JP2004024164A - 核酸抽出法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】核酸を含有する生体試料から該核酸を抽出する方法において、生体試料とアルカリ化剤を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理する工程、及び加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にし試料を澄明化にする工程からなることを特徴とする核酸抽出法と、核酸抽出に使用する、アルカリ金属水酸化物を成分とするアルカリ化剤、及び無機酸を成分とする酸性化剤からなる核酸抽出用試薬。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体試料から核酸を抽出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と問題点】
核酸を含む生体試料から核酸を抽出する代表的な方法として、1)フェノールにより夾雑物を変性させて沈殿させた後、水相中の核酸を回収するフェノール−クロロホルム抽出法、2)イオン交換水で希釈した試料を凍結融解を繰り返し、アルカリ溶液を添加後、油液分離、加熱処理を行うアルカリ溶解法、そしてより簡易的な方法として、3)細胞あるいは組織を煮沸するだけの方法等が知られている。
【0003】
生体試料が血清あるいは血漿の場合には、4)血液成分に含まれるウイルス中から核酸を回収する方法として、血液成分に、タンパク質分解酵素、還元剤、界面活性剤、タンパク変性剤等からなる水溶液を加え、遊離させた核酸をアルコールで沈殿させ、遠心分離で回収する方法(特開平7−236499)、5)ウイルスを含む血清試料にウイルス溶解剤を加え、その処理溶液に疎水性高分子化合物を含む有機溶媒を加え、さらに高濃度の無機塩含有水溶液を入れて核酸を水相に移行させた後、水相にアルコールを加え核酸を沈殿させ、遠心分離で回収する方法(特開平11−253158)、6)DNAを含有する微生物を含む血清又は血漿をアルカリ処理、加熱後、遠心分離で回収する方法(特開2000−279199)、7)プラスミドDNAを含む血清から、磁性を有するカチオン性固相担体でDNAを捕捉し、磁気分離・洗浄後、アニオン性物質でDNAを分離する方法、(特開2001−352979)等が提案されている。
【0004】
一方、全血試料から直接核酸を抽出する方法としては、8)核酸増幅反応混合物中の全血試料割合を5容量%以上とし、カリウムやマグネシウム塩濃度を高濃度で調整することにより、未処理の血液試料から直接核酸を抽出する方法(特開平6−277062)、9)サポニンや界面活性剤を用いた条件下で赤血球のみを溶解・遠心分離し、得られた白血球をアルカリ処理して核酸を抽出する方法(特開平8−501208)、10)真菌DNAを含む全血試料を、塩化マグネシウム等を含む低張液で赤血球を溶解し、次いで白血球を酵素により分解し、加熱・遠心分離後、アルカリ溶解、蛋白除去、有機溶媒による抽出等の操作で真菌DNAを得る方法(特開平11−508137)等が公開されている。
【0005】
以上のように、血液成分から、特に全血試料から直接核酸を抽出する場合には、まず赤血球の除去、さらに血清又は血漿成分からの白血球の単離・溶解、所望の核酸抽出等の幾つもの操作が必要となる。代表的な核酸増幅法であるPCR法では、赤血球由来のヘム誘導体が、反応混合物中に非常に少量に存在する時であっても、反応を阻害することが報告されており(R. Higuchi、 PCR Technology、 H. Ehrlich編、 Stochton Oress 1989、31〜38頁)、特に所望の核酸含有量が微量な場合には、該核酸の使用用途を妨害する物質を最大限除去することが必須となる。
【0006】
血液成分から核酸を抽出する方法において、アルカリ処理と加熱処理を併用させた方法やアルカリ処理後に中和する方法は公知技術であるが、アルカリ化した試料を酸性領域に移行し、澄明化した該試料をそのまま核酸増幅法に応用した技術はない。
【0007】
ここで、PCR法以外の核酸増幅法として、最近開発されたLAMP(Loop−mediated isothermal AMPlification )法がある。この方法はループ媒介等温増幅法と呼ばれ、鋳型となるヌクレオチドに自身の3’末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とした核酸増幅法である(WO 00/28082)。
【0008】
