JP2004020280A - マイクロアレイチップの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スポットされたDNAが濡れ広がるといった不具合の無いマイクロアレイチップの製造方法の提供。
【解決手段】エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材6および光触媒処理層側基板3を、前記光触媒処理層および前記特性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、前記特性変化層の特性の違いによるパターンにより、固定化層10を形成する固定化層形成工程と、前記固定化層上に特異性生体高分子11を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のDNAやタンパク質等と特異的に結合する特異性生体高分子を多数配列したマイクロアレイチップの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
分子生物学の分野では、DNAやタンパク質などの生体高分子を高密度に固定化したマイクロアレイチップが近年急速に注目を集めている。マイクロアレイチップを用いた実験においては、膨大な種類の試料(サンプル)を固定化した支持体(チップ)を大量に複製し、それぞれのチップ上のサンプルを、調査対照の試料(ターゲット)と反応させる。1回の実験により1チップ上のサンプル間における反応の違いを、また、条件の異なる実験を繰り返すことによって複数チップ間の同じサンプル集合の間における反応の違いを検出することができる。
【0003】
このようなマイクロアレイチップの作成方法としては、第1にAffimetrix社により開発された方法を挙げることができる。この方法は、光照射で選択的に除去される保護基と半導体製造で利用されるフォトリソグラフィー技術を用い、基板上で数十μmの矩形毎に高密度にオリゴヌクレオチドの合成を行なうものである。この方法により得られるマイクロアレイチップは現在のところ世界で唯一規格標準されたものであるが、価格が非常に高く、十分に用いることができるのは一部の研究者に限られてしまうといった問題があった。
【0004】
一方、他のマイクロアレイチップの製造方法としては、Stanford大学のP.Brownらにより開発された手法を挙げることができる。この方法は、上述したAffimetrix社の方法と比較すると非常にシンプルであり、予め調製されたDNAを、表面に化学処理が施された96または384穴のマイクロプレートに分注し、高密度スポットが可能なロボットにてスライドグラス上に高密度でスポットする方法である。この方法によれば、製造コストが低く、多くの研究者のカスタムチップが作成可能なため、多くの研究機関で使用されている。
【0005】
このようなStanford法においては、通常ガラス基材上にDNAを固定するための固定剤を塗布し、この上にターゲットとなるDNAを高密度でスポットすることにより製造される。しかしながら、固定化剤表面が親水性である場合等においては、特にスポットされたDNAの拡散が生じ、隣同士のスポットが接触してしまうといった不具合が生じる可能性があった。
【0006】
そこで、このような問題点を解決するために、本発明者等は光触媒の作用により濡れ性が変化する物質を用いて形成されたパターンを利用し、マイクロアレイチップを製造する方法等を検討してきた。これにより、上述した不具合の発生を抑制することが可能となった。しかしながら、これまでの光触媒の作用によるマイクロアレイチップの製造方法は、製造されるマイクロアレイチップ自体に光触媒が含まれる構成となることから、この内部に含有されている光触媒の作用が、半永久的にマイクロアレイチップに影響する可能性があるという問題点を有する場合もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、内部に光触媒を含有しないことより光触媒による半永久的な影響を受ける心配がなく、かつ固定化剤の種類を問わずDNAを高密度でスポットした場合でも、スポットされたDNAが濡れ広がるといった不具合の無いマイクロアレイチップの製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記特性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、前記特性変化層の特性の違いによるパターンにより、固定化層を形成する固定化層形成工程と、前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、エネルギー照射後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層側基板を取り外すので、マイクロアレイチップ自体には光触媒処理層が含まれることがなく、従って、マイクロアレイチップに光触媒の半永久的な作用が及ぶ心配がない。さらに、光触媒処理層と特性変化層との間隔が、上述した範囲内であるので、効率よく、精度の良好な特性の違いによるパターンを形成することができる。さらに、固定化層はエネルギーのパターン照射により形成された特性変化層の変化のパターンを利用して形成されるので、高精細なパターンとすることができる。従って、固定化層上に特異性生体高分子を固定させることにより高精細なマイクロアレイチップとすることができる。
【0010】
本発明においてはまた、請求項2に記載するように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、上記マイクロアレイチップ用基材および上記光触媒処理層側基板を、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記濡れ性変化層表面に濡れ性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、上記マイクロアレイチップ用基材から上記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、上記濡れ性変化層のパターンに従い、上記濡れ性変化層上に固定化層を形成する固定化層形成工程と、上記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、エネルギー照射後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層側基板を取り外すので、マイクロアレイチップ自体には光触媒処理層が含まれることがなく、従って、マイクロアレイチップに光触媒の半永久的な作用が及ぶ心配がない。さらに、光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔が、上述した範囲内であるので、効率よく、精度の良好な濡れ性の違いによるパターンを形成することができる。また、そのような濡れ性の違いによるパターンを利用して固定化層を形成するので、固定化層が形成されている領域以外は撥水性を示す。従って、固定化層上にスポットされる特異性生体高分子が固定化層の領域を越えて濡れ広がることが無いため、隣同士のスポットが接触してしまうといった不具合が生じることがない。
【0012】
上記請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましく、中でも、請求項4に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。このような濡れ性変化層は、光触媒処理層が接触した状態でのエネルギー照射により、大幅な濡れ性の変化を得ることができるからである。
【0013】
上記請求項3または請求項4に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを材料として濡れ性変化層を形成することにより、濡れ性の差の大きな濡れ性パターンが形成されたマイクロアレイチップとすることができるからである。
【0014】
上記請求項2から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記マイクロアレイチップ用基材が、基材と、上記基材上に形成されている濡れ性変化層とから少なくともなっていることが好ましい。濡れ性変化層が自己支持性を有していない場合などは、基材上に濡れ性変化層を形成することにより強度を保持させることができるからである。
【0015】
上記請求項2に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記マイクロアレイチップ用基材が、自己支持性を有する濡れ性変化層からなっていてもよい。濡れ性変化層が自己支持性を有するものであれば、基材等を用いる必要がなく、安価にマイクロアレイチップを製造することができるからである。
【0016】
本発明においてはまた、請求項8に記載するように、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ上記基材とは液体との接触角が異なる分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、上記マイクロアレイチップ用基材および上記光触媒処理層側基板を、上記光触媒処理層および上記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記分解除去層をパターン状に形成するパターン形成工程と、上記マイクロアレイチップ用基材から上記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、上記分解除去層のパターンに従い、上記分解除去層上または上記基材上に固定化層を形成する固定化層形成工程と、上記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、エネルギー照射後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層側基板を取り外すので、マイクロアレイチップ自体には光触媒処理層が含まれることがなく、従って、光触媒の半永久的な作用がマイクロアレイチップに及ぶ心配がない。さらに、分解除去層と基材との濡れ性が異なることから、分解除去層をパターン状に形成することにより基材上には、濡れ性の違いによるパターンを形成することができ、そのようなパターンを利用して固定化層を形成するので、固定化層が形成されている領域以外は撥水性を示す。従って、固定化層上にスポットされる特異性生体高分子が固定化層の領域を越えて濡れ広がることが無いため、隣同士のスポットが接触してしまうといった不具合が生じることがない。
【0018】
さらに、本発明においては、請求項9に記載するように、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ固定化層として機能する分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、上記マイクロアレイチップ用基材および上記光触媒処理層側基板を、上記光触媒処理層および上記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記分解除去層をパターン状に形成するパターン形成工程と、上記マイクロアレイチップ用基材から上記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、上記分解除去層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、エネルギー照射後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層側基板を取り外すので、マイクロアレイチップ自体には光触媒処理層が含まれることがなく、従って、光触媒の半永久的な作用がマイクロアレイチップに及ぶ心配がない。さらに、本発明における分解除去層は、固定化層としての機能を有することから、分解除去層をパターン状に形成することにより固定化層をもパターン状に形成したこととなり、製造工程を簡略化することができ、効率よくマイクロアレイチップを製造することができる。
【0020】
上記請求項8または請求項9に記載された発明においては、請求項10に記載するように、上記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。これらの材料が、光触媒処理層中の光触媒の作用により分解除去されて、種々の機能を発揮するものだからである。
【0021】
上記請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項11に記載するように、上記光触媒処理層側基板が、基板と、上記基板上にパターン状に形成された光触媒処理層とからなることが好ましい。このように、光触媒処理層をパターン状に形成することにより、フォトマスクを用いることなく濡れ性変化層または分解除去層に特性の異なるパターンを形成することが可能となるからである。また、光触媒処理層に対応する面のみ濡れ性が変化し、または分解除去するものであるので、照射するエネルギーは特に平行なエネルギーに限られるものではなく、また、エネルギーの照射方向も特に限定されるものではないことから、エネルギー源の種類および配置の自由度が大幅に増加するという利点を有するからである。
【0022】
上記請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項12に記載するように、上記光触媒処理層側基板が、基板と、上記基板上に形成された光触媒処理層と、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部とからなり、上記パターン形成工程におけるエネルギー照射が、光触媒処理層側基板から行なわれることが好ましい。このように光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部を有することにより、エネルギー照射に際してフォトマスク等を用いる必要がないことから、フォトマスクと位置合わせ等が不要となり、工程を簡略化することが可能となるからである。
【0023】
上記請求項12に記載された発明においては、請求項13に記載するように、上記光触媒処理層側基板が、上記基板上に光触媒処理層が形成され、上記光触媒処理層上に上記光触媒処理層側遮光部がパターン状に形成されている場合であってもよく、または請求項14に記載するように、上記光触媒処理層側基板が、上記光触媒処理層側遮光部が上記基板上にパターン状に形成され、さらにその上に上記光触媒処理層が形成されている場合であってもよい。
【0024】
光触媒処理層側遮光部が、上記光触媒処理層と特性変化層等とが間隙をもって位置する部分の近傍に配置されることになるので、基板内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。また、光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部を形成した場合は、上記パターン形成工程における光触媒処理層と特性変化層等との配置に際してのスペーサとして用いることができるという利点を有するものである。
【0025】
上記請求項14に記載された発明においては、請求項15に記載するように、前記光触媒処理層側基板が、透明な基板上にパターン状に形成された光触媒処理層側遮光部上にプライマー層を介して光触媒処理層が形成されたものであることが好ましい。高感度で濡れ性変化層や分解除去層のパターニングが進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるからである。
【0026】
上記請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項16に記載するように、上記光触媒処理層側基板において、上記光触媒処理層上に厚みが0.2μm〜10μmの範囲内であるスペーサがパターン状に形成されており、上記スペーサと上記特性変化層、上記濡れ性変化層または上記分解除去層とを接触させてエネルギー照射することが好ましい。このように、光触媒処理層上にパターン状にスペーサを設け、これを特性変化層等と接触させるようにしてエネルギー照射することにより、光触媒処理層と特性変化層等との距離を0.2μm〜10μmの範囲内に容易に保つことが可能となる。また、このスペーサが形成された部分は光触媒処理層がスペーサにより覆われることから、この部分はエネルギー照射されても、例えば特性変化層上に特性の変化が生じることが無い。従って、スペーサが形成されたパターンと同じパターンで特性変化層等に特性の違いによるパターンを形成することが可能となるからである。
