JP2004027280A - リン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン酸塩化成処理工程から排出されたスラッジにリン酸等の酸を接触させる酸接触工程により得られた、スラッジ中のリン酸塩成分を含む溶液を、分別工程において透析装置10を用いて第二鉄イオンを分別した。その後、還元工程にて第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元し、回収工程で透析装置20を用いて第一鉄イオンを回収した。上記工程により、スラッジの全量を有効活用することが可能となる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装下地処理や機械部品の潤滑被膜処理時に発生するリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車ボデー等の金属材料への塗装下地処理として、リン酸塩化成処理が行われている。その際、リン酸塩化成処理液中の沈殿物として、処理液に起因するリン酸亜鉛系リン酸塩、鋼材に起因するリン酸第二鉄系リン酸塩からなる2元系スラッジが排出される。また、近年、自動車ボデーでは、鋼材と共にアルミ材が併用される場合があり、その際には、上記2種類のリン酸塩に加えてアルミ材に起因するフッ化アルミニウム系フッ化物が混在した、3元系スラッジが排出される。
【0003】
このスラッジ中のリン酸塩は、リサイクルが可能であり、特開平10−25453号公報では窯業材料、特開平8−91972号公報ではリン酸肥料製造の原料、特開昭49−107965号公報では亜鉛精錬の原料とすることが開示されている。一方、フッ化アルミニウム系フッ化物のフッ化物は、特開平5−331568号公報に開示されているようにアルミニウム合金溶解用フラックスとしてリサイクルが可能である。ところが、リン酸塩とフッ化物とが混在したままの状態で再利用する技術は現状では確立しておらず、埋め立て処分を回避するためには、少なくともリン酸塩とフッ化物とを分離することが必要である。
【0004】
リン酸塩とフッ化物とを分離するためには、フッ化物を溶解することが考えられる。しかし、有害なフッ化物を溶解すると、排水を汚染するという問題が生じるため、好ましくない。そのため、リン酸を溶解することが好ましく、特開昭50−116395号公報では、リン酸亜鉛とリン酸第二鉄を主成分とするスラッジにリン酸を反応させ、リン酸亜鉛成分を溶解させる方法が提案されている。また、特開昭53−71643号公報では、リン酸亜鉛とリン酸第二鉄を主成分とするスラッジに塩酸、硫酸、硝酸等の強酸を用いて、リン酸亜鉛成分を溶解させる方法が提案されている。
【0005】
これらの従来技術では、リン酸亜鉛とリン酸第二鉄からなる2元系スラッジのうち、リン酸第二鉄成分は利用価値の乏しい物質と見なし、リン酸亜鉛成分を回収することを目的としている。そのため、上記従来技術では、酸によりリン酸亜鉛成分のみを溶解させる際に、過度の酸性と成らないようにpHの範囲を設定し、鉄成分が溶解しないようにすることを特徴としている。
【0006】
ところが、上記技術では、回収されたリン酸亜鉛成分を再びリン酸塩化成処理液として利用するには組成を再調整する必要がある。また、スラッジの過半量をしめるリン酸第二鉄は水酸化鉄、または酸化鉄として排出されるため、再利用されずに処分されるという問題がある。
【0007】
さらに、フッ化物が混在する3元系スラッジでは、その全成分を有効利用するためには、リン酸塩成分の全てを溶解させ、フッ化物成分を溶解させずに分離する必要がある。リン酸亜鉛に加えてリン酸第二鉄を溶解させるためには、上記従来技術よりpHを低下させることが容易に想像できるが、その際フッ化物が未溶解物として得られるかどうかは一切不明である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、スラッジの全量が有効活用できるリサイクル法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の問題点に鑑み、鋭意努力の結果、リン酸塩を構成する亜鉛イオンと第二鉄イオンのイオン価数が異なることに着目し、従来不可能と考えられていた透析による分離法を編み出した。さらに、フッ化アルミニウム系フッ化物を含有する3元系スラッジにおいて、フッ化物から成る未溶解物を分離する手法を完成した。
【0010】
本発明の第1発明であるリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、鉄を含む金属材料をリン酸塩化成処理した処理液に酸を接触させてスラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる酸接触工程と、該酸接触工程後の溶液から第二鉄イオンを透析法により分別する分別工程と、から成ることを特徴とする。透析法を用いることにより、溶液中のイオンをイオン状態のまま回収することができ、さらに、亜鉛イオン等とは価数の異なる第二鉄イオンを分別することができる。
