JP2004019065A - カーペット用捲縮糸およびカーペット - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、家庭用カーペットとして、さらなるソフトな風合いと優れたバルキー性および優れた耐久性を有するカーペットを提供することができる捲縮糸ならびに該捲縮糸を用いてなるカーペットを提供せんとするものである。
【解決手段】本発明のカーペット用捲縮糸は、繊維の単糸断面形状が扁平であるマルチフイラメントからなるカーペット用捲縮糸であって、該マルチフイラメントの扁平度が4〜8であって、かつ、該マルチフイラメントの断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で、70〜140°の角度に折れ曲がっていることを特徴とするものである。
また、本発明のカーペットは、かかるカーペット用捲縮糸を用いて構成されていることを特徴とするものである。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のカーペット用捲縮糸は、繊維の単糸断面形状が扁平であるマルチフイラメントからなるカーペット用捲縮糸であって、該マルチフイラメントの扁平度が4〜8であって、かつ、該マルチフイラメントの断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で、70〜140°の角度に折れ曲がっていることを特徴とするものである。
また、本発明のカーペットは、かかるカーペット用捲縮糸を用いて構成されていることを特徴とするものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーペット用捲縮糸およびタフテッドカーペットに関するものであり、さらに詳しくは家庭用カーペットに好適な柔軟でソフトな風合いと優れたバルキー性や耐久性を併せ持つカーペットを与え得るカーペット用捲縮糸およびこの捲縮糸をカーペットのフェースヤーンとして用いたタフテッドカーペットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カーペットのフェースヤーンとして合成繊維マルチフィラメント捲縮糸を用いることはポリアミド繊維,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維などを用いて広く行われている。
【0003】
カーペットフェースヤーンとしての糸の断面形状としては防汚性や耐久性が優れた中空断面糸やバルキー性が特に優れたY型断面糸および柔軟でソフトな風合いが得られる扁平断面糸など種々が知られており、それぞれ用途に応じて使い分けられている。
【0004】
その中の家庭用カーペット用途には柔軟でソフトな風合いのカーペットが好まれることから、通常のY型断面糸を使用する場合は単糸繊度を小さくして糸の柔軟性を出したもの用いられる。しかし、このY型断面糸で柔軟でソフトな風合いを得るために単糸繊度を小さくする必要があり、長期間使用した場合の耐久性が劣る欠点を有する。
【0005】
そこで、耐久性を損なわないために単糸繊度をあまり細くしないでも柔軟でソフトな風合い得る手段として、例えば特開昭62−117505号公報には、断面の長軸が50μ以上、長軸と短軸の長さの比が15:1〜3:1の扁平形状であり、かつ実質的に捩れのないパイル糸を用いたカーペットが提案されている。この提案によるカーペットは確かにベロア感、ソフト感が従来品よりも改良されたものではあるが、長軸の長さが50μ以上と単繊維繊度が太くいため、柔らかい風合いには限界があり、直接肌が接触する家庭用のラグカーペットとしては不適当なものであった。
【0006】
また、特開2000−220050号公報にて、単繊維繊度が3.5〜8.0デニール、単繊維の扁平度が3.0〜5.0、捲縮伸長率が5.0〜20%である捲縮糸からなるカーペットが記載されている。つまり、単糸繊度と扁平度を規制した捲縮糸が提案されている。この提案によるカーペットは確かに家庭用カーペットとして好適なソフトな風合いと耐久性が向上できているものの、糸の剛性の不足から捲縮発現力が不足してバルキー性が不十分であり、また製糸性が不安定になるために扁平度が5以上のものを得ることができなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、家庭用カーペットとして、さらなるソフトな風合いと優れたバルキー性および優れた耐久性を有するカーペットを提供することができる捲縮糸ならびに該捲縮糸を用いてなるカーペットを提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のカーペット用捲縮糸は、繊維の単糸断面形状が扁平であるマルチフイラメントからなるカーペット用捲縮糸であって、該マルチフイラメントの扁平度が4〜8であって、かつ、該マルチフイラメントの断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で、70〜140°の角度に折れ曲がっていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明のカーペット用捲縮糸は下記の(1)〜(2)の条件を採用することにより、更に優れた効果を期待することができる。
(1)前記扁平断面の単糸繊度が5〜10デシテックス,総繊度が500〜2000デシテックス,捲縮伸長率が5〜20%の範囲である請求項1記載のカーペット用捲縮糸。
(2)前記捲縮糸がポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1または2記載のカーペット用捲縮糸
また、本発明のカーペットは、かかるカーペット用捲縮糸を用いて構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカーペット用捲縮糸の構成を添付図をもって詳細に説明する。
【0011】
図1は上述の折れ曲がり扁平断面糸のうち最も実用的な一例を示した断面図であり、図2はその単糸断面を得るための口金孔形状の一例を示す概略図である。
【0012】
図1に示す繊維断面のL1およびL2が扁平糸のスリット長で、Wが扁平糸のスリット幅を示し、その扁平度は(L1+L2)/Wで表される。繊維断面の中央部分での折れ曲がり角度(θ)はそれぞれの長辺の中心線R1とR2が交差する内角で表される折れ曲がり扁平断面糸である。
【0013】
かかるカーペット用捲縮糸は、タフテッドカペットのパイルヤーンとして使用されるもので、合成繊維マルチフィラメントで構成され、その単糸断面が扁平で、その扁平度が4〜8であり、該断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で70〜140°の角度(θ)に折れ曲がった形状を有するものである。
