JP2004016072A - 生理活性物質の細胞間輸送方法 - Google Patents

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Yukihiro Nishiyama
西山 幸廣
Yohei Yamauchi
山内 洋平
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Abstract

【課題】標的細胞又は組織に生理活性物質を効率的に配送することができる細胞間輸送方法を提供する。
【解決の手段】(a)HSV UL14遺伝子産物と生理活性物質とを含む細胞を調製する工程、及び、(b)前記生理活性物質を配送すべき細胞に、工程(a)で調製された細胞を接触させ、前記生理活性物質を前記配送すべき細胞に移動させる工程を含む生理活性物質の細胞間輸送方法、並びに、HSV UL14遺伝子産物と生理活性物質とを含む細胞を含有するか、又は、HSV UL14遺伝子産物と生理活性物質とを含有する生理活性物質の細胞間輸送のための組成物。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)のUL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の細胞内への輸送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
HSVは比較的大きなDNAウイルスであって、エンベロップを持つ。そのゲノムは少なくとも74の異なる遺伝子を含む。これらの遺伝子のうち約半数は、培養細胞中でのウイルス増殖に必須である。これら必須遺伝子は、遺伝子発現調節、ウイルスDNA複製、ウイルスDNAのビリオンへのパッケージング、細胞への進入やウイルスDNAの保護に関わる構造タンパク等をコードしている。必須遺伝子の多くはその性質や機能が明らかにされているが、幾つかの遺伝子は最近までその詳細な機能が不明のままであった。McGeochら、J Gen Virol、69:1531−1574(1988)(The complete DNA sequence of the long unique region in the genome of herpes simplexvirus type 1)及びDolanら、J Virol、72:2010−2021(1998)(The genome sequence ofherpes simplex virus type 2)。HSV UL14のDNA配列についてはCunninghamら、J Virol、74:33−41(2000)参照。
【0003】
HSV−1及びHSV−2のUL14遺伝子はヘルペスウイルス種において高度に保存的であるゲノム領域に存在しており、α−、β−、及びγ−ヘルペスウイルス、例えば、ベリセラゾスターウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、エプスタイン−バーウイルス等にそのホモログが見いだされている。換言すれば、UL14遺伝子はヘルペスウイルス属に共通する基本的遺伝子の一つである。
【0004】
HSV−1及びHSV−2の両方のUL14とも219アミノ酸からなるタンパクをコードしていると考えられている。McGeochら、Nucleic Acids Res、14(4):1727−1745(1986);McGeochら、J Gen Virol、68(Pt1):19−38(1987)。HSV UL14タンパクのアミノ酸配列については、Cunninghamら、前出参照。両タンパクのアミノ酸配列は86%が一致している。そのコード領域は、二つのフランキング遺伝子UL13とUL15を持ち、プロテインキナーゼをコードするUL13のコード領域と一部重複している。Dolanら、JVirol、72:2010−2021(1998)、1998;Daikokuら、Virology、235:82−93(1997)。HSV−1のUL14遺伝子がウイルス複製に必須であるとの報告はすでにあるが(Roizman、Proc Natl Acad Sci USA、93:11307−11312(1996))、UL14遺伝子の表現形や機能に関するそれ以上の知見は、最近まで不明であった。
【0005】
