JP2004026856A - 重合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液滴重合法で製造される重合体の粒子径を簡単な方法でコントロールすること。
【解決手段】少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法であって、前記第1液または第2液の少なくとも一方に増粘作用を持つ物質を添加することにより、製造される重合体の粒子径を制御することを特徴とする重合方法。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法であって、前記第1液または第2液の少なくとも一方に増粘作用を持つ物質を添加することにより、製造される重合体の粒子径を制御することを特徴とする重合方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合性モノマーを含有する液と重合開始剤を含有する液を気相中に噴出して混合することにより、重合反応を進行させる液滴重合法が知られている。液滴重合法は、重合開始剤と接触することにより重合性モノマーが瞬時に重合する場合に特に有効な方法である。
【0003】
例えば、吸水性ポリマーは、脂肪族不飽和カルボン酸を重合開始剤と接触させることによりラジカル重合させて製造するが、このとき選択される重合開始剤の種類によっては重合反応が極めて速くなる。このため、従来の溶液重合法や逆相懸濁重合法で吸水性ポリマーを製造する場合は、重合熱の除去速度がボトルネックとなり、重合速度を上げるのに限界があった。そこで近年、重合熱の除去が効率的に行われる液滴重合法を用いて吸水性ポリマーを製造することが提案されている。
【0004】
液滴重合法によれば、溶液重合法で必要とされる粉砕工程や、逆相懸濁重合法で必要とされる吸水性ポリマーと有機溶媒の分離工程、有機溶媒の蒸留回収工程が不要となる。また、条件次第では重合熱の一部を吸水性ポリマー中に含まれる水分の蒸発に利用することができるため、後に続く乾燥工程でのエネルギー負荷を低減することができ、エネルギー的に非常に有利であるという利点がある。さらに、液滴重合法によれば、気相中で混合した液滴を繊維質基材の上に直接落下させることにより、粉末を扱うことなく吸水性複合体を短時間に製造できるという利点もある。このとき、落下のタイミングを調節したり、繊維質基材の搬入速度を調節したりすることにより、所望の吸水能を有する吸水性複合体を容易に製造することができる。このため、液滴重合法を利用することにより、吸水性および吸水速度が高く、高吸水性ポリマー粒子が繊維質基材上に安定性よく固定化された吸水性複合体を提供することができる(特開平9−67403号公報、特開平10−113556号公報)。
【0005】
ただし、液滴重合法では逆相懸濁重合に比べると粒径のコントロールが難しいという問題がある。逆相懸濁重合では、用いる界面活性剤の種類や濃度、反応時の攪拌条件等を調節することにより、同じ製造装置を使いながら比較的容易に粒径分布をコントロールすることができる。しかし、従来の液滴重合法では、ノズルの種類とノズルに供給するモノマー溶液の流量でしか粒径分布をコントロールできない。このため同じ製造装置を用いて一定の生産速度で粒子を製造することが求められる工業生産の現場では、実際的な方法で粒径をコントロールすることができなかった。
【0006】
液滴重合法で粒子をコントロールする方法として、モノマー吐出ノズルを振動させる方法が特開平5−132502号公報に開示されている。しかしながら、この方法ではそれぞれのノズルに振動を与える必要があり、多数のノズルを必要とする工業装置では設備対応が困難であるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は、液滴重合法において容易に粒子径をコントロールできる方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、重合性モノマーに増粘作用を持つ物質を加えることで、液滴重合法であっても容易に粒径をコントロールできることを見出し、本発明を提供するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法において、前記第1液または第2液の少なくとも一方に増粘作用を持つ物質を添加することにより、製造される重合体の粒子径を制御することを特徴とする重合方法を提供する。
本発明の重合方法に用いる重合開始剤はレドックス系重合開始剤である酸化剤と還元剤からなり、重合性モノマー、酸化剤、還元剤、および、増粘作用を持つ物質が、それぞれ前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれていることが好ましい。また、本発明の重合方法に用いる重合性モノマーは、有機カルボン酸またはその塩を主成分とすることが好ましい。特に、重合性モノマーが、カルボキシル基の20モル%以上がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されてなるアクリル酸を主成分とすることが好ましい。さらに、レドックス系開始剤を構成する酸化剤が過酸化水素であり、還元剤がL−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸金属塩であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の重合方法について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明の重合方法では、少なくとも一方に重合性モノマー、重合開始剤、および増粘作用をもつ物質を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、重合を開始させた反応混合物の液滴を気相中で形成し、気相中で液滴状で重合することを特徴とする。
【0012】
(重合性モノマー)
本発明の重合方法に使用する重合性モノマーの種類は特に制限されない。例えば、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物、環状オレフィン化合物等を用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの重合モノマーは、置換基の種類によって水溶性重合モノマーと油溶性重合モノマーに大別される。水溶性重合モノマーとしては、オレフィン系不飽和カルボン酸またはその塩、オレフィン系不飽和スルホン酸またはその塩、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アミド等を挙げることができる。また、油溶性重合モノマーとしては、スチレン、イソブテン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等を挙げることができる。本発明で用いることができる重合性モノマーの具体例や反応例については、大津隆行著「高分子合成の化学」(化学同人)34〜43頁等を参照することができる。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
以下に、本発明の重合方法によって吸水性ポリマーを製造するときに好ましく用いられる重合性モノマーを具体的に説明する。
吸水性ポリマーを製造する場合には、重合性モノマーとして脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩が好ましく選択される。具体的には、ビニル化合物であるアクリル酸またはその塩、ビニリデン化合物であるメタクリル酸またはその塩等の不飽和モノカルボン酸またはその塩、或いはマレイン酸またはその塩、フマル酸またはその塩、イタコン酸またはその塩等の不飽和ジカルボン酸またはその塩を例示することができる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。この中で好ましいのはアクリル酸またはその塩、およびメタクリル酸またはその塩であり、特に好ましいのはアクリル酸またはその塩である。水溶性あるいは吸水性ポリマーを製造する場合には、これらの脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を、重合性モノマーの全量に対して50モル%以上用いることが好ましく、80モル%以上用いることがより好ましい。
【0014】
脂肪族不飽和カルボン酸の塩としては、水溶性の塩、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が通常用いられる。また、その中和度は、目的に応じて適宜定められるが、アクリル酸の場合には、カルボキシル基の20〜90モル%がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されたものが好ましい。アクリル酸モノマーの部分中和度が20モル%未満であると、生成する吸水性ポリマーの吸水能が著しく低下する傾向がある。
