JP2004025810A - 画像堅牢性向上剤、記録物、画像堅牢性向上方法、記録物の製造方法及び画像堅牢性向上化キット - Google Patents
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Abstract
【課題】より優れた耐ガス堅牢性、高品位な光沢感が得られる画像堅牢性向上剤、およびその記録物、およびそれを用いた画像堅牢性の向上方法。
【解決手段】多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、色材により該インク受容層に画像が形成されている記録物の画像堅牢性向上剤であって、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含むことを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、色材により該インク受容層に画像が形成されている記録物の画像堅牢性向上剤であって、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含むことを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明に属する技術分野】
本発明は、多孔質構造のインク受容層に画像が形成された記録物に対して、より優れた耐ガス堅牢性、高品位な光沢感、高い画像濃度が得られる画像堅牢性向上剤、かかる画像堅牢性向上剤を利用した記録物、画像堅牢性向上方法及び記録物の製造方法、ならびにかかる画像堅牢性向上剤を具備する画像堅牢性向上化キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
様々な画像記録方法の中でもインクジェット記録方式は現在広範に普及しており、今後さらに普及が進むものと期待される。現在要求される画像特性としては、銀塩写真画像と同等水準の高画質な画像であり、具体的にはフェザリング、ブリードを起こさない、高い印字濃度、優れた耐水堅牢性、耐光堅牢性、耐ガス堅牢性、高品位な光沢感を有する高品質画像のことである。特に、銀塩写真画像と同等の高品質な画像を長期間維持する、すなわち空気中のガスによる劣化、水や湿気による劣化に対する優れた堅牢性が求められている。
【0003】
これまでに画像堅牢性を向上させる為の研究は数多くなされている。例えば、特開平07−314882号公報にあるように、インクジェット記録媒体の多孔質インク受容層に酸化防止剤を添加することにより記録媒体の耐ガス堅牢性を向上させている。また、特開平09−48180号公報には、ある特定の樹脂からなる保護剤を水性インクによる印字物の上に被覆することにより印字物を保護する方法が開示されている。さらに特開平06−301441号公報にあるように、基材上に、アルミナ水和物からなる多孔質層を設けた記録シートに、記録を行なった後、多孔質層に硬化組成物を含浸させ、硬化して透明化する記録方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、記録画像を室内に展示してあるような場合に起こる褪色現象は、画像全体が赤みを帯びたり、緑みがかかったり、非印字部が黄変したりというように様々である。また、原因となる要因も光のみに限らず、空気中の各種のガスや、温度、湿度の影響等複合した要因が考えられ、インクジェット記録用記録媒体に酸化防止剤を添加するだけでは十分な画像堅牢性を得ることができない場合があった。特に、耐ガス堅牢性を飛躍的に向上させることは困難な場合があった。また、保護剤を印字物の上から被覆する方法では、印字物表面の光沢感が充分得られない場合があるという課題があった。特開平9−48180号公報には、多孔質構造のインク受容層を有する被記録媒体を用いて形成した印字物にかかる保護剤を適用することについては何ら開示されておらず、またその効果についても何ら示唆していない。さらに、無機多孔質層に硬化組成物を含浸させ、硬化して透明化させる技術においては、硬化が均一に進まないことから印字面が不均一に透明化されムラが発生してしまう場合があるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明者は、画像記録された記録媒体に従来以上に優れた耐ガス堅牢性を付与することができると同時に、銀塩写真画像と同等水準の光沢感ある高品位な画像、高い画像濃度が得られるような手法について種々検討してきた。その結果、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を付与することで、画像の堅牢性、特に、耐ガス堅牢性が飛躍的に向上することを見出し、本願発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る記録物の画像堅牢性向上剤は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、色材により該インク受容層に画像が形成されている記録物の画像堅牢性向上剤であって、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化物を主として含むことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる記録物は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物であって、該領域に上記構成の画像堅牢性向上剤が付与されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる記録物の画像堅牢性向上方法は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物の画像堅牢性向上方法であって、該領域に、請求項1から6のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤を付与することを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる記録物の製造方法は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物の製造方法であって、
(i)該インク受容層にインクを付与して、該インクに含有された色材により画像が形成された領域を得る工程、
(ii)該インク受容層に、上記構成の画像堅牢性向上剤を付与する工程、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる記録物の画像堅牢性向上化キットは、多孔質構造のインク受容層を具備している被記録媒体および上記構成の画像堅牢性向上剤を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の記録物の画像堅牢性向上剤を用いることで、コート紙などの多孔質のインク受容層を備えた被記録媒体に水性インク等により形成した画像を有する記録物の堅牢性、特にオゾンなどのガスに対する堅牢性を驚異的に向上させることができ、また画像の色味自体にも、より一層の深みを加えることが可能となる。また、特開昭56−77154号公報には多孔性構造を有するインクジェットシートの空隙を、不揮発性の物質で充填することが記載されているが、本発明にかかる具体的技術については何ら開示がない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる画像堅牢性向上剤及びその用途について説明する。
A:画像堅牢性向上剤
まず、本発明の画像堅牢性向上剤について詳しく説明する。
【0013】
基材上の少なくとも片面にインク受容層を設けてなる記録媒体において、インクジェット記録等により画像記録した後に、画像堅牢性向上剤として、インク受容層に水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含む画像堅牢性向上剤を塗布し、さらに好ましくはその後、多孔質インク受容層に該画像堅牢性向上剤を含浸させることで、種々の物理的または化学的な変化から記録画像が保護され、記録画像により高い耐ガス堅牢性、銀塩写真画像と同等水準の高品位な光沢感及び高い画像濃度が付与される。
【0014】
画像堅牢性向上剤としては、常温(15〜30℃)・常圧で液体状態であり、揮発性が低いものが好ましい。本発明に係る画像堅牢性向上剤は、水酸基価5以上、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含み、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、更に種々の目的で他の物質を含んでいても良い。ここで、「主として含む」とは画像堅牢性向上剤中の成分の中で最も含有量が多いことであり、好ましくは50%以上含有していることであり、さらに好ましくは80%、より好ましくは90%以上含有していることであり、また、画像堅牢性向上剤がこのエステル化合物のみからなる場合もこれに含まれる。
【0015】
エステル化合物としては、具体的には、(1)ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物および(2)脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができる。
【0016】
そのようなエステル化合物としては、飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステル化合物や、飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物等の、分子中に少なくとも、水酸基価が5以上となるように水酸基を含有するエステル化合物を挙げることができる。ここで、部分エステル化合物とは、多価アルコールの全水酸基のモル量に対してヒドロキシカルボン酸や脂肪酸とエステル化した水酸基のモル量の比が1未満であるエステル化合物を意味する。本発明に用いるエステル化合物として部分エステル化物を用いる場合における部分エステル化率としては、10から90%の範囲が好ましい。部分エステル化率の定義は、以下の式に基づく。
【0017】
【数1】
【0018】
ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物としては、炭素数が2から18のヒドロキシカルボン酸と炭素数が2から30の多価アルコールとのエステル化合物を好ましい化合物として挙げることができる。また、脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物としても、炭素数2から18の脂肪酸と炭素数2から30の多価アルコールとのエステル化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0019】
本発明で用いられるエステル化合物は、分子量が300以上であるために揮発性が極めて低く、該向上剤が多孔質層に含浸された後に蒸発して多孔質層に空隙が生じるようなことが生じ難い。
【0020】
エステル化合物の水酸基価が5以上の場合に耐ガス堅牢性が向上する理由としては、明確なメカニズムは明らかとなっていないが、例えば、多孔質インク受容層を構成する多孔質層がベーマイト粒子を用いて形成された場合では、ベーマイト粒子とエステル化合物の主に水酸基との間で水素結合が生じ、エステル化合物は化学構造的にベーマイト粒子へ吸着されやすくなっているため、ベーマイト粒子に吸着している染料分子やベーマイト粒子の近傍に存在している染料分子をガス分子の吸着から守り、結果として常温における耐ガス堅牢性、さらには高温高湿環境における耐ガス堅牢性が向上していると推測される。
【0021】
なお、エステル化合物の分子量は、好ましくは2000以下であり、水酸基価は好ましくは500以下である。その理由は、分子量が2000より大きくなると常温、常圧における粘度が非常に高くなり、固体となる傾向がある。また水酸基価が500より大きくなると、エステル化合物の分子内の水素結合が強くなり、粘度が上昇し、固体になりやすい為である。
【0022】
エステル化合物の水酸基価はJIS K007に示される方法に準じた下記方法により測定する。
【0023】
200ml三角フラスコに試料6gを1mg単位で精秤し、無水酢酸/ピリジン=1/4の混合溶液を5mlホールピッペットで加え、更に、ピリジン25mlをメスシリンダーで加える。三角フラスコ口に冷却器を取り付け、100℃のオイルバス中で90分反応させる。次に、蒸留水3mlを冷却器上部から加えてよく振とうし10分間放置する。冷却器をつけたまま三角フラスコをオイルバスから引き上げて放冷し、約30℃になれば冷却器上部口から少量のアセトン(10ml程度)で冷却器およびフラスコ口を洗浄する。THF50mlをメスシリンダーで加えフェノールフタレインのアルコール溶液を指示薬としてN/2KOH−THF溶液で50ml(目量0.1ml)のビュレットを用いて中和滴定する。中和終点直前に中性アルコール25ml(メタノール/アセトン=1/1容量比)を加え溶液が微紅色を呈するまで滴定を行う。同時に空試験も行う。
【0024】
次いで、下式に従って、水酸基価を求める。
【0025】
【数2】
【0026】
上記式におけるA、B、f、S及びCは以下のとおりである。
A:本試験に要したN/2KOH−THF溶液のml数
B:空試験に要したN/2KOH−THF溶液のml数
f:N/2KOH−THF溶液の力価
S:試料採取量(g)
C:酸価またはアルカリ価。
【0027】
ただし酸価はプラスしアルカリ価はマイナスする。水酸基価としては、2個の測定値の平均値を採用する。
【0028】
