JP2004025219A - レーザ溶接加工装置及びレーザ溶接加工方法 - Google Patents
レーザ溶接加工装置及びレーザ溶接加工方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】被溶接材の重ね合わされたフランジ部間の間隙を適正に調節して高品質な溶接を施すことができるレーザ溶接加工装置及びレーザ溶接加工方法を提供する。
【解決手段】シム18とローラ組とを本体ベース7に配設した間隙調節装置6をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、被溶接材1のフランジ部2,3間の間隙5にシム18を差込んで、ローラ組の各ローラ対8,9及び10,11でフランジ部2,3のシム18が差込まれた部位を押圧した。従って、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節して高品質な溶接を施すことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】シム18とローラ組とを本体ベース7に配設した間隙調節装置6をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、被溶接材1のフランジ部2,3間の間隙5にシム18を差込んで、ローラ組の各ローラ対8,9及び10,11でフランジ部2,3のシム18が差込まれた部位を押圧した。従って、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節して高品質な溶接を施すことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被溶接材を重ね合せた部分にレーザビームを照射して、被溶接材を重ね合せた部分を溶接するレーザ溶接加工装置及びレーザ溶接加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、レーザビームを照射してプレス成形により形成された車両のパネル部品の相互のフランジを重ね合せ溶接する場合、重ね合せたフランジ間の間隔を所要範囲内に保持することが必要となる。上記フランジ間の間隔が過大である場合、被溶接部にひけ(窪み)が生じて溶接後に手直しを要したり、所要の溶接強度を確保できない虞がある。また、被溶接材が亜鉛メッキ処理鋼板等の被覆処理材であってフランジ間の間隔が過小である際には、溶接時にフランジ間に生じた被覆材の蒸発ガスが逃げ場を失うことでスパッタ(溶融金属飛散)が生じ、被溶接部にブローホールが発生して被溶接部の溶接強度が著しく低下することが知られている。そこで、被溶接材がプレス成形品のように形状がばらついている場合、重ね合せたフランジ間の間隔を所定範囲内に調整することが従来から行われている。
【0003】
例えば、特開2001−129676号公報には、重ね合せ溶接する溶接線の近傍に、該溶接線に略平行にレーザ溶接ヘッドと共に転がり移動する3枚のローラを配し、該3枚のローラの内の第1のローラと第2のローラとが重ね合わされる金属板の一方のみを板厚方向に両面から密着挟止し、第3のローラを第2のローラよりも小さな直径を有して該第2のローラと同軸上に配設し、該第3のローラ及び第1のローラが2枚の金属板の双方を板厚方向に重ねて同時に挟止し、重ね合せ溶接する作業に必要な2枚の金属板の板厚方向の相対位置を保持することにより、該2枚の金属板の重ね合せ溶接する溶接線の部分において該2枚の金属板の間に微小な間隙を溶接線の全長にわたって溶接時に安定的に確保するようにしたレーザ溶接用治具が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記レーザ溶接用治具では、2枚の金属板間の間隔を狭める側に調節することはできるが、過小な間隔を広げる側に調節することはできない。
金属板に形状のばらつきがなく、当該金属板に亜鉛等の表面処理がなされていない被溶接材の場合は上記のようなレーザ溶接用治具で済ませることができるが、プレス成形された車両のパネル部品のように形状にばらつきがあり、且つ所要の表面処理が施されている場合、重ね合せたフランジ間の間隔が過小となった場合に、溶接時にスパッタが生じて被溶接部にブローホールが発生し、溶接強度が著しく低下する虞がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、被溶接材が重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隔を適正に調節して高品質の溶接を施すことができるレーザ溶接加工装置を提供することを目的とする。また、第2目的は、被溶接材が重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隔を適正に調節して高品質の溶接を施すことができるレーザ溶接加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、被溶接材の重ね合わされた部分にレーザビームを照射して、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して被溶接材の重ね合わされた部分を溶接するレーザ溶接加工装置であって、被溶接材に応じて厚みが選択されるシムと、該シムを被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に抜き差し可能に保持するシム保持手段と、被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を間隙にシムが差込まれた状態で間隙が狭まる方向へ押圧して被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を適正に調節する間隙調節手段と、をレーザ溶接ヘッドに備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、間隙調節手段は、各ローラが被溶接材の重ね合わされた部分の両側に配置されたローラ対を溶接線延出方向に所定間隔を開けて配設して構成されるローラ組と、各ローラ毎に設けられ各ローラを駆動して各ローラ対の各ローラを相互に近接離反させるローラ駆動手段と、各ローラ毎に設けられ各ローラと一体で移動するストッパと、各ローラ対毎に設けられローラ対を構成する各ローラと一体で移動するストッパ間に配置されローラ対の各ローラと一体で移動する各ストッパを当接させてローラ対の各ローラを位置決めするスペーサと、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、スペーサはレーザ溶接ヘッドに着脱可能に設けられ、スペーサにローラ対の各ローラと一体で移動する各ストッパが当接することで、ローラ対のローラ間の間隔が被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるようにローラ対の各ローラが位置決めされることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、間隙調節手段は、段差を設けて大径部と小径部とが同軸上に形成されたローラをレーザ溶接ヘッドに備え、大径部を被溶接材の重ね合わされた部分の一方の面上に当接させることで、小径部が被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を押圧することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ローラに形成された大径部と小径部との段差が、被溶接材の重ね合わされた部分の小径部で押圧される側の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた高さに設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、シムは、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込まれる際のローラとの干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする。
【0012】
上記第2の目的を達成するために、本発明のうち請求項7に記載の発明は、被溶接材の重ね合わされた部分にレーザビームを照射して、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して被溶接材の重ね合わされた部分を溶接するレーザ溶接加工方法であって、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にレーザ溶接ヘッドに設けられ被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを差込み、被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まる方向へ押圧して被溶接材の重ね合わされた部分のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節し、この間隙が適正に調節された部位にレーザビームを照射すると共に被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、各ローラが被溶接材の重ね合わされた部分の両側に配置されたローラ対を溶接線延出方向に所定間隔を開けて複数配設して構成されたローラ組をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、各ローラ対のローラ間に被溶接材の重ね合わされた部分を位置決めして各ローラ対のローラ間にある被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムを差込み、次に、各ローラ対の各ローラを相互に近接するように駆動して被溶接材のシムが差込まれた部位を各ローラ対のローラ間で押圧し、各ローラ対のローラ間の間隔が被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるように各ローラ対の各ローラを位置決めして被溶接材のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節し、次に、ローラ組