長寿命とはならなくなる。従って、摩耗を抑え、長寿命の弁体20、30を提供するためにも、弁体20、30の摺動面21、31におけるユニバーサル硬度の差を5GPa〜50GPaの範囲とするのが好ましく、特に好ましくは5〜15GPaであることが良い。
【0027】
ユニバーサル硬度の測定方法としては、フィッシャースコープH100V(H.Fisher社製)を使用し、圧子によって測定して求めることができる。圧子としてビッカース角錐圧子を用い、非晶質体24、34から不可逆的な弾性変形を生じるまで、6秒毎に20mNの荷重をかけ続け、その時の荷重値および圧子の進入深さを測定することによって得られる最大荷重値(Fmax)および最大進入深さ(hmax)から、HU=F(N)/26.43h2[mm]で、ユニバーサル硬度(HU)を算出することができる。
【0028】
このようなユニバーサル硬度差を達成するために、一方の弁体をユニバーサル硬度が5GPa〜20GPaの範囲のものを選択し、他方の弁体を15GPa〜55GPaの範囲とすれば良い。
【0029】
ユニバーサル硬度が5GPa〜20GPaの範囲にある、いずれかの非晶質体としては、例えば、図2において固定弁体30上に形成するところに用いられ、材質として非晶質シリコン、非晶質ゲルマニウム、非晶質炭化珪素、硼珪酸ガラス等があげられ、さらに、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素にフッ素をドープさせることによって軟質化し、含浸させたフッ素成分によって表面における平滑性を向上させた非晶質体であっても良い。これらの非晶質体は薄膜であってもバルク体であっても良い。このように、摺動面にユニバーサル硬度が5〜20GPaの範囲にある、いずれかの非晶質体は、アルミナを主成分とするような焼結体と比較して、他方弁体のいずれかの非晶質体との摺動によって摩耗したとしても均一に摩耗させることができるとともに、相手材との引っかかりを少なくすることができるため、異音の発生やスティックスリップ現象を効果的に防止することができる。
【0030】
特に、前記非晶質体34に非晶質シリコン膜を用いたものにおいては、異音の発生やスティックスリップ現象を効果的に防止することができるとともに、お湯等に曝されても特性劣化等を生じることがなく、またアルミナ質焼結体との密着性も良く、直接成膜することも容易にでき、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜と摺動する相手材として好適である。
【0031】
なお、非晶質シリコン膜の形成は、基材をターゲットと対向するように真空槽内に配置し、真空槽内を排気した後、ガス導入口からアルゴンガスを真空槽内に導入し、スパッタリング法によって非晶質シリコン膜を形成すればよい。そして、硬度を変化させるには、ドープする不純物量を変化させたり、スパッタリングの際の電流量や、温度、圧力などで調整することができる。
【0032】
ユニバーサル硬度が15GPa〜55GPaの範囲にある、いずれかの非晶質体としては、例えば、図2において可動弁体20上に中間層23を介して形成するところに用いられ、材質として非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜があげられる。この非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜は、実質的に炭素からなり、若干の結晶質を含んでいても良いが基本的に非晶質構造をしたもので、規則的な結晶構造を持つダイヤモンド、立方晶窒化硼素(cBN)、六方晶窒化硼素(hBN)とは異なる組成のものである。
【0033】
この非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜をグラファイトやダイヤモンドの同定によく用いられるラマン分光分析装置を使って調べると、ダイヤモンドのピーク位置である1333cm−1と、グラファイトのピーク位置である1550cm−1の近傍にそれぞれピークを有するものである。なお、本発明のフォーセットバルブ11に用いるダイヤモンド状硬質炭素膜は、ピークがダイヤモンドあるいはグラファイトのいずれか一方に偏っていても良く、好ましくはダイヤモンドのピーク位置に偏っている方が良い。
【0034】
このような非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜は、ユニバーサル硬度が20〜50GPaと非常に硬い硬度を有しているため、相手側のユニバーサル硬度が低くなっていれば摺動においても殆ど摩耗することがない。例えば、図2に示すように非晶質体24に非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を形成し、その摺動する相手側の固定弁体30の非晶質体23にユニバーサル硬度が低い非晶質シリコン膜を形成するのが好ましい。
【0035】
また、例えば、図2に示すように可動弁体20に中間層23を介して非晶質膜24として非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を被着する場合は、その膜厚として、0.5μm〜1.2μmの範囲が必要で、0.7μm〜1.2μmの範囲であることが好ましい。そして、非晶質シリコン膜34を被着する場合は、その膜厚としては0.03μm〜2μmの範囲が必要で、0.7μm〜1.2μmの範囲であることが好ましい。
