JP2004025850A - 被記録媒体 - Google Patents

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河野 健一
Hiroshi Kakihira
垣平 洋
Akira Kita
北 彰
Hayato Tomihara
冨原 隼人
Koji Fujimoto
藤本 幸士
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Abstract

【課題】画像の光沢性やインク受容層のインク吸収性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、およびインク受容層あるいは印字直後のインク受容層から発生する低級脂肪酸による刺激臭(または不快臭)が抑制された被記録媒体を提供すること。
【解決手段】支持体の少なくとも片面に、アルミナ水和物からなるインク受容層を設けた被記録媒体において、該被記録媒体を60℃で1時間加熱したときに発生する低級脂肪酸の濃度が0.1〜1.0ppm/m・Lの範囲であることを特徴とする被記録媒体。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクによる記録に好適な被記録媒体に関し、特にインクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターに適用した際に、光沢性やインク吸収性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、およびインク受容層あるいは印字直後のインク受容層からの低級脂肪酸による刺激臭(または不快臭)が抑制された被記録媒体に関する。また、本発明は、光沢性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、および長期保存における画像の退色や変色が抑制された被記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させ、紙などの被記録媒体に付着させることで画像や文字などの記録を行う記録方式である。また、インクジェット記録方式は、高速印字性、低騒音性および記録パターンの融通性に優れ、さらに多色化を容易に行うことができ、現像および画像定着が不要であるといった特徴がある。特に、多色インクジェット方式で形成された画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画と比較しても遜色のない記録を得ることが可能で、作成部数が少ない場合には通常の印刷技術や写真技術より印刷コストが安価に済むという利点もあることから、近年、各種情報機器の画像記録装置として急速に普及している。
【0003】
このようなインクジェット記録方式において、記録の高速化、高精細化、あるいはフルカラー化といった記録特性を向上させるため、記録装置や記録方法の改良が行われてきたが、それに伴い被記録媒体にもより高度な特性が要求されるようになってきた。すなわち、銀塩写真に匹敵する高解像度で高品質の記録画像を得るために、
(1)印字ドットの濃度が高く鮮やかで明るい色調が出せること、
(2)コントラストが高いこと、
(3)印字ドットが重なってもインクが流れ出したり、滲んだりしないような高いインク吸収性を有すること、
(4)インクの横方向への拡散が必要以上に大きくならず真円に近い印字ドット形状であること、
(5)ドットの周辺が滑らかでぼやけないこと、
などが求められてきた。
【0004】
これらの要求に対し、従来からいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、低サイズ原紙に表面加工用の塗料を薄く塗布し、インク吸収性を高めた一般紙タイプのインクジェット記録用紙が開示されている。特許文献2および3には、前記一般紙タイプの欠点であったドットの形状、濃度あるいは色調の再現性を改善するために、被覆層中の顔料として非晶質シリカを用いた例が開示されている。また、近年、インク受容層のインク吸収性、画像の光沢性および透明性を高めたものとして、微細なアルミナ水和物を水溶性のバインダーとともに支持体上に塗布した被記録媒体が提案されており、例えば、特許文献4〜6に開示されている。
【0005】
アルミナ水和物は正電荷を有し、インク中の染料の定着性が良いことから理想的な顔料とされるが、この長所を被記録媒体に十分に発揮させるには、アルミナ水和物が良好な分散状態に保たれた塗工液を使用してインク受容層を形成することが必要であり、そのために、一般にアルミナ水和物の水性ゾル中には解膠剤として酸が添加されている。例えば、特許文献7および8には、酢酸、蟻酸、シュウ酸などの有機酸や、硝酸、塩酸、硫酸といった無機酸を添加して、良分散の透明ゾルを得る方法が開示されている。
【0006】
一方、画像が銀塩写真並みの高い光沢性を得ることを目的として、樹脂で被覆された紙またはフィルムなどの表面平滑性の高いものを支持体とし、その上にインク受容層を形成させた被記録媒体が主流となりつつある。しかしながら、このような支持体は耐熱性が低く、前記アルミナ水和物を含む塗工液を塗布した後、高温で乾燥できないことから、インク受容層中に解膠剤である酸が残留し、不快臭発生の原因となっていた。また、画像が形成された被記録媒体が高温多湿環境に曝された場合、染料がマイグレーションして画像が滲んでしまうことから、様々なカチオン性樹脂が色材固着剤として使用されてきたが、インク受容層中に酸が残留すると、残留している酸が上記カチオン性樹脂の作用を低下させ、満足できる効果が得られないことがあり、問題となっていた。
【0007】
【特許文献1】
特開昭52−53012号公報
【特許文献2】
特開昭55−51583号公報
【特許文献3】
特開昭64−11877号公報
【特許文献4】
特開平2−276670号公報
【特許文献5】
特開平7−76161号公報
【特許文献6】
特開平11−34484号公報
【特許文献7】
特開平4−67985号公報
【特許文献8】