【0015】
アクリル酸モノマーの中和には、アルカリ金属の水酸化物や重炭酸塩等または水酸化アンモニウム等を使用することができるが、好ましいのはアルカリ金属水酸化物であり、その具体例としては水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。
【0016】
また、本発明の重合方法により吸水性ポリマーを製造する場合には、前記の脂肪族不飽和カルボン酸以外にこれらと共重合可能な重合性モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合させることができる。また、低水溶性モノマーではあるが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル類等も生成する吸水性ポリマーの性能を低下させない範囲の量で共重合させることができる。なお、本明細書中「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の何れをも意味するものとする。
【0017】
本発明で用いる重合性モノマー含有液に含まれる重合性モノマーの濃度は、目的に応じて適宜決定することができる。例えば、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分として含む重合性モノマー含有液の場合は、重合性モノマーの濃度を20重量%以上にすることが好ましく、25重量%以上にすることがより好ましい。濃度が20重量%より少ないと重合速度が遅くて充分なモノマー転化率が得られず、ひいては重合後の吸水性ポリマーの吸水能が十分に得られなくなる傾向がある。上限は重合反応液の取り扱い上から80重量%程度とするのがよい。
【0018】
本発明で用いる重合性モノマー含有液には、架橋剤を含有させておいてもよい。例えば、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩、特にアクリル酸またはその塩は、それ自身で自己架橋ポリマーを形成することがあるが、架橋剤を併用すれば架橋構造を積極的に形成させることができる。また、架橋剤を併用すると、一般に生成する吸水性ポリマーの吸水性能が向上する。架橋剤としては、前記重合性モノマーと共重合可能なジビニル化合物、例えば、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート類等、ならびにカルボン酸と反応し得る2個以上の官能基を有する水溶性の化合物、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が好適に使用される。この中で特に好ましいのは、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋剤の使用量は、モノマーの仕込み量に対して0.001〜1重量%、好ましくは、0.01〜0.5重量%である。なお、これらの架橋剤は開始剤混合液に含有させてもよい。
本発明の重合方法には、この他に特開平9−255704号公報[0012]〜[0015]に記載されている材料を使用することもできる。
【0019】
(重合開始剤)
本発明の重合方法に使用する重合開始剤の種類は、重合性モノマーの重合を開始させることができるものであれば特にその種類は制限されない。
例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル等の過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物のような熱分解型の重合開始剤やレドックス系重合開始剤を用いることができる。特にレドックス系開始剤が望ましい。レドックス系重合開始剤としては、一般に、酸化性を示すラジカル発生剤と還元剤との組合せからなるものを用いるのが好ましい。
【0020】
水系レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、過硫酸塩や過酸化水素等を挙げることができる。また、水系レドックス系重合開始剤の還元剤としては、第1鉄塩や亜硫酸ナトリウム等の無機系還元剤や、アルコール類、アミン類、アスコルビン酸等の有機系還元剤を挙げることができる。
非水系レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドやクメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類等を挙げることを挙げることができる。また、非水系レドックス系重合開始剤の還元剤としては、第3アミン類、ナフテン酸塩、メルカプタン類等を挙げることができる。
【0021】
レドックス系重合開始剤の酸化剤は、重合性モノマーに対して0.01〜10重量%、特に0.1〜2重量%となるように用いるのが好ましい。また、レドックス系重合開始剤の還元剤は、重合性モノマーに対して0.01〜10重量%、特に0.1〜2重量%となるように用いるのが好ましい。
なお、重合開始剤については、上記以外に大津隆行著「改定高分子合成の化学」(化学同人)59〜69頁に記載される材料や技術を利用することもできる。
【0022】
(増粘作用を持つ物質)
本発明に用いられる増粘作用を持つ物質は、重合性モノマーに溶解し、増粘効果を有するものであればその種類は特に限定されない。水溶性の重合性モノマーを用いる場合、増粘作用を持つ物質として水溶性高分子等を好ましく例示することができる。水溶性高分子には、天然品、半合成品、合成品など様々な種類のものがある。増粘作用を持つ物質の使用量は、その物質の重合性モノマーへの溶解性や増粘効果によって異なるが、通常は重合性モノマーに対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
なお、水溶性高分子については、長友新治編「水溶性高分子の応用と市場」(CMC)2〜3頁の表1、9〜22頁に記載される材料、3−8頁に記載される技術を用いることができる。
さらに用いる水溶性高分子の選択にあたっては、用いる重合性モノマーへの溶解性を確保するため上記の表に記載の水溶性を参考にすることができる。
【0023】
(第1液および第2液)
本発明の重合方法では、重合性モノマーと重合開始剤は、それぞれ前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれている。重合性モノマーが含まている液は、2液を混合する前に重合が進行しないようにしておく必要がある。
【0024】
例えば、重合開始剤として、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤を使用するときには、第1液に酸化剤、第2液に還元剤を含有させておくことができる。このとき、重合性モノマーは第1液と第2液のいずれか一方または両方に含有させておくことができる。また、第1液に重合性モノマーを含有させておき、第2液を使用直前に酸化剤と還元剤を混合することにより調製してもよい。
【0025】
一方、増粘作用を持つ物質は、前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれている。本発明において、増粘作用を持つ物質は、重合性モノマーとともに前記第1液および/または前記第2液に含まれていてもよいし、重合開始剤とともに前記第1液および/または前記第2液に含まれていてもよい。
【0026】
(重合体の製造工程)
前記第1液および第2液の噴霧混合方法は特に限定されない。例えば、2液を液柱状態で衝突させる方法(特開平6−211904号公報)や、2液を液膜状で衝突させる方法(特開平11−49805号公報)などを用いることができる。
【0027】
前記第1液と前記第2液を気相中に噴出する際には、種々のノズルを用いることができる。例えば2液を液柱状態で衝突させる方法で、図1に示すものを例示することができる。図1では、第1液(3)が導入管を経由して5本のノズル(1)に供給され、第2液(4)が導入管を経由して5本のノズル(2)に供給され、第1液と第2液がノズル先端からそれぞれ液柱状態で噴出された後に合流、分裂して液滴状で落下しながら重合を進行させるようになっている。ノズルの内径は通常0.1〜0.2mmに設定される。
【0028】
本発明では、特に前記第1液および前記第2液の少なくとも一方を、噴出断面が閉曲線状の液膜になるように気相中に噴出することが好ましい。特に、前記第1液および前記第2液の両方を、噴出断面が閉曲線状の液膜になるように気相中に噴出することが好ましい。また、本発明では、前記第1液および前記第2液の少なくとも一方を、空間的に広がるように液膜状に噴出することが好ましい。特に好ましいのは、前記第1液および前記第2液の両方を噴出断面が閉曲線状の液膜になるように気相中に噴出し、前記第1液を空間的に広がるように液膜状に噴出する場合である。
【0029】
