JP2004025796A - 樹脂成形品の機械物性予測方法及び機械物性予測システム - Google Patents

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伊藤 和彦
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Abstract

【課題】繊維を含有した強化樹脂成形品において射出充填時の繊維同士の干渉、繊維の破損、複数繊維の含有などの場合でも射出成形された成形部品の機械的物性を樹脂の流動配向解析結果より精度よく算出する算出方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本方法及びシステムは、含有する強化繊維及びベースレジン単体の機械物性を使用して評価形状における流動配向解析を実施し、算出した樹脂成形品の配向パラメータより算出した機械物性を、実際に評価形状をした成形品の機械物性を測定した数値と比較し、計算値が実測定値と等しくなるようなベースレジン、および強化繊維単体の機械物性を同定し、同定した機械物性を使用して成形部品の変形量を高精度に評価するものである。
【選択図】     図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維、炭素繊維を含有させた熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を射出成形することによって製造される構造部品の機械的物性を予測する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維、炭素繊維を含有した樹脂成形品の剛性などの機械物性を予測する方法としては、1軸配向やランダム配向を想定して含有繊維の体積含有率、繊維剛性を表現する機械物性、繊維のアスペクト比、繊維の樹脂成形品中での配向角または配向率などの各層の物性をHalpin−Tsai式やSchapery式にて算出する方法が知られている。
【0003】
また、Eshelbyの等価介在物法のように、含有繊維を同等の物性を示す等価な介在物として処理する方法などが使用されている。
前記した従来手法はいずれも単繊維の配向を取り扱ったもので、複数繊維が離散的に配向している場合には適用できない。複数繊維の配向を取り扱った例としては特開平7−304056があり、各繊維単体の物性と含有繊維をマトリクスと等価な等価介在物として取り扱う為の仮想歪テンソルを加算演算することにより、複合材全体の物性を表現するテンソルを求めるという手法が紹介されている。
【0004】
さらに、特開平9−237267での弾性率計算方法は、対象物の繊維配向方向の第1弾性率と、繊維配向と直交する方向の第2弾性率と、構造解析を行う際の荷重方向と、を予め格納しておき、対象物の任意の要素ついて繊維配向の向きと荷重方向とが平行している場合には第1弾性率を、繊維配向の向きと荷重方向とが直交している場合には第2弾性率をそれぞれ設定し、更に、繊維配向の向きと荷重方向とが平行も直交もしていない場合には荷重方向と繊維配向の向きとの角度と第1及び第2弾性率のいずれかとに基づいて弾性率を算出して弾性率を設定する、ことを特徴とする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の繊維配向による成形品の機械物性予測方法による予測値と実際の成形品の物性値には数値的な不一致が存在していた。
【0006】
原因としては、1軸配向やランダム配向の仮定と現実とのギャップ、射出充填される場合に繊維自体が破損して計算に使用している繊維のアスペクト比と実際の繊維状態が異なってしまうこと、繊維含有率が大きくなった場合の各繊維同士の干渉、複数繊維含有時の流動配向の予測力不足などが考えられる。
【0007】
すなわち、計算上の仮定が実現象を十分表現できないことや、各構成要素の理想的な物性値を使用していたために、解析モデル構築時の実現象との誤差に加えて入力物性値の誤差が加算されて複合された誤差が存在しており、繊維配向計算結果から算出した機械物性予測が不十分となっていた。