を溶接線に沿って移動させることにより被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、被溶接材の重ね合わされた部分の一方の面上に位置決めされる大径部と被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁上に位置決めされる小径部とが同軸上に形成されたローラをレーザ溶接ヘッドに設け、大径部と小径部との段差の高さを被溶接材の重ね合わされた部分の他方の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた寸法に設定しておいて、ローラの小径部を被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁に当接させ、この状態で被溶接材の重ね合わされた部分の小径部が当接された部位の間隙にシムを差込み、次に、ローラを半径方向へ駆動して小径部で被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を被溶接材の重ね合わされた部分の間隙が狭まるように押圧して、大径部が被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接する時点までローラの駆動を継続させて被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節し、次に、ローラを溶接線に沿って移動させることにより被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする。
【0015】
従って、請求項1に記載の発明では、シム保持手段を駆動して被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込み、間隙調節手段により被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まるように押圧することで、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節することができる。また、この状態で被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させることにより、被溶接材の重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、ローラ駆動手段を駆動してローラ対の各ローラを相互に近接方向へ移動させ、各ローラと一体で移動する各ストッパをスペーサに当接させることでローラ対の各ローラが位置決めされる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、各ローラと一体で移動する各ストッパをスペーサに当接させてローラ対の各ローラを位置決めすることで、ローラ対のローラ間の間隔が、被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離に設定される。このように、ローラ対のローラ間の間隔に所要クリアランスを設けることで、ローラ対のローラ間で被溶接材の重ね合わされた部分が押圧された場合であっても、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムが挟持されてレーザ溶接ヘッドの移動が妨げられるようなことがない。また、スペーサをレーザ溶接ヘッドに着脱可能に設けたので、被溶接材が重ね合わされる部分の厚み(双方の板厚)に応じてスペーサを交換することで、ローラ対のローラ間の間隔を適宜設定して多様な被溶接材に対応させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、ローラの大径部を被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接させることで被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁をローラの小径部で押圧することができる。また、この状態で被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてローラを溶接線に沿って移動させることで、被溶接材の重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、大径部と小径部との段差の高さが、被溶接材の重ね合わされた部分の小径部が押圧する側の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた高さに設定されるので、被溶接材の重ね合わされた部分がローラで押圧された場合であっても、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムが挟持されてレーザ溶接ヘッドの移動が妨げられるようなことがない。
【0020】
請求項6に記載の発明では、シムに切欠きを設けたので、シムを被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込む際に、ローラとシムとの干渉を回避することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを差込み、被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まる方向へ押圧して被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を適正に調節することができる。そして、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させることで、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムを差込んで、各ローラ対の各ローラを各ローラ対の各ローラが相互に近接するように駆動して各ローラ対のローラ間で被溶接材のシムが差込まれた部位を押圧し、各ローラ対のローラ間の間隔が被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるように各ローラ対の各ローラを位置決めして、被溶接材の重ね合わされた部分のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節することができる。また、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてローラ組を溶接線に沿って移動させることにより、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、ローラの小径部を被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁に当接させ、この状態で被溶接材の重ね合わされた部分の小径部が当接された部位の間隙にシムを差込む。そして、ローラを半径方向へ駆動して小径部で被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を被溶接材の重ね合わされた部分の間隙が狭まるように押圧して、大径部が被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接する時点までローラの駆動を継続させて被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節することができる。また、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてローラを溶接線に沿って移動させることにより、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1乃至図3に基づいて説明する。図1に示す本レーザ溶接加工装置は、被溶接材1に形成された各フランジ部2,3を重ね合せ、該重ね合わせたフランジ部2,3にレーザビーム4を照射すると共に被溶接材1とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査して、重ね合わされたフランジ部2,3を溶接して接合するレーザ溶接加工装置であって、重ね合わされたフランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節する間隙調節装置6(間隙調節手段)をレーザ溶接ヘッドに備え、該レーザ溶接ヘッドを溶接線に沿って移動させることにより、重ね合わされたフランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5が、上記間隙調節装置6により順次適正に調節される構造になっている。
【0025】
上記間隙調節装置6は、本体ベース7がレーザ溶接ヘッドの所定位置に取付けられており、該本体ベース7には、相互に近接離反可能なローラ8,9で構成される第1のローラ対と、相互に近接離反可能なローラ10,11で構成される第2のローラ対と、を溶接線延出方向(図1に示すA方向)に所定間隔で配置したローラ組が設けられている。また、該ローラ組の各ローラ8〜11には、同軸上に各ローラ8〜11と一体で回転可能なローラ軸12が立設されている。さらに、上記本体ベース7には、各ローラ8〜11に対応させたエアシリンダ等の流体圧シリンダ13〜16(ローラ駆動手段)が配設されている。
【0026】
各流体圧シリンダ13〜16は、各ロッド13a〜16aが対応する各ローラ8〜11のローラ軸12と直交し、且つロッド13aの軸線とロッド14aの軸線とが同一直線上に位置すると共にロッド15aの軸線とロッド16aの軸線とが同一直線上に位置するように配設されている。また、各ロッド13a〜16aの先端にはストッパ17が設けられており、各ローラ8〜11の各ローラ軸12はベアリングを介して各ストッパ17に回転可能に支持されている。そして、本間隙調節装置6は、各流体圧シリンダ13〜16を駆動して各ロッド13a〜16aを突出させることにより、第1のローラ対の各ローラ8,9が相互に近接するように移動すると共に第2のローラ対の各ローラ10,11が相互に近接するように移動する構造になっている。
【0027】