特開平9−24666号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実態に鑑みて為されたものであり、画像の光沢性やインク受容層のインク吸収性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、およびインク受容層あるいは印字直後のインク受容層から発生する低級脂肪酸による刺激臭(または不快臭)が抑制された被記録媒体を提供することを第1の目的としている。また、本発明は、画像濃度が高く良好な色調とインク吸収性を示し、かつ光沢性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、および長期保存における画像の退色や変色が抑制された被記録媒体を提供することを第2の目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、第1の目的の達成のために、印字品位に優れ、染料のマイグレーションおよびインク受容層の不快臭を抑制した被記録媒体を得るために種々検討を重ねた結果、アルミナ水和物からなるインク受容層を設けた被記録媒体において、該インク受容層中に残留する低級脂肪酸の濃度を、特定の範囲にすることで前述した目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、第2の目的の達成のために、印字品位に優れ、表面の光沢性に優れ、長期保存における画像の退色、変色、および染料のマイグレーションが抑制された被記録媒体を得るために種々検討を重ねた結果、アルミナ水和物、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂、カチオン性樹脂、およびホウ素化合物を主成分としたインク受容層を有する被記録媒体において、前記アルミナ水和物、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂、カチオン性樹脂、およびホウ素化合物の質量比率が特定の関係を満たす場合に前述した目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、第1の態様において、本発明は、支持体の少なくとも片面に、アルミナ水和物からなるインク受容層を設けた被記録媒体において、該被記録媒体を60℃で1時間加熱したときに発生する低級脂肪酸の濃度が0.1〜1.0ppm/m・Lの範囲であることを特徴とする被記録媒体を提供する。
【0011】
また、第2の態様において、本発明は、支持体の少なくとも片面に、アルミナ水和物からなるインク受容層を設けた被記録媒体において、該被記録媒体を60℃で1時間加熱したときに発生する低級脂肪酸の濃度が0.1〜1.0ppm/m・Lの範囲であり、かつ該被記録媒体のインク受容層に画像を形成した後、23℃で10分間静置した場合に発生する低級脂肪酸の濃度が2.5ppm/m・L以下であることを特徴とする被記録媒体を提供する。さらに本発明の第1または第2における被記録媒体は、インク受容層にカチオン性樹脂が含有されることが好ましい。
【0012】
また、第3の態様において、本発明は、支持体と該支持体の表面に設けられたインク受容層とからなり、該インク受容層が、アルミナ水和物、水溶性樹脂および水分散性樹脂から選択された少なくとも一種類のバインダー樹脂、カチオン性樹脂、およびホウ素化合物を含有し、前記アルミナ水和物、バインダー樹脂、カチオン性樹脂およびホウ素化合物が下記式1および2が、A≧20×C(式1)、かつB≧2×(C+D)(式2)、式中、A:前記アルミナ水和物の質量比率、B:前記バインダー樹脂の質量比率、C:前記カチオン性樹脂の質量比率、およびD:前記ホウ素化合物の質量比率、の関係を満たし、かつ該インク受容層の表面の算術平均粗さ(Ra)が、JIS−B−0601で規定されるカットオフ値0.25mm、測定長さ1.25mmで測定したとき0.1μm以下であることを特徴とする被記録媒体を提供する。
【0013】
上記本発明の第3の態様においては、カチオン性樹脂が、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体であること、水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールであること、およびホウ素化合物が、ホウ酸またはホウ酸塩であることが好ましい。
さらに上記本発明の第1〜3の態様のそれぞれにおける被記録媒体は、支持体としてフィルムまたはポリオレフィン樹脂被覆紙を用いることが好ましい。
【0014】
上記の第1または第2の態様の構成とすることで、本発明の被記録媒体は画像濃度、色調およびインク吸収性などの印字特性や画像の光沢性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、およびインク受容層あるいは印字直後のインク受容層から発生する低級脂肪酸による刺激臭(または不快臭)が抑制されている。
【0015】
また、上記第3の態様の構成とすることで、本発明の被記録媒体は画像濃度や色調、インク吸収性などの印字特性や光沢性に優れ、長期保存における画像の退色、変色、および染料のマイグレーションが少ない。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明において使用する支持体としては、例えば、適度のサイジングが施された紙、無サイズ紙、コート紙、キャストコート紙、紙の両面がポリオレフィンなどの樹脂で被覆された樹脂被覆紙(以下レジンコート紙と記す)などの紙類からなるもの:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートおよびポリカーボネートなどの透明な熱可塑性樹脂フィルム:無機物の充填または微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙など):さらにはガラスまたは金属などからなるシートなどが挙げられる。なお、本発明においては、支持体上にインク受容層が形成されるが、インク受容層表面の光沢性を高めるという観点から、非吸水性で平滑性の高いフィルムまたはレジンコート紙を用いるのが好ましい。また、これら支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことが可能である。
【0017】
本発明において使用するアルミナ水和物は、水酸化アルミニウムと称されるものも含み、下記一般式(1)により定義されるものが好ましい。
Al3−n(OH)2n・mHO  (1)
式中、nは0、1、2または3の整数の内のいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。mHOは多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物をか焼した場合、mは0の値に達することが有り得る。