このような噴出を可能にする好ましいノズルとして、2重同芯渦巻噴射ノズルを挙げることができる。本明細書において、2重同芯渦巻噴射ノズルとは、第1液噴出用の第1円形開口部と第2液噴出用の第2円形開口部を備えているノズルであって;前記第1円形開口部には断面が円形の第1誘導部が連結されており、さらに、該第1誘導部内壁を第1液がらせん状の軌跡を辿りながら前記第1円形開口部に降下するように第1液を供給する第1液供給手段が設置されており;前記第2円形開口部には断面が円形の第2誘導部が連結されており、さらに、該第2誘導部内壁を第2液がらせん状の軌跡を辿りながら前記第2円形開口部に降下するように第2液を供給する第2液供給手段が設置されており;前記第1円形開口部、前記第2円形開口部、前記第1誘導部、および前記第2誘導部が同心軸状に配置されていることを特徴とするノズルを意味する。
【0030】
2重同芯渦巻噴射ノズルを用いれば、内側の第1液用開口部から第1液を円錐状に噴出させ、外側の第2液用開口部から第2液を円錐状に噴出させることができる。第1液と第2液は、噴出後に互いに衝突するように噴出角度と噴出速度が調整される。例えば、第1液の噴出速度が第2液の噴出速度よりも大きくなるように調節して2液が衝突するようにしてもよいし、第1液または第2液のいずれかに空気圧を加えて噴出軌跡を調整することにより2液が効率よく衝突するようにしてもよい。
【0031】
2重同芯渦巻噴射ノズルの具体例を図2に示す。図2(a)は2重同芯渦巻噴射ノズルの誘導部上部の水平断面図であり、図2(b)は2重同芯渦巻噴射ノズルの垂直断面図である。図2(a)に示すように、第1誘導部(21)には第1液を導入するための2本の第1導入管(23a,23b)が設置されている。第1液は第1導入管(23a,23b)内を通って矢印の方向に送液され、第1誘導部(21)内に勢いよく導入される。第1液は、遠心力と重力によって第1誘導部(21)の内壁をらせん状の軌跡を辿りながら第1円形開口部(24)に到達する(図2(b))。同様に、第2誘導部にも2本の第2導入管(23c,23d)が設置されており、この第2導入管(23c,23d)を通して第2液が第2誘導部(22)に勢いよく導入され、らせん状の軌跡を辿りながら第2円形開口部(25)に到達する。円形開口部に到達した第1液と第2液は、図2(c)に示すように開口部で接線方向の速度成分を持って噴出し、気相中で合流する。図2の2重同芯渦巻噴射ノズルの形状は、第1液と第2液の種類や重合目的等に応じて適宜変更することができる。例えば、導入管の数を増減したり、誘導部の径や長さや内壁角度を調整したりすることができる。
【0032】
液滴形成は、液体の持つエネルギーまたは液体が外部から与えられる何らかのエネルギーが、界面エネルギーに変化する現象であり、モノマーに増粘作用を有する物質を添加することにより粒径が変化するのは、液滴が形成される際のエネルギーへの変換効率違い、単位界面を形成するために要するエネルギーの差によると考えられる。
【0033】
本発明にしたがって増粘作用を持つ物質を用いれば、一般に得られる重合体粒子の粒径を大きくする方向に制御することができる。また、増粘作用を持つ物質の使用量を多くすれば、一般に粒径の制御量を大きくすることができる。したがって、増粘作用を持つ物質の種類や使用量を適宜調節することによって、粒径を細かくコントロールすることが可能である。
一方、界面活性作用を持つ物質を用いれば、得られる重合体粒子の粒径を小さくする方向に制御することができることが、本発明者らにより見出されている。増粘作用を持つ物質と界面活性作用を持つ物質は、互いに相反する方向に粒径を制御する作用を有することから、これら2種類の物質を適宜組み合わせて用いることによって、広範な粒径を有する重合体粒子を容易に製造することができる。
【0034】
本発明の重合方法によれば、同じノズルを有する液滴重合用の製造装置を使いながら比較的容易に粒径をコントロールすることができる。従来の液滴重合法では、製造装置のノズルを交換したり、ノズルに供給するモノマー液の流量を調節したりすることにより、得られる重合体粒子の粒径をコントロールしていた。このため、粒径が異なる重合体粒子を製造しようとすると、装置を止めてノズルを交換したり、装置に供給するモノマー液の流量を変化させたりしなければならず、効率のよい製造を行うことができなかった。しかし、本発明の重合方法によれば、モノマー液中に含まれる増粘作用を持つ物質の濃度を適宜調整しさえすれば、ノズルを変えずに同じ流量で様々な粒径を有する重合体粒子を製造することができる。したがって、所望の粒径を有する重合体粒子を同じ効率で安定して製造することができる点で、本発明の重合方法は極めて実用的である。
【0035】
本発明の重合方法は、従来から用いられている重合方法と組み合わせて適用しても構わない。例えば、工業生産上、差し支えのない範囲内でモノマー液の流量をあらかじめ設定した後に、本発明にしたがってモノマー液中の成分濃度を調節することによって所望の粒径を有する重合体粒子を製造してもよい。また、特定のノズルを選択して製造装置に設置した後に、本発明にしたがってモノマー液中の成分濃度を調節することによって所望の粒径を有する重合体粒子を製造してもよい。これらの組み合わせは、要求される製造効率や目的とする重合体粒子の性状等に応じて適宜決定することができる。
【0036】
本発明の重合方法を利用して、吸水性ポリマーが繊維質基材に固定された吸水性複合体を製造する場合には、重合室にシート状の繊維質基材を送入し、これを重合室の床面に平行に移動させつつ、その上に落下してくる重合途上のポリマー粒子を付着させることが好ましい。繊維質基材としては、一定の形状に形成されていて、かつ重合途上のポリマー粒子が付着し易いものであればよく、布、紙、パルプ、不織布などを用いることができる。なかでも、繊維質基材が粗に集積されていてポリマー粒子が内部にまで入り込み易く、かつポリマー粒子が繊維質基材に強く付着することが可能な、フラッフパルプまたは不織布を用いるのが好ましい。特に好ましいのは湿潤状態でも強度の大きい、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アセテートなどのような(半)合成繊維からなる不織布である。不織布を構成する繊維質基材の繊維の太さは10〜50μmが好ましく、また不織布の目付量は10〜100g/m2、特に20〜50g/m2であるのが好ましい。
【0037】
重合進行中の液滴が気相中或いは繊維質基材上に接して凝集粒状体を形成する時点での重合率は、3〜97%、好ましくは20〜97%、さらに好ましくは50〜95%になるように諸条件を設定する。この重合率が余り低い場合には、液滴同士が衝突しても凝集粒状体とはならず一体化して大粒子となったり、繊維質基材上に液滴が落下した時に液が基材上に広がったり或いは吸収ないし含浸されたりして凝集粒状体の形状で繊維質基材に付着させることが困難になる。また、余り高い場合には、基材との接着力が発現せず、繊維質基材と吸水性ポリマーとの固定性が悪くなる。
【0038】
ポリマー粒子は、最終的に得られる吸水性複合体中の含有量が50〜400g/m2となるように繊維質基材に付着させることが好ましい。用途にもよるが一般に80〜300g/m2となるように付着させるのがより好ましい。吸水性複合体のポリマー粒子の含有量が少ないと、当然のことながら吸水能が小さくなる。また含有量が多過ぎることは一般に不経済であり、かつ繊維質基材と結合する部分の割合が減少して、繊維質基材との結合力が弱くなる。
【0039】
本発明の製造方法で製造される吸水性複合体を構成するポリマー粒子は、その少なくとも一部が重合途上のポリマー粒子(一次粒子)が相互に結着して凝集粒状体を構成しており、かつこの凝集粒状体を構成するポリマー粒子(一次粒子)の一部は繊維質基材に直接結合していないものであることが好ましい。このような凝集粒状体は比表面積が大きいので吸水速度が大きく、かつ凝集粒状体を構成する一次粒子の一部でしか繊維質基材に結合していないので、吸水して膨潤するに際し繊維質基材から受ける拘束が小さく、吸水能に優れている。また凝集粒状体を構成する一次粒子同士の接合面は一体化しているので、吸水前は勿論のこと吸水後においても、凝集粒状体が一次粒子に崩壊して繊維質基材から脱落することが少ない。ポリマー粒子の30重量%以上が凝集粒状体であるのが好ましく、50重量%以上、特に80重量%以上が凝集粒状体であれば更に好ましい。一般に凝集粒状体の比率が大きいほど吸水材料としての性能が優れている。凝集粒状体の粒径は実質的に100〜3000μmの範囲にあるのが好ましい。粒径が100μmより小さいと、吸水性能が十分に発現しない傾向がある。また粒径が3000μmより大きくなると、シート状の繊維質基材に対する接着力が弱くなる傾向がある。凝集粒状体の比率や粒径は、主として気相中における重合途上の粒子の密度や分布状態、流動状態などを適宜調整することにより制御することができる。例えば凝集粒状体の比率を大きくするには、重合途上の粒子が落下の途中において相互に接触する機会が増加するように、重合室の単位横断面積当たりの落下ポリマー量を大きくしたり、重合室内に上昇流を発生させてポリマー粒子の落下速度を遅くしたりすればよい。また重合室内に偏流を発生させて、落下するポリマー粒子の分布に片寄りを生じさせるのも一方法である。