【0014】
本発明のカーペット用捲縮糸は その折れ曲り部分が、Y型断面糸のように、対角に支えるヒレがないために小さな圧力で簡単に変形し、またすぐに回復し、同一単糸繊度のY型断面糸では得られない、柔軟でソフトな風合いが得られるという特徴を有するものである。
【0015】
本発明のカーペット用捲縮糸の断面の折れ曲り位置は長辺の一方より長辺の長さに対して40〜60%、好ましくは45〜55%の範囲内にあることが製糸性の面で重要である。この範囲をはずれ左右のバランスが崩れると、溶融紡糸後の冷却において糸揺れよって製糸性を悪化をまねくので好ましくない。
【0016】
また、断面の折れ曲り角度(θ)は70〜140°、好ましくは80〜130°であることが重要である。かかる折れ曲り角度はカーペットの風合いやバルキー性に影響しており、折れ曲り角度、が70°より小さければ捲縮付与特性が向上してバルキー性がアップするが風合が硬いものとなる。一方折れ曲り角度が140°度が大きければ風合いはソフトであるがバルキー性が不足したものとなるので好ましくない。
【0017】
更に本発明の捲縮糸の単糸断面の扁平度は4〜8であることが好ましい。この扁平度が4より小さいと捲縮糸の風合い、バルキー性が悪くなる。一方扁平度が8より大きくなると風合い、バルキー性は良くなるが、紡出時の吐出や冷却が不安定になり、糸揺れが増大し、製糸性が悪化するため好ましくない。つまり単糸断面の扁平度を4〜8にすることにより、風合い、バルキー性に優れた捲縮糸を安定した製糸性で製造することが可能となる。
【0018】
単糸繊度は5〜10デシテックスであるのが好ましい。この範囲にすることにより、糸の剛性が維持されて耐久性に優れた捲縮糸を得ることができる。
【0019】
また、捲縮糸の総繊度は500〜2000デシテックス、好ましくは600〜1500とするものである。この範囲にすることにより、タフト時の単繊維切れやパイル抜けなどの問題が防止し安定したタフトが行える。
また、捲縮伸長率は5〜20%の範囲であることが好ましい。この範囲にすることにより、柔軟でソフトな風合いと通常のY型断面糸と遜色のないバルキー性と耐久性を合わせ持つことが出来る。
【0020】
ただし、捲縮付与された捲縮糸において、伸長率が20%を越える場合であっても、例えば、特公昭60−47949号公報に記載されるごとく、捲縮原糸を別工程にて解舒しながら低張力下で熱処理したり、チーズの状態で熱処理を施して、捲縮率を20%以下に下げることにより、本発明に用いることができるようになる。
【0021】
なお、本発明における捲縮伸長率とは、扁平断面糸を無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥し、次式により算出した値であり、捲縮発現の程度を表す指標である。
【0022】
捲縮伸長率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
ここで、L1、L2とは、L1:試料糸に2mg/dの初荷重をかけ30秒経過した後に試料長50cmにマーキングしたその長さ、L2:同試料に100mg/dの定荷重をかけて30秒経過後に伸びた試料長をそれぞれ意味する。
【0023】
本発明のカーペット用捲縮糸としては、ポリアミド繊維,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維など合成繊維マルチフィラメント捲縮糸を用いることが一般的であるが、捲縮の安定性や耐久性の点からポリアミド繊維が最も好ましい。
【0024】
次に本発明のカーペットについて詳細に記述する。
【0025】
本発明のカーペットは、カーペット用捲縮糸からなるフェースヤーンと、このフェースヤーンをタフトした基布と、この基布の裏に貼りつけたバッキング材とから構成されたカーペットであって、フェースヤーンが、上記カーペット用捲縮糸を含むことを特徴とするものである。
【0026】
そして、本発明のカーペットは、フェースヤーンとしての合成繊維マルチフィラメント捲縮糸中に、上記断面形状の捲縮糸を好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上用いるのが、きわめて柔軟で肌触りが良く、特に家庭用ラグカーペットとして好適なカーペットを提供する上からよい。
【0027】
また、本発明のカーペットには、静電気抑制のために導電性繊維を混繊することや防汚性を高めるために防汚剤を塗布することも好ましい。
【0028】
本発明のカーペット用捲縮糸の代表的な製造方法について説明する。
【0029】
まず、扁平断面を有する捲縮糸は、基本的に公知の溶融紡糸、冷却、給油、延伸、捲縮付与の各工程からなる通常の方法によって製造される。そして、扁平断面糸の糸断面を本発明の変形度と単繊維繊度を有するものにするためには、溶融吐出する際の口金の吐出孔形状と吐出量、引取り速度などの紡糸条件を目的に合わせて調節すればよい。
【0030】
本発明で用いる溶融紡糸装置は、エクストルーダー型紡糸機およびプレッシャー型紡糸機のどちらも使用可能であるが、製品の均一性および製糸工程における収率の点から前者が好ましい。特に原着ポリマーを用いる場合はエクストルーダー型紡糸機が有利である。
【0031】
溶融紡糸された糸条は、冷却、給油の後、必要に応じて延伸、熱固定が施される。延伸に際しては、補助的に延伸点を固定するなどの目的でスチーム処理装置などを併用してもよい。ポリアミドの場合、後の工程で高い捲縮を付与するためには、ある程度の配向と結晶化が必要であるので、通常2倍から4倍の延伸を行うことが好ましい。次いで、それぞれの延伸糸について、別々に捲縮付与装置によって個別に捲縮を付与する。捲縮は通常の加熱流体加工処理により付与すればよく、例えば、ジェットノズルタイプ、ジェットスタッファタイプ、さらにはギヤ方式など各種の捲縮付与方法が採用されうるが、高い捲縮付与とその顕在化を達成するためにはジェットノズル方式が好ましい。なかでも米国特許第3,781,949号明細書に記載の捲縮のノズルなどが好ましく使用される。さらには、捲縮を固定する目的から、特開平5−321058号公報に記載の冷却装置や、さらにはロータリーフィルタを組み合わせてもよい。
【0032】
上記の溶融紡糸、延伸および捲縮付与は、糸条を途中で巻取らずに連続して行ってもよいし、未延伸糸段階あるいは延伸糸段階で一旦巻取ってもよい。また、扁平捲縮糸を製造する場合に、その工程通過性や捲縮特性をコントロールする目的のために、捲縮ノズルに導入する糸条に予め原糸交絡を付与しても差し支えない。得られた扁平断面の単繊維からなるポリアミドマルチフィラメント捲縮糸には、目的に応じて撚りおよび熱処理が施されるが、いずれも公知の方法を採りうる。
【0033】
