JP2004020611A - 画像形成用トナー、その製造方法、それを用いた現像剤、及び画像形成方法ならびに画像形成装置 - Google Patents

画像形成用トナー、その製造方法、それを用いた現像剤、及び画像形成方法ならびに画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な高さの立体画像を形成するとともに記録媒体に対する定着性の高い画像を形成する。
【解決手段】トナー中に少なくとも結着樹脂と外殻を有する発泡剤とを含み、該結着樹脂と外殻とを結合させる化合物を含有した画像形成用トナーである。更に、少なくとも結着樹脂と外殻を有する発泡剤とを該結着樹脂が溶解可能な有機溶媒中で混合して油性成分を調整する工程と、該油性成分を該結着樹脂と外殻とを結合させる化合物を含有する水性溶媒中に懸濁させ粒子化して懸濁液を調整する工程と、該懸濁液から有機溶媒を除去する工程と、を有する画像形成用トナーの製造方法である。また上記トナーとキャリアを含有する現像剤である。更に上記トナーを用い、記録媒体にトナー画像を定着させる工程でトナーに含まれる発泡剤を発泡させ立体画像を記録媒体上に形成する画像形成方法及び画像形成装置である。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成用トナー、その製造方法、およびそれを用いた現像剤、及び画像形成方法ならびに画像形成装置に関する。より詳細には、静電プロセス等を用いて立体画像を形成する場合に好適に用いられる画像形成用トナー、その製造方法、それを用いた現像剤、および画像形成方法ならびに画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
宣伝用や教育材料用資料として、立体画像の資料が用いられている。立体画像は、平面的な視覚情報だけでなく、陰影や指の感触などから、受け手に3次元的情報を与え、強い印象や理解を持たせることができるため有用である。特に、有効な使われ方として、点字用の文字、点字用の画像がある。立体画像は、言語情報だけでなく、地図などの画像情報として使われ、視覚障害の人に対し必要不可欠のものとなっている。
【0003】
立体画像を形成する方法として、従来以下の方法が知られている。例えば、点字文字等の作製には、点字用タイプライタで紙面に突起をエンボス加工して形成する方法が広く用いられている。また、立体画像を複製し、点字本等を作製する方法としては、前記点字用タイプライタと同様の原理により、亜鉛の板に点字画像を形成したものを原版として使用し、点字製版機や点字印刷機を用いて複製する方法がある。さらに、立体画像のパンフレット等を作製する方法としては、紫外線硬化性の高粘度ポリマーインクを、通常のシルクスクリーンなどの印刷技術を利用して山状に印刷し、その後、紫外線硬化させ、立体画像を形成する方法があるが、一般のオフィスなどで簡便に利用できる方法ではない。
【0004】
従来の立体画像形成方法は、時間がかかる上、使用場所が限定されるという欠点を有する。さらに、立体画像を複製する場合は、複製の工程および用いる装置が複雑で大掛かりとなり、今日の情報化社会には適さないものである。今日のオフィス機器は目覚しい進歩をとげ、特にパーソナルコンピュータの進歩、浸透により、資料の作成が迅速、容易となり、その出力機器も小型化、軽量化、低コスト化、高速化、およびカラー化を達成してきている。立体画像についても、容易に出力および複製が可能となる機器が望まれている。特に、通常文字(平面状の文字)を点字文字に変換可能な、あるいはその逆に変換可能なソフトが安価に入手できるようになれば、さらに視覚障害者の社会参加を促進することができる。また、視覚障害者同士間での電子メールのやり取りの可能性を広げるためにも、点字文字等を容易に出力できる出力装置が望まれる。即ち、立体画像の出力や複製においても、従来の複雑で大型のシステムに替えて、今日のオフィス環境に対応した容易かつ高速なシステムが嘱望されているのが現状である。
【0005】
これに対し、特開平8−60054号公報には、紫外線分解型気体発生感光性化合物を含有したインクジェット用インク、これを用いた装置、およびこれを用いた立体画像の形成方法が提案されている。当該文献に開示されている出力装置は小型であり、さらに、パーソナルコンピュータからの出力も可能であるので、立体画像の形成手段として有用である。しかし、立体画像を普通紙に出力しようとすると、液体インクが紙の繊維間に浸透し、紫外線で画像を膨張させても十分な立体画像が得られないという問題がある。そのため、PET(ポリテレフタレート)などの非吸液性の被記録材料を使用する提案もあるが、高コストでしかも製本などには向かず、実用化は困難である。
【0006】
そこで簡易に点字画像を形成する方法として、広くオフィスやパーソナルユースに利用されている電子写真方式を用いる方法が提案されている。たとえば、特公昭59−35359号公報、特開昭61−72589号公報に熱膨張性シートを用いる方法が提案されている。これは、紙などの支持体の上に熱膨張性シートを均一に塗布し、画像部分だけを熱膨張させ、立体画像を形成する方法である。この方法によれば、通常の複写機が利用でき、従来の普通紙の代わりにこの熱膨張性シートを用い、シート上に黒トナーからなる画像を作製し、その黒トナーの熱吸収性を利用して、トナー画像下の熱膨張材料を膨張させ、立体画像を形成することができる。この方法は、容易に立体画像を形成できるという点で好ましいが、熱膨張材料を十分熱膨張させるためには黒トナーが必要である点、別の加熱装置が必要である点、充分な画像厚みを有する立体画像を形成するには時間がかかる点、さらにシート全面に熱膨張性材料を塗布しておく必要があり、省資源化の要請に応えられないという点等から好ましくない。さらに、シートが厚く、多数枚を本などのように製本することには不向きであり、実用化するのは困難である。
【0007】
一方、特開平4−333858号公報、特開平8−63039号公報には従来の電子写真方式を用い、画像上のトナー量を多くして立体画像を形成する方法が提案されている。この方法は、従来のトナーを従来よりも多量に使用して、トナー画像を形成し、画像高さを高くする方法であるので、紙などへのトナーの定着が不充分となったり、一方、定着を充分にするために高温定着を行うと、トナーが溶け、紙の繊維へ浸み込み、画像高さが不充分となるなどの問題がある。
【0008】
さらに、特開昭52−28325号公報には乾燥泡沸剤含有の電子写真用トナーが提案されている。これは従来のトナーと乾燥泡沸剤とを粉体混合したトナーを用い、画像形成後、乾燥泡沸剤を熱により膨張させ、立体画像を得るものである。しかしながら、粉体混合によっては、トナーと泡沸剤とを充分に均一に混合することができないため、紙との界面に接着力のない泡沸剤が存在する場合が多くなり、十分な定着性を有する立体画像は得られない。また、かかる乾燥泡沸剤とトナー粒子とは接着性が十分でないため、接着性をより高めるため、トナー中に乾燥泡沸剤をある程度含有させ(この際含有させる乾燥泡沸剤は、トナー作製時の過熱混練のため泡沸し、熱膨張性は消失する)、そこに乾燥泡沸剤をさらに粉体混合し、トナー粒子と泡沸剤の接着性を向上させる等の工夫も考案されている。しかし、紙とトナーとの接着性は向上せず、画像と紙との定着性は依然不十分である。また、一般に結着樹脂と乾燥泡沸剤の帯電性は異なるため、その帯電性の差から、トナーの帯電分布が広くなり、環境が変化するにつれて、および長期使用するにつれて、得られる画像の画質が低下する。
【0009】
また、特開平7−061047号公報に、感熱発泡剤入りトナーを用い、突起画像を形成するための情報の入出力方法が提案されている。この方法に用いられているトナーは、トナー用結着樹脂、着色剤、および感熱発泡剤を混合し、微粉砕してトナーを作製するものであり、粉砕トナー表面には感熱発泡剤が露出している。従って、紙とトナーとの界面に感熱発泡剤が露出しており、前記提案と同様、トナーと紙との接着性が低下し、得られる画像の定着性は劣っている。また、感熱発泡剤がトナー表面に露出しているので、トナー表面の帯電性が不均一となる。従って、トナーの帯電分布は広くなり、低温低湿環境下でトナーを使用したり、長期間使用すると、画像にかぶりなどの画質低下が生じるようになる。さらに、使用しているトナーが通常の混練、粉砕法で作製されるため、混練時の熱により、大部分の感熱発泡剤が発泡し効力を失っていると考えられる。その結果、通常の複写機等の熱定着だけでは発泡剤が十分膨張できないため、出力された画像をさらに過熱装置に通過させる必要があり、簡便性の点で不十分である。
【0010】
以上のように、通常の電子写真方式の複写機や小型のプリンタにより、別の加熱装置等を必ず必要とせず、実質的な改造を必要とせず、実質的な改造を施すことなく、容易に立体画像を形成し得るトナーは存在していないのが実状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、上記した問題点あるいは不都合点をもたらすことなく、一般の複写機あるいはプリンタで使用された場合に、定着性、画像高さの均一性等に特に優れた立体画像を容易に形成し得る新規な画像形成用トナーを提供すること及びそのトナーの製造、ならびに該トナーを含む現像剤を提供することである。
【0012】