水酸基価が5以上で分子量が300以上のエステル化合物として、具体的には、乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル等の飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステル、またソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ペンタエリスリトールジオレエート、ペンタエリスリトールトリオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、オレイン酸ジグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0029】
本発明の更に好ましい態様によれば、酸化防止剤または紫外線吸収剤の少なくとも1つをさらに含有すると耐ガス性および耐光性になお良い。
【0030】
酸化防止剤としては、所定の効果を得られるものであれば特に限定されず、例えばN,N−ジエチルチオ尿素等のチオウレア系、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のチウラム系、2−メチル−5−クロロベンゾチアゾール、2−メチル−5−ブロモベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール系、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン系、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール等のベンゾトリアゾール系、O,O’−ジオクタデシルペンタエリスリトールビスホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト等のホスファイト系、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩等のジチオカルバミン酸塩系が挙げられ、これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0031】
また、紫外線吸収剤に関しても所定の効果を得られるものであれば特に制限されず、例えば6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ブチリデンジ−m−クレゾール、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−α,α’,α’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール等のヒンダードフェノール系、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン系、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系が挙げられ、これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えば、下記構造式(9)〜(16)で示されるものを更に挙げることができる。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
上記式中、t−C4H9はtret−ブチル基を、t−C8H17はtert−オクチル基をそれぞれ表す。
B:被記録媒体
本発明に用い得る被記録媒体としては、多孔質層のインク受容層を有し、インクが付着することで記録を行なう被記録媒体であればいずれのものでも使用することができる。しかし、本発明では被記録媒体に画像堅牢性向上剤を含浸させるため、画像堅牢性向上剤が裏抜けしない媒体であることが好ましい。本発明にかかる被記録媒体は、特に、インク受容層の多孔質構造が微粒子から形成され、且つ、該微粒子に色材が吸着するような被記録媒体がインクジェット法を利用する場合に特に好適である。このようなインクジェット用の被記録媒体としては、支持体上のインク受容層に形成された間隙によりインクを吸収するいわゆる吸収タイプであることが好ましい。吸収タイプのインク受容層は、微粒子を主体とし、必要に応じて、バインダーやその他の添加剤を含有する多孔質構造を有する。
【0036】
微粒子の例としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナあるいはアルミナ水和物等の酸化アルミニウム、珪藻土、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂等の有機顔料が挙げられ、これらの1種以上が使用される。バインダーとして好適に使用されているものには水溶性高分子やラテックスを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコールまたはその変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体などが使用され、これらから選択した1種、あるいは必要に応じて2種以上を組み合せて用いることができる。
【0037】
インク受容層には、その他の添加剤を使用することもでき、例えば、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが使用される。
【0038】
本発明にかかる特に好適な被記録媒体は、上述の微粒子として、平均粒子径が1μm以下の微粒子を主体として、インク受容層を形成したものが好ましい。上記の微粒子として、特に好ましいものは、例えばシリカまたは酸化アルミニウム微粒子等が挙げられる。酸化アルミニウム微粒子、シリカにおいて特に効果的な理由としては以下の様に考えられる。即ち、酸化アルミニウム微粒子、シリカに吸着された色材は、NOX、SOX、オゾン等のガスによる色材の褪色を受け易いことが判ったが、これらの微粒子はガスを引き寄せやすく、色材の近傍にガスが存在することになり色材が褪色し易くなるためと思われる。シリカ微粒子として好ましいものは、コロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。コロイダルシリカ自体も市場より入手可能なものであるが、特に好ましいものとして、例えば特許第2803134号、同2881847号公報に掲載されたものを挙げることができる。酸化アルミ微粒子として好ましいものとしては、アルミナ水和物微粒子を挙げることができる。このようなアルミナ系顔料の一つとして下記式により表されるアルミナ水和物を好適なものとして挙げることができる。
【0039】
Al2O3−n(OH)2n・mH2O
上記式中、nは1、2または3の整数のいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。但し、mとnは同時には0にはならない。mH2Oは、多くの場合mH2O結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものである為、mは整数または整数でない値を取ることもできる。また、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがありうる。
【0040】
アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4242271号、米国特許第4202870号に記載されているようなアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解のような、また特公昭57−44605号公報に記載されているアルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法などの公知の方法で製造されたものを使用したものが好適である。
【0041】
更に、これらのアルミナ水和物を使用したインクジェット用被記録媒体は、本発明にかかる画像堅牢性向上剤との親和性、吸収性、定着性が優れる上、前述したような写真画質を実現するために必要とされる光沢、透明性および染料等の記録液中の色材の定着性等が優れていることより、本発明を適用するのに更に好適である。
【0042】
本発明に用いられるインクジェット用被記録媒体の微粒子と前記のバインダーの混合比は、質量比で、1:1〜100:1の範囲にあることが好ましい。バインダーの量を上記範囲とすることで、インク受容層への画像堅牢性向上剤の含浸に好適な細孔容積の維持が可能となる。酸化アルミニウム微粒子またはシリカ微粒子のインク受容層中の好ましい含有量としては、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは、80質量%以上であり、99質量%以下であることが最も好適である。インク受容層の塗工量としては、画像堅牢性向上剤の含浸性を良好とするために乾燥固形分換算で10g/m2以上であることが好ましく、10〜60g/m2が最も好適である。
【0043】
本発明に用いられる被記録媒体は上記したインク受容層を支持するための支持体を有することが好ましいが、支持体としては、特段の制限がなく、上記した多孔質構造のインク受容層の形成が可能であって、且つインクジェットプリンタ等の搬送機構によって搬送可能な剛度を与えるものであれば、いずれのものでも使用できる。例えば、支持体とインク受容層の間に硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機顔料等をバインダーと共に塗工して形成した多孔質層を有するものや、支持体にレジンコート紙を用いても良い。そして、上記支持体とインク受容層の間に多孔質層を有する被記録媒体は、前記した本発明のより好ましい態様である、「画像形成領域が、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てが画像堅牢性向上剤によって充填されている部分を有する記録物」に用いられた場合により効果がある。つまり、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てが画像堅牢性向上剤によって充填されている記録物を、高温・高湿環境下に長時間放置したような場合であっても、記録物表面への画像堅牢性向上剤の染み出しなどによる表面のべたつきなどが生じることを極めて有効に抑制でき、保管性においても極めて優れた記録物とすることができる。
【0044】
上記したような効果が得られる理由は明らかでないが、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てを充填するために供給された画像堅牢性向上剤は透気度の低い、例えば、バライタ層を通り抜け難い為、画像堅牢性向上剤による孔部の充填が確実に行われ、さらにまた、インク受容層中の孔部に存在している空気や水分が、図3に模式的に示した様に、堅牢性向上剤の孔部への充填処理に伴って、多孔質層(1301)に移行し、或いは吸着されて、インク受容層中への空気や水分の残留を抑制もしくは防止することができる為であると考えられる。
C:記録物の製造方法および画像堅牢性向上方法
本発明にかかる記録物とは、支持体(1000)表面に、微粒子(1005)を含む多孔質構造のインク受容層(1003)を備え、該微粒子の表面に吸着した色材(1009)により画像が形成されている領域を有する記録物であって、該領域に上記した画像堅牢性向上剤(以下、向上剤)1001が付与されたものである。
【0045】
そして、例えば、図2に示すよう、該画像が形成されている領域が、インク受容層の厚さ方向に分布している色材の全てまたは実質的に全てが画像堅牢性向上剤中にある部分を有する、あるいは、インク受容層の厚さ方向に分布している孔部の全てまたは実質的に全てが画像堅牢性向上剤によって充填されている態様がより好ましく、画像堅牢性はさらに向上する。また、本発明にかかる記録物のインク受容層は多孔質構造であれば、特に微粒子を含むものに限定されるものではない。
【0046】
上記した本発明のより好ましい態様の場合に、受容層を有する被記録媒体に形成したインク等による記録物(プリント物)の色味の改善や耐ガス性の驚異的な向上が達成される理由は以下のようなメカニズムによるものと考えられる。
【0047】
図1は、紙などからなる支持体上に微粒子からなる多孔質構造のインク受容層を備える、いわゆるコート紙の断面構造を模式的に示している。図1において、1000は支持体、1003は、支持体1000に保持されているインク受容層である。インク受容層1003は、微粒子1005を含む多孔質構造を形成しており、微粒子は、結着剤(バインダー)1007によって固定されている。そしてこのようなコート紙に付与されたインク滴は、インク受容層1003に染み込んでいく過程において、インクに含まれる色材1009が微粒子1005の表面に吸着され、画像が形成される。
【0048】
このようにして記録の為されたコート紙の表面に、画像堅牢性向上剤1001を供給した後、インク受容層の比較的深部にある色材をも向上剤中にあらしめるために、例えば、インク供給後にラビング処理を行うと、画像堅牢性向上剤は、インク受容層1003中の孔部、ここでは微粒子1005の隙間(間隙)1011を充填していく。向上剤は、非水系の物質であることから、粒子間にトラップされている水性インクの水性媒体を次々と置換していき、微粒子表面に吸着している色材の周囲も被覆していく。そして、最終的に図2に示した様に、間隙1011が向上剤1001で充填され、インク受容層の厚さ方向に分布している色材の全てまたは実質的に全てが画像堅牢性向上剤中にある、あるいは、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てを該向上剤によって充填させると、色材1009は大気中のSOXやNOXなどのガスあるいはそれらを含む水分との接触を断たれることとなる。その結果、インク受容層中の色材の劣化が抑制され、画像の堅牢性の向上がさらに図られるものと考えられる。また、本発明による画像の堅牢性向上効果と共に得られる色味の改善、印字濃度向上、光沢度の向上の効果は、インク受容層を形成している物質と孔部(空気)、ここでは微粒子と間隙(空気)との屈折率の差によって生じていたインク受容層表面および内部における光の乱反射が、該間隙が画像堅牢性向上剤で充填されることによって抑制される為であると考えられる。
