JP2004025220A - 容器入り溶接用ワイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】容器1と、この容器1内にこれと同心状に設けられた内筒2と、容器1と内筒2との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤWと、このワイヤ積層体W’の上面に載置されたワイヤ押え治具3とを備え、溶接用ワイヤWを容器軸線方向に引き出す容器入り溶接用ワイヤにおいて、容器1と内筒2との間に配され、前記ワイヤ押え治具3上において内筒2を間隔をあけて囲繞し、狭められたワイヤ引き出し空間Sを形成するワイヤ引き出し空間規制用筒状体4を備えている容器入り溶接用ワイヤ。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器とその内側の内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備え、溶接用ワイヤを容器軸線方向に引き出す容器入り溶接用ワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、アーク溶接ロボット等の自動溶接装置による自動溶接では、溶接用ワイヤの交換頻度を減らして溶接作業効率の向上を図るため、容器内に大容量の溶接用ワイヤ(例えば、鋼溶接用の場合、ワイヤ径1.2mmφで100〜300kg、アルミニウム又はアルミニウム合金溶接用の場合、ワイヤ径1.2mmφで50〜150kg)をループ状で且つ円筒状(厚肉円筒状)に積層し収納してなる容器入り溶接用ワイヤが使用されている。このような容器入り溶接用ワイヤでは、積層面に対して垂直方向に、すなわち、円筒状(厚肉円筒状)をなすワイヤ積層体の軸線方向(容器軸線方向)に溶接用ワイヤ(以下、単にワイヤという)が引き出されるように容器内に収納されているので、このワイヤを引き出したときに、ワイヤ周方向に捻れが発生することになる。そこで、容器入り溶接用ワイヤでは、容器にワイヤを収納する際に、ワイヤを引き出した後の捻れが相殺されてゼロとなるようにすべく、予めワイヤに捻れを与えて収納するようになされている。
【0003】
このように、容器入り溶接用ワイヤでは、容器内に予め捻れを与えた状態でワイヤをループ状で且つ円筒状に積層し収納している。このため、容器入り溶接用ワイヤでは、収納した最後尾のループ状ワイヤから1ループずつ(1輪ずつ)巻き解いて順序よく引き出す必要性があり、その際、今回のループ状ワイヤを引き出す時に次に引き出されるループ状ワイヤの収納状態に悪影響を与えてトラブルを引き起こすことなく円滑に引き出すようにする必要がある。
【0004】
そして従来、この種の容器入り溶接用ワイヤに関する代表的な先行技術として、特開2000−202630号公報に溶接ワイヤ充填ペイルが開示されている。図10は従来の溶接ワイヤ充填ペイルを示す図であって、内・外筒の軸線と垂直方向の断面図である。図11は図10におけるワイヤ押え治具の斜視図である。
【0005】
この従来の溶接ワイヤ充填ペイルは、図10及び図11に示すように、同心状に配置された内筒56及び外筒52と、これらの間にループ状で且つ円筒状に積層されたワイヤWと、この厚肉の円筒状をなすワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具60とを備えている。外筒52は有底円筒状をなし、内筒56は円筒状をなしている。また、ワイヤ押え治具60が、外筒52の内周面寄りに位置するリング62と、このリング62の内周縁から求心状に突設され平面視で略三角形を呈し且つ先細の先端部を内筒56の外周面に接触可能とした複数のガイド片64とを有して構成されている。符号68は、リング62の外周縁に沿って立設され、外筒2の内周面に接触する接触帯である。
【0006】
このような溶接ワイヤ充填ペイル(容器入り溶接用ワイヤ)においては、内筒56と外筒52間から引出されるワイヤWは、内筒56寄りの位置と外筒52寄りの位置との間を繰返し略ジグザグ状に移動するが、複数のガイド片64の形状がこのようなワイヤの引出し時の動きに対応しているため、ワイヤ押え治具60を跳ね上げ難くする。これにより、引出される途中におけるワイヤに細かな絡みやもつれが生じるのを防止するようにしている。
【0007】