本発明の第二の目的は、普通紙上においても、実用上十分に点字認識可能な画像高さを有する立体画像を形成し得るとともに、実用上充分な定着性、および画像性を有する立体画像を形成し得る画像形成用トナー及びそのトナーの製造方法、ならびに該トナーを含む現像剤を提供することである。
【0013】
本発明の第三の目的は、立体画像を形成し得る、省資源化に対応した新規な画像形成用トナーおよびそのトナーの作製方法、ならびに該トナーを含む現像剤を提供することにある。
【0014】
本発明の第四の目的は、帯電安定性、環境安定性、および生産性の優れた立体画像形成用トナー及びそのトナーの作製方法、ならびに該トナーを含む現像剤を提供することにある。
【0015】
本発明の第五の目的は、簡易に立体画像を形成しうる画像形成方法ならびに画像形成装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題に対して検討を重ねた結果、以下の画像形成用トナー等により前記課題を解決し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、上記目的を達成するための手段としては、以下の通りである。
【0018】
<1>トナー中に少なくとも結着樹脂と外殻を有する発泡剤とを含み、前記結着樹脂と発泡剤の外殻とを結合させる化合物を含有したことを特徴とする画像形成用トナーである。
【0019】
<2>トナー中に少なくとも結着樹脂と発泡剤と金属化合物もしくは多価アミンを含有したことを特徴とする画像形成用トナーである。
【0020】
<3>少なくとも結着樹脂と外殻を有する発泡剤とを前記結着樹脂が溶解可能な有機溶媒中で混合して油性成分を調整する工程と、前記油性成分を、前記結着樹脂と外殻とを結合させる化合物を含有する水性溶媒中に懸濁させ粒子化して懸濁液を調整する工程と、前記懸濁液から有機溶媒を除去する工程と、を有することを特徴とする画像形成用トナーの製造方法である。
【0021】
<4>トナーとキャリアとを含有してなる現像剤であって、該トナーが前記<1>または<2>に記載の画像形成用トナーであることを特徴とする現像剤である。
【0022】
<5>静電潜像担持体表面上に形成された潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体表面上に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体にトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、前記トナーが前記<1>または<2>に記載のトナーであり、前記定着工程において前記トナーに含有される発泡剤を発泡させ、立体画像を記録媒体上に形成することを特徴とする画像形成方法である。
【0023】
<6>静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面上に形成された潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体表面上に形成されたトナー画像を転写する転写手段と、記録媒体にトナー画像を定着する定着手段と、を備えてなる画像形成装置において、前記トナーが前記<1>または<2>に記載の画像形成用トナーであり、前記定着手段が前記トナーに含有される発泡剤を発泡させ、立体画像を記録媒体上に形成する手段であることを特徴とする画像形成装置である。
【0024】
本発明の画像形成用トナー(以下、単に「トナー」と称する場合がある)によれば、トナー(さらには結着樹脂、発泡剤、とりわけ添加剤)を規定することにより、結着樹脂と発泡剤との接着性、およびトナーの記録媒体(用紙等)に対する接着性の双方を阻害することがないため、良好な定着性を有する立体画像を得ることができる。
【0025】
本発明の画像形成用トナーの形態としては、外殻を有する発泡剤が低沸点物質を内包するマイクロカプセル粒子であることが、熱膨張性が向上する点で好ましく用いられる。
【0026】
また、本発明における画像形成等トナーの製造方法としては、発泡剤を分散させた結着樹脂用のモノマーを、水相中に分散して懸濁重合する工程を含む製造方法であっても良い。これらの作製方法によれば、容易に前記トナーを作製することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0028】
(画像形成用トナー)
本発明の画像形成用トナーは、トナー中に少なくとも結着樹脂と、外殻を有する発泡剤と、前記結着樹脂と発泡剤の外殻とを結合させる化合物(以下「第三成分材料」という)と、を含有したものである。
【0029】
本発明の画像形成用トナーは、画像形成用トナー中の結着樹脂が記録媒体に定着し、一方発泡剤の外殻と結着樹脂とが後述する第三成分材料によって結合されているため、定着時に発泡剤が発泡して凸画像の定着性が向上する。
【0030】
本発明の画像形成用トナーは、その球形化度が100以上130以下であり、より好ましくは100以上120以下である。この球形化度が130を超えると、感光体とトナーの接触面積が増えるため、転写性が低下し、良好な凸画像が得られにくい。また、ブレードクリーニング性をあげるためには、その球形化度が140以上150以下のものが好ましく用いられる。
【0031】
ここで球形化度とは、例えば日立製作所FE−SEM(S=800)を用い、倍率500倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報をインターフェイスを介して、例えばニレコ社製画像解析装置(LuzexIII)に導入し解析を行い、下記式(1)により、算出して得られた値(形状係数MSL2)の平均値である。なお、通常の混練粉砕法で作成したトナーの形状は不定形であり、MLS2は140程度である。
【0032】
【数1】
MSL2=(トナー粒子の最大長)/(トナー粒子の投影面積)×π×1/4×100……(1)
【0033】
本発明の画像形成用トナーは、その体積平均粒径が、3〜50μmであることが好ましい。特に好ましくは20〜30μmである。この体積平均粒径とは、コールターカウンター社製粒度測定機Multisizer(アパーチャー径100μm、体積平均径)を用いて測定した値である。
【0034】
本発明の画像形成用トナーは、離型剤を入れることで定着器(熱ロール)にオイル供給の必要の無いシステム、いわゆるオイルレス定着機構を備える画像形成装置、あるいは画像形成方法に好適に適応させることができる。
【0035】
本発明の画像形成用トナーは、好ましくは球形化度が上記条件を満たすようにしつつ得ることができるが、後述する本発明の画像形成用トナー製造方法により得ることが好ましい。
【0036】
以下、各トナー材料について詳しく説明する。
【0037】
次に、本発明の画像形成用トナーに含有される第三成分材料について説明する。
【0038】
第三成分材料としては、結着樹脂と発泡剤の外殻とに配位結合できるものやイオン結合できる材料が好ましく用いられる。具体的には、水溶性金属化合物と多価アミンが挙げられる。上記金属化合物として、好ましくは金属塩であり、より好ましくは多価金属塩である。上記金属化合物としては、イオン架橋するものとして、例えばCaCl、MgCl、NaCl、Al(SO、PAC(Poly Alminium Chloride(ポリ塩化アルミニウム))、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等が挙げられる。
【0039】
また、上記多価アミンとして、好ましくはジアミン、より好ましくは炭素数2から12のジアミンである。上記多価アミンとして、例えば配位結合するものとして、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミドデカン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタンが挙げられる。
【0040】
次に、本発明の画像形成用トナーに含有される結着樹脂について説明する。
【0041】
本発明における結着樹脂としては、特に制限されるものでなく、公知の定着用樹脂を用いることができる。以下に、本発明に用いることのできる結着樹脂の具体例をその樹脂種とともに挙げる。
【0042】
・アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合によって得られるポリエステル(アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ソルビトール、グリセリンなどの2価以上のアルコールおよびアルコール誘導体等;カルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸などの2価以上のカルボン酸、カルボン酸誘導体や無水カルボン酸など;なお、アルコール成分およびカルボン酸成分はそれぞれ2種類以上、組み合わせてもかまわない)。
【0043】
