JP2004016164A - 飲食品 - Google Patents
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Abstract
【効果】CPPを使用することによって、従来不可能とされていたカルシウムの存在下における鉄の可溶化がはじめて可能となった。したがって本発明に係る乳飲料等の乳系飲食品を摂取すると、体内においてカルシウム及び鉄の双方が可溶化され、これらの体内吸収が助けられる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カゼインホスホペプチド(Casein Phosphopeptides:以下、CPPということもある)存在下で用いられる乳系飲食品組成物とこの鉄剤とを含有する乳系飲食品用組成物及び強化された乳系飲食品に関するものであり、更に詳細には、乳や乳製品中に多量に存在するリン酸カルシウムは鉄の体内吸収を阻害するという技術常識にあえて抗して、カゼインを加水分解して得られる含リンペプチドであるカゼインホスホペプチドを使用することによって、カルシウム及び鉄の双方を可溶化して吸収を容易ならしめることに成功した新規乳系飲食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カルシウムは人体中の金属として最も多量に含まれており、吸収されたカルシウムは骨や歯の形成、代謝又は生体の数多くの反応、機作に関与しており、その重要性には多言を要しない。
【0003】
一方、鉄も重要なミネラルのひとつであって、鉄が欠乏すると、貧血や発育不良等の原因となり、女性の貧血、特に鉄欠乏性貧血の問題は大きく、鉄摂取不足がしばしば指摘されている。
【0004】
鉄の吸収性については多くの研究報告がある。最近の総説としては、例えばT.M. Morck and J.D. Cook; Cereal Foods World、26 (12)、667〜672、(1981)がある。食事中の鉄は、栄養学的にはヘム鉄と非ヘム鉄に分類される。ヘム鉄はその吸収性が良いこと(15〜35%)が知られているが、食物含有鉄中の割合は少ない(5〜10%)。非ヘム鉄は食物含有鉄中の主成分で、その存在状態により吸収性は大きく変動する。吸収性を向上させる因子としては、動物(魚、家畜を含む)肉、アスコルビン酸、システインがあり、吸収性を低下させる因子としては、卵、大豆、米、茶、コーヒーなどがある。
【0005】
以上述べた鉄の吸収性の高低は、主として鉄の存在状態により説明されている。即ち、鉄は主として小腸上部(内容物のpHは5〜6になっている)で吸収されるといわれているが、その際鉄は可溶化状態で存在していなければならない。ヘム鉄は胃の中におけるような酸性pHよりも小腸内におけるように中性pHの方が溶解性がより良好である。そのため小腸内の方がより高い吸収性を示す。
【0006】
また、2価鉄(Fe++)が3価鉄(Fe+++)に比較して、吸収性が良いことの理由としては、2価鉄が中性領域を含む広範なpH下で可溶化しているのに3価鉄はpH3以上で不溶化してしまうのが大きな原因とされている。先に記した吸収性を変化させる各種の因子についても、鉄の吸収性を向上させるものは、鉄の可溶化量の多いものであり、逆に吸収性を低下させるものは、鉄の可溶化量の少ないものである。
【0007】
このように、鉄の吸収は胃ではなく主に小腸上部で行われるため、鉄は、専らヘム鉄や肉製品等の限られた飲食物で効率的吸収が行われており、鉄剤単独投与では吸収量が少なかったりあるいは消化器等に大きな負担を与える等、充分に満足すべき結果は得られていない。しかもそのうえ、リン酸カルシウムは鉄の吸収を阻害することが明らかにされており(糸川嘉則:最新ミネラル栄養学、健康産業新聞社、第98頁)、カルシウムの存在下において鉄の吸収が阻害されること、換言すれば、カルシウムと鉄の双方を効率的に同時に吸収することはできないということが、従来より技術常識とされているのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、カルシウム及び鉄が重要なミネラルとして生体には必要であるが、カルシウムと鉄を同時に強化しても生体が両者を効率的に吸収することは困難であって、添加したミネラルの大部分が生体によって利用されることは極めて困難である。したがって、カルシウムを多量に含む乳や乳製品において、鉄を強化しても鉄を有効に利用することは非常に困難である。
【0009】