【0018】
上記一般式(1)で表わされるアルミナ水和物の中でも、特にベーマイト構造もしくは擬ベーマイト構造のアルミナ水和物がより好ましい。一般にベーマイト構造を示すアルミナ水和物は、その(020)結晶面が巨大平面を形成する層状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを示す。ベーマイト構造としては、完全ベーマイトの他に擬ベーマイトと称する、過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造を採ることもできる。この擬ベーマイトのエックス線回折図形は完全ベーマイトよりも幅広な回折ピークを示すが、完全なベーマイトと擬ベーマイトは明確に区別できるものではないので、本発明では特に断らない限り、両者を含めてベーマイト構造を示すアルミナ水和物という。
【0019】
本発明の被記録媒体のインク受容層に含有されるアルミナ水和物の製造方法としては、特に限定はされないが、例えば、バイヤー法や明バン熱分解法などのいずれの方法も採用することができる。特に好ましい方法は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解する方法である。ここで、長鎖のアルミニウムアルコキシドとは、例えば、炭素数が5以上のアルコキシドであり、さらに炭素数12〜22のアルミニウムアルコキシドを用いると、後述のようなアルコール分の除去、および得られるアルミナ水和物の形状制御が容易になるために好ましい。上記アルミニウムアルコキシドの加水分解による方法は、アルミナヒドロゲルやカチオン性アルミナを製造する方法と比較して各種イオンなどの不純物が混入し難いという利点がある。さらに長鎖のアルミニウムアルコキシドは加水分解後の長鎖のアルコールが除去し易いため、例えば、アルミニウムイソプロキシドなどの短鎖のアルコキシドを用いる場合と比較して、アルミナ水和物の脱アルコールを完全に行うことができるという利点もある。
【0020】
上記方法によって得られたアルミナ水和物は、水熱合成の工程を経て、粒子を成長させる熟成工程の条件を調整することにより、アルミナ水和物の粒子形状を特定範囲に制御することができ、熟成時間を適当に設定すると、粒子径が比較的均一なアルミナ水和物の一次粒子が成長する。ここで得られたゾルは、解膠剤として酸を添加することで、分散液として用いることもできるが、アルミナ水和物の水への分散性をより向上させるため、ゾルをスプレードライなどの方法により粉末化した後、酸を添加して分散液とすることが好ましい。
【0021】
本発明におけるアルミナ水和物の形態としては、高光沢および高透明性のインク受容層を得るために、平均粒径が150nm〜250nmの範囲が好ましく、より好ましくは160nm〜230nmの範囲である。アルミナ水和物の平均粒径が150nmより小さい場合にはインク吸収性が低下し、インクの吐出量が多いプリンターや、高速出力するプリンターで印字する際に滲みやビーディングが発生する。一方、平均粒径が250nmより大きい場合にはインク受容層の透明性が低下するとともに、耐ガス性が低下することがある。
【0022】
なお、本発明でいう平均粒径は動的光散乱法によって測定され、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、あるいはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法を用いた解析から求めることができる。動的光散乱法は異なる粒径を持つ微粒子が混在している場合、散乱光の強度から求めた時間相関関数の減衰に分布を有するという現象を利用している。この時間相関関数をキュムラント法を用いて解析することで、減衰速度の平均(<Γ>)と分散(μ)が求まる。減衰速度(Γ)は粒子の拡散係数と散乱ベクトルの関数で表されるため、ストークス−アインシュタイン式を用いて、流体力学的平均粒径を求めることができる。本発明で定義される平均粒径は、例えばレーザー粒径解析装置 PARIII(大塚電子株式会社製)などを用いて容易に測定することができる。
【0023】
また、本発明で用いられるアルミナ水和物は、BET比表面積が40〜500m/gであることが好ましい。BET比表面積が40m/g未満の場合、アルミナ水和物の粒子が大きいためにインク受容層の透明性が損なわれ、画像濃度が低下し、印字物が白くモヤのかかったような画像になりやすい。また、BET比表面積が500m/gを超える場合では、アルミナ水和物を解膠するのに多量の酸が必要となる。より好ましいのは50〜250m/gの範囲(特に50〜150m/g)である。
【0024】
本発明に用いられるアルミナ水和物を解膠する酸としては、酢酸、蟻酸、シュウ酸などの有機酸や、硝酸、塩酸、硫酸といった無機酸が挙げられ、それらの中から1種または2種以上を自由に選択して用いることができる。これらの酸によって、アルミナ水和物は容易に一次粒子まで解膠され、良分散の均一な分散液が得られるため、これを塗工した際に透明性、平滑性および皮膜性などに優れたインク受容層が得られる。なお、本発明で使用する酸としては、分散液の安定化が比較的良好で、取り扱いが容易であるという観点から、酢酸などの低級脂肪酸が好ましい。酸の添加量としては特に限定されないが、アルミナ水和物を解膠分散するのに十分な量であればよく、アルミナ水和物に対し0.5〜60質量%程度添加するのが好ましい。添加量が0.5質量%に満たない場合、経時的に塗工液の粘度が上昇することがあるので好ましくない。逆に添加量が60質量%を超える場合、分散効果はそれ以上増大することはなく、塗工および乾燥工程において、低級脂肪酸特有の臭いや乾燥に要するエネルギーが増加するなどの問題が生じる。
【0025】