また、図1に示すように、上記本体ベース7には、被溶接材1に応じて厚みが選択されたシム18が、被溶接材1の重ね合わされたフランジ2,3間の間隙5に抜き差し可能に設けられている。上記シム18は、本体ベース7の略中央に設けられた流体圧シリンダ19(シム保持手段)のロッド19aに連結され、本体ベース7を溶接線延出方向へ縦断して保持される。そして、図2に示すように、シム18をフランジ2,3間の間隙5の直上に位置決め後、上記流体圧シリンダ19を駆動してロッド19aを突出させることにより、図3に示すように、シム18が上記間隙5に差込まれる構造になっている。なお、シム18は、被溶接材1のフランジ部2,3間の間隙5の溶接時の所要間隔から当該シム18が間隙5を円滑に移動可能な所要クリアランスを差引いた厚み(図3に示すT)のものが選択される。また、本体ベース7には、シム18を収納するためのシム収納溝20が形成されている。
【0028】
また、図1乃至図3に示すように、上記本体ベース7には、第1のローラ対の各ローラ8,9と一体で移動されるストッパ17間に第1のスペーサ21が設けられると共に、第2のローラ対の各ローラ10,11と一体で移動されるストッパ17間に第2のスペーサ22が設けられている。各スペーサ21,22は略コの字状に形成されており、本体ベース7に配設されたスペーサ収納部23,24に着脱可能に設けられている。各スペーサ収納部23,24は本体ベース7の上面に開口し、ローラ対配置方向(溶接線延出方向)に延びて各スペーサ21,22の対向する内側面が所定の嵌め合いで嵌合されるスペーサ保持部23a,24aが形成されている。なお、図2及び図3に示すように、スペーサ保持部23a,24aには、下面に上記シム収納溝20が形成されている。
【0029】
そして、本間隙調節装置6では、流体圧シリンダ13〜16を駆動させて第1のローラ対の各ローラ8,9及び第2のローラ対の各ローラ10,11を相互に近接させることにより、図3に示すように、第1のローラ対の各ローラ8,9と一体で移動される各ストッパ17が上記第1のスペーサ21の両外側面に当接して第1のローラ対の各ローラ8,9が相互に所要間隔(図3に示すL)をなすように位置決めされると共に、第2のローラ対の各ローラ10,11と一体で移動される各ストッパ17が上記第2のスペーサ22の両外側面に当接して第2のローラ対の各ローラ10,11が相互に所要間隔(図3に示すL)をなすように位置決めされる構造になっている。
【0030】
また、図1に示すように、上記本体ベース7には、レーザビーム出射方向(図2及び3における紙面左右方向)の一側にレーザ溶接ヘッドから出射されるレーザビームを通過させるレーザビーム通過孔25が設けられると共に、他側に溶接時に発生する溶接ヒュームをフランジ部2,3の間隙から排出させる溶接ヒューム排出ダクト26が設けられている。これにより、レーザ溶接ヘッドから出射されたレーザビーム4が本体ベース7のレーザビーム通過孔25を通過してフランジ部2の溶接線上に照射され、この時フランジ部2,3間の間隙5から発生する溶接ヒュームが集塵装置により吸引されて溶接ヒューム排出ダクト26から速やかに排出される構造になっている。
【0031】
次に、第1の実施の形態のレーザ溶接加工装置を用いて被溶接材1のフランジ部2,3を重ね合せ溶接する際の作用を説明する。まず、レーザ溶接ヘッドを移動させてフランジ部2,3の溶接を開始する部位の間隙5にシム18を差込み可能な位置に間隙調節装置6を位置決めさせる。これにより、図2に示すように、シム18が間隙5の直上に位置し、且つローラ組の各ローラ対8,9及び10,11間にフランジ部2,3の端縁が介在した状態となる。この状態で、流体圧シリンダ19(シム保持手段)を駆動してフランジ部2,3間の間隙5にシム18を差込む。次に、各流体圧シリンダ13〜16を駆動して、第1のローラ対の各ローラ8,9を相互に近接させると共に第2のローラ対の各ローラ10,11を相互に近接させる。
【0032】
第1のローラ対の各ローラ8,9を相互に近接させるに伴い当該各ローラ8,9と一体で移動する各ストッパ17も相互に近接する。そして、各ストッパ17を第1のスペーサ21に当接させて各ローラ8,9を位置決めする。また、第2のローラ対の各ローラ10,11を相互に近接させるに伴い当該各ローラ10,11と一体で移動する各ストッパ17も相互に近接する。そして、各ストッパ17を第2のスペーサ22に当接させて各ローラ10,11を位置決めする。これにより、図3に示すように、各ローラ対8,9及び10,11は、被溶接材1のフランジ部2,3をシム18を介在させた状態で押圧して、各ローラ8,9及び10,11間の間隔をL(フランジ部2,3の双方の板厚の合計+シム18の厚み+所要クリアランス)とし、フランジ部2,3の間隙5を(シム18の厚み)+(所要クリアランス)に調節する。
【0033】
次に、レーザ溶接ヘッドからフランジ部2,3に向けてレーザビーム4を出射して重ね合わされたフランジ部2,3のうちフランジ部2の溶接線上にレーザビーム4を照射する。そして、レーザ溶接ヘッドをフランジ部2,3に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、フランジ部2,3を溶接して接合する。この時、間隙調節装置6は、レーザ溶接ヘッドの移動に伴い、フランジ部2,3間の間隙5に差込んだシム18を当該フランジ部2,3と摺動させると共にローラ組の各ローラ対8,9及び10,11でシム18を介在させたフランジ部2,3を押圧しながらフランジ部2,3に沿って移動する。これにより、レーザビーム4を走査するに伴い、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5が順次適正に調節され、高品質の溶接をすることが可能となる。さらに、間隙調節装置6に溶接時に発生した溶接ヒュームを排出する溶接ヒューム排出ダクト26を設けたことにより、例えば、被溶接材1が亜鉛メッキ処理鋼板であった場合であっても、フランジ部2,3間の間隙5に生じた溶接ヒュームを速やかに間隙5の外部に排出して、ひけ等の発生を抑制することができる。
【0034】
第1の実施の形態では以下の効果を奏する。
シム18とローラ組とを本体ベース7に配設した間隙調節装置6をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、被溶接材1のフランジ部2,3間の間隙5にシム18を差込んで、ローラ組の各ローラ対8,9及び10,11でフランジ部2,3のシム18が差込まれた部位を押圧したので、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節することが可能となる。
第1のローラ対の各ローラ8,9と一体で相互に近接させた各ストッパ17を第1のスペーサ21に当接させて各ローラ8,9を位置決めさせると共に第2のローラ対の各ローラ10,11と一体で相互に近接させた各ストッパ17を第2のスペーサ22に当接させて各ローラ10,11を位置決めさせるので、被溶接材1に応じて各スペーサ21,22を取り替えて各スペーサ21,22のレーザビーム出射方向(図2及び図3における紙面視左右方向)の幅を変更し、さらにシム18の厚みを被溶接材1に応じて変更することで、多様な被溶接材1に対応させることができる。
間隙調節装置6でフランジ部2,3間の間隙5を適正に調節した状態でレーザ溶接ヘッドをフランジ部2,3に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を順次適正に調節することが可能となる。
各スペーサ21,22に各スットパ17を当接させて、各ローラ対8,9及び10,11の間隔(図3に示すL)を、(フランジ部2,3の双方の板厚の合計)+(シム18の厚み)+(所要クリアランス)に設定するので、フランジ部2,3の間隙5にシム18が差込まれた状態でレーザ溶接ヘッドを移動させた場合であっても、フランジ部2,3間をシム18が円滑に移動することが可能となる。
溶接時に発生する溶接ヒュームを排出する溶接ヒューム排出ダクトを本体ベース7に設けたので、フランジ部2,3間の間隙5に生じる溶接ヒュームを速やかに間隙5から排出させることが可能となり、被溶接材1が表面処理鋼板等であっても高品質な溶接をすることができる。
【0035】
なお、第1の実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施の形態では、被溶接材1に対してレーザ溶接ヘッドを移動させたが、レーザ溶接ヘッドに対して被溶接材1を移動させてもよい。
本実施の形態では、各流体圧シリンダ13〜16を駆動してローラ組の各ローラ8〜11を近接離反させたが、各ローラ対8,9及び10,11を各サーボモータを駆動して位置決めさせてもよい。この場合、被溶接材1に応じて各スペーサ21,22を用意する必要がなくなる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態を図4乃至図8に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態と構成が同一又は相当する部分には同一の名称及び符号を付与する。図4に示す本レーザ溶接加工装置は、被溶接材31に被溶接材32のフランジ部33(以下、単にフランジ部33と称す)を重ね合せ、該フランジ部33にレーザビーム4を照射すると共に被溶接材31,32とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査して、重ね合わされた被溶接材31とフランジ部33を溶接して接合するレーザ溶接加工装置であって、重ね合わされた被溶接材31とフランジ部33のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節する間隙調節装置34(間隙調節手段)をレーザ溶接ヘッドに備え、該レーザ溶接ヘッドを溶接線に沿って移動させることにより、重ね合わされた被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5が、上記間隙調節装置34により順次適正に調節される構造になっている。
【0037】
