JP2004027152A - 蛍光体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】保護コロイドの存在下で、蛍光体の前駆体から反応で生じた不必要な副塩、及び水分の効率的な除去が行える蛍光体の製造方法を提供し、粒子径が小さく、かつ粒子径分布が狭く、発光強度が良好な蛍光体を提供する。
【解決手段】保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体をウェットケーキ状態で脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体をウェットケーキ状態で脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液相法を用いて形成された蛍光体及び蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体の製造方法としては、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と賦活剤元素を含む化合物を所定量混合し、所定の温度で焼成して固相間反応により蛍光体を得る固相法と、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と賦活剤元素を含む化合物を液中に溶解させ、この溶液を液相中で反応させて蛍光体の前駆体を形成し、この前駆体を所定の温度で焼成することにより蛍光体を得る液相法がある。
【0003】
蛍光体の収率と発光効率を高めるには、その蛍光体の組成を出来るだけ化学量論的な組成に近づける必要がある。更に、蛍光体の粒子径を小さくするに従い比表面積が増大する為、発光に寄与する割合が大きくなる。固相法では純粋に化学量論的な組成を有する蛍光体を製造することは難しく、固相間反応の結果、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留し、化学量論的に高純度な蛍光体を得ることが難しい。又、固相間反応の為、粒子径を小さくすることが難しい。蛍光体形成後に、粉砕等の処理により微粒化をすることが試みられているが、蛍光体粒子へのダメージや粒子径分布が広くなる等の問題がある。それ故、組成的に均一で高純度な微粒子蛍光体を得るには、固相法よりも液相法の方が適している。
【0004】
一般的に液相法により蛍光体を製造する場合には、まず、蛍光体の前駆体粒子を生成させ、これを焼成して蛍光体とするが、焼成後の粒子径分布や発光特性など蛍光体の特性は前駆体の性状に大きく左右される。特に1μm以下の微粒子蛍光体を得るためには、前駆体も十分小さくする必要があり、前駆体同士の凝集を防ぐため、ゼラチン等の保護コロイドの存在下で前駆体形成を行うことが有効である。その際、前駆体の粒子径分布の制御や反応で生じた副塩など不純物の排除、更に、その後の乾燥・焼成での負荷低減のために余分な水分の除去にも十分配慮することが必要である。
【0005】
しかしながら、この様な保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の前駆体は、粒子径が極めて小さく、また保護コロイドの作用により均一な分散状態にあるため、通常の濾過・洗浄という方法では脱塩や脱水が困難であった。すなわち、特開2001−329262号中の記載にあるような吸引濾過、加圧濾過、遠心分離等の分離手段によって固液分離することが難しく、生産性の低下を引き起こすため十分な脱塩や脱水が困難であった。
【0006】
従って、前駆体中に反応で生じた副塩が残ったり、余分な水分の残留が乾燥・焼成時の負荷増大や、更には粒子成長による蛍光体の粗大化という問題を引き起こし、更なる改善が望まれていた。
【0007】
以上のような問題に対して、本発明者らは、脱塩方法、更には脱水方法を鋭意工夫することで問題解決法を提案している。
【0008】
しかしながら、保護コロイドの存在下において形成された蛍光体の前駆体は、その粒子径が極めて小さく、それゆえ不安定である。つまり脱塩後も水中に長く存在させると蛍光体を構成するのに必要不可欠な成分が水中に溶出してしまい、その結果、発光強度の低下を引き起こすという新たな問題があることが判明し、その解決が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体の前駆体から反応で生じた不必要な副塩、及び水分の効率的な除去が行える製造方法を提供することであり、更には粒子径が小さく、かつ粒子径分布が狭く、発光強度が良好な蛍光体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の目的は、下記いずれかの構成を採ることによって達成されることがわかった。
【0011】
〔1〕 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体をウェットケーキ状態で脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0012】
〔2〕 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体を連続的に脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0013】
〔3〕 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体の凝集体を形成して脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0014】
〔4〕 前記脱塩及び脱水が遠心分離方式により行われることを特徴とする〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0015】
〔5〕 前記脱塩及び脱水が加圧濾過方式により行われることを特徴とする〔1〕〜〔3〕3の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0016】
〔6〕 〔1〕〜〔5〕の何れか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする蛍光体。
【0017】
〔7〕 Ba元素、Mg元素、Al元素及び賦活剤を含有することを特徴とする〔6〕に記載の蛍光体。
【0018】
〔8〕 Zn元素、Si元素及び賦活剤を含有することを特徴とする〔6〕に記載の蛍光体。
【0019】
〔9〕 Y元素、Gd元素、B元素及び賦活剤を含有することを特徴とする〔6〕に記載の蛍光体。
【0020】
本発明によれば、微少で高発光強度の蛍光体を安定、且つ容易に得ることができ、産業上その利用価値は極めて高い。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の蛍光体及びその製造方法を更に詳細に説明する。
【0022】
本発明で用いられる保護コロイドは、粒子同士の凝集を防ぐために機能しており、特開2001−329262号の晶癖制御に用いられている有機ポリマーとは明らかに機能が異なる。本発明の保護コロイドは、天然、人工を問わず各種高分子化合物を用いることができる。その際、保護コロイドの平均分子量は、10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。また、本発明に用いられる保護コロイドは、タンパク質が好ましく、ゼラチンが特に好ましい。また、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。
【0023】
前駆体の形成方法に関しては特に限定はないが、2液以上の蛍光体原料溶液を保護コロイドの存在下で貧溶媒中に液中添加する態様が、より微小で粒度分布の狭い蛍光体を製造する為には好ましい。又、蛍光体の種類により、添加速度や添加位置、撹拌条件、pH等、諸物性値を調整することがより好ましい。この様にして、平均粒径が0.05〜1.0μm程度の粒度分布の狭い単分散の微粒子が得られる。
【0024】
蛍光体の組成としては、例えば特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されている蛍光体を適宜使用することができる。その結晶母体としては、Y2O2S、Zn2SiO4、Ca5(PO4)3Cl等に代表される金属酸化物、ZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0025】
結晶母体の好ましい例を以下に列挙する。
ZnS、SrS、GaS、(Zn,Cd)S、SrGa2S4、YO3、Y2O2S、Y2O3、Y2SiO3、SnO2、Y3Al5O12、Zn2SiO4、Sr4Al14O25、CeMgAl10O19、BaAl12O19、BaMgAl10O17、BaMgAl14O23、Ba2Mg2Al12O22、Ba2Mg4Al8O18、Ba3Mg5Al18O35、(Ba,Sr,Mg)O・aAl2O3、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、Sr2P2O7、(La,Ce)PO4、Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2、GdMgB5O10、(Y,Gd)BO3等が挙げられる。
【0026】
結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、特に元素の組成に制限はなく、同族の元素と一部置き換えたものでも使用可能で、紫外から青色領域を吸収して可視光を発するものであればどのような組み合わせでも使用可能である。しかし、特には無機酸化物蛍光体、または無機ハロゲン化物蛍光体を使用することが好ましい。
【0027】
以下に本発明に使用される蛍光体の具体的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0028】
〈青色発光無機蛍光体化合物〉
(BL−1) Sr2P2O7:Sn4+
(BL−2) Sr4Al14O25:Eu2+
(BL−3) BaMgAl10O17:Eu2+
(BL−4) SrGa2S4:Ce3+
(BL−5) CaGa2S4:Ce3+
(BL−6) (Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17:Eu2+
(BL−7) (Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+
(BL−8) ZnS:Ag
(BL−9) CaWO4
(BL−10) Y2SiO5:Ce
(BL−11) ZnS:Ag,Ga,Cl
(BL−12) Ca2B5O9Cl:Eu2+
(BL−13) BaMgAl14O23:Eu2+
(BL−14) BaMgAl10O17:Eu2+,Tb3+,Sm2+
(BL−15) BaMgAl14O23:Sm2+
(BL−16) Ba2Mg2Al12O22:Eu2+
(BL−17) Ba2Mg4Al8O18:Eu2+
(BL−18) Ba3Mg5Al18O35:Eu2+
(BL−19) (Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17 :Eu2+
〈緑色発光無機蛍光体化合物〉
(GL−1) (Ba,Mg)Al16O27:Eu2+,Mn2+
(GL−2) Sr4Al14O25:Eu2+
(GL−3) (Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu2+
(GL−4) (Ba,Mg)2SiO4:Eu2+