【0049】
本発明にかかる画像堅牢性向上剤は、好ましくは液体の状態でインク受容層に付与される。そのため、インク受容層への浸透が容易に行われ、かつインク受容層内の多孔質構造の形状に対応して変形し、画像堅牢性向上剤中への色材の取り込み効果を十分に発揮することが可能である。しかも、液体としてインク受容層内に保持されることで、記録物に許容できる変形を生じさせた場合において、インク受容層の多孔質構造、例えば間隙の内壁や微粒子が含有されている場合における微粒子の外壁との画像堅牢性向上剤の接触状態が良好に維持される。
【0050】
一方、画像堅牢性向上剤を、ワックスなどの通温において固形状態の形態とした場合は、インク受容層への浸透に圧力を必要としたり、均一な浸透状態が得られ難いなどの問題がある。更に、揮発性溶剤により希釈された状態で適用され、適用後に固化するもの、あるいは液体で適用された後に固化する成分を含むものなどの形態とした場合は、固化する過程で水分や気泡の取り込みによる向上剤の相の白濁化が生じる場合があり、更に、固化する際の体積減少が生じた場合には、向上剤の相と多孔質構造との間に空隙が生じ、色材の保護機能が減少するおそれがある。インク受容層の局所的な熱分析等の方法により、物質溶解時の熱挙動(吸熱、発熱)がないことを確認することによって、インク受容層中に液体状態で保持されていることを確認することが可能である。
【0051】
本発明で用いる、ラビング処理とは、堅牢性向上剤をインク受容層中の孔部に積極的に充填させるための拭き取りおよび研磨の少なくとも一方の処理を示す。
(1)第1の実施態様
本発明にかかる記録物の製造方法あるいは画像堅牢性向上方法の一実施態様としては、上記したように、多孔質構造のインク受容層を備え、該インク受容層へのインク或いはインク滴の付与によって、文字や絵等の画像が記録されている記録シートの、該インク受容層表面に、前記した画像堅牢性向上剤を供給し、その後にラビング処理を行う方法が挙げられる。ここで、向上剤は、記録シートの画像記録部分の少なくとも一部にのみ供給し、塗り込んでもよいが、記録シートの全面に塗りこむことが最も好ましい。これによってインク受容層中の色材が、オゾン等のガスによって攻撃されることをより確実に抑制することができる。
【0052】
また、前記したように、本発明のより好ましい態様は、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全て或いは実質的に全てが画像堅牢性向上剤で充填されているものである。この場合、画像堅牢性向上剤の供給量は、塗りこみの手間等を考慮すると、孔部が完全に充填される量と、塗布部材への吸収分などを考慮した量とするのが適当である。ここで、孔部が完全に充填される量とは、例えば、微粒子からなるインク受容層の場合はインク受容層の間隙度(吸油量など)などから考慮する。このような量の画像堅牢性向上剤を供給し、塗り込むことで、インク受容層の孔部をほぼ確実に画像堅牢性向上剤で充填することができる。
【0053】
具体的には、例えば、吸油量が0.3ccである記録媒体に形成されてなる画像の堅牢性を向上させる為には、約0.3g程度の画像堅牢性向上剤を付与し、ラビング処理することで十分な堅牢性の向上効果を得ることができる。このことは、インク受容層の表面部分を覆うだけではなく、画像堅牢性向上剤がインク受容層の孔部を充填することによって、本発明の効果が達成されるものであることを表すものである。
【0054】
ここで画像堅牢性向上剤の塗布方法については、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、へら塗り、スポンジ塗布等特に制限されないが、具体的な方法として、例えば、図5に示した様に、適当量の画像堅牢性向上剤をインク受容層表面に一定量を供給可能な機能5001(スプレーやポンプなど)を備えた容器5003(ディスペンサー等)に該向上剤を含むものとラビング用の部材とがセットとなった画像堅牢性向上化キットを用いることで実現可能である。
【0055】
また、他の実施態様としては、図4(a)及び(b)に示した様な、画像堅牢性向上剤を含んでいる画像堅牢性向上剤貯蔵部4001と、画像堅牢性向上剤の塗布部材4002とが一体化され、貯蔵部内の画像堅牢性向上剤が塗布部材表面に滲出可能に構成されているアプリケータを用いて、画像堅牢性向上剤の供給とラビング処理とを同時に行うようにしてもよい。尚、塗布部材4002の画像堅牢性向上剤が少なくなってきた場合に、画像堅牢性向上剤貯蔵部4001に圧力をかけることにより、塗布部材に画像堅牢性向上剤がしみ込むような構成であっても良い。4003は4002の蓋である。本発明にかかる方法で画像堅牢性に優れた記録物を得るために、上記被記媒体と上記画像記録性向上剤とのセットを用いることで、簡便に堅牢性の高い画像をえることができる。
(2)他の実施態様
本発明にかかる記録物の製造方法あるいは画像堅牢性向上方法の他の実施態様として、記録装置内で人手を介在させること無しに処理する方法を挙げることができる。図6は、画像堅牢性に優れた記録物を得るための装置の概略断面図であり、インクジェット法による記録媒体への画像の記録と、形成された画像への堅牢性付与の処理とを行う手段を各々備えている。図6において、25は筐体であり、1は積層された未使用の記録媒体で、サプライトレイ(給紙用カセット)2に略水平に載置されている。
【0056】
3は吸盤で、吸盤移動機構(不図示)により、図中aの位置から積層された未使用の記録紙1の最上部の1枚に接する位置bに移動し、最上位の用紙を吸引して持ち上げることができる。この際、吸引機構(不図示)により、吸盤3が記録紙に接した状態で吸盤3の内部の圧力を減少させて記録紙1の最上部の1枚を吸着して、その記録紙を他の記録紙から分離させる。その状態で吸盤移動機構により図中cの位置に移動し、その分離した1枚の記録紙の先端を搬送ローラ4,5の間に差し込むことができる。その後、吸引機構による吸引動作を停止させて吸盤3の吸着力を解除し、吸盤3による記録紙の拘束を解くことができる。
【0057】
搬送用ローラ4,5は、搬送用モータ(不図示)等の駆動源によりクラッチ機構(不図示)等を介して回転駆動される。6,7はガイド板で、所定の間隔を持って対向して配置されており、搬送用ローラ4,5の回転により搬送される記録紙の供給経路を形成している。これらガイド板6,7で形成される供給経路の断面形状は略半円形であり、搬送用ローラ4,5近傍から上方の副走査用ローラ8,9に至っている。これら副走査用ローラ8,9は、図中左方向に平行に配置された第2の副走査用ローラ対10,11と共に、搬送されてきた記録紙を挟持し、後述する制御部(不図示)などの制御の下に紙送りを行っている。15は副走査用ローラ8,9,10,11の間での記録紙の位置を規制するガイド板である。12は記録ヘッド(インクジェットヘッド)で、記録紙1の搬送方向に複数のインク吐出用ノズルが配されている。尚、この記録ヘッド12は、それぞれが異なる色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを備えていても良い。13は記録ヘッド12に供給するインクを収容しているインクタンクである。記録ヘッド12とインクタンク13はキャリッジに載置されており、副走査用ローラ8〜11の回転軸と略平行に配置されたキャリッジガイドにより、記録紙の搬送方向に略直交する方向に移動可能に保持されている。
【0058】
16は、上方の記録紙収容部に積層して収容された未使用の第2の記録紙である。17は積層収納された記録紙16を載置し、分離ローラ18方向に適宜押圧する圧板である。19,20はガイド板で、分離ローラ18により取り出された1枚の記録紙の先端を副走査用ローラ8,9に導くための第2の供給経路を形成している。
【0059】
21,22,23,24は、例えば特開平1−264879号公報で開示されている各記録紙1,16の有無及びその紙質を検知する手段である。21,23はそれぞれ記録紙1,16の表面に所定波長の光を照射する光源、22,24は、その光源から照射された光が記録紙表面から反射された光を受光する光検出器である。
【0060】
このような反射光による記録紙の紙質の検知は、記録紙の種類に応じて表面の粗さが異なり、それに伴って光の拡散の程度が異なってくることに起因してなされるものである。例えば普通紙の表面は微視的にみれば繊維の絡み合ったもので表面の拡散は大きく、従って検出器22,24の出力は小さくなる。一方、表面が平滑で、光の拡散の程度の低いシートの場合、検出器22,24の出力が大きくなる。このような光による検出手段を用いて、吸盤3を使用した第1の分離機構、或は分離ローラ18を使用した第2の分離機構に対応する記録紙がそれぞれ対応するカセットに装填されているか、又は記録に適した記録紙が装着されているかなどが判断可能となる。
【0061】
26,27は記録ヘッド12による記録終了後、副走査ローラ10,11の回転に伴って排出される記録紙を後述の工程に導くための搬送路を形成するガイド板である。ガイド板には面状のヒータ(不図示)が取り付けられており、ガイド板26,27で形成された搬送路内の記録紙を加熱し、その記録紙上に吐出されたインクの乾燥を促進する。
【0062】
こうして得られた記録物の記録面に対して、画像堅牢性向上剤を供給し、該記録物のインク受容層に、画像堅牢性向上剤が充填された領域を形成する。
【0063】
液体52は、本発明にかかる画像堅牢性向上剤であり、容器51に不図示のタンクから不図示の供給装置にて供給され、常に容器51内における液面の高さが所定の範囲内になるように自動的に供給・制御されている。53は堅牢性向上剤塗布用ローラで、その表面部53aは堅牢性向上剤52が浸透可能なスポンジ状の構造となっており、その一部が容器51内の堅牢性向上剤52に接していて、液体塗布用ローラ53が不図示の駆動源の駆動により回転することにより、その表面部53aに一様に堅牢性向上剤52を浸潤させることができる。54は塗布用ローラ53との協動により記録媒体を挟持して搬送する搬送用ローラである。尚、この搬送用ローラ54は、その表面に堅牢性向上剤52が付着しないように、記録媒体が挟持されていない時は塗布用ローラ53と離間し、記録媒体が介在している場合にのみ塗布用ローラ53と搬送用ローラ54と接触して記録媒体を挟持するのが望ましい。55は乾燥用ヒータで、堅牢性向上剤52が塗布された記録紙を乾燥させるのに使用される。
【0064】
以上の構成により、記録ヘッド12による記録が終了した後、その記録紙の後端が第2の副走査ローラ対10,11から離れる以前に記録媒体の先端が搬送用ローラ54,塗布用ローラ53の位置にまで到達する。そして、搬送用ローラ54と塗布用ローラ53との間に記録媒体が挟持され、これらローラ53,54の回転に伴って記録媒体の片方の面に堅牢性向上剤52が一様に供給され、またラビングされて、インク受容層の間隙に充填される。この液体が充填された記録紙は、必要に応じて更なるラビング処理を施した後、排紙用ローラ33の回転により34の排紙口から装置外に排出される。
【0065】
なお、図6では、インクジェット記録と画像堅牢性向上剤の充填とが、同一の装置内で処理される形態の画像記録装置を説明したが、これに限定されず、画像記録部と堅牢性向上液の充填部とを分離した構成の画像記録装置、更には、堅牢性向上液の充填部を、画像形成部と独立させた、画像堅牢性向上液の塗布装置もまた、本発明の範囲内のものである。
【0066】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明する。
(画像堅牢性向上剤の調製)
下記に示す飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステルおよび飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物の少なくとも一つと、添加剤すなわち紫外線吸収剤を表2に示した割合で混合することによって実施例1〜10で用いた画像堅牢性向上剤を用意した。
【0067】
グループA.飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステル
A−1.化合物名:乳酸オクチルドデシル(分子量:371、水酸基価:155)
【0068】
【化3】
【0069】
A−2.化合物名:リンゴ酸ジイソステアリル(分子量:639、水酸基価:89)
【0070】
【化4】
【0071】
A−3.化合物名:ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット(分子量:1949、水酸基価:157)
【0072】
【化5】
【0073】
グループB.飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル
化合物
B−1.化合物名:セスキオレイン酸ソルビタン(分子量:521、水酸基価:195)
【0074】
【化6】
【0075】
B−2.化合物名:ペンタエリトリトールモノオレエート(分子量:406、水酸基価:200)
【0076】
【化7】
【0077】
グループC:添加剤
C−1.商品名:アデカスタブLA−63P(旭電化株式会社製)
【0078】
【化8】