【0027】
上記請求項16に記載された発明においては、請求項17に記載するように、上記スペーサが、遮光性の材料で形成された光触媒処理層側遮光部であることが好ましい。スペーサが光触媒処理層側遮光部であることにより、光触媒処理層側遮光部を特性変化層等に密着させた状態でエネルギー照射を行うことにより、より高精細なパターンを形成することが可能となるからである。
【0028】
上記請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項18に記載するように、上記光触媒処理層が、光触媒からなる層であることが好ましい。光触媒処理層が光触媒のみからなる層であれば、特性変化層等の特性を変化させる効率を向上させることが可能であり、効率的にマイクロアレイチップを製造することができるからである。
【0029】
上記請求項18に記載された発明においては、請求項19に記載するように、上記光触媒処理層が、光触媒を真空製膜法により基板上に成膜してなる層であることが好ましい。このように真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、表面の凹凸が少なく均一な膜厚の均質な光触媒処理層とすることが可能であり、特性変化層等への特性の違いによるパターンの形成を均一にかつ高効率で行うことができるからである。
【0030】
上記請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項20に記載するように、上記光触媒処理層が、光触媒とバインダとを有する層であってよい。このようにバインダを用いることにより、比較的容易に光触媒処理層を形成することが可能となるからである。
【0031】
上記請求項1から請求項20までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項21に記載するように、上記光触媒が、上記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、その中でも、請求項22に記載するように、上記光触媒が酸化チタン(TiO)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0032】
上記請求項1から請求項22までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項23に記載するように、上記パターン形成工程で、エネルギーを照射する際に、上記光触媒処理層と、上記特性変化層、上記濡れ性変化層または上記分解除去層との間隔を、0.2μm〜10μmの範囲内とすることが好ましい。光触媒処理層と特性変化層等との間隔が、0.2μm〜10μmの範囲内であるので、短時間のエネルギー照射により特性変化層等に特性の違いによるパターンを形成することができるからである。
【0033】
上記請求項1から請求項23までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項24に記載するように、上記エネルギー照射が、光触媒処理層を加熱しながらなされることが好ましい。光触媒を加熱することにより、光触媒の感度が向上し、特性変化層等でのパターンの形成を効率的に行うことができるからである。
【0034】
上記請求項1から請求項24までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項25に記載するように、上記固定化層が、カチオン性を有する物質で形成されていることが好ましい。通常カチオン性を有する物質は、オリゴヌクレオチド等のアニオン性の生体高分子を静電的に固定化することが可能であるからである。
【0035】
上記請求項1から請求項25までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項26に記載するように、上記特異性生体高分子が、ターゲットとされる核酸と特異的に結合するプローブDNAであることが好ましい。プローブDNAを用い、蛍光標識されたターゲットDNAとのハイブリダイゼーションを利用した検出法が確立されているためである。
【0036】
上記請求項1から請求項26までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項27に記載するように、上記基材上に、上記固定化層が形成される部分を区切るようにマイクロアレイチップ側遮光部が形成されていることが好ましい。マスク無しに後述するマイクロアレイチップの再生法を用いることができるからである。
【0037】
本発明においてはまた、請求項28に記載するように、基材と、上記基材上にパターン状に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去する分解除去層と、上記分解除去層上または上記分解除去層が分解除去され露出している基材上に形成され、生体高分子を固定化するための固定化層と、上記固定化層上に固定化され、ターゲットとなる生体高分子と特異的に結合する特異性生体高分子とを有し、上記分解除去層および上記基材は、液体に対する接触角が異なるものであることを特徴とするマイクロアレイチップを提供する。
【0038】
本発明においては、分解除去層と基材とは濡れ性が異なるため、このような濡れ性の違いを利用して固定化層を形成している。従って、固定化層が形成されている領域以外は、撥水性を示すため、固定化層上にスポットされる特異性生体高分子が、固定化層を超えて濡れ広がることが無く、隣同士のスポットが接触してしまうといった不具合が生じることがない。
【0039】
さらに、本発明においてはまた、請求項29に記載するように、基材と、上記基材上にパターン状に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去し、かつ固定化層として機能する分解除去層と、上記分解除去層上に固定化され、ターゲットとなる生体高分子と特異的に結合する特異性生体高分子とを有することを特徴とするマイクロアレイチップを提供する。
【0040】
本発明によれば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ固定化層として機能する分解除去層を用いているので、分解除去層をパターン状に形成することにより、別に固定化層を設ける必要がない。従って、エネルギー照射のみで固定化層としての機能を有する分解除去層をパターン状に形成することができることから、大幅に製造工程を簡略化でき、コスト的に有利なマイクロアレイチップとすることができる。
【0041】
上記請求項28または請求項29に記載された発明においては、請求項30に記載するように、上記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。
【0042】
このような製法により分解除去層を形成することにより、光触媒の作用により分解可能な比較的強度の高い薄膜を形成することができるからである。また、薄膜の材質を選択することにより、分解除去層が分解除去される際に露出する基材と、良好な濡れ性の差を形成することができ、また、分解除去層を固定化層として機能させる場合にも、そのように機能する材料を選択することにより、固定化層のパターニングを容易に行うことができるからである。
【0043】
上記請求項28から請求項30までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項31に記載するように、上記固定化層が、カチオン性を有する物質で形成されていることが好ましい。通常カチオン性を有する物質は、オリゴヌクレオチド等のアニオン性の生体高分子を静電的に固定化することが可能であるからである。
【0044】
さらに、本発明においてはまた、上記請求項1から請求項27までのいずれかの請求項に記載されたマイクロアレイチップの製造方法により製造されたマイクロアレイチップを使用した後、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を介して、上記特異性生体高分子が付着した部分のみパターン状にエネルギー照射することを特徴とするマイクロアレイチップの再生方法を提供する。
【0045】
本発明においては、固定化層および特異性生体高分子が形成されている領域のみを光触媒を含有する光触媒処理層を介してパターン状にエネルギーを照射することにより、光触媒の作用により固定化剤および特異性生体高分子を除去することが可能であり、再び、固定化層および特異性生体高分子を形成することにより、マイクロアレイチップとして再利用することができるのである。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のマイクロアレイチップおよびその製造方法について説明する。まず、本発明のマイクロアレイの製造方法について詳細に説明する。
【0047】
I.マイクロアレイチップの製造方法
本発明のマイクロアレイチップの製造方法は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記特性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、前記特性変化層の特性の違いによるパターンにより、パターン状に固定化層を形成する固定化層形成工程と、前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするものである。
【0048】
このように、本発明のマイクロアレイチップの製造方法においては、特性変化層をパターニングする際に、光触媒処理層側基板をマイクロアレイチップ用基材に向かい合わせることにより、光触媒処理層中の光触媒の作用が特性変化層に及び、エネルギーを照射した部分の特性が変化するので、特性変化層上に特性の違いによるパターンを形成することができる。さらに、本発明においては、このようなパターニングを行った後、光触媒処理層側基板を取り外してマイクロアレイチップ側基材をマイクロアレイチップとしたものであるので、得られるマイクロアレイチップには光触媒処理層が含まれていない。このためマイクロアレイチップが光触媒の作用による影響を受ける可能性を皆無とすることが可能となる。
【0049】
なお、ここでいう「マイクロアレイチップ用基材」とは、特性変化層に、特性の違いによるパターンが形成されていない状態の基材を示し、このマイクロアレイチップ用基材にエネルギーを照射して特性変化層上に特性変化部位のパターンを形成し、この特性の違いによるパターンにより固定化層を形成し、さらに、固定化層上に特異性生体高分子を固定したものをマイクロアレイチップとする。
【0050】
このような本発明のマイクロアレイチップの製造方法において用いられる特性変化層とは、光触媒の作用により特性が変化する層であればいかなる層であってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどのポリマー材料等を用いることにより、エネルギーが照射された部分が光触媒の作用により、極性基が導入されたり、表面の状態が粗い状態となったりして種々の物質との接着性が向上するようにした層を特性変化層としてもよい。このように特性変化層を接着性が変化する接着性変化層とすることにより、エネルギーのパターン照射により接着性の良好なパターンを形成することが可能となる。このような接着性の良好な部位に固定化層を形成し、さらに、固定化層上に特性生体高分子を固定することにより、容易にマイクロアレイチップを形成することができる。
【0051】
また、本発明においては、このような特性変化層が、乾式法、すなわち真空蒸着法等により形成されたものであってもよく、また湿式法、すなわちスピンコート法やディップコート法等の方法により形成されたものであってもよい。
【0052】
このように、特性変化層は光触媒の作用により変化する種々の特性を有する層であれば特に限定されないのであるが、本発明においては中でも特性変化層が光触媒の作用により濡れ性が変化して濡れ性によるパターンが形成される濡れ性変化層である場合、および特性変化層が光触媒の作用により分解除去され凹凸によるパターンが形成される分解除去層である場合の二つの場合が、本発明の有効性を引き出すものであるので好ましい。
【0053】
そこで、以下、特性変化層として濡れ性変化層または分解除去層を用いた場合における本発明のマイクロアレイチップの製造方法について、それぞれ第1実施態様および第2実施態様として詳細に説明する。
【0054】
1.第1実施態様
第1実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を特性変化層として用い、この濡れ性変化層上に濡れ性の違いによるパターンを形成し、このパターンを利用して固定化層をパターン状に形成するマイクロアレイチップの製造方法である。
【0055】
このような本態様におけるマイクロアレイチップの製造方法は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記濡れ性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記濡れ性変化層表面に濡れ性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、前記濡れ性変化層のパターンに従い、前記濡れ性変化層上に固定化層を形成する固定化層形成工程と、前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするものである。
【0056】
本発明によれば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性変化層表面に、濡れ性の違いによるパターンを形成した後に、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層側基板を取り外すため、得られるマイクロアレイチップの構成に光触媒処理層が含まれることがなく、このためマイクロアレイチップが光触媒の作用による影響を受ける可能性を皆無とすることが可能となる。
【0057】
このような本態様におけるマイクロアレイチップの製造方法を図面を用いて説明する。
【0058】
図1は、このようなマイクロアレイチップの製造方法の一例を示している。この例においては、まず、少なくとも光触媒を有する光触媒処理層2を基板1上に形成し、光触媒処理層側基板3を準備する。さらに、この光触媒処理層側基板3とは別に、基材4を準備し、当該基材4上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層5を形成し、マイクロアレイチップ用基材6を準備する(図1(a)参照)。
【0059】
次いで、光触媒処理層側基板3およびマイクロアレイチップ用基材6を、光触媒処理層2と濡れ性変化層5が向かい合うように配置し、フォトマスク7を介してエネルギーを照射する(図1(b)参照)。このエネルギー照射により、エネルギー照射された部分の濡れ性変化層5は、光触媒処理層2中に含有される光触媒の作用により、液体との接触角が低下する方向に濡れ性が変化し、親水性領域を形成する。逆に、エネルギーの未照射領域は、濡れ性が変化せず、撥水性領域となる。
【0060】
さらに、エネルギー照射後に、マイクロアレイチップ用基材6から光触媒処理層側基板3を取り外す。これにより濡れ性の違いによるパターン、すなわち、親水性領域8および撥水性領域9が形成された濡れ性変化層5を得る(図1(c)参照)。
【0061】
この濡れ性変化層5表面に形成された濡れ性の違いによるパターンを利用して、固定層10を親水性領域8上に形成する(図1(d)参照)。次に、この固定化層10上に特異性生体高分子11を付着させることにより、マイクロアレイチップが製造される(図1(e)参照)。この際、濡れ性変化層5表面は、固定化層10が形成されている領域以外は、撥水性領域9となっていることから、特異性生体高分子11は、固定化層10の領域を超えて濡れ広がることが無い。従って、隣同士の特異性生体高分子が混ざり合うことが防止され、最終的な検出感度を向上させることが可能である等の利点を有している。