HSVのUL14タンパクは、感染後期に発現し、32kDaの分子量を持つ。Cunninghamら、前出。西山らは、低塩濃度で単離したカプシド中にはHSV−2 UL14タンパクが検出されるが、高塩濃度で単離したカプシドからは検出されないことから、UL14タンパクがテグメントタンパクの非主要成分であることを示唆した。Nishiyamaら、Journal of General Virology、80:2423−2431(1999)。Cunninghamらは、HSV−1 UL14タンパクは感染後期に発現されるテグメントタンパクの非主要成分であること示し、UL14タンパクはウイルス粒子の放出に関連している可能性を示唆した。Cunninghamら、前出。HSV−2のUL14タンパクはカプシドタンパクの細胞内配送に関与している可能性がある。西山らは、カプシドタンパクVP26とDNAパッケージングタンパクUL33タンパクが、UL14タンパクの共存下に細胞質から核内に移行し、この効果はUL14タンパクのN末端側のアミノ酸欠失が長くなるにつれて低下することを見いだした。Nishiyamaら、Journal of General Virology,82:321−330(2001)。
【0006】
細胞膜をそれ自身で通過し、従ってカーゴ分子を輸送し得るタンパク又はペプチドとしては、ホメオプロテインと呼ばれる一群のタンパクやある種のウイルスタンパクが知られている。例えば、CNTF(Adler、Curr OpinNeurobiol、3:785−789(1993))、Caveolin(Liu Pら、Nat Cell Biol、1:369−375(1999))、IL1β(Rubartelli Aら、Trend Cell Biol、5:409−412(1995))、Thioredoxin(Rubartelli Aら、Trend Cell Biol、5:409−412(1995))、FGF−1(Tarantini Fら、J Biol Chem、273:22209−22216(1998))、FGF−2(Keresztes Mら、J Cell Biol、145:421−424(1999))、Lactoferrin(He Jら、Nature、373:721−724(1995))、VP22(Elliot Gら、Cell、88:223−233(1997))、TAT(Ensoli Bら、J Virol、67:277−287(1993))、Engrailed(Joliot Aら、Curr Biol、8:856−863(1998))、Hoxa−5(Chatelin Lら、Mech dev、55:111−117(1996))等がある。また、ペネトラチンファミリーに属する一群のペプチドも知られている。Derossi Dら、Trends Cell Biol、8:84−87(1998)。
【0007】
正電荷を持つペプチドやポリマーが生体膜の通過に有利であることは知られている。例えば、HIV TATタンパクはカチオン性サブユニットでできている。しかし、他の要因が含まれている可能性がある。例えば、水素結合の形成も影響するかもしれない。Science、288:28−29、7 April(2000)。
【0008】
ペプチド等の分子が細胞膜等の生体膜を通過するメカニズムとしては、ペプチドの正電荷を持つアミノ酸残基と負電荷をもつリン脂質との相互作用による逆ミセルの形成が考えられる。Prochiantz A、Current Opinion in Cell Biology、12:400−406(2000))。ギャップ結合は、他の可能性を示す。ギャップ結合とは、隣接細胞間の接触点で見いだされる膜構造である。ギャップ結合は、ある細胞の細胞質から隣接細胞の細胞質へと、例えば、糖、核酸、アミノ酸、脂肪酸、ペプチド、薬剤、等の分子を輸送する。ギャップ結合には、コネクソンと呼ばれる構造を形成する膜タンパクコネキシンのクラスターが存在し、その中心にチャンネルがある。従って、ある細胞のコネクソンと隣接細胞のコネクソンとがチャンネルを形成するように配置するとき、膜通過輸送路が形成される。ギャップ結合を経由する輸送はエネルギーを必要とせず、受動的拡散による。物質の生体膜通過メカニズムには更に他の可能性もあり得る。生体膜を通した物質輸送についてはいまだ未解明の部分が多い。Prochiantz A、前出。
【0009】
ギャップ結合は、電気シナプスを形成する細胞間のほか、平滑筋、心筋、発生初期の細胞間、上皮細胞間を始め各種細胞で形成される。コネクソンを構成するコネキシンタンパクは、肝上皮細胞、肝実質細胞、非実質肝細胞、Vero細胞等でも発現される。コネキシンの細胞特異的、組織特異的、発達特異的発現に関しては、Beyerら、J Member Biol、116:187−194(1990)、Dermietzelら、Anat Embryol、182:517−258(1990)、Warner、Seminars in Cell Biology、3:81−91(1992))等の記載がある。また、コネキシンタンパクをコードする外来性遺伝子を細胞に導入して発現させることも可能である。特表2000−504670。
