JP2004018646A - 脂肪酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】食品添加物として問題のない天然系の添加剤を用いて、効率よく液体脂肪酸と固体脂肪酸を製造する方法の提供。
【解決手段】自然分別法において、水酸基価が20以下で融点が35〜70℃である天然系ポリグリセリン脂肪酸エステルを原料脂肪酸類に添加混合し、冷却することにより結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別する脂肪酸の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】自然分別法において、水酸基価が20以下で融点が35〜70℃である天然系ポリグリセリン脂肪酸エステルを原料脂肪酸類に添加混合し、冷却することにより結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別する脂肪酸の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然由来の添加剤を用いて、液体脂肪酸及び固体脂肪酸を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
脂肪酸類は、モノグリセリド、ジグリセリド等の食品の中間原料や、その他各種の工業製品の添加剤、中間原料として広く利用されている。かかる脂肪酸類は、一般に、菜種油、大豆油等の植物油や牛脂等の動物油を高圧法や酵素分解法により加水分解することにより製造されている。
【0003】
ところが、上記のように動植物油を単に加水分解して製造された脂肪酸類は、そのままの脂肪酸組成では産業上の素原料として必ずしも好適なものではない。すなわち、利用の目的によって、高融点の脂肪酸と低融点の脂肪酸に分別することが必要となる。
【0004】
そこで、所望の原料脂肪酸を得るために、脂肪酸組成の調整が必要となる。一般に、脂肪酸類の分別には、溶剤分別法、湿潤剤分別法が採用されているが、これらの方法は分離効率(収率)は高いものの、設備投資、溶剤や水溶液の回収等のランニングコストがかかるという問題を有している。これに対し、溶剤を使用しない自然分別法(無溶剤法)は、安価な分別法であり、問題点とされていた濾過速度の低下等についても、ポリグリセリン脂肪酸エステル等、最適な添加剤を使用することにより解決が図られている(特開平11−106782)。
【0005】
自然分別法に用いられる添加剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルには様々なものがあり、合成系のものも使用されているが、近年の消費者の中には、より天然物に近いものを好む者もあり、そういった消費者に対しては、食品中に含有される成分には、より天然系に近いものを用いることが望ましい。そこで、当該方法で得られる脂肪酸が食品や食品添加物の原料として用いられる場合には、天然系の添加剤を用いた脂肪酸製造法の開発が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
ここでいう、合成系のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリシドール、エピクロルヒドリン等のグリセリン類似化合物から合成されたポリグリセリンから製造されたポリグリセリン脂肪酸エステル、又は、脂肪酸とグリシドールを付加重合反応させて製造されたポリグリセリン脂肪酸エステルをいい、天然系のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、天然物由来のグリセリンを脱水縮合反応して得られるポリグリセリンを原料として製造されたポリグリセリン脂肪酸エステルをいう。
【0007】
本発明者らは、特開平11−106782号公報記載の方法においては、一般的に市販され使用されている天然物由来のポリグリセリン脂肪酸エステルでは、効果を確認することはできなかった。しかし、水酸基価及び融点が特定範囲内にある、天然物由来のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用すれば、液体脂肪酸と固体脂肪酸の製造を効率よく行うことができることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、自然分別法において、水酸基価が20以下で融点が35〜70℃である天然系ポリグリセリン脂肪酸エステルを原料脂肪酸類に添加混合し、冷却することにより結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別する脂肪酸の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明において、「自然分別法」とは、処理対象の脂肪酸類を、分相する量の水を含まず、かつ溶剤を使用せず、必要に応じ撹拌しながら冷却し、析出した固体成分を濾過、遠心分離、沈降分離等することにより固−液分離を行う方法をいう。「水酸基価」とは、基準油脂分析法(ピリジン無水酢酸法、2.3.6.2−1996)により測定した値をいい、「融点」とは、基準油脂分析法(2.2.4.1−1996)により測定した値をいう。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、飽和脂肪酸の低減の対象となる脂肪酸類は、菜種油、大豆油等の植物油や牛脂等の動物油の、水蒸気分解法での加水分解、酵素(リパーゼ)を利用する加水分解等により製造される。本発明の方法は、原料脂肪酸類中の脂肪酸の量が50重量%以上、特に85重量%以上であるような場合により有効であり、部分グリセリドが存在していてもよい。また、この原料脂肪酸類としては、脂肪酸組成中のパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸の比率が、5〜60重量%、特に8〜50重量%のものが好ましい。例えば菜種油、大豆油等の植物油由来の脂肪酸を用いることができる。飽和脂肪酸量が60重量%を超えると、濾過速度の向上効果が小さい。