しかしながら、乳や乳製品はすぐれた栄養食品であることから、上記した技術常識にもかかわらず、これに鉄を添加して、カルシウムの存在下においても鉄を可溶化して効率的に吸収せしめることができれば、その効果ははかりしれないものがある。そこで本発明者らは、カルシウム及び鉄の双方の可溶化、効率的吸収という上記技術常識と全く正反対の、従来の技術レベルに対抗したきわめて解決困難な技術課題を本発明が解決すべき技術課題として新たに設定した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した新規技術課題を解決するためになされたものであって、本発明者らは、カルシウムの存在下における鉄の吸収阻害という従来の技術常識について各方面から検討の結果、カルシウムによる鉄の吸収阻害の原因のひとつが溶解性である点にはじめて着目した。双方のミネラルは、消化管等体内において溶解していなければ、体内へは効率的に吸収され得ないこと、換言すれば、ミネラルの効率的体内吸収にはミネラルを可溶化する必要があるとの新規着想を得た。
【0011】
そこで本発明者らは、この新規着想を実現する技術システムを新たに開発するため、各方面から鋭意研究の結果、カゼインをトリプシン等で加水分解して得られる含リンペプチドであるカゼインホスホペプチド(CPP)がカルシウムを可溶化するだけでなく、腸内で高濃度のカルシウムの存在下においても、鉄を可溶化することをはじめて見出した。そして本発明者らは、更に研究をすすめて、実際に高カルシウム食品である牛乳にカルシウム、鉄及びCPPを添加したところ、カルシウムが鉄の吸収を阻害するという技術常識からして鉄の可溶化が当然に阻害されるとの従来の知見とは全く逆に、多量のカルシウムの存在にもかかわらず、鉄もカルシウムもともに可溶化することを実際に確認した。これらミネラルは、不溶態の場合には体内での吸収が不可ないしきわめて困難であるところから、ミネラルの吸収促進には、これらの可溶化がその前提となるものである。
【0012】
本発明者らは、上記新知見に基づき、CPPを鉄とともに乳系飲食品に添加し、これを摂取することによって生体内で可溶性鉄となし、また同じくカルシウムについてもCPPの作用によって効率的に可溶性カルシウムとなし得る乳系飲食物を発明するのに成功したものである。
【0013】
すなわち本発明は、CPP、鉄及びカルシウムの三者を添加してなる乳系飲食品に係り、乳系飲食品において、これを摂取した場合、従来の技術常識とは全く異なり、鉄及びカルシウムの双方が可溶化されるという卓越した特徴を有するものであって、その結果、鉄及びカルシウムの吸収促進が図られるものである。
以下、本発明について詳述する。
【0014】
CPPには、α−カゼイン由来のもの(α−CPP)及びβ−カゼイン由来のもの(β−CPP)が知られており、いずれも使用可能である。これらの特性は次のとおりである。なお、カッコ内はβ−CPPの特性を示す。
【0015】
分子量:4552(3123)、リン酸残基数:7(4)、N/P比(原子数):7.2(8)、カルボキシル残基:12(7)、等電点:pH1〜2(pH1〜2)。
【0016】
本発明においては、上記したようなCPPが使用され、市販品も適宜使用可能であるが、本発明で使用可能なCPPとしては、更に、次のようなものが例示される:すなわち、カゼインはトリプシンを作用させて得られたCPP画分を含むカゼイン分解物(以下、粗CPPと略記する。)、これをさらに脱苦味したカゼイン分解物(以下、脱苦味CPPと略記する。)、あるいはカルシウムイオンと親水性有機溶媒を添加して精製回収したカゼイン分解物(以下、精製CPPと略記する。)等
【0017】
さらに詳細に述べると、本発明のCPPに使用する原料のカゼィンは、各種酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム等のカゼインが最も良いが、牛乳、スキムミルク等の未精製のものでも原料として用いることができる。本製法に従えば、この原料カゼインを水に溶解し、トリプシン又はトリプシンを含む酵素剤を加える。本発明に使用するトリプシン又はトリプシンを含む酵素剤としては、市販の膵臓性の酵素(バンクレアチン)でも十分であるが、収率等の点から結晶グレードのものが好ましい。原料のカゼインに上記酵素を作用させることによって、CPPが生成する。
【0018】
本発明においては、CPPと鉄及びカルシウムの3者を添加して乳系飲食品を製造するが、鉄としては、クエン酸鉄、硫化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、塩酸鉄、グルコン酸鉄、乳酸鉄、ピロリン酸鉄などの第1又は第2鉄の少なくともひとつが選択、使用される。なお、鉄は主に小腸上部で吸収されるため、胃では溶解、吸収されることなく通過して、腸にまで到達し、そして可溶化するのが好ましい。
【0019】