一方、容器入り溶接用ワイヤでは、輸送に際し、ワイヤ積層体を形成するループ状ワイヤ同士の絡みが輸送過程で起こる振動などによって発生することを防止すべく、ワイヤ積層体を固定するためのワイヤ積層体拘束治具が用いられている。図12は従来のワイヤ積層体拘束治具の構成要素である筒状本体枠を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面図である。図13は従来のワイヤ積層体拘束治具の構成要素である筒状枠体を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面図である。また、図14は従来のワイヤ積層体拘束治具を説明するための断面図である。
【0008】
図14に示すように、容器入り溶接用ワイヤは、容器41と、この容器41内にこれと同心状に設けられた内筒42と、容器41と内筒42との間に溶接用ワイヤがループ状で且つ円筒状に積層されたワイヤ積層体W’と、このワイヤ積層体W’の上面に載置される環状をなすワイヤ押え治具43とを備えている。この容器入り溶接用ワイヤでは、輸送に際し、ワイヤ積層体W’を固定するためにワイヤ積層体拘束治具が用いられる。ワイヤ積層体拘束治具は、筒状本体枠44、これに張設された弾性体としての無端状の帯状ゴム紐45、及び筒状枠体46により構成されている。
【0009】
筒状本体枠44は、図12及び図14に示すように、所要の高さを有して四角筒形をなし、内筒42に外嵌する状態でワイヤ押え治具43の上に載置されている。この筒状本体枠44の内側における上端近傍の各角部に帯状ゴム紐45が張設されている。図12に示すように、四角筒形の筒状本体枠44の4つの各周壁には帯状ゴム紐45を通すためのゴム通し孔44aが適宜の間隔であけられている。帯状ゴム紐45は、これらのゴム通し孔44aを介して各角部の内側を通り、さらに各周壁の外側を通って張設されている。また、筒状枠体46は、図13及び図14に示すように、所要の高さを有して四角筒形をなし、周壁下端部が前記帯状ゴム紐45の各角部に上方から当接する状態で筒状本体枠44の内側に嵌めて位置され、かつ、内筒42に外嵌可能な大きさに構成されている。筒状枠体46の周壁下端部には、帯状ゴム紐45にひっかかるようにするための係合切欠部46Aが形成されている。
【0010】
輸送の際には、図14において、筒状枠体46の上に容器41の図示しない円盤状の蓋を載置し、この蓋を介して筒状枠体46を押え付けながら前記蓋を容器41上端に固定する。これにより、筒状枠体46が帯状ゴム紐45を下方へ伸ばしながら内筒42を囲繞して下降し、この筒状枠体46によって帯状ゴム紐45を介して筒状本体枠44を下方へ押圧することでワイヤ積層体W’を固定するようにしている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述した従来の溶接ワイヤ充填ペイル(容器入り溶接用ワイヤ)では、外筒52と内筒56との間に形成される円筒状空間において、ワイヤ積層体から引き出されたワイヤWが、予め捻れが付与された際の捻れ塑性変形分の蓄積に起因して回転(回動)し、これによってワイヤW同士の絡みが生じるという欠点があった。
【0012】
また、前述した従来のワイヤ積層体拘束治具では、弾性体が取り付けられた筒状本体枠と、ワイヤ積層体を固定するために前記弾性体に当接して弾性作用を発揮させるための筒状枠体との両方を、輸送に際して装着したり、溶接現場での使用開始に先立って取り外したりする必要があることから、ワイヤ積層体拘束治具の着脱に手間がかかって作業性が悪いという欠点があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体により、ワイヤ積層体から引き出された溶接用ワイヤをワイヤ引き出し空間規制用筒状体と内筒との間に形成してなる狭められたワイヤ引き出し空間を通過させるようにすることで、ワイヤ積層体から引き出された溶接用ワイヤに回転が生じることをなくし、これによってワイヤ同士の絡みの発生を確実に防止して、溶接用ワイヤの円滑な引き出しを行うことができるようにした容器入り溶接用ワイヤを提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体を利用して、輸送の際にワイヤ積層体を固定するためのワイヤ積層体拘束治具を構成することにより、ワイヤ積層体拘束治具の着脱に手間がかからず作業性に優れた容器入り溶接用ワイヤを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願発明では次の技術的手段を講じている。