(GL−5) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu2+
(GL−7) (Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu2+
(GL−8) Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu2+
(GL−9) Zr2SiO4,MgAl11O19:Ce3+,Tb3+
(GL−10) Ba2SiO4:Eu2+
(GL−11) ZnS:Cu,Al
(GL−12) (Zn,Cd)S:Cu,Al
(GL−13) ZnS:Cu,Au,Al
(GL−14) Zn2SiO4:Mn3+
(GL−15) ZnS:Ag,Cu
(GL−16) (Zn,Cd)S:Cu
(GL−17) ZnS:Cu
(GL−18) Gd2O2S:Tb
(GL−19) La2O2S:Tb
(GL−20) Y2SiO5:Ce,Tb
(GL−21) Zn2GeO4:Mn
(GL−22) CeMgAl11O19:Tb
(GL−23) SrGa2S4:Eu2+
(GL−24) ZnS:Cu,Co
(GL−25) MgO・nB2O3:Ce,Tb
(GL−26) LaOBr:Tb,Tm
(GL−27) La2O2S:Tb
(GL−28) SrGa2S4:Eu2+,Tb3+,Sm2+
〈赤色発光無機蛍光体化合物〉
(RL−1) Y2O2S:Eu3+
(RL−2) (Ba,Mg)2SiO4:Eu3+
(RL−3) Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−4) LiY9(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−5) (Ba,Mg)Al16O27:Eu3+
(RL−6) (Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu3+
(RL−7) YVO4:Eu3+
(RL−8) YVO4:Eu3+,Bi3+
(RL−9) CaS:Eu3+
(RL−10) Y2O3:Eu3+
(RL−11) 3.5MgO,0.5MgF2GeO2:Mn
(RL−12) YAlO3:Eu3+
(RL−13) YBO3:Eu3+
(RLー14) (Y,Gd)BO3:Eu3+
上記の化合物の他に、3波長蛍光体に使用されている無機蛍光体や、ハロリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0029】
本発明の製造方法に適用される蛍光体粒子は、平均粒径が1μm以下であることが好ましく0.5μm以下であることがより好ましい。また、本発明の製造方法で製造された無機蛍光体の用途にもよるが、例えばインクジェット吐出に適用する場合、平均粒径を小さくコントロールすることによって蛍光インクの分散安定性、吐出安定性等を改善することが可能で、平均粒径は0.3μmを超えないことが好ましい。
【0030】
本発明における平均粒径とは、粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる、正常晶の場合には、粒子の稜の長さを言う。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状あるいは平板状粒子の場合には、粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。
【0031】
又、粒子は単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下の場合を示す。本発明において、単分散度としては30%以下が更に好ましく、0.1〜20%が特に好ましい。
【0032】
単分散度=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
本発明の蛍光体の製造方法においては、乾燥・焼成工程に先立って、該蛍光体の前駆体から副塩などの不純物を取り除き、更に余分な水分を除去して含水率を低くするために脱塩及び脱水工程を経ることが好ましい。
【0033】
本発明において、前駆体の脱塩後の電気伝導度が0.01〜20mS/cmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10mS/cmであり、特に好ましくは0.01〜5mS/cmである。0.01mS/cm未満の電気伝導度にしても特に効果は大きくならないが、生産性が低くなってしまう。また20mS/cmを超えると副塩や不純物が充分に除去できていない為に粒子の粗大化や粒子径分布が広くなり、発光強度が劣化してしまう。
【0034】
本発明において、上記記載の電気伝導度の測定方法はどのような方法を用いることも可能であるが、市販の電気伝導度測定器を使用すればよい。
【0035】
本発明において、前駆体の含水率とは、乾燥前駆体質量に対する水分質量を示し、例えば、乾燥前駆体と等量の水分を含む場合は含水率100%となる。
【0036】
本発明においては、乾燥・焼成工程の負荷低減による生産性の向上や、更には粒子成長による粗大化防止の観点から、前駆体脱水後の含水率は、350%以下であることが好ましく、更に好ましくは300%以下であり、特に好ましくは200%以下である。
【0037】
本発明において、上記記載の含水率の測定方法はどのような方法を用いることも可能で、脱水工程後のウェットケーキ質量と乾燥工程後のドライ粉末質量を測定して算出する方法でも良く、市販の水分率測定器を使用する方法でも良い。
【0038】
本発明において、ウェットケーキ状態とは、目的とする前駆体を母液と共に脱水を施すことによって大部分の水を排出して得られるもので、ある程度の水分を含んでいるが、明らかに液体状とは言えない状態を言う。
【0039】
本発明において連続的とは、液相中で蛍光体の前駆体を形成後、脱塩と脱水の間隔を極力短くすることを意味する。
【0040】
即ち、本発明でいう連続的とは、蛍光体の前駆体を形成後、脱塩を終了してから脱水を開始するまでの時間は長くても10分以内を意味し、好ましくは5分以内であり、特に好ましくは1分以内であり、前駆体の脱塩終了後、時間を置かず脱水工程に入るのが最も好ましい。
【0041】
本発明においては、凝集剤などを使用することにより、形成した蛍光体の前駆体をフロックと呼ばれる数mmから1cm程度の凝集体としてから脱塩及び脱水することもまた好ましい態様のひとつである。前駆体が凝集体を形成するため、目の粗い濾材が使用可能となり、高速及び高効率で脱塩及び脱水することが可能である。この場合において固液分離方法としては、遠心分離方式、加圧濾過方式、吸引濾過方式等、あらゆる方式を適用することができるが、遠心分離方式、または加圧濾過方式を適用することが好ましい。
【0042】
本発明に用いられる遠心分離方式とは、保護コロイドの存在下で形成した蛍光体の前駆体を母液と共に円柱状容器に注入し、該容器を高速で回転させることにより固液分離する方式である。この様な機構により固液分離する装置であればその他、特に限定はなく、あらゆる装置を好ましく適用できる。遠心分離方式の装置には、前記容器の壁面に水を放出する複数の穴を有する有孔壁タイプと、壁面に穴を有さず容器の上部から水を放出する無孔壁タイプがあるが、本発明においては前者のタイプを適用することがより好ましい。
【0043】
図1は、本発明に用いられる遠心分離方式による脱水装置の概略断面図である。1は遠心分離装置の缶体であり、その中に濾過面を有するバスケット2があり、このバスケット2はモータにより高速に回転する。3はスラリー供給用ホッパーであり、形成されたスラリー状の蛍光体の前駆体を供給する。4は洗浄水供給用ノズルである。
【0044】
図2は、遠心分離方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略工程図である。同図中、▲1▼の原液供給では、高速で回転するバスケット2にスラリー供給用ホッパー3から形成されたスラリー状の蛍光体前駆体を供給しながら、副生して溶解している副塩を含む水分を濾液として分離する。スラリー供給終了後、▲2▼の1次脱水で更に、溶解している副塩の一部を濾液として分離する。水分が除去されてバスケット内面の蛍光体前駆体ケーキの表面にクラックが発生する前に、引き続き、▲3▼の脱塩で4の洗浄水供給用ノズルより、洗浄水を供給して、蛍光体前駆体ケーキの洗浄を行い、溶解している副塩の除去を行いながら、濾液の伝導度がある目的の値になるまで脱塩を行う。脱塩終了後、洗浄水の供給を終了し、必要であればバスケットの回転数を調整し、更に▲4▼の2次脱水を行い余分な水分を除去する。
【0045】
本発明に用いられる遠心分離方式で蛍光体前駆体の脱塩及び脱水をする場合、脱塩及び脱水効率を向上させるために、下記関係式(1)で定義される遠心力Gが500以上であることがより好ましく、800以上であることが更に好ましい。
【0046】
関係式(1) G=1.119×10−5×r×N2
ここで、関係式(1)中、rはバスケットの半径〔cm〕を、Nはバスケットの回転速度〔rpm〕を表す。
【0047】
次に、本発明に用いられる加圧濾過方式とは、濾布などの濾材と、濾材を挟む濾板と、濾材を加圧するための圧搾部材から主に構成されるもので、該濾材と濾材との間隙に目的の蛍光体前駆体を母液と共に注入し、該圧搾部材により、該濾材を圧搾することにより該前駆体をプレスすることで固液分離する方式である。この様な機構により固液分離する装置であればその他に特に限定はなく、あらゆる装置を好ましく適用できる。
【0048】
上記記載の加圧濾過方式の装置としては、例えば、図3又は図4に示した装置が好ましく用いられる。
【0049】
図3は本発明に用いられる簡易型プレス方式による脱水装置の概略断面図である。図3において、スラリー供給口14よりバルブ11を介して蛍光体前駆体のスラリーが、濾布16、17及び濾板18、19の間に供給され、エアー投入口5から圧力計6、三方弁7、8を介してエアーシリンダー9に空気が送られ、蛍光体前駆体のスラリーを圧搾し、濾液排出口15よりバルブ12を介して濾液が排出され脱水処理が行われる。また、洗浄水供給口13よりバルブ10を介して洗浄水を供給し、蛍光体前駆体の脱塩処理が行われる。
【0050】
図4は、フィルタープレス方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略図である。同図中、▲1▼の原液供給では、2枚の濾板21に挟まれた濾布22の間にスラリー状の蛍光体前駆体を供給しながら、副生して溶解している副塩を含む水分を濾液排出口23より濾液として分離する。スラリー供給後、▲2▼の1次脱水で更に、ダイヤフラム24に加圧水供給口25より加圧水を送り込み、濾布を圧搾して溶解している副塩の一部を濾液として分離する。水分が除去されて蛍光体前駆体ケーキの表面にクラックが発生する前に、引き続き、▲3▼の脱塩で洗浄水供給口26より、洗浄水を供給して蛍光体前駆体ケーキの洗浄を行い、溶解している副塩の除去を行いながら、濾液の伝導度がある目的の値になるまで脱塩を行う。脱塩終了後、洗浄水の供給を終了し、必要であれば加圧水の圧力を調整し、再びダイヤフラム24に加圧水を送り込み、濾布を圧搾して、更に▲4▼の2次脱水を行い余分な水分を除去する。
【0051】
本発明に用いられる加圧脱水方式で蛍光体の前駆体を脱水する場合、脱水効率を向上させるために、加圧する圧力は0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることが更に好ましい。
【0052】