【0036】
さらに、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜中に、ジルコニウム、タングステン、チタンのうち少なくとも一種以上の金属と珪素を含有させても構わない。このようにジルコニウム、タングステン、チタンのうち少なくとも一種以上の金属と珪素を含有させることにより、膜内部における残留応力を低減して結合力を高めることができる。その為、可動弁体20との密着力をより強固なものとすることができるとともに、ユニバーサル硬度で55GPa以上の高硬度を持った膜とすることができる。なお、ジルコニウム、タングステン、チタンのうち少なくとも一種以上の金属と珪素を含有させた非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜は、これらの成分を含まない非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜とは異なり、ラマン分光分析装置における測定では1480cm−1の近傍に一つにピークを有するものである。
【0037】
また、例えば、可動弁体20の非晶質体24にダイヤモンド状硬質炭素膜を形成する場合、ダイヤモンド状硬質炭素膜との密着性を高めるために使用する中間層23としては、両者の密着性を高めることができるものではあれば特に限定するものではなく、例えば、可動弁体20側からTi膜とSi膜をこの順序で積層した中間層23を用いれば良い。
【0038】
なお、上述のような可動弁体20に非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜と中間層23を被着する手段や、固定弁体30に非晶質シリコン膜を被着する手段としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PVD法、CVD法等の薄膜形成手段を用いることができ、例えば、低温で成膜が可能なプラズマCVD法により被着するには、まず、チャンバー室内に各被膜を被着するためのソースガスとキャリアガスを供給し、可動弁体20を配置したカソード(陽極)電極とアノード(陰極)電極との間に電圧を印加することでカソード(陽極)電極から引き出された電子をソースガス及びキャリアガスと衝突させてプラズマを発生させ、プラズマ中のソースガス成分を可動弁体20の表面に堆積させれば良い。そして、チャンバー室に供給するソースガスとキャリアガスを置き換えて可動弁体20の表面側からTi膜、Si膜、ダイヤモンド状硬質炭素膜といった順序で被着することにより成膜することができる。
【0039】
以上の本発明の実施形態では、固定弁体30の摺動面31を、ユニバーサル硬度が5〜20GPaの範囲にある非晶質シリコン膜による非晶質体により形成し、可動弁体20にはユニバーサル硬度が20〜55GPaの範囲にある非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜24を被着した2枚の弁体20、30として説明したが、固定弁体30と可動弁体20の材質を逆にして用いたものであっても同様の効果を得ることができる。また、ユニバーサル硬度の差があれば、どのような非晶質体であっても使用できる。特に5GPa〜50GPaの範囲としたものを用いることが好ましい。
【0040】
また、可動弁体20及び固定弁体30は、セラミック焼結体により形成することが好ましい。即ち、弁体20、30を樹脂で形成したものでは非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜や非晶質シリコン膜を被着することができず、また、金属で形成したものではセラミック焼結体に比べ硬度が小さいことから、相手弁体30、20との押圧力により変形し、その表面に被着する非晶質体24、34を破損させてしまう恐れがあるからである。
【0041】
これに対し、セラミック焼結体は高硬度を有することから弁体20、30との押圧力により変形することがないため、その表面に被着する非晶質体24、34を破損させることがなく、また、高い加工精度が得られることから、弁体20、30の表面を滑らかな面に仕上げ、その表面に被着する非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜や非晶質シリコン膜の表面を弁体20、30の表面に倣った平滑かつ平坦な面とすることができる。
【0042】
特に、セラミック焼結体としては、アルミナを主成分とするセラミック焼結体により構成するのが好ましい。アルミナ質焼結体は、ヤング率が250〜400GPaで、かつビッカース硬度(Hv1)が12GPaより大きな値を有するため、弁体20、30との押圧力を大きくしても摺動面21、31を変形させることがなく、また、耐薬品性にも優れることから長期間に渡って使用可能なフォーセットバルブ11を提供することができる。
【0043】
また、アルミナ質焼結体を用いる場合、主原料のAl2O3に対し、SiO2、MgO、CaOのうち1種以上の焼結助剤を添加して1500〜1700℃の温度で焼成すれば良い。
