JP2004018643A - 木材加工品用コーティング組成物、該コーティング組成物から形成されるコーティング、および該コーティングを表面に有する木材加工品 - Google Patents

木材加工品用コーティング組成物、該コーティング組成物から形成されるコーティング、および該コーティングを表面に有する木材加工品 Download PDF

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Abstract

【課題】木本来の光沢や色を変化させずに、自然循環性および環境適合性に優れた、木材加工品用の美粧および表面保護を目的としたコーティング組成物の提供。
【解決手段】本発明のキトサンの酸性水溶液を含有する木材加工品用コーティング組成物を、建物の外装および内装用資材を包含する住建築用資材、机などの家具類、木のおもちゃ、楽器、およびこれらの構成部品などの木材加工品の表面に適用することで、上記課題を克服し得るコーティングが得られる。本発明はまた、このコーティングを表面に有する、自然循環性および環境適合性に優れた木材加工品も提供する。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材加工品の表面に自然循環性に優れたコーティングを形成し得るコーティング組成物、このコーティング組成物から形成されるコーティング、このコーティングを表面に有する木材加工品に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、国内の人工林において、健全な森林を取り戻すために緊急的な間伐が計画されており、これによって大量の間伐材が産出されることが予想されている。そのため産出される間伐材を有効に処理するための様々な用途が提案されている。この用途の一つに、合板や集成材を含む木材加工品への利用が挙げられる。特に、合板や集成材は、天然の一枚板よりも精密な加工ができ、かつ加工後のそりやひび割れ等の変形が少なく高強度が達成できるという利点を有することから、家具や建築内装材を含む広範な分野に展開されており、これにより、間伐材を有効に処理できるものと考えられる。
【0003】
合板や集成材の表面には、普通、付加価値を高めたり、腐食を防止するために、製造段階でコーティング剤が適用される。コーティング剤としては、うるし、柿しぶ、にかわ等の天然物系のコーティング剤や、ニスやメラミン・尿素樹脂等の合成系コーティング剤が使用されている。しかし、従来から使用されている天然物系のコーティング剤は、優れた自然循環性および環境適合性を有する半面、高価であり、しかもコーティングで被覆された部分と非被覆部との間に色の違いが生じることによって、木の持つ風合いが損ねられる等の欠点を有している。
【0004】
他方、合成系のコーティング剤は、安価に入手できるが、これで被覆された製品は、自然循環性および環境適合性が低く、再使用および廃棄が困難である。更に、近年、合成系コーティング剤を使用した合板や集成材から人体に有害な揮発性物質が発生し、それによりシックハウス症候群やアレルギー症状が引き起こされることも報告されている。
【0005】
したがって、間伐材を有効に利用するためにも、従来のコーティング剤に関する上記問題点を有しない、被覆性、美粧性、自然循環性および環境適合性に優れた木材加工品用コーティング組成物の開発が待たれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記課題が克服された木材加工品用のコーティング組成物、このコーティング組成物から形成されるコーティング、そしてこのコーティングを表面に有する木材加工品を提供することであった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
キチンおよびキトサンは、カニやエビの甲殻、昆虫の外皮、イカや貝などの軟体動物の器官、更には菌類の細胞壁や糸状菌の菌体等に含まれている多糖類である。キチンおよびキトサンは、いずれも下式の繰り返し単位を有する。
【0008】
一般に、下式中のN−アセチルアミノ基の脱アセチル化度が20%以下のもの(すなわち、y/(x+y)比が0.2以下のもの)は、キチンと、そしてこのキチンを加水分解処理して脱アセチル化度60%以上(y/(x+y)比0.6以上)としたものは、キトサンと呼ばれている。一方のキチンは、特殊な有機溶媒や強アルカリ溶液にしか溶解しないが、他方、キトサンは、親水性を示すことが知られている。
【0009】
【化1】
Figure 2004018643
【0010】
上記式から分かるように、キチンおよびキトサンの分子構造は、木材や紙などに含まれるセルロースとよく似ている。そこで、本発明者らは、キトサンがセルロースと良好な親和性を示すと考え、天然起源物質であるキトサンの酸性水溶液を木材加工品の表面に適用したところ、木材加工品の表面を、「木」本来の風合いを損なうことなく十分に被覆し、しかも適用部と非適用部との間に色あいの違いが生じない、優れた表面コーティングを形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、キトサンの酸性水溶液を含有する木材加工品用コーティング組成物を提供する。
