JP2004020714A - 能動振動騒音低減装置 - Google Patents

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大西 将秀
Yoshio Nakamura
中村 由男
Toshiro Inoue
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Akira Takahashi
高橋 彰
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Abstract

【課題】4サイクル4気筒エンジンにおける回転2次成分の振動騒音を低減させるために、高価なDSP等を使用することなく、安価なマイコン等で実現できる能動振動騒音低減装置を提供する。
【解決手段】適応ノッチフィルタ4の適応ノッチフィルタ係数を適応処理により更新させ、この適応ノッチフィルタ4の出力に基づいて駆動される2次振動騒音発生器8により振動騒音の打ち消しを行う能動振動騒音低減装置において、4サイクル4気筒エンジン21の回転2次成分に同期したパルス波をタコパルス発生器22より発生させ、このパルス波をアナログ回路で構成された低域通過フィルタ23と第1の移相器24、第2の移相器25にてフィルタ処理することで参照余弦波信号と参照正弦波信号を得る構成としたものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン回転に伴なって車室内に発生する不快なエンジン振動またはエンジンこもり音(騒音)などのような振動騒音に対し、逆位相且つ等振幅の信号を干渉させることにより振動騒音を低減させる能動振動騒音低減装置に関し、特に、高価なDSP等を使用することなく、安価なマイコン等で実現可能にした能動振動騒音低減装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンこもり音はエンジン回転によって発生した加振力が車体に伝達されて発生する振動放射音であることから、エンジンの回転数に同期した顕著な周期性を有する振動騒音であり、例えば、4サイクル4気筒エンジンであればエンジン回転数の2倍の周波数を有する回転2次成分と称される振動騒音が多く発生する。
【0003】
これはエンジンクランク1/2回転ごとに起こるガス燃焼によるトルク変動によりエンジンを起点とした加振振動が発生し、これを原因として車室内に振動騒音が発生するためである。この回転2次成分が車体の空洞共鳴周波数と一致した場合、特に大きな騒音が車室内に発生し、乗員に不快感を生じさせる。
【0004】
このようなエンジン騒音のうち、最も課題となりやすい回転2次成分を能動的に低減させる手法として、例えば特開2000−99037に提案されているような適応ノッチフィルタを用いる方法が知られている。それに開示されている能動振動騒音低減装置の構成を図5に示す。
【0005】
図5において、能動振動騒音低減装置を実現するための離散演算はすべてDSP17にて処理される。まず、波形整形器1でエンジンパルスに重畳されたノイズ等が除去されるとともに波形整形される。この波形整形器1の出力信号は余弦波発生器2及び正弦波発生器3に加えられ参照信号としての余弦波と正弦波が作られる。余弦波発生器2の出力信号である参照余弦波信号と適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0とを乗算する係数乗算器5の出力信号は、正弦波発生器3の出力信号である参照正弦波信号と適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W1とを乗算する係数乗算器6の出力信号と加算器7で加算され2次振動騒音発生器8に供給される。2次振動騒音発生器8にて2次振動騒音を発生させ、エンジンパルスに基づく振動騒音と干渉させることで打ち消す。この際、消音しきれなかった残留信号は誤差信号eとして適応制御アルゴリズムに使用される。
【0006】
一方、エンジンの回転数から求められた消音すべきノッチ周波数において、適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器15までの伝達特性を模擬したC0を有する伝達要素9に参照余弦波信号を供給し、同じく適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器15までの伝達特性を模擬したC1を有する伝達要素10に参照正弦波信号を供給し、伝達要素9と伝達要素10の出力を加算器13にて加算した信号r0と誤差信号eとを適応制御アルゴリズム演算器15に供給し、適応制御アルゴリズム、例えばLMSアルゴリズムに基づいて適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0を更新していく。