【0079】
また、比較例2の処理剤としてD−1.アクリル樹脂溶液アクリル樹脂系エマルジョン(商品名:ボンコート4001大日本インキ化学工業株式会社)を用意した。
(被記録媒体の製造例)
先ず、下記のようにして基材を作製した。濾水度450mlCSF(CanadianStandarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBPK)80質量部、濾水度480mlCSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBPK)20質量部からなるパルプスラリーに、カチオン化澱粉0.60質量部、重質炭酸カルシウム10質量部、軽質炭酸カルシウム15質量部、アルキルケテンダイマー0.10質量部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03質量部、硫酸バンド0.40質量部を添加して紙料を調整後、長網抄紙紙で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で、酸化澱粉水溶液を固形分
で1.0g/m2となるように含浸し、乾燥後、マシンカレンダー仕上げをし、坪量155g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基材を得た。
【0080】
次に、上記で得た基材上に、以下のようにして下塗り層を形成した。先ず、下塗り層の形成に使用する塗工液として、カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、質量比65/10/25からなる填量100質量部と、市販のポリアクリル酸系分散剤0.1質量部とからなる固形分濃度70%のスラリーに、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7質量部を添加して、固形分60%になるように調整して組成物を得た。次に、この組成物を、乾燥塗工量が15g/m2になるように、ブレードコータで、基材の両面に塗工し、乾燥した。その後、マシンカレンダー仕上げをし(線圧150kgf/cm)、坪量185g/m2、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き基材を得た。下塗り層付き基材の白色度は、断裁されたA4サイズ5枚のサンプルに対して各々測定し、その平均値として求めた。その結果、L*:95、a*:0、b*:−2であった(JIS Z 8729の色相として求めた)。
【0081】
次に、インク受容層を形成したが、上記の第二の表面処理工程での塗工後、即ち、塗工液が下塗り層に含浸されてすぐに、そのまま下塗り層上にインク受容層を形成した。その際の、インク受容層の形成に用いた塗工液及び塗工方法等は、以下の通りである。
【0082】
塩化アルミニウムの4質量%溶液中にアルミン酸ソーダを加えpHを4に調整した。その後、攪拌をしながら90℃まで昇温し、しばらく攪拌を行なった。その後、再びアルミン酸ソーダを加えてpHを10に調整し、その温度を保持しながら40時間熟成反応を行なった。その後、室温に戻し、pHを7〜8に調整した。この分散液に対して脱塩処理を行い、その後酢酸により解膠処理を行なってコロイダルゾルを得た。このアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して17質量%の溶液を得た。ポリビニルアルコール PVA117(商品名:クラレ社製 )を純水に溶解して9質量%の溶液を得た。上記アルミナ水和物のコロイダルゾルとポリビニルアルコール溶液を、アルミナ水和物固形分とポリビニルアルコール固形分が質量比で10:1になるように混合攪拌して、分散液を得た。これをダイコータで乾燥塗工量で35g/m2になるように毎分30mで塗工した。そして、170℃で乾燥してインク受容層を形成した。この被記録媒体のインク受容層表面にリウエットキャストコーターを用いて、熱湯を用いたリウエットキャスト処理を行い被記録媒体を得た。被記録媒体の吸油量は約21cc/m2であった。
【0083】
(記録物の作成、及び堅牢化処理)
上記で作成した被記録媒体に、下記の方法で画像を記録した記録物を作成し、その記録物に対して、実施例1〜10の画像堅牢性向上剤及び比較例2の化合物を用いて、下記の方法▲1▼〜▲5▼に従って各種の画像堅牢性試験を行なった。また、何も処理しなかった記録物を比較例1として同様に評価を行った。
【0084】
インクジェット方式を用いたフォト用プリンタ(商品名:BJ−F870キヤノン製)に当該プリンタに純正のインクタンク(商品名:BCI−6BK、BCI−6Y、M、C、BCI−6PM、BCI−6PC)を装着し、上記で得た被記録媒体の記録面に、単色として、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー、コンポジットカラーとして、コンポジットブラック、葉緑色、肌色および空色の各色について、100%、80%、60%、40%、20%及び10%の各濃度のベタパッチを印字して記録物を作成した。なお、印字に用いたインクは、上記プリンタ純正品であって、全て水溶性染料を含んでいる水性インクである。次いで、この記録物のインク受容層表面に、126mm×89mmの面積あたり約0.3gの割合で、上述した種々の画像堅牢性向上剤、及び比較例2〜4の化合物を付与し、天然コットン素材のラビング部材で画像全面に亘ってラビング処理を行って、実施例1〜10、及び比較例2の記録物を得た。そして各記録物について、各色O.Dが約1.0のパッチを選んで、以下の画像堅牢性試験に用いた。
【0085】
耐光性および耐ガス性の評価方法:上記の記録物の試験前の画像濃度と試験後の画像濃度とを分光光度計・スペクトリノ(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。耐光性および耐ガス性評価は、以下に記述する判定基準に基づき判定し、結果は表1に示した。
(試験方法)
▲1▼耐光性試験1
以下の試験条件に従って、キセノンフェードメーターを用いて、耐光暴露試験を行なった。本試験は、室内における窓越し太陽光の影響を考慮した画像堅牢性試験である。
試験条件;
照射光量:50klux
試験時間:100時間
試験槽内温湿度条件:30℃・45%RH
フィルタ:(アウター)ソーダライム、(インナー)ボロシリケート
耐光性評価:
ISO10977(1993)の基準を参考に耐光暴露試験後の反射濃度残存率(ΔE)データより評価した。具体的には、単色のインクによる記録部に関しては、試験後の記録部が示す反射濃度残存率を測定し、下記表1の基準に従って評価した。一方、複数色のインクを重ねて形成した コンポジットカラーの記録部に関しては、試験後の各記録部の反射濃度残存率に加えて、各コンポジットカラー記録部を構成している複数の構成色それぞれの耐光暴露試験後の反射濃度残存率を測定し、得られた反射濃度残存率の差を算出し、表1に示す基準に従って評価した。コンポジットカラー記録部の評価に、該コンポジットカラー記録部を構成する構成色の反射濃度残存率の差を加えた理由は、コンポジットカラー記録部の画像堅牢性は記録部自体の反射濃度残存率だけでなく、コンポジットカラー記録部を構成している複数の構成色のそれぞれの褪色の程度も視覚上の画質に大きな影響を及ぼすからである。つまり、例えコンポジットカラーの記録部自体の反射濃度残存率が大きい場合であっても、コンポジットカラーを構成している構成色の何れか1つでも、試験前後で反射濃度が大きく変化している場合には、目視におけるカラーバランスが崩れ、視覚的に退色が大きい様に感じることがある為である。
【0086】
表1において、例えば、濃度残存率が90%以上というのは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、コンポジットブラック、葉緑色、肌色および空色の各記録部の反射濃度残存率の内、最も低い値でも90%以上であることを示す。また、例えば、濃度残存率の差が5%未満というのは、上記した4色のコンポジットカラー記録部において、各コンポジットカラー記録部を構成している構成色それぞれの試験前の反射濃度残存率の値の差のうちの最大値が、5%未満の場合である。濃度残存率の差が5%以上10%未満というのは、該4色コンポジットカラー記録部のそれぞれを構成している構成色それぞれの反射濃度残存率の差のうちの最大値が5%
以上10%未満の場合である。
【0087】
【表1】
【0088】
評価結果を表2に示す。
▲2▼耐光性試験2
以下の試験条件に従って、蛍光灯耐光性試験機を用いて、耐光暴露試験を行なった。本試験は、室内における蛍光灯光の影響を考慮した画像堅牢性試験である。
試験条件;
照射光量:60klux
試験時間:480時間
試験層内温湿度条件:30℃・45%RH
フィルタ:ソーダライム
耐光性評価;
ISO10977(1993)の基準を参考に耐光暴露試験後の濃度残存率データより耐光性を上記▲1▼と同様の評価基準を用いて評価した。結果を表2に示す。
▲3▼耐ガス性試験
オゾン試験装置(スガ試験機社製、商品名:オゾンウエザオメーター)を用いて、オゾン暴露試験を行なった。
試験条件;
暴露ガス組成:O33ppm
試験時間:6時間
試験層内温湿度条件:45℃、55%RH
耐ガス性評価;
オゾン暴露試験後の濃度残存率データを上記▲1▼の評価と同様の評価基準を用いて評価した。結果を表2に示す。
▲4▼黄変試験
(試験方法及び評価方法)
未印字の被記録媒体に対して、実施例1から10の向上剤、比較例2の化合物の各々を上記と同様にして付与し、ラビング処理して実施例1から10、比較例2のサンプルを調製し、比較例1としての未処理のサンプルを加えて、以下の環境の中に各サンプルを放置し、試験前後の記録面の色味を比較した。結果は表2に示した。
試験条件;
試験層温湿度条件:50℃、80%RH
試験時間:240時間
【0089】
【表2】
【0090】
▲5▼光沢度試験
未印字の被記録媒体に対して、新たに実施例1及び10の各々を上記と同様に付与して、ラビング処理してサンプルを調整し、また、比較例1として未処理のサンプルを用意した。これら3サンプルを常温で24時間保存した後の各々の光沢度をJIS−Z−8741に規定される方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
新たに実施例1および10の記録物(100%ベタパッチ)と比較例1の記録物(100%ベタパッチ)を▲1▼で用いたサンプルと同様に調製し、常温で24時間保存した後の、各々の画像の濃度をグレタグスペクトロイノ(グレタグマクベス製)で測定した。その結果を表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
【発明の効果】
本発明によって、インクジェット記録画像の堅牢性が向上し、特に、インクジェット記録画像を家庭やオフィス等の通常の室内環境で展示する用途に使用しても画像の褪色を劇的に防止することができる。又、本発明は、記録画像の記録品位を低下させることなく画像堅牢性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる被記録媒体の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【図2】本発明にかかる画像堅牢性の向上方法の概略説明図であり、インク受容層中の間隙に向上剤が充填された状態を示す概略断面図である。
【図3】被記録媒体の支持体として、インク受容層側の表面に緻密な多孔質層があるものを用いたときの、インク受容層中の水分子の挙動の説明図である。
【図4】本発明にかかるアプリケータの一実施態様である。(a)は、使用時の形態を示す概略斜視図であり、(b)は収納や携帯に適する、塗布部が蓋で保護された形態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明にかかるアトマイザの概略断面図である。
【図6】本発明にかかるインクジェット記録装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1000 支持体
1001 画像堅牢性向上剤
1003 インク受容層
1005 微粒子
1007 結着剤
1009 色材
1011 インク受容層中の間隙
1301 緻密な多孔質層
4001 画像堅牢性向上剤貯蔵部
4002 画像堅牢性向上剤塗布部
4003 蓋
5001 ディスペンス手段(スプレー部)
5003 画像堅牢性向上化剤貯蔵部
【発明に属する技術分野】
本発明は、多孔質構造のインク受容層に画像が形成された記録物に対して、より優れた耐ガス堅牢性、高品位な光沢感、高い画像濃度が得られる画像堅牢性向上剤、かかる画像堅牢性向上剤を利用した記録物、画像堅牢性向上方法及び記録物の製造方法、ならびにかかる画像堅牢性向上剤を具備する画像堅牢性向上化キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
様々な画像記録方法の中でもインクジェット記録方式は現在広範に普及しており、今後さらに普及が進むものと期待される。現在要求される画像特性としては、銀塩写真画像と同等水準の高画質な画像であり、具体的にはフェザリング、ブリードを起こさない、高い印字濃度、優れた耐水堅牢性、耐光堅牢性、耐ガス堅牢性、高品位な光沢感を有する高品質画像のことである。特に、銀塩写真画像と同等の高品質な画像を長期間維持する、すなわち空気中のガスによる劣化、水や湿気による劣化に対する優れた堅牢性が求められている。
【0003】