本発明における鉄剤は、特に限定されるものではないが、不溶性鉄が好適に使用される。不溶性鉄としては、25℃水中における溶解度積が、1.0×10−7以下である鉄塩が望ましく、例えば水酸化第一鉄、リン酸第一鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、炭酸第一鉄があげられ、好ましくは、ピロリン酸第一鉄またはピロリン酸第二鉄であり、最も好ましくはピロリン酸第二鉄である。また、本発明における鉄剤は、特に限定されるものではないが、酵素分解レシチンを含有することが好ましい。
酵素分解レシチンは、ホスホリパーゼAを用いて生成されるリゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルイノシトールおよびリゾホスファチジルセリン、ならびにホスホリパーゼDを用いて生成されるホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールおよびリゾホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはリゾホスファチジルコリンである。
また、好ましい併用物質としては非イオン界面活性剤があげられ、具体的にはグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等があり、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルである。
ここでポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合度が3以上のポリグリセリンを70重量%以上含むポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、重合度3〜11のポリグリセリンを70重量%以上含むポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
本発明における鉄剤の粒子径については、特に限定されるものではないが、平均粒子径0.2μm以下であることが分散性の観点から好ましく、また粒子全体のうちの80重量%以上の粒子が粒子径0.4μm以下を有することがより好ましい。
ここで粒径の測定方法については、特に限定されるものではないが、例えばレーザー散乱・回折型粒度分布測定装置を用い測定できる。
このような粒子径の鉄剤を得る方法としては、ホモミキサー、ボールミル、ジェットミル等を用いた物理的破砕方法、中和造塩法等があげられるが、均一な粒子径を有する微粒子を得やすい点で、中和造塩法が好ましい。
ここで中和造塩法とは、酸とアルカリとを反応させ、塩を得る方法である。かかる中和造塩法としては、例えばピロリン酸第二鉄のように、塩化第二鉄とピロリン酸四ナトリウムなどの強酸と強塩基性塩との中和反応を用いる方法等が知られており、粒子径0.01〜0.1μmの超微粒子が得られる。
次に、鉄剤の調製例を示す。
[鉄剤の調製例]
塩化第二鉄六水和物13kg及び酵素分解レシチン(サンレシチンL:太陽化学(株)商品名)0.3kgをイオン交換水60kgに溶解して鉄溶液を調製した。
ピロリン酸四ナトリウム+水和物20kgをイオン交換水500kgに溶解したピロリン酸溶液中に、攪拌下で前記で得られた鉄溶液を徐々に添加し、混合液のpHを3.0に調整した。中和反応によるピロリン酸第二鉄の造塩が終了した後、遠心分離(3000×g、5分間)によって固−液分離を行ない、固相部のピロリン酸第二鉄8.2kg(乾燥重量換算)を回収し、これにモノミリスチン酸ペンタグリセリン(重合度3〜11のポリグリセリンの含量:94重量%)1.6kgを加え溶解し、最終的にイオン交換水に再懸濁して4.1%ピロリン酸鉄スラリー(鉄剤)を得た。このものの鉄含量は、12mgであった。
この鉄剤の粒度をレーザー散乱・回折型粒度分布測定装置によって測定したところ、平均粒子径0.2μmであり、0.4μm以下の粒径を有する粒子は、粒子全体の85重量%を占めた。
【0020】
また、クエン酸鉄、硫酸鉄その他可溶性鉄も、油脂コーティング等の常法にしたがって不溶化したり溶腸剤に製剤化すると、胃内での吸収により、胃に障害を与えたり、血中への鉄濃度の高まりにより、腎臓に過度の負担をかけたりすることなく、腸内で溶解して、効率的吸収が図られる。
【0021】
一方、カルシウムについては、胃で溶解しても鉄の場合のような問題はないので、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、フマル酸カルシウム等常用されるカルシウム化合物の少なくともひとつが使用される。なお、上記のように乳系飲食物は本来カルシウムを含有しているので、上記のようにカルシウム剤を別途添加する場合のほか、カルシウム剤を別途添加することなく本来存在しているカルシウムに鉄をCPPと共に添加する場合についても、本発明に包含される。
【0022】
本発明に係る乳系飲食品用組成物としては、鉄剤以外にカゼインホスホペプチドが必須の併用成分となるが、必要に応じカルシウムも併用される。