同様にエンジンの回転数から求められた消音すべきノッチ周波数において、適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器16までの伝達特性を模擬したC0を有する伝達要素11に参照正弦波信号を供給し、同じく適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器16までの伝達特性を模擬した(−C1)を有する伝達要素12に参照余弦波信号を供給し、伝達要素11と伝達要素12の出力を加算器14にて加算した信号r1と誤差信号eとを適応制御アルゴリズム演算器16に供給し、適応制御アルゴリズム、例えばLMSアルゴリズムに基づいて適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W1を更新していく。
【0007】
このようにして再帰的に適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0及びW1は誤差信号eが小さくなるように、言いかえれば振動騒音抑制部での振動騒音を減少させるように最適値に収束していく。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術に係る能動振動騒音低減装置は、離散化した信号処理によって実現されている。能動振動騒音低減装置としての消音信号を出力するために、参照余弦波信号と適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0の乗算、参照正弦波信号と適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W1の乗算、更にそれぞれの加算といった2回の乗算と1回の加算が必要になる。一方、適応処理を行うために、参照余弦波信号と伝達特性C0との乗算、参照正弦波信号と伝達特性C1との乗算、更にそれぞれの加算といった2回の乗算と1回の加算でr0が求まり、同様に2回の乗算と1回の加算でr1が求まる。また、LMSアルゴリズムの演算において2回の乗算と1回の加算が必要なため、結局、適応処理だけでも8回の乗算と4回の加算が必要となる。
【0009】
これら全てを合計した、乗算10回と加算5回の演算処理を離散化サンプリング周期内に実行しなければならない。これは、一般的な非周期音の能動振動騒音制御を実現する場合に使用される長いタップ長の適応フィルタに比較して計算量が非常に少なくなる有利な面を持っている。
【0010】
一方、参照余弦波信号と参照正弦波信号を作成する方法については具体的な方法は示されていないが、一般的にはエンジン回転数から発生する振動騒音の周期を計算し、その周期に基づいた余弦信号または正弦信号の各サンプリング時間でのサンプリング値について、余弦関数または正弦関数をテイラー展開した多項式にて計算するといった手法が用いられる。以下に余弦関数と正弦関数のテイラー展開による多項式を示す。
【0011】
cos(x)=1−x/2!+x/4!……+(−1)・x2n/(2n)!
sin(x)=x−x/3!+x/5!……+(−1)・x2n+1/(2n+1)!
実際には無限に続く上記多項式において、ある一定項までの計算によって近似値を求めることで参照余弦波信号と参照正弦波信号を作成する。
【0012】
上記のように従来の適応ノッチフィルタを用いたエンジン回転2次成分の振動騒音の能動低減装置においては、参照余弦波信号と参照正弦波信号の作成のために非常に多くの乗算と加算が必要となり、適応ノッチフィルタを用いた場合の少ない演算量というメリットを減少させてしまうと同時に、高速演算が可能となる高価なDSP等を使用することが不可欠となる。よって、計算速度の遅いものの安価なマイコン等を使って低コストな能動振動騒音低減装置を実現させることが困難であるという問題点を有していた。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、アナログ回路で構成されたフィルタと移相器を用いることで参照余弦波信号と参照正弦波信号を作成するための離散的な数値演算をなくし、マイコンの使用を可能とすることで低コストな能動振動騒音低減装置を実現することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、振動騒音源から発生する振動騒音の課題となる周波数に同期した電気パルスを発生する同期パルス発生器と、この同期パルス発生器からの発生パルス信号に同期した余弦波を発生する余弦波発生手段と、この余弦波発生手段からの発生余弦波と同期し且つ互いに直交する参照余弦波信号と参照正弦波信号を発生する参照信号発生手段と、この参照信号発生手段からの前記参照余弦波信号及び前記参照正弦波信号が入力される適応ノッチフィルタと、この適応ノッチフィルタからの出力信号によって駆動されて振動騒音を打ち消す2次振動騒音を発生する2次振動騒音発生器と、振動騒音と2次振動騒音との干渉による残留信号と前記参照余弦波信号及び前記参照正弦波信号の補正信号とにより前記適応ノッチフィルタのフィルタ係数を更新する係数更新手段と、前記補正信号を形成するために参照余弦波信号及び参照正弦波信号の適応ノッチフィルタの出力から前記係数更新手段の入力までの伝達特性を模擬する模擬伝達特性補正手段とを備えてなる能動振動騒音低減装置において、前記余弦波発生手段がアナログ回路で構成された低域通過フィルタまたは帯域通過フィルタであることを特徴とする。