LAMP法は、計6領域の塩基配列を認識する4種類のオリゴヌクレオチドからなるプライマー(インナープライマーF及びRとアウタープライマーF及びR)、鎖置換合成活性を有する核酸合成酵素、及び基質を用い、熱変性工程を必要とせずに、終始等温で速やかに特異性の高い遺伝子増幅反応が進行することを特徴とする。さらに、増幅反応途中に形成されるダンベル型構造の5’末端側のループ1本鎖の塩基配列に相補的なプライマー(ループプライマー)を使用することにより、核酸合成の起点を増やし、反応時間の短縮と検出感度の上昇が可能となる(WO 02/24902)。
【0009】
LAMP法での核酸増幅産物もPCR法同様、電気泳動法や蛍光性インターカレーター法を用いて検出できるが(特開2001−242169)、核酸増幅反応の副生成物である不溶性のピロリン酸マグネシウムによる反応液の濁度や沈殿の生成を指標として、核酸増幅の有無を確認する方法が公開されている(WO01/83817)。
【0010】
しかし、LAMP法のように濁度を利用した検出系においては、反応液が澄明であることが必要となる。フェノール−クロロホルムを用いた核酸抽出法でも澄明な核酸溶液は得られるが、前述した通り操作が煩雑である。また、操作が簡便な核酸抽出法は、核酸溶液の澄明化まで考慮したものではなく、核酸増幅後の濁度測定には適さない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生体試料に含まれる核酸を、従来のような煩雑な操作を必要とせず、簡単に核酸を抽出することができる技術および試薬を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意研究を行った結果、生体試料と適量のアルカリ化剤を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理することによって所望の核酸を抽出できることを見出し、そして、驚くべきことに、生体試料として全血を用いた場合、加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にすると、抽出された該核酸を含む試料が澄明化し、その該試料をそのまま核酸増幅法に利用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)核酸を含有する生体試料から該核酸を抽出する方法において、
(a)生体試料とアルカリ化剤を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理する工程、及び
(b)加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にする工程、
を含むことを特徴とする核酸抽出法。
(2)加熱処理を50〜100℃で30分以内行う工程、及びアルカリ化試料を酸性化剤にてpH2以上7未満にする工程を含むことを特徴とする(1)の核酸抽出法。
(3)核酸を含有する生体試料が、全血であることを特徴とする(1)から(2)記載の核酸抽出法。
(4)アルカリ化剤が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属水酸化物を成分とする水溶液であることを特徴とする(1)から(3)記載の核酸抽出法。
(5)アルカリ金属水酸化物の濃度が10mM〜5Mであることを特徴とする(4)記載の核酸抽出法。
(6)酸性化剤が、塩酸、硫酸及び硝酸から選ばれる少なくとも1種類の無機酸を成分とする水溶液であることを特徴とする(1)から(3)記載の核酸抽出法。
(7)無機酸の濃度が、10mM〜5Mであることを特徴とする(6)記載の核酸抽出法。
(8)(1)から(3)記載の核酸抽出法で得られた核酸を増幅させ、その増幅した核酸を濁度により検出する方法。
(9)(8)の核酸を増幅させる方法がLAMP法であることを特徴とする(1)から(3)記載の核酸抽出法。
(10)(1)から(3)記載の核酸抽出法に使用する核酸抽出用試薬であって、少なくともアルカリ金属水酸化物を成分とするアルカリ化剤、及び無機酸を成分とする酸性化剤を含むことを特徴とする核酸抽出用試薬。
(11)アルカリ化剤が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属水酸化物を成分とする水溶液であることを特徴とする(10)記載の核酸抽出用試薬。
(12)アルカリ金属水酸化物の濃度が10mM〜5Mであることを特徴とする請求項(11)記載の核酸抽出用試薬。
(13)酸性化剤が、塩酸、硫酸及び硝酸から選ばれる少なくとも1種類の無機酸を成分とする水溶液であることを特徴とする(10)記載の核酸抽出用試薬。