本発明に係る乳系飲食品としては、乳、すなわち、生乳、牛乳、山羊乳、水牛乳、馬乳、羊乳、脱脂乳、加工乳その他、及び/又は、乳製品のほか、これらを原料とした飲料、食品が広く包含され、例えば、各種ドリンク、スープ類、ミルクコーヒー、ミルクティー、果汁や果肉入りドリンク;ケーキ、クッキー、ビスケットその他菓子類;ゼリー類;氷菓類;糖果類等が挙げられる。
【0023】
乳製品としては、例えば、クリーム、チーズ、バター、無糖れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、加糖脱脂粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、アイスクリーム、ラクトアイス、シャーベット等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、これらの乳系飲食品にCPP、鉄、及び所望に応じてカルシウムを添加するのであるが、原料に添加混合するか、又は製品に直接添加してもよい。CPPにはカゼイン又はカゼイン加水分解物特有の苦味、臭味もなく、人体に対して無毒性であるから、その添加割合には制限はないし、CPP、鉄、カルシウムの添加順序にも制限はないが、通常、0.001〜5%程度添加する。好適添加量は、飲食品の種類、鉄やカルシウムの強化量等によって適宜定めればよく、例えば鉄1〜15mg、カルシウム250〜600mg含有乳飲料(200ml)の場合、CPPの添加量は0.002〜0.05%、更に好ましくは0.006〜0.02%とするのが好適であり、この数値範囲を参考にして他の飲食品に対するCPPの添加量を適宜定めればよい。なお、CPPはこれらの範囲以上大量に使用しても格別の害作用は認められず、例えば、飲料の場合0.1〜1%、他の食品の場合0.1〜3%添加したが、ミネラルの可溶化、飲食品の風味、品質において、格別の欠点は見出せなかった。また、本発明においては、強化したカルシウムの10%以上、好ましくは45%以上が可溶化されるのが好ましく、且つ、強化した鉄の10%以上、好ましくは40%以上が可溶化されるのが好ましい。
【0025】
【実施例1】
CPP(明治製菓(株)製品)の添加水準が異なる後記実施例2に記載した乳飲料A及び乳飲料Bを人工消化試験系で消化し、各消化過程における可溶化Fe量及び可溶化Ca量の推移を観察し、CPPのピロリン酸第二鉄及び炭酸カルシウムに対する可溶化効果を確認した。
【0026】
鉄としては、市販の食品添加物規格適合のピロリン酸第二鉄製剤(サンアクティブ−Fe:太陽化学(株)商品名)を添加使用した。その組成は、ピロリン酸第二鉄4.1%、乳化剤0.9%、食品素材95.0%から成り、鉄含有量が12mg/gの淡黄白色スラリーないしエマルジョンである。なお、乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチンが用いられており、また、食品素材が水99%及び食塩1%である。
【0027】
(1)供試試料
供試試料としては、乳飲料A及び乳飲料Bについて、それぞれ、CPP 0mg、5mg、11mg、20mg入りの試料計4本をそれぞれ用意した。なお、乳飲料A及びBについて、Fe含有量(Fe添加量)は、それぞれ、1.5mg/100ml及び3.0mg/100mlであり、Ca含有量はいずれも175mg/100mlであった(いずれも強化したCa量は58mg/100mlである)。
【0028】
(2)人工消化試験
乳飲料A、Bについて、図1に示すスケジュールにしたがって人工消化試験を行い、可溶化鉄及びカルシウムの定量を行った。人工消化により可溶化したFeは、「Fe Cテストワコー」(和光純薬(株)商品名)を用いて可溶化FeをFe(2価)として定量した(本キットは、血清中のFeを遊離し、Fe(3価)は還元して定量するものである)。また、人工消化により可溶化したCa量は、「Ca Cテストワコー」(和光純薬(株)商品名)を用いて定量した。
【0029】
(3)結果
i)乳飲料A
乳飲料Aの人工消化試験による可溶化Fe量の推移を下記表1及び図2に示し、更に、人工胃液部及び人工腸液部における可溶化Fe量の推移を、それぞれ、図3及び図4に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
ii)乳飲料B
乳飲料Bの人工消化試験による可溶化Fe量の推移を下記表2及び図5に示し、更に、人工胃液部及び人工腸液部における可溶化Fe量の推移を、それぞれ、図6及び図7に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
iii)カルシウムの可溶化
乳飲料Bについて、人工消化試験を行い、可溶化Caの定量を行った。可溶化Ca量の推移を下記表3及び図8に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