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑み、射出充填時の繊維同士の干渉、繊維の破損、複数繊維の含有などの場合でも射出成形された成形部品の機械的物性を樹脂の流動配向解析結果より精度よく算出する算出方法および装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明が採用する第一の発明は、縦弾性率が測定可能な試料形状を決定し、試料に荷重を加えた時の試料の変形量を測定し、前記荷重と変形量から試料全体の縦弾性率を算出し、試料形状を複数に分割された3次元有限要素により構成した流動配向解析用モデルを作成し、ベース樹脂の縦弾性率、ポアソン比、密度、充填繊維の含有率、密度、アスペクト比、縦弾性率、射出成形条件を入力して試料形状状態での充填繊維の配向状態を計算し、さらに求めた配向状態から試料の縦弾性率を算出し、前記実測した試料の縦弾性率と流動配向解析から算出した縦弾性率を比較し、前記実測した縦弾性率と算出した縦弾性率が等しくなるように、流動配向解析に入力するベース樹脂の機械物性および含有繊維の機械物性を調節し、前記試料形状において実測縦弾性率と流動配向解析より算出した縦弾性率が一致する材料入力パラメータを決定しておき、決定した材料入力パラメータを使用して求めたい部品形状の流動配向解析より部品の機械物性予測を行う物性予測方法である。
【0010】
第2の発明は、縦弾性率が測定可能な試料形状を決定し、試料に荷重を加えた時の試料の変形量を測定する手段と、前記荷重と変形量から試料全体の縦弾性率を算出する手段と、算出された実縦弾性率を記憶する記憶装置と、試料形状を複数に分割された3次元有限要素により構成した流動配向解析用モデルを作成する手段と、流動配向解析用モデル情報を記憶する記憶装置と、ベース樹脂の縦弾性率、ポアソン比、密度、充填繊維の含有率、密度、アスペクト比、縦弾性率、射出成形条件を入力する装置と該情報を記憶しておく記憶装置と、試料形状状態での充填繊維の配向状態を計算する計算装置と、さらに求めた配向状態から試料の縦弾性率を算出する計算装置と、計算結果を記憶していおく記憶装置と前記実測した試料の縦弾性率と流動配向解析から算出した縦弾性率を記憶装置から読み出して比較評価する比較装置と、比較した縦弾性率を一致させるように入力するベース樹脂の機械物性および含有繊維の機械物性を調節する入力データ調整装置と、流動配向解析より算出した縦弾性率が一致する材料入力パラメータを決定し記憶させておく記憶装置と、記憶させた材料入力パラメータを使用して求めたい部品形状の流動配向解析を実行し部品形状の機械剛性を算出する算出装置よりなる樹脂成形品の機械物性算出装置である。
【0011】
(作 用)
上記第一、第二の発明によれば、樹脂成形体を構成するベース材及び繊維単体の固有物性は射出充填時の破損、繊維同士の干渉、機械物性算出時の定式化上考慮されていない複数繊維状態での複合的な成形品の機械物性を考慮した値となっているため、本発明により同定したベース材及び各繊維の機械物性を使用することで、繊維の含有比率、及び材料定数同定時の射出成形条件が同じで肉厚が物性同定した試料と同等であるならば、いかなる形状の成形品であっても形状が変わる度に流動配向解析を行って配向分布を求め、算出した配向分布から機械物性を精度よく算出することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
強化繊維を含有した樹脂材料を成形加工して作成した樹脂部品には、射出成形して形状創生する時点で流動による強化繊維の向きが樹脂の流れ方によって決定され様々な方向に向いてしまう。そのため、繊維の配向状態により成形部品で局所的な機械物性に差が生じてしまう。
【0013】
成形部品に荷重が加わった場合の変形状態を解析により求める場合、この局所的な機械物性の差により局所的な変形量の差が発生し、全体を均一物性として計算した場合と変形量に差が発生する。
【0014】
射出成形された樹脂部品の変形形状を実際の繊維配向に対応して精度よく求めるために次の手順をとる(図1)。
【0015】
第一に樹脂のベース材の機械物性(ヤング率、ポアソン比及び粘度、比熱、密度、熱伝導率)と強化繊維の機械物性(ヤング率、ポアソン比、密度、アスペクト比、重量%、繊維含有率)を使用して引張り試験片形状にモデル化した有限要素モデルを使用して流動配向解析を実施し、各要素内での強化繊維の配向率を算出する。
【0016】
次に算出した配向率を使用して引張り方向の弾性率と引張り方向と直交する方向の弾性率を算出し、あらかじめ成形品を測定して求めていた実成形品の異方性弾性率と算出値を比較評価する。ここで、大抵の場合は実測値と解析値が一致することはないので、実測値と解析により求めた異方性弾性率が一致するように流動配向解析に入力する材料パラメータを同定してやる。
【0017】
同定した材料パラメータを使用して前記部品形状モデルを用いて流動配向解析を実行し、結果として各要素における配向率を算出する。
【0018】
算出した配向率から各要素における異方性弾性率を算出してこの異方性弾性率を使用して樹脂成形品の変形解析を実行し実際部品の局部的な変形形状を正確に計算する変形形状算出システム。
【0019】
【発明の効果】
実際の配向状態に応じた正確な変形形状を、成形品形状に囚われることなく正確に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】解析手順フロー図