本発明において、凝集剤としては任意のものを用いることができる。例えば、特開昭58−140322号、特開昭62−32445号、特開昭63−243936号等の各公報に示されているものなどがあるが、これらに限定されるものではない。蛍光体前駆体の凝集体を形成するものであれば制限はなく、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤や水溶性高分子など種類は特に限定されない。
【0053】
本発明においては凝集剤として、ゼラチン分子のアミノ基の50%以上を置換した変性ゼラチンを好ましく用いることができる。以下、これをG剤とも称する場合がある。ゼラチンのアミノ基に対する置換基例は、米国特許第2,691,582号、同2,614,928号、同2,525,753号に記載がある。
【0054】
アミノ基を置換して変性ゼラチンを得るための有用な置換基としては、(1)アルキルアシル、アリールアシル、アセチル及び置換,無置換のベンゾイル等のアシル基、(2)アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル等のカルバモイル基、(3)アルキルスルホニル、アリールスルホニル等のスルホニル基、(4)アルキルチオカルバモイル、アリールチオカルバモイル等のチオカルバモイル基、(5)炭素数1〜18個の直鎖、分岐のアルキル基、(6)置換、無置換のフェニル、ナフチル及びピリジル、フリル等の芳香族複素環等のアリール基が挙げられる。中でも、好ましい変性ゼラチンは、アシル基(−COR11)またはカルバモイル基(−CONR11R12)によるものである。
【0055】
前記R11は置換、無置換の脂肪族基(例えば炭素数1〜18個のアルキル基、アリル基)、アリール基またはアラルキル基(例えばフェネチル基)であり、R12は水素原子、脂肪族基、アリール基、またはアラルキル基である。特に好ましいものは、R11がアリール基、R12が水素原子の場合である。
【0056】
以下に本発明において凝集高分子剤として用いることができるG剤の具体例をアミノ基置換基によって例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。例示G剤(アミノ基置換基):
【0057】
【化1】
【0058】
溶存物除去(脱塩)に際してG剤を使用する場合、その添加量は特に制限はないが、除去時に保護コロイドとして含まれている物質(好ましくはゼラチン)の0.1〜5倍量(質量)が一般に適当であり、特に好ましくは0.3〜2倍量(質量)である。
【0059】
本発明においては、蛍光体前駆体を凝析せしめるためには、該凝集剤は、固体のまま蛍光体前駆体に加えて溶解せしめてもよいが、水溶液、特に好ましくは20%以下の水溶液として加えるのが便利である。
【0060】
又、好ましい凝集剤として、下記A鎖及びB鎖からなる一般式(1)で表される高分子化合物を挙げることができる。
【0061】
【化2】
【0062】
式中、R1,R2は脂肪族基を表し、互に異なっていても同じでもよい。R3は水素原子、脂肪族基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Xは−O−、または−NH−、M+は陽イオンを表す。nは10〜104の数値をとる。なおB鎖の2つの連結手は、A鎖のR1,R2を配した第三級炭素に対しいずれの側が結ばれてもよい。またXが−NH−の場合には、R3と共に含窒素環を形成してもよい。
【0063】
この高分子化合物は、分子量として好ましくは103〜106、より好ましくは3×103〜2×105であり、添加量は蛍光体前駆体に含まれている保護コロイド(好ましくはゼラチン)に対し質量比で好ましくは1/50〜1/4、より好ましくは1/40〜1/10である。使用方法は前記G剤に準ずる。
【0064】
以下一般式(1)で表される高分子化合物(以下、これをP剤とも称する場合がある)の具体例を掲げるが、これに限定されない。
一般式(1)で表される例示P剤:
【0065】
【化3】
【0066】
【化4】
【0067】
本発明においてはまた、凝集剤として、以下に例示する有機凝集剤を好ましく用いることができる。
【0068】
第1に、凝集剤として機能する有機重合体、または非重合体スルホン酸あるいは硫酸例えばナフタレンジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及び誘導体、長鎖アルキルスルホン酸及び硫酸例えば種々アニオン系湿潤剤を用いることができる。
【0069】
第2に、フェノールアルデヒド樹脂のスルフォン化物を用いることができる。これは蛍光体前駆体溶液のpHに余り影響を受けることなく、僅かの添加量で凝集沈澱を起こすのですぐれている。またこれは保護コロイドとしてゼラチンを用いた場合には粘度増加の効果をもつため、保護コロイドとしてのゼラチン量を減ずることができる。この粘度増加効果は、pHの影響を受けることが少なく、安定している。このような化合物の例としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、ナフトール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類との結合によりえられた樹脂を、5〜10倍量の濃硫酸もしくは発煙硫酸とともに100℃前後の温度に加熱しスルフォン化して得られるものを挙げることができる。なおこれらのスルフォン化樹脂は、原料たるフェノール類をあらかじめスルフォン化物とした後アルデヒドと縮合させても得られる。この樹脂の縮合度については、低縮合度のものは蛍光体前駆体の凝集沈澱可能なpH範囲が狭く取り扱いにくく、高縮合のものは樹脂の製造に際して着色し易く増粘効果が過大となる傾向があるので、一般に平均縮合度2.5〜8のものが好ましい。またスルフォン化度はこれらの樹脂を水溶液とするのに必要な程度でよく、質量比で20〜60%の結合硫酸を含む樹脂が好ましい。
【0070】
第3に有機凝集剤として、パラビニルベンゼンスルホン酸のナトリウム、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれた化合物と、下記の一般式(A)で示されるビニル化合物より選ばれた化合物との共重合体を用いることができる。
【0071】
【化5】
【0072】
第4に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩(2)の重合体または一般式(2)と下記一般式(3)で示されるビニル化合物類との共重合体を用いることができる。
【0073】
【化6】
【0074】
但しMは水素,Li,Na,K,NH,R1,R2,R3を表し、R1,R2,R3はそれぞれ炭素数5以下のアルキルまたは置換アルキルを表す。但しR1,R2,R3の炭素数は、合計10を越えることはない。
【0075】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩の代表例としては、
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カリウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アンモニウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ビスヒドロキシメチルアンモニウム
などが挙げられる。但しこれに限定されるものではない。
【0076】
また重合させてもよいビニル誘導体の代表例には、
アクリロイルモルホリン
モルホリノメチルアクリルアミド
1−ビニル−2−メチルイミダゾール
エトキシメチルアクリルアミド
1−ビニル−ピロリジン−5−オン
などが挙げられる。但しこれに限定されるものではない。
【0077】
【化7】
【0078】
第5に、下記一般式(4)で示される芳香族フェノール類またはその誘導体を用いることができる。
【0079】
【化8】
【0080】
但し、R31はH、炭素数1〜5のアルキル基、または−OHを表わし、R32は、H、−OHまたは−COOHを表わす。
【0081】
このような化合物としては、フェノール、カテコール、プロログルシノール、サルチル酸、3,5−ジオキシ安息香酸、p−t−ブチルフェノール等がある。
【0082】
上記各有機凝集剤は、各々単独でも、2種類以上でも、各群を組み合わせて用いるのでもよい。
【0083】
上記有機凝集剤は、蛍光体前駆体の反応終了後にこれを添加し、かつpHを調節することによって該前駆体の凝集を引き起こさせるものである。
【0084】
本発明における蛍光体の製造方法においては、脱塩及び脱水時の該蛍光体前駆体及び洗浄水の温度は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。この理由は、前駆体中を水が通過する際の濾過速度は、水の粘度に反比例するためと考えられる。
【0085】
本発明においては、脱水後の蛍光体前駆体の乾燥方法には特に限定はなく、真空乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等、あらゆる方法が用いられる。
【0086】
本発明においては、脱水後の蛍光体前駆体の焼成温度、時間に特に限定はなく、蛍光体の種類に応じて適宜選択できる。更に、焼成時のガス雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気又は不活性雰囲気の何れでもよく、目的に応じて適宜選択できる。焼成装置としても特に限定はなく、あらゆる装置を使用することができる。例えば箱型炉や坩堝炉、ロータリーキルン等が好ましく用いられる。
【0087】
焼成時に焼結防止剤を添加しても添加しなくともよい。添加する場合は、前駆体形成時にスラリーとして添加してもよく、又、粉状のものを乾燥済前駆体と混合して焼成する方法も好ましく用いられる。更に、焼結防止剤に特に限定はなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が、1000℃以下での焼成にはSiO2が、1700℃以下での焼成にはAl2O3が、それぞれ好ましく使用される。
【0088】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(蛍光体1−1の調製)
《蛍光体 Ba0.9MgAl10O17:Eu0.1》
上記蛍光体の前駆体は以下に示される、液相法フローにて一次粒子を作製した。保護コロイドとしてゼラチンを純水に溶解してA液を、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム6水和物、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ユーロピウム6水和物それぞれを上記蛍光体組成比と等しくなるように純水に溶解してB液を、シュウ酸カリウム1水和物と水酸化カリウムを純水に溶解してC液をそれぞれ調製した。A液を撹拌しながらB液とC液を同時にA液中に添加して蛍光体前駆体の分散物を得た。得られた分散物を採取し、電子顕微鏡で観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.5μmであった。また分散物の電気伝導度は80mS/cmであった。
【0090】