(4)まとめ
乳飲料Aにおいて、人工胃液部ではCPP添加の有無による可溶化Fe量に格別の差異は認められなかったが、人工腸液部ではCPP添加品は無添加品に比べて全体に可溶性Fe量は高く、理論量に近いことが確認された。
【0036】
乳飲料Bにおいて、人工胃液部ではCPP添加の有無による可溶化Fe量に格別の差異は認められなかったが、人工腸液部ではCPPの添加水準に応じて可溶化Fe量は高くなり、時間の経過とともに高くなり、理論量に近い値になっていることが確認された。
【0037】
また、乳飲料Bにおいて、人工胃液部ではCPP添加品は無添加品よりもわずかではあるが溶解Ca量が増加しているのが認められ、更にまた、人工腸液部でもCPP 20mg/dl添加品は無添加品及び5mg、11mg/dl添加品に比べて可溶化Ca量が多いことが確認された。
【0038】
【実施例2】
下記の配合で常法にしたがい、乳飲料Aを調製した。
脱脂粉乳8.92部、45%乳脂肪含有生クリーム2.86部、炭酸カルシウムスラリー(1kg当り0.16kgのカルシウムを含有)0.36部、ピロリン酸第二鉄(サンアクティブFe−12M:太陽化学(株)商品名)0.12部、CPP(CPPIII(純度85%):明治製菓(株)商品)、0.011部、水 87729部。
【0039】
得られた乳飲料Aの栄養成分は、200ml当たり次のとおりであった。
エネルギー93kcal、たんぱく質6.6g、脂質3.0g、炭水化物10.1g、ナトリウム99.5mg、カルシウム350mg、鉄3.0mg、CPP 22mg。
【0040】
同様にして、次の栄養成分(200ml当たり)を有する乳飲料Bを調製した。
エネルギー93kcal、たんぱく質6.6g、脂質3.0g、炭水化物10.1g、ナトリウム99.5mg、カルシウム350mg、鉄6.0mg、CPP 22mg。
【0041】
【発明の効果】
本発明にしたがって、乳系飲食品用鉄剤または鉄剤を含有する乳系飲食品用組成物を乳系飲食品に含有させることにより、CaはFeの吸収を阻害するというのが技術常識であるにもかかわらず、CPPの使用によって、Feを可溶化し、また、それと同時にCaも可溶化することをはじめて可能とし、Fe及びCaの体内吸収を助けることができる。
【0042】
このようにして、例えば、200mlあたり、CPP 5〜35mg、鉄0.5〜10mg、カルシウム100〜500mgを含有し、鉄及びカルシウムを可溶化せしめ、これらの体内の吸収を助ける新規乳飲料を調製することができ、また、更に、CPP 0.1〜50mg、鉄0.1〜20mg、カルシウム100〜600mgを含有してなり、これらミネラルを可溶化し、効率的吸収を図ることのできる新規乳飲料を調製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】人工消化試験法のフローチャートを示す。
【図2】乳飲料Aの人工消化試験による可溶化Fe量の推移を示す。
【図3】同上人工胃液部での推移を示す。
【図4】同上人工腸液部での推移を示す。
【図5】乳飲料Bの人工消化試験による可溶化Fe量の推移を示す。
【図6】同上人工胃液部での推移を示す。
【図7】同上人工腸液部での推移を示す。
【図8】乳飲料Bの人工消化試験による可溶化Ca量の推移を示す。
Claims (10)
- カゼインホスホペプチド存在下で用いられる乳系飲食品用鉄剤。
- カルシウム、カゼインホスホペプチド存在下で用いられる乳系飲食品用鉄剤。
- 鉄剤が不溶性鉄を乳化、スラリー化したものである請求項1〜2のいずれか1項に記載の乳系飲食品用鉄剤。
- 鉄剤が可溶性鉄を、油脂コーティング等で不溶化したものである請求項1〜2のいずれか1項に記載の乳系飲食品用鉄剤。
- カゼインホスホペプチド、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄剤、及び必要に応じてカルシウムを含有することを、特徴とする乳系飲食品用組成物。
- カルシウムは主に胃において可溶化し、鉄は腸において可溶化するものであること、を特徴とする請求項5記載の乳系飲食品用組成物。
- 乳系飲食品が乳又は乳製品であること、を特徴とする請求項5〜6のいずれか1項に記載の乳系飲食品用組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の乳系飲食品用組成物を含有する乳系飲食品。
- 乳系飲食品が乳又は乳製品であること、を特徴とする請求項8に記載の乳系飲食品。
- 200mlあたり、カゼインホスホペプチドを5〜60mg、鉄を0.5〜10mg、カルシウムを100〜700mg含有することを特徴とする乳飲料。
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