(14)無機酸の濃度が、10mM〜5Mであることを特徴とする(13)記載の核酸抽出試薬。
(15)(10)から(14)記載の核酸抽出用試薬を含む核酸増幅用試薬キット。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明における核酸抽出用の生体試料としては、全血が使用されるが、血清あるいは血漿であってもよい。具体的には、全成分を有する無処理の新鮮な血液、血液凝固によって分離された血清、凝固を防止するためにヘパリン、クエン酸塩等の坑凝固剤で処理された血液、それらの凝固剤で処理した血液を遠心分離して得られた血漿、血痕中に存在する乾燥あるいは凝固した血液等である。
【0015】
本発明において抽出される核酸とは、哺乳動物例えばヒトや牛の遺伝子等の内在性の核酸、細菌あるいはウイルスを含む微生物等の外来性の核酸等の、血液試料中に存在する全ての核酸が対象とされる。
【0016】
本発明で使用されるアルカリ化剤は、生体試料から効率良くかつ煩雑な操作なく抽出できればよく、その成分であるアルカリ物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムから選ばれたアルカリ金属水酸化物単独もしくはその組み合わせでもよく、またリン酸緩衝剤、グッド緩衝剤等のpH緩衝剤あるいは塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を含んでいてもよい。アルカリ物質の濃度は、例えば水酸化ナトリウムを単独で用いる場合は、10mM〜5Mが好ましい。より好ましくは10mM〜1M、さらに好ましくは10〜100mMであればよい。一方、濃度が10mM未満では、酸性領域に移行した後の試料の澄明化が不十分となる。逆に5Mを超えると、pH調整時に高濃度の酸性化剤を添加することになり、pH調整のし難さ、あるいは過量に添加した場合の急激なpH低下による核酸の分解が懸念されるため好ましくない。
【0017】
本発明における生体試料とアルカリ化剤を混合する操作は、特に限定されないが、予め試料をサンプリングしておき、後からアルカリ化剤を加えてもよく、またはアルカリ化剤を分注した後で試料を加えてもよい。後者の場合、例えば、少量のアルカリ化剤をチューブに分注後、凍乾等で水分を除去することによって、アルカリ物質をチューブ底内壁に固着化し、そのチューブに試料を加えるという操作も可能である。
【0018】
本発明において、アルカリ化試料の加熱処理工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、より好ましくは65〜95℃であればよい。また、加熱時間は、温度が50〜100℃の範囲では、30分以内であれば特に限定されないが、例えば、65℃では2〜30分が好ましく、より好ましくは5〜20分、95℃では1〜15分が好ましく、より好ましくは3〜10分であればよい。
【0019】
本発明で使用される酸性化剤は、アルカリ化試料を酸性領域に移行できればよく、その成分である酸性物質としては、塩酸、硫酸又は硝酸から選ばれた無機酸単独もしくはその組み合わせでもよく、またリン酸緩衝剤、グッド緩衝剤等のpH緩衝剤あるいは塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を含んでいてもよい。無機酸の濃度は、例えば塩酸を単独で用いる場合は、10mM〜5Mが好ましい。より好ましくは10mM〜1M、さらに好ましくは20mM〜1Mであればよい。また、酸性化剤の添加量は、アルカリ化試料の量により、適宜増減できる。
【0020】
本発明において、アルカリ化試料を酸性領域に移行する工程において、好ましい酸性領域のpHは、核酸抽出後の試料を澄明化できること、抽出された該核酸が安定であること、かつ次ステップの核酸増幅法に影響しない領域であればよい。好ましくは2以上7未満であればよく、より好ましくは4以上7未満であればよい。pH7以上では試料を澄明化できず、pH2未満では抽出した核酸の分解が懸念される。
【0021】
また、本発明は、核酸を含有する生体試料とアルカリ化剤を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理する工程、そして加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にし試料を澄明化にする工程という簡単な操作により、該核酸を抽出させることを特徴としているが、核酸抽出後の試料が極微量の場合は、サンプルチューブ内で分散した試料を捕集するための遠心操作を行ってもよい。また、抽出後にタンパク質分解酵素等の後処理を行っても特に問題はない。