得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。その後、遠心分離装置(概略図を図1に示した)を用いて以下の操作を行った。遠心分離装置の遠心力Gの値を300として、スラリー供給用ホッパーより前駆体の凝集体スラリーを供給した。供給終了後、30秒間脱水を行い(1次脱水工程)、引き続き洗浄水供給用ノズルより洗浄水を供給してケーキ洗浄を開始した。濾液の伝導度をモニターし、伝導度が5mS/cm以下になったところで洗浄水の供給を止め脱塩を終了した(脱塩工程)。その後、1分以内に遠心力Gの値を600として脱水を行った(2次脱水)。尚、洗浄水温度は25℃、2次脱水時間は10分間で行った。得られた脱水済み前駆体を箱型乾燥器を用いて60℃の熱風により含水率が0.3%になるまで乾燥して蛍光体前駆体の乾燥済み粉体を得た。更に乾燥済み前駆体を600℃で1時間、大気中で焼成してゼラチン等の残留有機物を焼成除去し、引き続き1600℃で3時間、窒素95%、水素5%の還元雰囲気中で焼成して蛍光体1−1を得た。
【0091】
(蛍光体1−2の調製)
上記蛍光体1−1の調製過程で、脱塩及び脱水を、図3に示すような、簡易型加圧濾過装置を用いて行うこと以外は蛍光体1−1と同様に調製して、蛍光体1−2を得た。なお脱塩及び脱水は次の方法で行った。スラリー供給口より前駆体の凝集体スラリーを簡易型加圧濾過装置内に供給した。供給終了後、プレス圧0.7MPaとして1分間脱水を行い(1次脱水工程)、引き続き洗浄水供給口より洗浄水を供給してケーキ洗浄を開始した。濾液の伝導度をモニターし、伝導度が5mS/cm以下になったところで洗浄水の供給を止め脱塩を終了した(脱塩工程)。その後1分以内に、プレス圧を1.5MPaとして脱水を行った(2次脱水)。尚、洗浄水温度は25℃、2次脱水時間は1分間で行った。
【0092】
(蛍光体1−3の調製)
上記蛍光体1−1の調製過程で、脱塩及び脱水を以下に示す方法で行う以外は蛍光体1−1と同様に調製して、蛍光体1−3を得た。まず得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。次に、3分間撹拌した後、20分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。その後、蒸留水を加えて5分間撹拌した後、15分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。同様な操作を繰り返し、最終的に上澄み液の伝導度が5mS/cm以下になったところで脱塩を終了した。その後、遠心分離装置を用いて、遠心力Gの値を600として脱水を行った。尚、洗浄水温度は25℃、脱塩回数5回、脱水時間は10分間で行った。また脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は15分であった。
【0093】
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体を0.10〜0.15Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子社製)を用いて発光強度を測定した。なお発光強度は蛍光体1−3を100として相対値で表した。
【0094】
以上の結果を表1に示す。また、同一量の前駆体を脱塩するのに必要な洗浄水も下記表1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
表1より、本発明の蛍光体は、比較例と比べて大幅に洗浄水の使用量が削減され、更に、発光強度が増加していることが明らかである。
【0097】
実施例2
(蛍光体2−1の調製)
《蛍光体 Zn1.9SiO4:Mn0.1》
上記蛍光体の前駆体は以下に示される、液相法フローにて一次粒子を作製した。保護コロイドとしてゼラチンを純水に溶解してA液を、上記蛍光体組成比と等しくなるように塩化亜鉛、塩化マンガン4水和物を純水に溶解しB液を、メタケイ酸ナトリウムを純水に溶解しC液を調製した。A液を撹拌しながらB液とC液を同時にA液中に添加して蛍光体前駆体の分散物を得た。得られた分散物を採取し、電子顕微鏡で観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.6μmであった。また分散物の電気伝導度は60mS/cmであった。
【0098】
得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。次に、3分間撹拌した後、20分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。その後、蒸留水を加えて5分間撹拌した後、15分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。同様な操作を繰り返し、最終的に上澄み液の伝導度が5mS/cm以下になったところで脱塩を終了した。その後、遠心分離装置を用いて、遠心力Gの値を600として脱水を行った。
【0099】
尚、洗浄水温度は25℃、脱塩回数5回、脱水時間は10分間で行った。また脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は5分であった。
【0100】
得られた脱水済み前駆体を箱型乾燥器を用いて60℃の熱風により含水率が0.3%になるまで乾燥して蛍光体前駆体の乾燥済み粉体を得た。更に乾燥済み前駆体を600℃で1時間、大気中で焼成してゼラチン等の残留有機物を焼成除去し、引き続き1000℃で3時間、窒素100%の雰囲気中で焼成して蛍光体2−1を得た。
【0101】
(蛍光体2−2の調製)
上記蛍光体2−1の調製過程で、脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は10分であったこと以外は上記蛍光体2−1と同様に調製して、蛍光体2−2を得た。
【0102】
(蛍光体2−3の調製)
上記蛍光体2−1の調製過程で、脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は15分であったこと以外は上記蛍光体2−1と同様に調製して、蛍光体2−3を得た。
【0103】
(蛍光体2−4の調製)
上記蛍光体2−1の調製過程で、脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は30分であったこと以外は上記蛍光体2−1と同様に調製して、蛍光体2−4を得た。
【0104】
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体を0.10〜0.15Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子社製)を用いて発光強度を測定した。なお発光強度は蛍光体2−4を100として相対値で表した。
【0105】
以上の結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2より、脱塩及び脱水を連続的に行うことにより、発光強度が増加していることが明らかである。
【0108】
実施例3
(蛍光体3−1の調製)
《蛍光体 Y0.95BO3:Eu0.05の前駆体合成》
上記蛍光体の前駆体は以下に示される、液相法フローにて一次粒子を作製した。保護コロイドとしてゼラチンを純水に溶解してA液を、上記蛍光体組成比と等しくなるように硝酸イットリウム6水和物と硝酸ユーロピウム6水和物を純水に溶解しB液を、ホウ酸を純水に溶解してC液をそれぞれ調製した。A液を撹拌しながらB液とC液を同時にA液中に添加し、更にpHを9前後に制御するためにアンモニアを添加して蛍光体前駆体の分散物を得た。得られた分散物を採取し、電子顕微鏡で観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.4μmであった。また分散物の電気伝導度は40mS/cmであった。
【0109】
得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。その後、図5に示すような、簡易型加圧濾過装置を用いて脱塩及び脱水を行った。
【0110】
まずスラリー供給口14より前駆体の凝集体スラリーを簡易型加圧濾過装置内に供給した。供給終了後、エアー投入口5から加圧エアーを圧力計6を0.5MPaとして脱水を行った(1次脱水工程)。ケーキ表面にクラックが発生する前に圧を解放し、引き続き洗浄水供給口26より洗浄水を供給し、再度加圧エアーを供給してケーキ洗浄を行った。
【0111】
同様の操作を繰り返し、濾液の伝導度をモニターして、伝導度が5mS/cm以下になったところで洗浄を止め脱塩を終了した(脱塩工程)。その後引き続き脱水を行った(2次脱水)。尚、洗浄水温度は25℃、2次脱水時間は5分間で行った。得られた脱水済み前駆体を箱型乾燥器を用いて60℃の熱風により含水率が0.3%になるまで乾燥して蛍光体前駆体の乾燥済み粉体を得た。更に乾燥済み前駆体を600℃で1時間、大気中で焼成してゼラチン等の残留有機物を焼成除去し、引き続き1400℃で3時間、大気中で焼成して蛍光体3−1を得た。
【0112】
(蛍光体3−2の調製)
上記蛍光体3−1の調製過程で、凝集剤を使用しない以外は上記蛍光体3−1と同様に調製して、蛍光体3−2を得た。
【0113】
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体を0.10〜0.15Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子社製)を用いて発光強度を測定した。なお発光強度は蛍光体3−2を100として相対値で表した。
【0114】
以上の結果を表3に示す。また、脱塩を開始してから脱水が終了するまでの時間も合わせて示した。
【0115】
【表3】
【0116】
表3より、脱塩・脱水時間が大幅に短縮され、その結果、発光強度が増加していることが明らかである。
【0117】
【発明の効果】
本発明により、保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体の前駆体から反応で生じた不必要な副塩、及び水分の効率的な除去が行える製造方法を提供することが出来る。更には粒子径が小さく、かつ粒子径分布が狭く、発光強度が良好な蛍光体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】遠心分離方式による脱水装置の概略断面図。
【図2】遠心分離方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略工程図。
【図3】簡易型プレス方式による脱水装置の概略断面図。
【図4】フィルタープレス方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略図。
【図5】凝集体スラリーの簡易型加圧濾過装置。
【符号の説明】
1 缶体
2 バスケット
3 スラリー供給用ホッパー
4 洗浄水供給用ノズル
21 濾板
22 濾布
23 濾液排出口
24 ダイヤフラム
25 加圧水供給口
26 洗浄水供給口
【発明の属する技術分野】
本発明は、液相法を用いて形成された蛍光体及び蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体の製造方法としては、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と賦活剤元素を含む化合物を所定量混合し、所定の温度で焼成して固相間反応により蛍光体を得る固相法と、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と賦活剤元素を含む化合物を液中に溶解させ、この溶液を液相中で反応させて蛍光体の前駆体を形成し、この前駆体を所定の温度で焼成することにより蛍光体を得る液相法がある。
【0003】