【0010】
ギャップ結合による分子輸送は、バイスタンダー効果の一因であろう。ある物質に対して非感受性の細胞が感受性細胞とギャップ結合を形成すると、非感受性細胞が感受性に変化する。正常細胞とガン細胞とのギャップ結合の形成によって腫瘍細胞の成長が遅くなることも観察されている。
【0011】
原形質連絡は高等植物における構造であって、動物細胞におけるギャップ結合に相似している。トウモロコシのホメオプロテインであるKN1は原形質連絡を介して輸送される。
【0012】
製薬会社にとって、薬剤を標的細胞内に輸送する方法を開発することは極めて困難な課題であり続けている。薬剤は一般には水に溶けるように設計され、血流によって標的に配送される。しかし、いったん目的細胞に到達したなら、今度は脂質の膜を通過する必要がある。これは水に溶けることと全く異なるメカニズムである。しばしば、一方の課題を解決しても他方の課題は解決できないことがある。生体内利用率の優れたものが優れた効力を発揮できる。一方、生体内利用率の悪い薬剤は多量を服用しなければ有効性を発揮することができない。
【0013】
バイスタンダー効果の利用は他の局面を示す。遺伝子治療により持続的に生理活性物質を発現するように改変された細胞による治療効果を高めるためには、隣接細胞に効果的に生理活性物質を細胞間輸送する必要がある。遺伝子治療の欠点の一つは、形質導入の成功率の低さにある。標的の腫瘍組織等に形質導入細胞を形成することに成功しても、通常はその細胞は極僅かの数でしかない。従って、バイスタンダー効果を利用するためには細胞間の輸送の問題を解決しておく必要がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述の現状に鑑みて、本発明は、標的細胞又は組織に生理活性物質を効率的に配送することができる細胞内への輸送方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、従来その機能が充分解明されていなかったHSV UL14遺伝子の機能を解析する過程で、UL14タンパク又はそのアミノ酸欠失体が細胞間の物質移動に寄与する新規知見を得、これを基にして各種の物質を細胞間で輸送し得る新たな方法を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、(a)HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞を調製する工程、及び
(b)前記生理活性物質を配送すべき細胞に、工程(a)で調製された細胞を接触させ、HSV UL14タンパク又はその誘導体とともに前記生理活性物質を前記配送すべき細胞に移動させる工程
を含むHSV UL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の細胞間輸送方法である。
本発明の1態様においては、HSV UL14タンパク誘導体は、UL14タンパクのアミノ酸欠失体である。
上記アミノ酸欠失体は、UL14タンパクのN末端アミノ酸を含むN末端側約120個以下のアミノ酸が欠失した欠失体であってよい。
本発明の他の態様においては、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とは融合タンパクを形成する。
上記生理活性物質は、プロドラッグ活性化酵素、毒性タンパク、細胞障害性タンパク、サイトカイン、及び、インターフェロンからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドであってよい。
【0017】
本発明の更に他の態様において生理活性物質は、標識用化合物、薬剤、医薬、及び、プロドラッグからなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明の更に他の態様において生理活性物質は、オリゴペプチド、糖、ヌクレオチド、アミノ酸、及び、脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明の更に他の態様において生理活性物質は、ポリヌクレオチドである。
上記ポリヌクレオチドは、ヒト遺伝子、動物遺伝子、微生物遺伝子、ウイルス遺伝子、アンチセンスDNA、及び、アンチセンスRNAからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