次に本発明のカーペットは、主として次のいずれかの方法で製造される。すなわち、上記のカーペット用捲縮糸を直接基布にタフトし、染色した後、バッキングする方法、また上記のカーペット用捲縮糸に20〜60t/mの片撚りを施し、基布にタフトし、染色した後、バッキングする方法、および上記カーペット用捲縮糸を2本または3本合糸し、100〜200t/mの下撚と上撚からなる諸撚りを施し、基布にタフトし、染色した後、バッキングする方法。
【0034】
上記した3つの方法は使用される目的によって使い分けされる。例えば柔軟性やバルキー性を重視する場合には、本発明のカーペット用捲縮糸を直接基布にタフトしてカーペットにするのが好ましい。
【0035】
柔軟性とともにややパイルに腰を持たせる用途に使用するカーペットの場合には、本発明のカーペット用捲縮糸に片撚りを施し、タフトしてカーペットとするのが良い。
【0036】
この場合、本発明のカーペット用捲縮糸を単独で片撚りを施しても良く、2本または3本引き揃えて合糸したものを片撚りして使用しても良い。片撚りの撚り数は特に制限がなく、目的とする柔軟性と腰に合わせればよいが、通常20〜60t/m、より好ましくは30〜50t/mの条件が採用される。
【0037】
一方、カーペットによりしっかりした腰が要求される用途や、より高い耐久性が要求される用途においては、本発明のカーペット用捲縮糸を諸撚りして使用するのが良い。これにより、従来にない柔軟なサキソニー調カーペットが得られる。この場合、扁平断面の単繊維からなるカーペット用捲縮糸を常法により2プライもしくは3プライの諸撚りとすればよい。諸撚りの撚り数は特に制限はなく、目的とする柔軟性と腰に合わせればよいが、通常上撚り数、下撚り数とも100〜200t/m、さらには120〜180t/mの条件とするが好ましく採用される。
【0038】
上記片撚り、諸撚りを実施するに際しては、撚りを固定させるために公知の熱処理を組合わせることが可能である。
【0039】
いずれにせよ、目的とするカーペットの風合いや腰、耐久性などに応じて、カーペット用捲縮糸に無撚り、片撚り、諸撚りの手法を適宜に使い分ければよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。上述の説明中、および以下に述べる実施例における各物性値は、具体的には下記の方法で測定した値である。
[硫酸相対粘度]
ポリマ試料を98%硫酸に1重量%の濃度で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
[総繊度]
JIS L 1090に基づいて測定した。
[単繊維繊度]
JIS L 1090に基づいて測定した総繊度を、単繊維数で除して求めた。
[捲縮伸長率]
室温(25〜35℃)、相対湿度50〜75%の雰囲気中に20時間以上放置されていたパッケージから解舒した捲縮扁平糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥し、これを沸騰水処理後捲縮糸の試料とする。この試料糸に2mg/dの初荷重をかけ30秒経過した後に、試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで、同試料に100mg/dの定荷重をかけて30秒経過後に、伸びた試料長(L2)を測定する。次いで、下記式により、捲縮伸長率(%)を求める。
【0041】
捲縮伸長率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
なお、沸騰水処理前に糸条を放置する際の雰囲気条件は、実際のカーペット製造工程において使用される時の捲縮糸状態、つまり吸湿により捲縮特性が平衡状態に達した状態とするためのものであり、平衡状態に達するのに時間がかかり過ぎず、かつ結露を生じないという点から選定したものである。
[扁平断面糸の扁平度]
単繊維断面をスケッチし長方形に近似させ、そのタテとヨコの比から扁平度を算出した。
【0042】
折れ曲がり扁平断面糸の場合、図1に示す形態から、スリット長;L1およびL2とスリット幅Wを測定し、その扁平度は(L1+L2)/Wで算出した。 単繊維5本の測定の平均値とする。
[扁平断面糸の折れ曲り角度]
単繊維の横断面をスケッチし、その2方向に伸びる鰭に中心腺を引いて、その中心線の交差角度を測定した。
[製糸性]
糸切れの回数から相対的に下記のように評価した。
◎…糸切れが発生しない、○…糸切れがほとんど発生しない、△…糸切れがやや発生する、×…糸切れが頻発する。
[カーペットの風合い]
カーペットを静置し、素手による触感によった官能評価で、その柔らかさ、肌触りなどを家庭用ラグという用途を意識して、相対的に下記のように評価した。
◎…きわめて柔らかく、肌触りがきわめてよい○…柔らかく、肌触りがきわめてよい△…やや柔らかさに劣り、肌触りは普通×…柔らかさに劣り、肌触りが悪い。
[カーペットのバルキー性]
カーペットを静置し、素手で押さえた触感によってその充実感および反発性を官能評価して、相対的に下記のように評価した。
◎…きわめて充実感がある、○…充実感がある、△…やや充実感に劣る、×充実感に劣り、肌触りが悪い。
[カーペットの耐久性]
縦×横=0.5m×0.5mのカーペットを作成して、通路の出入り口に敷いて、10日間使用した後、掃除機で汚れを取り除いてパイル表面の乱れおよび捲縮のヘタリの具合を肉眼で判定し、次の基準で評価した。
【0043】
◎・・・・ほとんどヘタリなし、 〇・・・・ヘタリが少ない、 △・・・・ヘタリがやゝ多い、 ×・・・・ヘタリが多い、
[実施例1]
硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融後、スリット幅0.2mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が120°となる折れ曲がり扁平断面用136ホ−ル口金を通して溶融紡糸し、紡糸に連続して冷却し、給油し、延伸し、引き続き巻き取ることなくジェットノズル(JN)を用いて捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、136フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0044】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は8.6デシテックス,断面形状は扁平度5.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で120°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は14.5%であった。
【0045】