【0015】
上記構成になる能動振動騒音低減装置は、余弦波発生手段がアナログ回路で構成された低域通過フィルタまたは帯域通過フィルタであるという特徴を有しており、これにより離散的な数値演算を全く必要とすることなく参照余弦波信号及び参照正弦波信号を生成するための基準信号となる余弦波を生成することができ、能動振動騒音制御装置の実現に際し、演算速度の遅い離散演算処理装置を使用することができるという作用効果が得られる。
【0016】
上記構成において、参照信号発生手段は、余弦波発生手段からの出力信号である発生余弦波が入力されるアナログ回路で構成された第1の移相器と、同じく上記余弦波発生手段からの出力信号である上記発生余弦波が入力されるアナログ回路で構成された第2の移相器とからなる構成を有しており、これにより離散的な数値演算を全く必要とすることなく参照余弦波信号及び参照正弦波信号を生成することができ、能動振動騒音制御装置の実現に際し、演算速度の遅い離散演算処理装置を使用することができるという作用効果が得られる。
【0017】
また、同期パルス発生器は、エンジンの点火周期に同期したパルスを出力するという特徴を有しており、これによりガス燃焼周期と同一の点火周期に同期したパルスを得ることができるため、エンジンのガス燃焼による加振振動に同期した参照信号を生成しやすいという作用効果が得られる。
【0018】
また、同期パルス発生器は、タコパルス発生器またはTDCセンサであるという特徴を有しており、これらは既に車輌に具備されている装置であり、それを利用することで課題となる振動騒音の周波数に同期した電気パルスを発生する装置を別に設置する必要をなくすことができるという作用効果が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、従来技術において示した従来の能動振動騒音低減装置と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本実施の形態における能動振動騒音低減装置の構成をブロック図として示すもので、21は振動騒音源となる4サイクル4気筒エンジンであり、この能動振動騒音低減装置は4サイクル4気筒エンジン21から発生する振動騒音における回転2次成分を低減するように動作する。一般的には、このように4サイクル4気筒エンジンにおける回転2次成分のうち、ある特定の周波数範囲の振動騒音(以下、2次課題振動騒音と記載する)が課題になることが多い。
【0021】
同期パルス発生器としてのTDCセンサ(上死点センサ)またはタコパルス発生器22(以下、タコパルス発生器として説明する)は振動騒音源である4サイクル4気筒エンジン21の回転2次成分に同期した信号であるタコパルス信号を発生する。タコパルス信号はタコメータの入力信号等として既に車輌側で具備されている場合が多く、特別に課題となる振動騒音の周波数に同期した電気パルスを発生する装置を別に設置する必要はない。4サイクル4気筒エンジン21におけるタコパルス信号は、クランク1回転につき2周期のパルス波となるため、4サイクル4気筒エンジン21の回転2次成分に同期した信号になる。
【0022】
タコパルス発生器22からの出力信号であるタコパルス信号は、アナログ回路で構成された余弦波発生手段としての低域通過フィルタ23に入力される。タコパルス信号は上述のように4サイクル4気筒エンジン21の回転2次成分に同期したパルス信号であるため、この回転2次成分を基本周波数とした成分とその高調波成分との和から構成されている。よって、通過周波数帯域が2次課題振動騒音周波数となるように設定された低域通過フィルタ23にタコパルス信号を入力することにより、2次課題振動騒音の周波数と等しい周波数の余弦波のみを抽出することが可能となる。
【0023】
図2は、低域通過フィルタ23として使用したフィルタの例である。このフィルタは2次の正帰還型低域通過フィルタと呼ばれ、端子27,33、抵抗28,29とコンデンサ30,31および演算増幅器32で構成されている。このフィルタの周波数特性は抵抗28,29およびコンデンサ30,31の値によって決定され、遮断周波数以上の周波数は12dB/octのスロープでレベルが低下する特性を有する。
【0024】
低域通過フィルタ23からの出力信号である余弦波は、アナログ回路で構成された参照信号発生手段としての第1の移相器24と、同じくアナログ回路で構成された参照信号発生手段としての第2の移相器25に入力される。図3に本実施の形態で使用した移相器の例を示す。この移相器は演算増幅器を用いた1次の移相器と呼ばれ、端子34,40、抵抗35,36,37とコンデンサ38および演算増幅器39で構成されている。