【0011】
本第1発明において、前記酸が、リン酸であるのが好ましい。リン酸を用いると、酸接触工程以降で回収される物質の汚染を防止することができる。
【0012】
本第1発明において、前記リン酸塩成分は、リン酸イオン、Znイオン、第二鉄イオンのほかに、Naイオン、Kイオン、Mnイオン、Niイオン等を含むものであってもよい。
【0013】
本第1発明において、前記透析法は、イオン交換膜を用いた電気透析法であるのが好ましい。
【0014】
さらに、本第1発明は、前記分別工程で得られた前記第二鉄イオンの残留液を還元手段により第一鉄イオン残留液に還元する還元工程と、前記第一鉄イオン残留液から第一鉄イオンを透析法により回収する回収工程と、から成るのが望ましい。この際、前記還元手段は、アスコルビン酸添加であるのが望ましい。
【0015】
また、本第1発明は、前記分別工程で得られた前記第二鉄イオンの残留液のpHをアルカリにより調整し、リン酸鉄の沈殿と残液とに分離する分離工程から成るのが望ましい。この際、前記アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムの少なくとも1種であるのが望ましい。
【0016】
本発明の第2発明であるリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、鉄を含む金属材料をリン酸塩化成処理した処理液に酸を接触させてスラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる酸接触工程と、該酸接触工程後の溶液から該溶液のpHをアルカリにより調整しリン酸塩の沈殿と残液とに分離する分離工程と、から成ることを特徴とする。酸接触工程で溶解したリン酸塩成分を、分離工程においてpH調整することにより再びリン酸塩の沈殿として分離するため、リン酸塩の沈殿は、処理前のスラッジよりも清浄なものとすることが可能である。また、この分離工程は完全中和ではないので、水酸化鉄等の再利用が困難である物質を生成することがない。
【0017】
本第2発明において、前記アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムの少なくとも1種であるのが好ましい。
【0018】
また、本第2発明において、前記酸が、リン酸であるのが好ましい。リン酸を用いると、酸接触工程以降で回収される物質の汚染を防止することができる。
【0019】
本第2発明において、前記残液は、陽イオン交換膜または陰イオン交換膜の少なくとも一方を用いたイオン透析処理により、前記酸および前記アルカリとして回収されるのが好ましい。イオン透析処理により回収された酸およびアルカリは、酸接触工程の酸および分離工程のアルカリとして用いることができるため、リサイクルが可能となる。
【0020】
本発明の第3発明であるリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、鉄およびアルミニウムを含む金属材料をリン酸塩化成処理した処理液に強酸を除く酸を接触させてスラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる溶解工程と、該溶解工程後の溶液から、主としてフッ化アルミニウム系フッ化物からなる未溶解物を分離する分離工程と、から成ることを特徴とする。溶解工程では、強酸を除く酸を用いるため、アルミニウムを含む金属材料をリン酸塩化成処理した際に発生するスラッジに含まれるフッ化アルミニウム系フッ化物を溶解せず、フッ化アルミニウム系フッ化物を回収することが可能である。
【0021】
本第3発明において、前記強酸を除く酸が、リン酸、酢酸およびギ酸の少なくとも1種であるのが望ましい。
【0022】
本第3発明において、前記リン酸塩成分は、リン酸イオン、Znイオン、第二鉄イオンのほかに、Naイオン、Kイオン、Mnイオン、Niイオン等を含むものであってもよい。
【0023】
本発明の第1、第2および第3発明であるリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、いずれも、スラッジの全量が有効活用できるリサイクル法を提供することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法の実施の形態を、図1を用いて説明する。
【0025】
本発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法で用いられるリン酸塩化成処理スラッジは、金属材料の化成処理時に発生するスラッジである。例えば、鋼材が使用されている自動車ボデーの塗装下地処理として行われるリン酸塩化成処理時に生じるスラッジが望ましい。
【0026】