Claims (8)

  1. 強化繊維を含有した樹脂を射出成形することによって製作する部品において、流動配向解析を行った結果から射出成形された部品の機械的強度を予測する手段を有した樹脂成形品の機械物性予測方法。
  2. 強化繊維を含有した樹脂を射出成形することによって製作する部品において、流動配向解析を行った結果から射出成形された部品の機械的強度を予測する手段を有した樹脂成形品の機械物性予測システム。
  3. 強化繊維を含有した樹脂を射出成形することによって製作する部品において、その機械物性の測定値から、強化繊維の流動配向パラメータを同定することを特徴とする樹脂成形品の機械物性予測方法。
  4. 強化繊維を含有した樹脂を射出成形することによって製作する部品において、その機械物性の測定値から、強化繊維の流動配向パラメータを同定することを特徴とする樹脂成形品の機械物性予測システム。
  5. 前記機械物性の測定試料の厚さは、射出成形によって製作する部品と同等の厚さであることを特徴とする請求項2記載の樹脂成形品の機械物性予測方法。
  6. 前記機械物性の測定試料の厚さは、射出成形によって製作する部品と同等の厚さであることを特徴とする請求項2記載の樹脂成形品の機械物性予測システム。
  7. 強化繊維を含有した樹脂を射出成形により賦形した成形品において、機械特性を採集する測定手段と、前記測定手段で使用する非測定品と同等形状を有する解析モデルに対して強化繊維の見かけ機械物性及びベース樹脂の見かけ機械物性を入力して流動配向解析を実行し各要素における配向率を算出する手段と、前記算出した配向率から異方性機械物性を算出する手段と前記測定手段により入手した機械物性と前記配向率から算出した異方性機械物性を比較する手段と前記測定手段から採集した機械物性と前記算出した機械物性が同じになるように前記流動配向解析に用いる材料パラメータを同定する手段と同定した材料パラメータを使用して成形品の流動配向解析を行い配向率、異方性機械物性を算出する手段と前記算出された異方性機械物性を使用して前記成形品の変形形状を算出する手段を特徴とした樹脂成形品の機械物性予測方法。
  8. 強化繊維を含有した樹脂を射出成形により賦形した成形品において、機械特性を採集する測定手段と、前記測定手段で使用する非測定品と同等形状を有する解析モデルに対して強化繊維の見かけ機械物性及びベース樹脂の見かけ機械物性を入力して流動配向解析を実行し各要素における配向率を算出する手段と、前記算出した配向率から異方性機械物性を算出する手段と前記測定手段により入手した機械物性と前記配向率から算出した異方性機械物性を比較する手段と前記測定手段から採集した機械物性と前記算出した機械物性が同じになるように前記流動配向解析に用いる材料パラメータを同定する手段と同定した材料パラメータを使用して成形品の流動配向解析を行い配向率、異方性機械物性を算出する手段と前記算出された異方性機械物性を使用して前記成形品の変形形状を算出する手段を特徴とした樹脂成形品の機械物性予測システム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010069654A (ja) * 2008-09-17 2010-04-02 Mitsubishi Electric Corp 構造解析方法、構造解析装置、構造解析プログラム、構造解析のための物性値算出方法、構造解析のための物性値算出装置および構造解析のための物性値算出プログラム
JP2010201822A (ja) * 2009-03-04 2010-09-16 Toray Ind Inc 流体流動過程の解析装置、解析方法及び解析プログラム
JP2014133322A (ja) * 2013-01-08 2014-07-24 Polyplastics Co 樹脂成形品の物性を予測する方法

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