本発明においては、前記アルミナ水和物とともにカチオン性樹脂を用いてインク受容層を形成するのが好ましい。カチオン性樹脂としては、例えば、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリビニルピリジニウムハライド、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリアクリルアミドのカチオン変性物あるいはアクリルアミドとカチオン性モノマーとの共重合体、ビニルピロリドン系モノマーと他の一般的なモノマーとの共重合体、ビニルオキサゾリドン系モノマーと他の一般的なモノマーとの共重合体、ビニルイミダゾール系モノマーと他の一般的なモノマーとの共重合体などが挙げられる。好ましいのは、ポリアリルアミンの酢酸塩もしくは塩酸塩、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体であり、本発明で形成するインク受容層の構成において、塗工液の安定性や染料のマイグレーション防止効果に優れている。なお、これらの好ましいカチオン性樹脂は、単独で使用しても上記のその他のカチオン性樹脂を複数混合して使用してもよい。
【0026】
カチオン性樹脂の重量平均分子量としては特に限定はしないが、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは3,000〜150,000である。重量平均分子量が1,000未満の場合は、記録画像の耐水性が不十分であり、200,000を超えると、塗工液の粘性が高くなって塗工液が扱い難い。また、高分子量のカチオン性樹脂は、分子構造的な立体障害により染料分子との結合効率が低下する傾向があり、特に少量添加した場合、その耐水性向上効果を十分に得ることができない。
【0027】
一般に、カチオン性樹脂を含有するインク受容層に染料系インクで記録した場合、その記録画像の耐水性や画像濃度は向上するが、耐光性が悪化する傾向がある。また、カチオン性樹脂の添加量を増加させると塗工液の粘度が高くなり、液自体の保存性や塗工適性が低下することから、できる限り微量添加することが好ましい。一方、顔料インクで記録した場合には、画像濃度が向上し、異色インク間の境界滲みを防止することができるが、カチオン性樹脂を多量に用いると、インク受容層自体の耐水性が低下するので、その使用量は必要最小限にとどめる必要がある。よって、本発明の第3の態様において、カチオン性樹脂は、A≧20×C(式1)(式中、AおよびCは前記と同じ意味を有する)を満足するように添加する。アルミナ水和物に対し、カチオン性樹脂が0.05〜5質量%の範囲であることが好ましく、この範囲であれば、インク受容層に形成された記録画像の耐水性および高温高湿環境下における記録画像の長期間保存性は効果的に向上する。
【0028】
本発明においては、上記アルミナ水和物とカチオン性樹脂とともに、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂(本発明において「バインダー樹脂」という場合もある)を使用することが好ましい。本発明で使用する水溶性樹脂および/または水分散性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼインおよびそれらの変性物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはその変性物(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性など)、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体、ポリエステル系樹脂、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、およびこれらの各種重合体ラテックスにカチオン性基またはアニオン性基を付与した官能基変性重合体ラテックス類などが挙げられる。好ましいのは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールであり、平均重合度が300〜5,000のものである。また、ケン化度は70〜100%未満のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。また、これらの水溶性または水分散性樹脂は単独あるいは複数種混合して用いることができる。
【0029】
水溶性または水分散性樹脂の使用量は、アルミナ水和物に対する混合質量比で1/30〜1/1が好ましく、より好ましくは1/20〜1/3の範囲である。水溶性樹脂および/または水分散性樹脂の量がこれらの範囲内であれば、形成されたインク受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなり、インク吸収性も良い。
【0030】
また、本発明においては、前記水溶性または水分散性樹脂によって形成される皮膜の造膜性、耐水性および皮膜強度を改善するために硬膜剤を使用してもよい。一般に、硬膜剤は、使用するポリマーが持つ反応性基の種類によって様々なものが選択され、例えば、ポリビニルアルコール系の樹脂であれば、エポキシ系硬膜剤や、ホウ酸あるいは水溶性アルミニウム塩などの無機系硬膜剤などが挙げられるが、本発明で使用する硬膜剤としては、ホウ素原子を中心とした酸素酸またはその塩などのホウ素化合物、具体的には、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩が好ましく使用できる。
【0031】
ホウ素化合物の使用量は、バインダーとして用いる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂の量によって変化するが、概ね水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対して0.1〜30質量%の割合で添加するとよい。ホウ素化合物の含有量が、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対し0.1質量%に満たないと、造膜性が低下しインク受容層に十分な耐水性が得られない。逆に、30質量%を超える場合、塗工液の粘度の経時変化が大きくなり、塗工安定性が劣る場合がある。
【0032】
また、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂が含まれる塗工液の粘度は、カチオン性樹脂の量にも依存し、ホウ素化合物と同じように、含有量の増加に伴って増粘することから、ホウ素化合物とカチオン性樹脂の添加量は、B≧2×(C+D)(式2)(式中、B、CおよびDは上記と同じ意味を有する)を満足することが好ましい。ホウ素化合物とカチオン性樹脂の合計添加量は、好ましくは水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対して5〜50質量%の範囲である。この範囲であれば、塗工液のゲル化が緩和され、塗工安定性が保たれるので塗布後のインク受容層の平滑性も高い。