本発明は、前記木材加工品用コーティング組成物から形成されるコーティング、そしてこのコーティングを表面に有する木材加工品も更に提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
コーティング組成物
本発明の第1態様は、キトサンの酸性水溶液を含有する木材加工品用コーティング組成物である。
本発明で好適に使用されるキトサンは、弱酸を含む水溶液に十分溶解するものであって、特に、前記式中のN−アセチルアミノ基の脱アセチル化度が50%以上(前記式中、y/(x+y)比が0.5以上)のものを包含する。本発明では、最も好ましくは、前記式中のN−アセチルアミノ基の脱アセチル化度が70〜92%のキトサンを使用する。
【0013】
前記特徴を有するキトサンは、キチン、キトサンハンドブック(キチン、キトサン研究会 編、技報堂出版、1995年)に開示しているように、キチン(例えば、甲陽ケミカル株式会社製、商品名SEC)を、水酸化ナトリウム(40%)などのアルカリ溶液を用い、100〜130℃で2〜8時間の条件下で加水分解することによって調製することができる。
【0014】
あるいは、前記特徴を有するものであれば、工業的に市販されているキトサンをそのまま利用してもよい(例えば、甲陽ケミカル株式会社製、商品名SK−10、SK−50など)。
【0015】
こうして得られるキトサンを酸性水溶液に溶解することで、本発明のコーティング組成物が調製される。
キトサンを溶解させるための酸性水溶液は、弱酸を含む水溶液である。弱酸は、リン酸、ホウ酸等の無機酸、および分子中の炭素原子数が1〜7の有機モノ−、ジ−およびトリ−カルボン酸を包含する。有機モノ−、ジ−およびトリ−カルボン酸の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、蓚酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、グルコン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。メタンスルホン酸やパラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸も前記弱酸として使用してよい。また、これらの酸を複数混合して使用してよい。
【0016】
酸性水溶液の濃度は、1〜20%、特に5〜10%の範囲が好ましい。
【0017】
最も好ましくは、酸性水溶液として、溶解されるキトサンと等重量の酢酸を含む、3〜10%の酢酸水溶液を使用する。
【0018】
前記キトサンは、本発明のコーティング組成物の全重量に対して、0.5〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%の範囲で含有させることで、良好な成膜性および木材に対し良好な被膜を付与できる。
【0019】
更に、本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、当該分野で通常含有される各種添加物を含有していてよい。添加物としては、メタノール、エタノール、尿素、シリカ−アルミナ、炭酸カルシウムおよびタルクなどが挙げられる。
【0020】
前記添加物の合計重量は、コーティング組成物の全重量に対して1〜40重量%の範囲であってよい。好ましくは10〜20重量%である。
【0021】
添加物は、種類や機能に依存して、キトサンを前記酸性水溶液に溶解するのと同時にまたはキトサンの溶解後に添加されてよい。
【0022】
本発明のコーティング組成物は、溶解状態で調製されることから、被塗物への均一な適用が可能である。
【0023】
本発明のコーティング組成物は、溶液からゾルまでの広範な状態で調製され得る。ただし、使用時、すなわち被塗物に適用する際には、溶液粘度は、50〜5000mPa・s、特に100〜300mPa・s(mPa・sec;BM粘度計により20℃で測定)に調整することが好ましい。これにより、被塗物に適用した際に、だまや流れが生じず、均一なコーティングの形成が達成される。
【0024】
コーティング
本発明の第2態様は、前記コーティング組成物から形成されるコーティングである。
本発明のコーティングは、前記コーティング組成物を常套の方法、例えば、刷毛塗り、スプレー塗布、ローラー塗布、しごき塗布などの方法で木材加工品の表面に適用した後、室温で少なくとも一晩放置することにより、また50〜150℃で3〜5時間熱風乾燥させることによって達成される。作業条件に応じて室温から150℃までの温度条件で乾燥させることができ、乾燥時間も、その温度や風の当て方に依存して変えられる。また、乾燥温度は120℃以下にすれば塗膜の変色を避けることができる。