請求項1の発明は、容器と、この容器内にこれと同心状に設けられた内筒と、前記容器と前記内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備え、前記溶接用ワイヤを容器軸線方向に引き出す容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記容器と前記内筒との間に配され、前記ワイヤ押え治具上において前記内筒を間隔をあけて囲繞し、狭められたワイヤ引き出し空間を形成するワイヤ引き出し空間規制用筒状体を備えていることを特徴とする容器入り溶接用ワイヤである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体が多角筒形であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体が、輸送の際に前記ワイヤ積層体を固定するためのワイヤ積層体拘束治具をも構成していることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4の発明は、請求項3記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記ワイヤ積層体拘束治具が、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体と、該ワイヤ引き出し空間規制用筒状体に取り付けられる弾性体と、前記弾性体を介して前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体を下方に押圧することで前記ワイヤ積層体を固定する筒状枠体とにより構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1、2、3又は4記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、溶接用ワイヤがアルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明による容器入り溶接用ワイヤは、ワイヤ積層体の上面に、弾性変形可能で内歯車状をなす複数のワイヤ押え片を有するワイヤ押え治具が載置されており、さらにこの内歯車状をなす複数のワイヤ押え片の上に、多角筒形などの筒状をなすワイヤ引き出し空間規制用筒状体が載置されている。ワイヤ引き出し空間規制用筒状体は、ワイヤ積層体を形成しているワイヤが順次引き出されて該ワイヤ積層体が徐々に減るに従ってワイヤ押え治具とともに下降して行く。このワイヤ引き出し空間規制用筒状体により、ワイヤ押え治具上における容器と内筒間の厚肉円筒状の空間が内外に仕切られて、例えば、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体と内筒との間には、該引き出し空間規制用筒状体がない場合に比べて狭められた筒状空間からなるワイヤ引き出し空間が形成される。
【0020】
そして、このワイヤ引き出し空間規制用筒状体が内歯車状をなす複数のワイヤ押え片の上に載置されているので、ワイヤ積層体からのワイヤは、容器と内筒間の半径方向におけるワイヤ引き出し空間規制用筒状体の位置より内筒側寄り位置においてその部位に位置するワイヤ押え片が弾性変形することにより、前記狭められたワイヤ引き出し空間内に導かれて内筒外周面に接触し、しかる後、この狭められたワイヤ引き出し空間内を上方へ引き上げられることになる。
【0021】
このように、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体により、ワイヤ積層体から引き出されたワイヤを、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体と内筒との間に形成した狭められた筒状空間からなるワイヤ引き出し空間を通過させるようにしている。これにより、本発明による容器入り溶接用ワイヤによれば、ワイヤ引き出しに際し、ワイヤ積層体から引き出されたワイヤがその予め捻れが付与された際の捻れ塑性変形分の蓄積に起因して回転することをなくて、ワイヤ同士の絡みの発生を確実に防止することができる。
【0022】
また、本発明による容器入り溶接用ワイヤによれば、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体を備えるとともに、このワイヤ引き出し空間規制用筒状体を利用して、輸送の際にワイヤ積層体を固定するためのワイヤ積層体拘束治具をも構成するようにしているので、従来に比べてワイヤ積層体拘束治具の着脱に手間がかからず作業性に優れている。
【0023】