蛍光体の収率と発光効率を高めるには、その蛍光体の組成を出来るだけ化学量論的な組成に近づける必要がある。更に、蛍光体の粒子径を小さくするに従い比表面積が増大する為、発光に寄与する割合が大きくなる。固相法では純粋に化学量論的な組成を有する蛍光体を製造することは難しく、固相間反応の結果、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留し、化学量論的に高純度な蛍光体を得ることが難しい。又、固相間反応の為、粒子径を小さくすることが難しい。蛍光体形成後に、粉砕等の処理により微粒化をすることが試みられているが、蛍光体粒子へのダメージや粒子径分布が広くなる等の問題がある。それ故、組成的に均一で高純度な微粒子蛍光体を得るには、固相法よりも液相法の方が適している。
【0004】
一般的に液相法により蛍光体を製造する場合には、まず、蛍光体の前駆体粒子を生成させ、これを焼成して蛍光体とするが、焼成後の粒子径分布や発光特性など蛍光体の特性は前駆体の性状に大きく左右される。特に1μm以下の微粒子蛍光体を得るためには、前駆体も十分小さくする必要があり、前駆体同士の凝集を防ぐため、ゼラチン等の保護コロイドの存在下で前駆体形成を行うことが有効である。その際、前駆体の粒子径分布の制御や反応で生じた副塩など不純物の排除、更に、その後の乾燥・焼成での負荷低減のために余分な水分の除去にも十分配慮することが必要である。
【0005】
しかしながら、この様な保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の前駆体は、粒子径が極めて小さく、また保護コロイドの作用により均一な分散状態にあるため、通常の濾過・洗浄という方法では脱塩や脱水が困難であった。すなわち、特開2001−329262号中の記載にあるような吸引濾過、加圧濾過、遠心分離等の分離手段によって固液分離することが難しく、生産性の低下を引き起こすため十分な脱塩や脱水が困難であった。
【0006】
従って、前駆体中に反応で生じた副塩が残ったり、余分な水分の残留が乾燥・焼成時の負荷増大や、更には粒子成長による蛍光体の粗大化という問題を引き起こし、更なる改善が望まれていた。
【0007】
以上のような問題に対して、本発明者らは、脱塩方法、更には脱水方法を鋭意工夫することで問題解決法を提案している。
【0008】
しかしながら、保護コロイドの存在下において形成された蛍光体の前駆体は、その粒子径が極めて小さく、それゆえ不安定である。つまり脱塩後も水中に長く存在させると蛍光体を構成するのに必要不可欠な成分が水中に溶出してしまい、その結果、発光強度の低下を引き起こすという新たな問題があることが判明し、その解決が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体の前駆体から反応で生じた不必要な副塩、及び水分の効率的な除去が行える製造方法を提供することであり、更には粒子径が小さく、かつ粒子径分布が狭く、発光強度が良好な蛍光体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の目的は、下記いずれかの構成を採ることによって達成されることがわかった。
【0011】
〔1〕 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体をウェットケーキ状態で脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0012】
〔2〕 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体を連続的に脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0013】
〔3〕 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体の凝集体を形成して脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0014】
〔4〕 前記脱塩及び脱水が遠心分離方式により行われることを特徴とする〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0015】
〔5〕 前記脱塩及び脱水が加圧濾過方式により行われることを特徴とする〔1〕〜〔3〕3の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0016】
〔6〕 〔1〕〜〔5〕の何れか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする蛍光体。
【0017】
〔7〕 Ba元素、Mg元素、Al元素及び賦活剤を含有することを特徴とする〔6〕に記載の蛍光体。
【0018】
〔8〕 Zn元素、Si元素及び賦活剤を含有することを特徴とする〔6〕に記載の蛍光体。
【0019】
〔9〕 Y元素、Gd元素、B元素及び賦活剤を含有することを特徴とする〔6〕に記載の蛍光体。
【0020】
本発明によれば、微少で高発光強度の蛍光体を安定、且つ容易に得ることができ、産業上その利用価値は極めて高い。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の蛍光体及びその製造方法を更に詳細に説明する。
【0022】
本発明で用いられる保護コロイドは、粒子同士の凝集を防ぐために機能しており、特開2001−329262号の晶癖制御に用いられている有機ポリマーとは明らかに機能が異なる。本発明の保護コロイドは、天然、人工を問わず各種高分子化合物を用いることができる。その際、保護コロイドの平均分子量は、10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。また、本発明に用いられる保護コロイドは、タンパク質が好ましく、ゼラチンが特に好ましい。また、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。
【0023】
前駆体の形成方法に関しては特に限定はないが、2液以上の蛍光体原料溶液を保護コロイドの存在下で貧溶媒中に液中添加する態様が、より微小で粒度分布の狭い蛍光体を製造する為には好ましい。又、蛍光体の種類により、添加速度や添加位置、撹拌条件、pH等、諸物性値を調整することがより好ましい。この様にして、平均粒径が0.05〜1.0μm程度の粒度分布の狭い単分散の微粒子が得られる。
【0024】
蛍光体の組成としては、例えば特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されている蛍光体を適宜使用することができる。その結晶母体としては、Y2O2S、Zn2SiO4、Ca5(PO4)3Cl等に代表される金属酸化物、ZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0025】
結晶母体の好ましい例を以下に列挙する。
ZnS、SrS、GaS、(Zn,Cd)S、SrGa2S4、YO3、Y2O2S、Y2O3、Y2SiO3、SnO2、Y3Al5O12、Zn2SiO4、Sr4Al14O25、CeMgAl10O19、BaAl12O19、BaMgAl10O17、BaMgAl14O23、Ba2Mg2Al12O22、Ba2Mg4Al8O18、Ba3Mg5Al18O35、(Ba,Sr,Mg)O・aAl2O3、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、Sr2P2O7、(La,Ce)PO4、Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2、GdMgB5O10、(Y,Gd)BO3等が挙げられる。
【0026】
結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、特に元素の組成に制限はなく、同族の元素と一部置き換えたものでも使用可能で、紫外から青色領域を吸収して可視光を発するものであればどのような組み合わせでも使用可能である。しかし、特には無機酸化物蛍光体、または無機ハロゲン化物蛍光体を使用することが好ましい。
【0027】
以下に本発明に使用される蛍光体の具体的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0028】
〈青色発光無機蛍光体化合物〉
(BL−1) Sr2P2O7:Sn4+
(BL−2) Sr4Al14O25:Eu2+
(BL−3) BaMgAl10O17:Eu2+
(BL−4) SrGa2S4:Ce3+
(BL−5) CaGa2S4:Ce3+
(BL−6) (Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17:Eu2+
(BL−7) (Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+
(BL−8) ZnS:Ag
(BL−9) CaWO4
(BL−10) Y2SiO5:Ce
(BL−11) ZnS:Ag,Ga,Cl
(BL−12) Ca2B5O9Cl:Eu2+
(BL−13) BaMgAl14O23:Eu2+
(BL−14) BaMgAl10O17:Eu2+,Tb3+,Sm2+
(BL−15) BaMgAl14O23:Sm2+
(BL−16) Ba2Mg2Al12O22:Eu2+
(BL−17) Ba2Mg4Al8O18:Eu2+
(BL−18) Ba3Mg5Al18O35:Eu2+
(BL−19) (Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17 :Eu2+
〈緑色発光無機蛍光体化合物〉
(GL−1) (Ba,Mg)Al16O27:Eu2+,Mn2+
(GL−2) Sr4Al14O25:Eu2+
(GL−3) (Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu2+
(GL−4) (Ba,Mg)2SiO4:Eu2+
(GL−5) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu2+
(GL−7) (Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu2+
(GL−8) Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu2+
(GL−9) Zr2SiO4,MgAl11O19:Ce3+,Tb3+
(GL−10) Ba2SiO4:Eu2+
(GL−11) ZnS:Cu,Al
(GL−12) (Zn,Cd)S:Cu,Al
(GL−13) ZnS:Cu,Au,Al
(GL−14) Zn2SiO4:Mn3+
(GL−15) ZnS:Ag,Cu
(GL−16) (Zn,Cd)S:Cu
(GL−17) ZnS:Cu
(GL−18) Gd2O2S:Tb
(GL−19) La2O2S:Tb
(GL−20) Y2SiO5:Ce,Tb
(GL−21) Zn2GeO4:Mn
(GL−22) CeMgAl11O19:Tb
(GL−23) SrGa2S4:Eu2+
(GL−24) ZnS:Cu,Co
(GL−25) MgO・nB2O3:Ce,Tb
(GL−26) LaOBr:Tb,Tm
(GL−27) La2O2S:Tb
(GL−28) SrGa2S4:Eu2+,Tb3+,Sm2+
〈赤色発光無機蛍光体化合物〉
(RL−1) Y2O2S:Eu3+
(RL−2) (Ba,Mg)2SiO4:Eu3+