【0022】
このようにして抽出された核酸含有試料は、濁りのない澄明な核酸溶液として得られるため、標的核酸を大量に増幅させることによって高感度な検査を可能としたPCR法、LAMP法等の核酸増幅法は勿論のこと、特に、蛍光標識を使用した、あるいは粒子蛍光プローブを使用した凝集法によるハイブリダイゼーションアッセイ等の光学的測定法に好都合である。
【0023】
本発明は、全血から抽出された核酸をLAMP法により増幅させ、その増幅した核酸を前記白濁を利用した検出方法で確認することにより達成された。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1.抽出したDNAの安定性
本発明では、処理後の核酸抽出試料溶液が酸性になることから、DNAの分解が懸念される。そこで、ヒト全血に外来遺伝子であるラムダDNAを添加した試料について、抽出後の酸性領域でのラムダDNAの安定性を確認した。
1.試料及び試薬の調製
a)核酸抽出
マイクロチューブにヒト全血 10μLに外来遺伝子であるラムダDNAを 107分子添加し、アルカリ化剤 40mM NaOH 溶液 90μLを加え、よく撹拌し、95℃で5分間加熱処理を行った試料をアルカリ化試料とし室温に放置した。その後、酸性化剤 1M HCl 溶液を添加し、pH4以上7未満(実添加量 5μL)とした澄明な核酸含有試料について、酸添加直後と5、10及び20分放置した各々について、チューブ内壁に付着している試料を捕集する目的で、1,000 rpmで 30秒間遠心操作を行った。各捕集液のうち 10μL (全血 1μL相当にラムダDNA 106分子が存在)を核酸抽出試料とした。
【0026】
b)プライマーの合成
ラムダDNA塩基配列(配列番号1)から選ばれた塩基配列あるいはそれと相補的な配列から選ばれた塩基配列として、以下の6種類のプライマーを選定した。プライマーは、DNA合成を専門に取り扱う機関に委託し、慣用された方法で合成された。
インナープライマーF:CGTGAGCAATGGGTATATGCAAATAGAGCTCTGTGTTTGTCTTCCTGC (配列番号2)
インナープライマーR:ATGTCCTTGTCGATATAGGGATGAAGCACATTATCCTGAATTTTCGGTG (配列番号3)
アウタープライマーF:CCTGCCTCCAAACGATACCT (配列番号4)
アウタープライマーR:TTGTGGTGATATAGGACAGACA (配列番号5)
ループプライマー F:GGAACTCCGGGTGCTATCAG (配列番号6)
ループプライマー R:TGACCTTTCTCTCCCATATTGCAGTCG (配列番号7)
【0027】
c)試薬組成及び濃度:
LAMP最終反応溶液 25μL中の各試薬濃度が下記になるよう調整した。
・20 mM Tris−HCl( pH 8.8 )
・10 mM KCl
・10 mM (NH4)2SO4
・ 4 mM MgSO4
・ 0.1 % Triton X−100
・ 0.4mM dNTP
・ 0.8 M Betaine
・ 8 U Bst DNAポリメラーゼ(New England BioLab社製)
・プライマー:
1.6μM インナープライマーF(配列番号2)及びR(配列番号3)
0.4μM アウタープライマーF(配列番号4)及びR(配列番号5)
0.8μM ループプライマー F(配列番号6)及びR(配列番号7)
【0028】
2.LAMP法による反応
0.2mLの専用チューブに、各核酸抽出試料 10μL及びLAMP反応試薬 15μLを加えて 25μLとし、65℃で60分間LAMP反応を行った。この時間内における増幅過程を濁度を指標とし、リアルタイムで観察できる濁度計を用いて、波長 650nmにおける濁度を経時的に観察した。
【0029】
3.結果
図1に濁度を指標とした増幅曲線を示す。その結果、ヒト全血にラムダDNAを添加して得られた核酸抽出試料は、酸添加後の放置時間に関係なく、増幅曲線がほとんど同じ挙動を示し、放置時間が反応に影響を及ぼさないことを確認できた。以上より、酸性領域でのラムダDNAの安定性を確認した。
【0030】
実施例2.加熱温度の違いによるDNAの検出
1.試料及び試薬の調製
a)核酸抽出
実施例1.同様にマイクロチューブにヒト全血 10μLに外来遺伝子であるラムダDNAを添加し、 40mM NaOH 溶液 90μLを加え、よく撹拌し、65及び95℃で 5分間加熱処理を行った試料をアルカリ化試料とした。その後、実施例1と同様の処理を行い、各核酸抽出試料 10μLを得た。
【0031】
b)プライマーの合成
実施例1.同様。
【0032】