上記間隙調節装置34は、図5〜図7に示すように、段差を設けることで大径部35と小径部36とが同軸上に一体で形成されたローラ37を備え、該ローラ37の軸38の両側をレーザ溶接ヘッドに取付けられたローラ支持フォーク39で回転可能に支持する構造になっている。また、間隙調節装置34は、溶接時に被溶接材31とフランジ部33との間に介在させるシム18を具備している。該シム18は、断面が略L字状に形成されてローラ37の大径部35側の側面に対向させて配設されており、一端の屈折させた部分が被溶接材31とフランジ部33との間に差込まれるように構成されている。なお、上記ローラ37は、段差の高さ、即ち大径部35と小径部36との半径差(図8に示すH)が、フランジ部33の板厚(図8に示すF)とシム18の厚み(図8に示すT)と所要クリアランスとを加えた値に設定されている。
【0038】
上記シム18は、略L字状に形成されたアーム40の一端に固着されており、該アーム40の他端は、上記軸38の大径部35側を支持するローラ支持フォーク39に取付けられたアーム支持部41で軸38の軸線方向(以下、単に軸線方向と称す)へスライド可能に支持されている。また、アーム支持部41には流体圧シリンダ42が設けられ、該流体圧シリンダ42を駆動することによりアーム40が軸線方向へスライド移動して被溶接材31とフランジ部33との間隙5にシム18が抜き差しされる構造になっている。なお、シム18の屈折部には、図4に示すように、ローラ37の大径部35との干渉を回避するための切欠き43が形成されている。さらに、図4に示すように、シム18には被溶接材31とフランジ部33との重ね合せ方向(図4における紙面視上下方向)へ延びる長孔44が形成されており、該長孔44をローラ37の軸38が貫通する。そして、この長孔44の範囲内で軸38を移動させてフランジ部33の厚みに応じてシム18の差込位置を調整するように構成されている。
【0039】
次に、第2の実施の形態のレーザ溶接加工装置を用いて被溶接材31と被溶接材32のフランジ部33とを重ね合せ溶接する際の作用を説明する。まず、レーザ溶接ヘッドを移動させて、図5に示すように、間隙調節装置34のローラ37の小径部36を被溶接材32のフランジ部33に当接させる。次に、流体圧シリンダ42を駆動して、図6に示すように、シム18を図6における紙面視左側へスライドさせて被溶接材31とフランジ部33との間に差込む。この状態でレーザ溶接ヘッドを移動させることにより、ローラ37の小径部36でフランジ部33を被溶接材31とフランジ部33との間隙5が狭まる方向へ押圧する。そして、図7に示すように、ローラ37の大径部35が被溶接材31に当接した状態でレーザ溶接ヘッドの移動を停止する。これにより、図8に示すように、被溶接材31とフランジ部33との間隙5が、シム18の厚みTに所要クリアランスを加えた被溶接材31とフランジ部33とを重ね合せ溶接するのに適した間隔に調整される。
【0040】
次に、レーザ溶接ヘッドからレーザビーム4を出射して被溶接材31に重ね合わされたフランジ部33の溶接線上に照射する。そして、レーザ溶接ヘッドをフランジ部33に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、被溶接材31とフランジ部33とを溶接して接合する。この時、間隙調節装置34は、レーザ溶接ヘッドの移動に伴い、被溶接材31とフランジ部33との間隙5に差込んだシム18を当該被溶接材31及びフランジ部33と摺動させると共にローラ37の小径部36でフランジ部33を押圧してローラ37の大径部35が被溶接材31上をフランジ部33の端縁に沿って走行する。これにより、レーザビーム4を走査するに伴い、被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5が順次適正に調節され、高品質の溶接をすることが可能となる。
【0041】
第2の実施の形態では以下の効果を奏する。
大径部35と小径部36とが同軸上に一体で形成されたローラ37とシム18とを備えた間隙調節装置34をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、被溶接材31と被溶接材32のフランジ部33との間隙5にシム18を差込んで、ローラ37の小径部36でフランジ部33を押圧し、且つ大径部35を被溶接材31に当接させたので、被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節することが可能となる。また、被溶接材32のフランジ部33の板厚F及びシム18の厚みを変更することで、多様な被溶接材31,32に対応させることができる。
間隙調節装置34で被溶接材31とフランジ部33の間隙5を適正に調節した状態でレーザ溶接ヘッドをフランジ部33に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5を順次適正に調節することが可能となる。
ローラ37の段差の高さH、即ち大径部35と小径部36との半径差が、(フランジ部33の板厚F)+(シム18の厚みT)+(所要クリアランス)に設定されるので、被溶接材31とフランジ部33との間隙5にシム18が差込まれた状態でレーザ溶接ヘッドを移動させた場合であっても、被溶接材31とフランジ部33との間をシム18が円滑に移動することが可能となる。
【0042】
なお、第2の実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施の形態では、大径部35と小径部36とを一体で形成してローラ37を構成したが、大径部35と小径部36とが各々単独で軸38の回りに回転可能なようにローラ37を構成してもよい。この場合、大径部35と小径部36とに回転差を生じさせることにより大径部35と小径部36との周速度差を吸収することができる。これにより、ローラ37が被溶接材31,32上で引き摺られることを防止して被溶接材31,32の外観品質を維持することが可能となる。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、被溶接材が重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隔を適正に調節して高品質の溶接を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の説明図で、特に、間隙調節装置の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の説明図で、特に、間隙調節装置が被溶接材に対して位置決めされて、フランジ部間の間隙にシムを差込む直前の状態を、一部を断面で示した図である。
【図3】第1の実施の形態の説明図で、特に、図2に示す状態からフランジ部間の間隙にシムを差込み、間隙にシムが差込まれた状態でフランジ部が各ローラ対のローラで押圧された状態を、一部を断面で示した図である。
【図4】第2の実施の形態の説明図で、特に、間隙調節装置の斜視図である。
【図5】第2の実施の形態の説明図で、特に、被溶接材間の間隙にシムを差込む直前の状態を示す図である。
【図6】第2の実施の形態の説明図で、特に、図5に示す状態から被溶接材間の間隙にシムを差込んだ直後の状態を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の説明図で、特に、図6に示す状態からレーザ溶接ヘッドを移動させてローラの大径部を被溶接材の一方に当接させた状態を示す図である。
【図8】図7におけるB部の詳細図である。
【符号の説明】
1 被溶接材
2,3 フランジ部(被溶接材が重ね合わされた部分)
4 レーザビーム
5 間隙
6,34 間隙調節装置
8、9 ローラ対(ローラ)
19,11 ローラ対(ローラ)
13〜16 流体圧シリンダ(ローラ駆動手段)
17 ストッパ
18 シム
19 流体圧シリンダ(シム保持手段)
21,22 スペーサ
31、32 被溶接材
33 フランジ部(被溶接材が重ね合わされた部分)
35 大径部
36 小径部
37 ローラ
43 切欠き
【発明の属する技術分野】
本発明は、被溶接材を重ね合せた部分にレーザビームを照射して、被溶接材を重ね合せた部分を溶接するレーザ溶接加工装置及びレーザ溶接加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、レーザビームを照射してプレス成形により形成された車両のパネル部品の相互のフランジを重ね合せ溶接する場合、重ね合せたフランジ間の間隔を所要範囲内に保持することが必要となる。上記フランジ間の間隔が過大である場合、被溶接部にひけ(窪み)が生じて溶接後に手直しを要したり、所要の溶接強度を確保できない虞がある。また、被溶接材が亜鉛メッキ処理鋼板等の被覆処理材であってフランジ間の間隔が過小である際には、溶接時にフランジ間に生じた被覆材の蒸発ガスが逃げ場を失うことでスパッタ(溶融金属飛散)が生じ、被溶接部にブローホールが発生して被溶接部の溶接強度が著しく低下することが知られている。そこで、被溶接材がプレス成形品のように形状がばらついている場合、重ね合せたフランジ間の間隔を所定範囲内に調整することが従来から行われている。
【0003】
例えば、特開2001−129676号公報には、重ね合せ溶接する溶接線の近傍に、該溶接線に略平行にレーザ溶接ヘッドと共に転がり移動する3枚のローラを配し、該3枚のローラの内の第1のローラと第2のローラとが重ね合わされる金属板の一方のみを板厚方向に両面から密着挟止し、第3のローラを第2のローラよりも小さな直径を有して該第2のローラと同軸上に配設し、該第3のローラ及び第1のローラが2枚の金属板の双方を板厚方向に重ねて同時に挟止し、重ね合せ溶接する作業に必要な2枚の金属板の板厚方向の相対位置を保持することにより、該2枚の金属板の重ね合せ溶接する溶接線の部分において該2枚の金属板の間に微小な間隙を溶接線の全長にわたって溶接時に安定的に確保するようにしたレーザ溶接用治具が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記レーザ溶接用治具では、2枚の金属板間の間隔を狭める側に調節することはできるが、過小な間隔を広げる側に調節することはできない。