本発明の更に他の態様において工程(a)は、HSV UL14タンパク誘導体をコードする核酸及び/又は生理活性ポリペプチドをコードする核酸を発現可能に細胞に導入するものである。
本発明の更に他の態様において工程(a)は、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを細胞外から細胞に導入するものである。
本発明の別の態様において工程(b)は、前記生理活性物質を配送すべき細胞に工程(a)で調製された細胞を、ギャップ結合を介して接触させるものである。
本発明の更に別の態様において工程(b)は、細胞へのヒートショックを併用するものである。
本発明はまた、(c)生理活性物質を配送すべき標的組織の中の一つ又は複数の細胞に、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを含ませる工程、及び
(d)工程(c)の細胞に隣接する前記標的組織中の細胞と前記工程(c)の細胞とを接触状態に維持し、HSV UL14タンパク又はその誘導体とともに前記生理活性物質を前記隣接する細胞に移動させる工程、
を含むHSV UL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の標的組織中への配送を増強する細胞間輸送方法でもある。
【0018】
本発明の1態様においては、生理活性物質を配送すべき組織は、組織細胞間にギャップ結合を形成することができるものである。
本発明の他の態様において工程(c)は、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを生理活性物質を配送すべき組織中に投与するものである。
本発明はまた、(e)生理活性物質をHSV UL14タンパク又はその誘導体とともに標的組織に投与する工程、及び、
(f)前記生理活性物質をHSV UL14タンパク又はその誘導体とともに前記標的組織中の一つ又は複数の細胞内に移動させる工程
を含むHSV UL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の細胞内への輸送方法でもある。
本発明は更に、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを含む細胞を含有する、生理活性物質の細胞内への輸送のための組成物である。
本発明は更にまた、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを含有する、生理活性物質の細胞内への輸送のための組成物でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本明細書中の技術的、又は、専門的用語は、そうでないことを明示に断らないかぎり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解する意味と同じ意味で用いられる。これには、例えば、生化学辞典第3版、東京化学同人(1998)、等の辞典、本明細書で引用する文献やその中の引用文献、各種グロッサリー、モノグラフ等を参照することができる。
【0020】
本発明において以下の用語はつぎのように定義される。
「HSV UL14タンパク」は、HSV−1又はHSV−2のUL14野生型遺伝子の発現により産生されるタンパク並びに他の任意の方法により生産された当該タンパクを意味する。UL14タンパクは翻訳後にプロセッシングされる可能性がある。Nishiyamaら、Journal of General Virology、80:2423−2431(1999)。従って、該当する場合はこのようなプロセッシングされたタンパクも含まれる。
【0021】
「HSV UL14タンパク誘導体」は、UL14タンパクのアミノ酸配列から置換、欠失、挿入、修飾、又は、これらの組み合わせで生じる配列をもつタンパクをいう。これにはアミノ酸欠失体、特に、UL14タンパクのN末端側においてアミノ酸欠失をもつものが含まれる。アミノ酸欠失体は、UL14タンパクのC末端に欠失を持たず正常なC末端を有することが好ましい。アミノ酸欠失は、例えば、N末端側から約150アミノ酸以下、好ましくは約130アミノ酸以下、より好ましくは約120アミノ酸以下の欠失が含まれる。これらはUL14遺伝子への遺伝子操作によって、一つ又は複数のヌクレオチドを置換、欠失、挿入することによってもたらされたヌクレオチド配列からの発現物であってよい。また、UL14タンパク誘導体はオリゴペプチドをタグとして付加したものも含まれる。UL14タンパクのC末端を含む部分ペプチド(アミノ酸数約70以上、例えば、100以上)に種々の目的で他のペプチド又はタンパクを付加することもできる。例えば、エピトープの提供、水素結合等の非共有結合部位の提供、マーカーの提供、等であってよい。UL14タンパク誘導体には種々の可能性がある。本発明の目的の範囲で、これらを試みることは容易である。上述した文献がそのために役立つ。