【0040】
繊維質基材に吸水性ポリマーを適用した後は、含水率調整工程、表面架橋工程、残存モノマー処理工程等を適宜行って吸水性複合体を得ることができる。このようにして製造した吸水性複合体は、これまで吸水性ポリマーが利用されていた様々な用途に用いることができる。「吸水性ポリマー」81〜111頁(増田房義、共立出版、1987)、「高吸水性樹脂の開発動向とその用途展開」(大森英三、テクノフォーラム、1987)、田中健治、「工業材料」42巻4号18〜25頁、1994、原田信幸、下村忠生、同26〜30頁には吸水性ポリマーの様々な用途が紹介されており、適宜用いることができる。例えば紙おむつ、生理用品、鮮度保持材、保湿剤、保冷剤、結露防止剤、土壌改良材等が挙げられる。
【0041】
また更に特開昭63−267370号公報、特開昭63−10667号公報、特開昭63−295251号公報、特開昭270801号公報、特開昭63−294716号公報、特開昭64−64602号公報、特開平1−231940号公報、特開平1−243927号公報、特開平2−30522号公報、特開平2−153731号公報、特開平3−21385号公報、特開平4−133728号公報、特開平11−156118号公報等に提案されているシート状吸水性複合体の用途にも用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0043】
(製造例1)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水6.4重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、増粘剤としてポリエチレングリコール(MW20000)1.9重量部、さらに酸化剤として30重量%の過酸化水素水溶液5.0重量部を加えて溶液Aを調製した。溶液Aのモノマー濃度は60重量%、中和度は50モル%であった。また溶液Aの粘度は10mPa・sであった。
【0044】
(製造例2)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水9.9重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、増粘剤としてポリエチレングリコール(MW20000)1.9重量部、さらに還元剤としてL−アスコルビン酸1.5重量部を加えて溶液Bを調製した。溶液Bのモノマー濃度、中和度は溶液Aと同じであった。また溶液Bの粘度は10mPa・sであった。
【0045】
(製造例3)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水6.4重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、さらに酸化剤として30重量%の過酸化水素水溶液5.0重量部を加えて溶液Cを調製した。溶液Cのモノマー濃度は60重量%、中和度は50モル%であった。また溶液Cの粘度は7mPa・sであった。
【0046】
(製造例4)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水9.9重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、さらに還元剤としてL−アスコルビン酸1.5重量部を加えて溶液Dを調製した。溶液Dのモノマー濃度、中和度は溶液Cと同じであった。また溶液Dの粘度は7mPa・sであった。
【0047】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
表1に示す吐出口の直径を有する2重同芯渦巻噴射ノズル(図2)を用い、内側吐出口と外側吐出口にそれぞれ表1に示す種類の溶液を供給した。各溶液の液温は40℃とし、ポンプを用いて表1に示す流量と吐出圧で噴出させた。
内側吐出口から噴出した溶液と外側吐出口から噴出した溶液はノズル出口付近で衝突、微粒化し、液滴となって重合を進行させながら気相中(空気中、温度50℃)を落下した。液滴の一部は気相中で衝突して凝集粒状体を形成し、ノズルの先端より下方3mに設置したポリエステル製不織布基材(目付量:30g/m2)上に落下し、該基材上で重合を完了させた。また、同時に液滴の一部は該基材上に落下し、基材上で凝集粒状体を形成後、該基材上で重合を完了させた。このような複合化工程を経て、吸水性ポリマーは該基材上に担持された。基材に担持されたポリマ−の含水率は20〜30重量%であった。さらに該複合体には、0.5重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)のエタノール溶液を、EGDGEが担持されたポリマーに対し(乾燥ポリマーベース)、3000重量ppmとなるように噴霧した。EGDGEのエタノール溶液を施した複合体は、さらに110℃温風乾燥機により担持されたポリマーの含水率が5%になるまで乾燥し、ポリマ−担持量が200g/m2の吸水性複合体を得た。
【0048】
(試験例)
実施例1〜3および比較例1〜3で製造した各吸水性複合体について、以下の測定を行った。
1) 一次粒子平均径の測定
吸水性複合体の複数箇所の光学顕微鏡写真を撮影し、撮影された一次粒子の中から100個を任意に選択してそれらの直径を計測した。計測値の平均値を求めて、一次粒子平均径とした。
【0049】
2) 凝集粒状体の平均粒子短径の測定
吸水性複合体の複数箇所の光学顕微鏡写真を撮影し、撮影された凝集粒状体の中から100個を任意に選択してそれらの粒子短径を計測した。計測値の平均値を求めて、凝集粒状体の平均粒子短径とした。なお、粒子短径とは、粒子の径が最も長くなるようにとった長径に直交する径のうち最大のものをいう。
【0050】
3) 生理食塩水保水能の評価
125メッシュのナイロン袋(20cmx10cmの大きさ)に吸水性複合体を約2.0g入れ、1000mlのビーカー中に入れた室温の生理食塩水(濃度0.9重量%)約500gに約1時間浸漬した。その後、ナイロン袋を引き上げ、15分間懸垂して水切りした後、遠心分離機を用いて90秒間90Gの遠心力をかけて脱水した。下記W1、W2、W3の重量を測定し、下記式に従って生理食塩水保水能を算出して、担持されている吸水性ポリマーの生理食塩水保水能を評価した。
【0051】
【数1】
【0052】
式中、W1は遠心脱水後の吸水性複合体の重量、W2は吸水性複合体を構成する基材と同じ大きさの基材担体の遠心脱水後の重量、W3は吸水性複合体に担持されている吸水性ポリマーの重量を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から明らかなように、増粘作用を持つ物質を使用することによって、流量を変えなくても粒径を大きくすることができることが確認された。したがって、本発明の重合方法によれば、使用する製造装置の条件(ノズルの種類、流量など)を変えずに、用いる溶液を変えさえすれば粒径をコントロールすることが可能である。
【0055】
使用する溶液の流量を調節することにより粒径をコントロールする従来法(比較例1〜3)では、適用可能な流量の範囲に限りがあるためにコントロールすることができる粒径の範囲に限りがあり、また、得られる重合体粒子の機能が劣る場合があった(比較例3の生理食塩水保水能)。本発明の方法と組み合わせれば、粒径を広範にコントロールすることができ、所望の機能を有する重合体粒子を製造し易くなるというメリットがある。
【0056】
【発明の効果】
本発明の重合方法を用いれば、製造される重合体の粒子径を容易にコントロールすることができる。特に、同じ製造装置を用いながら、使用する溶液を適宜変えることにより粒子径を所望の大きさに調整することができるため、本発明の重合方法は実用性が高く、産業上の利用可能性も極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】対向ノズルの構成を示す図である。
【図2】2重同芯渦巻噴射ノズルの構造を示す図である。
【符号の説明】
1 第1液用ノズル
2 第2液用ノズル
3 第1液
4 第2液
21 第1誘導部
22 第2誘導部
23a,b 第1導入管
23c,d 第2導入管
24 第1円形開口部
25 第2円形開口部
【産業上の利用分野】
本発明は、少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合性モノマーを含有する液と重合開始剤を含有する液を気相中に噴出して混合することにより、重合反応を進行させる液滴重合法が知られている。液滴重合法は、重合開始剤と接触することにより重合性モノマーが瞬時に重合する場合に特に有効な方法である。
【0003】
例えば、吸水性ポリマーは、脂肪族不飽和カルボン酸を重合開始剤と接触させることによりラジカル重合させて製造するが、このとき選択される重合開始剤の種類によっては重合反応が極めて速くなる。このため、従来の溶液重合法や逆相懸濁重合法で吸水性ポリマーを製造する場合は、重合熱の除去速度がボトルネックとなり、重合速度を上げるのに限界があった。そこで近年、重合熱の除去が効率的に行われる液滴重合法を用いて吸水性ポリマーを製造することが提案されている。