本第1発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、酸接触工程と分別工程とから成る。
【0027】
酸接触工程では、リン酸塩化成処理した処理液に酸を接触させてスラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる。この際用いられる酸は、処理液中のリン酸塩成分を溶解することが可能であれば特に限りはないが、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸や酢酸、蟻酸などの有機酸、より好ましくはリン酸である。無機酸、および第二鉄イオンと不溶性の塩を作らないものであれば使用可能である。リン酸を用いると、酸接触工程以降で回収される物質を汚染しなので、より好ましい。酸の濃度は、0.1〜5mol/l、より好ましくは0.5〜3mol/lである。濃度が0.1mol/l未満では充分にリン酸塩を溶解することができず、5mol/lを越えると溶液の粘度が上がり、取り扱いが困難となる。
【0028】
酸接触工程を経た処理液は、濾過により、リン酸塩成分と未溶解の油分やゴミ、酸化物等とに分離される。濾過で使用する濾過機は、耐酸性のものであれば特に限定はなく、通常の化学工業で使用されているフィルター式、遠心式等の各種濾過手段を適用することができる。濾過後の溶液に含まれているリン酸塩成分として、リン酸イオン、Znイオン、Mnイオン、Niイオン、第二鉄イオン等が挙げられる。
【0029】
分別工程では、酸接触工程後の溶液、つまり濾過後の溶液から第二鉄イオンを透析法により分別する。透析法は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を用いたイオン透析法が望ましい。イオン透析法は、濃度差を利用して溶液中の各イオンを自然吸収させる拡散透過法を用いることも可能であるが、より好ましくは、電場により強制的に透析させる電気透析法を用いる。電気透析法では、5室構造を有する電気透析槽に3系統の液を循環させて行うのが望ましい。図1に、電気透析槽の概略図を示す。電気透析槽は、中心に塩液室1をもち、塩液室1の一方は、陽イオン引き抜き室3と接しており、その境界を陽イオン交換膜2で隔てられている。他方は、陰イオン引き抜き室5と接しており、その境界を陰イオン交換膜4で隔てられている。また、陽イオン引き抜き室3および陰イオン引き抜き室5は、陰極室7および陽極室8と接しており、バイポーラ膜6で隔てられている。塩液室1にはリン酸塩成分を含む酸接触工程後の溶液、陽イオン引き抜き室3および陰イオン引き抜き室5にはリン酸塩化成処理に用いられる現場化成処理液、陰極室7および陽極室8にはリン酸を循環させるのが好ましい。上記した電気透析槽を用いた電気透析法により、塩液室1のリン酸塩成分を含む溶液中のリン酸イオンが陰イオン引き抜き室5へ、Znイオン、Mnイオン、Niイオン等が陽イオン引き抜き室3へと透析され、現場化成処理液の消耗した有効成分を補給するように回収される。そのため、陰イオン引き抜き室および陽イオン引き抜き室を出た現場化成処理液は、成分調整をすることなく、現場化成処理槽へ返還されて再利用することができる。この時、第二鉄イオンは陽イオン引き抜き室3へと透析されず、一部が陰イオン引き抜き室5へと透析され濃度を減じたリン酸イオンと共に塩液室1に残留する。第二鉄イオンが透析されないのは、例えば、酸でイオン化された第二鉄イオンは錯イオンとなって巨大化しており、イオン透過効率が極端に低くなっているからだと考えられる。
【0030】
第二鉄イオンの残留液は、還元工程において第二鉄イオンを透析可能な第一鉄イオンに還元後、回収工程において透析法により第一鉄イオンを回収するのが望ましい。還元工程では、第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元手段としては、バイポーラ膜を隔膜として用いた陰極電解還元法であってもよいが、より望ましくは、L−アスコルビン酸を用いた化学還元法が良い。その後の回収過程での透析法としては、陽イオン交換膜を用いたイオン透析法が望ましい。その際、鉄メッキ液を引き抜き液とする電気透析法が望ましく、第一鉄イオンを回収後の鉄メッキ液は、鋼板等を陰極としてメッキ処理を行い、第一鉄イオンを鉄鋼原料等として有用な金属鉄として回収することができる。一方、透析されずに残ったイオンは酸イオン(リン酸イオン)であり、その酸液(リン酸液)は酸接触工程の酸として再利用が可能となる。
【0031】
また、第二鉄イオンの残留液は、アルカリを添加することにより溶液のpHを上昇させ、リン酸塩の沈殿と残液とに分離することも可能である。添加するアルカリは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムの少なくとも1種が望ましい。しかし、その際、リン酸を完全中和すると第二鉄イオンがリン酸第二鉄を通り越して水酸化第二鉄となって沈殿するため、その防止のために部分中和、すなわち、上昇させるpHは2.5以下に留めるのが肝要である。得られるリン酸塩の沈殿はリン酸鉄で、リン酸亜鉛等は含有していないので、処理前のスラッジの約3分の2程度に減量される。また、この際、完全中和を行わないので、再利用が困難な水酸化鉄が生成することがない。