(RL−3) Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−4) LiY9(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−5) (Ba,Mg)Al16O27:Eu3+
(RL−6) (Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu3+
(RL−7) YVO4:Eu3+
(RL−8) YVO4:Eu3+,Bi3+
(RL−9) CaS:Eu3+
(RL−10) Y2O3:Eu3+
(RL−11) 3.5MgO,0.5MgF2GeO2:Mn
(RL−12) YAlO3:Eu3+
(RL−13) YBO3:Eu3+
(RLー14) (Y,Gd)BO3:Eu3+
上記の化合物の他に、3波長蛍光体に使用されている無機蛍光体や、ハロリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0029】
本発明の製造方法に適用される蛍光体粒子は、平均粒径が1μm以下であることが好ましく0.5μm以下であることがより好ましい。また、本発明の製造方法で製造された無機蛍光体の用途にもよるが、例えばインクジェット吐出に適用する場合、平均粒径を小さくコントロールすることによって蛍光インクの分散安定性、吐出安定性等を改善することが可能で、平均粒径は0.3μmを超えないことが好ましい。
【0030】
本発明における平均粒径とは、粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる、正常晶の場合には、粒子の稜の長さを言う。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状あるいは平板状粒子の場合には、粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。
【0031】
又、粒子は単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下の場合を示す。本発明において、単分散度としては30%以下が更に好ましく、0.1〜20%が特に好ましい。
【0032】
単分散度=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
本発明の蛍光体の製造方法においては、乾燥・焼成工程に先立って、該蛍光体の前駆体から副塩などの不純物を取り除き、更に余分な水分を除去して含水率を低くするために脱塩及び脱水工程を経ることが好ましい。
【0033】
本発明において、前駆体の脱塩後の電気伝導度が0.01〜20mS/cmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10mS/cmであり、特に好ましくは0.01〜5mS/cmである。0.01mS/cm未満の電気伝導度にしても特に効果は大きくならないが、生産性が低くなってしまう。また20mS/cmを超えると副塩や不純物が充分に除去できていない為に粒子の粗大化や粒子径分布が広くなり、発光強度が劣化してしまう。
【0034】
本発明において、上記記載の電気伝導度の測定方法はどのような方法を用いることも可能であるが、市販の電気伝導度測定器を使用すればよい。
【0035】
本発明において、前駆体の含水率とは、乾燥前駆体質量に対する水分質量を示し、例えば、乾燥前駆体と等量の水分を含む場合は含水率100%となる。
【0036】
本発明においては、乾燥・焼成工程の負荷低減による生産性の向上や、更には粒子成長による粗大化防止の観点から、前駆体脱水後の含水率は、350%以下であることが好ましく、更に好ましくは300%以下であり、特に好ましくは200%以下である。
【0037】
本発明において、上記記載の含水率の測定方法はどのような方法を用いることも可能で、脱水工程後のウェットケーキ質量と乾燥工程後のドライ粉末質量を測定して算出する方法でも良く、市販の水分率測定器を使用する方法でも良い。
【0038】
本発明において、ウェットケーキ状態とは、目的とする前駆体を母液と共に脱水を施すことによって大部分の水を排出して得られるもので、ある程度の水分を含んでいるが、明らかに液体状とは言えない状態を言う。
【0039】
本発明において連続的とは、液相中で蛍光体の前駆体を形成後、脱塩と脱水の間隔を極力短くすることを意味する。
【0040】
即ち、本発明でいう連続的とは、蛍光体の前駆体を形成後、脱塩を終了してから脱水を開始するまでの時間は長くても10分以内を意味し、好ましくは5分以内であり、特に好ましくは1分以内であり、前駆体の脱塩終了後、時間を置かず脱水工程に入るのが最も好ましい。
【0041】
本発明においては、凝集剤などを使用することにより、形成した蛍光体の前駆体をフロックと呼ばれる数mmから1cm程度の凝集体としてから脱塩及び脱水することもまた好ましい態様のひとつである。前駆体が凝集体を形成するため、目の粗い濾材が使用可能となり、高速及び高効率で脱塩及び脱水することが可能である。この場合において固液分離方法としては、遠心分離方式、加圧濾過方式、吸引濾過方式等、あらゆる方式を適用することができるが、遠心分離方式、または加圧濾過方式を適用することが好ましい。
【0042】
本発明に用いられる遠心分離方式とは、保護コロイドの存在下で形成した蛍光体の前駆体を母液と共に円柱状容器に注入し、該容器を高速で回転させることにより固液分離する方式である。この様な機構により固液分離する装置であればその他、特に限定はなく、あらゆる装置を好ましく適用できる。遠心分離方式の装置には、前記容器の壁面に水を放出する複数の穴を有する有孔壁タイプと、壁面に穴を有さず容器の上部から水を放出する無孔壁タイプがあるが、本発明においては前者のタイプを適用することがより好ましい。
【0043】
図1は、本発明に用いられる遠心分離方式による脱水装置の概略断面図である。1は遠心分離装置の缶体であり、その中に濾過面を有するバスケット2があり、このバスケット2はモータにより高速に回転する。3はスラリー供給用ホッパーであり、形成されたスラリー状の蛍光体の前駆体を供給する。4は洗浄水供給用ノズルである。
【0044】
図2は、遠心分離方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略工程図である。同図中、▲1▼の原液供給では、高速で回転するバスケット2にスラリー供給用ホッパー3から形成されたスラリー状の蛍光体前駆体を供給しながら、副生して溶解している副塩を含む水分を濾液として分離する。スラリー供給終了後、▲2▼の1次脱水で更に、溶解している副塩の一部を濾液として分離する。水分が除去されてバスケット内面の蛍光体前駆体ケーキの表面にクラックが発生する前に、引き続き、▲3▼の脱塩で4の洗浄水供給用ノズルより、洗浄水を供給して、蛍光体前駆体ケーキの洗浄を行い、溶解している副塩の除去を行いながら、濾液の伝導度がある目的の値になるまで脱塩を行う。脱塩終了後、洗浄水の供給を終了し、必要であればバスケットの回転数を調整し、更に▲4▼の2次脱水を行い余分な水分を除去する。
【0045】
本発明に用いられる遠心分離方式で蛍光体前駆体の脱塩及び脱水をする場合、脱塩及び脱水効率を向上させるために、下記関係式(1)で定義される遠心力Gが500以上であることがより好ましく、800以上であることが更に好ましい。
【0046】
関係式(1) G=1.119×10−5×r×N2
ここで、関係式(1)中、rはバスケットの半径〔cm〕を、Nはバスケットの回転速度〔rpm〕を表す。
【0047】
次に、本発明に用いられる加圧濾過方式とは、濾布などの濾材と、濾材を挟む濾板と、濾材を加圧するための圧搾部材から主に構成されるもので、該濾材と濾材との間隙に目的の蛍光体前駆体を母液と共に注入し、該圧搾部材により、該濾材を圧搾することにより該前駆体をプレスすることで固液分離する方式である。この様な機構により固液分離する装置であればその他に特に限定はなく、あらゆる装置を好ましく適用できる。
【0048】
上記記載の加圧濾過方式の装置としては、例えば、図3又は図4に示した装置が好ましく用いられる。
【0049】
図3は本発明に用いられる簡易型プレス方式による脱水装置の概略断面図である。図3において、スラリー供給口14よりバルブ11を介して蛍光体前駆体のスラリーが、濾布16、17及び濾板18、19の間に供給され、エアー投入口5から圧力計6、三方弁7、8を介してエアーシリンダー9に空気が送られ、蛍光体前駆体のスラリーを圧搾し、濾液排出口15よりバルブ12を介して濾液が排出され脱水処理が行われる。また、洗浄水供給口13よりバルブ10を介して洗浄水を供給し、蛍光体前駆体の脱塩処理が行われる。
【0050】
図4は、フィルタープレス方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略図である。同図中、▲1▼の原液供給では、2枚の濾板21に挟まれた濾布22の間にスラリー状の蛍光体前駆体を供給しながら、副生して溶解している副塩を含む水分を濾液排出口23より濾液として分離する。スラリー供給後、▲2▼の1次脱水で更に、ダイヤフラム24に加圧水供給口25より加圧水を送り込み、濾布を圧搾して溶解している副塩の一部を濾液として分離する。水分が除去されて蛍光体前駆体ケーキの表面にクラックが発生する前に、引き続き、▲3▼の脱塩で洗浄水供給口26より、洗浄水を供給して蛍光体前駆体ケーキの洗浄を行い、溶解している副塩の除去を行いながら、濾液の伝導度がある目的の値になるまで脱塩を行う。脱塩終了後、洗浄水の供給を終了し、必要であれば加圧水の圧力を調整し、再びダイヤフラム24に加圧水を送り込み、濾布を圧搾して、更に▲4▼の2次脱水を行い余分な水分を除去する。
【0051】
本発明に用いられる加圧脱水方式で蛍光体の前駆体を脱水する場合、脱水効率を向上させるために、加圧する圧力は0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることが更に好ましい。
【0052】
本発明において、凝集剤としては任意のものを用いることができる。例えば、特開昭58−140322号、特開昭62−32445号、特開昭63−243936号等の各公報に示されているものなどがあるが、これらに限定されるものではない。蛍光体前駆体の凝集体を形成するものであれば制限はなく、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤や水溶性高分子など種類は特に限定されない。
【0053】
本発明においては凝集剤として、ゼラチン分子のアミノ基の50%以上を置換した変性ゼラチンを好ましく用いることができる。以下、これをG剤とも称する場合がある。ゼラチンのアミノ基に対する置換基例は、米国特許第2,691,582号、同2,614,928号、同2,525,753号に記載がある。
【0054】
アミノ基を置換して変性ゼラチンを得るための有用な置換基としては、(1)アルキルアシル、アリールアシル、アセチル及び置換,無置換のベンゾイル等のアシル基、(2)アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル等のカルバモイル基、(3)アルキルスルホニル、アリールスルホニル等のスルホニル基、(4)アルキルチオカルバモイル、アリールチオカルバモイル等のチオカルバモイル基、(5)炭素数1〜18個の直鎖、分岐のアルキル基、(6)置換、無置換のフェニル、ナフチル及びピリジル、フリル等の芳香族複素環等のアリール基が挙げられる。中でも、好ましい変性ゼラチンは、アシル基(−COR11)またはカルバモイル基(−CONR11R12)によるものである。
【0055】