上記の捲縮糸をプラスチック製の円筒状の管に巻き取り、90℃で20分間湯浴中で熱処理を行い、低捲縮処理を実施した。このときのプラスチック管への巻き取り張力は約0.032g/dであった。次いで、通常のレベルカットにて、ゲージ、目付が1300g/m2 となるようにステッチを調節してタフトした。その後、常法に従い染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
使用口金のみスリット幅0.2mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が90°となる折れ曲がり扁平断面用136ホ−ルを使用し、実施例1と同様に硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融紡糸した。
【0047】
紡糸に連続して実施例1と同様に冷却し、給油し、延伸し、捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、136フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0048】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は8.6デシテックス,断面形状は扁平度5.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で90°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は15.5%であった。
【0049】
上記の捲縮糸を実施例1と同様に低捲縮処理、タフト、染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に併記する。
【0050】
[実施例3]
使用口金のみスリット幅0.2mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が120°となる折れ曲がり扁平断面用180ホ−ルを使用し、実施例1と同様に硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融紡糸した。
【0051】
紡糸に連続して実施例1と同様に冷却し、給油し、延伸し、捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、180フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0052】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は6.5デシテックス,断面形状は扁平度5.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で120°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は13.0%であった。
【0053】
上記の捲縮糸を実施例1と同様に低捲縮処理、タフト、染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に併記する。
【0054】
[実施例4]
使用口金のみスリット幅0.15mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が120°となる折れ曲がり扁平断面用136ホ−ルを使用し、実施例1と同様に硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融紡糸した。
【0055】
紡糸に連続して実施例1と同様に冷却し、給油し、延伸し、捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、136フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0056】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は8.6デシテックス,断面形状は扁平度7.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で120°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は14.5%であった。
【0057】
上記の捲縮糸を実施例1と同様に低捲縮処理、タフト、染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に併記する。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、実施例1〜4のものは、カーペットの風合いが家庭用のラグとして満足できるレベルであり、かつ、バルキー性や耐久性も良好であった。また扁平断面糸を得るに際しての製糸性も問題のないレベルであった。
【0060】
[比較例1〜6]
実施例1において、折れ曲がり扁平糸の扁平率を3.0とした場合を比較例1、折れ曲がり位置を30%にずらした場合を比較例2、折れ曲がり角度を60°にした場合を比較例3、フィラメント数を変更して単繊維繊度を12.2デシテックスと太くした場合を比較例4、折れ曲がりのない従来の扁平糸を比較例5とし、それぞれ実施例と同様にタフト・染色・バッキングを実施して得られたカーペットについて、「腰」、「風合い」、「製糸性」を評価した結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2から明らかなように、比較例1においては、折れ曲がり扁平糸の扁平度が低いため、カーペットとしての風合いおよびバルキー性にやゝ問題が残る結果となった。
【0063】
また、比較例2は、折れ曲がり位置が中心にないために、溶融紡糸後の冷却風により糸揺れが増大し製糸性が悪い結果となった。
【0064】
また、比較例3は、折れ曲がり角度が小さく、柔軟性に欠け、風合いが劣る結果となった。
【0065】
また、比較例4においては、単糸繊度が太く、糸の剛性が強すぎて風合いが劣る結果となった。
【0066】
一方、比較例5は、折れ曲がりがないために、溶融紡糸後の冷却風による糸揺れが大きく製糸性が劣り、またバルキー性も十分でなく、本発明の特徴が十分に発現しない結果となった。
【0067】
【発明の効果】
本発明のカーペット用捲縮糸は、柔らかな風合いで肌触りが良く、かつ腰が強いと共に耐久性に優れたカーペットを与えることができる。また、本発明のカーペットは、上記カーペット用捲縮糸の特性をそのまま生かしたものであり、特に素肌に接触して使用する家庭用ラグカーペットとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本発明のカーペット用捲縮糸の一例である折れ曲がり扁平断面糸の断面図である。