【0022】
「輸送対象生理活性物質」は、輸送対象とされる外来性の物質をいい、細胞の代謝に直接又は間接に、何らかの影響を与え得る有機又は無機の化合物を含む。特に、その与える影響を利用する場合、特に、薬剤としての作用を持つ物質、例えば、治療用、生理活性制御用、実験用、等の目的で使用される化合物が含まれる。これには、例えば、細胞内で細胞障害性を示すペプチド等が含まれる。
【0023】
「HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞」は、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とが共有結合又は非共有結合で結合されて含まれていてもよく、又は、両者が化学結合で結合されずに含まれていてもよい。
【0024】
「接触」は、細胞同士が細胞間結合を形成するか、又は、形成することなく、隣接細胞に物質を輸送可能に接近していることをいう。組織内の細胞は互いに結合しており、例えば、密着結合、接着帯、デスモソーム、ギャップ結合等の特殊に分化した膜領域をもつ。組織に外部から移植された細胞は、このような特殊構造を形成できないかもしれない。しかし、細胞同士がその表面で互いに接触することは接近することにより可能である。
【0025】
「移動させる」は、エネルギーを要する過程であってもよく、エネルギーを要しない過程であってもよい。
【0026】
「細胞間輸送」は、一つの細胞の内部から細胞膜の外への物質の移動及び上記物質が隣接細胞の細胞膜を細胞外から細胞内へ通過することによって生じる物質の細胞から隣接細胞への移動をいう。この過程が連続して起これば一つの細胞から隣接細胞へ、更にその隣接細胞への移動が生じる。
「細胞内への輸送」は、一つの細胞の細胞外から細胞膜を通しての細胞内への物質移動をいう。細胞間輸送の過程は細胞内への輸送の過程を含む。
【0027】
「プロドラッグ」は、治療的投与量ではそれ自身は実質的に生物学的活性がないが、該プロドラッグを変化させるか又は代謝することができる細胞によって化学的に変換されるか若しくは代謝される場合、又は、他の物質と合体して複合体を形成する場合に、本来の活性のある薬剤になる物質をいう。例えば、5−フルオロシトシン、5−メトキシプリンアラビノシド、ガンシクロビル、アシクロビル等が含まれる。「治療的投与量」とは、該プロドラッグを活性型物質に変換できる細胞を除いた生体に、実質的に悪影響を及ぼさない用量である。
「プロドラッグ活性化酵素」は、生物学的活性のないプロドラッグを有害代謝産物又は活性型に代謝できるタンパクをいう。例えば、シトシンデアミナーゼは、5−フルオロシトシンを致死的代謝産物である5−フルオロウラシルに変換し、HSVチミジンキナーゼは、アシクロヌクレオシド類を段階的にリン酸化して、3リン酸体とし、これがDNAポリメラーゼを阻害してウイルスの増殖を阻害する。エステルをカルボキシル基に戻すエステラーゼは、例えば脂溶態ペニシリンを活性ペニシリンに戻す。また、このようなタンパクをコードする遺伝子は薬剤感受性遺伝子又は自殺遺伝子として当業者に知られている。
【0028】
「融合タンパク」は、通常、2以上のタンパクの全部又は一部が結合し、一つのタンパクになったものを意味する。普通、人工的に遺伝子をつなげ、細胞に発現させてつくられる。HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性タンパクとが結合して一つのタンパクになったものをいう。
【0029】
「コードする核酸」は、翻訳される場合、特定のアミノ酸配列を生じる配列情報を含む核酸をいい、ゲノム由来の遺伝子DNA及びcDNAを含む。また、特定のホスト細胞でのコドン優先性に合わせるために導入される天然配列の縮重コドンを含む。
「ペプチド」は、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合したものをいい、オリゴペプチド及びポリペプチドを含む。ポリペプチドが特定の立体構造を持つとき「タンパク」という。