【0062】
このような利点を有する本態様のマイクロアレイチップの製造方法について、各工程ごとに詳細に説明する。
【0063】
A.マイクロアレイチップ用基材調整工程
まず、マイクロアレイチップ用基材調整工程について説明する。本工程は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整する工程である。
【0064】
このようなマイクロアレイチップ用基材は、少なくとも濡れ性変化層を有するものであり、濡れ性変化層が自己支持性を有する場合は、濡れ性変化層からなるマイクロアレイチップ用基材としてもよい。また、自己支持性に乏しい濡れ性変化層である場合は、基材上に濡れ性変化層が形成されてなるマイクロアレイチップ用基材であってもよい。
【0065】
なお、本態様でいう自己支持性を有するとは、他の支持材無しで有形な状態で存在し得ることをいうこととする。
【0066】
以下、このようなマイクロアレイチップ用基材について説明する。
【0067】
(マイクロアレイチップ用基材)
(1)濡れ性変化層
まず、マイクロアレイチップを構成する部材として濡れ性変化層について説明する。
【0068】
本態様における濡れ性変化層は、上記光触媒の作用により表面の濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、一般にはエネルギーの照射に伴う光触媒の作用により、その濡れ性変化層表面における液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。
【0069】
このように、エネルギー照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層を用いると、後述するパターン形成工程の際に、光触媒処理層側基板をマイクロアレイチップ用基材と向かい合わせて、エネルギーのパターン照射を行うことにより容易に濡れ性をパターン状に変化させることができるからである。これにより、濡れ性変化層上には液体との接触角の小さい親水性領域および液体との接触角の大きい撥水性領域からなるパターンが形成される。
【0070】
また、ここでいう親水性領域とは、上述したように水との接触角が小さい領域であり、後述する固定化層を形成するための固定化層形成用塗工液等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥水性領域とは、水との接触角が大きい領域であり、後述する固定化層形成用塗工液や特異性生体高分子を含有する溶液等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。なお、本態様においては、その領域が、隣接する領域よりも水との接触角が1度以上小さければ親水性領域ということとし、逆にその領域が隣接する領域よりも水との接触角が1度以上大きければ撥水性領域とすることとする。
【0071】
本態様における濡れ性変化層は、エネルギーが照射されていない部分における水との接触角が、エネルギーが照射された部分における水との接触角より1度以上大きい接触角となる濡れ性変化層であることが好ましく、特に好ましくは5度以上、最も好ましくは10度以上となる濡れ性変化層が用いられる。
【0072】
エネルギーが照射されていない部分における水との接触角と、エネルギーが照射された部分における水との接触角との差が所定の範囲未満である場合は、濡れ性の差を利用して固定化層形成用塗工液をパターン状に塗布することが困難となり、特異性生体高分子をパターン状に固定化することが困難となるからである。
【0073】
このような濡れ性変化層における具体的な水との接触角としては、エネルギーを照射していない部分における水との接触角が30度以上、特に60度以上、中でも90度以上であることが好ましく、このような水との接触角を有する濡れ性変化層が好適に用いられる。これは、エネルギーを照射していない部分は、本態様においては撥水性が要求される部分である。従って、水との接触角が小さい場合は撥水性が十分でなく、後述する固定化層形成用塗工液等が、不必要な部分にまで残存する可能性が生じることから、その上に固定化される特異性生体高分子の形状が乱れ、マイクロアレイチップの検出精度を低下させるおそれがあるからである。
【0074】
なお、ここでいう水との接触角は、水との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後)し、その結果から得たものである。
【0075】
また、本態様において上述したような濡れ性変化層を用いた場合、この濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、光触媒処理層に含有される光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記濡れ性変化層が形成されていてもよい。
【0076】
このような特徴を有するマイクロアレイチップにおいては、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。従って、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親水性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥水性域内に親水性領域のパターンを形成することとなる。
【0077】
従って、このような濡れ性変化層を用いた場合は、光触媒処理層および濡れ性変化層が向かい合うように配置し、エネルギーをパターン照射することにより、撥水性領域内に親水性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親水性領域のみに特異性生体高分子を固定するための固定化層形成用塗工液等を塗布することが容易に可能となり、精度が良好なマイクロアレイチップとすることができる。
【0078】
エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親水性領域におけるフッ素含有量は、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0079】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親水性に大きな違いを生じさせることができる。従って、このような濡れ性変化層に固定化層を形成することにより、フッ素含有量が低下した親水性領域のみ正確に固定化層を形成することが可能となり、精度良くマイクロアレイチップを得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0080】
このような濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0081】
このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層の特性、すなわちエネルギー照射の際に、光触媒処理層中の光触媒の作用により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水性や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0082】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0083】
また、特にフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0084】
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH;および
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
【0085】
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥水性が大きく向上し、例えば機能性素子がカラーフィルタである場合における画素部着色用のインクといった機能性部用組成物の付着を妨げる機能を発現する。
【0086】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0087】
【化1】
Figure 2004020280
【0088】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0089】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
【0090】
本態様における濡れ性変化層には、さらに界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0091】
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0092】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することかできる。
【0093】
本態様において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0094】
本態様において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、接触する光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部の濡れ性を変化させて親水性とし、未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、固定化層形成用塗工液等との受容性(親水性)および反撥性(撥水性)を高めることによって、品質の良好でかつコスト的にも有利なマイクロアレイチップを得ることができる。
【0095】
なお、本発明に用いられる濡れ性変化層は、上述したように光触媒の作用により濡れ性の変化する層であれば特に限定されるものではないが、特に、光触媒を含まない層であることが好ましい。このように濡れ性変化層内に光触媒が含まれなければ、マイクロアレイチップとして用いた場合に、光触媒の半永久的な作用がマイクロアレイチップに及ぶことが無く、長期間に渡り問題なく使用することが可能だからである。
【0096】
また、本態様におけるマイクロアレイチップ用基材は、通常基材上に濡れ性変化層が形成されてなるものであるが、本態様においては、この濡れ性変化層が自己支持性を有する材料で形成されている場合には、基材を含まないものであってもよい。
【0097】
このような自己支持性を有する濡れ性変化層の材料として、具体的には、光触媒処理層をその表面に接触させてエネルギーを照射することにより、その後塗布する固定化層形成用塗工液が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が、少なくとも1°以上、好ましくは5°以上、特に10°以上変化する材料を挙げることができる。
【0098】
また、この濡れ性変化層は、照射されるエネルギーを透過することができる材料で形成されていることが必要である。
【0099】
このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルフロライド、アセタール樹脂、ナイロン、ABS、PTFE、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリ弗化ビニリデン、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン等を挙げることができる。
【0100】
(濡れ性変化層上の親水性領域のパターン)
上記濡れ性変化層上における親水性領域のパターンの配置は、標識に由来する信号を検出する際に、親水性領域の位置(すなわち、その上に形成される固定化層および特異性生体高分子の位置)が確認可能である配置である限り、特に限定されるものではなく、例えば、分析目的に応じて、あるいは、標識に由来する信号を検出するのに用いる分析装置に応じて、適宜決定することができる。
【0101】
このような親水性領域のパターンは、検出が容易である点に鑑みれば整列して配置されていることが好ましい。また、親水性領域の複数部分を、所定の間隔をあけて線状に一列に配置し、さらに、そのような列を相互に平行に複数列配置したパターンであることがより好ましい。このように親水性領域を配置したパターンであれば、特異性生体高分子と結合する高分子が有する標識に由来する信号の検出工程を自動化することが容易である。
【0102】
上記濡れ性変化層上の親水性領域の間隔は、特異性生体高分子と結合する高分子が有する標識標識に由来する信号を検出する際に、隣接する親水性領域の影響を受けない程度に分離している限り、特に限定されるものではなく、例えば、隣接する親水性領域の縁部間の最短距離が、0.01μm〜1cm、好ましくは0.05μm〜5mmの範囲内であることが好ましい。また、濡れ性変化層上の親水性領域の数も、特に限定されるものではなく、基材の大きさにも依存するが、例えば、数個〜数万個(一般には数十〜1乃至2万個)としてもよい。
【0103】
このような濡れ性変化層のパターンの形成方法は、本発明においては、光触媒を含有する光触媒処理層を、濡れ性変化層を向かい合うように配置した状態で、フォトマスクを用いたエネルギーのパターン照射により行うことが可能である。また、後述するように光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部が形成されているような場合は、エネルギーの全面照射を行なうようにしてもよい。
【0104】
(2)基材
次いで、基材について説明する。本態様においては、上述した濡れ性変化層が自己支持性に乏しい場合には、基材上に濡れ性変化層が形成されているマイクロアレイチップ用基材であってもよい。
【0105】
このような基材に用いられる材料としては、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ又は免疫学的アッセイにおいて一般的に用いられている水又は有機溶媒に実質的に不溶性である有機材料又は無機材料、例えば、シリコン、ガラス、磁性金属若しくは非磁性金属、又はプラスチック等を挙げることができる。特に、シリコン、各種プラスチック類(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、又はポリプロピレン等)、石英、又はガラス等を用いることが好ましい。このような基材の形状としては、少なくとも1つの平坦表面を有するものである限り、その形状は特に限定されるものではないが、プレート状又はフィルム状であることが好ましいといえる。
【0106】
B.パターン形成工程
次に、本態様におけるパターン形成工程について説明する。本工程は、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されてなる光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記濡れ性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記濡れ性変化層表面に濡れ性の違いによるパターンを形成する工程である。以下、このような本工程で用いる光触媒処理層側基板およびエネルギー照射について説明する。
【0107】
なお、本工程は、本態様の他に、後述する第2実施態様においても行われる工程である。そこで、以下の本工程の説明については、本発明の両方の態様に対応させるため、上述した濡れ性変化層および後述する分解除去層を総称して特性変化層と記載する場合がある。
【0108】
(1)光触媒処理層側基板
本工程においては、後述するエネルギー照射において、光触媒処理層側基板を用いることを特徴とする。この光触媒処理層側基板は、少なくとも光触媒処理層と基板とを有するものであり、通常は基板上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒処理層が形成されてなるものである。また、この光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部が形成されたものも用いることができる。