金属板に形状のばらつきがなく、当該金属板に亜鉛等の表面処理がなされていない被溶接材の場合は上記のようなレーザ溶接用治具で済ませることができるが、プレス成形された車両のパネル部品のように形状にばらつきがあり、且つ所要の表面処理が施されている場合、重ね合せたフランジ間の間隔が過小となった場合に、溶接時にスパッタが生じて被溶接部にブローホールが発生し、溶接強度が著しく低下する虞がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、被溶接材が重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隔を適正に調節して高品質の溶接を施すことができるレーザ溶接加工装置を提供することを目的とする。また、第2目的は、被溶接材が重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隔を適正に調節して高品質の溶接を施すことができるレーザ溶接加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、被溶接材の重ね合わされた部分にレーザビームを照射して、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して被溶接材の重ね合わされた部分を溶接するレーザ溶接加工装置であって、被溶接材に応じて厚みが選択されるシムと、該シムを被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に抜き差し可能に保持するシム保持手段と、被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を間隙にシムが差込まれた状態で間隙が狭まる方向へ押圧して被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を適正に調節する間隙調節手段と、をレーザ溶接ヘッドに備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、間隙調節手段は、各ローラが被溶接材の重ね合わされた部分の両側に配置されたローラ対を溶接線延出方向に所定間隔を開けて配設して構成されるローラ組と、各ローラ毎に設けられ各ローラを駆動して各ローラ対の各ローラを相互に近接離反させるローラ駆動手段と、各ローラ毎に設けられ各ローラと一体で移動するストッパと、各ローラ対毎に設けられローラ対を構成する各ローラと一体で移動するストッパ間に配置されローラ対の各ローラと一体で移動する各ストッパを当接させてローラ対の各ローラを位置決めするスペーサと、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、スペーサはレーザ溶接ヘッドに着脱可能に設けられ、スペーサにローラ対の各ローラと一体で移動する各ストッパが当接することで、ローラ対のローラ間の間隔が被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるようにローラ対の各ローラが位置決めされることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、間隙調節手段は、段差を設けて大径部と小径部とが同軸上に形成されたローラをレーザ溶接ヘッドに備え、大径部を被溶接材の重ね合わされた部分の一方の面上に当接させることで、小径部が被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を押圧することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ローラに形成された大径部と小径部との段差が、被溶接材の重ね合わされた部分の小径部で押圧される側の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた高さに設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、シムは、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込まれる際のローラとの干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする。
【0012】
上記第2の目的を達成するために、本発明のうち請求項7に記載の発明は、被溶接材の重ね合わされた部分にレーザビームを照射して、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して被溶接材の重ね合わされた部分を溶接するレーザ溶接加工方法であって、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にレーザ溶接ヘッドに設けられ被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを差込み、被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まる方向へ押圧して被溶接材の重ね合わされた部分のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節し、この間隙が適正に調節された部位にレーザビームを照射すると共に被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、各ローラが被溶接材の重ね合わされた部分の両側に配置されたローラ対を溶接線延出方向に所定間隔を開けて複数配設して構成されたローラ組をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、各ローラ対のローラ間に被溶接材の重ね合わされた部分を位置決めして各ローラ対のローラ間にある被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムを差込み、次に、各ローラ対の各ローラを相互に近接するように駆動して被溶接材のシムが差込まれた部位を各ローラ対のローラ間で押圧し、各ローラ対のローラ間の間隔が被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるように各ローラ対の各ローラを位置決めして被溶接材のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節し、次に、ローラ組を溶接線に沿って移動させることにより被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、被溶接材の重ね合わされた部分の一方の面上に位置決めされる大径部と被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁上に位置決めされる小径部とが同軸上に形成されたローラをレーザ溶接ヘッドに設け、大径部と小径部との段差の高さを被溶接材の重ね合わされた部分の他方の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた寸法に設定しておいて、ローラの小径部を被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁に当接させ、この状態で被溶接材の重ね合わされた部分の小径部が当接された部位の間隙にシムを差込み、次に、ローラを半径方向へ駆動して小径部で被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を被溶接材の重ね合わされた部分の間隙が狭まるように押圧して、大径部が被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接する時点までローラの駆動を継続させて被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節し、次に、ローラを溶接線に沿って移動させることにより被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする。
【0015】
従って、請求項1に記載の発明では、シム保持手段を駆動して被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込み、間隙調節手段により被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まるように押圧することで、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節することができる。また、この状態で被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させることにより、被溶接材の重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、ローラ駆動手段を駆動してローラ対の各ローラを相互に近接方向へ移動させ、各ローラと一体で移動する各ストッパをスペーサに当接させることでローラ対の各ローラが位置決めされる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、各ローラと一体で移動する各ストッパをスペーサに当接させてローラ対の各ローラを位置決めすることで、ローラ対のローラ間の間隔が、被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離に設定される。このように、ローラ対のローラ間の間隔に所要クリアランスを設けることで、ローラ対のローラ間で被溶接材の重ね合わされた部分が押圧された場合であっても、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムが挟持されてレーザ溶接ヘッドの移動が妨げられるようなことがない。また、スペーサをレーザ溶接ヘッドに着脱可能に設けたので、被溶接材が重ね合わされる部分の厚み(双方の板厚)に応じてスペーサを交換することで、ローラ対のローラ間の間隔を適宜設定して多様な被溶接材に対応させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、ローラの大径部を被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接させることで被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁をローラの小径部で押圧することができる。また、この状態で被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてローラを溶接線に沿って移動させることで、被溶接材の重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、大径部と小径部との段差の高さが、被溶接材の重ね合わされた部分の小径部が押圧する側の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた高さに設定されるので、被溶接材の重ね合わされた部分がローラで押圧された場合であっても、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムが挟持されてレーザ溶接ヘッドの移動が妨げられるようなことがない。