前記R11は置換、無置換の脂肪族基(例えば炭素数1〜18個のアルキル基、アリル基)、アリール基またはアラルキル基(例えばフェネチル基)であり、R12は水素原子、脂肪族基、アリール基、またはアラルキル基である。特に好ましいものは、R11がアリール基、R12が水素原子の場合である。
【0056】
以下に本発明において凝集高分子剤として用いることができるG剤の具体例をアミノ基置換基によって例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。例示G剤(アミノ基置換基):
【0057】
【化1】
【0058】
溶存物除去(脱塩)に際してG剤を使用する場合、その添加量は特に制限はないが、除去時に保護コロイドとして含まれている物質(好ましくはゼラチン)の0.1〜5倍量(質量)が一般に適当であり、特に好ましくは0.3〜2倍量(質量)である。
【0059】
本発明においては、蛍光体前駆体を凝析せしめるためには、該凝集剤は、固体のまま蛍光体前駆体に加えて溶解せしめてもよいが、水溶液、特に好ましくは20%以下の水溶液として加えるのが便利である。
【0060】
又、好ましい凝集剤として、下記A鎖及びB鎖からなる一般式(1)で表される高分子化合物を挙げることができる。
【0061】
【化2】
【0062】
式中、R1,R2は脂肪族基を表し、互に異なっていても同じでもよい。R3は水素原子、脂肪族基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Xは−O−、または−NH−、M+は陽イオンを表す。nは10〜104の数値をとる。なおB鎖の2つの連結手は、A鎖のR1,R2を配した第三級炭素に対しいずれの側が結ばれてもよい。またXが−NH−の場合には、R3と共に含窒素環を形成してもよい。
【0063】
この高分子化合物は、分子量として好ましくは103〜106、より好ましくは3×103〜2×105であり、添加量は蛍光体前駆体に含まれている保護コロイド(好ましくはゼラチン)に対し質量比で好ましくは1/50〜1/4、より好ましくは1/40〜1/10である。使用方法は前記G剤に準ずる。
【0064】
以下一般式(1)で表される高分子化合物(以下、これをP剤とも称する場合がある)の具体例を掲げるが、これに限定されない。
一般式(1)で表される例示P剤:
【0065】
【化3】
【0066】
【化4】
【0067】
本発明においてはまた、凝集剤として、以下に例示する有機凝集剤を好ましく用いることができる。
【0068】
第1に、凝集剤として機能する有機重合体、または非重合体スルホン酸あるいは硫酸例えばナフタレンジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及び誘導体、長鎖アルキルスルホン酸及び硫酸例えば種々アニオン系湿潤剤を用いることができる。
【0069】
第2に、フェノールアルデヒド樹脂のスルフォン化物を用いることができる。これは蛍光体前駆体溶液のpHに余り影響を受けることなく、僅かの添加量で凝集沈澱を起こすのですぐれている。またこれは保護コロイドとしてゼラチンを用いた場合には粘度増加の効果をもつため、保護コロイドとしてのゼラチン量を減ずることができる。この粘度増加効果は、pHの影響を受けることが少なく、安定している。このような化合物の例としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、ナフトール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類との結合によりえられた樹脂を、5〜10倍量の濃硫酸もしくは発煙硫酸とともに100℃前後の温度に加熱しスルフォン化して得られるものを挙げることができる。なおこれらのスルフォン化樹脂は、原料たるフェノール類をあらかじめスルフォン化物とした後アルデヒドと縮合させても得られる。この樹脂の縮合度については、低縮合度のものは蛍光体前駆体の凝集沈澱可能なpH範囲が狭く取り扱いにくく、高縮合のものは樹脂の製造に際して着色し易く増粘効果が過大となる傾向があるので、一般に平均縮合度2.5〜8のものが好ましい。またスルフォン化度はこれらの樹脂を水溶液とするのに必要な程度でよく、質量比で20〜60%の結合硫酸を含む樹脂が好ましい。
【0070】
第3に有機凝集剤として、パラビニルベンゼンスルホン酸のナトリウム、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれた化合物と、下記の一般式(A)で示されるビニル化合物より選ばれた化合物との共重合体を用いることができる。
【0071】
【化5】
【0072】
第4に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩(2)の重合体または一般式(2)と下記一般式(3)で示されるビニル化合物類との共重合体を用いることができる。
【0073】
【化6】
【0074】
但しMは水素,Li,Na,K,NH,R1,R2,R3を表し、R1,R2,R3はそれぞれ炭素数5以下のアルキルまたは置換アルキルを表す。但しR1,R2,R3の炭素数は、合計10を越えることはない。
【0075】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩の代表例としては、
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カリウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アンモニウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ビスヒドロキシメチルアンモニウム
などが挙げられる。但しこれに限定されるものではない。
【0076】
また重合させてもよいビニル誘導体の代表例には、
アクリロイルモルホリン
モルホリノメチルアクリルアミド
1−ビニル−2−メチルイミダゾール
エトキシメチルアクリルアミド
1−ビニル−ピロリジン−5−オン
などが挙げられる。但しこれに限定されるものではない。
【0077】
【化7】
【0078】
第5に、下記一般式(4)で示される芳香族フェノール類またはその誘導体を用いることができる。
【0079】
【化8】
【0080】
但し、R31はH、炭素数1〜5のアルキル基、または−OHを表わし、R32は、H、−OHまたは−COOHを表わす。
【0081】
このような化合物としては、フェノール、カテコール、プロログルシノール、サルチル酸、3,5−ジオキシ安息香酸、p−t−ブチルフェノール等がある。
【0082】
上記各有機凝集剤は、各々単独でも、2種類以上でも、各群を組み合わせて用いるのでもよい。
【0083】
上記有機凝集剤は、蛍光体前駆体の反応終了後にこれを添加し、かつpHを調節することによって該前駆体の凝集を引き起こさせるものである。
【0084】
本発明における蛍光体の製造方法においては、脱塩及び脱水時の該蛍光体前駆体及び洗浄水の温度は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。この理由は、前駆体中を水が通過する際の濾過速度は、水の粘度に反比例するためと考えられる。
【0085】
本発明においては、脱水後の蛍光体前駆体の乾燥方法には特に限定はなく、真空乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等、あらゆる方法が用いられる。
【0086】
本発明においては、脱水後の蛍光体前駆体の焼成温度、時間に特に限定はなく、蛍光体の種類に応じて適宜選択できる。更に、焼成時のガス雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気又は不活性雰囲気の何れでもよく、目的に応じて適宜選択できる。焼成装置としても特に限定はなく、あらゆる装置を使用することができる。例えば箱型炉や坩堝炉、ロータリーキルン等が好ましく用いられる。
【0087】
焼成時に焼結防止剤を添加しても添加しなくともよい。添加する場合は、前駆体形成時にスラリーとして添加してもよく、又、粉状のものを乾燥済前駆体と混合して焼成する方法も好ましく用いられる。更に、焼結防止剤に特に限定はなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が、1000℃以下での焼成にはSiO2が、1700℃以下での焼成にはAl2O3が、それぞれ好ましく使用される。
【0088】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(蛍光体1−1の調製)
《蛍光体 Ba0.9MgAl10O17:Eu0.1》
上記蛍光体の前駆体は以下に示される、液相法フローにて一次粒子を作製した。保護コロイドとしてゼラチンを純水に溶解してA液を、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム6水和物、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ユーロピウム6水和物それぞれを上記蛍光体組成比と等しくなるように純水に溶解してB液を、シュウ酸カリウム1水和物と水酸化カリウムを純水に溶解してC液をそれぞれ調製した。A液を撹拌しながらB液とC液を同時にA液中に添加して蛍光体前駆体の分散物を得た。得られた分散物を採取し、電子顕微鏡で観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.5μmであった。また分散物の電気伝導度は80mS/cmであった。
【0090】
得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。その後、遠心分離装置(概略図を図1に示した)を用いて以下の操作を行った。遠心分離装置の遠心力Gの値を300として、スラリー供給用ホッパーより前駆体の凝集体スラリーを供給した。供給終了後、30秒間脱水を行い(1次脱水工程)、引き続き洗浄水供給用ノズルより洗浄水を供給してケーキ洗浄を開始した。濾液の伝導度をモニターし、伝導度が5mS/cm以下になったところで洗浄水の供給を止め脱塩を終了した(脱塩工程)。その後、1分以内に遠心力Gの値を600として脱水を行った(2次脱水)。尚、洗浄水温度は25℃、2次脱水時間は10分間で行った。得られた脱水済み前駆体を箱型乾燥器を用いて60℃の熱風により含水率が0.3%になるまで乾燥して蛍光体前駆体の乾燥済み粉体を得た。更に乾燥済み前駆体を600℃で1時間、大気中で焼成してゼラチン等の残留有機物を焼成除去し、引き続き1600℃で3時間、窒素95%、水素5%の還元雰囲気中で焼成して蛍光体1−1を得た。
【0091】
(蛍光体1−2の調製)
上記蛍光体1−1の調製過程で、脱塩及び脱水を、図3に示すような、簡易型加圧濾過装置を用いて行うこと以外は蛍光体1−1と同様に調製して、蛍光体1−2を得た。なお脱塩及び脱水は次の方法で行った。スラリー供給口より前駆体の凝集体スラリーを簡易型加圧濾過装置内に供給した。供給終了後、プレス圧0.7MPaとして1分間脱水を行い(1次脱水工程)、引き続き洗浄水供給口より洗浄水を供給してケーキ洗浄を開始した。濾液の伝導度をモニターし、伝導度が5mS/cm以下になったところで洗浄水の供給を止め脱塩を終了した(脱塩工程)。その後1分以内に、プレス圧を1.5MPaとして脱水を行った(2次脱水)。尚、洗浄水温度は25℃、2次脱水時間は1分間で行った。
【0092】
(蛍光体1−3の調製)