【図2】この図は、図1の扁平断面糸を得るための口金孔形状の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
L1、L2:扁平糸のスリット長
W:扁平糸のスリット幅
R1、R2:長辺の中心線
θ:折れ曲がり角度
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーペット用捲縮糸およびタフテッドカーペットに関するものであり、さらに詳しくは家庭用カーペットに好適な柔軟でソフトな風合いと優れたバルキー性や耐久性を併せ持つカーペットを与え得るカーペット用捲縮糸およびこの捲縮糸をカーペットのフェースヤーンとして用いたタフテッドカーペットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カーペットのフェースヤーンとして合成繊維マルチフィラメント捲縮糸を用いることはポリアミド繊維,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維などを用いて広く行われている。
【0003】
カーペットフェースヤーンとしての糸の断面形状としては防汚性や耐久性が優れた中空断面糸やバルキー性が特に優れたY型断面糸および柔軟でソフトな風合いが得られる扁平断面糸など種々が知られており、それぞれ用途に応じて使い分けられている。
【0004】
その中の家庭用カーペット用途には柔軟でソフトな風合いのカーペットが好まれることから、通常のY型断面糸を使用する場合は単糸繊度を小さくして糸の柔軟性を出したもの用いられる。しかし、このY型断面糸で柔軟でソフトな風合いを得るために単糸繊度を小さくする必要があり、長期間使用した場合の耐久性が劣る欠点を有する。
【0005】
そこで、耐久性を損なわないために単糸繊度をあまり細くしないでも柔軟でソフトな風合い得る手段として、例えば特開昭62−117505号公報には、断面の長軸が50μ以上、長軸と短軸の長さの比が15:1〜3:1の扁平形状であり、かつ実質的に捩れのないパイル糸を用いたカーペットが提案されている。この提案によるカーペットは確かにベロア感、ソフト感が従来品よりも改良されたものではあるが、長軸の長さが50μ以上と単繊維繊度が太くいため、柔らかい風合いには限界があり、直接肌が接触する家庭用のラグカーペットとしては不適当なものであった。
【0006】
また、特開2000−220050号公報にて、単繊維繊度が3.5〜8.0デニール、単繊維の扁平度が3.0〜5.0、捲縮伸長率が5.0〜20%である捲縮糸からなるカーペットが記載されている。つまり、単糸繊度と扁平度を規制した捲縮糸が提案されている。この提案によるカーペットは確かに家庭用カーペットとして好適なソフトな風合いと耐久性が向上できているものの、糸の剛性の不足から捲縮発現力が不足してバルキー性が不十分であり、また製糸性が不安定になるために扁平度が5以上のものを得ることができなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、家庭用カーペットとして、さらなるソフトな風合いと優れたバルキー性および優れた耐久性を有するカーペットを提供することができる捲縮糸ならびに該捲縮糸を用いてなるカーペットを提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のカーペット用捲縮糸は、繊維の単糸断面形状が扁平であるマルチフイラメントからなるカーペット用捲縮糸であって、該マルチフイラメントの扁平度が4〜8であって、かつ、該マルチフイラメントの断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で、70〜140°の角度に折れ曲がっていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明のカーペット用捲縮糸は下記の(1)〜(2)の条件を採用することにより、更に優れた効果を期待することができる。
(1)前記扁平断面の単糸繊度が5〜10デシテックス,総繊度が500〜2000デシテックス,捲縮伸長率が5〜20%の範囲である請求項1記載のカーペット用捲縮糸。
(2)前記捲縮糸がポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1または2記載のカーペット用捲縮糸
また、本発明のカーペットは、かかるカーペット用捲縮糸を用いて構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカーペット用捲縮糸の構成を添付図をもって詳細に説明する。
【0011】
図1は上述の折れ曲がり扁平断面糸のうち最も実用的な一例を示した断面図であり、図2はその単糸断面を得るための口金孔形状の一例を示す概略図である。
【0012】
図1に示す繊維断面のL1およびL2が扁平糸のスリット長で、Wが扁平糸のスリット幅を示し、その扁平度は(L1+L2)/Wで表される。繊維断面の中央部分での折れ曲がり角度(θ)はそれぞれの長辺の中心線R1とR2が交差する内角で表される折れ曲がり扁平断面糸である。
【0013】
かかるカーペット用捲縮糸は、タフテッドカペットのパイルヤーンとして使用されるもので、合成繊維マルチフィラメントで構成され、その単糸断面が扁平で、その扁平度が4〜8であり、該断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で70〜140°の角度(θ)に折れ曲がった形状を有するものである。
【0014】
本発明のカーペット用捲縮糸は その折れ曲り部分が、Y型断面糸のように、対角に支えるヒレがないために小さな圧力で簡単に変形し、またすぐに回復し、同一単糸繊度のY型断面糸では得られない、柔軟でソフトな風合いが得られるという特徴を有するものである。
【0015】
本発明のカーペット用捲縮糸の断面の折れ曲り位置は長辺の一方より長辺の長さに対して40〜60%、好ましくは45〜55%の範囲内にあることが製糸性の面で重要である。この範囲をはずれ左右のバランスが崩れると、溶融紡糸後の冷却において糸揺れよって製糸性を悪化をまねくので好ましくない。
【0016】
また、断面の折れ曲り角度(θ)は70〜140°、好ましくは80〜130°であることが重要である。かかる折れ曲り角度はカーペットの風合いやバルキー性に影響しており、折れ曲り角度、が70°より小さければ捲縮付与特性が向上してバルキー性がアップするが風合が硬いものとなる。一方折れ曲り角度が140°度が大きければ風合いはソフトであるがバルキー性が不足したものとなるので好ましくない。
【0017】