【0004】
液滴重合法によれば、溶液重合法で必要とされる粉砕工程や、逆相懸濁重合法で必要とされる吸水性ポリマーと有機溶媒の分離工程、有機溶媒の蒸留回収工程が不要となる。また、条件次第では重合熱の一部を吸水性ポリマー中に含まれる水分の蒸発に利用することができるため、後に続く乾燥工程でのエネルギー負荷を低減することができ、エネルギー的に非常に有利であるという利点がある。さらに、液滴重合法によれば、気相中で混合した液滴を繊維質基材の上に直接落下させることにより、粉末を扱うことなく吸水性複合体を短時間に製造できるという利点もある。このとき、落下のタイミングを調節したり、繊維質基材の搬入速度を調節したりすることにより、所望の吸水能を有する吸水性複合体を容易に製造することができる。このため、液滴重合法を利用することにより、吸水性および吸水速度が高く、高吸水性ポリマー粒子が繊維質基材上に安定性よく固定化された吸水性複合体を提供することができる(特開平9−67403号公報、特開平10−113556号公報)。
【0005】
ただし、液滴重合法では逆相懸濁重合に比べると粒径のコントロールが難しいという問題がある。逆相懸濁重合では、用いる界面活性剤の種類や濃度、反応時の攪拌条件等を調節することにより、同じ製造装置を使いながら比較的容易に粒径分布をコントロールすることができる。しかし、従来の液滴重合法では、ノズルの種類とノズルに供給するモノマー溶液の流量でしか粒径分布をコントロールできない。このため同じ製造装置を用いて一定の生産速度で粒子を製造することが求められる工業生産の現場では、実際的な方法で粒径をコントロールすることができなかった。
【0006】
液滴重合法で粒子をコントロールする方法として、モノマー吐出ノズルを振動させる方法が特開平5−132502号公報に開示されている。しかしながら、この方法ではそれぞれのノズルに振動を与える必要があり、多数のノズルを必要とする工業装置では設備対応が困難であるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は、液滴重合法において容易に粒子径をコントロールできる方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、重合性モノマーに増粘作用を持つ物質を加えることで、液滴重合法であっても容易に粒径をコントロールできることを見出し、本発明を提供するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法において、前記第1液または第2液の少なくとも一方に増粘作用を持つ物質を添加することにより、製造される重合体の粒子径を制御することを特徴とする重合方法を提供する。
本発明の重合方法に用いる重合開始剤はレドックス系重合開始剤である酸化剤と還元剤からなり、重合性モノマー、酸化剤、還元剤、および、増粘作用を持つ物質が、それぞれ前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれていることが好ましい。また、本発明の重合方法に用いる重合性モノマーは、有機カルボン酸またはその塩を主成分とすることが好ましい。特に、重合性モノマーが、カルボキシル基の20モル%以上がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されてなるアクリル酸を主成分とすることが好ましい。さらに、レドックス系開始剤を構成する酸化剤が過酸化水素であり、還元剤がL−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸金属塩であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の重合方法について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明の重合方法では、少なくとも一方に重合性モノマー、重合開始剤、および増粘作用をもつ物質を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、重合を開始させた反応混合物の液滴を気相中で形成し、気相中で液滴状で重合することを特徴とする。
【0012】
(重合性モノマー)
本発明の重合方法に使用する重合性モノマーの種類は特に制限されない。例えば、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物、環状オレフィン化合物等を用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの重合モノマーは、置換基の種類によって水溶性重合モノマーと油溶性重合モノマーに大別される。水溶性重合モノマーとしては、オレフィン系不飽和カルボン酸またはその塩、オレフィン系不飽和スルホン酸またはその塩、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アミド等を挙げることができる。また、油溶性重合モノマーとしては、スチレン、イソブテン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等を挙げることができる。本発明で用いることができる重合性モノマーの具体例や反応例については、大津隆行著「高分子合成の化学」(化学同人)34〜43頁等を参照することができる。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
以下に、本発明の重合方法によって吸水性ポリマーを製造するときに好ましく用いられる重合性モノマーを具体的に説明する。
吸水性ポリマーを製造する場合には、重合性モノマーとして脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩が好ましく選択される。具体的には、ビニル化合物であるアクリル酸またはその塩、ビニリデン化合物であるメタクリル酸またはその塩等の不飽和モノカルボン酸またはその塩、或いはマレイン酸またはその塩、フマル酸またはその塩、イタコン酸またはその塩等の不飽和ジカルボン酸またはその塩を例示することができる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。この中で好ましいのはアクリル酸またはその塩、およびメタクリル酸またはその塩であり、特に好ましいのはアクリル酸またはその塩である。水溶性あるいは吸水性ポリマーを製造する場合には、これらの脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を、重合性モノマーの全量に対して50モル%以上用いることが好ましく、80モル%以上用いることがより好ましい。
【0014】
脂肪族不飽和カルボン酸の塩としては、水溶性の塩、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が通常用いられる。また、その中和度は、目的に応じて適宜定められるが、アクリル酸の場合には、カルボキシル基の20〜90モル%がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されたものが好ましい。アクリル酸モノマーの部分中和度が20モル%未満であると、生成する吸水性ポリマーの吸水能が著しく低下する傾向がある。
【0015】
アクリル酸モノマーの中和には、アルカリ金属の水酸化物や重炭酸塩等または水酸化アンモニウム等を使用することができるが、好ましいのはアルカリ金属水酸化物であり、その具体例としては水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。
【0016】
また、本発明の重合方法により吸水性ポリマーを製造する場合には、前記の脂肪族不飽和カルボン酸以外にこれらと共重合可能な重合性モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合させることができる。また、低水溶性モノマーではあるが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル類等も生成する吸水性ポリマーの性能を低下させない範囲の量で共重合させることができる。なお、本明細書中「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の何れをも意味するものとする。
【0017】
本発明で用いる重合性モノマー含有液に含まれる重合性モノマーの濃度は、目的に応じて適宜決定することができる。例えば、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分として含む重合性モノマー含有液の場合は、重合性モノマーの濃度を20重量%以上にすることが好ましく、25重量%以上にすることがより好ましい。濃度が20重量%より少ないと重合速度が遅くて充分なモノマー転化率が得られず、ひいては重合後の吸水性ポリマーの吸水能が十分に得られなくなる傾向がある。上限は重合反応液の取り扱い上から80重量%程度とするのがよい。