本発明による容器入り溶接用ワイヤは、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤに対して好適である。アルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤは、鋼製ワイヤと比較すると、比重が約1/3で軽く、また、軟らかいことから、容器内を自由に動き易いので、より適切な容器入り溶接用ワイヤが必要となる。特に、軟質系アルミニウム合金ワイヤ(1000系、4000系)は、ワイヤ同士の絡みによる塑性変形を生じさせないように引き出す必要がある。本発明による容器入り溶接用ワイヤによれば、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体を備え、ワイヤ積層体から引き出されたワイヤを狭められた筒状空間からなるワイヤ引き出し空間を通過させるようにしているので、アルミニウム又はアルミニウム合金のワイヤであっても、ワイヤ積層体から引き出されたワイヤがワイヤ引き出し空間にて回転することがなく、ワイヤ同士の絡みの発生を確実に防止して、ワイヤの円滑な引き出しを行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は本発明の第1実施形態による容器入り溶接用ワイヤを模式的に示す一部破断斜視図、図2は図1に示す容器入り溶接用ワイヤの模式的断面図である。また、図3は図1におけるワイヤ押え治具の模式的平面図、図4は図1におけるワイヤ押え治具の模式的断面図、図5は図1におけるワイヤ引き出し空間規制用筒状体によるワイヤ引き出し空間を説明するための図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、有底円筒をなす容器1の内側に、容器1と同心状に円筒形の内筒2が設けられている。容器1及び内筒2は、例えば積層紙材からなっている。この容器1と内筒2との間に、ほぼ一定の径のループ状をなすワイヤWが厚肉円筒状に積層されて充填されている。ワイヤWは、例えば、ワイヤ径1.2mmφのアルミニウム合金のワイヤである。さらに、容器1と内筒2との間に積層充填されたワイヤWによる厚肉の円筒状をなすワイヤ積層体W’の上面に、ワイヤWがループ状のまま上昇することを防ぐための、全体として環状をなすワイヤ押え治具3が載置されている。
【0027】
ワイヤ押え治具3は、図1、図3及び図4に示すように、容器1の内周面に沿って位置する環状枠体3aと、この環状枠体3aから内方に内歯車状に突設された弾性変形可能な複数のワイヤ押え片3bとにより構成されている。弾性変形可能で内歯車状をなす複数のワイヤ押え片3bは、平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が内筒2の外周面に近接する状態でワイヤ積層体W’の上面に位置する構成となされている。そして、これらワイヤ押え片3bの垂直上方に延びる基端部が環状枠体3aの外周面に固着されている。なお、図3では、ワイヤ押え片3bの基端部については図示省略している。
【0028】
前記ワイヤ押え片3bは、図1及び図3に示すように、平面視において、容器1(内筒2)の円中心点に向かって求心状をなすのではなく、ワイヤ積層体W’からワイヤWが巻き解かれる方向(図1及び図3における反時計方向)に傾斜させて設けられている。このように平面視においてワイヤ押え片3bを傾斜させることにより、ワイヤ積層体W’からのワイヤWがその巻き解かれる方向へ円滑に引き出されるようになされている。
【0029】
前記環状枠体3aは、比較的薄肉のリング状をなし、例えば積層紙材からなっている。また、ワイヤ押え片3bは、弾性材製の薄いシートからなっている。ワイヤ押え片3bの弾性材の材質としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の適度な弾性を有し、繰り返し曲げに対しても十分な強度を持つ材料が好適である。
【0030】
また、図1、図2及び図5に示すように、内歯車状をなすワイヤ押え片3bの上に、この実施形態では六角筒形をなし、所要の高さを有するワイヤ引き出し空間規制用筒状体4が載置されている。ワイヤ引き出し空間規制用筒状体4は、容器1と内筒2との間に配され、ワイヤ押え治具3(ワイヤ押え片3b)上において内筒2を間隔をあけて囲繞し、狭められたワイヤ引き出し空間ワイヤS(図5では斜線部)を形成している。この引き出し空間規制用筒状体4は、ワイヤ押え治具3の環状枠体3aの内周面に内接している。この六角筒形をなす薄肉のワイヤ引き出し空間規制用筒状体4は、例えば段ボールからなっている。
【0031】