これまでに画像堅牢性を向上させる為の研究は数多くなされている。例えば、特開平07−314882号公報にあるように、インクジェット記録媒体の多孔質インク受容層に酸化防止剤を添加することにより記録媒体の耐ガス堅牢性を向上させている。また、特開平09−48180号公報には、ある特定の樹脂からなる保護剤を水性インクによる印字物の上に被覆することにより印字物を保護する方法が開示されている。さらに特開平06−301441号公報にあるように、基材上に、アルミナ水和物からなる多孔質層を設けた記録シートに、記録を行なった後、多孔質層に硬化組成物を含浸させ、硬化して透明化する記録方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、記録画像を室内に展示してあるような場合に起こる褪色現象は、画像全体が赤みを帯びたり、緑みがかかったり、非印字部が黄変したりというように様々である。また、原因となる要因も光のみに限らず、空気中の各種のガスや、温度、湿度の影響等複合した要因が考えられ、インクジェット記録用記録媒体に酸化防止剤を添加するだけでは十分な画像堅牢性を得ることができない場合があった。特に、耐ガス堅牢性を飛躍的に向上させることは困難な場合があった。また、保護剤を印字物の上から被覆する方法では、印字物表面の光沢感が充分得られない場合があるという課題があった。特開平9−48180号公報には、多孔質構造のインク受容層を有する被記録媒体を用いて形成した印字物にかかる保護剤を適用することについては何ら開示されておらず、またその効果についても何ら示唆していない。さらに、無機多孔質層に硬化組成物を含浸させ、硬化して透明化させる技術においては、硬化が均一に進まないことから印字面が不均一に透明化されムラが発生してしまう場合があるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明者は、画像記録された記録媒体に従来以上に優れた耐ガス堅牢性を付与することができると同時に、銀塩写真画像と同等水準の光沢感ある高品位な画像、高い画像濃度が得られるような手法について種々検討してきた。その結果、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を付与することで、画像の堅牢性、特に、耐ガス堅牢性が飛躍的に向上することを見出し、本願発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る記録物の画像堅牢性向上剤は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、色材により該インク受容層に画像が形成されている記録物の画像堅牢性向上剤であって、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化物を主として含むことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる記録物は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物であって、該領域に上記構成の画像堅牢性向上剤が付与されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる記録物の画像堅牢性向上方法は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物の画像堅牢性向上方法であって、該領域に、請求項1から6のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤を付与することを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる記録物の製造方法は、多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物の製造方法であって、
(i)該インク受容層にインクを付与して、該インクに含有された色材により画像が形成された領域を得る工程、
(ii)該インク受容層に、上記構成の画像堅牢性向上剤を付与する工程、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる記録物の画像堅牢性向上化キットは、多孔質構造のインク受容層を具備している被記録媒体および上記構成の画像堅牢性向上剤を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の記録物の画像堅牢性向上剤を用いることで、コート紙などの多孔質のインク受容層を備えた被記録媒体に水性インク等により形成した画像を有する記録物の堅牢性、特にオゾンなどのガスに対する堅牢性を驚異的に向上させることができ、また画像の色味自体にも、より一層の深みを加えることが可能となる。また、特開昭56−77154号公報には多孔性構造を有するインクジェットシートの空隙を、不揮発性の物質で充填することが記載されているが、本発明にかかる具体的技術については何ら開示がない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる画像堅牢性向上剤及びその用途について説明する。
A:画像堅牢性向上剤
まず、本発明の画像堅牢性向上剤について詳しく説明する。
【0013】
基材上の少なくとも片面にインク受容層を設けてなる記録媒体において、インクジェット記録等により画像記録した後に、画像堅牢性向上剤として、インク受容層に水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含む画像堅牢性向上剤を塗布し、さらに好ましくはその後、多孔質インク受容層に該画像堅牢性向上剤を含浸させることで、種々の物理的または化学的な変化から記録画像が保護され、記録画像により高い耐ガス堅牢性、銀塩写真画像と同等水準の高品位な光沢感及び高い画像濃度が付与される。
【0014】
画像堅牢性向上剤としては、常温(15〜30℃)・常圧で液体状態であり、揮発性が低いものが好ましい。本発明に係る画像堅牢性向上剤は、水酸基価5以上、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含み、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、更に種々の目的で他の物質を含んでいても良い。ここで、「主として含む」とは画像堅牢性向上剤中の成分の中で最も含有量が多いことであり、好ましくは50%以上含有していることであり、さらに好ましくは80%、より好ましくは90%以上含有していることであり、また、画像堅牢性向上剤がこのエステル化合物のみからなる場合もこれに含まれる。
【0015】
エステル化合物としては、具体的には、(1)ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物および(2)脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができる。
【0016】
そのようなエステル化合物としては、飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステル化合物や、飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物等の、分子中に少なくとも、水酸基価が5以上となるように水酸基を含有するエステル化合物を挙げることができる。ここで、部分エステル化合物とは、多価アルコールの全水酸基のモル量に対してヒドロキシカルボン酸や脂肪酸とエステル化した水酸基のモル量の比が1未満であるエステル化合物を意味する。本発明に用いるエステル化合物として部分エステル化物を用いる場合における部分エステル化率としては、10から90%の範囲が好ましい。部分エステル化率の定義は、以下の式に基づく。
【0017】
【数1】
【0018】
ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物としては、炭素数が2から18のヒドロキシカルボン酸と炭素数が2から30の多価アルコールとのエステル化合物を好ましい化合物として挙げることができる。また、脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物としても、炭素数2から18の脂肪酸と炭素数2から30の多価アルコールとのエステル化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0019】
本発明で用いられるエステル化合物は、分子量が300以上であるために揮発性が極めて低く、該向上剤が多孔質層に含浸された後に蒸発して多孔質層に空隙が生じるようなことが生じ難い。
【0020】
エステル化合物の水酸基価が5以上の場合に耐ガス堅牢性が向上する理由としては、明確なメカニズムは明らかとなっていないが、例えば、多孔質インク受容層を構成する多孔質層がベーマイト粒子を用いて形成された場合では、ベーマイト粒子とエステル化合物の主に水酸基との間で水素結合が生じ、エステル化合物は化学構造的にベーマイト粒子へ吸着されやすくなっているため、ベーマイト粒子に吸着している染料分子やベーマイト粒子の近傍に存在している染料分子をガス分子の吸着から守り、結果として常温における耐ガス堅牢性、さらには高温高湿環境における耐ガス堅牢性が向上していると推測される。
【0021】
なお、エステル化合物の分子量は、好ましくは2000以下であり、水酸基価は好ましくは500以下である。その理由は、分子量が2000より大きくなると常温、常圧における粘度が非常に高くなり、固体となる傾向がある。また水酸基価が500より大きくなると、エステル化合物の分子内の水素結合が強くなり、粘度が上昇し、固体になりやすい為である。
【0022】
エステル化合物の水酸基価はJIS K007に示される方法に準じた下記方法により測定する。
【0023】
200ml三角フラスコに試料6gを1mg単位で精秤し、無水酢酸/ピリジン=1/4の混合溶液を5mlホールピッペットで加え、更に、ピリジン25mlをメスシリンダーで加える。三角フラスコ口に冷却器を取り付け、100℃のオイルバス中で90分反応させる。次に、蒸留水3mlを冷却器上部から加えてよく振とうし10分間放置する。冷却器をつけたまま三角フラスコをオイルバスから引き上げて放冷し、約30℃になれば冷却器上部口から少量のアセトン(10ml程度)で冷却器およびフラスコ口を洗浄する。THF50mlをメスシリンダーで加えフェノールフタレインのアルコール溶液を指示薬としてN/2KOH−THF溶液で50ml(目量0.1ml)のビュレットを用いて中和滴定する。中和終点直前に中性アルコール25ml(メタノール/アセトン=1/1容量比)を加え溶液が微紅色を呈するまで滴定を行う。同時に空試験も行う。
【0024】
次いで、下式に従って、水酸基価を求める。
【0025】
【数2】
【0026】
上記式におけるA、B、f、S及びCは以下のとおりである。
A:本試験に要したN/2KOH−THF溶液のml数
B:空試験に要したN/2KOH−THF溶液のml数
f:N/2KOH−THF溶液の力価
S:試料採取量(g)
C:酸価またはアルカリ価。
【0027】
ただし酸価はプラスしアルカリ価はマイナスする。水酸基価としては、2個の測定値の平均値を採用する。
【0028】
水酸基価が5以上で分子量が300以上のエステル化合物として、具体的には、乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル等の飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステル、またソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ペンタエリスリトールジオレエート、ペンタエリスリトールトリオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、オレイン酸ジグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0029】
本発明の更に好ましい態様によれば、酸化防止剤または紫外線吸収剤の少なくとも1つをさらに含有すると耐ガス性および耐光性になお良い。
【0030】
酸化防止剤としては、所定の効果を得られるものであれば特に限定されず、例えばN,N−ジエチルチオ尿素等のチオウレア系、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のチウラム系、2−メチル−5−クロロベンゾチアゾール、2−メチル−5−ブロモベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール系、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン系、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール等のベンゾトリアゾール系、O,O’−ジオクタデシルペンタエリスリトールビスホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト等のホスファイト系、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩等のジチオカルバミン酸塩系が挙げられ、これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0031】