【0032】
本第2発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、酸接触工程と分離工程とから成る。
【0033】
本第2発明における酸接触工程の実施の形態は、本第1発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法における酸接触工程と同様であり分別工程を行う前の段階までは、上記本第1発明と同様の手順で行うことができる。
【0034】
分離工程では、酸接触工程後の溶液のpHをアルカリを添加することにより上昇させ、リン酸塩の沈殿と残液とに分離する。添加するアルカリは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムの少なくとも1種が好ましい。アルカリの濃度は特に限定されないが、その添加量は、水酸化物の沈殿を防止するために、pHで2.5以下に留めるのが好ましい。リン酸塩の沈殿は、処理前のスラッジよりも清浄化されており、窯業原料等の用途に供することが可能となる。また、残液は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の少なくとも一方を用いたイオン透析法を施すことにより、酸接触工程で用いた酸と分離工程で用いたアルカリとが回収され、それらは酸接触工程および分離工程で再利用することが可能である。
【0035】
本第3発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法は、溶解工程と分離工程とから成る。
【0036】
本第3発明で用いられるリン酸塩化成処理スラッジは、いわゆる3元系スラッジであり、例えば、鋼材とアルミ材が併用されている自動車ボデーの塗装下地処理として行われるリン酸塩化成処理時に生じるスラッジが望ましい。
【0037】
溶解工程では、リン酸塩化成処理した処理液に強酸を除く酸を接触させてスラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる。この際用いられる酸は、処理液中のリン酸塩成分を溶解でき、かつ、フッ化アルミニウム系フッ化物を溶解しないことが可能であれば特に限りはないが、リン酸、および酢酸、蟻酸などの有機酸の少なくとも一種であることが望ましい。リン酸を用いると、酸接触工程以降で回収される物質を汚染しなので、より望ましい。酸の濃度は、0.1〜5mol/l、より望ましくは0.5〜3mol/lである。濃度が0.1mol/l未満では充分にリン酸塩を溶解することができず、5mol/lを越えると溶液の粘度が上がり、取り扱いが困難となる。
【0038】
分離工程では、酸接触工程を経た処理液は、リン酸塩成分を含む溶液と未溶解物とに分離される。その際、濾過により溶液と未溶解物に分離するのが望ましい。濾過で使用する濾過機は、耐酸性のものであれば特に限定はなく、通常の化学工業で使用されているフィルター式、遠心式等の各種濾過手段を適用することができる。未溶解成分はフッ化アルミニウム系フッ化物の他に、油分やゴミ、酸化物等である。このフッ化アルミニウム系フッ化物は、アルミニウム合金溶解用フラックス等として再利用が可能である。また、濾過後の溶液に含まれているリン酸塩成分として、リン酸イオン、Znイオン、Mnイオン、Niイオン、第二鉄イオン等が挙げられる。この溶液は、本第1および第2発明の酸接触工程以降の各工程を経ることにより、容易にリサイクルが可能である。
【0039】
本願発明により、リン酸塩化成処理工程により排出されるスラッジのほぼ全量を有効活用することができる。
【0040】
【実施例】
本発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法の実施例を、図および表を用いて説明する。
(実施例1)
リン酸塩化成処理工程から排出された、リン酸鉄を主成分とする含水スラッジ、および濃度が1mol/lのリン酸を用意した。リン酸3リットルに、リン酸塩スラッジを80℃乾燥重量換算で100グラム投入した後、室温で20分攪拌した。投入したスラッジは、わずかな油脂、酸化鉄およびゴミなどを未溶解物として残してイオン溶解化した。その後、溶液を濾紙(No.5A)で濾過し、清浄な濾液としてリン酸塩成分を含む溶液を得た。
【0041】
上記溶液を図2に示す電気透析装置10で透析した。電気透析装置10は、複数の陽イオン交換膜12とバイポ−ラ膜16とからなり、リン酸塩成分を含む溶液中のリン酸イオンの一部を回収するための陰イオン交換膜14を有する。リン酸塩成分を含む溶液を塩液室11に、また、リン酸塩化成処理液を陽イオン引き抜き室13および陰イオン引き抜き室15に循環させた。また、陰極室17および陽極室18にはリン酸を循環させた。この状態で2時間透析を行った。