【0011】
本発明では、添加剤として、天然物由来のグリセリンを縮合して製造され、水酸基価が20以下、融点が35〜70℃であるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、「特定ポリグリセリン脂肪酸エステル」と略称することがある)を使用する。特定ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は、濾過時の空間率を上昇させ、濾過容易な結晶状態を得る点から、18以下、特に15以下であることが好ましく、また融点は、濾過容易な結晶状態を得る点から、40〜65℃、特に40〜60℃であることが好ましい。更に、特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、同じく濾過容易な結晶状態を得る点から、脂肪酸類と混合し冷却した場合に析出する結晶が、球状となり、更に平均粒子径が50μm以上、特に100μm以上となるものが好ましい。これは、原料の脂肪酸の種類により適宜選択する。
【0012】
特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、天然物由来のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により製造することができる。ポリグリセリンの由来となる植物としては、大豆、菜種等、動物としては牛脂、魚油等が挙げられる。グリシドール、エピクロルヒドリン等を重合して得られる合成系のポリグリセリンは、環状ポリグリセリンの含有率が低く、重合度2又は3のものをわずかに含むのみであるのに対し、植物油を分解して得たグリセリンを脱水縮合して得られる天然系のポリグリセリンは、重合度2〜5の範囲の環状グリセリンを大量に(ガスクロマトグラフィーで30〜40%)含むという特徴を有する。ポリグリセリンの平均重合度は、濾過容易な結晶状態を得る点から、4〜30、特に8〜12が好ましい。ポリグリセリンの平均重合度は、水酸基価から次式に従って求めることができる。
【0013】
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
(n:重合度、OHV:水酸基価)
【0014】
例えば、n=4、すなわちテトラグリセリンの場合はOHV=1072に調整し、n=10、すなわちデカグリセリンの場合はOHV=888に調整すればよい(参考文献:「ポリグリセリンエステル」,13ページ,1986年5月2日,阪本薬品工業(株)編集発行)。また、ポリグリセリンと反応させる脂肪酸は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの融点調整の点から、炭素数10〜22、特に炭素数12〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸から構成されることが好ましい。更に、炭素数18で二重結合を1つ有する脂肪酸を含むのが好ましい。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、これらの混合物に水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を添加し、窒素等の不活性ガス気流下、200〜260℃で直接エステル化させる方法、酵素を使用する方法等のいずれの方法によってもよい。
【0015】
上記特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、2種以上を併用してもよく、またその添加量は、原料脂肪酸類に対して0.001〜5重量%、特に0.05〜1重量%程度が好ましい。
【0016】
本発明では、上記の如く、原料脂肪酸類に添加剤として特定ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加混合して、冷却して結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別することにより、効率よく液体脂肪酸と固体脂肪酸を製造することが可能である。特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸類に完全に溶解できるように、30℃以上で混合溶解することが好ましい。この混合溶解の後における冷却時間及び冷却温度は、原料の量、冷却能力などによって異なり、原料脂肪酸類の組成により適宜選択すればよい。例えば、大豆脂肪酸の場合、0℃まで、1〜30時間、好ましくは3〜20時間程度必要である。冷却は、回分式処理でも連続式でもよい。また、結晶分離法としては、濾過方式、遠心分離方式、沈降分離方式等が適用でき、回分式処理でも連続式処理でもよい。