【0109】
a.光触媒処理層
本発明に用いられる光触媒処理層は、光触媒処理層中の光触媒が、特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよいし、光触媒単体で成膜されたものであってもよい。また、その表面の濡れ性は特に親水性であっても撥水性であってもよい。
【0110】
本発明において用いられる光触媒処理層は、例えば上記図1(a)等に示すように、基板1上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図8に示すように、基板1上に光触媒処理層2がパターン上に形成されたものであってもよい。
【0111】
このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、後述するエネルギー照射において説明するように、光触媒処理層を特性変化層と所定の間隔をおいて配置させてエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上に特性の変化したパターンを形成することができる。
【0112】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0113】
また、実際に光触媒処理層に面する特性変化層上の部分のみの特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒処理層と特性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0114】
このように光触媒処理層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒処理層近傍に配置される特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0115】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0116】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0117】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0118】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0119】
本発明における光触媒処理層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。
【0120】
光触媒のみからなる光触媒処理層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の場合は、光触媒処理層の形成が容易であるという利点を有する。
【0121】
光触媒のみからなる光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0122】
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基板上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0123】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0124】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒処理層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基板上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒処理層を形成することかできる。
【0125】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0126】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基板上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒処理層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0127】
バインダを用いた場合の光触媒処理層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒処理層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0128】
また、光触媒処理層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤および添加剤を含有させることができる。これら界面活性剤および添加剤については、上述した「(1)濡れ性変化層」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0129】
b.基板
本発明においては、図1に示すように、光触媒処理層側基板3は、少なくとも基板1とこの基板1上に形成された光触媒処理層2とを有するものである。
【0130】
この際、用いられる基板を構成する材料は、後述するエネルギー照射の方向等により適宜選択される。
【0131】
すなわち、例えばマイクロアレイチップ用基材が不透明なものを基材として用いる場合においては、エネルギー照射方向は必然的に光触媒処理層側基板側からとなり、図1(b)に示すように、フォトマスク7を光触媒処理層側基板3側に配置して、エネルギー照射をする必要がある。また、後述するように光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部を予め所定のパターンで形成しておき、この光触媒処理層側遮光部を用いてパターンを形成する場合においても、光触媒処理層側基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合、基板は透明性を有するものであることが必要となる。
【0132】
一方、マイクロアレイチップ用基材が透明である場合であれば、このマイクロアレイチップ用基材側にフォトマスクを配置してエネルギーを照射することも可能である。このような場合、基板には特に透明性は要求されない。
【0133】
また本発明に用いられる基板は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、後述するエネルギーの照射方法により適宜選択されるものである。
【0134】
このように、本発明における光触媒処理層側基板に用いられる基板は特にその材料を限定されるものではないが、本発明においては、この光触媒処理層側基板は、繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒処理層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。
【0135】
具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
【0136】
なお、基板表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基板上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0137】
c.光触媒処理層側遮光部
本発明に用いられる光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。従って、光触媒処理層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0138】
このような光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板は、光触媒処理層側遮光部の形成位置により、下記の二つの実施態様とすることができる。
【0139】
一つが、例えば図9に示すように、基板1上に光触媒処理層側遮光部31を形成し、この光触媒処理層側遮光部31上に光触媒処理層2を形成して、光触媒処理層側基板3とする実施態様である。もう一つは、例えば図10に示すように、基板1上に光触媒処理層2を形成し、その上に光触媒処理層側遮光部31を形成して光触媒処理層側基板3とする実施態様である。
【0140】
いずれの実施態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層側遮光部が、上記光触媒処理層と特性変化層とが間隙をもって位置する部分の近傍に配置されることになるので、基板内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0141】
さらに、上記光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部を形成する実施態様においては、光触媒処理層と特性変化層とを所定の間隙をおいて配置する際に、この光触媒処理層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒処理層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0142】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒処理層と特性変化層とを接触させた状態で配置する際に、上記光触媒処理層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒処理層側基板からエネルギーを照射することにより、特性変化層上にパターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0143】
このような光触媒処理層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒処理層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0144】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0145】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製光触媒処理層側遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製光触媒処理層側遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0146】
なお、上記説明においては、光触媒処理層側遮光部の形成位置として、基板と光触媒処理層との間、および光触媒処理層表面の二つの場合について説明したが、その他、基板の光触媒処理層が形成されていない側の表面に光触媒処理層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられる。
【0147】
d.プライマー層
本発明において、上述したように基板上に光触媒処理層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒処理層を形成して光触媒処理層側基板とする場合においては、上記光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することが好ましい。
【0148】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒処理層側遮光部および光触媒処理層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒処理層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。従って、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0149】
なお、本発明においてプライマー層は、光触媒処理層側遮光部のみならず光触媒処理層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒処理層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0150】
図11はこのようなプライマー層を形成した光触媒処理層側基板の一例を示すものである。光触媒処理層側遮光部31が形成された基板1の光触媒処理層側遮光部31が形成されている側の表面にプライマー層32が形成されており、このプライマー層32の表面に光触媒処理層2が形成されている。
【0151】
上記基板上に光触媒処理層側遮光部がパターン状に形成された構成は、一般的なフォトマスクの構成である。従って、このプライマー層は、光触媒処理層がプライマー層を介してフォトマスク上に形成されたものであるといえる。
【0152】
本発明におけるプライマー層は、光触媒処理層とフォトマスクとが物理的に接触しないように配置された構造であれば特に限定されるものではない。すなわち、フォトマスクの光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層とが接触しないようにプライマー層が形成されていればよいのである。
【0153】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0154】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0155】
(2)エネルギー照射
本発明においては、光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップ用基材とを、光触媒処理層および特性変化層が向かい合うように、かつ200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射するパターン形成工程が行われることを特徴とする。なお、200μm以下の間隙とは、光触媒処理層および特性変化層が接触している状態も含むものとする。
【0156】
このように光触媒処理層と特性変化層表面を所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、特性の変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくないのである。逆に、光触媒処理層および特性変化層との間隔を狭くしすぎると、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性の変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0157】
本発明において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、従って特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。
【0158】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積のマイクロアレイチップ用基材に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップ用基材との間に設けることは極めて困難である。したがって、マイクロアレイチップ用基材が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化のムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0159】
このように比較的大面積のマイクロアレイチップ用基材にエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップ用基材との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップ用基材とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0160】