【0044】
本発明のフォーセットバルブ11の動作としては、図3に示すように、可動弁体20と固定弁体30とを無潤滑状態で互いの摺動面21、31同士を摺接させ、レバー40を動かすことによって、可動弁体20を矢印の方向に摺動させ、互いの弁体20、30に備える流体通路22、32を合致、非合致させることで開閉を行い、供給流体の流量調整を行うようになっている。
【0045】
かくして、本発明の構成によれば、双方ともに非晶質体24、34で形成されていることにより、多結晶体に見られるような粒界がなくなり、結晶間の欠陥やボイドが表層にないので、水中に含有される炭酸カルシウムや鉄分、クロム、亜鉛、ナトリウム、塩素成分などが摺動面の表面に付着し難くなり、可動弁体20の摺動面21には、自己潤滑性に優れ、レバー40の操作力を低減して滑らかに摺動させることができる。
【0046】
また、摺動面の算術平均粗さ(Ra)や平坦度が同様であっても、摺動面が非晶質体24、34同士で構成されなければその効果は得られない。即ち、双方の摺動面21、31は、算術平均粗さ(Ra)で0.2μm以下の平滑面としたとしても、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜と摺動する固定弁体30の摺動面31のユニバーサル硬度を互いに異ならしめた非晶質体24、34によって形成してあることから、炭酸カルシウム等の成分や異物等が非晶質体24、34間に介在しても、柔らかい非晶質体側で、上記成分等を硬い非晶質体によって適度に摩耗しながら摺擦力を吸収して摺動するため、摩擦係数を低減させることができ、スムーズな摺動特性が得られる。その結果、上記成分で隙間を発生させることがないので、摺動面が部分的にリンキングを起こすことなく、異常な力により摺動させることはない。従って、スティックスリップ現象や異音の発生がなく滑らに摺動させることができるものである。
【0047】
さらに、ユニバーサル硬度が5〜20GPaと比較的小さな硬度を有することで摩耗を抑え、長寿命の弁体20、30を提供することができる。
【0048】
なお、本発明の実施形態では、フォーセットバルブ11を例にとって説明したが、医療用サンプリングバルブ、薬液用バルブに使用できることは勿論のこと、さらにはボールバルブやその他の各種弁部材、あるいはメカニカルシール、軸受けなど様々な摺動部材にも適用できることは言うまでもない。
【0049】
また、本発明中では2枚の弁体を用いて説明しているが、複数枚の弁体であっても、相対する弁体の摺動面21、31が非晶質体で形成され、相対する前記非晶質体が異なるユニバーサル硬度を有するものであれば、複数枚の弁体であっても、その効果は同じであることは言うまでもない。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。
【0051】
図1に示すフォーセットバルブ11を試作し、固定弁体30の材質を変化させたときの摺動特性について調べる実験を行った。
【0052】
本発明のフォーセットバルブ11を構成する可動弁体20にはAl2O3純度が96%のアルミナ質焼結体を用い、その表面にプラズマCVD法によってTi膜とSi膜をこの順序で積層した中間層23を介してダイヤモンド状硬質炭素膜24を被着したものを使用した。なお、可動弁体20は、外径25mm、厚み5mmの円板状体とした。
【0053】
また、固定弁体30には、可動弁体同様、純度96%のアルミナ質焼結体を用い、その表面にスパッタリング法により非晶質シリコン、非晶質炭化珪素、非晶質ゲルマニウム、Ti、プラズマCVD法によりTiC、TiNをそれぞれ被着したものとノンコートのもの計7種類を用意し、それぞれ外径32mm、厚み5mmの円盤状体とした。
【0054】
そして、双方の弁体20,30の摺動面21,31に研磨加工を施して平坦度を1μm以下、表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で0.2μm以下とした。
【0055】
このようにして形成した双方の弁体20、30を、互いの摺動面21、31が接するようにケーシングによって軸力30kgfの力で押さえつけながらフォーセット11(給水栓)にセットし、80℃の温水を1kg/cm2の圧力で注入した状態のもとで、操作レバー40を操作するのに必要なレバー押し付け力をプッシュプルゲージで測定し、その値を操作レバー40の操作力とした。
【0056】
ただし、本実験の評価基準は、20万回の摺動において最大操作力が7N以下のものを優れたものとした。また、スティックスリップ現象や、キュッ、キュッという異音発生の有無、リーク発生の有無についても発生した時点での摺動回数で記録し評価した。組み合わせによる評価を表1とした。
【0057】