【0033】
本発明の被記録媒体は、前記アルミナ水和物、カチオン性樹脂、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂、およびホウ素化合物からなる組成物を、必要に応じた量の水性媒体とともに混合して塗工液を調製し、これを支持体の表面に塗布し乾燥させてインク受容層を形成することで得られる。塗工液の水性媒体としては、水、または水に混合可能な有機溶剤との混合溶液であれば特に制限はない。水に混合可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
【0034】
インク受容層を形成するための塗工液中の固形分濃度は、支持体上にインク受容層を形成できる程度の粘度になる濃度であれば特に制限はないが、塗工液全質量に対して5〜50質量%が好ましい。固形分濃度が5質量%未満の場合は、インク受容層の膜厚を厚くするのに塗工量を増やす必要があり、乾燥に多くの時間とエネルギーを必要とすることから非経済的となる場合がある。また、50質量%を超えると塗工液の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。
【0035】
このような塗工液を支持体上に塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、ゲートロールコート法、バーコート法、サイズプレス法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ロッドブレードコート法、リップコート法、スリットダイコート法など、従来より公知の塗工方法を用いることができる。また、必要に応じて塗工後にカレンダーロールなどを用いてインク受容層の表面平滑性を向上させることも可能である。
【0036】
塗工液の支持体上への塗工量として好ましい範囲は、固形分換算で0.5〜60g/mであり、より好ましい範囲は5〜55g/mである。塗工量が0.5g/m未満の場合は、形成されたインク受容層がインクの水分を十分に吸収できず、インクが流れたり、画像が滲んだりする場合があり、60g/mを超えると、乾燥時に被記録媒体にカールが発生したり、印字性能に期待されるほど顕著な効果が現れない場合がある。
【0037】
なお、前記カチオン性樹脂を使用する方法としては、以上に説明したように直接塗工液に添加する方法以外に、アルミナ水和物を含むインク受容層が形成された被記録媒体に、カチオン性樹脂を含浸添加する方法がある。本発明においてはいずれの方法も可能であるが、後者の場合には、予め溶媒にカチオン性樹脂を溶解し、この溶液に被記録媒体を浸漬するか、あるいは該溶液を塗布することで含浸できる。
【0038】
本発明の被記録媒体は、前記支持体上に前記の方法で塗工液を塗工し、熱風乾燥機、熱ドラム、遠赤外線乾燥機などの乾燥装置を用いて乾燥することにより得られる。また、支持体上に設けられるインク受容層は、支持体の片面もしくは両面に設けることが可能であり、両面の場合は、設けられるインク受容層の組成が、それぞれ同じものでも異なっていてもよい。
【0039】
このようにして得られた本発明の被記録媒体は、印字後の染料のマイグレーション、あるいはインク受容層から発生する不快臭を抑制する目的で、該インク受容層に残留する低級脂肪酸の濃度を特定の範囲に制御しておく必要がある。インク受容層中の低級脂肪酸濃度を制御するには、前記乾燥工程において設定温度を高くするか、あるいは支持体の耐熱温度が低い場合には、乾燥時間でコントロールするとよい。また、塗工後連続して乾燥する場合、例えば、乾燥機を置くスペースに制約を受け、十分な乾燥時間がとれない場合には、一度乾燥した被記録媒体を定温乾燥機や圧力制御可能な真空乾燥機を使用して再乾燥してもよい。
【0040】
本発明の被記録媒体は、前記手段によって、該被記録媒体のインク受容層に残留する低級脂肪酸の濃度を制御するが、該低級脂肪酸の濃度範囲としては、被記録媒体を60℃で1時間加熱したときに発生する低級脂肪酸の濃度が0.1〜1.0ppm/m・Lの範囲が好ましい。低級脂肪酸の濃度が0.1ppm/m・L未満では、本発明の効果はそれ程得られず、逆に乾燥工程に費用が掛かるので現実的ではない。また、1.0ppm/m・Lを超えるとインク受容層の耐水性が低下する場合がある。なお、ここで扱う低級脂肪酸濃度とは、単位面積(m)あたりの被記録媒体から一定の体積(1リットル)に放出される低級脂肪酸の濃度をいう。
【0041】
また、本発明の被記録媒体は、インク受容層に画像を形成した後、23℃で10分間静置した場合に発生する低級脂肪酸の濃度が2.5ppm/m・L以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0ppm/m・Lの範囲である。この好ましい範囲であれば、画像を形成する際の染料のマイグレーションやインク受容層からの不快な臭いを効果的に抑制することが可能である。
【0042】
さらに、本発明では、前記の通り、インク受容層を、アルミナ水和物(A)、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂(B)、カチオン性樹脂(C)、およびホウ素化合物(D)を用いて形成し、且つ上記(A)、(B)、(C)および(D)の質量比率を特定の範囲にし、そのインク受容層の表面の算術平均粗さ(Ra)が、JIS−B−0601で規定されるカットオフ値0.25mm、測定長さ1.25mmで測定したとき0.1μm以下であるとすることにより、特に塗工後にカレンダーロールなどを用いることなく平滑性の高い表面を得ることが可能である。該被記録媒体を用いれば、光沢性に優れ、印字後の染料のマイグレーション、および長期保存における画像の退色や変色が抑制された画像を形成することができる。
【0043】
本発明の被記録媒体のインク受容層には、被記録媒体としての性能を損なわない範囲で、着色染料、着色顔料、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動変性剤、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、浸透剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤(退色防止剤)などを添加することもできる。特に、退色防止剤としてチオウレア系化合物を使用した場合、大気中における窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾンなどに起因する画像の変色および退色を効果的に抑制することが可能である。