適用方法や乾燥条件は、適用対象である木材加工品に依存して適宜変化してよい。
【0025】
本発明のコーティングは、美粧目的および表面保護のために適用され、被覆された木材加工品に高い付加価値を付与し得る。すなわち、このコーティングは、自然循環性および環境適合性が高く、しかも変色せずに、被覆された木材加工品の表面の木の風合いを保持し得る。
本発明のコーティングは、天然起源物質を主成分とするため、使用中に人体に有害なアレルギー誘引物質を放出し難い。特にキトサンを溶解させるための酸を天然由来物質(酢酸、コハク酸等)に求めることにより、この性質を維持できる。
【0026】
更に、本発明のコーティングは、含有されるキトサンに起因する優れた抗菌性および環境浄化作用を発揮し得る。
【0027】
木材加工品
本発明は、第3態様として、本発明の前記コーティングを表面に有する木材加工品も提供する。前記コーティングの適用対象である木材加工品としては、木そのものを原料とする加工および成形品、合板および集成材およびそれらの加工および成形品、およびそれらの組み合わせから選択されるものであってよく、例えば、建物の外装および内装用資材を包含する住建築用資材、机などの家具類、木のおもちゃ、楽器、およびこれらの構成部品などを包含する。
【0028】
本発明の木材加工品は、表面に抗菌性および環境浄化作用を有するコーティングを有することから、衛生を重視する用途、例えば、新生児または幼児のためのおもちゃや学校で使用される家具や用具、さらには医療用設備・建物の資材としても有用である。
【0029】
【実施例】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
甲陽ケミカル製キトサンSK−10を機械的に微粉砕して得られるキトサン微粒子(寸法80メッシュ以上、脱アセチル化度71%)を、酢酸水溶液に溶解することにより、本発明のコーティング組成物Aを調製した。このコーティング組成物中のキトサン含有濃度は、該組成物の全重量に対し5.0重量%であった。
【0031】
得られたコーティング組成物Aを木材片(杉と桧の2種)上に刷毛塗りした後、風乾2時間後一晩放置した。塗装木材は十分な光沢を保持し、木材本来の色を保持すると同時に、十分な被膜形成性能を示した。
塗装面をサンドペーパーで磨きをかけた。その結果、表面は滑らかな感触を呈し、光沢が増大した。その表面摩擦を測定したところ、コーティングを施していない木材表面やサンドペーパー仕上げをしていない塗面に比較して摩擦抵抗が低いことが認められた。
【0032】
また、コーティング組成物Aを木材片(杉と桧の2種)上に刷毛塗りした後、風乾1時間後140℃で1時間加熱した。塗装木材は十分な光沢を保持し、木材本来の色を保持すると同時に、十分な被膜形成性能を示した。
【0033】
上記コーティング組成物AをOHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後1昼夜乾燥した。このフィルムを用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。また、上記コーティング組成物Aを同様にOHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後140℃で1時間加熱乾燥した。同様に赤外吸収スペクトルを取った。
【0034】
本発明のコーティング組成物Aを塗布後加熱乾燥した塗膜の赤外吸収スペクトルには、アミドの吸収がみられたが、非加熱塗膜ではアミドの吸収がみられなかった。本発明のコーティング組成物では、加熱によりカルボキシル基とアミン基の間に反応がおこり、アミド化(キチン化)しているものと考えられる。
【0035】
実施例2
甲陽ケミカル製キトサンSK−10を機械的に微粉砕して得られるキトサン微粒子(寸法80メッシュ以上、脱アセチル化度71%)を、コハク酸水溶液に溶解することにより、本発明のコーティング組成物Bを調製した。このコーティング組成物中のキトサン含有濃度は、該組成物の全重量に対し5.0重量%であった。
【0036】
得られたコーティング組成物Bを木材片(杉と桧の2種)上に刷毛塗りした後、風乾1時間後140℃で1時間加熱した。塗装木材は十分な光沢を保持し、木材本来の色を保持すると同時に、十分な被膜形成性能を示した。
【0037】
上記SK−10の酢酸水溶液を同じキトサン濃度に作成し、OHP用のフィルム上に塗布した後、2時間風乾し、その後1昼夜乾燥した。このフィルムを用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。また、上記コーティング組成物Aを同様にOHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後140℃で1時間加熱乾燥した。同様に赤外吸収スペクトルを測定した。
【0038】
本発明のコーティング組成物Bの赤外吸収スペクトルには、アミドの吸収がみられたが、SK−10の酢酸水溶液の被膜ではアミドの吸収がみられなかった。本発明のコーティング組成物では、加熱によりカルボキシル基とアミン基の間に反応がおこり、架橋しているものと考えられる。