【0017】
【実施例】
以下の実施例において、ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は、基準油脂分析法(ピリジン無水酢酸法、2.3.6.2−1996)により測定した。ポリグリセリン脂肪酸エステル及び分別した脂肪酸の融点(透明融点)は、基準油脂分析法(2.2.4.1−1996)により測定した。
【0018】
実施例1〜2、比較例1〜4
〔大豆脂肪酸の調製〕
大豆油を常法により加水分解し、大豆脂肪酸を調製した。得られた大豆脂肪酸の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにて測定し、表1に示す。なお、得られた大豆脂肪酸の脂肪酸含量は、92%であった。
【0019】
【表1】
【0020】
〔添加剤の調整〕
阪本薬品工業(株)の天然系デカグリセリン(#750)24g、表2の実施例1に示す脂肪酸組成の脂肪酸100g及び水酸化カルシウムを0.12g添加し、235℃、窒素雰囲気下で8時間反応させた。その後、リン酸で中和した後、濾過し、実施例1の添加剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を得た。また、実施例2、比較例1及び3の添加剤についても、上記天然系デカグリセリンと表2に示す脂肪酸組成の脂肪酸を用い、同様の方法で調製した。なお、水酸基価は反応時間を変えて調整した。また、比較例2の添加剤は阪本薬品工業(株)のTHL−3を用いた。
【0021】
〔大豆脂肪酸の分別〕
得られた脂肪酸1kgに表2に示す添加剤4g(比較例4は無添加)を加え、80℃で均一に溶解する。次いで、50rpmで攪拌しつつ3℃/hrで冷却し、−3℃で1時間攪拌保持する。次いで、ナイロン製濾布(濾過面積39.15cm2,NY1260NLK,三菱化工機社製)を用い0.03MPaで加圧濾過して液体部と固体部(結晶部)に分別した。濾液収率、500mLの濾液を得るために必要な濾過時間、液体部の融点、及び液体部と固体部の脂肪酸組成(C16及びC18飽和脂肪酸の比率)を測定した結果を表3に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、食品添加物として望まれる天然由来の添加剤を用いて液体脂肪酸と固体脂肪酸の製造を効率よく行うことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然由来の添加剤を用いて、液体脂肪酸及び固体脂肪酸を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
脂肪酸類は、モノグリセリド、ジグリセリド等の食品の中間原料や、その他各種の工業製品の添加剤、中間原料として広く利用されている。かかる脂肪酸類は、一般に、菜種油、大豆油等の植物油や牛脂等の動物油を高圧法や酵素分解法により加水分解することにより製造されている。
【0003】
ところが、上記のように動植物油を単に加水分解して製造された脂肪酸類は、そのままの脂肪酸組成では産業上の素原料として必ずしも好適なものではない。すなわち、利用の目的によって、高融点の脂肪酸と低融点の脂肪酸に分別することが必要となる。
【0004】
そこで、所望の原料脂肪酸を得るために、脂肪酸組成の調整が必要となる。一般に、脂肪酸類の分別には、溶剤分別法、湿潤剤分別法が採用されているが、これらの方法は分離効率(収率)は高いものの、設備投資、溶剤や水溶液の回収等のランニングコストがかかるという問題を有している。これに対し、溶剤を使用しない自然分別法(無溶剤法)は、安価な分別法であり、問題点とされていた濾過速度の低下等についても、ポリグリセリン脂肪酸エステル等、最適な添加剤を使用することにより解決が図られている(特開平11−106782)。
【0005】
自然分別法に用いられる添加剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルには様々なものがあり、合成系のものも使用されているが、近年の消費者の中には、より天然物に近いものを好む者もあり、そういった消費者に対しては、食品中に含有される成分には、より天然系に近いものを用いることが望ましい。そこで、当該方法で得られる脂肪酸が食品や食品添加物の原料として用いられる場合には、天然系の添加剤を用いた脂肪酸製造法の開発が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
ここでいう、合成系のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリシドール、エピクロルヒドリン等のグリセリン類似化合物から合成されたポリグリセリンから製造されたポリグリセリン脂肪酸エステル、又は、脂肪酸とグリシドールを付加重合反応させて製造されたポリグリセリン脂肪酸エステルをいい、天然系のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、天然物由来のグリセリンを脱水縮合反応して得られるポリグリセリンを原料として製造されたポリグリセリン脂肪酸エステルをいう。
【0007】