アクリル酸またはメタクリル酸エステル重合体(例えばポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ポリアクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステル重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸2−エチルヘキシル、ポリメタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル重合体)。
【0044】
・アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの共重合体。
【0045】
・スチレン系モノマーとアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルとの共重合体。
【0046】
・エチレン系重合体(例えばポリ酢酸ビニル、ポリプロピレン酸ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレン等)およびその共重合体。
【0047】
・スチレン系共重合体(例えばスチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体など)。
【0048】
その他、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ゴム類、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂など。
【0049】
これらの中でも、特にポリエステルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0050】
本発明における外殻を有する発泡剤は、後述する発泡剤を内包するマイクロカプセル粒子状の発泡剤(以下、「マイクロカプセル型発泡剤」という場合がある。)である。内包される発泡剤としては、特に制限されるものではなく、熱により体積膨張するものであればいずれも使用可能である。常温で固体のものであっても、液体のものであっても、気体状のものであってもよい。
【0051】
また、発泡剤は単一物質からなる材料に限られず、複数の物質からなる材料や、マイクロカプセル粒子等の機能性材料であってもよい。発泡剤の発泡温度は、いかなる装置を使用して立体画像を形成するかによって、その好ましい範囲が異なるが、通常の複写機等を用いて立体画像を形成する場合は、発泡温度が加熱定着温度以下であることが好ましい。
【0052】
発泡剤としては、例えば、熱分解によりガスを発生する物質を主原料とする発泡剤を用いることができ、具体的には、熱分解により炭酸ガスを発生する炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩、窒素ガスを発生するNaNOとNHClの混合物、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、酸素等を発生する過酸化物等が挙げられる。
【0053】
また、他の発泡剤としては、低温で気化する低沸点物質(常温で液体状態であっても固体状態であってもよい。)が挙げられる。上記低沸点物質を内包するマイクロカプセル型発泡剤は、発泡性は高いのでより好ましい。本発明の画像形成用トナーを、通常の複写機に使用する場合は、上記マイクロカプセル型発泡剤中に内包されている低沸点物質が、少なくとも加熱定着温度よりも低い温度で気化することが必要であり、具体的には100℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは25℃以下で気化する物質である。但し、マイクロカプセル型発泡剤の熱応答性は、芯材である低沸点物質の沸点のみならず、外殻(すなわち、壁材)の軟化点に依存するので、低沸点物質の好ましい沸点範囲は前記範囲に限定されない。低沸点物質としては、例えば、ネオペンタン、ネオヘキサン、イソヘキサン、イソブチレン、イソブタン等が挙げられる。なかでもマイクロカプセルの壁材に対して安定で、熱膨張率の高いイソブタンが好ましい。
【0054】
マイクロカプセル型発泡剤の外殻(すなわち、壁材)は、トナーの製造工程で用いられる種々の溶剤に対して耐溶剤性を有するとともに、マイクロカプセル型発泡剤に内包される低沸点物質が気化した際に、気体に対して非透過性を有する材料が好ましい。また、本発明の画像形成用トナーを、通常の複写機装置に使用する場合は、壁材が加熱定着温度よりも低い温度で軟化し、膨張する必要がある。マイクロカプセルの壁材としては、従来使用されている壁材を広く使用することができる。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステルなどの単重合体等のアクリル系樹脂、ポリエステル、または上述のポリマーを形成するモノマーを2種以上組み合わせた共重合体が好ましく用いられる。中でも、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体が結着樹脂との接着性が高い点、耐溶剤性が高い点で好ましい。上記外殻の官能基は、酸性基または塩基性基のいずれであってもよい。なお、第三成分材料が金属化合物でイオン架橋する場合には、陰イオンと成りやすい酸性基が好ましい。
【0055】
本発明の画像形成用トナーにおける発泡剤の含有量は、発泡剤の種類によって好ましい範囲が異なるが、通常は、5質量%〜50質量%、好ましくは10質量%〜40質量%である。発泡剤が5質量%未満であると、トナーの熱膨張が実用上不十分となる場合があり、一方、50質量%を越えると、トナー中の結着樹脂の割合が相対的に不足し、十分な定着性が得られない等の問題が生じる場合がある。
【0056】
本発明の画像形成用トナーには、上記各成分の他に、着色剤、離型剤、無機微粒子(内添剤)、帯電制御剤(内添剤)、無機微粒子(外添剤)等をその他の添加剤として含有してもよい。
【0057】
着色剤としては、公知の顔料および染料等を用いることができる。
【0058】
例えば、カーボンブラック(例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等)、無機顔料(例えばベンガラ、紺青、酸化チタン等)、アゾ顔料(例えばファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン、ベンズイミダゾロン等)、フタロシアニン顔料(例えば銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等)、縮合多環系顔料(例えばフラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等)、カーミンレーキ顔料などが挙げられる。
【0059】
顔料としては、特にC.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド185、カーボンブラックであるこことが、中間色の再現性の観点から好適である。
【0060】
顔料は、その分散状態を安定に保つ目的で、顔料分散剤と併用することが好ましい。顔料分散剤として具体的には、EFKA47、EFKA4009、EFKA4010(変性ポリウレタン:EFKA CHEMICALS社製)、アジスパーPA111(味の素(株)製)、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−400N(ポリエステル:楠本化成(株)製)などが挙げられる。
【0061】
顔料は、顔料分散剤とより強固な結合をさせて、顔料の分散をより安定化させる目的で、顔料誘導体等を併用したり、表面処理を行った顔料を用いたりすることが好ましい。顔料誘導体として具体的には、ジメチルアミノエチルキナクリドン、アントラキノンのスルホン酸誘導体、アントラキノンのカルボン酸誘導体、ソルスパース5000、ソルスパース12000、ソルスパース2000(ゼネカ社製)、EFKA745、LP6750(EFKA CHEMICALS社製)などが挙げられる。また、顔料の表面処理剤としては、天然ロジン(例えばガムロジン、ウッドロジン、トールロジン等)、アビエチン酸誘導体(例えばアビエチン酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸等)とそれらの金属塩(例えばカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等)、ロジン・マレイン酸樹脂、ロジン・フェノール樹脂等が挙げられる。顔料誘導体量又は顔料表面処理剤量としては、顔料に対して0.1〜100質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0062】
着色剤は、本発明の電子写真用トナーを磁性一成分トナーとして用いる場合、黒色着色剤の全部または一部を磁性粉で置き換えることができる。磁性粉としては、金属単体(例えばマグネタイト、フェライト、又は、コバルト、鉄、ニッケル等)、及びそれらの合金が挙げられる。
【0063】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1〜50質量部程度であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量部である。
【0064】
本発明の画像形成用トナーには、離型剤を含有させてもよい。離型剤を含有させることによって、接触定着時のオフセット現象等を防止することができるので好ましい。