このように構成される第1実施形態の容器入り溶接用ワイヤにおいては、ワイヤ積層体W’からのワイヤWは、容器1と内筒2間の半径方向におけるワイヤ引き出し空間規制用筒状体4の位置より内筒2側寄り位置においてその部位に位置するワイヤ押え片が弾性変形することにより、前記狭められたワイヤ引き出し空間S内に導かれる。次いで、ワイヤ積層体W’からのワイヤWは、内筒2外周面に接触し、しかる後、この狭められたワイヤ引き出し空間S内を上方へ引き上げられることになる。
【0032】
このように、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体4により、ワイヤ積層体W’から引き出されたワイヤWを、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体4と内筒2との間に形成した狭められた筒状空間からなるワイヤ引き出し空間Sを通過させるようにしている。これにより、本実施形態の容器入り溶接用ワイヤによれば、ワイヤ積層体W’から引き出されたワイヤWがその予め捻れが付与された際の捻れ塑性変形分の蓄積に起因してワイヤ引き出し空間Sにて回転することをなくて、ワイヤ同士の絡みの発生を確実に防止することができる。
【0033】
この実施形態では、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体4の形状を六角筒形とした。この場合、自由空間比率Srは、Sr=(S2/S1)×100%=60%となる。ここで、S1は平面視において容器1と内筒2との間に形成される断面積であり、S2は平面視においてワイヤ引き出し空間規制用筒状体と内筒2との間に形成される断面積である。ワイヤ引き出し空間規制用筒状体の形状は、抵抗なくスムースに安定してワイヤ引き出しを行うためには、自由空間比率Srが60〜80%の範囲となるものがよい。この範囲を下回ると引き出し時にワイヤにかかる抵抗が大きくなってしまう、一方この範囲を上回るとワイヤ引き出し空間形成効果が十分に得られない。ワイヤ引き出し空間規制用筒状体の形状が、八角筒形の場合には自由空間比率Srは80%となり、良好なワイヤ引き出し空間形成効果が得られ、五角筒形の場合には自由空間比率Srは50%となり、良好なワイヤ引き出し空間形成効果が得られない。なお、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体の形状は、多角筒形に限定されず、円筒形でもよい。円筒形のワイヤ引き出し空間規制用筒状体の場合、自由空間比率Srが60〜80%の範囲となるように大きさを設定すればよい。なお、多角筒形のワイヤ引き出し空間規制用筒状体は、その頂点部が、容器1の内周面、詳しくワイヤ押え治具3の環状枠体3aの内周面に接触させて載置することができるので、傾斜することがなく安定性に優れるという利点がある。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態による容器入り溶接用ワイヤについて説明する。
【0035】
図6は本発明の第2実施形態による容器入り溶接用ワイヤを模式的に示す一部破断斜視図である。図7は図6におけるワイヤ引き出し空間規制用筒状体を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面図である。図8はワイヤ積層体拘束治具の構成要素である筒状枠体を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面面図である。図9はワイヤ積層体拘束治具を説明するための断面図である。ここで、前記図1〜図5に示される容器入り溶接用ワイヤと同一部分には図1〜図5と同一の符号を付すことによりその説明を省略し、異なる点について説明する。
【0036】
図6に示すように、この実施形態の容器入り溶接用ワイヤに備えられたワイヤ引き出し空間規制用筒状体5は、六角筒形をなしており、内歯車状をなすワイヤ押え片3bの上に載置され、容器1と内筒2との間の円筒状空間を内外に仕切って狭められたワイヤ引き出し空間Sを形成している。ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5は、例えば段ボールからなっている。このワイヤ引き出し空間規制用筒状体5の内側の周壁上端近傍における6つの頂点部分(コーナー部分)に、弾性体としての帯状ゴム紐6A〜6Fが張設されている。
【0037】
図7に示すように、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5は、六角筒形をなす6つの各周壁における上端近傍の頂点部分に、帯状ゴム紐6を通すためのゴム通し孔5aが適宜の間隔であけられている。この空間規制用筒状体5の6つの頂点部分に、帯状ゴム紐6A〜6Fが、ゴム通し孔5aを介して周壁の外側を通って、周壁の内側にそれぞれ張設されている。