また、紫外線吸収剤に関しても所定の効果を得られるものであれば特に制限されず、例えば6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ブチリデンジ−m−クレゾール、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−α,α’,α’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール等のヒンダードフェノール系、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン系、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系が挙げられ、これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えば、下記構造式(9)〜(16)で示されるものを更に挙げることができる。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
上記式中、t−C4H9はtret−ブチル基を、t−C8H17はtert−オクチル基をそれぞれ表す。
B:被記録媒体
本発明に用い得る被記録媒体としては、多孔質層のインク受容層を有し、インクが付着することで記録を行なう被記録媒体であればいずれのものでも使用することができる。しかし、本発明では被記録媒体に画像堅牢性向上剤を含浸させるため、画像堅牢性向上剤が裏抜けしない媒体であることが好ましい。本発明にかかる被記録媒体は、特に、インク受容層の多孔質構造が微粒子から形成され、且つ、該微粒子に色材が吸着するような被記録媒体がインクジェット法を利用する場合に特に好適である。このようなインクジェット用の被記録媒体としては、支持体上のインク受容層に形成された間隙によりインクを吸収するいわゆる吸収タイプであることが好ましい。吸収タイプのインク受容層は、微粒子を主体とし、必要に応じて、バインダーやその他の添加剤を含有する多孔質構造を有する。
【0036】
微粒子の例としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナあるいはアルミナ水和物等の酸化アルミニウム、珪藻土、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂等の有機顔料が挙げられ、これらの1種以上が使用される。バインダーとして好適に使用されているものには水溶性高分子やラテックスを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコールまたはその変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体などが使用され、これらから選択した1種、あるいは必要に応じて2種以上を組み合せて用いることができる。
【0037】
インク受容層には、その他の添加剤を使用することもでき、例えば、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが使用される。
【0038】
本発明にかかる特に好適な被記録媒体は、上述の微粒子として、平均粒子径が1μm以下の微粒子を主体として、インク受容層を形成したものが好ましい。上記の微粒子として、特に好ましいものは、例えばシリカまたは酸化アルミニウム微粒子等が挙げられる。酸化アルミニウム微粒子、シリカにおいて特に効果的な理由としては以下の様に考えられる。即ち、酸化アルミニウム微粒子、シリカに吸着された色材は、NOX、SOX、オゾン等のガスによる色材の褪色を受け易いことが判ったが、これらの微粒子はガスを引き寄せやすく、色材の近傍にガスが存在することになり色材が褪色し易くなるためと思われる。シリカ微粒子として好ましいものは、コロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。コロイダルシリカ自体も市場より入手可能なものであるが、特に好ましいものとして、例えば特許第2803134号、同2881847号公報に掲載されたものを挙げることができる。酸化アルミ微粒子として好ましいものとしては、アルミナ水和物微粒子を挙げることができる。このようなアルミナ系顔料の一つとして下記式により表されるアルミナ水和物を好適なものとして挙げることができる。
【0039】
Al2O3−n(OH)2n・mH2O
上記式中、nは1、2または3の整数のいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。但し、mとnは同時には0にはならない。mH2Oは、多くの場合mH2O結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものである為、mは整数または整数でない値を取ることもできる。また、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがありうる。
【0040】
アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4242271号、米国特許第4202870号に記載されているようなアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解のような、また特公昭57−44605号公報に記載されているアルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法などの公知の方法で製造されたものを使用したものが好適である。
【0041】
更に、これらのアルミナ水和物を使用したインクジェット用被記録媒体は、本発明にかかる画像堅牢性向上剤との親和性、吸収性、定着性が優れる上、前述したような写真画質を実現するために必要とされる光沢、透明性および染料等の記録液中の色材の定着性等が優れていることより、本発明を適用するのに更に好適である。
【0042】
本発明に用いられるインクジェット用被記録媒体の微粒子と前記のバインダーの混合比は、質量比で、1:1〜100:1の範囲にあることが好ましい。バインダーの量を上記範囲とすることで、インク受容層への画像堅牢性向上剤の含浸に好適な細孔容積の維持が可能となる。酸化アルミニウム微粒子またはシリカ微粒子のインク受容層中の好ましい含有量としては、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは、80質量%以上であり、99質量%以下であることが最も好適である。インク受容層の塗工量としては、画像堅牢性向上剤の含浸性を良好とするために乾燥固形分換算で10g/m2以上であることが好ましく、10〜60g/m2が最も好適である。
【0043】
本発明に用いられる被記録媒体は上記したインク受容層を支持するための支持体を有することが好ましいが、支持体としては、特段の制限がなく、上記した多孔質構造のインク受容層の形成が可能であって、且つインクジェットプリンタ等の搬送機構によって搬送可能な剛度を与えるものであれば、いずれのものでも使用できる。例えば、支持体とインク受容層の間に硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機顔料等をバインダーと共に塗工して形成した多孔質層を有するものや、支持体にレジンコート紙を用いても良い。そして、上記支持体とインク受容層の間に多孔質層を有する被記録媒体は、前記した本発明のより好ましい態様である、「画像形成領域が、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てが画像堅牢性向上剤によって充填されている部分を有する記録物」に用いられた場合により効果がある。つまり、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てが画像堅牢性向上剤によって充填されている記録物を、高温・高湿環境下に長時間放置したような場合であっても、記録物表面への画像堅牢性向上剤の染み出しなどによる表面のべたつきなどが生じることを極めて有効に抑制でき、保管性においても極めて優れた記録物とすることができる。
【0044】
上記したような効果が得られる理由は明らかでないが、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てを充填するために供給された画像堅牢性向上剤は透気度の低い、例えば、バライタ層を通り抜け難い為、画像堅牢性向上剤による孔部の充填が確実に行われ、さらにまた、インク受容層中の孔部に存在している空気や水分が、図3に模式的に示した様に、堅牢性向上剤の孔部への充填処理に伴って、多孔質層(1301)に移行し、或いは吸着されて、インク受容層中への空気や水分の残留を抑制もしくは防止することができる為であると考えられる。
C:記録物の製造方法および画像堅牢性向上方法
本発明にかかる記録物とは、支持体(1000)表面に、微粒子(1005)を含む多孔質構造のインク受容層(1003)を備え、該微粒子の表面に吸着した色材(1009)により画像が形成されている領域を有する記録物であって、該領域に上記した画像堅牢性向上剤(以下、向上剤)1001が付与されたものである。
【0045】
そして、例えば、図2に示すよう、該画像が形成されている領域が、インク受容層の厚さ方向に分布している色材の全てまたは実質的に全てが画像堅牢性向上剤中にある部分を有する、あるいは、インク受容層の厚さ方向に分布している孔部の全てまたは実質的に全てが画像堅牢性向上剤によって充填されている態様がより好ましく、画像堅牢性はさらに向上する。また、本発明にかかる記録物のインク受容層は多孔質構造であれば、特に微粒子を含むものに限定されるものではない。
【0046】
上記した本発明のより好ましい態様の場合に、受容層を有する被記録媒体に形成したインク等による記録物(プリント物)の色味の改善や耐ガス性の驚異的な向上が達成される理由は以下のようなメカニズムによるものと考えられる。
【0047】
図1は、紙などからなる支持体上に微粒子からなる多孔質構造のインク受容層を備える、いわゆるコート紙の断面構造を模式的に示している。図1において、1000は支持体、1003は、支持体1000に保持されているインク受容層である。インク受容層1003は、微粒子1005を含む多孔質構造を形成しており、微粒子は、結着剤(バインダー)1007によって固定されている。そしてこのようなコート紙に付与されたインク滴は、インク受容層1003に染み込んでいく過程において、インクに含まれる色材1009が微粒子1005の表面に吸着され、画像が形成される。
【0048】
このようにして記録の為されたコート紙の表面に、画像堅牢性向上剤1001を供給した後、インク受容層の比較的深部にある色材をも向上剤中にあらしめるために、例えば、インク供給後にラビング処理を行うと、画像堅牢性向上剤は、インク受容層1003中の孔部、ここでは微粒子1005の隙間(間隙)1011を充填していく。向上剤は、非水系の物質であることから、粒子間にトラップされている水性インクの水性媒体を次々と置換していき、微粒子表面に吸着している色材の周囲も被覆していく。そして、最終的に図2に示した様に、間隙1011が向上剤1001で充填され、インク受容層の厚さ方向に分布している色材の全てまたは実質的に全てが画像堅牢性向上剤中にある、あるいは、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全てあるいは実質的に全てを該向上剤によって充填させると、色材1009は大気中のSOXやNOXなどのガスあるいはそれらを含む水分との接触を断たれることとなる。その結果、インク受容層中の色材の劣化が抑制され、画像の堅牢性の向上がさらに図られるものと考えられる。また、本発明による画像の堅牢性向上効果と共に得られる色味の改善、印字濃度向上、光沢度の向上の効果は、インク受容層を形成している物質と孔部(空気)、ここでは微粒子と間隙(空気)との屈折率の差によって生じていたインク受容層表面および内部における光の乱反射が、該間隙が画像堅牢性向上剤で充填されることによって抑制される為であると考えられる。
【0049】
本発明にかかる画像堅牢性向上剤は、好ましくは液体の状態でインク受容層に付与される。そのため、インク受容層への浸透が容易に行われ、かつインク受容層内の多孔質構造の形状に対応して変形し、画像堅牢性向上剤中への色材の取り込み効果を十分に発揮することが可能である。しかも、液体としてインク受容層内に保持されることで、記録物に許容できる変形を生じさせた場合において、インク受容層の多孔質構造、例えば間隙の内壁や微粒子が含有されている場合における微粒子の外壁との画像堅牢性向上剤の接触状態が良好に維持される。
【0050】
一方、画像堅牢性向上剤を、ワックスなどの通温において固形状態の形態とした場合は、インク受容層への浸透に圧力を必要としたり、均一な浸透状態が得られ難いなどの問題がある。更に、揮発性溶剤により希釈された状態で適用され、適用後に固化するもの、あるいは液体で適用された後に固化する成分を含むものなどの形態とした場合は、固化する過程で水分や気泡の取り込みによる向上剤の相の白濁化が生じる場合があり、更に、固化する際の体積減少が生じた場合には、向上剤の相と多孔質構造との間に空隙が生じ、色材の保護機能が減少するおそれがある。インク受容層の局所的な熱分析等の方法により、物質溶解時の熱挙動(吸熱、発熱)がないことを確認することによって、インク受容層中に液体状態で保持されていることを確認することが可能である。
【0051】
本発明で用いる、ラビング処理とは、堅牢性向上剤をインク受容層中の孔部に積極的に充填させるための拭き取りおよび研磨の少なくとも一方の処理を示す。
(1)第1の実施態様
本発明にかかる記録物の製造方法あるいは画像堅牢性向上方法の一実施態様としては、上記したように、多孔質構造のインク受容層を備え、該インク受容層へのインク或いはインク滴の付与によって、文字や絵等の画像が記録されている記録シートの、該インク受容層表面に、前記した画像堅牢性向上剤を供給し、その後にラビング処理を行う方法が挙げられる。ここで、向上剤は、記録シートの画像記録部分の少なくとも一部にのみ供給し、塗り込んでもよいが、記録シートの全面に塗りこむことが最も好ましい。これによってインク受容層中の色材が、オゾン等のガスによって攻撃されることをより確実に抑制することができる。