【0065】
離型剤は、その平均粒径(分散粒径)が0.1μm以上1μm以下であり、好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。この平均粒径が0.1μm未満であると、定着時に離型剤が効果的に作用せず、定着機への転写媒体の巻き付きが発生する場合がある。一方、1μmを超えると、発色性が低下する場合がある。
【0066】
なお、ここでいう離型剤の平均粒径は、トナー断面の透過型電子顕微鏡から、倍率10000倍に拡大した離型剤微粒子像を50個無作為にサンプリングし、各々、(離型剤の長径+短径)/2を計測し、50個の平均により算出した値である。
【0067】
離型剤は、その長径と短径との比が1.1以上10以下であり、好ましくは1.2以上5以下である。この長径/短径比が1.1未満であると、離型剤が定着時に染込み難く、定着機への定着媒体の巻き付きが発生する。一方、10を超えると発色性が低下する。
【0068】
なお、ここでいう離型剤の長径/短径比は、トナー断面の透過型電子顕微鏡から、倍率10000倍に拡大した離型剤微粒子像を50個無作為にサンプリングし、各々の長径/短径比を測定し、50個の平均により算出した値である。
【0069】
離型剤は、通常、微粒子化して添加するのが好ましい。さらに、トナー表面に離型剤が露出しないほうが好ましい。トナー表面への離型剤の露出は、トナーの粉体流動性の低下や、現像性、特に画像の維持性の低下を招く。
【0070】
離型剤の微粒子化の方法としては、メディア式ミルで離型剤を有機溶媒中で湿式粉砕して微粒子化する方法、離型剤を有機溶媒中に溶解させた後、冷却析出させて微粒子化させる方法、あるいは離型剤を気相中で蒸発させて、微粒子化させる方法が挙げられる。ここで用いられる有機溶媒は、後述する結着樹脂を溶解する際に用いる有機溶媒と必ずしも同一である必要はない。この有機溶媒の量は、離型剤1質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。離型剤の溶解方法としては、加熱、加圧などして行うことができる。また、離型剤を気相中で蒸発させて、微粒子化させる方法においては、ヘリウム、アルゴン、窒素の不活性ガスを用い、離型剤を100℃〜400℃の温度に加熱し、1.333〜1333Pa(0.01〜10torr)の減圧下で蒸発させて、蒸発した離型剤微粒子を冷却した基体に付着させた後、かきとる或いは溶剤に分散させるなどして、特定の形状を有する微粒子を得ることができる。本方法では、温度および減圧度を調整することで、分子量分布の狭い留分を分離することも可能である。
【0071】
離型剤として具体的には、石油ワックス(例えばパラフィンワックス、酸化パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、鉱物ワックス(例えばモンタンワックスなど)、動植物ワックス(例えばみつろう、カルナバワックスなど)、合成ワックス(例えばポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなど)等が挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックスが好ましい。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0072】
離型剤の融点は、50℃〜110℃であることが好ましく、より好ましくは60℃から100℃である。特に離型剤としては、融点50℃〜110℃のパラフィンワックスが好ましい。
【0073】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部程度であることが好ましく、より好ましくは1〜7質量部である。
【0074】
本発明の画像形成用トナーには、無機微粒子を含有させてもよい。なお、ここでいう無機微粒子とは、トナー中に含有させる、いわゆる内添させるものを示す。
【0075】
無機微粒子としては、例えば金属塩(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属酸化物(例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなど)、セラミック等が挙げられる。これらの中でも、発色性が良好な、酸化ケイ素などの結着樹脂との屈折率差が小さい無機微粒子が好ましい。無機微粒子は単独でもよいし、2種以上併用してもよい。
【0076】
無機微粒子は、通常、親油性が弱いと、トナー粒子中への取り込み率が小さくなる傾向にあるため、製造工程中でトナー粒子中からの脱離を防止する目的で、疎水性に表面処理させたものを用いることが好ましい。このような疎水性の表面処理剤としては、カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤として具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤やチタンカップリング剤等が挙げられる。特に、無機微粒子として、このような疎水化処理した酸化ケイ素を用いることが好ましい。
【0077】
無機微粒子の平均粒径は、4nm以上500nm以下であることが好ましく、特に好ましくは6nm以上50nm以下である。この粒径が上記範囲外であると、十分な定着性が得られない場合がある。
【0078】
無機微粒子の含有量(内添量)は、トナー100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、特に好ましくは2質量部以上10質量部以下である。この含有量が上記範囲外であると、定着性が不十分となる場合がある。
【0079】
本発明の画像形成用トナーは、帯電制御剤(内添剤)を含有してもよい。
【0080】
帯電制御剤としては、従来現像剤に用いられたものが使用できるが、具体的には、電子写真用粉体トナーにおいて使用されている安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジウム塩からなる群より選ばれる化合物、極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤、さらにこれらの適宜組み合わせたものが好適に挙げられる。これら帯電制御剤の添加量(内添量)としては、一般にトナー固形分に対して10質量%以下程度が好ましい。
【0081】
本発明の画像形成用トナーは、無機微粒子(外添剤)を含有してもよい。
【0082】
無機微粒子(外添剤)は、トナーの流動性などを与えるために、トナー表面に添加されるものであり、具体的には、金属塩、樹脂、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、などの金属酸化物、セラミック、カーボンブラック等が挙げられる。
【0083】
無機微粒子は(外添剤)は、帯電性等を制御する目的で、疎水性に表面処理させたものを用いることが好ましい。このような疎水性の表面処理剤としては、カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤としては具体的には、上述と同様なものが挙げられる。
【0084】
また、本発明の画像形成用トナーは、必要に応じて、その他の公知の外添剤を含有してもよい。
【0085】
(画像形成用トナーの製造方法)
本発明の第1の画像形成用トナーの製造方法は、結着樹脂が溶解可能な有機溶媒中に、少なくとも結着樹脂と発泡剤とを混合して、油性成分を調整する工程(以下、「混合工程」という)と、該油性成分を前記第三成分材料が添加された水性媒体中に懸濁させ、粒子化して懸濁液を調整する工程(以下、「懸濁工程」という)と、該懸濁液から有機溶媒を除去する工程(以下、「溶媒除去工程」という)と、を有する製造方法である。
【0086】
ここで用いる各材料は、上記本発明の画像形成用トナーで挙げたものと同様なものを用いる。また、各工程に加えて、その他の工程を適宜行っても良い。
【0087】
第1の製造方法の混合工程は、結着樹脂が溶解可能な有機溶媒中に、結着樹脂、外殻を有する発泡剤、着色剤分散液、離型剤分散液、無機微粒子、及び必要に応じてその他の添加剤を混合して、油性成分を調整することが好ましい。該有機溶媒としては、一般の有機溶媒が用いられ、具体的には、トルエン、キシレン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類等が挙げられる。これら有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0088】
また、これらの有機溶媒は、主に結着樹脂を溶解させる必要があるが、着色剤、その他の添加剤は溶解していてもよいし、分散させるのみでもよい。
【0089】
トナー成分と有機溶媒との質量比は、10/90から80/30が造粒し易さ、あるいは最終的なトナー収率の点で好ましい。
【0090】