【0018】
本発明で用いる重合性モノマー含有液には、架橋剤を含有させておいてもよい。例えば、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩、特にアクリル酸またはその塩は、それ自身で自己架橋ポリマーを形成することがあるが、架橋剤を併用すれば架橋構造を積極的に形成させることができる。また、架橋剤を併用すると、一般に生成する吸水性ポリマーの吸水性能が向上する。架橋剤としては、前記重合性モノマーと共重合可能なジビニル化合物、例えば、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート類等、ならびにカルボン酸と反応し得る2個以上の官能基を有する水溶性の化合物、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が好適に使用される。この中で特に好ましいのは、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋剤の使用量は、モノマーの仕込み量に対して0.001〜1重量%、好ましくは、0.01〜0.5重量%である。なお、これらの架橋剤は開始剤混合液に含有させてもよい。
本発明の重合方法には、この他に特開平9−255704号公報[0012]〜[0015]に記載されている材料を使用することもできる。
【0019】
(重合開始剤)
本発明の重合方法に使用する重合開始剤の種類は、重合性モノマーの重合を開始させることができるものであれば特にその種類は制限されない。
例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル等の過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物のような熱分解型の重合開始剤やレドックス系重合開始剤を用いることができる。特にレドックス系開始剤が望ましい。レドックス系重合開始剤としては、一般に、酸化性を示すラジカル発生剤と還元剤との組合せからなるものを用いるのが好ましい。
【0020】
水系レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、過硫酸塩や過酸化水素等を挙げることができる。また、水系レドックス系重合開始剤の還元剤としては、第1鉄塩や亜硫酸ナトリウム等の無機系還元剤や、アルコール類、アミン類、アスコルビン酸等の有機系還元剤を挙げることができる。
非水系レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドやクメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類等を挙げることを挙げることができる。また、非水系レドックス系重合開始剤の還元剤としては、第3アミン類、ナフテン酸塩、メルカプタン類等を挙げることができる。
【0021】
レドックス系重合開始剤の酸化剤は、重合性モノマーに対して0.01〜10重量%、特に0.1〜2重量%となるように用いるのが好ましい。また、レドックス系重合開始剤の還元剤は、重合性モノマーに対して0.01〜10重量%、特に0.1〜2重量%となるように用いるのが好ましい。
なお、重合開始剤については、上記以外に大津隆行著「改定高分子合成の化学」(化学同人)59〜69頁に記載される材料や技術を利用することもできる。
【0022】
(増粘作用を持つ物質)
本発明に用いられる増粘作用を持つ物質は、重合性モノマーに溶解し、増粘効果を有するものであればその種類は特に限定されない。水溶性の重合性モノマーを用いる場合、増粘作用を持つ物質として水溶性高分子等を好ましく例示することができる。水溶性高分子には、天然品、半合成品、合成品など様々な種類のものがある。増粘作用を持つ物質の使用量は、その物質の重合性モノマーへの溶解性や増粘効果によって異なるが、通常は重合性モノマーに対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
なお、水溶性高分子については、長友新治編「水溶性高分子の応用と市場」(CMC)2〜3頁の表1、9〜22頁に記載される材料、3−8頁に記載される技術を用いることができる。
さらに用いる水溶性高分子の選択にあたっては、用いる重合性モノマーへの溶解性を確保するため上記の表に記載の水溶性を参考にすることができる。
【0023】
(第1液および第2液)
本発明の重合方法では、重合性モノマーと重合開始剤は、それぞれ前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれている。重合性モノマーが含まている液は、2液を混合する前に重合が進行しないようにしておく必要がある。
【0024】
例えば、重合開始剤として、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤を使用するときには、第1液に酸化剤、第2液に還元剤を含有させておくことができる。このとき、重合性モノマーは第1液と第2液のいずれか一方または両方に含有させておくことができる。また、第1液に重合性モノマーを含有させておき、第2液を使用直前に酸化剤と還元剤を混合することにより調製してもよい。
【0025】
一方、増粘作用を持つ物質は、前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれている。本発明において、増粘作用を持つ物質は、重合性モノマーとともに前記第1液および/または前記第2液に含まれていてもよいし、重合開始剤とともに前記第1液および/または前記第2液に含まれていてもよい。
【0026】
(重合体の製造工程)
前記第1液および第2液の噴霧混合方法は特に限定されない。例えば、2液を液柱状態で衝突させる方法(特開平6−211904号公報)や、2液を液膜状で衝突させる方法(特開平11−49805号公報)などを用いることができる。
【0027】
前記第1液と前記第2液を気相中に噴出する際には、種々のノズルを用いることができる。例えば2液を液柱状態で衝突させる方法で、図1に示すものを例示することができる。図1では、第1液(3)が導入管を経由して5本のノズル(1)に供給され、第2液(4)が導入管を経由して5本のノズル(2)に供給され、第1液と第2液がノズル先端からそれぞれ液柱状態で噴出された後に合流、分裂して液滴状で落下しながら重合を進行させるようになっている。ノズルの内径は通常0.1〜0.2mmに設定される。
【0028】
本発明では、特に前記第1液および前記第2液の少なくとも一方を、噴出断面が閉曲線状の液膜になるように気相中に噴出することが好ましい。特に、前記第1液および前記第2液の両方を、噴出断面が閉曲線状の液膜になるように気相中に噴出することが好ましい。また、本発明では、前記第1液および前記第2液の少なくとも一方を、空間的に広がるように液膜状に噴出することが好ましい。特に好ましいのは、前記第1液および前記第2液の両方を噴出断面が閉曲線状の液膜になるように気相中に噴出し、前記第1液を空間的に広がるように液膜状に噴出する場合である。
【0029】
このような噴出を可能にする好ましいノズルとして、2重同芯渦巻噴射ノズルを挙げることができる。本明細書において、2重同芯渦巻噴射ノズルとは、第1液噴出用の第1円形開口部と第2液噴出用の第2円形開口部を備えているノズルであって;前記第1円形開口部には断面が円形の第1誘導部が連結されており、さらに、該第1誘導部内壁を第1液がらせん状の軌跡を辿りながら前記第1円形開口部に降下するように第1液を供給する第1液供給手段が設置されており;前記第2円形開口部には断面が円形の第2誘導部が連結されており、さらに、該第2誘導部内壁を第2液がらせん状の軌跡を辿りながら前記第2円形開口部に降下するように第2液を供給する第2液供給手段が設置されており;前記第1円形開口部、前記第2円形開口部、前記第1誘導部、および前記第2誘導部が同心軸状に配置されていることを特徴とするノズルを意味する。
【0030】
2重同芯渦巻噴射ノズルを用いれば、内側の第1液用開口部から第1液を円錐状に噴出させ、外側の第2液用開口部から第2液を円錐状に噴出させることができる。第1液と第2液は、噴出後に互いに衝突するように噴出角度と噴出速度が調整される。例えば、第1液の噴出速度が第2液の噴出速度よりも大きくなるように調節して2液が衝突するようにしてもよいし、第1液または第2液のいずれかに空気圧を加えて噴出軌跡を調整することにより2液が効率よく衝突するようにしてもよい。
【0031】