本発明者らは、特開平11−106782号公報記載の方法においては、一般的に市販され使用されている天然物由来のポリグリセリン脂肪酸エステルでは、効果を確認することはできなかった。しかし、水酸基価及び融点が特定範囲内にある、天然物由来のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用すれば、液体脂肪酸と固体脂肪酸の製造を効率よく行うことができることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、自然分別法において、水酸基価が20以下で融点が35〜70℃である天然系ポリグリセリン脂肪酸エステルを原料脂肪酸類に添加混合し、冷却することにより結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別する脂肪酸の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明において、「自然分別法」とは、処理対象の脂肪酸類を、分相する量の水を含まず、かつ溶剤を使用せず、必要に応じ撹拌しながら冷却し、析出した固体成分を濾過、遠心分離、沈降分離等することにより固−液分離を行う方法をいう。「水酸基価」とは、基準油脂分析法(ピリジン無水酢酸法、2.3.6.2−1996)により測定した値をいい、「融点」とは、基準油脂分析法(2.2.4.1−1996)により測定した値をいう。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、飽和脂肪酸の低減の対象となる脂肪酸類は、菜種油、大豆油等の植物油や牛脂等の動物油の、水蒸気分解法での加水分解、酵素(リパーゼ)を利用する加水分解等により製造される。本発明の方法は、原料脂肪酸類中の脂肪酸の量が50重量%以上、特に85重量%以上であるような場合により有効であり、部分グリセリドが存在していてもよい。また、この原料脂肪酸類としては、脂肪酸組成中のパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸の比率が、5〜60重量%、特に8〜50重量%のものが好ましい。例えば菜種油、大豆油等の植物油由来の脂肪酸を用いることができる。飽和脂肪酸量が60重量%を超えると、濾過速度の向上効果が小さい。
【0011】
本発明では、添加剤として、天然物由来のグリセリンを縮合して製造され、水酸基価が20以下、融点が35〜70℃であるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、「特定ポリグリセリン脂肪酸エステル」と略称することがある)を使用する。特定ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は、濾過時の空間率を上昇させ、濾過容易な結晶状態を得る点から、18以下、特に15以下であることが好ましく、また融点は、濾過容易な結晶状態を得る点から、40〜65℃、特に40〜60℃であることが好ましい。更に、特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、同じく濾過容易な結晶状態を得る点から、脂肪酸類と混合し冷却した場合に析出する結晶が、球状となり、更に平均粒子径が50μm以上、特に100μm以上となるものが好ましい。これは、原料の脂肪酸の種類により適宜選択する。
【0012】
特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、天然物由来のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により製造することができる。ポリグリセリンの由来となる植物としては、大豆、菜種等、動物としては牛脂、魚油等が挙げられる。グリシドール、エピクロルヒドリン等を重合して得られる合成系のポリグリセリンは、環状ポリグリセリンの含有率が低く、重合度2又は3のものをわずかに含むのみであるのに対し、植物油を分解して得たグリセリンを脱水縮合して得られる天然系のポリグリセリンは、重合度2〜5の範囲の環状グリセリンを大量に(ガスクロマトグラフィーで30〜40%)含むという特徴を有する。ポリグリセリンの平均重合度は、濾過容易な結晶状態を得る点から、4〜30、特に8〜12が好ましい。ポリグリセリンの平均重合度は、水酸基価から次式に従って求めることができる。
【0013】
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
(n:重合度、OHV:水酸基価)
【0014】
例えば、n=4、すなわちテトラグリセリンの場合はOHV=1072に調整し、n=10、すなわちデカグリセリンの場合はOHV=888に調整すればよい(参考文献:「ポリグリセリンエステル」,13ページ,1986年5月2日,阪本薬品工業(株)編集発行)。また、ポリグリセリンと反応させる脂肪酸は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの融点調整の点から、炭素数10〜22、特に炭素数12〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸から構成されることが好ましい。更に、炭素数18で二重結合を1つ有する脂肪酸を含むのが好ましい。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、これらの混合物に水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を添加し、窒素等の不活性ガス気流下、200〜260℃で直接エステル化させる方法、酵素を使用する方法等のいずれの方法によってもよい。