上記混合工程及び懸濁調製工程において、着色剤はそのまま、他の材料と共に有機溶媒中に混合してもよいが、予め着色剤を分散させた着色剤分散液を用いることが好ましい。この着色剤混合液は、例えば、サンドミル、ボールミル、アトライター、コボールミル等のメディア式分散機、三本ロールミル等のロールミル、ナノマイザー等のキャビテーションミル、コロイドミルなどを用いて、上記有機溶媒に着色剤を分散することで得ることができる。また、この際、必要に応じて、顔料分散剤、顔料誘導体等のその他の添加物も分散される。着色剤分散液調整時に適度なせん断力を加えるために、前記結着樹脂を一部添加して粘度を調整してもよい。なお、ここで用いる有機溶剤は、油性成分を調整する際に用いる有機溶媒と必ずしも同一である必要はない。
【0091】
上記混合工程及び懸濁調製工程において、無機微粒子は、着色剤及び離型剤同様に、そのまま、他の材料と共に有機溶媒中に混合してもよいが、予め無機微粒子を分散させた無機微粒子分散液を用いることもできる。この無機微粒子分散液は、例えば、着色剤同様に有機溶媒に無機微粒子を分散させることで得ることができる。なお、ここで用いる有機溶剤は、油性成分を調整する際に用いる有機溶媒と必ずしも同一である必要はない。
【0092】
また、上記混合工程及び懸濁調製工程において、油性成分を調整する際の混合(攪拌)には、ホモジナイザー、コロイドミル等のローターステーター型攪拌機、ディゾルバー等のインペラー型攪拌機、超音波攪拌機などが用いられる。
【0093】
懸濁工程においては、上記混合工程により得られた油性成分を、水性媒体中に懸濁させ、粒子化して懸濁液を調製しているが、上述の水性媒体としては、主として水が用いられ、また、水溶性溶媒を併用しても構わない。この水溶性媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられ、これらは、水に溶解する範囲内で用いることができる。
【0094】
上記懸濁工程においては、油性成分を水性媒体中に分散安定化させるために、分散安定剤を用いることが好ましい。このような分散安定剤としては、無機微粒子、水溶性高分子が挙げられる。この無機微粒子としては、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化珪素等が挙げられる。水溶性高分子としては、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。分散安定剤量は、水性媒体100質量部に対して、1〜30質量部が好ましい。また、分散安定剤として用いる無機微粒子の平均粒径は1μm以下が好ましい。
【0095】
また、上記懸濁工程及び懸濁調製工程においては、分散安定補助剤を併用してもよい。分散安定補助剤には各種界面活性剤が使用できる。該界面活性剤としては、イオン性、非イオン性の界面活性剤類がある。具体的には、アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩等が使用できる。カチオン性界面活性剤としては、第1級ないし第3級のアミン塩、第4級アンモニウム塩等が使用できる。非イオン製界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が使用できる。これらの分散安定剤は、水性媒体に対して、0.001〜5質量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0096】
上記懸濁工程及び懸濁調製工程における油性成分と水性成分との質量比は、最終的なトナーの粒径や、製造装置によっても異なるが、通常、10/90から90/10が好ましい。
【0097】
また、油性成分の粒子化は、高速せん断下で行うのが好ましい。中でも各種ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル等の高速羽根回転型や強制間隔通過型の乳化機を用いるのが好ましい。
【0098】
上記溶媒除去工程においては、該懸濁液から有機溶媒を除去することで、粒子化したトナーを得ることができる。また、該懸濁液に貧溶媒を添加して、トナー(粒子)を析出させた後、有機溶媒の除去を行ってもよい。貧溶媒としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0099】
溶媒の除去は、常圧で行ってもよいし、あるいは減圧で行ってもよい。常圧で行う場合は、溶媒除去の温度を溶媒の沸点より低く、かつ樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と称する場合がある)を考慮した温度に設定する必要がある。樹脂のTgを大きく越える温度で行うと、トナー同士の合一が起こり好ましくない。溶媒の除去は、通常40℃近傍で3〜24時間攪拌しながら行うのが好ましい。減圧して溶媒除去を行う場合は、2.67×10〜2.00×10Pa(20〜150mmHg)で行うのが好ましい。
【0100】
以上の工程を経て得られたトナーは、ろ過により、取り出された後、通常、水洗、乾燥、分級される。
【0101】
洗浄は、トナーの表面に付着している無機分散安定剤等を溶解する塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸等の酸類で行うのが好ましい。無為分散安定剤や有機分散安定剤がトナー表面に残留した場合、残留付着物の持つ吸湿性の為に、トナーとしての帯電性の湿度依存性が高くなる場合がある。従って、分散安定剤を洗浄により除去すると、トナーの帯電安定性がより向上するので好ましい。トナーを酸で洗浄した後、所望によりさらに水酸化ナトリウム等のアルカリ水で再度洗浄してもよい。これにより、酸性雰囲気下に置かれることで、不溶化したトナー表面の一部のイオン性物質が、再度、可溶化除去され帯電性や粉体流動性がさらに改善される。
【0102】
洗浄は、洗浄時のpH、洗浄の回数、洗浄時の温度等の条件を調整することにより効率的に行うことができる。さらに、攪拌機や超音波分散装置等を用いるとより効果的に洗浄操作を実施できるので好ましい。トナーを洗浄後、所望によりさらにろ過、デカンテーション、遠心分離等のごとき工程を実施し、トナーを乾燥する。
【0103】
乾燥には、通気乾燥装置、噴霧乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、流動乾燥装置、電熱加熱乾燥装置、凍結乾燥装置など、公知の装置を用いて行われる。
【0104】
この態様のトナー製造方法においては、いずれの工程中にも、高温加熱下で行う処理は含まれていないので、製造工程中に発泡剤の熱膨張性が失活することがなく、得られるトナーは高い熱膨張性を有する。
【0105】
本発明の電子写真用トナーの製造方法においては、必要に応じて、無機微粒子等の外添剤が添加されるが、この外添剤の添加方法としては、トナーの乾燥後、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いて、乾式でトナー表面に外添剤を付着させてもよいし、水性溶媒中に懸濁させ、粒子化した後、スラリー状態のトナー(懸濁液)に添加し乾燥させトナー表面に外添剤を付着させてもよいし、また、外添剤にスラリー状のトナー(懸濁液)をスプレーしながら乾燥して、トナー表面に外添剤を付着させてもよい。
【0106】
本発明の画像形成用トナーを製造方法として、上述の溶解懸濁法の他に懸濁重合を利用する方法がある。この懸濁方法においては、結着樹脂のモノマーに、あらかじめマイクロカプセル型発泡剤および所望により他の添加剤を溶解または分散させる。この結着樹脂のモノマーを水性媒体中に懸濁分散する。この際、マイクロカプセル型発泡剤は、水性媒体中に分散しているモノマーからなる粒子の内部に保持される。次に、水性媒体に任意の開始剤を添加し、モノマーを懸濁重合させると、モノマー粒子の内部では発泡剤を含有したまま重合が進行する。その結果、表面に発泡剤が実質的に露出していない粒子が効率よく容易に製造できる。懸濁重合の進行は、モノマーの種類によって異なるが、一般的には、60〜90℃の温度範囲で進行する。このように懸濁重合方法では、従来の混練粉砕法により製造する場合と比較して、低温で製造工程を進めることができ、発泡剤の熱膨張性が製造工程中に失活するのを抑制することができる。なお、その他の添加剤は、予めモノマーに分散させる以外に、水性媒体中に分散させてもよい。
【0107】
懸濁重合終了後、所望により、得られたトナーに洗浄処理、および乾燥処理を施してもよい。各々の処理の具体的操作については前記と同様である。
【0108】
本発明の画像形成用トナーの製造方法により、前記本発明の画像形成用トナーを得ることができる。
【0109】
(現像剤)
本発明の現像剤は、前記本発明の画像形成用トナーとキャリアとを含有してなる二成分系の現像剤である。本発明の現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば、芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0110】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブラチール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0111】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには磁性材料であることが好ましい。
【0113】