更に本発明の捲縮糸の単糸断面の扁平度は4〜8であることが好ましい。この扁平度が4より小さいと捲縮糸の風合い、バルキー性が悪くなる。一方扁平度が8より大きくなると風合い、バルキー性は良くなるが、紡出時の吐出や冷却が不安定になり、糸揺れが増大し、製糸性が悪化するため好ましくない。つまり単糸断面の扁平度を4〜8にすることにより、風合い、バルキー性に優れた捲縮糸を安定した製糸性で製造することが可能となる。
【0018】
単糸繊度は5〜10デシテックスであるのが好ましい。この範囲にすることにより、糸の剛性が維持されて耐久性に優れた捲縮糸を得ることができる。
【0019】
また、捲縮糸の総繊度は500〜2000デシテックス、好ましくは600〜1500とするものである。この範囲にすることにより、タフト時の単繊維切れやパイル抜けなどの問題が防止し安定したタフトが行える。
また、捲縮伸長率は5〜20%の範囲であることが好ましい。この範囲にすることにより、柔軟でソフトな風合いと通常のY型断面糸と遜色のないバルキー性と耐久性を合わせ持つことが出来る。
【0020】
ただし、捲縮付与された捲縮糸において、伸長率が20%を越える場合であっても、例えば、特公昭60−47949号公報に記載されるごとく、捲縮原糸を別工程にて解舒しながら低張力下で熱処理したり、チーズの状態で熱処理を施して、捲縮率を20%以下に下げることにより、本発明に用いることができるようになる。
【0021】
なお、本発明における捲縮伸長率とは、扁平断面糸を無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥し、次式により算出した値であり、捲縮発現の程度を表す指標である。
【0022】
捲縮伸長率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
ここで、L1、L2とは、L1:試料糸に2mg/dの初荷重をかけ30秒経過した後に試料長50cmにマーキングしたその長さ、L2:同試料に100mg/dの定荷重をかけて30秒経過後に伸びた試料長をそれぞれ意味する。
【0023】
本発明のカーペット用捲縮糸としては、ポリアミド繊維,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維など合成繊維マルチフィラメント捲縮糸を用いることが一般的であるが、捲縮の安定性や耐久性の点からポリアミド繊維が最も好ましい。
【0024】
次に本発明のカーペットについて詳細に記述する。
【0025】
本発明のカーペットは、カーペット用捲縮糸からなるフェースヤーンと、このフェースヤーンをタフトした基布と、この基布の裏に貼りつけたバッキング材とから構成されたカーペットであって、フェースヤーンが、上記カーペット用捲縮糸を含むことを特徴とするものである。
【0026】
そして、本発明のカーペットは、フェースヤーンとしての合成繊維マルチフィラメント捲縮糸中に、上記断面形状の捲縮糸を好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上用いるのが、きわめて柔軟で肌触りが良く、特に家庭用ラグカーペットとして好適なカーペットを提供する上からよい。
【0027】
また、本発明のカーペットには、静電気抑制のために導電性繊維を混繊することや防汚性を高めるために防汚剤を塗布することも好ましい。
【0028】
本発明のカーペット用捲縮糸の代表的な製造方法について説明する。
【0029】
まず、扁平断面を有する捲縮糸は、基本的に公知の溶融紡糸、冷却、給油、延伸、捲縮付与の各工程からなる通常の方法によって製造される。そして、扁平断面糸の糸断面を本発明の変形度と単繊維繊度を有するものにするためには、溶融吐出する際の口金の吐出孔形状と吐出量、引取り速度などの紡糸条件を目的に合わせて調節すればよい。
【0030】
本発明で用いる溶融紡糸装置は、エクストルーダー型紡糸機およびプレッシャー型紡糸機のどちらも使用可能であるが、製品の均一性および製糸工程における収率の点から前者が好ましい。特に原着ポリマーを用いる場合はエクストルーダー型紡糸機が有利である。
【0031】
溶融紡糸された糸条は、冷却、給油の後、必要に応じて延伸、熱固定が施される。延伸に際しては、補助的に延伸点を固定するなどの目的でスチーム処理装置などを併用してもよい。ポリアミドの場合、後の工程で高い捲縮を付与するためには、ある程度の配向と結晶化が必要であるので、通常2倍から4倍の延伸を行うことが好ましい。次いで、それぞれの延伸糸について、別々に捲縮付与装置によって個別に捲縮を付与する。捲縮は通常の加熱流体加工処理により付与すればよく、例えば、ジェットノズルタイプ、ジェットスタッファタイプ、さらにはギヤ方式など各種の捲縮付与方法が採用されうるが、高い捲縮付与とその顕在化を達成するためにはジェットノズル方式が好ましい。なかでも米国特許第3,781,949号明細書に記載の捲縮のノズルなどが好ましく使用される。さらには、捲縮を固定する目的から、特開平5−321058号公報に記載の冷却装置や、さらにはロータリーフィルタを組み合わせてもよい。
【0032】
上記の溶融紡糸、延伸および捲縮付与は、糸条を途中で巻取らずに連続して行ってもよいし、未延伸糸段階あるいは延伸糸段階で一旦巻取ってもよい。また、扁平捲縮糸を製造する場合に、その工程通過性や捲縮特性をコントロールする目的のために、捲縮ノズルに導入する糸条に予め原糸交絡を付与しても差し支えない。得られた扁平断面の単繊維からなるポリアミドマルチフィラメント捲縮糸には、目的に応じて撚りおよび熱処理が施されるが、いずれも公知の方法を採りうる。
【0033】
次に本発明のカーペットは、主として次のいずれかの方法で製造される。すなわち、上記のカーペット用捲縮糸を直接基布にタフトし、染色した後、バッキングする方法、また上記のカーペット用捲縮糸に20〜60t/mの片撚りを施し、基布にタフトし、染色した後、バッキングする方法、および上記カーペット用捲縮糸を2本または3本合糸し、100〜200t/mの下撚と上撚からなる諸撚りを施し、基布にタフトし、染色した後、バッキングする方法。
【0034】
上記した3つの方法は使用される目的によって使い分けされる。例えば柔軟性やバルキー性を重視する場合には、本発明のカーペット用捲縮糸を直接基布にタフトしてカーペットにするのが好ましい。
【0035】
柔軟性とともにややパイルに腰を持たせる用途に使用するカーペットの場合には、本発明のカーペット用捲縮糸に片撚りを施し、タフトしてカーペットとするのが良い。
【0036】
この場合、本発明のカーペット用捲縮糸を単独で片撚りを施しても良く、2本または3本引き揃えて合糸したものを片撚りして使用しても良い。片撚りの撚り数は特に制限がなく、目的とする柔軟性と腰に合わせればよいが、通常20〜60t/m、より好ましくは30〜50t/mの条件が採用される。
【0037】