「発現可能に導入」は、タンパクをコードする核酸を細胞内で発現可能に導入することをいう。タンパクを細胞内で発現させるためには、遺伝子が少なくともプロモーター及びターミネーターと機能的に連結している必要がある。典型的には対象となる核酸をプロモーターに機能可能に連結し、この構築物を発現ベクターに組み込むことによって実現される。発現ベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、転写及び翻訳開始配列、特定の核酸の発現調節に有用なプロモーターを含む。場合によっては更にエンハンサーを含む。発現ベクターは、標準的な形質導入法により細胞に入れることができる。例えば、ウイルスベクター、アンプリコン、ジーンガン等の方法を含む。
【0030】
「細胞外から導入する」は、HSV UL14タンパク又はその誘導体及び輸送対象生理活性物質とを当該細胞内で発現させることなく、細胞外から導入することをいう。細胞内への導入方法は、細胞の種類及び状態、導入物質に依存するであろう。一般的には、単に培養液又は組織液に溶解して細胞自身による取り込み又は化学ポテンシャルに基づく浸透、拡散を利用可能である。
「標的組織の中の一つ又は複数の細胞に、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含ませる」は、細胞外からの導入による場合と細胞内での発現による場合を含む。細胞外からの導入は、隣接細胞からの導入を含む。
「接触状態に維持」は、少なくとも、生理活性物質の細胞間輸送が行われるまで、又は、行われている間、細胞同士を接触させておくことをいう。
「標的組織中への配送を増強する」は、組織に投与する場合に比べて、標的組織に目的物質がより多量に、より短時間に、又は、より多くの細胞に、導入されることをいう。「投与」は、生理活性物質が標的組織又は細胞に取り込まれることを目的に、本発明の方法によることなしに生理活性物質の存在下に組織又は細胞を置くことをいう。
【0031】
(a)HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞を調製する工程(工程(a)ともいう)
HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞の調製は、動物体、例えば、患者体内の標的組織中の細胞を対象にして行うことができる。または、患者の体内の標的組織から取り出した細胞を用いて行うことができる。この方法は、調製した細胞を組織中に再度注入したときに細胞同士の結合が容易に達成することを期待できる。しかし、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞の調製上の観点から、確立された系統の細胞や他の種類の細胞を、例えば、非腫瘍性であるなど、生体に悪影響を及ぼさないかぎり、治療のために有効な少量を使用することは可能である。このような細胞としては、例えば、哺乳類の腫瘍非形成性繊維芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、実質細胞、造血細胞、リンパ球細胞、上皮細胞、骨細胞、腎細胞、ケラチノサイト、照射等により非腫瘍性となった腫瘍形成性細胞等を挙げることができる。これらは、齧歯類、猫、犬、ウシ、馬、羊、非ヒト霊長類、又は、ヒト由来でありうる。また、これらの細胞系を遺伝子操作、例えば、アポトーシス不活性化等により、インビボでの細胞生存率を高めることも当業者には周知である。
【0032】
工程(a)は、HSV UL14タンパク若しくはその誘導体をコードする核酸及び/又は輸送対象生理活性物質をコードする核酸を、発現可能に細胞に導入するものであってよい。外来性の所望のタンパクやペプチドをコードする核酸を細胞で発現させることは真核細胞の形質導入として周知の技術である。例えば、Kriegler、Gene Transfer and ExpressionA Laboratory Manual、Stockton Press (1990)、及び、Ausubelら、Current Protocolsin Molecular Biology、Current Protocols(1994)等を参照できる。略述すれば、典型的にはcDNAライブラリーから目的のタンパクをコードするcDNAを、トランスフェクションとアッセイ及び選択を繰り返す発現クローニングと呼ばれる一連の操作を行うことにより、必要量得る。