キャリアの芯材の体積平均粒径としては一般的には10〜500μmであり、好ましくは30〜200μmである。
【0114】
また、キャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
【0115】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0116】
本発明の電子写真用現像剤における本発明の電子写真用トナーとキャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜50:100程度の範囲であり、好ましくは3:100〜30:100程度の範囲である。
【0117】
(画像形成方法および画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体表面上に形成された潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体表面上に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体にトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、前記トナーが本発明の画像形成用トナーであり、前記定着工程において、前記トナーに含有される発泡剤を発泡させ、立体画像を記録媒体上に形成することを特徴とする。
【0118】
また、本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体表面上に形成された潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体表面上に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体にトナー画像を定着する定着手段と、を備えてなる画像形成装置において、前記トナーが本発明の画像形成用トナーであり、前記定着手段が前記トナーに含有される発泡剤を発泡させ、立体画像を記録媒体上に形成する手段であることを特徴とする。
【0119】
以下に、本発明の画像形成方法および画像形成装置について詳述する。
【0120】
本発明の画像形成用トナーを用いれば、一般の複写機やプリンター等の電子写真画像形成装置の定着装置をそのまま利用して、画像を記録媒体上に定着すると同時にトナー中の発泡剤を発泡させて立体画像を形成することができる。定着装置としては、オーブン方式、熱ロール方式、熱ベルト方式等、従来の加熱方式の定着装置が適宜利用できるが、この中で最も広く電子写真方式に適用されている熱ロール定着装置を用いるのが好ましい。このように、本発明の画像形成用トナーを用いることによって、画像形成装置を立体画像形成用に新たに設計することなく、および実質的な改造を施さずに、一般の電子写真方式を利用した装置を使用して、容易に立体画像を形成することができる。また、オフィスで複写するような手軽さで、容易に立体画像を多数枚複写することができるので、点字文字や立体画像を含む冊子等も容易に作成することができる。
【0121】
本発明の画像形成用トナーを用いて得られた画像における、単位面積当たりのトナー重量(TMA)は5〜150g/mが好ましく、50〜130g/mがより好ましく、70〜80g/mが特に好ましい。
【0122】
本発明の画像形成用トナーを発泡させるには、定着温度を120℃以上250℃以下、好ましくは130℃以上240℃以下、より好ましくは140℃以上200℃以下に設定する。定着温度が120℃以下であると発泡剤が充分に発泡せずに充分な画像厚みが得られない場合がある。一方、250℃を越えると、結着樹脂等が分解する場合がある。尚、必ずしも定着と発泡剤の発泡を同時に行う必要はなく、一旦、比較的低温の定着ロール等で画像を定着した後、さらに前記温度範囲の比較的高温の定着ロールにより、別途、発泡剤を発泡させてもよい。
【0123】
また、本発明の画像形成用トナーを用いれば、従来の電子写真画像形成装置に定着温度を制御する手段を付加するだけで、通常の画像(平面画像)と立体画像の双方を形成し得る画像形成装置となる。定着温度を制御する手段としては、例えば、ユーザーからの情報に応じて、定着ロールに内蔵されているヒータを制御し、通常画像の形成モードにおける定着ロールの設定温度T℃よりも、高い温度T℃とする制御システムが挙げられる。この際の定着温度T℃は、設定された定着温度において、トナー中に含有される発泡剤が発泡するのに充分な温度である。また、発泡剤の発泡開始は定着温度のみならず、定着速度にも依存するので、従来の画像形成装置に定着速度を制御する手段を付加することによっても、平面画像と立体画像の双方を形成し得る画像形成装置とすることもできる。定着速度を制御する手段としては、例えば、ユーザーからの情報の入力に応じて、定着ロールの回転速度を制御し、未定着画像有する記録媒体がニップ部を通過する速度をVmm/secより遅い速度Vmm/secにするシステムが挙げられる。速度Vmm/secは、定着ロールの設定温度において、記録媒体が速度Vmm/secでニップを通過した場合にトナー中の発泡剤が発泡するのに充分な速度である。
【0124】
本発明の製造方法で得られたトナーは、公知の乾式静電荷用現像法に制限はなく使用できる。例えば、カスケード法、磁気ブラシ法、マイクロトーニング法などの二成分現像法、導電性一成分現像法、絶縁性一成分現像法などの一成分現像法、さらには非磁性一成分現像法等を採用する画像形成装置に使用可能である。さらに、前記球形のトナー形状に起因するトナー付着力の低さを高率的に利用したユニークなプロセスを設計することも可能である。MLS2が140を越えるあたりからトナーの転写効率の低下が認められ、転写効率を高める為には、MLS2が100から120程度が望ましい。こうしたトナーの高転写効率特性を利用し、クリーニング部材レスを採用した、小型で簡素なプロセスを設計することも可能であり、本発明のトナーはこのようなプロセスに使用するのに好適である。
【0125】
以下に、本発明の画像形成用トナーを用いた画像形成方法に利用される画像形成装置の例を、図1および図2により説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0126】
図1は、本発明のトナーを用いてフルカラーの画像を形成するプロセスの一例である。感光体(静電潜像担持体)1は、OPC(有機感光体)、a−Se、a−Si、ZnOの様な光導電絶縁質層を持つ感光ドラム若しくはベルトである。なかでもOPCやa−Si感光体が好ましく用いられる。前記OPCには、シリコーン系の保護層を設けてもよい。感光体1はコロナ帯電器3により一様に帯電される。感光体1の帯電には、このような非接触帯電装置の他に、ローラや磁気ブラシを用いた接触型帯電装置を用いてもよい。
【0127】
感光体1は、露光装置2により画像様に露光され、感光体1上には静電潜像が形成される。この静電潜像は、個々の現像装置(現像手段)5a〜5dには、フルカラー機であれば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの現像剤が導入されている。現像装置5a〜5dに格納されている現像剤のいずれもが、本発明のトナーを主成分とする現像剤であってもよいし、いずれか1色のみ、あるいは2〜3色が本発明のトナーを主成分とする現像剤であってもよい。また、5a〜5dの現像装置を制御する手段を付加して、ユーザー等の入力に応じて本発明のトナーを格納する現像装置を選択できるシステムを組み込み、選択的に立体画像を形成してもよい。現像装置5a〜5dは、磁気ブラシ現像方式であっても非磁性一成分現像方式であってもよい。本発明のトナーは、発泡剤が実質的に表面に露出していないので帯電安定性が高く、従来の現像装置によって良好な現像特性を発揮することができる。
【0128】
感光体1上に形成された各色のトナー画像は、順次、中間転写体(ベルト)4に転写される。中間転写体(ベルト)4は、その周囲に電気抵抗値を制御した弾性層が設けられた構成となっている。中間転写体(ベルト)4の表面に転写されたトナー画像は、トナーの摩擦電荷と逆極性のバイアスを転写器(転写手段)6により印加され記録媒体10の表面に転写される(転写工程)。感光体1はその後、脱着可能なクリーニング手段7によるクリーニング工程を経て、初期状態に戻る。
【0129】
トナー画像が転写された記録媒体は、加熱ロール8および加圧ロール9からなる定着装置(定着手段)に供され、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵する加熱ロール8と、これに押圧力をもって圧接される弾性体の加圧ロール9と、のニップ部を通過することによって、記録媒体上に定着されるとともに、トナーに含有される発泡剤が発泡し、立体画像化される(定着工程)。本発明のトナーを用いたこのプロセスによって得られる立体画像は、充分に認識可能な画像厚みを有するとともに、記録媒体等の紙に対する定着性が高い。
【0130】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を制限するものではない。
【0131】