c)試薬組成及び濃度
実施例1.同様。
【0033】
2.LAMP法による反応
実施例1.と同様に、各加熱時間よって得られた反応溶液 25μLについて、65℃で60分間LAMP反応を行い、実施例1.同様に、濁度を指標とした増幅反応を経時的に観察した。
【0034】
3.結果
図2に増幅曲線を示す。その結果、加熱温度に関係なく、増幅曲線がほとんど同じ挙動を示し、血中に存在するラムダDNAを検出することが可能となった。以上より、LAMP法で使用される反応温度、すなわち65℃という低温加熱でもDNAが抽出できるため、抽出から検出までを同一温度で実施できるという特長を示唆できた。
【0035】
実施例3.SRY遺伝子の検出
1.試料及び試薬の調製
a)核酸抽出
マイクロチューブにヒト全血 10μLを入れ、 40mM NaOH 溶液 90μLを加え、よく撹拌し、95℃で 5分間加熱処理を行った試料をアルカリ化試料とした。アルカリ化試料を室温に放置後、1M HCl 溶液を添加し、pH調整し(実添加量 4.5μL)、実施例1.同様に遠心操作を行った。捕集した液 10μL (全血 1μL相当)を核酸抽出試料とした。また、全血を入れない試料を陰性対照試料とした。
【0036】
b)プライマーの合成
ヒトのY染色体上に存在するSRY遺伝子の塩基配列(配列番号8)から選ばれた塩基配列あるいはそれと相補的な配列から選ばれた塩基配列として、以下の6種類のプライマーを選定した。プライマーは、実施例1.に準じて作製された。
インナープライマーF:GCATATGATTGCATTGTCAAAAACAAGGAGAATAAGTTTCGAACTCTGGCACCTTTC (配列番号9)
インナープライマーR:GAGAAGCTCTTCCTTCCTTTGCACTGAATTTACTGTTTTCTCCCGTTTCACACTG (配列番号10)
アウタープライマーF:CTGGTAGAAGTGAGTTTTGGATAGT (配列番号11)
アウタープライマーR:CACTCTATCCTGGACGTTGCC (配列番号12)
ループプライマー F:AGTGCGACAAAATT (配列番号13)
ループプライマー R:AGCTGTAACTCTAAGTAT (配列番号14)
【0037】
c)試薬組成及び濃度
LAMP最終反応溶液 25μL中における、プライマー以外の試薬組成及び最終濃度は、実施例1.と同様である。
・プライマー:
1.6μM インナープライマーF(配列番号9)及びR(配列番号10)
0.4μM アウタープライマーF(配列番号11)及びR(配列番号12)0.8μM ループプライマーF (配列番号13)及びR(配列番号14)
【0038】
2.LAMP法による反応
実施例1.と同様に、核酸抽出試料または陰性対照試料を含む各反応溶液 25μLについて、65℃で60分間LAMP反応を行い、実施例1.同様に、濁度を指標とした増幅反応を経時的に観察した。
【0039】
3.結果
図3に増幅曲線を示す。その結果、全血から得られた核酸抽出試料については、60分経過後濁度が増加することによって、全血中のSRY遺伝子を検出できた。以上より、僅か1μL相当の全血液からゲノムDNAを検出することが可能であるため、1塩基多型の検出等にもその応用が期待できる。
【0040】
実施例4.HBV遺伝子の検出
1.試料及び試薬の調製
a)核酸抽出
HBVに罹患した患者血清から得られたヒト全血 10μLをマイクロチューブに入れ、 40mM NaOH 溶液 90μLを加え、よく撹拌し、65℃で 5分間加熱処理を行った試料をアルカリ化試料とした。アルカリ化試料を室温に放置後、1M HCl 溶液を添加し、pH調整し(実添加量 5μL)、実施例1.同様に遠心操作を行った。捕集した液 10μL(全血 1μL相当)を核酸抽出試料とした。
【0041】
b)プライマーの合成
ヒトのHBV遺伝子の塩基配列(配列番号15)から選ばれた塩基配列あるいはそれと相補的な配列から選ばれた塩基配列として、以下の4種類のプライマーを選定した。プライマーは、実施例1.に準じて作製された。
インナープライマーF:GATAAAACGCCGCAGACACATCCTTCCAACCTCTTGTCCTCCAA (配列番号16)
インナープライマーR:CCTGCTGCTATGCCTCATCTTCTTTGACAAACGGGCAACATACCTT (配列番号17)
アウタープライマーF:CAAAATTCGCAGTCCCCAAC (配列番号18)
アウタープライマーR:GGTGGTTGATGTTCCTGGA (配列番号19)
【0042】
c)試薬組成及び濃度
LAMP最終反応溶液 25μL中における、プライマー以外の試薬組成及び最終濃度は、実施例1.と同様である。