本発明においては、このような間隙をおいた配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0161】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述したパターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定のパターンを形成することが可能となる。
【0162】
本発明においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、上記光触媒処理層側基板の欄で説明したように、光触媒処理層側基板の光触媒処理層表面に形成することが好ましい。なお、上記光触媒処理層側基板における説明においては、光触媒処理層側遮光部として説明したが、本発明においては、このようなスペーサは特性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように表面を保護する作用を有すればよいものであることから、特に照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有さない材料で形成されたものであってもよい。
【0163】
次に、上述したような接触状態を維持した状態で、接触する部分へのエネルギー照射が行われる。通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒処理層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0164】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0165】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介する等のパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0166】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層表面が光触媒処理層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0167】
この際、光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させことが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0168】
本発明におけるエネルギーの照射方向は、光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部が形成されているか否か、光触媒処理層側基板もしくはマイクロアレイチップ用基材が透明であるか否かにより決定される。
【0169】
すなわち、光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部が形成されている場合は、光触媒処理層側基板側からエネルギーを照射する必要があり、かつこの場合は光触媒処理層側基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合、光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部が形成され、かつこの光触媒処理層側遮光部を上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いた場合においては、照射方向は光触媒処理層側基板側からでもマイクロアレイチップ用基材側からであってもよい。
【0170】
また、光触媒処理層がパターン状に形成されている場合における照射方向は、上述したように、光触媒処理層と特性変化層とが接触する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
【0171】
同様に、上述したスペーサを用いる場合も、接触する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
【0172】
フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合は、フォトマスクが配置された側の基板または基材、すなわち光触媒処理層側基板もしくはマイクロアレイチップ用基材のいずれかが透明である必要がある。
【0173】
上述したようなエネルギー照射が終了すると、光触媒処理層側基板が特性変化層との接触位置から離され、これにより例えば、図1(c)に示すように濡れ性が変化した親水性領域8および撥水性領域9からなるパターンが濡れ性変化層5上に形成される。一方、後述する第2実施態様における分解除去層の場合は、図2(c)に示すように、パターン状に形成された分解除去層21を得る。
【0174】
C.取り外し工程
本態様においては、エネルギー照射が行われた後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層基板が取り外す。これにより表面に親水性領域および撥水性領域からなるパターンが形成された濡れ性変化層を得る。
【0175】
D.固定化層形成工程
次に、本態様における固定化層形成工程について説明する。本工程は、親水性領域および撥水性領域からなる濡れ性変化層のパターンに従い、親水性領域上に固定化層を形成する工程である。
【0176】
以下、本工程によりパターン状に形成される固定化層について説明する。
【0177】
(固定化層)
本態様においては、上述した濡れ性変化層上にパターン状に形成された親水性領域上に、後述する特異性生体高分子を固定化するための固定化層が形成される。
【0178】
この固定化層に用いられる固定化剤としては、特異性生体高分子の固定化手段に応じて種々のものを用いることができる。
【0179】
このような固定化手段としては、当業者において周知の結合方法を使用することができ、例えば、静電結合による固定化方法、共有結合による固定化方法等を使用することができる。
【0180】
上記静電結合による固定化手段の場合は、特異性生体高分子が有する電荷と反対の電荷を有する物質を固定化剤として溶解した溶液を固定化層形成用塗工液として調製し、これを上記親水性領域がパターン状に形成された濡れ性変化層上に塗布することにより固定化層を形成する。
【0181】
例えば、特異性生体高分子がオリゴヌクレオチドの場合は、オリゴヌクレオチドが陰イオン(アニオン)性を有するものであるので、陽イオン(カチオン)性を有する物質を固定化剤とした塗工液が用いられ、これを塗布して乾燥することにより固定化層が形成される。
【0182】
この際、用いられる陽イオン性を有する固定化剤としては、ポリL‐リシン、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)等を挙げることができ、中でもポリL‐リシンが好ましい。
【0183】
一方、共有結合(化学結合)による固定化法としては、官能基(例えば、カルボキシル基、アミノ基、又は水酸基)を有する化合物を固定化剤として固定化剤形成用塗料に用いて固定化層を形成し、これに特異性生体高分子を結合させる方法を挙げることができる。このような固定化剤としては、官能基としてカルボキシル基又は第一級アミノ基をもつ化合物を挙げることができる。
【0184】
具体的には、アミノ基を含むシランカップリング剤を、濡れ性変化層上にパターン状に形成された親水性領域に付着させる。これは、上記シランカップリング剤を含む溶液を用い、ディップコーティング法、転写法、スピンコーティング法等により全面に塗布し、親水性領域のみにシランカップリング剤を付着させる方法、インクジェット、ディスペンサ等を用いて親水性領域のみを狙って塗布する方法を挙げることができる。コーティングされたアミノ基を含むシランカップリング剤は、親水性領域に濡れ広がり、撥水性領域に残留することはない。コーティング後、必要に応じて加熱することにより、親水性領域と固定化剤とを結合させることも可能である。そして、このようにして形成した固定化層上に特異性生体高分子を結合させることにより、マイクロアレイチップを形成することができる。
【0185】
上記固定化剤であるシランカップリング剤のアミノ基と、末端をアミノ基で修飾した生体高分子、具体的にはオリゴヌクレオチド等の末端アミノ基とを共有結合させることにより強固に膜に固定化することができる。
【0186】
この際、用いられるアミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0187】
また、固定化層と特異性生体高分子との共有結合による別の固定化法としては、例えば、生体高分子がオリゴヌクレオチドの場合、その5’末端を上記官能基に共有結合で結合させる方法が知られている。具体的には、まず、オリゴヌクレオチドの5’末端とマレイミド化合物とを反応させ、オリゴヌクレオチドの5’末端にマレイミド基を導入する。好適なマレイミド化合物としては、スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート等を挙げることができる。上記反応とは別に、アミノ基を官能基として有する固定化剤とスクシンイミジル−S−アセチルチオアセテートとを反応させた後に、ヒドロキシラミンを用いて脱アセチル化を行なうことにより、上記固定化剤にSH基を付与する。こうして付与した固定化剤上のSH基と、5’末端にマレイミド基を導入して調製した上記オリゴヌクレオチドの5’末端に導入したマレイミド基とを反応させることにより、オリゴヌクレオチドと固定化剤とを結合させることができ、特異性生体高分子を固定化層に固定することができるのである。
【0188】
その他、上述した方法の他にも、多くの固定化方法、例えば、ビオチン−アビジン系を用いる方法も使用することができる。
【0189】
本態様に用いられる固定化層は、後述するように、その上に特異性生体高分子を含む液体を付着させた際に、この液体が固定化層より広がらないことが好ましい。従って、固定化層の表面の濡れ性が、周囲の濡れ性変化層の領域(撥水性領域)より、水との接触角で1度以上、好ましくは5度以上小さくなるような固定化剤が選択されて用いられることが好ましい。
【0190】
E.特異性生体高分子固定工程
最後に、本態様における特異性生体高分子固定工程について説明する。本工程は、上記固定化層形成工程によりパターン状に形成された固定化層上に、特異性生体高分子を付着させる工程である。
【0191】
以下、本工程において形成される特異性生体高分子について説明する。
【0192】
(特異性生体高分子)
本態様のマイクロアレイチップは、上記固定化層上に特異性生体高分子が固定化されて配置される。このような特異性生体高分子としては、所定の生体高分子と特異的に結合することができる生体高分子であれば特に限定されるものではない。
【0193】
このような特異的に結合する場合としては、例えば、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)とそれに相補的な核酸との組み合わせ、抗原と抗体(又は抗体フラグメント)との組み合わせ、受容体とそのリガンド(例えば、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、又はレクチン)との組み合わせ、酵素とそのリガンド(例えば、酵素の基質アナログ、補酵素、調節因子、又は阻害剤)との組み合わせ、酵素アナログとその酵素アナログの元となる酵素の基質との組み合わせ、又はレクチンと糖との組み合わせ等を挙げることができる。なお、「酵素アナログ」とは、元の酵素に対する基質との特異的な親和性は高いものの、触媒活性は示さないものを意味する。また、上記の各組み合わせにおける各化合物は、それぞれ、いずれか一方が「特異性生体高分子」となり、他方が、検出される物質となることができる。例えば、「抗原と抗体との組み合わせ」では、抗原が「検出される物質」となる場合には、抗体が「特異性生体高分子」となることができ、逆に、抗体が「検出される物質」となる場合には、抗原が「特異性生体高分子」となることができる。
【0194】
例えば、本態様のマイクロアレイチップを、核酸ハイブリダイゼーションアッセイに適用する場合には、上記特異性生体高分子として、検出される物質である核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)と相補的に結合することのできるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを用いることができる。本明細書においては、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」には、2’−デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びペプチド核酸(PNA)が含まれる。なお、PNAとは、DNAのホスホジエステル結合をペプチド結合に変換した人工核酸である。上記不溶性粒子に結合されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの鎖長は、分析目的に応じて適宜選択することができ、例えば、捕捉しようとするDNA、RNA、又はPNAの相補的配列の鎖長に基づいて決定することができる。
【0195】
上記特異性生体高分子として用いるオリゴヌクレオチドの合成は、自動合成装置を用いて一般的に行なうことができる。また、必要に応じて、自動合成装置を用いて、末端アミノ基又は他の基が修飾されたオリゴヌクレオチドを製造することもできる。あるいは、自動合成装置を用いて未修飾オリゴヌクレオチドを予め合成しておき、必要に応じて、上記の未修飾オリゴヌクレオチドを修飾することもできる。オリゴヌクレオチドを修飾する方法は周知であり、例えば、アミン類やフルオレセイン等を付加することができる。このように修飾されたオリゴヌクレオチドは、未修飾のオリゴヌクレオチドと比べて、固定化層に対する親和性が大きい。また、特異性生体高分子として用いるポリヌクレオチド(例えば、cDNA)の合成は、通常の遺伝子工学的手法、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて行なうことができる。
【0196】
また、本態様のマイクロアレイチップを免疫学的アッセイに適用する場合には、上記特異性生体高分子として、検出される物質と特異的に結合する抗原(ハプテンを含む)又は抗体を用いることができる。この場合に、上記検出される物質としては、被検試料中に一般的に含まれている成分で、しかも、免疫学的に検出することのできる物質あれば、特に制限されない。一例を挙げれば、各種タンパク質、多糖類、脂質、菌体、又は各種環境物質等を挙げることができる。より詳細には、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、又はIgA)、感染症関連マーカー(例えば、HBs抗原、HBs抗体、HIV−1抗体、HIV−2抗体、HTLV−1抗体、又はトレポネーマ抗体)、腫瘍関連抗原(例えば、AFP、CRP、又はCEA)、凝固線溶マーカー(例えば、プラスミノーゲン、アンチトロンビン−III、D−ダイマー、TAT、又はPPI)、抗てんかん薬(例えば、ホルモン)、各種薬剤(例えば、ジゴキシン)、菌体(例えば、O−157又はサルモネラ)若しくはそれらの菌体内毒素若しくは菌体外毒素、微生物類、酵素類、残留農薬、又は環境ホルモン等を挙げることができる。上記特異性生体高分子として用いる抗体としては、周知の方法で得られるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれをも使用することができる。さらに、上記抗体は、タンパク質[例えば、酵素(例えば、ペプシン又はパパイン)]処理したもの[例えば、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、又はFv)]を用いることもできる。
【0197】
2.第2実施態様
次に本発明の第2実施態様におけるマイクロアレイチップの製造方法について説明する。
【0198】