【0042】
透析前後のリン酸塩成分を含む溶液とリン酸塩化成処理液のイオン濃度変化を表1に示す。尚、各イオン濃度は、蛍光X線分析法により測定した。透析を施すことにより、化成処理液の有効成分であるリン酸イオン、亜鉛イオン、マンガンイオン、ニッケルイオンが、リン酸塩成分を含む溶液から効率よく化成処理液へと回収された。そのため、透析後の化成処理液は、リン酸塩化成処理工程で再利用することができた。また、透析後の鉄イオンは、第二鉄イオンとしてリン酸イオンと共に残留することが確認された。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例2)
図3に示す電気透析装置10を用い、実施例1と同様な工程で、リン酸イオンと第二鉄イオンが残留するリン酸鉄溶液を準備した。尚、電気透析装置10は、図2に示す装置と同様のものである。このリン酸鉄溶液に、還元手段としてL−アスコルビン酸を20グラム添加し、第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元後、電気透析装置20で透析した。電気透析装置20は、複数の陽イオン交換膜22とバイポ−ラ膜26とを有する。塩液室21には還元後の溶液を循環させ、陽イオン引き抜き室23には0.6mol/lの硫酸溶液を循環させた。この状態で2時間透析を行った。
【0045】
透析前後のリン酸鉄溶液と硫酸溶液のイオン濃度変化を表2に示す。尚、各イオン濃度は、蛍光X線分析法により測定した。鉄第一イオンに還元された鉄イオンは、ほぼ全量が硫酸溶液側に透析され、硫酸溶液は硫酸第一鉄溶液に変化することが確認された。また、残留したリン酸イオンは、そのままリン酸として、スラッジの溶解に用いることが出来た。
【0046】
【表2】
【0047】
さらに、透析により第一鉄イオン濃度が高まった陽イオン引き抜き室23中の溶液を鉄メッキ液とし、軟鋼板を陰極として電気メッキ処理を行った。その結果、通常の硫酸鉄メッキ処理と同様の75%以上の析出効率で金属鉄が回収できた。
(実施例3)
リン酸塩化成処理工程から排出された、リン酸鉄およびフルオロアルミニウム酸ナトリウムを主成分とする含水スラッジ、および濃度が1mol/lのリン酸を用意した。リン酸3リットルに、リン酸塩スラッジを80℃乾燥重量換算で200グラム投入した後、室温で20分攪拌した。投入したスラッジは、多くの未溶解物が懸濁した、懸濁溶液となった。その後、懸濁溶液を濾紙(No.5A)で濾過し、未溶解物と清浄な濾液としてリン酸塩成分を含む溶液とを得た。EPMAによる成分分析の結果、未溶解物はフッ化物であり、濾液からはフッ化物は検出されなかった。得られた濾液を、実施例1と同様に、図2に示す電気透析装置10を用い2時間透析を行った。
【0048】
透析前後のリン酸塩成分を含む溶液とリン酸塩化成処理液のイオン濃度変化を表3に示す。尚、各イオン濃度は、蛍光X線分析法により測定した。実施例1と同様に、リン酸塩成分を含む溶液中の化成処理液の有効成分のみが、選択的に効率よく化成処理液へと透析回収された。また、透析後の鉄イオンは、第二鉄イオンとしてリン酸イオンと共に残留することが確認された。
【0049】
【表3】
【0050】
(実施例4)
油脂、酸化鉄、およびゴミを含有するリン酸第二鉄を主成分とするリン酸塩スラッジを実施例1と同様の方法によりリン酸に溶解させ、その後、濾過を行い、清浄なリン酸塩溶液を得た。この時の溶液のpHは、1.1であった。この溶液3リットルに、別に用意した1mol/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、中和反応によりpHを2.5まで上昇させた。これにより、溶液中には、黄白色のリン酸塩が沈殿した。その後、上澄み液を分離して沈殿を乾燥させ、窯業原料等に適した清浄なリン酸塩粉末を得た。一方、分離した上澄み液は、陽イオン交換膜を用いた電気透析により水酸化ナトリウムを回収すると共に、残液としてリン酸溶液が得られ、それぞれ中和用アルカリ液と最初のスラッジ溶解液に利用できることを確認した。
【0051】
【発明の効果】
本発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法によれば、従来不可能と考えられていた透析により有効成分を回収する回収方法、また、フッ化アルミ系フッ化物を含有する3元系スラッジにおいてフッ化物から成る未溶解物を分離する手法を用い、化成処理時に発生するスラッジの全量が有効活用できるリサイクル方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本第1発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法に用いる電気透析槽の概略図。