表1における評価は、15万回未満で異音のしたものは×とし、15万回以上の摺動回数でも異音のしなかったものは△、20万回以上の摺動回数でも異音のしなかったものは○とした。尚、表中では、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜をDLC、非晶質シリコン膜をa−Si、非晶質ゲルマニウムをa−Ge、非晶質炭化珪素をa−SiCとそれぞれ示している。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果、互いに摺動する2つの弁体のいずれもが非晶質体で形成するとともに、前記弁体の摺動面における互いのユニバーサル硬度を異ならしめたもの(資料No.1〜9、12)に関しては、15万回以上の摺動回数でも異音の発生は確認できなかった。さらに、非晶質体の摺動面におけるユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaのもの(資料No.2、3、7〜9、12)に関しては、15万回以上の摺動回数でも異音の発生は確認できず、さらに好適な組み合わせになっており、スティックスリップ現象や異音及び水漏れの発生がなく、長期間にわたって滑らかな摺動特性を得ることができた。
【0060】
この中でも特に、固定弁体30に、ユニバーサル硬度が5〜7GPaの範囲にある非晶質シリコン、非晶質ゲルマニウム、非晶質炭化珪素を用いたものは、操作力を小さくすることができるため、特に優れていた。
さらに、この中でも非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜と非晶質シリコン膜との組み合わせによる実験(資料No.1〜6、8、10、12)においては、20万回以上でも異音の発生がなく、特に優れた組み合わせであることが判った。
【0061】
なお、資料No.1及び6については、ユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaの範囲にないため、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜と非晶質シリコン膜の組み合わせであっても評価は低くなってしまった。
【0062】
次に、表2における可動弁体20はアルミナに非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を成膜したものと固定弁体30はアルミナに非晶質シリコン膜を成膜したものを用意し、弁体20、30間の摺動面21、31における硬度差は15GPaとして構成した。非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜と非晶質シリコン膜の膜厚をそれぞれ表2に示すように変えた場合のトルク上昇を確認した。レバーのトルクが5Nに達した摺動回数が、10万回未満は×、10万回以上を△、20万回以上を○でそれぞれ示した。
【0063】
【表2】
【0064】
この結果、非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜24を被着する場合は、その膜厚として、0.5μm〜2μmの範囲が必要で、0.7μm〜1.2μmの範囲であることが好ましく、非晶質シリコン膜34を被着する場合は、その膜厚としては0.03μm〜2μmの範囲が必要で、0.7μm〜1.2μmの範囲であることが好ましいことが判った。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、互いに摺動する2つの弁体のいずれもが非晶質体で形成するとともに、前記弁体の摺動面における互いのユニバーサル硬度を異ならしめたことを特徴とすることや、前記非晶質体の摺動面におけるユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaであることを特徴とすることによって、無潤滑状態での摺動にもかかわらず、操作力の上昇やスティックスリップ現象あるいは異音の発生がなく、滑らかな摺動特性を長期間にわたって得ることができ、これらの中でも、前記一方の弁体の摺動面に非晶質ダイヤモンド状硬質炭素膜を形成し、且つ前記他方の弁体の摺動面に非晶質シリコン膜を形成したことによって、より小さな操作力で摺動させることができるフォーセットバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォーセットバルブを示す斜視図である。
【図2】本発明のフォーセットバルブの一部を拡大した部分断面図である。
【図3】本発明のフォーセットバルブを示す図で、(A)はバルブが閉じた状態を示す斜視図であり、(B)はバルブを開いた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
11・・・フォーセットバルブ
20・・・可動弁体
21、31・・・摺動面
22、32・・・流体通路
23・・・中間層
24、34・・・非晶質体
30・・・固定弁体
40・・・操作レバー
Claims (3)
- 互いに摺動する2つの弁体の双方の摺動面を非晶質体で形成するとともに、前記弁体の摺動面における互いのユニバーサル硬度を異ならしめたことを特徴とするフォーセットバルブ。
- 前記非晶質体の摺動面におけるユニバーサル硬度の差が5GPa〜50GPaであることを特徴とする請求項1記載のフォーセットバルブ。
- 前記一方の弁体の摺動面に非晶質ダイアモンド状硬質炭素膜を形成し、且つ前記他方の弁体の摺動面に非晶質シリコン膜を形成したことを特徴とする請求項2記載のフォーセットバルブ。
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