(実施例1)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂(Mn6700:Mn36000:酸化15mgKOH/g:水酸基価27mgKOH/g:Tg62℃:軟化点110℃:130℃での力学正接損失2.8)300質量部と、発泡剤(エクスパンセル461:日本フィライト(株)製)497質量部と、酢酸エチル2000質量部と、疎水性酸化ケイ素微粒子(アエロジル社製R972、平均粒径16nm)20質量部とを、混合し均一になるまでよく攪拌した(この液をA液とする)。なお、本実施例における「エクスパンセル461」は、外殻が塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体からなりイソブタン(沸点−11.7℃)を内包するマイクロカプセル型発泡剤である。
【0132】
一方、炭酸カルシウム40質量部と、塩化マグネシウム(MgCl)1質量部、水60質量部に分散した炭酸カルシウム分散液124質量部と、セロゲンBS−H(第一工業製薬(株))の2質量%水溶液99質量部と、水157質量部とをホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて3分間攪拌した(この液をB液とする)。
【0133】
さらに、ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて前記B液345質量部と前記A液250質量部とを10000rpmで1分間攪拌し混合液を懸濁した後、0.3%アンモニア水110質量部を加え、室温、常圧で48時間プロペラ型攪拌機で攪拌し溶媒を除去した。次に塩酸を加えて、炭酸カルシウムを除去した後、水洗、乾燥、分級してトナーを得た。得られたトナー体積平均粒径は、20μmであった。また、形状係数は115であった。
【0134】
次に、このトナー100質量部に平均粒径40nmのシリコンオイル処理酸化ケイ素微粒子(RY50:日本エアロジル社製)1.3質量部、平均粒径100nmの爆燃法酸化ケイ素微粒子(KMP−105:信越化学社製の分級物)2質量部、平均粒径20nmの酸化チタン(MT150AW:テイカ(株)製)をデシルトリメトキシシラン20%で処理した微粒子1.5質量部をサンプルミルで混合しトナーを作製した。
【0135】
(実施例2)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂(Mn6700:Mn36000:酸化15mgKOH/g:水酸基価27mgKOH/g:Tg62℃:軟化点110℃:130℃での力学正接損失2.8)300質量部と、発泡剤(エクスパンセル461:日本フェライト(株)製)497質量部と、酢酸エチル2000質量部と、疎水性酸化ケイ素微粒子(アエロジル社製R972、平均粒径16nm)20質量部とを、混合し均一になるまでよく攪拌した(この液をA液とする)。
【0136】
一方、炭酸カルシウム40質量部と、PAC(Poly Alminium Chloride(ポリ塩化アルミニウム))1質量部、水60質量部に分散した炭酸カルシウム分散液124重量部と、セロゲンBS−H(第一工業製薬(株))の2質量%水溶液99質量部と、水157質量部とをホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて3分間攪拌した(この液をC液とする)。
【0137】
さらに、ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて前記C液345質量部と前記A液250質量部とを10000rpmで1分間攪拌し混合液を懸濁した後、0.3%アンモニア水110質量部を加え、室温、常圧で48時間プロペラ型攪拌機で攪拌し溶媒を除去した。次に塩酸を加えて、炭酸カルシウムを除去した後、水洗、乾燥、分級してトナーを得た。得られたトナー体積平均粒径は、25μmであった。また、形状係数は118であった。
【0138】
次に、このトナー100質量部に平均粒径40nmのシリコンオイル処理酸化ケイ素微粒子(RY50:日本エアロジル社製)1.3質量部、平均粒径100nmの爆燃法酸化ケイ素微粒子(KMP−105:信越化学社製の分級物)2質量部、平均粒径20nmの酸化チタン(MT150AW:テイカ(株)製)をデシルトリメトキシシラン20%で処理した微粒子1.5質量部をサンプルミルで混合しトナーを作製した。
【0139】
(実施例3)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂(Mn6700:Mn36000:酸化15mgKOH/g:水酸基価27mgKOH/g:Tg62℃:軟化点110℃:130℃での力学正接損失2.8)300質量部と、発泡剤(エクスパンセル461:日本フェライト(株)製)497質量部と、酢酸エチル2000質量部と、着色剤として銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue15:3)19重量部、顔料分散剤が1重量部、疎水性酸化ケイ素微粒子(アエロジル社製R972、平均粒径16nm)20質量部とを、混合し均一になるまでよく攪拌した(この液をA液とする)。
【0140】
一方、炭酸カルシウム40質量部と、1,10−ジアミノデカン1質量部、水60質量部に分散した炭酸カルシウム分散液124重量部と、セロゲンBS−H(第一工業製薬(株))の2質量%水溶液99質量部と、水157質量部とをホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて3分間攪拌した(この液をD液とする)。
【0141】
さらに、ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて前記D液345質量部と前記A液250質量部とを10000rpmで1分間攪拌し混合液を懸濁した後、0.3%アンモニア水110質量部を加え、室温、常圧で48時間プロペラ型攪拌機で攪拌し溶媒を除去した。次に塩酸を加えて、炭酸カルシウムを除去した後、水洗、乾燥、分級してトナーを得た。得られたトナー体積平均粒径は、30μmであった。また、形状係数は112であった。
【0142】
次に、このトナー100質量部に平均粒径40nmのシリコンオイル処理酸化ケイ素微粒子(RY50:日本エアロジル社製)1.3質量部、平均粒径100nmの爆燃法酸化ケイ素微粒子(KMP−105:信越化学社製の分級物)2質量部、平均粒径20nmの酸化チタン(MT150AW:テイカ(株)製)をデシルトリメトキシシラン20%で処理した微粒子1.5質量部をサンプルミルで混合しトナーを作製した。
【0143】
(実施例4)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂(Mn6700:Mn36000:酸化15mgKOH/g:水酸基価27mgKOH/g:Tg62℃:軟化点110℃:130℃での力学正接損失2.8)300質量部と、発泡剤(エクスパンセル461:日本フェライト(株)製)497質量部と、酢酸エチル2000質量部と、疎水性酸化ケイ素微粒子(アエロジル社製R972、平均粒径16nm)20質量部とを、混合し均一になるまでよく攪拌した(この液をA液とする)。
【0144】
一方、炭酸カルシウム40質量部と、1,4−ジアミノブタン1質量部、水60質量部に分散した炭酸カルシウム分散液124重量部と、セロゲンBS−H(第一工業製薬(株))の2質量%水溶液99質量部と、水157質量部とをホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて3分間攪拌した(この液をE液とする)。
【0145】
さらに、ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて前記E液345質量部と前記A液250質量部とを10000rpmで1分間攪拌し混合液を懸濁した後、0.3%アンモニア水110質量部を加え、室温、減圧で48時間プロペラ型攪拌機で攪拌し溶媒を除去した。次に塩酸を加えて、炭酸カルシウムを除去した後、水洗、乾燥、分級してトナーを得た。得られたトナー体積平均粒径は、22μmであった。また、形状係数は145であった。
【0146】
次に、このトナー100質量部に平均粒径40nmのシリコンオイル処理酸化ケイ素微粒子(RY50:日本エアロジル社製)1.3質量部、平均粒径100nmの爆燃法酸化ケイ素微粒子(KMP−105:信越化学社製の分級物)2質量部、平均粒径20nmの酸化チタン(MT150AW:テイカ(株)製)をデシルトリメトキシシラン20%で処理した微粒子1.5質量部をサンプルミルで混合しトナーを作製した。
【0147】
(実施例5)
パラフィンワックス(融点89℃)30質量部と、酢酸エチル270質量部とをDCPミルを用い5℃に冷却した状態で、湿式粉砕し、ワックス(離型剤)分散液を作製した(この液をF液とする)。
【0148】
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂(Mw6700:Mn36000:酸化15mgKOH/g:水酸基価27mgKOH/g:Tg62℃:軟化点110℃:130℃での力学正接損失2.8)420質量部と、発泡剤(エクスパンセル461:日本フェライト(株)製)497質量部と、前記F液(ワックス分散液)300質量部と、酢酸エチル1700質量部と、疎水性酸化ケイ素微粒子(アエロジル社製R972、平均粒径16nm)20質量部とを、混合し均一になるまでよく攪拌した(この液をG液とする)。