細胞への目的遺伝子の導入は、ウイルス、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、SV40ウイルス、ワクシニアウイルス、HSV等、又は、ベクターやアンプリコン、例えば、SV40由来(SRα296、pMT2、πH3M等)、ワクシニアウイルス由来(pTKgpt−F1s、pTKgpt−F2s、pTKgpt−F3s等)、アデノウイルス由来(pMY591、Ad1×51、AdtkSVR591等)、エプスタイン−バーウイルス由来(pHEBO、EBO−pcD−X等)、HSV由来(pP2−102、pP2−103、R3223、R3222等)、レトロウイルス由来(LN、LNSX、LNCX、ZIP−NEOSV(X)1、DC(X)等)等のベクターによる遺伝子導入と、DNAトランスフェクション、例えば、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、細胞内への直接微量DNA注入法、例えば遺伝子銃、DNA含有リポゾーム、レセプター仲介エンドサイトーシス、等による遺伝子導入が知られている。発現ベクターを用いた遺伝子導入法は、目的遺伝子を組み込んだ発現ベクターを用いる。発現ベクターは、典型的には、真核細胞転写ユニットに共有結合で連結された原核細胞レプリコン、又は、真核細胞での発現に必要な全ての成分を含む発現カセットを含む。目的遺伝子の標的細胞での発現は、ホスト細胞で複製することがわかっているベクターを選択し、そのベクターに機能的に、すなわち、読み取り枠、方向性、調節因子との連結、等を考慮することにより達成される。トランスフェクションは、一過性トランスフェクション又は安定トランスフェクションであり得る。前者は一般に高レベルの発現が期待でき、後者は中レベルの安定した発現が期待できる。
【0033】
HSV UL14タンパク若しくはその誘導体をコードする核酸及び/又は輸送対象生理活性物質をコードする核酸をコトランスフェクトする。適切なベクターにHSV UL14タンパク若しくはその誘導体をコードする核酸と輸送対象生理活性物質をコードする核酸とをつなげて導入すれば融合タンパクが発現できる。この形が輸送に適しているようであるが、HSV UL14タンパク若しくはその誘導体と輸送対象生理活性物質とが非共有結合、例えば、水素結合や、ファンデルワールス力、電荷同士の引力等で行動を共にすることもあり得る。または、その他の詳細が未知のメカニズムでもあり得る。西山らの次の報告も参照。Nishiyamaら、Journal of General Virology,82:321−330(2001)。
【0034】
または、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを細胞外から細胞に投与して導入するものであってもよい。投与は培地若しくは培養液に、又は、該当する場合は生体に、適用できる。生体への投与は、経口投与や注射による投与、経腸投与等であってよい。細胞外から導入する場合は、隣接する他の細胞から導入する場合も含む。この場合は、一旦ある細胞に導入されたHSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とが本発明の機構により細胞間輸送されて隣接細胞に導入され、更に、その隣接細胞に導入される。この機構は何段階も連続することにより、最初に導入された細胞から遠くにある細胞にまで目的物質を輸送できる。目的タンパクを入手するために、遺伝子操作細胞につくらせる方法は周知である。上述の文献及びその中の引用文献等がその役に立つ。略述すれば、適当な細胞、例えば、バクテリア、に目的遺伝子を発現可能に導入してその増殖を待ち、細胞内又は該当する場合は培地から、タンパクを回収する。
【0035】
導入遺伝子の発現を検出したり目的タンパクの検出のための定量法は、当業者に周知の多くの手法のいずれも使用できる。例えば、分光測光、ラジオグラフィー、電気泳動、HPLC、TLC等の生化学分析法、免疫沈降法、ELISA法、免疫蛍光法、ウエスタン分析等がタンパク分析、定量に使用でき、サザン分析、ノーザン分析、PCR、ゲル電気泳動法、放射能標識、アフィニティークロマトグラフ、等が核酸の分析、定量に使用できる。
【0036】
輸送対象生理活性物質の種類は本質的には限定されない。輸送される分子の大きさには恐らく現実的な上限があろう。この上限は、生理活性物質の種類、細胞の種類、HSV UL14タンパク又はその誘導体のアミノ酸配列、細胞の条件、温度、等の要因に依存すると思われる。ギャップ結合を介して輸送される場合は、一般的には、ギャップ結合を通過できる分子が対象となりうるが、分子自体がギャップ結合を通過しうるか否かのみによって対象物質が制限されるものではない。