2重同芯渦巻噴射ノズルの具体例を図2に示す。図2(a)は2重同芯渦巻噴射ノズルの誘導部上部の水平断面図であり、図2(b)は2重同芯渦巻噴射ノズルの垂直断面図である。図2(a)に示すように、第1誘導部(21)には第1液を導入するための2本の第1導入管(23a,23b)が設置されている。第1液は第1導入管(23a,23b)内を通って矢印の方向に送液され、第1誘導部(21)内に勢いよく導入される。第1液は、遠心力と重力によって第1誘導部(21)の内壁をらせん状の軌跡を辿りながら第1円形開口部(24)に到達する(図2(b))。同様に、第2誘導部にも2本の第2導入管(23c,23d)が設置されており、この第2導入管(23c,23d)を通して第2液が第2誘導部(22)に勢いよく導入され、らせん状の軌跡を辿りながら第2円形開口部(25)に到達する。円形開口部に到達した第1液と第2液は、図2(c)に示すように開口部で接線方向の速度成分を持って噴出し、気相中で合流する。図2の2重同芯渦巻噴射ノズルの形状は、第1液と第2液の種類や重合目的等に応じて適宜変更することができる。例えば、導入管の数を増減したり、誘導部の径や長さや内壁角度を調整したりすることができる。
【0032】
液滴形成は、液体の持つエネルギーまたは液体が外部から与えられる何らかのエネルギーが、界面エネルギーに変化する現象であり、モノマーに増粘作用を有する物質を添加することにより粒径が変化するのは、液滴が形成される際のエネルギーへの変換効率違い、単位界面を形成するために要するエネルギーの差によると考えられる。
【0033】
本発明にしたがって増粘作用を持つ物質を用いれば、一般に得られる重合体粒子の粒径を大きくする方向に制御することができる。また、増粘作用を持つ物質の使用量を多くすれば、一般に粒径の制御量を大きくすることができる。したがって、増粘作用を持つ物質の種類や使用量を適宜調節することによって、粒径を細かくコントロールすることが可能である。
一方、界面活性作用を持つ物質を用いれば、得られる重合体粒子の粒径を小さくする方向に制御することができることが、本発明者らにより見出されている。増粘作用を持つ物質と界面活性作用を持つ物質は、互いに相反する方向に粒径を制御する作用を有することから、これら2種類の物質を適宜組み合わせて用いることによって、広範な粒径を有する重合体粒子を容易に製造することができる。
【0034】
本発明の重合方法によれば、同じノズルを有する液滴重合用の製造装置を使いながら比較的容易に粒径をコントロールすることができる。従来の液滴重合法では、製造装置のノズルを交換したり、ノズルに供給するモノマー液の流量を調節したりすることにより、得られる重合体粒子の粒径をコントロールしていた。このため、粒径が異なる重合体粒子を製造しようとすると、装置を止めてノズルを交換したり、装置に供給するモノマー液の流量を変化させたりしなければならず、効率のよい製造を行うことができなかった。しかし、本発明の重合方法によれば、モノマー液中に含まれる増粘作用を持つ物質の濃度を適宜調整しさえすれば、ノズルを変えずに同じ流量で様々な粒径を有する重合体粒子を製造することができる。したがって、所望の粒径を有する重合体粒子を同じ効率で安定して製造することができる点で、本発明の重合方法は極めて実用的である。
【0035】
本発明の重合方法は、従来から用いられている重合方法と組み合わせて適用しても構わない。例えば、工業生産上、差し支えのない範囲内でモノマー液の流量をあらかじめ設定した後に、本発明にしたがってモノマー液中の成分濃度を調節することによって所望の粒径を有する重合体粒子を製造してもよい。また、特定のノズルを選択して製造装置に設置した後に、本発明にしたがってモノマー液中の成分濃度を調節することによって所望の粒径を有する重合体粒子を製造してもよい。これらの組み合わせは、要求される製造効率や目的とする重合体粒子の性状等に応じて適宜決定することができる。
【0036】
本発明の重合方法を利用して、吸水性ポリマーが繊維質基材に固定された吸水性複合体を製造する場合には、重合室にシート状の繊維質基材を送入し、これを重合室の床面に平行に移動させつつ、その上に落下してくる重合途上のポリマー粒子を付着させることが好ましい。繊維質基材としては、一定の形状に形成されていて、かつ重合途上のポリマー粒子が付着し易いものであればよく、布、紙、パルプ、不織布などを用いることができる。なかでも、繊維質基材が粗に集積されていてポリマー粒子が内部にまで入り込み易く、かつポリマー粒子が繊維質基材に強く付着することが可能な、フラッフパルプまたは不織布を用いるのが好ましい。特に好ましいのは湿潤状態でも強度の大きい、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アセテートなどのような(半)合成繊維からなる不織布である。不織布を構成する繊維質基材の繊維の太さは10〜50μmが好ましく、また不織布の目付量は10〜100g/m2、特に20〜50g/m2であるのが好ましい。
【0037】
重合進行中の液滴が気相中或いは繊維質基材上に接して凝集粒状体を形成する時点での重合率は、3〜97%、好ましくは20〜97%、さらに好ましくは50〜95%になるように諸条件を設定する。この重合率が余り低い場合には、液滴同士が衝突しても凝集粒状体とはならず一体化して大粒子となったり、繊維質基材上に液滴が落下した時に液が基材上に広がったり或いは吸収ないし含浸されたりして凝集粒状体の形状で繊維質基材に付着させることが困難になる。また、余り高い場合には、基材との接着力が発現せず、繊維質基材と吸水性ポリマーとの固定性が悪くなる。
【0038】
ポリマー粒子は、最終的に得られる吸水性複合体中の含有量が50〜400g/m2となるように繊維質基材に付着させることが好ましい。用途にもよるが一般に80〜300g/m2となるように付着させるのがより好ましい。吸水性複合体のポリマー粒子の含有量が少ないと、当然のことながら吸水能が小さくなる。また含有量が多過ぎることは一般に不経済であり、かつ繊維質基材と結合する部分の割合が減少して、繊維質基材との結合力が弱くなる。
【0039】
本発明の製造方法で製造される吸水性複合体を構成するポリマー粒子は、その少なくとも一部が重合途上のポリマー粒子(一次粒子)が相互に結着して凝集粒状体を構成しており、かつこの凝集粒状体を構成するポリマー粒子(一次粒子)の一部は繊維質基材に直接結合していないものであることが好ましい。このような凝集粒状体は比表面積が大きいので吸水速度が大きく、かつ凝集粒状体を構成する一次粒子の一部でしか繊維質基材に結合していないので、吸水して膨潤するに際し繊維質基材から受ける拘束が小さく、吸水能に優れている。また凝集粒状体を構成する一次粒子同士の接合面は一体化しているので、吸水前は勿論のこと吸水後においても、凝集粒状体が一次粒子に崩壊して繊維質基材から脱落することが少ない。ポリマー粒子の30重量%以上が凝集粒状体であるのが好ましく、50重量%以上、特に80重量%以上が凝集粒状体であれば更に好ましい。一般に凝集粒状体の比率が大きいほど吸水材料としての性能が優れている。凝集粒状体の粒径は実質的に100〜3000μmの範囲にあるのが好ましい。粒径が100μmより小さいと、吸水性能が十分に発現しない傾向がある。また粒径が3000μmより大きくなると、シート状の繊維質基材に対する接着力が弱くなる傾向がある。凝集粒状体の比率や粒径は、主として気相中における重合途上の粒子の密度や分布状態、流動状態などを適宜調整することにより制御することができる。例えば凝集粒状体の比率を大きくするには、重合途上の粒子が落下の途中において相互に接触する機会が増加するように、重合室の単位横断面積当たりの落下ポリマー量を大きくしたり、重合室内に上昇流を発生させてポリマー粒子の落下速度を遅くしたりすればよい。また重合室内に偏流を発生させて、落下するポリマー粒子の分布に片寄りを生じさせるのも一方法である。
【0040】
繊維質基材に吸水性ポリマーを適用した後は、含水率調整工程、表面架橋工程、残存モノマー処理工程等を適宜行って吸水性複合体を得ることができる。このようにして製造した吸水性複合体は、これまで吸水性ポリマーが利用されていた様々な用途に用いることができる。「吸水性ポリマー」81〜111頁(増田房義、共立出版、1987)、「高吸水性樹脂の開発動向とその用途展開」(大森英三、テクノフォーラム、1987)、田中健治、「工業材料」42巻4号18〜25頁、1994、原田信幸、下村忠生、同26〜30頁には吸水性ポリマーの様々な用途が紹介されており、適宜用いることができる。例えば紙おむつ、生理用品、鮮度保持材、保湿剤、保冷剤、結露防止剤、土壌改良材等が挙げられる。
【0041】
また更に特開昭63−267370号公報、特開昭63−10667号公報、特開昭63−295251号公報、特開昭270801号公報、特開昭63−294716号公報、特開昭64−64602号公報、特開平1−231940号公報、特開平1−243927号公報、特開平2−30522号公報、特開平2−153731号公報、特開平3−21385号公報、特開平4−133728号公報、特開平11−156118号公報等に提案されているシート状吸水性複合体の用途にも用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0043】