【0025】
この移相器の位相特性の一例を図4に示す。この移相器の位相特性は、入力信号に対して出力信号の位相が遅れた特性となる。ここで、2次課題振動騒音周波数において、第1の移相器24の位相特性は、第2の移相器25の位相特性に対してπ/2[rad]進むように設定される。つまり、第1の移相器24と第2の移相器25の出力信号を相対的に見れば、第1の移相器24の出力信号は2次課題振動騒音周波数と等しい周波数の余弦波であり、第2の移相器25の出力信号は2次課題振動騒音周波数と等しい周波数の正弦波であると言える。よって、図1に示す能動振動騒音低減装置において、第1の移相器24の出力信号は参照余弦波信号となり、第2の移相器25の出力信号は参照正弦波信号となる。
【0026】
このようにして、離散演算処理を行うことなくアナログ信号処理のみで得た参照余弦波信号と参照正弦波信号は、離散演算を処理するマイコン26にてそれぞれ量子化され、離散演算処理用の数値データとして使用される。
【0027】
離散数値データとしての参照余弦波信号と参照正弦波信号が得られた後の演算処理は、従来の技術に示すものと同様である。即ち、参照余弦波信号と適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0とを乗算する係数乗算器5の出力信号は、参照正弦波信号と適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W1とを乗算する係数乗算器6の出力信号と加算器7で加算され2次振動騒音発生器8に供給される。2次振動騒音発生器8にて2次振動騒音を発生させ、振動騒音源から発生する課題振動騒音と干渉させることで打ち消す。この際、消音しきれなかった残留信号は誤差信号eとして後述の適応制御アルゴリズムに使用される。
【0028】
一方、エンジンの回転数から求められた消音すべきノッチ周波数において、適応ノッチフィルタ4の出力から係数更新手段としての適応制御アルゴリズム演算器15までの伝達特性を模擬したC0を有する模擬伝達特性補正手段としての伝達要素9に参照余弦波信号を供給し、同じく適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器15までの伝達特性を模擬したC1を有する伝達要素10に参照正弦波信号を供給し、伝達要素9と伝達要素10の出力を加算器13にて加算した補正信号r0と誤差信号eとを適応制御アルゴリズム演算器15に供給し、適応制御アルゴリズム、例えばLMSアルゴリズムに基づいて適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0を更新していく。同様にエンジンの回転数から求められた消音すべきノッチ周波数において、適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器16までの伝達特性を模擬したC0を有する伝達要素11に参照正弦波信号を供給し、同じく適応ノッチフィルタ4の出力から適応制御アルゴリズム演算器16までの伝達特性を模擬した(−C1)を有する伝達要素12に参照余弦波信号を供給し、伝達要素11と伝達要素12の出力を加算器14にて加算した補正信号r1と誤差信号eとを適応制御アルゴリズム演算器16に供給し、適応制御アルゴリズム、例えばLMSアルゴリズムに基づいて適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W1を更新していく。この時、LMSアルゴリズムの場合には適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0(n+1)、W1(n+1)は次式で求められる。
【0029】
W0(n+1)=W0(n)−μ・e(n)・r0(n)…(1)
W1(n+1)=W1(n)−μ・e(n)・r1(n)…(2)
但し、μは、ステップサイズパラメータである。
【0030】
このようにして再帰的に適応ノッチフィルタ4のフィルタ係数W0及びW1は誤差信号eが小さくなるように、言いかえれば振動騒音抑制部での振動騒音を減少させるように最適値に収束していく。
【0031】
以上のように本実施の形態に示す能動振動騒音低減装置は、参照余弦波信号と参照正弦波信号を生成する際、離散演算処理を全く必要としないため、安価だが演算処理速度の遅いマイコンを離散演算処理装置として使用でき、低コストで4サイクル4気筒エンジンの回転2次成分の振動騒音を低減する能動振動騒音低減装置を構成することが可能となる。
【0032】
尚、本実施の形態においては、余弦波発生手段はアナログ回路で構成された低域通過フィルタ23である場合を示したが、アナログ回路で構成された帯域通過フィルタであっても構わない。この場合も通過周波数帯域が2次課題振動騒音周波数となるように帯域通過フィルタを設定し、2次課題振動騒音の周波数と等しい周波数の余弦波のみを抽出することで同様の効果を奏する。