【0149】
一方、炭酸カルシウム40質量部と、塩化マグネシウム(MgCl)1質量部、水60質量部に分散した炭酸カルシウム分散液124重量部と、セロゲンBS−H(第一工業製薬(株))の2%水溶液99質量部と、水157質量部とをホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて3分間攪拌した(この液をB液とする)。
【0150】
さらにホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて前記B液345重量部と前記G液250重量部とを10000rpmで1分間攪拌し混合液を懸濁した後、0.3%アンモニア水110重量部を加え、室温、常圧で48時間プロペラ型攪拌機で攪拌し溶媒を除去した。次に塩酸を加えて、炭酸カルシウムを除去した後、水洗、乾燥、分級してトナーを得た。得られたトナー体積平均粒径は、24μmであった。また、形状係数は117であった。離型剤の平均粒径が0.3μm、長径/短径比が2.0であった。
【0151】
次に、このトナー100重量部に平均粒径40nmのシリコンオイル処理酸化ケイ素微粒子(RY50:日本エアロジル社製)1.3重量部、平均粒径100nmの爆燃法酸化ケイ素微粒子(KMP−105:信越化学社製の分級物)2重量部、平均粒径20nmの酸化チタン(MT150AW:テイカ(株)製)をデシルトリメトキシシラン20%で処理した微粒子1.5重量部をサンプルミルで混合しトナーを作製した。
【0152】
(比較例1)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂と、発泡剤だけにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを作製した。
【0153】
(比較例2)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAエチレノキサイド付加物と、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂と、発泡剤だけにした以外は、実施例6と同様にしてトナーを作製した。
【0154】
<評価>
実施例1〜6、及び比較例1〜2で得られたトナーについて、「定着性(定着強度(N))を測定した。
【0155】
結果を表1に示す。なお定着性の評価方法は以下の通りである。
【0156】
−定着性−
定着性は、実施例1〜4、及び比較例1については、DocuColor1250(富士ゼロックス社製)改造機を用いて単位面積当たりのトナー重量TMA=72g/mのφ1.5mm円形ドット未定着画像を形成した後、145℃で加熱定着し立体画像を得た後、φ1.5mm円形ドット立体画像の用紙と画像の界面の横せん断力を引っ張り試験改造機により測定し、定着強度(N)として評価した。なお、現像剤としては、100μmのフェライトコアにメチルメタクリレートとパーフルオロオクチルエチルアクリレート共重合体を被覆したキャリアを用い、キャリア:トナー比を80:20にした。
【0157】
実施例5〜6、及び比較例2については、DocuCentreColor400CP(富士ゼロックス社製)改造機を用いて単位面積当たりのトナー重量TMA=72g/mのφ1.5mm円形ドット未定着画像を形成した後、145℃で加熱定着し立体画像を得た後、φ1.5mm円形ドット300μmの立体画像の用紙と画像の界面の横せん断力を引っ張り試験改造機により測定し、定着強度(N)として評価した。まお、転写紙は、富士ゼロックス社製カラーペーパー(ピンク)を使用した。
【0158】
以下に、評価に使用した引っ張り試験改造機について説明する。
【0159】
前記引っ張り試験改造機とは、紙やフィルムなどの基材(記録媒体)上に印刷された立体画像と基材との接着強度を測定する装置であり、立体画像が基材から剥がれる又は破壊されるときの基材と略平行な方向の抵抗力を測定するものである。
【0160】
図2および図3に本評価で用いた引っ張り試験改造機の模式図を示す。なお、図3は、図2を側面方向から見た図である。但し、一方の図面において描かれている一部の部材については、他方の図面において省略されている。
【0161】
被検査体20は、上記各実施例あるいは比較例の画像形成用トナーを用いて、基材11上に、立体画像12が形成されたものである。平板状の刃16は、基材11上の立体画像12を引っ掻くための、一片に刃先を有する。シャフト18は、ダイヤルゲージ19と突き当て部材17とを緊結する。ブロック10は刃16に対向する位置に設けられ基材11の裏面に触れ、台15に固定されている。刃16とブロック10とを突き当てた状態でダイヤルゲージ19を零調整し、刃16を、刃16とブロック10とのスリット間隔が開く方向に平行移動させて、基材11の厚みから20μm広いスリット間隔にした上でシャフト固定部材21で固定する。13は荷重測定器であり、基材11を引っ張った時の抵抗力を測定する。
【0162】
測定は、荷重測定器13に取り付けられた基材把持部材14で基材11の端部を把持し、荷重測定器13を図示しない移動手段によって一定速度で、基材11を水平方向(矢印A方向)に移動することにより行う。刃16により立体画像が剥がれるとともに測定器の読みは変化する。そのピーク値を、定着強度(N)の値とした。
【0163】
また、表1における画像表面の欠損の評価は黙視にて行った。欠損がないものを「○」とし、一部でも欠損があるものを「×」とした。
【0164】
【表1】
Figure 2004020611
【0165】
【発明の効果】
本発明によれば、定着性に特に優れた立体画像を、容易に形成し得る画像形成用トナー、およびそのトナーの作成方法、ならびに該トナーを含む現像剤を提供できる。また、簡易に立体画像を形成し得る画像形成方法および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成用トナーを用いた画像形成方法に利用される画像形成装置(カラープリンタ)の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例の評価に用いた引っ張り試験改造機を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例の評価に用いた引っ張り試験改造機の一部を示す模式図である。
【符号の説明】
1 感光体(静電潜像担持体)、2 露光装置、3 コロナ帯電器、4 中間転写体、5a,5b,5c,5d 現像装置(現像手段)、6 転写器(転写手段)、7  クリーニング手段、8 加熱ロール(定着手段)、9 加圧ロール(定着手段)、10 記録媒体、11 基材、12 立体画像、13 荷重測定器、14 基材把持部材、15 台、16 刃、17 突き当て部材、18 シャフト、19 ダイヤルゲージ、20 被検査体、21 シャフト固定部材、30 ブロック、A 移動方向。

Claims (5)

  1. トナー中に少なくとも結着樹脂と外殻を有する発泡剤とを含み、前記結着樹脂と発泡剤の外殻とを結合させる化合物を含有したことを特徴とする画像形成用トナー。
  2. 少なくとも結着樹脂と外殻を有する発泡剤とを前記結着樹脂が溶解可能な有機溶媒中で混合して油性成分を調整する工程と、
    前記油性成分を、前記結着樹脂と外殻とを結合させる化合物を含有する水性溶媒中に懸濁させ粒子化して懸濁液を調整する工程と、
    前記懸濁液から有機溶媒を除去する工程と、
    を有することを特徴とする画像形成用トナーの製造方法。
  3. トナーとキャリアとを含有してなる現像剤であって、前記トナーが請求項1に記載の画像形成用トナーであることを特徴とする現像剤。
  4. 静電潜像担持体表面上に形成された潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体表面上に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体にトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、
    前記トナーが請求項1に記載の画像形成用トナーであり、
    前記定着工程が、前記トナーに含有される発泡剤を発泡させ、立体画像を記録媒体上に形成することを特徴とする画像形成方法。
  5. 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面上に形成された潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体表面上に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体にトナー画像を定着する定着手段と、を備えてなる画像形成装置において、
    前記トナーが請求項1に記載の画像形成用トナーであり、
    前記定着手段が前記トナーに含有される発泡剤を発泡させ、立体画像を記録媒体上に形成する手段であることを特徴とする画像形成装置。
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