【0020】
請求項6に記載の発明では、シムに切欠きを設けたので、シムを被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込む際に、ローラとシムとの干渉を回避することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを差込み、被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まる方向へ押圧して被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を適正に調節することができる。そして、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させることで、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、被溶接材の重ね合わされた部分の間隙にシムを差込んで、各ローラ対の各ローラを各ローラ対の各ローラが相互に近接するように駆動して各ローラ対のローラ間で被溶接材のシムが差込まれた部位を押圧し、各ローラ対のローラ間の間隔が被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるように各ローラ対の各ローラを位置決めして、被溶接材の重ね合わされた部分のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節することができる。また、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてローラ組を溶接線に沿って移動させることにより、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、ローラの小径部を被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁に当接させ、この状態で被溶接材の重ね合わされた部分の小径部が当接された部位の間隙にシムを差込む。そして、ローラを半径方向へ駆動して小径部で被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を被溶接材の重ね合わされた部分の間隙が狭まるように押圧して、大径部が被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接する時点までローラの駆動を継続させて被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節することができる。また、被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてローラを溶接線に沿って移動させることにより、被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1乃至図3に基づいて説明する。図1に示す本レーザ溶接加工装置は、被溶接材1に形成された各フランジ部2,3を重ね合せ、該重ね合わせたフランジ部2,3にレーザビーム4を照射すると共に被溶接材1とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査して、重ね合わされたフランジ部2,3を溶接して接合するレーザ溶接加工装置であって、重ね合わされたフランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節する間隙調節装置6(間隙調節手段)をレーザ溶接ヘッドに備え、該レーザ溶接ヘッドを溶接線に沿って移動させることにより、重ね合わされたフランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5が、上記間隙調節装置6により順次適正に調節される構造になっている。
【0025】
上記間隙調節装置6は、本体ベース7がレーザ溶接ヘッドの所定位置に取付けられており、該本体ベース7には、相互に近接離反可能なローラ8,9で構成される第1のローラ対と、相互に近接離反可能なローラ10,11で構成される第2のローラ対と、を溶接線延出方向(図1に示すA方向)に所定間隔で配置したローラ組が設けられている。また、該ローラ組の各ローラ8〜11には、同軸上に各ローラ8〜11と一体で回転可能なローラ軸12が立設されている。さらに、上記本体ベース7には、各ローラ8〜11に対応させたエアシリンダ等の流体圧シリンダ13〜16(ローラ駆動手段)が配設されている。
【0026】
各流体圧シリンダ13〜16は、各ロッド13a〜16aが対応する各ローラ8〜11のローラ軸12と直交し、且つロッド13aの軸線とロッド14aの軸線とが同一直線上に位置すると共にロッド15aの軸線とロッド16aの軸線とが同一直線上に位置するように配設されている。また、各ロッド13a〜16aの先端にはストッパ17が設けられており、各ローラ8〜11の各ローラ軸12はベアリングを介して各ストッパ17に回転可能に支持されている。そして、本間隙調節装置6は、各流体圧シリンダ13〜16を駆動して各ロッド13a〜16aを突出させることにより、第1のローラ対の各ローラ8,9が相互に近接するように移動すると共に第2のローラ対の各ローラ10,11が相互に近接するように移動する構造になっている。
【0027】
また、図1に示すように、上記本体ベース7には、被溶接材1に応じて厚みが選択されたシム18が、被溶接材1の重ね合わされたフランジ2,3間の間隙5に抜き差し可能に設けられている。上記シム18は、本体ベース7の略中央に設けられた流体圧シリンダ19(シム保持手段)のロッド19aに連結され、本体ベース7を溶接線延出方向へ縦断して保持される。そして、図2に示すように、シム18をフランジ2,3間の間隙5の直上に位置決め後、上記流体圧シリンダ19を駆動してロッド19aを突出させることにより、図3に示すように、シム18が上記間隙5に差込まれる構造になっている。なお、シム18は、被溶接材1のフランジ部2,3間の間隙5の溶接時の所要間隔から当該シム18が間隙5を円滑に移動可能な所要クリアランスを差引いた厚み(図3に示すT)のものが選択される。また、本体ベース7には、シム18を収納するためのシム収納溝20が形成されている。
【0028】
また、図1乃至図3に示すように、上記本体ベース7には、第1のローラ対の各ローラ8,9と一体で移動されるストッパ17間に第1のスペーサ21が設けられると共に、第2のローラ対の各ローラ10,11と一体で移動されるストッパ17間に第2のスペーサ22が設けられている。各スペーサ21,22は略コの字状に形成されており、本体ベース7に配設されたスペーサ収納部23,24に着脱可能に設けられている。各スペーサ収納部23,24は本体ベース7の上面に開口し、ローラ対配置方向(溶接線延出方向)に延びて各スペーサ21,22の対向する内側面が所定の嵌め合いで嵌合されるスペーサ保持部23a,24aが形成されている。なお、図2及び図3に示すように、スペーサ保持部23a,24aには、下面に上記シム収納溝20が形成されている。
【0029】
そして、本間隙調節装置6では、流体圧シリンダ13〜16を駆動させて第1のローラ対の各ローラ8,9及び第2のローラ対の各ローラ10,11を相互に近接させることにより、図3に示すように、第1のローラ対の各ローラ8,9と一体で移動される各ストッパ17が上記第1のスペーサ21の両外側面に当接して第1のローラ対の各ローラ8,9が相互に所要間隔(図3に示すL)をなすように位置決めされると共に、第2のローラ対の各ローラ10,11と一体で移動される各ストッパ17が上記第2のスペーサ22の両外側面に当接して第2のローラ対の各ローラ10,11が相互に所要間隔(図3に示すL)をなすように位置決めされる構造になっている。
【0030】
また、図1に示すように、上記本体ベース7には、レーザビーム出射方向(図2及び3における紙面左右方向)の一側にレーザ溶接ヘッドから出射されるレーザビームを通過させるレーザビーム通過孔25が設けられると共に、他側に溶接時に発生する溶接ヒュームをフランジ部2,3の間隙から排出させる溶接ヒューム排出ダクト26が設けられている。これにより、レーザ溶接ヘッドから出射されたレーザビーム4が本体ベース7のレーザビーム通過孔25を通過してフランジ部2の溶接線上に照射され、この時フランジ部2,3間の間隙5から発生する溶接ヒュームが集塵装置により吸引されて溶接ヒューム排出ダクト26から速やかに排出される構造になっている。
【0031】
次に、第1の実施の形態のレーザ溶接加工装置を用いて被溶接材1のフランジ部2,3を重ね合せ溶接する際の作用を説明する。まず、レーザ溶接ヘッドを移動させてフランジ部2,3の溶接を開始する部位の間隙5にシム18を差込み可能な位置に間隙調節装置6を位置決めさせる。これにより、図2に示すように、シム18が間隙5の直上に位置し、且つローラ組の各ローラ対8,9及び10,11間にフランジ部2,3の端縁が介在した状態となる。この状態で、流体圧シリンダ19(シム保持手段)を駆動してフランジ部2,3間の間隙5にシム18を差込む。次に、各流体圧シリンダ13〜16を駆動して、第1のローラ対の各ローラ8,9を相互に近接させると共に第2のローラ対の各ローラ10,11を相互に近接させる。
【0032】
第1のローラ対の各ローラ8,9を相互に近接させるに伴い当該各ローラ8,9と一体で移動する各ストッパ17も相互に近接する。そして、各ストッパ17を第1のスペーサ21に当接させて各ローラ8,9を位置決めする。また、第2のローラ対の各ローラ10,11を相互に近接させるに伴い当該各ローラ10,11と一体で移動する各ストッパ17も相互に近接する。そして、各ストッパ17を第2のスペーサ22に当接させて各ローラ10,11を位置決めする。これにより、図3に示すように、各ローラ対8,9及び10,11は、被溶接材1のフランジ部2,3をシム18を介在させた状態で押圧して、各ローラ8,9及び10,11間の間隔をL(フランジ部2,3の双方の板厚の合計+シム18の厚み+所要クリアランス)とし、フランジ部2,3の間隙5を(シム18の厚み)+(所要クリアランス)に調節する。