【図2】本第1発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法の説明図。
【図3】本第3発明のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法の説明図。
【符号の説明】
10,20…電気透析装置
2,12,22…陽イオン交換膜 4,14…陰イオン交換膜
6,16,26…バイポーラ膜
1,11,21…塩液室
3,13,23…陽イオン引き抜き室 5,15…陰イオン引き抜き室
7,17,27…陰極室 8,18,28…陽極室
Claims (15)
- 鉄を含む金属材料をリン酸塩化成処理したスラッジを含有する処理液に酸を接触させて、前記スラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる酸接触工程と、
該酸接触工程後の溶液から第二鉄イオンを透析法により分別する分別工程と、から成ることを特徴とするリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。 - 前記酸が、リン酸である請求項1記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記リン酸塩成分は、リン酸イオン、Znイオン、Mnイオン、Niイオン、第二鉄イオンを含む請求項1および2記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記透析法は、イオン交換膜を用いた電気透析法である請求項1記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記分別工程で得られた前記第二鉄イオンの残留液を還元手段により第一鉄イオン残留液に還元する還元工程と、
前記第一鉄イオン残留液から第一鉄イオンを透析法により回収する回収工程と、
から成る請求項1記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。 - 前記還元手段は、アスコルビン酸添加である請求項5記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記分別工程で得られた前記第二鉄イオンの残留液のpHをアルカリにより調整し、リン酸鉄の沈殿と残液とに分離する分離工程から成る請求項1記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムの少なくとも1種である請求項7記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 鉄を含む金属材料をリン酸塩化成処理したスラッジを含有する処理液に酸を接触させて、前記スラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる酸接触工程と、
該酸接触工程後の溶液から該溶液のpHをアルカリにより調整しリン酸塩の沈殿と残液とに分離する分離工程と、
から成ることを特徴とするリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。 - 前記アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムの少なくとも1種である請求項9記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記酸が、リン酸である請求項9記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記残液は、陽イオン交換膜または陰イオン交換膜の少なくとも一方を用いたイオン透析処理により、前記酸および前記アルカリとして回収される請求項9記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 鉄およびアルミニウムを含む金属材料をリン酸塩化成処理したスラッジを含有する処理液に強酸を除く酸を接触させて、前記スラッジ中のリン酸塩成分を溶解させる溶解工程と、
該溶解工程後の溶液から、主としてフッ化アルミニウム系フッ化物からなる未溶解物を分離する分離工程と、
から成ることを特徴とするリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。 - 前記強酸を除く酸が、リン酸、酢酸およびギ酸の少なくとも1種である請求項13記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
- 前記リン酸塩成分は、リン酸イオン、Znイオン、Mnイオン、Niイオン、第二鉄イオンを含む請求項13および14記載のリン酸塩化成処理スラッジのリサイクル方法。
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