【0039】
実施例3
甲陽ケミカル製キトサンSK−10を機械的に微粉砕して得られるキトサン微粒子(寸法80メッシュ以上、脱アセチル化度71%)を、メタクリル酸水溶液に溶解することにより、本発明のコーティング組成物Cを調製した。このコーティング組成物中のキトサン含有濃度は、該組成物の全重量に対し5重量%であった。
【0040】
得られたコーティング組成物Bを木材片(杉と桧の2種)上に刷毛塗りした後、風乾1時間後140℃で1時間加熱した。塗装木材は十分な光沢を保持し、木材本来の色を保持すると同時に、十分な被膜形成性能を示した。
【0041】
上記SK−10の酢酸水溶液を同じキトサン濃度に作成し、OHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後1昼夜乾燥した。このフィルムを用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。また、上記コーティング組成物Cを同様にOHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後140℃で1時間加熱乾燥した。同様に赤外吸収スペクトルを測定した。
【0042】
本発明のコーティング組成物Bの赤外吸収スペクトルには、アミドの吸収がみられたが、SK−10の酢酸水溶液を風乾した被膜ではアミドの吸収がみられなかった。本発明のコーティング組成物では、加熱によりカルボキシル基とアミン基の間に反応がおこり、部分架橋しているものと考えられる。
【0043】
実施例4
甲陽ケミカル製キトサンFM−80を機械的に微粉砕して得られるキトサン微粒子(寸法80メッシュ以上、脱アセチル化度80%)を、コハク酸水溶液に溶解することにより、本発明のコーティング組成物Dを調製した。このコーティング組成物中のキトサン含有濃度は、該組成物の全重量に対し4.0重量%であった。
【0044】
得られたコーティング組成物Dを木材片(杉と桧の2種)上にしごき塗りした後、風乾1時間後120℃で1時間加熱した。塗装木材は十分な光沢を保持し、木材本来の色を保持すると同時に、十分な被膜形成性能を示した。
【0045】
上記FM−80の酢酸水溶液を同じキトサン濃度に作成し、OHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後1昼夜乾燥した。このフィルムを用いて、赤外吸収スペクトルを取った。また、上記コーティング組成物Cを同様にOHP用のフィルム上に塗布した後、1時間風乾し、その後140℃で1時間加熱乾燥した。同様に赤外吸収スペクトルを取った。
【0046】
本発明のコーティング組成物Cの赤外吸収スペクトルには、アミドの吸収がみられたが、FM−80の酢酸水溶液を風乾した被膜ではアミドの吸収がみられなかった。本発明のコーティング組成物では、加熱によりカルボキシル基とアミン基の間に反応がおこり、架橋しているものと考えられる。
【0047】
【発明の効果】
本発明のコーティング組成物は、安価でかつ容易に入手可能な、天然起源物質であるキトサンを使用している。本発明のコーティング組成物は、自然循環性および環境適合性が高く、しかも変色せずに、提供された木材加工品の表面の木の風合いを変化させない、美粧性目的または表面保護のためのコーティングを提供する。
本発明のコーティング組成物によれば、間伐材を用いた場合でも、従来よりも容易に高付加価値化された合板や集成材が製造できる。
【0048】
本発明のコーティングは、その使用中に人体に有害なアレルギー誘引物質を放出し難いことを特徴とする。
【0049】
本発明によれば、前記コーティングで表面が被覆された木材加工品も提供される。このような木材加工品は、優れた表面保護性が得られるのみならず、腐食も防止され、更には木の風合いを保持し得る。そのため、例えば、建物の外装および内装用資材を包含する住建築用資材、机などの家具類、木のおもちゃ、楽器、およびこれらの構成部品などに使用できる。
【0050】
加えて、本発明の木材加工品は、表面コーティングにキトサンが含有されていることから、抗菌性および環境浄化作用も有する。そのため、本発明の木材加工品は、新生児または幼児のためのおもちゃとして、または学校で使用される家具や用具として、さらには学校および医療用施設における内装資材としても有用であると考えられる。

Claims (4)

  1. キトサンの酸性水溶液を含有する木材加工品用コーティング組成物。
  2. 請求項1記載の木材加工品用コーティング組成物から形成されるコーティング。
  3. 請求項1記載の木材加工品用コーティング組成物を木材に塗布した後、加熱することにより形成されるコーティング。
  4. 請求項2または3記載のコーティングを木材表面に有する木材加工品。
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