上記蛍光体1−1の調製過程で、脱塩及び脱水を以下に示す方法で行う以外は蛍光体1−1と同様に調製して、蛍光体1−3を得た。まず得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。次に、3分間撹拌した後、20分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。その後、蒸留水を加えて5分間撹拌した後、15分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。同様な操作を繰り返し、最終的に上澄み液の伝導度が5mS/cm以下になったところで脱塩を終了した。その後、遠心分離装置を用いて、遠心力Gの値を600として脱水を行った。尚、洗浄水温度は25℃、脱塩回数5回、脱水時間は10分間で行った。また脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は15分であった。
【0093】
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体を0.10〜0.15Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子社製)を用いて発光強度を測定した。なお発光強度は蛍光体1−3を100として相対値で表した。
【0094】
以上の結果を表1に示す。また、同一量の前駆体を脱塩するのに必要な洗浄水も下記表1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
表1より、本発明の蛍光体は、比較例と比べて大幅に洗浄水の使用量が削減され、更に、発光強度が増加していることが明らかである。
【0097】
実施例2
(蛍光体2−1の調製)
《蛍光体 Zn1.9SiO4:Mn0.1》
上記蛍光体の前駆体は以下に示される、液相法フローにて一次粒子を作製した。保護コロイドとしてゼラチンを純水に溶解してA液を、上記蛍光体組成比と等しくなるように塩化亜鉛、塩化マンガン4水和物を純水に溶解しB液を、メタケイ酸ナトリウムを純水に溶解しC液を調製した。A液を撹拌しながらB液とC液を同時にA液中に添加して蛍光体前駆体の分散物を得た。得られた分散物を採取し、電子顕微鏡で観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.6μmであった。また分散物の電気伝導度は60mS/cmであった。
【0098】
得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。次に、3分間撹拌した後、20分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。その後、蒸留水を加えて5分間撹拌した後、15分間静置させ、デカンテーションにより、上澄み液を排水した。同様な操作を繰り返し、最終的に上澄み液の伝導度が5mS/cm以下になったところで脱塩を終了した。その後、遠心分離装置を用いて、遠心力Gの値を600として脱水を行った。
【0099】
尚、洗浄水温度は25℃、脱塩回数5回、脱水時間は10分間で行った。また脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は5分であった。
【0100】
得られた脱水済み前駆体を箱型乾燥器を用いて60℃の熱風により含水率が0.3%になるまで乾燥して蛍光体前駆体の乾燥済み粉体を得た。更に乾燥済み前駆体を600℃で1時間、大気中で焼成してゼラチン等の残留有機物を焼成除去し、引き続き1000℃で3時間、窒素100%の雰囲気中で焼成して蛍光体2−1を得た。
【0101】
(蛍光体2−2の調製)
上記蛍光体2−1の調製過程で、脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は10分であったこと以外は上記蛍光体2−1と同様に調製して、蛍光体2−2を得た。
【0102】
(蛍光体2−3の調製)
上記蛍光体2−1の調製過程で、脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は15分であったこと以外は上記蛍光体2−1と同様に調製して、蛍光体2−3を得た。
【0103】
(蛍光体2−4の調製)
上記蛍光体2−1の調製過程で、脱塩が終了してから脱水を開始するまでの時間は30分であったこと以外は上記蛍光体2−1と同様に調製して、蛍光体2−4を得た。
【0104】
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体を0.10〜0.15Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子社製)を用いて発光強度を測定した。なお発光強度は蛍光体2−4を100として相対値で表した。
【0105】
以上の結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2より、脱塩及び脱水を連続的に行うことにより、発光強度が増加していることが明らかである。
【0108】
実施例3
(蛍光体3−1の調製)
《蛍光体 Y0.95BO3:Eu0.05の前駆体合成》
上記蛍光体の前駆体は以下に示される、液相法フローにて一次粒子を作製した。保護コロイドとしてゼラチンを純水に溶解してA液を、上記蛍光体組成比と等しくなるように硝酸イットリウム6水和物と硝酸ユーロピウム6水和物を純水に溶解しB液を、ホウ酸を純水に溶解してC液をそれぞれ調製した。A液を撹拌しながらB液とC液を同時にA液中に添加し、更にpHを9前後に制御するためにアンモニアを添加して蛍光体前駆体の分散物を得た。得られた分散物を採取し、電子顕微鏡で観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.4μmであった。また分散物の電気伝導度は40mS/cmであった。
【0109】
得られた前駆体分散物に、凝集剤として前記例示のG−8で変性された(置換比率90%)変性ゼラチンを添加し、硝酸で液のpHを4.7に調整して前駆体の凝集体を形成させた。その後、図5に示すような、簡易型加圧濾過装置を用いて脱塩及び脱水を行った。
【0110】
まずスラリー供給口14より前駆体の凝集体スラリーを簡易型加圧濾過装置内に供給した。供給終了後、エアー投入口5から加圧エアーを圧力計6を0.5MPaとして脱水を行った(1次脱水工程)。ケーキ表面にクラックが発生する前に圧を解放し、引き続き洗浄水供給口26より洗浄水を供給し、再度加圧エアーを供給してケーキ洗浄を行った。
【0111】
同様の操作を繰り返し、濾液の伝導度をモニターして、伝導度が5mS/cm以下になったところで洗浄を止め脱塩を終了した(脱塩工程)。その後引き続き脱水を行った(2次脱水)。尚、洗浄水温度は25℃、2次脱水時間は5分間で行った。得られた脱水済み前駆体を箱型乾燥器を用いて60℃の熱風により含水率が0.3%になるまで乾燥して蛍光体前駆体の乾燥済み粉体を得た。更に乾燥済み前駆体を600℃で1時間、大気中で焼成してゼラチン等の残留有機物を焼成除去し、引き続き1400℃で3時間、大気中で焼成して蛍光体3−1を得た。
【0112】
(蛍光体3−2の調製)
上記蛍光体3−1の調製過程で、凝集剤を使用しない以外は上記蛍光体3−1と同様に調製して、蛍光体3−2を得た。
【0113】
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体を0.10〜0.15Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子社製)を用いて発光強度を測定した。なお発光強度は蛍光体3−2を100として相対値で表した。
【0114】
以上の結果を表3に示す。また、脱塩を開始してから脱水が終了するまでの時間も合わせて示した。
【0115】
【表3】
【0116】
表3より、脱塩・脱水時間が大幅に短縮され、その結果、発光強度が増加していることが明らかである。
【0117】
【発明の効果】
本発明により、保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体の前駆体から反応で生じた不必要な副塩、及び水分の効率的な除去が行える製造方法を提供することが出来る。更には粒子径が小さく、かつ粒子径分布が狭く、発光強度が良好な蛍光体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】遠心分離方式による脱水装置の概略断面図。
【図2】遠心分離方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略工程図。
【図3】簡易型プレス方式による脱水装置の概略断面図。
【図4】フィルタープレス方式による脱塩及び脱水の各工程を示す概略図。
【図5】凝集体スラリーの簡易型加圧濾過装置。
【符号の説明】
1 缶体
2 バスケット
3 スラリー供給用ホッパー
4 洗浄水供給用ノズル
21 濾板
22 濾布
23 濾液排出口
24 ダイヤフラム
25 加圧水供給口
26 洗浄水供給口
Claims (9)
- 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体をウェットケーキ状態で脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
- 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体を連続的に脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
- 保護コロイドの存在下で形成される蛍光体の製造方法において、該蛍光体前駆体の凝集体を形成して脱塩及び脱水することを特徴とする蛍光体の製造方法。
- 前記脱塩及び脱水が遠心分離方式により行われることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記脱塩及び脱水が加圧濾過方式により行われることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする蛍光体。
- Ba元素、Mg元素、Al元素及び賦活剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の蛍光体。
- Zn元素、Si元素及び賦活剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の蛍光体。
- Y元素、Gd元素、B元素及び賦活剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の蛍光体。
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JP2002189748A JP2004027152A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 蛍光体及びその製造方法 |
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KR100828115B1 (ko) * | 2007-05-08 | 2008-05-08 | 심현섭 | 채널사인용 채널 구조물 |
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- 2002-06-28 JP JP2002189748A patent/JP2004027152A/ja active Pending
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