第2実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去する分解除去層を用いて、固定化層のパターニングを行う態様である。さらに、本態様においては、分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して固定化層を形成する態様と、分解除去層自体を固定化層として用いる態様とに分けることができる。以下、各々の態様に分けて説明する。
【0199】
A.分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して固定化層を形成する場合
このようなマイクロアレイチップの製造方法は、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ前記基材とは液体との接触角が異なる分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記分解除去層をパターン状に形成するパターン形成工程と、前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、前記分解除去層のパターンに従い、前記分解除去層上または前記基材上に固定化層を形成する固定化層形成工程と、前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程とを少なくとも有することを特徴とするものである。
【0200】
このような本態様におけるマイクロアレイチップの製造方法について図面を用いて説明する。
【0201】
図2は、本態様のマイクロアレイチップの製造方法の一例を示している。まず、少なくとも光触媒からなる光触媒処理層2が基板1上に成膜されている光触媒処理層側基板3を準備する。さらに、当該光触媒処理層側基板3とは別に、基材4を準備し、当該基材4上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ基材4とは異なる濡れ性を有する分解除去層21を成膜し、マイクロアレイチップ用基材6を準備する(図2(a)参照)。
【0202】
さらに、光触媒処理層側基板3およびマイクロアレイチップ用基材6を、光触媒処理層2および分解除去層21が向かい合うように、かつ所定の間隙を有して配置した後、フォトマスク7を介してエネルギーをパターン状に照射する(図2(b)参照)。
【0203】
次いで、マイクロアレイチップ用基材6から光触媒処理層側基板3を取り外すと、基材4上にパターン状に形成された分解除去層21を有するマイクロアレイチップ用基材6を得る(図2(c)参照)。
【0204】
また、分解除去層21と基材4とは、濡れ性が異なることから、パターン状に分解除去層21を形成することにより、基材4上には濡れ性の違いによるパターンが形成されたことになる。この濡れ性の違いを利用し、分解除去層21が分解除去され露出している基材4上に固定化層10を形成する(図2(d)参照)。なお、図2では、分解除去層21が分解除去され露出している基材4上に固定化層10を形成する場合を示しているが、このような場合に限らず、例えば、分解除去層よりも基材のほうが液体に対する接触角が大きい場合には、分解除去層上に固定化層が形成される。
【0205】
最後に、固定化層10上に、特異性生体高分子11を付着させることにより、マイクロアレイチップを製造することができる(図2(e)参照)。
【0206】
このような本態様によれば、特にエネルギー照射後の後処理が必要無く、さらに、エネルギー照射後、マイクロアレイチップから光触媒処理層側基板を取り外すので、マイクロアレイチップ自体には光触媒処理層が含まれることがない。従って、マイクロアレイチップに光触媒の半永久的な作用が及ぶことを皆無とするいことができるのである。
【0207】
以下、このような場合の本態様のマイクロアレイチップの製造方法について各工程ごとに詳細に説明する。
【0208】
(1)マイクロアレイチップ用基材調整工程
本態様におけるマイクロアレイチップ用基材調整工程とは、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ前記基材とは液体との接触角が異なる分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整する工程である。
【0209】
このような本工程において形成されるマイクロアレイチップ用基材について説明する。
【0210】
(マイクロアレイチップ用基材)
a.分解除去層
まず、マイクロアレイチップ用基材を構成する分解除去層について説明する。本態様における分解除去層は、エネルギー照射の際に光触媒処理層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去層が分解除去される層であり、かつ、分解除去層が分解除去された際に露出する基材と異なる濡れ性を示す層である。
【0211】
このような分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0212】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0213】
また本態様は、パターン状に形成された分解除去層を用い、かつ分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して、固定化層をパターニングする態様であることから、分解除去層と基材との液体に対する接触角が異なるように構成されている。
【0214】
このような分解除去層が有する濡れ性としては、固定化層を分解除去層が分解除去され露出している基材上に形成する場合には、基材の液体に対する接触角よりも、分解除去層の液体に対する接触角を大きくする。
【0215】
このような場合、塗布される固定化層形成用塗工液が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する分解除去層の接触角が、基材のそれよりも、1°以上、特に5°以上、中でも10°以上大きいことが好ましい。
【0216】
このような場合、分解除去層表面に要求される撥水性としては、塗布される固定化層形成用塗工液が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が、30°以上、特に40°以上、中でも50°以上となるものであることが好ましい。
【0217】
このように、分解除去層が上記範囲内の撥水性を有し、基材と分解除去層が上記範囲内の濡れ性の差を有していれば、固定化層形成用塗工液を塗布した際に、分解除去層上に付着することがなく、基材上に固定化層を精度良くパターン状に形成することができるからである。
【0218】
一方、固定化層を分解除去層上に形成する場合には、基材の液体に対する接触角よりも、分解除去層の液体に対する接触角を小さくする。これにより、固定化層を形成する固定化層形成用塗工液が、分解除去層が分解除去され露出している基材上に付着することが少なく、分解除去層上に良好に付着させることができるからである。
【0219】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0220】
また、本態様における分解除去層の膜厚としては、後述するパターン形成工程において、照射されるエネルギーに伴う光触媒の作用により分解除去することが可能な膜厚であれば特に限定されない。具体的には、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0221】
このような分解除去層に用いることができる材料としては、上述した分解除去層の特性、すなわちエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される材料であり、かつ好ましくは、上記範囲内の液体との接触角を有する材料である。
【0222】
上記分解除去層の成膜方法としては、特に限定されるものではないが、上述したような材料を選択し、適切な溶剤に希釈させ塗工液としたものをスピンコーティング等の一般的な塗布法を用いて成膜する方法を挙げることができる。このような薄膜の形成方法は、容易でかつコスト的に有利な方法であるといえる。一方、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等の成膜方法により形成することも可能である。これらの方法は、緻密で欠陥の少ない薄膜の形成を可能とするため好ましい方法であるといえる。
【0223】
ここで、本態様に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0224】
▲1▼ 自己組織化単分子膜
自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayer)の公式な定義の存在を発明者らは知らないが、一般的に自己組織化膜として認識されているものの解説文としては、例えばAbraham Ulmanによる総説”Formation and Structure of Self−Assembled Monolayers”, Chemical Review, 96, 1533−1554 (1996)が優れている。本総説を参考にすれば、自己組織化単分子膜とは、適当な分子が適当な基材表面に吸着・結合(自己組織化)した結果生じた単分子層のことと言える。自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基材表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基材表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本発明は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0225】
▲2▼ ラングミュア−ブロジェット膜
本態様に用いられるおけるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir−BlodgettFilm)は、基材上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基材に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644−647 (2001)に詳しく述べられている。
【0226】
▲3▼ 交互吸着膜
交互吸着膜(Layer−by−Layer Self−Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基材上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説”Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly” Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430−442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0227】
b.基材
次に、本態様の基材について説明する。本態様においては、上述した分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して、固定化層をパターン状に形成することから、基材上に固定化層を形成する場合には、上述した分解除去層の液体に対する接触角よりも、小さい接触角を呈する基材を用いる。一方、上述した分解除去層上に固定化層を形成する場合には、上述した分解除去層の呈する液体に対する接触角よりも、大きい接触角を呈する基材を用いる。
【0228】
(2)パターン形成工程
本態様におけるパターン形成工程とは、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記分解除去層をパターン状に形成する工程である。
【0229】
このような本工程については、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0230】
(3)取り外し工程
本態様においては、エネルギー照射が行われた後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層基板を取り外す。これにより、基材上にパターン状に形成された分解除去層を有する基材を得る。
【0231】
(4)固定化層形成工程
次に固定化層形成工程を行う。本態様における固定化層形成工程とは、パターン状に形成された分解除去層を有する基材上に、固定化層形成用塗工液を塗布し、分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して、分解除去層上、または、分解除去層が分解除去され露出している基材上に固定化層をパターン状に形成する工程である。
【0232】
本態様においては、上述したように分解除去層の液体に対する接触角が基材のそれよりも小さい場合には、分解除去層上に固定化層が形成される。逆に、分解除去層の液体に対する接触角が基材のそれよりも大きい場合には、上述したパターン形成工程において分解除去層が分解除去され露出している基材上に固定化層が形成される。
【0233】
その他、本工程で形成される固定化層に関することは、上述した第1実施態様における「D.固定化層形成工程」の中に記載したことと同様なので、ここでの説明は省略する。
【0234】
(5)特異性生体高分子固定工程
本態様における特異性生体高分子固定工程とは、上述した固定化層形成工程により形成された固定化層上に、特異性生体高分子を固定させる工程である。
【0235】
このような本工程においても、上述した第1実施態様における「E.特異性生体高分子固定工程」と同様なのでここでの説明は省略する。
【0236】
B.分解除去層を固定化層として用いる場合
次に、固定化層として機能する分解除去層を用いた場合の本態様のマイクロアレイチップの製造方法について説明する。
【0237】
このような場合の本態様におけるマイクロアレイチップの製造方法は、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ固定化層として機能する分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、固定化層としての機能を有する前記分解除去層をパターン状に形成するパターン形成工程と、前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程とを少なくとも有することを特徴とするものである。
【0238】
このような場合の本態様について図面を用いて説明する。
【0239】
図3は、固定化層としての機能を有する分解除去層を用いてマイクロアレイチップを製造する製造方法の一例を示している。まず、まず、少なくとも光触媒からなる光触媒処理層2が基板1上に成膜されている光触媒処理層側基板3を準備する。さらに、当該光触媒処理層側基板3とは別に、基材4を準備し、当該基材4上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ固定化層として機能する分解除去層21を成膜し、マイクロアレイチップ用基材6を準備する(図3(a)参照)。
【0240】
さらに、光触媒処理層側基板3およびマイクロアレイチップ用基材6を、光触媒処理層2および分解除去層21を向かい合わせ、かつ所定の間隙を有するように配置した後、フォトマスク7を介してエネルギーをパターン状に照射する(図3(b)参照)。
【0241】
次いで、マイクロアレイチップ用基材6から光触媒処理層側基板3を取り外すと、パターン状に形成された分解除去層21を有する基材4を得る(図3(c)参照)。本態様においては、固定化層としての機能を有する分解除去層を用いているため、このようにパターン状に形成された分解除去層を固定化層として用いることができる。
【0242】
そして、この固定化層としての機能を有する分解除去層21上に、特異性生体高分子11を付着させることにより(図3(d)参照)、マイクロアレイチップを製造することができる。
【0243】