【0038】
筒状枠体7は、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5及び帯状ゴム紐6A〜6Fとともにワイヤ積層体拘束治具を構成するものである。この筒状枠体7は、図8及び図9に示すように、所要の高さを有して六角筒形をなし、周壁下端部が帯状ゴム紐6A〜6Fに上方から当接する状態でワイヤ引き出し空間規制用筒状体5の内側に嵌めて位置され、かつ、内筒2に外嵌可能な大きさに構成されている。筒状枠体7の周壁下端部には、帯状ゴム紐6A〜6Fにひっかかるようにするための複数の係合切欠部7aが形成されている。六角筒形をなす薄肉の筒状枠体7は、例えば段ボールからなっている。
【0039】
このように、第2実施形態の容器入り溶接用ワイヤは、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5により、ワイヤ積層体W’から引き出されたワイヤWを、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5と内筒2との間に形成した狭められた筒状空間からなるワイヤ引き出し空間Sを通過させるよう構成されている。これにより、この第2実施形態の容器入り溶接用ワイヤによれば、ワイヤ引き出しに際し、ワイヤ積層体W’から引き出されたワイヤWがその予め捻れが付与された際の捻れ塑性変形分の蓄積に起因して回転することをなくて、ワイヤ同士の絡みの発生を確実に防止することができる。
【0040】
また、輸送の際には、図9に示すように、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5の内側に筒状枠体7を嵌装する。次いで、この筒状枠体7の上に容器1の図示しない円盤状の蓋を載置し、この蓋を介して筒状枠体7を押え付けながら前記蓋を容器1上端に固定する。これにより、筒状枠体7が帯状ゴム紐6A〜6Fを下方へ伸ばしながら内筒2を囲繞して下降し、この筒状枠体7によって緩衝機能を持つ帯状ゴム紐6A〜6Fを介してワイヤ引き出し空間規制用筒状体5を下方へ押圧することで、ワイヤ積層体W’を固定することができる。一方、輸送後の使用開始の際には、帯状ゴム紐6A〜6Fが張設されたワイヤ引き出し空間規制用筒状体5はそのままにして、筒状枠体7のみを取り外せばよい。
【0041】
このように、第2実施形態の容器入り溶接用ワイヤによれば、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5により、ワイヤ積層体W’から引き出されたワイヤWに回転による絡みが発生することを確実に防止できることに加え、このワイヤ引き出し空間規制用筒状体5を利用して、輸送の際にワイヤ積層体W’を固定するためのワイヤ積層体拘束治具をも構成するようにしているので、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5をそのままで、筒状枠体7のみを着脱すればよく、従来に比べてワイヤ積層体拘束治具の着脱に手間がかからず、作業性に優れている。
【0042】
なお、ワイヤ積層体拘束治具の構成については、第2実施形態では、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体5と、これに張設された帯状ゴム紐6A〜6Fと、筒状枠体7とによって構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、周壁上端部に係合切欠部を有するワイヤ引き出し空間規制用筒状体と、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体に外嵌可能な大きさの筒状枠体と、この筒状枠体に張設された帯状ゴム紐とによってワイヤ積層体拘束治具を構成することも可能である。この場合でも、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体をそのままで、帯状ゴム紐が張設された筒状枠体のみを着脱すればよく、着脱に手間がかからず、作業性を向上させることができる。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による容器入り溶接用ワイヤによれば、容器と内筒との間に配され、ワイヤ押え治具上において内筒を間隔をあけて囲繞し、狭められたワイヤ引き出し空間を形成するワイヤ引き出し空間規制用筒状体を備え、ワイヤ積層体から引き出された溶接用ワイヤを前記狭められたワイヤ引き出し空間を通過させるようにしたものであるから、ワイヤ積層体から引き出された溶接用ワイヤに回転が生じることをなくし、ワイヤ同士の絡みの発生を確実に防止することができ、溶接用ワイヤの円滑な引き出しを行うことができる。