【0033】
また、本実施の形態においては、参照信号発生手段は第1の移相器24と第2の移相器25である場合を示したが、マイコン26の内部で演算される微分器であっても構わない。この場合、低域通過フィルタ23からの出力信号である余弦波をマイコン26にて量子化したデータを参照余弦波信号とし、この参照余弦波信号と1サンプル前の参照余弦波信号との差をとった微分信号を参照正弦波信号とすることで同様の効果を奏する。
【0034】
また、本実施の形態においては、同期パルス発生器22の出力信号はタコパルス信号である場合を示したが、これはクランク角180度ごと(4サイクル4気筒エンジンの場合)に発生するTDCセンサ信号であっても構わない。この場合、低域通過フィルタ23に入力される信号は4サイクル4気筒エンジン21の回転2次成分に同期し且つクランク1回転につき2周期で且つデューティーが50%のパルス波となる。この構成にすることにより、上記実施の形態の効果に加え、TDCセンサ信号には回転2次成分を基本周波数成分とした高調波成分に偶数次数成分が含まれないため、低域通過フィルタ23より次数の低いものが使用できるという効果を奏する。
【0035】
また、本実施の形態においては、2次振動騒音発生器がスピーカであるエンジンこもり音低減装置に適用した場合を示したが、2次振動騒音発生器を電子制御マウント装置として、エンジン振動低減装置、通称Active Engine
Mount装置にも適用可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明のように本発明によれば、離散的な数値演算を全く必要とすることなく参照余弦波信号及び参照正弦波信号を生成するための基準信号となる余弦波を生成することができ、能動振動騒音制御装置の実現に際し、演算速度の遅い離散演算処理装置を使用することができ、安価なマイコン等の使用が可能となる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る能動振動騒音低減装置の構成を示すブロック図。
【図2】同上構成における低域通過フィルタの構成を示すブロック図。
【図3】同上構成における移相器の構成を示すブロック図。
【図4】同上移相器の位相特性を示すグラフ。
【図5】従来の能動振動騒音低減装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
4 適応ノッチフィルタ
5,6 係数乗算器
8 2次振動騒音発生器
9,10,11,12 伝達要素(模擬伝達特性補正手段)
15,16 適応制御アルゴリズム演算器(係数更新手段)
21 4サイクル4気筒エンジン
22 タコパルス発生器(同期パルス発生器)
23 低域通過フィルタ(余弦波発生手段)
24 第1の移相器(参照信号発生手段)
25 第2の移相器(参照信号発生手段)
26 マイコン

Claims (4)

  1. 振動騒音源から発生する振動騒音の課題となる周波数に同期した電気パルスを発生する同期パルス発生器と、この同期パルス発生器から発生したパルス信号に同期した余弦波を発生する余弦波発生手段と、この余弦波発生手段から発生した余弦波と同期し且つ互いに直交する参照余弦波信号と参照正弦波信号とを発生する参照信号発生手段と、この参照信号発生手段からの前記参照余弦波信号及び前記参照正弦波信号が入力される適応ノッチフィルタと、この適応ノッチフィルタからの出力信号によって駆動されて振動騒音を打ち消す2次振動騒音を発生する2次振動騒音発生器と、振動騒音と2次振動騒音との干渉による残留信号と前記参照余弦波信号及び前記参照正弦波信号の補正信号とにより前記適応ノッチフィルタのフィルタ係数を更新する係数更新手段と、前記補正信号を形成するために参照余弦波信号及び参照正弦波信号の適応ノッチフィルタの出力から前記係数更新手段の入力までの伝達特性を模擬する模擬伝達特性補正手段とを備えてなる能動振動騒音低減装置において、前記余弦波発生手段がアナログ回路で構成された低域通過フィルタまたは帯域通過フィルタであることを特徴とする能動振動騒音低減装置。
  2. 参照信号発生手段は、余弦波発生手段からの出力信号である発生余弦波が入力されるアナログ回路で構成された第1の移相器と、同じく前記余弦波発生手段からの出力信号である前記発生余弦波が入力されるアナログ回路で構成された第2の移相器とからなることを特徴とする請求項1に記載の能動振動騒音低減装置。
  3. 同期パルス発生器は、エンジンの点火周期に同期したパルスを出力する請求項1または2に記載の能動振動騒音低減装置。
  4. 同期パルス発生器は、タコパルス発生器またはTDCセンサである請求項3に記載の能動振動騒音低減装置。
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