【0033】
次に、レーザ溶接ヘッドからフランジ部2,3に向けてレーザビーム4を出射して重ね合わされたフランジ部2,3のうちフランジ部2の溶接線上にレーザビーム4を照射する。そして、レーザ溶接ヘッドをフランジ部2,3に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、フランジ部2,3を溶接して接合する。この時、間隙調節装置6は、レーザ溶接ヘッドの移動に伴い、フランジ部2,3間の間隙5に差込んだシム18を当該フランジ部2,3と摺動させると共にローラ組の各ローラ対8,9及び10,11でシム18を介在させたフランジ部2,3を押圧しながらフランジ部2,3に沿って移動する。これにより、レーザビーム4を走査するに伴い、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5が順次適正に調節され、高品質の溶接をすることが可能となる。さらに、間隙調節装置6に溶接時に発生した溶接ヒュームを排出する溶接ヒューム排出ダクト26を設けたことにより、例えば、被溶接材1が亜鉛メッキ処理鋼板であった場合であっても、フランジ部2,3間の間隙5に生じた溶接ヒュームを速やかに間隙5の外部に排出して、ひけ等の発生を抑制することができる。
【0034】
第1の実施の形態では以下の効果を奏する。
シム18とローラ組とを本体ベース7に配設した間隙調節装置6をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、被溶接材1のフランジ部2,3間の間隙5にシム18を差込んで、ローラ組の各ローラ対8,9及び10,11でフランジ部2,3のシム18が差込まれた部位を押圧したので、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節することが可能となる。
第1のローラ対の各ローラ8,9と一体で相互に近接させた各ストッパ17を第1のスペーサ21に当接させて各ローラ8,9を位置決めさせると共に第2のローラ対の各ローラ10,11と一体で相互に近接させた各ストッパ17を第2のスペーサ22に当接させて各ローラ10,11を位置決めさせるので、被溶接材1に応じて各スペーサ21,22を取り替えて各スペーサ21,22のレーザビーム出射方向(図2及び図3における紙面視左右方向)の幅を変更し、さらにシム18の厚みを被溶接材1に応じて変更することで、多様な被溶接材1に対応させることができる。
間隙調節装置6でフランジ部2,3間の間隙5を適正に調節した状態でレーザ溶接ヘッドをフランジ部2,3に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、フランジ部2,3のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を順次適正に調節することが可能となる。
各スペーサ21,22に各スットパ17を当接させて、各ローラ対8,9及び10,11の間隔(図3に示すL)を、(フランジ部2,3の双方の板厚の合計)+(シム18の厚み)+(所要クリアランス)に設定するので、フランジ部2,3の間隙5にシム18が差込まれた状態でレーザ溶接ヘッドを移動させた場合であっても、フランジ部2,3間をシム18が円滑に移動することが可能となる。
溶接時に発生する溶接ヒュームを排出する溶接ヒューム排出ダクトを本体ベース7に設けたので、フランジ部2,3間の間隙5に生じる溶接ヒュームを速やかに間隙5から排出させることが可能となり、被溶接材1が表面処理鋼板等であっても高品質な溶接をすることができる。
【0035】
なお、第1の実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施の形態では、被溶接材1に対してレーザ溶接ヘッドを移動させたが、レーザ溶接ヘッドに対して被溶接材1を移動させてもよい。
本実施の形態では、各流体圧シリンダ13〜16を駆動してローラ組の各ローラ8〜11を近接離反させたが、各ローラ対8,9及び10,11を各サーボモータを駆動して位置決めさせてもよい。この場合、被溶接材1に応じて各スペーサ21,22を用意する必要がなくなる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態を図4乃至図8に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態と構成が同一又は相当する部分には同一の名称及び符号を付与する。図4に示す本レーザ溶接加工装置は、被溶接材31に被溶接材32のフランジ部33(以下、単にフランジ部33と称す)を重ね合せ、該フランジ部33にレーザビーム4を照射すると共に被溶接材31,32とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査して、重ね合わされた被溶接材31とフランジ部33を溶接して接合するレーザ溶接加工装置であって、重ね合わされた被溶接材31とフランジ部33のレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節する間隙調節装置34(間隙調節手段)をレーザ溶接ヘッドに備え、該レーザ溶接ヘッドを溶接線に沿って移動させることにより、重ね合わされた被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5が、上記間隙調節装置34により順次適正に調節される構造になっている。
【0037】
上記間隙調節装置34は、図5〜図7に示すように、段差を設けることで大径部35と小径部36とが同軸上に一体で形成されたローラ37を備え、該ローラ37の軸38の両側をレーザ溶接ヘッドに取付けられたローラ支持フォーク39で回転可能に支持する構造になっている。また、間隙調節装置34は、溶接時に被溶接材31とフランジ部33との間に介在させるシム18を具備している。該シム18は、断面が略L字状に形成されてローラ37の大径部35側の側面に対向させて配設されており、一端の屈折させた部分が被溶接材31とフランジ部33との間に差込まれるように構成されている。なお、上記ローラ37は、段差の高さ、即ち大径部35と小径部36との半径差(図8に示すH)が、フランジ部33の板厚(図8に示すF)とシム18の厚み(図8に示すT)と所要クリアランスとを加えた値に設定されている。
【0038】
上記シム18は、略L字状に形成されたアーム40の一端に固着されており、該アーム40の他端は、上記軸38の大径部35側を支持するローラ支持フォーク39に取付けられたアーム支持部41で軸38の軸線方向(以下、単に軸線方向と称す)へスライド可能に支持されている。また、アーム支持部41には流体圧シリンダ42が設けられ、該流体圧シリンダ42を駆動することによりアーム40が軸線方向へスライド移動して被溶接材31とフランジ部33との間隙5にシム18が抜き差しされる構造になっている。なお、シム18の屈折部には、図4に示すように、ローラ37の大径部35との干渉を回避するための切欠き43が形成されている。さらに、図4に示すように、シム18には被溶接材31とフランジ部33との重ね合せ方向(図4における紙面視上下方向)へ延びる長孔44が形成されており、該長孔44をローラ37の軸38が貫通する。そして、この長孔44の範囲内で軸38を移動させてフランジ部33の厚みに応じてシム18の差込位置を調整するように構成されている。
【0039】
次に、第2の実施の形態のレーザ溶接加工装置を用いて被溶接材31と被溶接材32のフランジ部33とを重ね合せ溶接する際の作用を説明する。まず、レーザ溶接ヘッドを移動させて、図5に示すように、間隙調節装置34のローラ37の小径部36を被溶接材32のフランジ部33に当接させる。次に、流体圧シリンダ42を駆動して、図6に示すように、シム18を図6における紙面視左側へスライドさせて被溶接材31とフランジ部33との間に差込む。この状態でレーザ溶接ヘッドを移動させることにより、ローラ37の小径部36でフランジ部33を被溶接材31とフランジ部33との間隙5が狭まる方向へ押圧する。そして、図7に示すように、ローラ37の大径部35が被溶接材31に当接した状態でレーザ溶接ヘッドの移動を停止する。これにより、図8に示すように、被溶接材31とフランジ部33との間隙5が、シム18の厚みTに所要クリアランスを加えた被溶接材31とフランジ部33とを重ね合せ溶接するのに適した間隔に調整される。
【0040】
次に、レーザ溶接ヘッドからレーザビーム4を出射して被溶接材31に重ね合わされたフランジ部33の溶接線上に照射する。そして、レーザ溶接ヘッドをフランジ部33に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、被溶接材31とフランジ部33とを溶接して接合する。この時、間隙調節装置34は、レーザ溶接ヘッドの移動に伴い、被溶接材31とフランジ部33との間隙5に差込んだシム18を当該被溶接材31及びフランジ部33と摺動させると共にローラ37の小径部36でフランジ部33を押圧してローラ37の大径部35が被溶接材31上をフランジ部33の端縁に沿って走行する。これにより、レーザビーム4を走査するに伴い、被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5が順次適正に調節され、高品質の溶接をすることが可能となる。
【0041】
第2の実施の形態では以下の効果を奏する。
大径部35と小径部36とが同軸上に一体で形成されたローラ37とシム18とを備えた間隙調節装置34をレーザ溶接ヘッドに設けておいて、被溶接材31と被溶接材32のフランジ部33との間隙5にシム18を差込んで、ローラ37の小径部36でフランジ部33を押圧し、且つ大径部35を被溶接材31に当接させたので、被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5を適正に調節することが可能となる。また、被溶接材32のフランジ部33の板厚F及びシム18の厚みを変更することで、多様な被溶接材31,32に対応させることができる。