【0052】
また、前記したように、本発明のより好ましい態様は、インク受容層の厚さ方向に存在する孔部の全て或いは実質的に全てが画像堅牢性向上剤で充填されているものである。この場合、画像堅牢性向上剤の供給量は、塗りこみの手間等を考慮すると、孔部が完全に充填される量と、塗布部材への吸収分などを考慮した量とするのが適当である。ここで、孔部が完全に充填される量とは、例えば、微粒子からなるインク受容層の場合はインク受容層の間隙度(吸油量など)などから考慮する。このような量の画像堅牢性向上剤を供給し、塗り込むことで、インク受容層の孔部をほぼ確実に画像堅牢性向上剤で充填することができる。
【0053】
具体的には、例えば、吸油量が0.3ccである記録媒体に形成されてなる画像の堅牢性を向上させる為には、約0.3g程度の画像堅牢性向上剤を付与し、ラビング処理することで十分な堅牢性の向上効果を得ることができる。このことは、インク受容層の表面部分を覆うだけではなく、画像堅牢性向上剤がインク受容層の孔部を充填することによって、本発明の効果が達成されるものであることを表すものである。
【0054】
ここで画像堅牢性向上剤の塗布方法については、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、へら塗り、スポンジ塗布等特に制限されないが、具体的な方法として、例えば、図5に示した様に、適当量の画像堅牢性向上剤をインク受容層表面に一定量を供給可能な機能5001(スプレーやポンプなど)を備えた容器5003(ディスペンサー等)に該向上剤を含むものとラビング用の部材とがセットとなった画像堅牢性向上化キットを用いることで実現可能である。
【0055】
また、他の実施態様としては、図4(a)及び(b)に示した様な、画像堅牢性向上剤を含んでいる画像堅牢性向上剤貯蔵部4001と、画像堅牢性向上剤の塗布部材4002とが一体化され、貯蔵部内の画像堅牢性向上剤が塗布部材表面に滲出可能に構成されているアプリケータを用いて、画像堅牢性向上剤の供給とラビング処理とを同時に行うようにしてもよい。尚、塗布部材4002の画像堅牢性向上剤が少なくなってきた場合に、画像堅牢性向上剤貯蔵部4001に圧力をかけることにより、塗布部材に画像堅牢性向上剤がしみ込むような構成であっても良い。4003は4002の蓋である。本発明にかかる方法で画像堅牢性に優れた記録物を得るために、上記被記媒体と上記画像記録性向上剤とのセットを用いることで、簡便に堅牢性の高い画像をえることができる。
(2)他の実施態様
本発明にかかる記録物の製造方法あるいは画像堅牢性向上方法の他の実施態様として、記録装置内で人手を介在させること無しに処理する方法を挙げることができる。図6は、画像堅牢性に優れた記録物を得るための装置の概略断面図であり、インクジェット法による記録媒体への画像の記録と、形成された画像への堅牢性付与の処理とを行う手段を各々備えている。図6において、25は筐体であり、1は積層された未使用の記録媒体で、サプライトレイ(給紙用カセット)2に略水平に載置されている。
【0056】
3は吸盤で、吸盤移動機構(不図示)により、図中aの位置から積層された未使用の記録紙1の最上部の1枚に接する位置bに移動し、最上位の用紙を吸引して持ち上げることができる。この際、吸引機構(不図示)により、吸盤3が記録紙に接した状態で吸盤3の内部の圧力を減少させて記録紙1の最上部の1枚を吸着して、その記録紙を他の記録紙から分離させる。その状態で吸盤移動機構により図中cの位置に移動し、その分離した1枚の記録紙の先端を搬送ローラ4,5の間に差し込むことができる。その後、吸引機構による吸引動作を停止させて吸盤3の吸着力を解除し、吸盤3による記録紙の拘束を解くことができる。
【0057】
搬送用ローラ4,5は、搬送用モータ(不図示)等の駆動源によりクラッチ機構(不図示)等を介して回転駆動される。6,7はガイド板で、所定の間隔を持って対向して配置されており、搬送用ローラ4,5の回転により搬送される記録紙の供給経路を形成している。これらガイド板6,7で形成される供給経路の断面形状は略半円形であり、搬送用ローラ4,5近傍から上方の副走査用ローラ8,9に至っている。これら副走査用ローラ8,9は、図中左方向に平行に配置された第2の副走査用ローラ対10,11と共に、搬送されてきた記録紙を挟持し、後述する制御部(不図示)などの制御の下に紙送りを行っている。15は副走査用ローラ8,9,10,11の間での記録紙の位置を規制するガイド板である。12は記録ヘッド(インクジェットヘッド)で、記録紙1の搬送方向に複数のインク吐出用ノズルが配されている。尚、この記録ヘッド12は、それぞれが異なる色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを備えていても良い。13は記録ヘッド12に供給するインクを収容しているインクタンクである。記録ヘッド12とインクタンク13はキャリッジに載置されており、副走査用ローラ8〜11の回転軸と略平行に配置されたキャリッジガイドにより、記録紙の搬送方向に略直交する方向に移動可能に保持されている。
【0058】
16は、上方の記録紙収容部に積層して収容された未使用の第2の記録紙である。17は積層収納された記録紙16を載置し、分離ローラ18方向に適宜押圧する圧板である。19,20はガイド板で、分離ローラ18により取り出された1枚の記録紙の先端を副走査用ローラ8,9に導くための第2の供給経路を形成している。
【0059】
21,22,23,24は、例えば特開平1−264879号公報で開示されている各記録紙1,16の有無及びその紙質を検知する手段である。21,23はそれぞれ記録紙1,16の表面に所定波長の光を照射する光源、22,24は、その光源から照射された光が記録紙表面から反射された光を受光する光検出器である。
【0060】
このような反射光による記録紙の紙質の検知は、記録紙の種類に応じて表面の粗さが異なり、それに伴って光の拡散の程度が異なってくることに起因してなされるものである。例えば普通紙の表面は微視的にみれば繊維の絡み合ったもので表面の拡散は大きく、従って検出器22,24の出力は小さくなる。一方、表面が平滑で、光の拡散の程度の低いシートの場合、検出器22,24の出力が大きくなる。このような光による検出手段を用いて、吸盤3を使用した第1の分離機構、或は分離ローラ18を使用した第2の分離機構に対応する記録紙がそれぞれ対応するカセットに装填されているか、又は記録に適した記録紙が装着されているかなどが判断可能となる。
【0061】
26,27は記録ヘッド12による記録終了後、副走査ローラ10,11の回転に伴って排出される記録紙を後述の工程に導くための搬送路を形成するガイド板である。ガイド板には面状のヒータ(不図示)が取り付けられており、ガイド板26,27で形成された搬送路内の記録紙を加熱し、その記録紙上に吐出されたインクの乾燥を促進する。
【0062】
こうして得られた記録物の記録面に対して、画像堅牢性向上剤を供給し、該記録物のインク受容層に、画像堅牢性向上剤が充填された領域を形成する。
【0063】
液体52は、本発明にかかる画像堅牢性向上剤であり、容器51に不図示のタンクから不図示の供給装置にて供給され、常に容器51内における液面の高さが所定の範囲内になるように自動的に供給・制御されている。53は堅牢性向上剤塗布用ローラで、その表面部53aは堅牢性向上剤52が浸透可能なスポンジ状の構造となっており、その一部が容器51内の堅牢性向上剤52に接していて、液体塗布用ローラ53が不図示の駆動源の駆動により回転することにより、その表面部53aに一様に堅牢性向上剤52を浸潤させることができる。54は塗布用ローラ53との協動により記録媒体を挟持して搬送する搬送用ローラである。尚、この搬送用ローラ54は、その表面に堅牢性向上剤52が付着しないように、記録媒体が挟持されていない時は塗布用ローラ53と離間し、記録媒体が介在している場合にのみ塗布用ローラ53と搬送用ローラ54と接触して記録媒体を挟持するのが望ましい。55は乾燥用ヒータで、堅牢性向上剤52が塗布された記録紙を乾燥させるのに使用される。
【0064】
以上の構成により、記録ヘッド12による記録が終了した後、その記録紙の後端が第2の副走査ローラ対10,11から離れる以前に記録媒体の先端が搬送用ローラ54,塗布用ローラ53の位置にまで到達する。そして、搬送用ローラ54と塗布用ローラ53との間に記録媒体が挟持され、これらローラ53,54の回転に伴って記録媒体の片方の面に堅牢性向上剤52が一様に供給され、またラビングされて、インク受容層の間隙に充填される。この液体が充填された記録紙は、必要に応じて更なるラビング処理を施した後、排紙用ローラ33の回転により34の排紙口から装置外に排出される。
【0065】
なお、図6では、インクジェット記録と画像堅牢性向上剤の充填とが、同一の装置内で処理される形態の画像記録装置を説明したが、これに限定されず、画像記録部と堅牢性向上液の充填部とを分離した構成の画像記録装置、更には、堅牢性向上液の充填部を、画像形成部と独立させた、画像堅牢性向上液の塗布装置もまた、本発明の範囲内のものである。
【0066】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明する。
(画像堅牢性向上剤の調製)
下記に示す飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステルおよび飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物の少なくとも一つと、添加剤すなわち紫外線吸収剤を表2に示した割合で混合することによって実施例1〜10で用いた画像堅牢性向上剤を用意した。
【0067】
グループA.飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの完全または部分エステル
A−1.化合物名:乳酸オクチルドデシル(分子量:371、水酸基価:155)
【0068】
【化3】
【0069】
A−2.化合物名:リンゴ酸ジイソステアリル(分子量:639、水酸基価:89)
【0070】
【化4】
【0071】
A−3.化合物名:ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット(分子量:1949、水酸基価:157)
【0072】
【化5】
【0073】
グループB.飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル
化合物
B−1.化合物名:セスキオレイン酸ソルビタン(分子量:521、水酸基価:195)
【0074】
【化6】
【0075】
B−2.化合物名:ペンタエリトリトールモノオレエート(分子量:406、水酸基価:200)
【0076】
【化7】
【0077】
グループC:添加剤
C−1.商品名:アデカスタブLA−63P(旭電化株式会社製)
【0078】
【化8】
【0079】
また、比較例2の処理剤としてD−1.アクリル樹脂溶液アクリル樹脂系エマルジョン(商品名:ボンコート4001大日本インキ化学工業株式会社)を用意した。
(被記録媒体の製造例)
先ず、下記のようにして基材を作製した。濾水度450mlCSF(CanadianStandarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBPK)80質量部、濾水度480mlCSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBPK)20質量部からなるパルプスラリーに、カチオン化澱粉0.60質量部、重質炭酸カルシウム10質量部、軽質炭酸カルシウム15質量部、アルキルケテンダイマー0.10質量部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03質量部、硫酸バンド0.40質量部を添加して紙料を調整後、長網抄紙紙で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で、酸化澱粉水溶液を固形分
で1.0g/m2となるように含浸し、乾燥後、マシンカレンダー仕上げをし、坪量155g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基材を得た。
【0080】
次に、上記で得た基材上に、以下のようにして下塗り層を形成した。先ず、下塗り層の形成に使用する塗工液として、カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、質量比65/10/25からなる填量100質量部と、市販のポリアクリル酸系分散剤0.1質量部とからなる固形分濃度70%のスラリーに、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7質量部を添加して、固形分60%になるように調整して組成物を得た。次に、この組成物を、乾燥塗工量が15g/m2になるように、ブレードコータで、基材の両面に塗工し、乾燥した。その後、マシンカレンダー仕上げをし(線圧150kgf/cm)、坪量185g/m2、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き基材を得た。下塗り層付き基材の白色度は、断裁されたA4サイズ5枚のサンプルに対して各々測定し、その平均値として求めた。その結果、L*:95、a*:0、b*:−2であった(JIS Z 8729の色相として求めた)。