一方、カーペットによりしっかりした腰が要求される用途や、より高い耐久性が要求される用途においては、本発明のカーペット用捲縮糸を諸撚りして使用するのが良い。これにより、従来にない柔軟なサキソニー調カーペットが得られる。この場合、扁平断面の単繊維からなるカーペット用捲縮糸を常法により2プライもしくは3プライの諸撚りとすればよい。諸撚りの撚り数は特に制限はなく、目的とする柔軟性と腰に合わせればよいが、通常上撚り数、下撚り数とも100〜200t/m、さらには120〜180t/mの条件とするが好ましく採用される。
【0038】
上記片撚り、諸撚りを実施するに際しては、撚りを固定させるために公知の熱処理を組合わせることが可能である。
【0039】
いずれにせよ、目的とするカーペットの風合いや腰、耐久性などに応じて、カーペット用捲縮糸に無撚り、片撚り、諸撚りの手法を適宜に使い分ければよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。上述の説明中、および以下に述べる実施例における各物性値は、具体的には下記の方法で測定した値である。
[硫酸相対粘度]
ポリマ試料を98%硫酸に1重量%の濃度で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
[総繊度]
JIS L 1090に基づいて測定した。
[単繊維繊度]
JIS L 1090に基づいて測定した総繊度を、単繊維数で除して求めた。
[捲縮伸長率]
室温(25〜35℃)、相対湿度50〜75%の雰囲気中に20時間以上放置されていたパッケージから解舒した捲縮扁平糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥し、これを沸騰水処理後捲縮糸の試料とする。この試料糸に2mg/dの初荷重をかけ30秒経過した後に、試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで、同試料に100mg/dの定荷重をかけて30秒経過後に、伸びた試料長(L2)を測定する。次いで、下記式により、捲縮伸長率(%)を求める。
【0041】
捲縮伸長率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
なお、沸騰水処理前に糸条を放置する際の雰囲気条件は、実際のカーペット製造工程において使用される時の捲縮糸状態、つまり吸湿により捲縮特性が平衡状態に達した状態とするためのものであり、平衡状態に達するのに時間がかかり過ぎず、かつ結露を生じないという点から選定したものである。
[扁平断面糸の扁平度]
単繊維断面をスケッチし長方形に近似させ、そのタテとヨコの比から扁平度を算出した。
【0042】
折れ曲がり扁平断面糸の場合、図1に示す形態から、スリット長;L1およびL2とスリット幅Wを測定し、その扁平度は(L1+L2)/Wで算出した。 単繊維5本の測定の平均値とする。
[扁平断面糸の折れ曲り角度]
単繊維の横断面をスケッチし、その2方向に伸びる鰭に中心腺を引いて、その中心線の交差角度を測定した。
[製糸性]
糸切れの回数から相対的に下記のように評価した。
◎…糸切れが発生しない、○…糸切れがほとんど発生しない、△…糸切れがやや発生する、×…糸切れが頻発する。
[カーペットの風合い]
カーペットを静置し、素手による触感によった官能評価で、その柔らかさ、肌触りなどを家庭用ラグという用途を意識して、相対的に下記のように評価した。
◎…きわめて柔らかく、肌触りがきわめてよい○…柔らかく、肌触りがきわめてよい△…やや柔らかさに劣り、肌触りは普通×…柔らかさに劣り、肌触りが悪い。
[カーペットのバルキー性]
カーペットを静置し、素手で押さえた触感によってその充実感および反発性を官能評価して、相対的に下記のように評価した。
◎…きわめて充実感がある、○…充実感がある、△…やや充実感に劣る、×充実感に劣り、肌触りが悪い。
[カーペットの耐久性]
縦×横=0.5m×0.5mのカーペットを作成して、通路の出入り口に敷いて、10日間使用した後、掃除機で汚れを取り除いてパイル表面の乱れおよび捲縮のヘタリの具合を肉眼で判定し、次の基準で評価した。
【0043】
◎・・・・ほとんどヘタリなし、 〇・・・・ヘタリが少ない、 △・・・・ヘタリがやゝ多い、 ×・・・・ヘタリが多い、
[実施例1]
硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融後、スリット幅0.2mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が120°となる折れ曲がり扁平断面用136ホ−ル口金を通して溶融紡糸し、紡糸に連続して冷却し、給油し、延伸し、引き続き巻き取ることなくジェットノズル(JN)を用いて捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、136フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0044】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は8.6デシテックス,断面形状は扁平度5.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で120°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は14.5%であった。
【0045】
上記の捲縮糸をプラスチック製の円筒状の管に巻き取り、90℃で20分間湯浴中で熱処理を行い、低捲縮処理を実施した。このときのプラスチック管への巻き取り張力は約0.032g/dであった。次いで、通常のレベルカットにて、ゲージ、目付が1300g/m2 となるようにステッチを調節してタフトした。その後、常法に従い染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
使用口金のみスリット幅0.2mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が90°となる折れ曲がり扁平断面用136ホ−ルを使用し、実施例1と同様に硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融紡糸した。
【0047】
紡糸に連続して実施例1と同様に冷却し、給油し、延伸し、捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、136フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0048】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は8.6デシテックス,断面形状は扁平度5.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で90°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は15.5%であった。