この場合の本態様によれば、固定化層としての機能を有する分解除去層を用いているので、分解除去層をパターン状に形成することにより固定化層をもパターン状に形成したこととなる。従って、固定化層のパターニングに要する手間が大幅に簡略化されることから、製造効率を向上させることができる。また、本態様においても、分解除去層へエネルギーを照射した後は、光触媒処理層側基板をマイクロアレイチップ用基材から取り外すため、マイクロアレイチップには光触媒処理層が含まれない。従って、本態様のマイクロアレイチップは、光触媒の作用による影響を皆無とすることができるのである。
【0244】
このような場合における本態様に用いる分解除去層について説明する。なお、マイクロアレイチップ用基材調整工程、パターン形成工程、取り外し工程、特異性生体高分子形成工程に関しては、上述した第2実施態様における「A.分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して固定化層を形成する場合」の中に記載したことと同様なのでここでの説明は省略する。
【0245】
(分解除去層)
この場合における分解除去層を形成する材料としては、上述した分解除去層の特性、すなわちエネルギー照射の際に、分解除去層と接触または所定の間隙を有して配置される光触媒処理層に含有される光触媒の作用により分解除去される材料であり、特異性生体高分子を固定させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、上述した第1実施態様における「D.固定化層形成工程」に記載した固定化層と同様の材料を用いることができる。
【0246】
上記分解除去層の成膜方法としては、上述したように、このような材料を、希釈し、スピンコーティング等の方法により塗布することにより薄膜を形成するといったような一般的な形成方法の他、上述した機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等の成膜方法を用いて形成することにより、緻密で欠陥の少ない薄膜とすることができる。なお、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜については、上述したことと同様なので、ここでの説明は省略する。
【0247】
本態様においては、このような分解除去層を、光触媒処理層と向かい合わせ、所定の間隙を有するように配置した後、エネルギー照射することにより、パターン状に形成する。これによりパターン状の固定化層を得る。そして、この固定化層としての機能を有する分解除去層上に特異性生体高分子を付着させ、固定させることにより、マイクロアレイチップを製造することができる。
【0248】
II.マイクロアレイチップ
次に、本発明のマイクロアレイチップについて説明する。
【0249】
本発明のマイクロアレイチップは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去する分解除去層を用いたことを特徴とする。さらに、本発明のマイクロアレイチップは、このような分解除去層と基材との濡れ性の差を利用して固定化層を形成した場合と、分解除去層自体を固定化層として用いた場合とに分けることができる。以下、両方の場合を第3実施態様および第4実施態様とし、各態様について説明する。
【0250】
1.第3実施態様
第3実施態様のマイクロアレイチップは、基材と異なる濡れ性を示し、さらに、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層を利用して製造されたものである。
【0251】
このような第3実施態様のマイクロアレイチップは、基材と、前記基材上にパターン状に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去する分解除去層と、前記分解除去層上または前記分解除去層が分解除去され露出している基材上に形成され、生体高分子を固定化するための固定化層と、前記固定化層上に固定化され、ターゲットとなる生体高分子と特異的に結合する特異性生体高分子とを有し、前記分解除去層および前記基は、液体に対する接触角が異なることを特徴とするものである。
【0252】
このような本態様のマイクロアレイチップについて図面を用いて説明する。
【0253】
図4は、このような本態様におけるマイクロアレイチップの一例を示している。まず、基材4上には分解除去層21がパターン状に形成されている。ここで、本態様においては、分解除去層と基材との濡れ性が異なるため、基材上に分解除去層がパターン状に形成されていることにより、濡れ性の違いによるパターンが形成されていることとなる。この濡れ性の違いによるパターンを利用して固定化層10が分解除去層が分解除去され露出している基材4上に形成されている。なお、図4には、基材上に固定化層が形成されている場合を示したが、基材と分解除去層との濡れ性の関係から、分解除去層上に形成されている場合であってもよい。さらに、固定化層10上には特異性生体高分子11が固定されている。
【0254】
このような本実施態様におけるマイクロアレイチップにおいては、固定化層がパターン状に形成され、その上に特異性生体高分子が配置されている。さらに、固定化層は、分解除去層と基材との濡れ性の差を利用してパターン状に形成されていることから、固定化層が形成されていない領域は、撥水性の領域となっている。従って、例えば、インクジェット方式等で、固定化層上に特異性生態高分子が配置された場合に、特性生体高分子が固定化層の領域を越えて濡れ広がることが無く、特異性生体高分子の形状を揃えることが可能であり、最終的な検出感度を向上させることができる利点を有している。
【0255】
なお、本態様における、基材、分解除去層、固定化層、特異性生体高分子等は上述した「I.マイクロアレイチップの製造方法」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0256】
2.第4実施態様
次に、第4実施態様について説明する。第4実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ固定化層として機能する分解除去層を用いて形成されたマイクロアレイチップである。
【0257】
このような本態様におけるマイクロアレイチップは、基材と、前記基材上にパターン状に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去し、固定化層として機能する分解除去層と、前記分解除去層上に固定化され、ターゲットとなる生体高分子と特異的に結合する特異性生体高分子とを有することを特徴とするものである。
【0258】
さらに、本態様のマイクロアレイチップについて図面を用いて説明する。
【0259】
図5は、本態様のマイクロアレイチップの一例を示している。まず、基材4と、この基材4上には、パターン状に分解除去層21が形成されている。本態様においては、この分解除去層5が固定化層としての機能を有していることから、この分解除去層5上に、特異性生体高分子11を付着させ、固定させることにより、マイクロアレイチップとすることができる。
【0260】
本態様によれば、エネルギー照射のみで容易にパターニングすることが可能な分解除去層を用い、かつ分解除去層を固定化層として用いることにより、固定化層のパターニングに要する手間を大幅に省略することができ、製造工程を簡略化することができるのである。また、材料面においても無駄を少なくすることができるため、コスト的にも有利である。
【0261】
なお、本態様における、基材、分解除去層、特異性生体高分子等は上述した「I.マイクロアレイチップの製造方法」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0262】
III.再生方法
本発明においては、上述したマイクロアレイチップを用いて検出等に使用した後、上述した光触媒処理層側基板を介して、上記固定化層および特異性生体高分子が付着した部分のみパターン状にエネルギー照射を行なうことにより再生することができる。
【0263】
本発明のマイクロアレイチップは、このように再生可能であることから、複数回にわたって使用することが可能であり、最終的なコストを低減させることができるという利点を有するものである。
【0264】
図6は、本発明のマイクロアレイチップの再生方法の一例を説明するためのものである。図6(a)は、生体高分子の検出等の使用が終わった後のマイクロアレイチップを示すものである。本発明のマイクロアレイチップの再生方法においては、図6(b)に示すように、このような使用済みのマイクロアレイチップに対して、その固定化層10および特異性生体高分子11が配置されている部分のみ、エネルギーが照射されるように、紫外光等のエネルギーをフォトマスク7を介し、かつ、光触媒処理層側基板3を、光触媒処理層2と特異性生体高分子11とが向かい合うように配置し、エネルギーを照射する。これにより、固定化層10および特異性生体高分子11は、光触媒処理層2に含有されている光触媒の作用により分解される。一方、エネルギーが照射されない部分はそのまま撥水性領域として残存する。この場合の、光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップとの間隙およびエネルギー照射方法等は、上述した第1実施態様における「B.パターン形成工程」の中に記載したものと同様である。また、必要であれば洗浄等を行うことにより、図6(c)に示すように、濡れ性変化層5上にパターン状に親水性領域8が形成された基材4を得る。
【0265】
このような基材に対して、上述した図1(d)および(e)に示す工程を行なうことにより、マイクロチップアレイとして再度利用することが可能となる。
【0266】
図7は、本発明のマイクロチップアレイの再生方法の他の例を示すものである。このマイクロチップアレイには、基材4と濡れ性変化層5との間にマイクロアレイチップ側遮光部33が形成されており、このマイクロアレイチップ側遮光部33は固定化層が形成される部分を区切る位置に形成されている(図7(a)参照)。このようなマイクロアレイチップを再生する場合は、図7(b)に示すように、光触媒処理層側基板3を、光触媒処理層2と特異性生体高分子11とが向かい合うように配置し、基材4の濡れ性変化層5が形成されていない面側からエネルギーを全面照射することにより、マイクロアレイチップ側遮光部33が形成されていない部分、すなわち固定化層10および特異性生体高分子11が付着している部分のみエネルギーが照射されることになり、これらは光触媒処理層2に含有されている光触媒の作用により除去され、図7(c)に示すように濡れ性変化層5にパターン状に親水性領域8が形成された基材4を得る。この際の、光触媒処理層側基板の配置の仕方、エネルギー照射に関することは、上述した第1実施態様における「B.パターン形成方法」の中に記載したことと同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0267】
また、本態様におけるマイクロアレイチップ側遮光部とは、エネルギー照射の際にエネルギーの透過を妨げる役割を担う部材であり、上述した光触媒処理層側遮光層と同様のものを用いることが可能である。従って、マイクロアレイチップ側遮光部に関することは、上述した光触媒処理層側遮光部と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0268】
この場合も、上述した例と同様に、この基材に対して、上述した図1(d)および(e)に示す工程を行なうことにより、マイクロチップアレイとして再度利用することが可能となる。
【0269】
このような再生方法として、図6および図7には、濡れ性変化層を用いて形成されたマイクロアレイチップの場合について示したが、分解除去層を用いて形成した場合のマイクロアレイチップの場合にも同様の再生方法により、再生させることができる。
【0270】
なお、上記マイクロアレイチップの再生方法における、基材、濡れ性変化層、光触媒処理層側基板、固定化層、特異性生体高分子等は上述した「I.マイクロアレイチップの製造方法」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0271】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0272】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
[実施例1]
1.光触媒処理層側基板の形成
トリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)5gと0.5規定塩酸を2.5gを混合し、8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより10倍に希釈しプライマー層用組成物とした。
【0273】
上記プライマー層用組成物をフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明なプライマー層(厚み0.2μm)を形成した。
【0274】
次に、イソプロピルアルコール30gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと光触媒無機コーティング剤であるST−K03(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒処理層用組成物とした。
【0275】
上記光触媒処理層用組成物をプライマー層が形成されたフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒処理層(厚み0.15μm)を形成した。
【0276】
2.マイクロアレイチップ用基材の調整
イソプロピルアルコール30gとフルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製)0.4gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと0.5規定塩酸2.5gを混合し8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより100倍に希釈し濡れ性変化層用組成物とした。
【0277】
上記濡れ性変化層用組成物をガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な濡れ性変化層(厚み0.1μm)を形成した。
【0278】
3.露光による親水性領域の形成の確認
光触媒処理層側基板と濡れ性変化層とを100μmのギャップを設けて対向させて、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cmの照度で60秒間露光し、濡れ性変化層上の固定化層が形成される領域を親水性領域とした。
【0279】
このとき、未露光部からなる撥液性領域及び親水性領域と表面張力40mN/mの濡れ指数標準液(純正化学株式会社製)との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)した結果、それぞれ、70度と7度であった。
【0280】
4.固定化層の形成
上記基板をポリL−リシンの3%水溶液に浸漬し引き上げることにより、親水性領域のみに固定化層を形成した。
【0281】
5.マイクロアレイチップの作製
上記固定化層上に各種DNA溶液をインクジェット装置にて吐出し、固定させることによりマイクロアレイチップを作製した。
【0282】
6.再生方法
1の光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップとをアライメントをとり100μmのギャップを設けて対向させて、光触媒処理層側基板から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cmの照度で300秒間露光し、再生した。
[実施例2]
1.光触媒処理層側基板の形成
トリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)5gと0.5規定塩酸を2.5gを混合し、8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより10倍に希釈しプライマー層用組成物とした。
【0283】
上記プライマー層用組成物をフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明なプライマー層(厚み0.2μm)を形成した。