【0081】
次に、インク受容層を形成したが、上記の第二の表面処理工程での塗工後、即ち、塗工液が下塗り層に含浸されてすぐに、そのまま下塗り層上にインク受容層を形成した。その際の、インク受容層の形成に用いた塗工液及び塗工方法等は、以下の通りである。
【0082】
塩化アルミニウムの4質量%溶液中にアルミン酸ソーダを加えpHを4に調整した。その後、攪拌をしながら90℃まで昇温し、しばらく攪拌を行なった。その後、再びアルミン酸ソーダを加えてpHを10に調整し、その温度を保持しながら40時間熟成反応を行なった。その後、室温に戻し、pHを7〜8に調整した。この分散液に対して脱塩処理を行い、その後酢酸により解膠処理を行なってコロイダルゾルを得た。このアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して17質量%の溶液を得た。ポリビニルアルコール PVA117(商品名:クラレ社製 )を純水に溶解して9質量%の溶液を得た。上記アルミナ水和物のコロイダルゾルとポリビニルアルコール溶液を、アルミナ水和物固形分とポリビニルアルコール固形分が質量比で10:1になるように混合攪拌して、分散液を得た。これをダイコータで乾燥塗工量で35g/m2になるように毎分30mで塗工した。そして、170℃で乾燥してインク受容層を形成した。この被記録媒体のインク受容層表面にリウエットキャストコーターを用いて、熱湯を用いたリウエットキャスト処理を行い被記録媒体を得た。被記録媒体の吸油量は約21cc/m2であった。
【0083】
(記録物の作成、及び堅牢化処理)
上記で作成した被記録媒体に、下記の方法で画像を記録した記録物を作成し、その記録物に対して、実施例1〜10の画像堅牢性向上剤及び比較例2の化合物を用いて、下記の方法▲1▼〜▲5▼に従って各種の画像堅牢性試験を行なった。また、何も処理しなかった記録物を比較例1として同様に評価を行った。
【0084】
インクジェット方式を用いたフォト用プリンタ(商品名:BJ−F870キヤノン製)に当該プリンタに純正のインクタンク(商品名:BCI−6BK、BCI−6Y、M、C、BCI−6PM、BCI−6PC)を装着し、上記で得た被記録媒体の記録面に、単色として、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー、コンポジットカラーとして、コンポジットブラック、葉緑色、肌色および空色の各色について、100%、80%、60%、40%、20%及び10%の各濃度のベタパッチを印字して記録物を作成した。なお、印字に用いたインクは、上記プリンタ純正品であって、全て水溶性染料を含んでいる水性インクである。次いで、この記録物のインク受容層表面に、126mm×89mmの面積あたり約0.3gの割合で、上述した種々の画像堅牢性向上剤、及び比較例2〜4の化合物を付与し、天然コットン素材のラビング部材で画像全面に亘ってラビング処理を行って、実施例1〜10、及び比較例2の記録物を得た。そして各記録物について、各色O.Dが約1.0のパッチを選んで、以下の画像堅牢性試験に用いた。
【0085】
耐光性および耐ガス性の評価方法:上記の記録物の試験前の画像濃度と試験後の画像濃度とを分光光度計・スペクトリノ(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。耐光性および耐ガス性評価は、以下に記述する判定基準に基づき判定し、結果は表1に示した。
(試験方法)
▲1▼耐光性試験1
以下の試験条件に従って、キセノンフェードメーターを用いて、耐光暴露試験を行なった。本試験は、室内における窓越し太陽光の影響を考慮した画像堅牢性試験である。
試験条件;
照射光量:50klux
試験時間:100時間
試験槽内温湿度条件:30℃・45%RH
フィルタ:(アウター)ソーダライム、(インナー)ボロシリケート
耐光性評価:
ISO10977(1993)の基準を参考に耐光暴露試験後の反射濃度残存率(ΔE)データより評価した。具体的には、単色のインクによる記録部に関しては、試験後の記録部が示す反射濃度残存率を測定し、下記表1の基準に従って評価した。一方、複数色のインクを重ねて形成した コンポジットカラーの記録部に関しては、試験後の各記録部の反射濃度残存率に加えて、各コンポジットカラー記録部を構成している複数の構成色それぞれの耐光暴露試験後の反射濃度残存率を測定し、得られた反射濃度残存率の差を算出し、表1に示す基準に従って評価した。コンポジットカラー記録部の評価に、該コンポジットカラー記録部を構成する構成色の反射濃度残存率の差を加えた理由は、コンポジットカラー記録部の画像堅牢性は記録部自体の反射濃度残存率だけでなく、コンポジットカラー記録部を構成している複数の構成色のそれぞれの褪色の程度も視覚上の画質に大きな影響を及ぼすからである。つまり、例えコンポジットカラーの記録部自体の反射濃度残存率が大きい場合であっても、コンポジットカラーを構成している構成色の何れか1つでも、試験前後で反射濃度が大きく変化している場合には、目視におけるカラーバランスが崩れ、視覚的に退色が大きい様に感じることがある為である。
【0086】
表1において、例えば、濃度残存率が90%以上というのは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、コンポジットブラック、葉緑色、肌色および空色の各記録部の反射濃度残存率の内、最も低い値でも90%以上であることを示す。また、例えば、濃度残存率の差が5%未満というのは、上記した4色のコンポジットカラー記録部において、各コンポジットカラー記録部を構成している構成色それぞれの試験前の反射濃度残存率の値の差のうちの最大値が、5%未満の場合である。濃度残存率の差が5%以上10%未満というのは、該4色コンポジットカラー記録部のそれぞれを構成している構成色それぞれの反射濃度残存率の差のうちの最大値が5%
以上10%未満の場合である。
【0087】
【表1】
【0088】
評価結果を表2に示す。
▲2▼耐光性試験2
以下の試験条件に従って、蛍光灯耐光性試験機を用いて、耐光暴露試験を行なった。本試験は、室内における蛍光灯光の影響を考慮した画像堅牢性試験である。
試験条件;
照射光量:60klux
試験時間:480時間
試験層内温湿度条件:30℃・45%RH
フィルタ:ソーダライム
耐光性評価;
ISO10977(1993)の基準を参考に耐光暴露試験後の濃度残存率データより耐光性を上記▲1▼と同様の評価基準を用いて評価した。結果を表2に示す。
▲3▼耐ガス性試験
オゾン試験装置(スガ試験機社製、商品名:オゾンウエザオメーター)を用いて、オゾン暴露試験を行なった。
試験条件;
暴露ガス組成:O33ppm
試験時間:6時間
試験層内温湿度条件:45℃、55%RH
耐ガス性評価;
オゾン暴露試験後の濃度残存率データを上記▲1▼の評価と同様の評価基準を用いて評価した。結果を表2に示す。
▲4▼黄変試験
(試験方法及び評価方法)
未印字の被記録媒体に対して、実施例1から10の向上剤、比較例2の化合物の各々を上記と同様にして付与し、ラビング処理して実施例1から10、比較例2のサンプルを調製し、比較例1としての未処理のサンプルを加えて、以下の環境の中に各サンプルを放置し、試験前後の記録面の色味を比較した。結果は表2に示した。
試験条件;
試験層温湿度条件:50℃、80%RH
試験時間:240時間
【0089】
【表2】
【0090】
▲5▼光沢度試験
未印字の被記録媒体に対して、新たに実施例1及び10の各々を上記と同様に付与して、ラビング処理してサンプルを調整し、また、比較例1として未処理のサンプルを用意した。これら3サンプルを常温で24時間保存した後の各々の光沢度をJIS−Z−8741に規定される方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
新たに実施例1および10の記録物(100%ベタパッチ)と比較例1の記録物(100%ベタパッチ)を▲1▼で用いたサンプルと同様に調製し、常温で24時間保存した後の、各々の画像の濃度をグレタグスペクトロイノ(グレタグマクベス製)で測定した。その結果を表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
【発明の効果】
本発明によって、インクジェット記録画像の堅牢性が向上し、特に、インクジェット記録画像を家庭やオフィス等の通常の室内環境で展示する用途に使用しても画像の褪色を劇的に防止することができる。又、本発明は、記録画像の記録品位を低下させることなく画像堅牢性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる被記録媒体の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【図2】本発明にかかる画像堅牢性の向上方法の概略説明図であり、インク受容層中の間隙に向上剤が充填された状態を示す概略断面図である。
【図3】被記録媒体の支持体として、インク受容層側の表面に緻密な多孔質層があるものを用いたときの、インク受容層中の水分子の挙動の説明図である。
【図4】本発明にかかるアプリケータの一実施態様である。(a)は、使用時の形態を示す概略斜視図であり、(b)は収納や携帯に適する、塗布部が蓋で保護された形態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明にかかるアトマイザの概略断面図である。
【図6】本発明にかかるインクジェット記録装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1000 支持体
1001 画像堅牢性向上剤
1003 インク受容層
1005 微粒子
1007 結着剤
1009 色材
1011 インク受容層中の間隙
1301 緻密な多孔質層
4001 画像堅牢性向上剤貯蔵部
4002 画像堅牢性向上剤塗布部
4003 蓋
5001 ディスペンス手段(スプレー部)
5003 画像堅牢性向上化剤貯蔵部
Claims (13)
- 多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、色材により該インク受容層に画像が形成されている記録物の画像堅牢性向上剤であって、水酸基価5以上で、且つ分子量が300以上のエステル化合物を主として含むことを特徴とする画像堅牢性向上剤。
- 前記エステル化合物が、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物および脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の画像堅牢性向上剤。
- 前記ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物が、炭素数が2から18のヒドロキシカルボン酸と炭素数が2から30の多価アルコールとのエステル化合物である請求項2に記載の画像堅牢性向上剤。
- 前記脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物が、炭素数2から18の脂肪酸と炭素数2から30の多価アルコールとのエステル化合物である請求項2に記載の画像堅牢性向上剤。
- 前記画像堅牢性向上剤が、酸化防止剤及び紫外線吸収剤の少なくとも一方を更に含有する請求項1から4のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤。
- 前記エステル化合物の含有量が50質量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤。
- 多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物であって、該領域に請求項1から6のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤が付与されていることを特徴とする記録物。
- 該領域の少なくとも一部のインク受容層の厚さ方向に存在している孔部の全てまたは実質的に全てを、請求項1から6のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤によって充填されている請求項7に記載の記録物。
- 多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物の画像堅牢性向上方法であって、該領域に、請求項1から6のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤を付与することを特徴とする画像堅牢性向上方法。
- 前記領域の少なくとも一部のインク受容層の厚さ方向に存在している孔部の全てまたは実質的に全てが前記画像堅牢性向上剤によって充填されている請求項9に記載の画像堅牢性向上方法。
- 多孔質構造のインク受容層を備え、且つ、該インク受容層が色材により画像が形成されている領域を有する記録物の製造方法であって、
(i)該インク受容層にインクを付与して、該インクに含有された色材により画像が形成された領域を得る工程、
(ii)該インク受容層に、請求項1から6のいずれかに記載の画像堅牢性向上剤を付与する工程、
を有することを特徴とする記録物の製造方法。 - (iii)該画像が形成された領域に、インク受容層の厚さ方向に分布している孔部の全てまたは実質的に全てを該画像堅牢性向上剤によって充填する工程を更に有する請求項11に記載の記録物の製造方法。
- 多孔質構造のインク受容層を具備している被記録媒体および請求項1〜6の何れかに記載の画像堅牢性向上剤を備えていることを特徴とする画像堅牢性向上化キット。
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