【0049】
上記の捲縮糸を実施例1と同様に低捲縮処理、タフト、染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に併記する。
【0050】
[実施例3]
使用口金のみスリット幅0.2mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が120°となる折れ曲がり扁平断面用180ホ−ルを使用し、実施例1と同様に硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融紡糸した。
【0051】
紡糸に連続して実施例1と同様に冷却し、給油し、延伸し、捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、180フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0052】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は6.5デシテックス,断面形状は扁平度5.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で120°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は13.0%であった。
【0053】
上記の捲縮糸を実施例1と同様に低捲縮処理、タフト、染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に併記する。
【0054】
[実施例4]
使用口金のみスリット幅0.15mm,スリット長0.6mmのスリット2個が折れ曲がり角度が120°となる折れ曲がり扁平断面用136ホ−ルを使用し、実施例1と同様に硫酸相対粘度2.8のナイロン6のチップを、エクストルーダータイプの溶融紡糸機で溶融紡糸した。
【0055】
紡糸に連続して実施例1と同様に冷却し、給油し、延伸し、捲縮を付与してから巻取り、総繊度1170デシテックス、136フィラメントのポリアミドマルチフィラメント捲縮糸を得た。
【0056】
このときの製糸性は良好で、この捲縮糸の単繊維繊度は8.6デシテックス,断面形状は扁平度7.0,扁平糸の長辺の一方から50%の位置で120°に折れ曲がった扁平糸が得られており、捲縮伸長率は14.5%であった。
【0057】
上記の捲縮糸を実施例1と同様に低捲縮処理、タフト、染色、バッキングを実施した。このようにして得られたカーペットの「風合い」、「バルキー性」、「耐久性」について評価した結果を表1に併記する。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、実施例1〜4のものは、カーペットの風合いが家庭用のラグとして満足できるレベルであり、かつ、バルキー性や耐久性も良好であった。また扁平断面糸を得るに際しての製糸性も問題のないレベルであった。
【0060】
[比較例1〜6]
実施例1において、折れ曲がり扁平糸の扁平率を3.0とした場合を比較例1、折れ曲がり位置を30%にずらした場合を比較例2、折れ曲がり角度を60°にした場合を比較例3、フィラメント数を変更して単繊維繊度を12.2デシテックスと太くした場合を比較例4、折れ曲がりのない従来の扁平糸を比較例5とし、それぞれ実施例と同様にタフト・染色・バッキングを実施して得られたカーペットについて、「腰」、「風合い」、「製糸性」を評価した結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2から明らかなように、比較例1においては、折れ曲がり扁平糸の扁平度が低いため、カーペットとしての風合いおよびバルキー性にやゝ問題が残る結果となった。
【0063】
また、比較例2は、折れ曲がり位置が中心にないために、溶融紡糸後の冷却風により糸揺れが増大し製糸性が悪い結果となった。
【0064】
また、比較例3は、折れ曲がり角度が小さく、柔軟性に欠け、風合いが劣る結果となった。
【0065】
また、比較例4においては、単糸繊度が太く、糸の剛性が強すぎて風合いが劣る結果となった。
【0066】
一方、比較例5は、折れ曲がりがないために、溶融紡糸後の冷却風による糸揺れが大きく製糸性が劣り、またバルキー性も十分でなく、本発明の特徴が十分に発現しない結果となった。
【0067】
【発明の効果】
本発明のカーペット用捲縮糸は、柔らかな風合いで肌触りが良く、かつ腰が強いと共に耐久性に優れたカーペットを与えることができる。また、本発明のカーペットは、上記カーペット用捲縮糸の特性をそのまま生かしたものであり、特に素肌に接触して使用する家庭用ラグカーペットとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本発明のカーペット用捲縮糸の一例である折れ曲がり扁平断面糸の断面図である。
【図2】この図は、図1の扁平断面糸を得るための口金孔形状の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
L1、L2:扁平糸のスリット長
W:扁平糸のスリット幅
R1、R2:長辺の中心線
θ:折れ曲がり角度
Claims (4)
- 繊維の単糸断面形状が扁平であるマルチフイラメントからなるカーペット用捲縮糸であって、該マルチフイラメントの扁平度が4〜8であって、かつ、該マルチフイラメントの断面の長辺の一方より、該長辺の長さに対して40〜60%の部分で、70〜140°の角度に折れ曲がっていることを特徴とするカーペット用捲縮糸。
- 前記マルチフイラメントが、単糸繊度が5〜10デシテックスであり、総繊度が500〜2000デシテックスであり、かつ、捲縮伸長率が5〜20%の範囲内にあるものであることを特徴とする請求項1記載のカーペット用捲縮糸。
- 前記捲縮糸が、ポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1または2記載のカーペット用捲縮糸。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のカーペット用捲縮糸を用いて構成されていることを特徴とするカーペット。
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2002
- 2002-06-19 JP JP2002178214A patent/JP2004019065A/ja active Pending
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