間隙調節装置34で被溶接材31とフランジ部33の間隙5を適正に調節した状態でレーザ溶接ヘッドをフランジ部33に沿って移動させてレーザビーム4を溶接線に沿って走査することで、被溶接材31とフランジ部33とのレーザビーム4が照射される部位の間隙5を順次適正に調節することが可能となる。
ローラ37の段差の高さH、即ち大径部35と小径部36との半径差が、(フランジ部33の板厚F)+(シム18の厚みT)+(所要クリアランス)に設定されるので、被溶接材31とフランジ部33との間隙5にシム18が差込まれた状態でレーザ溶接ヘッドを移動させた場合であっても、被溶接材31とフランジ部33との間をシム18が円滑に移動することが可能となる。
【0042】
なお、第2の実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施の形態では、大径部35と小径部36とを一体で形成してローラ37を構成したが、大径部35と小径部36とが各々単独で軸38の回りに回転可能なようにローラ37を構成してもよい。この場合、大径部35と小径部36とに回転差を生じさせることにより大径部35と小径部36との周速度差を吸収することができる。これにより、ローラ37が被溶接材31,32上で引き摺られることを防止して被溶接材31,32の外観品質を維持することが可能となる。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、被溶接材が重ね合わされた部分のレーザビームが照射される部位の間隔を適正に調節して高品質の溶接を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の説明図で、特に、間隙調節装置の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の説明図で、特に、間隙調節装置が被溶接材に対して位置決めされて、フランジ部間の間隙にシムを差込む直前の状態を、一部を断面で示した図である。
【図3】第1の実施の形態の説明図で、特に、図2に示す状態からフランジ部間の間隙にシムを差込み、間隙にシムが差込まれた状態でフランジ部が各ローラ対のローラで押圧された状態を、一部を断面で示した図である。
【図4】第2の実施の形態の説明図で、特に、間隙調節装置の斜視図である。
【図5】第2の実施の形態の説明図で、特に、被溶接材間の間隙にシムを差込む直前の状態を示す図である。
【図6】第2の実施の形態の説明図で、特に、図5に示す状態から被溶接材間の間隙にシムを差込んだ直後の状態を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の説明図で、特に、図6に示す状態からレーザ溶接ヘッドを移動させてローラの大径部を被溶接材の一方に当接させた状態を示す図である。
【図8】図7におけるB部の詳細図である。
【符号の説明】
1 被溶接材
2,3 フランジ部(被溶接材が重ね合わされた部分)
4 レーザビーム
5 間隙
6,34 間隙調節装置
8、9 ローラ対(ローラ)
19,11 ローラ対(ローラ)
13〜16 流体圧シリンダ(ローラ駆動手段)
17 ストッパ
18 シム
19 流体圧シリンダ(シム保持手段)
21,22 スペーサ
31、32 被溶接材
33 フランジ部(被溶接材が重ね合わされた部分)
35 大径部
36 小径部
37 ローラ
43 切欠き
Claims (9)
- 被溶接材の重ね合わされた部分にレーザビームを照射して、前記被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して前記被溶接材の重ね合わされた部分を溶接するレーザ溶接加工装置であって、
前記被溶接材に応じて厚みが選択されるシムと、該シムを前記被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に抜き差し可能に保持するシム保持手段と、前記被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を前記間隙に前記シムが差込まれた状態で前記間隙が狭まる方向へ押圧して前記被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を適正に調節する間隙調節手段と、を前記レーザ溶接ヘッドに備えることを特徴とするレーザ溶接加工装置。 - 前記間隙調節手段は、各ローラが前記被溶接材の重ね合わされた部分の両側に配置されたローラ対を溶接線延出方向に所定間隔を開けて配設して構成されるローラ組と、各ローラ毎に設けられ各ローラを駆動して各ローラ対の各ローラを相互に近接離反させるローラ駆動手段と、各ローラ毎に設けられ各ローラと一体で移動するストッパと、各ローラ対毎に設けられ前記ローラ対を構成する各ローラと一体で移動するストッパ間に配置され前記ローラ対の各ローラと一体で移動する各ストッパを当接させてローラ対の各ローラを位置決めするスペーサと、を具備することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接加工装置。
- 前記スペーサは前記レーザ溶接ヘッドに着脱可能に設けられ、前記スペーサにローラ対の各ローラと一体で移動する各ストッパが当接することで、ローラ対のローラ間の間隔が前記被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計と前記シムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるようにローラ対の各ローラが位置決めされることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接加工装置。
- 前記間隙調節手段は、段差を設けて大径部と小径部とが同軸上に形成されたローラを前記レーザ溶接ヘッドに備え、前記大径部を前記被溶接材の重ね合わされた部分の一方の面上に当接させることで、前記小径部が前記被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を押圧することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接加工装置。
- 前記ローラに形成された前記大径部と前記小径部との段差が、前記被溶接材の重ね合わされた部分の前記小径部で押圧される側の板厚と前記シムの板厚と所要クリアランスとを加えた高さに設定されることを特徴とする請求項4に記載のレーザ溶接加工装置。
- 前記シムは、前記被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に差込まれる際の前記ローラとの干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする請求項4に記載のレーザ溶接加工装置。
- 被溶接材の重ね合わされた部分にレーザビームを照射して、前記被溶接材とレーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して前記被溶接材の重ね合わされた部分を溶接するレーザ溶接加工方法であって、
前記被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に前記レーザ溶接ヘッドに設けられ前記被溶接材に応じて厚みが選択されたシムを差込み、前記被溶接材の重ね合わされた部分の少なくとも一方を双方の間隙が狭まる方向へ押圧して前記被溶接材の重ね合わされた部分の前記シムが差込まれた部位の間隙を適正に調節し、この間隙が適正に調節された部位にレーザビームを照射すると共に前記被溶接材と前記レーザ溶接ヘッドとを相対移動させてレーザビームを溶接線に沿って走査して、前記被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とするレーザ溶接加工方法。 - 各ローラが前記被溶接材の重ね合わされた部分の両側に配置されたローラ対を溶接線延出方向に所定間隔を開けて複数配設して構成されたローラ組を前記レーザ溶接ヘッドに設けておいて、各ローラ対のローラ間に前記被溶接材の重ね合わされた部分を位置して各ローラ対のローラ間にある前記被溶接材の重ね合わされた部分の間隙に前記シムを差込み、次に、各ローラ対の各ローラを相互に近接するように駆動して前記被溶接材の前記シムが差込まれた部位を各ローラ対のローラ間で押圧し、各ローラ対のローラ間の間隔が前記被溶接材の重ね合わされた部分の双方の板厚の合計と前記シムの板厚と所要クリアランスとを加えた距離になるように各ローラ対の各ローラを位置決めして前記被溶接材のシムが差込まれた部位の間隙を適正に調節し、次に、前記ローラ組を溶接線に沿って移動させることにより、前記被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接加工方法。
- 前記被溶接材の重ね合わされた部分の一方の面上に位置決めされる大径部と前記被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁上に位置決めされる小径部とが同軸上に形成されたローラをレーザ溶接ヘッドに設け、前記大径部と前記小径部との段差の高さを前記被溶接材の重ね合わされた部分の他方の板厚とシムの板厚と所要クリアランスとを加えた寸法に設定しておいて、前記ローラの小径部を前記被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁に当接させ、この状態で前記被溶接材の重ね合わされた部分の前記小径部が当接された部位の間隙に前記シムを差込み、次に、前記ローラを半径方向へ駆動して前記小径部で前記被溶接材の重ね合わされた部分の他方の端縁を前記被溶接材の重ね合わされた部分の間隙が狭まるように押圧して、前記大径部が前記被溶接材の重ね合わされた部分の一方に当接する時点まで前記ローラの駆動を継続させて前記被溶接材の重ね合わされた部分の間隙を適正に調節し、次に、前記ローラを溶接線に沿って移動させることにより前記被溶接材のレーザビームが照射される部位の間隙を順次適正に調節することを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接加工方法。
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