【0044】
なお、本発明の被記録媒体に記録する際に使用するインクは特に限定されないが、色材として染料または顔料を使用し、媒体として水と水溶性有機溶剤との混合物を使用し、該媒体に染料または顔料を溶解または分散させた一般的なインクジェット記録用の水性インクの使用が好ましい。
【0045】
また、本発明の被記録媒体に上記インクを付与して画像形成を行う方法としては、インクジェット記録方法が特に好適であり、このインクジェット記録方法としてはインクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であればいかなる方法でもよい。特に特開昭54−59936号公報などに記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、それによって発生する力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式は有効に使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。なお、以下の文中の「部」および「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
【0047】
<<本発明の第1および第2態様>>
なお、本発明の第1または第2態様による各被記録媒体の諸物性の測定および評価を下記の要領で行った。
<測定1:被記録媒体の低級脂肪酸濃度>
A4サイズ(210×297mm)に裁断した被記録媒体4枚を、23℃・50%RHで12時間放置した後、ガス検知管用のゴム管を付設した密封可能な容器(内容積:4L)に、各シートのインク受容層表面が他のどのシートや容器の内壁と密接しないように軽く3ツ折にして挿入し密封した。これを60℃で1時間加熱し、その後室温(23℃)で10分間空冷した後、酢酸検知管(No.81L、ガステック社製)を用いて容器内の酢酸濃度を測定した。なお、読み取った数値は、温度(基準:20℃)および気圧(基準:1013hPa)による補正を行った後、ppm/m・L(単位面積あたりの被記録媒体から単位体積あたりに放出される酢酸の濃度)に換算した。
【0048】
<測定2:印字された被記録媒体の低級脂肪酸濃度>
A4サイズ(210×297mm)の各被記録媒体1枚を23℃・50%RHで12時間放置した後、該被記録媒体のインク受容層にインクジェットプリンタ(BJ S500、キヤノン社製)を用いて、下記方法にて混色ブラックの全面印刷を行った。この印刷物を、ガス検知管用のゴム管を付設した密封可能な容器(内容積:4L)に、印刷終了後10秒以内に、印字面が容器の内壁に密接しないように挿入し密封した。10分後、酢酸検知管(No.81L、ガステック社製)にて容器内の酢酸濃度を測定し、読み取った数値を温度および気圧で補正した後、測定1と同様の濃度単位(ppm/m・L)に換算した。
【0049】
<印刷画像の作成方法>
グラフィック作成ツール(フォトショップ Version4.0.1J、アドビ社製)を用いて、以下の条件でTIFF形式の画像を作製した。
・オペレーションソフトウェア:Windows(登録商標) Me(マイクロソフト社製)・画像サイズ:210×297mm
・画像モード:RGBカラー(8Bits/チャンネル)
・塗りつぶしの色:ブラック(R=0、G=0、B=0)
【0050】
<印刷方法>
プリンタのプロパティ画面において、以下の設定を変更した以外は標準設定のまま全面印刷を行った。
Figure 2004025850
【0051】
<評価1:染料のマイグレーション>
インクジェットプリンタ(BJ F900、商品名;キヤノン社製)を用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(Bk)の単色インクによるベタ印字(インク量100%)を行った各被記録媒体を、30℃・80%RHの環境下に1週間暴露し、染料がマイグレーションする度合いを目視にて評価した。各色ともマイグレーションが起きていないものを「A」、いずれかの色で僅かにマイグレーションが起きているものを「B」、いずれかの色でマイグレーションの度合いが大きいものを「C」とした。
【0052】
<アルミナ水和物の製造>
米国特許明細書第4,242,271号に記載された方法で、アルミニウムドデキシドを製造した。次に米国特許明細書第4,202,870号に記載された方法で、前記アルミニウムアルコキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーを、アルミナ水和物固形分が7.8%になるまで水を加え、オートクレーブ中で、熟成温度:150℃、熟成時間:6.5時間にて熟成を行いコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを入口温度87℃でスプレードライしてアルミナ水和物粉末としたが、得られた粉末は粒子形状が平板状で、X線回折による測定では、結晶構造は擬ベーマイト構造を示していた。
また、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロメリティックスASAP2400、島津製作所製)を用いて、得られた粉末のBET比表面積を測定したところ138.9m/gであった。
【0053】
<実施例1>
イオン交換水100部に対し、前記アルミナ水和物を23部、および6%−酢酸水溶液11.5部(アルミナ水和物に対して3%)を添加後、ホモミキサー(特殊機化工業製)にて2,000rpmで5分間撹拌し、アルミナ水和物分散液Aを得た(得られたアルミナ水和物分散液をレーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、アルミナ水和物粒子の平均粒径は173.6nmであった。)。この分散液A100部に、カチオン性樹脂としてスミレーズレジン1001(30%水溶液、住友化学社製)0.077部(アルミナ水和物に対して0.1%)、および3%−ホウ酸水溶液15.3部を混合し、これにイオン交換水45部にポリビニルアルコール(PVA−224、クラレ社製)5部を溶解したもの23部を加えて塗工液を調製した。