・プライマー:
0.8μM インナープライマーF(配列番号16)及びR(配列番号17)
0.2μM アウタープライマーF(配列番号18)及びR(配列番号19)
【0043】
2.LAMP法による反応
反応溶液 25μLについて、65℃で60分間LAMP反応を行い、実施例1.同様に、濁度を指標とした増幅反応を経時的に観察した。
【0044】
3.結果
図4に増幅曲線を示す。HBVに罹患した患者から得られたヒト全血を用いた核酸抽出試料において、25分経過後濁度が増加することによって、全血中のHBV遺伝子を検出できた。以上より、実施例3.で検出された、ヒトの遺伝子配列を決定するための内在性の核酸以外に、ウイルス等の外来遺伝子の有無の判別に応用することが可能であると示唆された。
【0045】
【発明の効果】
従来の核酸抽出法は、生体試料、特に全血から直接核酸を抽出する場合には、まず赤血球の除去、さらに血清又は血漿成分からの白血球の単離・溶解、所望の核酸抽出等の幾つもの操作が必要となる。本発明は、全血と適量のアルカリ溶液を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理することによって所望の核酸を抽出し、さらに、加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にすると、抽出された該核酸を含む試料が澄明化するという、効率的かつ簡易的な核酸抽出法と、その澄明な核酸を核酸増幅法やハイブリダイゼーションアッセイ等の核酸分析に利用できる核酸抽出用試薬の提供である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】酸添加後のDNAの放置時間による増幅反応の比較
【図2】加熱時間による増幅反応の比較
【図3】SRY遺伝子の増幅反応
【図4】HBV遺伝子の増幅反応
Claims (15)
- 核酸を含有する生体試料から該核酸を抽出する方法において、
(a)生体試料とアルカリ化剤を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理する工程、及び
(b)加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にする工程、
を含むことを特徴とする核酸抽出法。 - 加熱処理を50〜100℃で30分以内行う工程、及びアルカリ化試料を酸性化剤にてpH2以上7未満にする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の核酸抽出法。
- 核酸を含有する生体試料が、全血であることを特徴とする請求項1から2記載の核酸抽出法。
- アルカリ化剤が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属水酸化物を成分とする水溶液であることを特徴とする請求項1から3記載の核酸抽出法。
- アルカリ金属水酸化物の濃度が10mM〜5Mであることを特徴とする請求項4記載の核酸抽出法。
- 酸性化剤が、塩酸、硫酸及び硝酸から選ばれる少なくとも1種類の無機酸を成分とする水溶液であることを特徴とする請求項1から3記載の核酸抽出法。
- 無機酸の濃度が、10mM〜5Mであることを特徴とする請求項6記載の核酸抽出法。
- 請求項1から3記載の核酸抽出法で得られた核酸を増幅させ、その増幅した核酸を濁度により検出する方法。
- 請求項8の核酸を増幅させる方法がLAMP法であることを特徴とする請求項1から3記載の核酸抽出法。
- 請求項1から3記載の核酸抽出法に使用する核酸抽出用試薬であって、少なくともアルカリ金属水酸化物を成分とするアルカリ化剤、及び無機酸を成分とする酸性化剤を含むことを特徴とする核酸抽出用試薬。
- アルカリ化剤が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属水酸化物を成分とする水溶液であることを特徴とする請求項10記載の核酸抽出用試薬。
- アルカリ金属水酸化物の濃度が10mM〜5Mであることを特徴とする請求項11記載の核酸抽出用試薬。
- 酸性化剤が、塩酸、硫酸及び硝酸から選ばれる少なくとも1種類の無機酸を成分とする水溶液であることを特徴とする請求項10記載の核酸抽出用試薬。
- 無機酸の濃度が、10mM〜5Mであることを特徴とする請求項13記載の核酸抽出試薬。
- 請求項10から14記載の核酸抽出用試薬を含む核酸増幅用試薬キット。
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