【0284】
次に、イソプロピルアルコール30gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと光触媒無機コーティング剤であるST−K03(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒処理層用組成物とした。
【0285】
上記光触媒処理層用組成物をプライマー層が形成されたフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒処理層(厚み0.15μm)を形成した。
【0286】
2.固定化層の形成
ガラス基板をポリL−リシンの3%水溶液に浸漬し引き上げることにより、固定化層を形成した。
【0287】
3.露光による固定化層のパターニング
光触媒処理層側基板と固定化層とを100μmのギャップを設けて対向させて、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cmの照度で180秒間露光し、固定化層をパターニングした。
【0288】
4.マイクロアレイチップの作製
上記固定化層上に各種DNA溶液をインクジェット装置にて吐出し、固定させることによりマイクロアレイチップを作製した。
【0289】
6.再生方法
光触媒処理層側基板とマイクロアレイチップとを100μmのギャップを設けて対向させて、光触媒処理層側基板から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cmの照度で300秒間露光し、再生した。
【0290】
【発明の効果】
本発明によれば、エネルギー照射後、マイクロアレイチップ用基材から光触媒処理層側基板を取り外すので、マイクロアレイチップ自体には光触媒処理層が含まれることがなく、従って、マイクロアレイチップに光触媒の半永久的な作用が及ぶ心配がない。さらに、光触媒処理層と特性変化層との間隔が、上述した範囲内であるので、効率よく、精度の良好な特性の違いによるパターンを形成することができる。さらに、固定化層はエネルギーのパターン照射により形成された特性変化層の変化のパターンを利用して形成されるので、高精細なパターンとすることができる。従って、固定化層上に特異性生体高分子を固定させることにより高精細なマイクロアレイチップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマイクロアレイチップの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のマイクロアレイチップの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明のマイクロアレイチップの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図4】本発明のマイクロアレイチップの一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のマイクロアレイチップの他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明のマイクロアレイチップの再生方法の一例を説明するための工程図である。
【図7】本発明のマイクロアレイチップの再生方法の他の例を説明するための工程図である。
【図8】本発明の光触媒処理層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基板
2 … 光触媒処理層
3 … 光触媒処理層側基板
4 … 基材
5 … 濡れ性変化層
6 … マイクロアレイチップ用基材
7 … フォトマスク
8 … 親水性領域
9 … 撥水性領域
10 … 固定化層
11 … 特異性生体高分子

Claims (32)

  1. エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、
    基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記特性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、
    前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、
    前記特性変化層の特性の違いによるパターンにより、パターン状に固定化層を形成する固定化層形成工程と、
    前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程と、
    を少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法。
  2. エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を有するマイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、
    基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記濡れ性変化層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記濡れ性変化層表面に濡れ性の違いによるパターンを形成するパターン形成工程と、
    前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、
    前記濡れ性変化層のパターンに従い、前記濡れ性変化層上に固定化層を形成する固定化層形成工程と、
    前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程と、
    を少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法。
  3. 前記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  4. 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項3に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  5. 前記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  6. 前記マイクロアレイチップ用基材が、基材と、前記基材上に形成されている濡れ性変化層とから少なくともなることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  7. 前記マイクロアレイチップ用基材が、自己支持性を有する濡れ性変化層からなることを特徴とする請求項2に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  8. 基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ前記基材とは液体との接触角が異なる分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、
    基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記分解除去層をパターン状に形成するパターン形成工程と、
    前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、
    前記分解除去層のパターンに従い、前記分解除去層上または前記基材上に固定化層を形成する固定化層形成工程と、
    前記固定化層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程と、
    を少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法。
  9. 基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され、かつ固定化層として機能する分解除去層を形成し、マイクロアレイチップ用基材を調整するマイクロアレイチップ用基材調整工程と、
    基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を用い、前記マイクロアレイチップ用基材および前記光触媒処理層側基板を、前記光触媒処理層および前記分解除去層が向かい合うように、かつ、200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、固定化層としての機能を有する前記分解除去層をパターン状に形成するパターン形成工程と、
    前記マイクロアレイチップ用基材から前記光触媒処理層側基板を取り外す取り外し工程と、
    前記分解除去層上に特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定工程と、
    を少なくとも有することを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法。
  10. 前記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  11. 前記光触媒処理層側基板が、基板と、前記基板上にパターン状に形成された光触媒処理層とからなることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  12. 前記光触媒処理層側基板が、基板と、前記基板上に形成された光触媒処理層と、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部とからなり、前記パターン形成工程におけるエネルギー照射が、光触媒処理層側基板から行なわれることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  13. 前記光触媒処理層側基板が、前記基板上に光触媒処理層が形成され、前記光触媒処理層上に前記光触媒処理層側遮光部がパターン状に形成されていることを特徴とする請求項12に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  14. 前記光触媒処理層側基板が、前記光触媒処理層側遮光部が前記基板上にパターン状に形成され、さらにその上に前記光触媒処理層が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  15. 前記光触媒処理層側基板が、透明な基板上にパターン状に形成された光触媒処理層側遮光部上にプライマー層を介して光触媒処理層が形成されたものであることを特徴とする請求項14に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  16. 前記光触媒処理層側基板において、前記光触媒処理層上に厚みが0.2μm〜10μmの範囲内であるスペーサがパターン状に形成されており、前記スペーサと前記特性変化層、前記濡れ性変化層または分解除去層とを接触させてエネルギー照射することを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  17. 前記スペーサが、遮光性の材料で形成された光触媒処理層側遮光部であることを特徴とする請求項16記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  18. 前記光触媒処理層が、光触媒からなる層であることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  19. 前記光触媒処理層が、光触媒を真空製膜法により基板上に成膜してなる層であることを特徴とする請求項18に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  20. 前記光触媒処理層が、光触媒とバインダとを有する層であることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  21. 前記光触媒が、前記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項20までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  22. 前記光触媒が酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項21に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  23. 前記パターン形成工程で、エネルギーを照射する際に、前記光触媒処理層と、前記特性変化層、前記濡れ性変化層または前記分解除去層との間隔を、0.2μm〜10μmの範囲内とすることを特徴とする請求項1から請求項22までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  24. 前記エネルギー照射が、光触媒処理層を加熱しながらなされることを特徴とする請求項1から請求項23までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  25. 前記固定化層が、カチオン性を有する物質で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項24までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  26. 前記特異性生体高分子が、ターゲットとされる核酸と特異的に結合するプローブDNAであることを特徴とする請求項1から請求項25までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  27. 前記基材上に、前記固定化層が形成される部分を区切るようにマイクロアレイチップ側遮光部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項26までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップの製造方法。
  28. 基材と、前記基材上にパターン状に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去する分解除去層と、前記分解除去層上または前記分解除去層が分解除去され露出している基材上に形成され、生体高分子を固定化するための固定化層と、前記固定化層上に固定化され、ターゲットとなる生体高分子と特異的に結合する特異性生体高分子とを有し、前記分解除去層および前記基材は、液体に対する接触角が異なるものであることを特徴とするマイクロアレイチップ。
  29. 基材と、前記基材上にパターン状に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去し、かつ固定化層として機能する分解除去層と、前記分解除去層上に固定化され、ターゲットとなる生体高分子と特異的に結合する特異性生体高分子とを有することを特徴とするマイクロアレイチップ。
  30. 前記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることを特徴とする請求項28または請求項29に記載のマイクロアレイチップ。
  31. 前記固定化層が、カチオン性を有する物質で形成されていることを特徴とする請求項28から請求項30までのいずれかの請求項に記載のマイクロアレイチップ。
  32. 前記請求項1から請求項27までのいずれかの請求項に記載されたマイクロアレイチップの製造方法により製造されたマイクロアレイチップを使用した後、基板上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層側基板を介して、前記特異性生体高分子が付着した部分のみパターン状にエネルギー照射することを特徴とするマイクロアレイチップの再生方法。
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