【0054】
次に、坪量234g/mのレジンコート紙(王子製紙製)を支持体として、この支持体上に先程調製した塗工液を、乾燥塗布量30g/mとなるようにバーコートし、110℃で15分間熱風乾燥してインク受容層を形成させた。このようにして得られた被記録媒体を用いて、前記測定1、2および評価1のテストを行った。結果を表1に示す。
【0055】
<実施例2>
実施例1において、カチオン性樹脂の量を0.767部(アルミナ水和物に対して1.0%)とした以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表1に示す。
【0056】
<実施例3>
実施例2において、塗工後の乾燥を90℃で30分間行い、その後さらに40℃で90分間行った以外は、実施例2と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表1に示す。
【0057】
<実施例4>
実施例1において、6%−酢酸水溶液の量を26.8部(アルミナ水和物に対して7.0%)とし、実施例1と同様にしてアルミナ水和物分散液B(アルミナ水和物の平均粒径:172.3nm)を得た。また、この分散液Bに混合するカチオン性樹脂の量を2.3部(アルミナ水和物に対して3.0%)とし、さらに乾燥を110℃で120分間行った以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表1に示す。
【0058】
<参考例1>
実施例2において、カチオン性樹脂を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。結果を表1に示す。
【0059】
<比較例1>
実施例3において、40℃で90分間の再乾燥をしなかったこと以外は、実施例3と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表1に示す。
【0060】
<比較例2>
実施例4において、塗工後の乾燥を110℃で15分間とした以外は、実施例4と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表1に示す。
【0061】
Figure 2004025850
【0062】
表1から明らかなように本発明の被記録媒体は、インク受容層あるいは印字直後のインク受容層から発生する低級脂肪酸が抑制され、それによる刺激臭(または不快臭)が低減されている。また、残留低級脂肪酸濃度が低く抑えられた本発明の被記録媒体は、インク受容層にカチオン性樹脂を含むことで、高温高湿環境下における染料のマイグレーションを効果的に防止することができ、特にカチオン性樹脂が微量添加されたものでも良好な耐湿性が得られている。さらに、本発明の被記録媒体は、画像の光沢性やインク吸収性にも優れたものであった。
【0063】
<<本発明の第3実施態様>>
なお、本発明の第3実施態様による被記録媒体の諸物性の評価および測定を下記の要領で行った。
<測定3:表面粗さ>
「フォームタリサーフS−5」(商品名、テーラーホブソン社製)を用いて、JIS−B−0601で規定される、カットオフ値0.25mm、測定長さ1.25mmにて、被記録媒体のインク受容層表面の算術平均粗さRa(μm)を測定した。
<測定4:光沢度>
光沢計(VG−2000 商品名、日本電色工業社製)を用いて、被記録媒体のインク受容層表面のJIS−Z−8741で規定される75°鏡面光沢度を測定した。
【0064】
<評価2:マイグレーション防止効果>
本発明の第1および第2態様の場合と同じ。
【0065】
<測定5:退色・変色抑制効果>
被記録媒体に、インクジェット記録装置(「BJF900」、商品名;キヤノン社製)を用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(Bk)の単色インクによるベタ印字(インク量100%)を行い、オゾン暴露試験機(スガ試験機社製)にて、40℃、55%RHの条件下で濃度3ppmのオゾンに2時間暴露した。光学濃度計(RD−918、グレタグマクベス社製)を用いて、オゾン暴露前後での印字部の光学濃度(OD)を測定し、残濃度率(残OD率)を求めた。
【0066】
<アルミナ水和物分散液の調整>
イオン交換水100部に対し、前記本発明の第1および第2態様において得られたアルミナ水和物粉末を19部、および6%−酢酸水溶液11.5部(アルミナ水和物に対して3%)を添加後、ホモミキサー(特殊機化工業製)にて2,000rpmで5分間撹拌して、アルミナ水和物分散液Cを調整した(アルミナ水和物の平均粒径:175.4nm)。
【0067】
<実施例5>
前記アルミナ水和物分散液C100部に、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体としてスミレーズレジン1001(30%水溶液、住友化学社製)0.063部(アルミナ水和物に対して0.1%)、および3%−ホウ酸水溶液3.17部(アルミナ水和物に対して0.5%)を混合して分散液C’とし、これにイオン交換水45部にポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)5部を溶解したもの19部を加えて塗工液を調製した。
【0068】
次に、坪量234g/mのレジンコート紙(王子製紙製)を支持体として、この支持体上に先程調製した塗工液を、乾燥塗布量30g/mとなるようにダイコートし、110℃、15分間熱風乾燥してインク受容層を形成させた。このようにして得られた被記録媒体を用いて、前記測定3〜5および評価2のテストを行った。測定3および4の結果を表2に、測定5および評価2の結果を表3に示す。
【0069】
<実施例6>
実施例5において、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体の量を0.317部(アルミナ水和物に対して0.5%)、3%−ホウ酸水溶液の量を12.7部(アルミナ水和物に対して2%)とした以外は、実施例5と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表2および表3に示す。
【0070】
<実施例7>
実施例6において、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体の量を0.63部(アルミナ水和物に対して1.0%)とした以外は、実施例6と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表2および表3に示す。