【0044】
また、ワイヤ引き出し空間規制用筒状体が、輸送の際にワイヤ積層体を固定するためのワイヤ積層体拘束治具をも構成しているものでは、前記効果に加え、従来に比べてワイヤ積層体拘束治具の着脱に手間がかからず、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による容器入り溶接用ワイヤを模式的に示す一部破断斜視図である。
【図2】図1に示す容器入り溶接用ワイヤの模式的断面図である。
【図3】図1におけるワイヤ押え治具の模式的平面図である。
【図4】図1におけるワイヤ押え治具の模式的断面図である。
【図5】図1におけるワイヤ引き出し空間規制用筒状体によるワイヤ引き出し空間を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態による容器入り溶接用ワイヤを模式的に示す一部破断斜視図である。
【図7】図6におけるワイヤ引き出し空間規制用筒状体を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面図である。
【図8】ワイヤ積層体拘束治具の構成要素である筒状枠体を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面面図である。
【図9】ワイヤ積層体拘束治具を説明するための断面図である。
【図10】従来の溶接ワイヤ充填ペイルを示す図であって、内・外筒の軸線と垂直方向の断面図である。
【図11】図10におけるワイヤ押え治具の斜視図である。
【図12】従来のワイヤ積層体拘束治具の構成要素である筒状本体枠を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面図である。
【図13】従来のワイヤ積層体拘束治具の構成要素である筒状枠体を示す図であって、その(a)は平面図、その(b)は正面図である。
【図14】従来のワイヤ積層体拘束治具を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1…容器 2…内筒 3…ワイヤ押え治具 3a…環状枠体 3b…ワイヤ押え片 4…ワイヤ引き出し空間規制用筒状体 5…ワイヤ引き出し空間規制用筒状体 5a…ゴム通し孔 6A〜6F…帯状ゴム紐 7…筒状枠体 7a…係合切欠部 W…溶接用ワイヤ W’…ワイヤ積層体 S…ワイヤ引き出し空間
Claims (5)
- 容器と、この容器内にこれと同心状に設けられた内筒と、前記容器と前記内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備え、前記溶接用ワイヤを容器軸線方向に引き出す容器入り溶接用ワイヤにおいて、
前記容器と前記内筒との間に配され、前記ワイヤ押え治具上において前記内筒を間隔をあけて囲繞し、狭められたワイヤ引き出し空間を形成するワイヤ引き出し空間規制用筒状体を備えていることを特徴とする容器入り溶接用ワイヤ。 - 前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体が多角筒形であることを特徴とする請求項1記載の容器入り溶接用ワイヤ。
- 請求項1又は2記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体が、輸送の際に前記ワイヤ積層体を固定するためのワイヤ積層体拘束治具をも構成していることを特徴とする容器入り溶接用ワイヤ。
- 請求項3記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記ワイヤ積層体拘束治具が、前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体と、該ワイヤ引き出し空間規制用筒状体に取り付けられる弾性体と、前記弾性体を介して前記ワイヤ引き出し空間規制用筒状体を下方に押圧することで前記ワイヤ積層体を固定する筒状枠体とにより構成されていることを特徴とする容器入り溶接用ワイヤ。
- 溶接用ワイヤがアルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の容器入り溶接用ワイヤ。
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