【0015】
上記特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、2種以上を併用してもよく、またその添加量は、原料脂肪酸類に対して0.001〜5重量%、特に0.05〜1重量%程度が好ましい。
【0016】
本発明では、上記の如く、原料脂肪酸類に添加剤として特定ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加混合して、冷却して結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別することにより、効率よく液体脂肪酸と固体脂肪酸を製造することが可能である。特定ポリグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸類に完全に溶解できるように、30℃以上で混合溶解することが好ましい。この混合溶解の後における冷却時間及び冷却温度は、原料の量、冷却能力などによって異なり、原料脂肪酸類の組成により適宜選択すればよい。例えば、大豆脂肪酸の場合、0℃まで、1〜30時間、好ましくは3〜20時間程度必要である。冷却は、回分式処理でも連続式でもよい。また、結晶分離法としては、濾過方式、遠心分離方式、沈降分離方式等が適用でき、回分式処理でも連続式処理でもよい。
【0017】
【実施例】
以下の実施例において、ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は、基準油脂分析法(ピリジン無水酢酸法、2.3.6.2−1996)により測定した。ポリグリセリン脂肪酸エステル及び分別した脂肪酸の融点(透明融点)は、基準油脂分析法(2.2.4.1−1996)により測定した。
【0018】
実施例1〜2、比較例1〜4
〔大豆脂肪酸の調製〕
大豆油を常法により加水分解し、大豆脂肪酸を調製した。得られた大豆脂肪酸の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにて測定し、表1に示す。なお、得られた大豆脂肪酸の脂肪酸含量は、92%であった。
【0019】
【表1】
【0020】
〔添加剤の調整〕
阪本薬品工業(株)の天然系デカグリセリン(#750)24g、表2の実施例1に示す脂肪酸組成の脂肪酸100g及び水酸化カルシウムを0.12g添加し、235℃、窒素雰囲気下で8時間反応させた。その後、リン酸で中和した後、濾過し、実施例1の添加剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を得た。また、実施例2、比較例1及び3の添加剤についても、上記天然系デカグリセリンと表2に示す脂肪酸組成の脂肪酸を用い、同様の方法で調製した。なお、水酸基価は反応時間を変えて調整した。また、比較例2の添加剤は阪本薬品工業(株)のTHL−3を用いた。
【0021】
〔大豆脂肪酸の分別〕
得られた脂肪酸1kgに表2に示す添加剤4g(比較例4は無添加)を加え、80℃で均一に溶解する。次いで、50rpmで攪拌しつつ3℃/hrで冷却し、−3℃で1時間攪拌保持する。次いで、ナイロン製濾布(濾過面積39.15cm2,NY1260NLK,三菱化工機社製)を用い0.03MPaで加圧濾過して液体部と固体部(結晶部)に分別した。濾液収率、500mLの濾液を得るために必要な濾過時間、液体部の融点、及び液体部と固体部の脂肪酸組成(C16及びC18飽和脂肪酸の比率)を測定した結果を表3に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、食品添加物として望まれる天然由来の添加剤を用いて液体脂肪酸と固体脂肪酸の製造を効率よく行うことができる。
Claims (1)
- 自然分別法において、水酸基価が20以下で融点が35〜70℃である天然系ポリグリセリン脂肪酸エステルを原料脂肪酸類に添加混合し、冷却することにより結晶を析出させ、液体部と結晶部とを分別する脂肪酸の製造方法。
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JP2002174404A JP2004018646A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 脂肪酸の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019065194A (ja) * | 2017-10-02 | 2019-04-25 | 花王株式会社 | 脂肪酸類の製造方法 |
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2002
- 2002-06-14 JP JP2002174404A patent/JP2004018646A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019065194A (ja) * | 2017-10-02 | 2019-04-25 | 花王株式会社 | 脂肪酸類の製造方法 |
JP7065581B2 (ja) | 2017-10-02 | 2022-05-12 | 花王株式会社 | 脂肪酸類の製造方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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