【0071】
<実施例8>
実施例5において、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体の量を1.90部(アルミナ水和物に対して3.0%)、3%−ホウ酸水溶液の量を9.50部(アルミナ水和物に対して1.5%)とした以外は、実施例5と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。その結果を表2および表3に示す。
【0072】
<比較例3>
実施例7において、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体を添加しなかったこと以外は、実施例7と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。結果を表2および表3に示す。
【0073】
<比較例4>
実施例8において、3%−ホウ酸水溶液の量を19.0部(アルミナ水和物に対して3%)とした以外は、実施例8と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。結果を表2および表3に示す。
【0074】
<比較例5>
実施例7において、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体の代わりに「PAA−HCL−3L」(商品名、ポリアリルアミン塩酸塩、50%水溶液、日東紡社製)0.38部(アルミナ水和物に対して1.0%)を添加したこと以外は、実施例7と同様にして被記録媒体を作製し、測定・評価テストを行った。結果を表2および表3に示す。
【0075】
<比較例6>
実施例7において、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体の代わりに「PAS−M−1」(商品名、N−メチル−ジアリルアミン塩酸塩共重合物、60%水溶液、日東紡社製)0.317部(アルミナ水和物に対して1.0%)を添加したこと以外は、実施例7と同様にして塗工液を調製したが、調製後約10分でゲル化したことから、被記録媒体を作製することができなかった。
【0076】
Figure 2004025850
【0077】
Figure 2004025850
【0078】
表2から明らかなように、本発明の構成により作製された被記録媒体はカチオン性樹脂を含有するが、塗工液のゲル化が緩和され塗工安定性が保たれるので、塗布後のインク受容層表面の平滑性は、カチオン性樹脂を含まないものとほぼ同じ程度に維持することが可能であった。また、表3よりわかる通り、本発明の被記録媒体に画像を記録した場合、高温高湿環境下における印字後の染料のマイグレーションが効果的に防止でき、さらに、室内における画像堅牢性を左右する大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾンなどによる変色や退色を抑制することができた。
【0079】
【発明の効果】
本発明の第1または第2の実施態様によれば、アルミナ水和物からなるインク受容層中に残留する低級脂肪酸の濃度を特定の範囲にしている。これにより印字後の染料のマイグレーション、およびインク受容層あるいは印字直後のインク受容層からの低級脂肪酸による刺激臭(または不快臭)が抑制された被記録媒体を提供することができる。
【0080】
また、本発明の第3の態様によれば、インク受容層に、アルミナ水和物、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂、カチオン性樹脂、およびホウ素化合物を特定の割合で含有し、該インク受容層表面の粗さを一定の範囲としている。これにより、高光沢度で印字品位に優れ、印字後の染料のマイグレーションや長期保存における画像の退色および変色が抑制された被記録媒体を提供することができる。

Claims (8)

  1. 支持体の少なくとも片面に、アルミナ水和物からなるインク受容層を設けた被記録媒体において、該被記録媒体を60℃で1時間加熱したときに発生する低級脂肪酸の濃度が0.1〜1.0ppm/m・Lの範囲であることを特徴とする被記録媒体。
  2. 支持体の少なくとも片面に、アルミナ水和物からなるインク受容層を設けた被記録媒体において、該被記録媒体を60℃で1時間加熱したときに発生する低級脂肪酸の濃度が0.1〜1.0ppm/m・Lの範囲であり、かつ該被記録媒体のインク受容層に画像を形成した後、23℃で10分間静置した場合に発生する低級脂肪酸の濃度が2.5ppm/m・L以下であることを特徴とする被記録媒体。
  3. 前記インク受容層が、カチオン性樹脂を含有する請求項1または2に記載の被記録媒体。
  4. 支持体と該支持体の表面に設けられたインク受容層とからなり、該インク受容層が、アルミナ水和物、水溶性樹脂および水分散性樹脂から選択された少なくとも一種類のバインダー樹脂、カチオン性樹脂、およびホウ素化合物を含有し、前記アルミナ水和物、バインダー樹脂、カチオン性樹脂およびホウ素化合物が下記式1および2、
    A≧20×C(式1)、かつ
    B≧2×(C+D)(式2)
    式中、A:前記アルミナ水和物の質量比率、
    B:前記バインダー樹脂の質量比率、
    C:前記カチオン性樹脂の質量比率、および
    D:前記ホウ素化合物の質量比率、
    の関係を満たし、かつ該インク受容層の表面の算術平均粗さ(Ra)が、JIS−B−0601で規定されるカットオフ値0.25mm、測定長さ1.25mmで測定したとき0.1μm以下であることを特徴とする被記録媒体。
  5. カチオン性樹脂が、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体である請求項4に記載の被記録媒体。
  6. 水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールである請求項4に記載の被記録媒体。
  7. ホウ素化合物が、ホウ酸またはホウ酸塩である請求項4に記載の被記録媒体。
  8. 支持体が、フィルムまたはポリオレフィン樹脂被覆紙である請求項1〜7のいずれか1項に記載の被記録媒体。
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