(製造例1)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水6.4重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、増粘剤としてポリエチレングリコール(MW20000)1.9重量部、さらに酸化剤として30重量%の過酸化水素水溶液5.0重量部を加えて溶液Aを調製した。溶液Aのモノマー濃度は60重量%、中和度は50モル%であった。また溶液Aの粘度は10mPa・sであった。
【0044】
(製造例2)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水9.9重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、増粘剤としてポリエチレングリコール(MW20000)1.9重量部、さらに還元剤としてL−アスコルビン酸1.5重量部を加えて溶液Bを調製した。溶液Bのモノマー濃度、中和度は溶液Aと同じであった。また溶液Bの粘度は10mPa・sであった。
【0045】
(製造例3)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水6.4重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、さらに酸化剤として30重量%の過酸化水素水溶液5.0重量部を加えて溶液Cを調製した。溶液Cのモノマー濃度は60重量%、中和度は50モル%であった。また溶液Cの粘度は7mPa・sであった。
【0046】
(製造例4)
80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量部、水9.9重量部、架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド0.15重量部、さらに還元剤としてL−アスコルビン酸1.5重量部を加えて溶液Dを調製した。溶液Dのモノマー濃度、中和度は溶液Cと同じであった。また溶液Dの粘度は7mPa・sであった。
【0047】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
表1に示す吐出口の直径を有する2重同芯渦巻噴射ノズル(図2)を用い、内側吐出口と外側吐出口にそれぞれ表1に示す種類の溶液を供給した。各溶液の液温は40℃とし、ポンプを用いて表1に示す流量と吐出圧で噴出させた。
内側吐出口から噴出した溶液と外側吐出口から噴出した溶液はノズル出口付近で衝突、微粒化し、液滴となって重合を進行させながら気相中(空気中、温度50℃)を落下した。液滴の一部は気相中で衝突して凝集粒状体を形成し、ノズルの先端より下方3mに設置したポリエステル製不織布基材(目付量:30g/m2)上に落下し、該基材上で重合を完了させた。また、同時に液滴の一部は該基材上に落下し、基材上で凝集粒状体を形成後、該基材上で重合を完了させた。このような複合化工程を経て、吸水性ポリマーは該基材上に担持された。基材に担持されたポリマ−の含水率は20〜30重量%であった。さらに該複合体には、0.5重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)のエタノール溶液を、EGDGEが担持されたポリマーに対し(乾燥ポリマーベース)、3000重量ppmとなるように噴霧した。EGDGEのエタノール溶液を施した複合体は、さらに110℃温風乾燥機により担持されたポリマーの含水率が5%になるまで乾燥し、ポリマ−担持量が200g/m2の吸水性複合体を得た。
【0048】
(試験例)
実施例1〜3および比較例1〜3で製造した各吸水性複合体について、以下の測定を行った。
1) 一次粒子平均径の測定
吸水性複合体の複数箇所の光学顕微鏡写真を撮影し、撮影された一次粒子の中から100個を任意に選択してそれらの直径を計測した。計測値の平均値を求めて、一次粒子平均径とした。
【0049】
2) 凝集粒状体の平均粒子短径の測定
吸水性複合体の複数箇所の光学顕微鏡写真を撮影し、撮影された凝集粒状体の中から100個を任意に選択してそれらの粒子短径を計測した。計測値の平均値を求めて、凝集粒状体の平均粒子短径とした。なお、粒子短径とは、粒子の径が最も長くなるようにとった長径に直交する径のうち最大のものをいう。
【0050】
3) 生理食塩水保水能の評価
125メッシュのナイロン袋(20cmx10cmの大きさ)に吸水性複合体を約2.0g入れ、1000mlのビーカー中に入れた室温の生理食塩水(濃度0.9重量%)約500gに約1時間浸漬した。その後、ナイロン袋を引き上げ、15分間懸垂して水切りした後、遠心分離機を用いて90秒間90Gの遠心力をかけて脱水した。下記W1、W2、W3の重量を測定し、下記式に従って生理食塩水保水能を算出して、担持されている吸水性ポリマーの生理食塩水保水能を評価した。
【0051】
【数1】
【0052】
式中、W1は遠心脱水後の吸水性複合体の重量、W2は吸水性複合体を構成する基材と同じ大きさの基材担体の遠心脱水後の重量、W3は吸水性複合体に担持されている吸水性ポリマーの重量を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から明らかなように、増粘作用を持つ物質を使用することによって、流量を変えなくても粒径を大きくすることができることが確認された。したがって、本発明の重合方法によれば、使用する製造装置の条件(ノズルの種類、流量など)を変えずに、用いる溶液を変えさえすれば粒径をコントロールすることが可能である。
【0055】
使用する溶液の流量を調節することにより粒径をコントロールする従来法(比較例1〜3)では、適用可能な流量の範囲に限りがあるためにコントロールすることができる粒径の範囲に限りがあり、また、得られる重合体粒子の機能が劣る場合があった(比較例3の生理食塩水保水能)。本発明の方法と組み合わせれば、粒径を広範にコントロールすることができ、所望の機能を有する重合体粒子を製造し易くなるというメリットがある。
【0056】
【発明の効果】
本発明の重合方法を用いれば、製造される重合体の粒子径を容易にコントロールすることができる。特に、同じ製造装置を用いながら、使用する溶液を適宜変えることにより粒子径を所望の大きさに調整することができるため、本発明の重合方法は実用性が高く、産業上の利用可能性も極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】対向ノズルの構成を示す図である。
【図2】2重同芯渦巻噴射ノズルの構造を示す図である。
【符号の説明】
1 第1液用ノズル
2 第2液用ノズル
3 第1液
4 第2液
21 第1誘導部
22 第2誘導部
23a,b 第1導入管
23c,d 第2導入管
24 第1円形開口部
25 第2円形開口部
Claims (5)
- 少なくとも一方に重合性モノマーと重合開始剤を含む第1液および第2液を気相中に噴霧、混合し、液滴状で重合させる重合方法において、
前記第1液または第2液の少なくとも一方に増粘作用を持つ物質を添加することにより、製造される重合体の粒子径を制御することを特徴とする重合方法。 - 前記重合開始剤がレドックス系重合開始剤である酸化剤と還元剤からなり、重合性モノマー、酸化剤、還元剤、および増粘作用を持つ物質が、それぞれ前記第1液または前記第2液の少なくとも一方に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の重合方法。
- 前記重合性モノマーが有機カルボン酸またはその塩を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の重合方法。
- 前記重合性モノマーがカルボキシル基の20モル%以上がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されてなるアクリル酸を主成分とすることを特徴とする請求項3に記載の重合方法。
- 前記レドックス系開始剤を構成する酸化剤が過酸化水素であり、還元剤がL−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸金属塩である請求項2〜4のいずれか1項に記載の重合方法。
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JP2002180793A JP2004026856A (ja) | 2002-06-21 | 2002-06-21 | 重合方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009543918A (ja) * | 2006-07-19 | 2009-12-10 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア | モノマー溶液の液滴の重合による、高い透過性を有する吸水性ポリマー粒子の製造方法 |
-
2002
- 2002-06-21 JP JP2002180793A patent/JP2004026856A/ja active Pending
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