輸送対象となる生理活性物質としては、例えば、標識用化合物、薬剤、医薬、オリゴペプチド、糖、核酸、アミノ酸、脂肪酸、成長ホルモン、造血因子、インターロイキン、インスリン、プロドラッグ活性化酵素(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、β−グルコシダーゼ、カルボキシルエステラーゼ等)、サイトカイン、ヒトを含む各種動物(イヌ、ネコ等)由来のインターフェロン(−α、−β、−γ、−ω等)、インフルエンザウイルス(A、B)由来ヘまグルチニン、インフルエンザウイルス(A、B)由来ヘマグルチニンHA2成分、インフルエンザウイルス由来M2タンパク、インフルエンザウイルス由来HEFタンパク、プロドラッグ、ポリヌクレオチド、細胞に毒性を示しうる1群のペプチド、例えば、細胞内において毒性、細胞障害性を示すペプチド、例えば、リシン、BTトキシン、日本ニワトコ樹皮レクチン、等のトキシンタンパク、ペントンタンパク、補体、パーフォリン、カスパーゼ、グランザイム等の細胞障害性タンパク、p53タンパク等を挙げることができる。ポリヌクレオチドには、ヒト遺伝子、動物遺伝子、微生物遺伝子、ウイルス遺伝子、アンチセンスDNA、及び、アンチセンスRNAが含まれる。遺伝子には、治療に有用な各種ポリペプチドをコードする遺伝子、例えば、アポトーシスを促す遺伝子(p53等)、コネキシン、サイトカイン、増殖抑制因子、抗体、トキシンタンパク、腫瘍抗原、酵素、受容体、等をコードする遺伝子が含まれる。アンチセンスDNAには、プロモーター、ターミネーター及び遺伝子DNAからなり、細胞内で転写されたRNAが該遺伝子の発現を制御する人工DNAが含まれる。プロドラッグには、体内で切断されるような結合方法で可溶性の高分子に薬物を結合させた高分子プロドラッグ;アシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビルなどのアシクロヌクレオシド類;ガンシクロビル、A−5021、5−フルオロウラシルプロドラッグ等が含まれる。
【0037】
(b)前記生理活性物質を配送すべき細胞に、工程(a)で調製された細胞を接触させ、HSV UL14タンパク又はその誘導体とともに、前記生理活性物質を前記配送すべき細胞に移動させる工程(工程(b)ともいう)
UL14タンパク又はその誘導体を利用して、生理活性物質を隣接細胞に移動させる。細胞間のカーゴ分子の移動距離が最小限であることは輸送に有利である。更に、細胞同士の接触には、細胞間結合が形成される場合が含まれる。特に、ギャップ結合は、細胞間輸送路を構成することが知られている。ギャップ結合を構成するコネクソンのチャンネルの電子顕微鏡又は結晶学的検討からその直径は約1.5〜2nmであるようである。このことから通過し得る分子の大きさには上限がありそうである。糖、核酸、アミノ酸、脂肪酸、ペプチド、薬剤、等の通過が知られている。一層大きい分子、例えば、タンパク、複合脂質、多糖類、RNA等はチャンネルの直径に比べて大きいこともある。ギャップ結合、特にコネクソンを広げるか構造を変えることにより一層大きい分子の通過の可能性がある。ギャップ結合輸送を可能にするか、仲介するか、又は、強化する分子には、カドヘリン、コネキシン、カテニン、ダクチン、デスモコリン、デスモグレイン、テンシン等の細胞骨格タンパク、APCタンパク、DCCタンパク、インテグリン、ZO−1、オクルジン等がある。
【0038】
ヒートショックを細胞に与えると輸送効率を高め得る。ヒートショックによる影響の可能性としては、ギャップ結合になんらかの影響を及ぼし、物質の透過性を高めるか、UL14タンパクに構造変化をもたらし、輸送作用が高められるか、又は、細胞内の他の因子が作用することがあり得る。実際、UL14タンパクは、N末端寄りに40アミノ酸残基からなるヒートショックタンパク(Hsp70)のホモロガスストレッチを持つ。ヒートショックは、細胞に高温ストレスを短時間かけることである。ヒートショックの条件は、細胞や組織、細胞懸濁液の表面積対容積比等により異なるが、一般的には、細胞の生存適温から約5〜10℃程度高い温度に、約十数秒〜数十分程度さらす。
【0039】
生理活性物質の標的組織中への配送を増強する細胞間輸送方法
標的組織、例えば、腫瘍組織への抗癌剤の投与における問題点の一つが、効率的デリバリー系がないために多量の投与を余儀なくされ、無視できない副作用が生じる点にある。標的腫瘍組織の中の一つ又は複数の細胞に、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質、例えば、抗癌剤、トキシンタンパク、細胞障害性タンパク等を含ませ、腫瘍組織の他の細胞に接触させると、効率よく隣接する前記標的組織中の細胞群に抗癌剤、トキシンタンパク、細胞障害性タンパク等を移動させ得る。バイスタンダー効果として知られている隣接細胞への波及的影響を利用するためには、一旦細胞に入り、代謝を受けて活性体に変換される物質を用いることができる。プロドラッグはそのままでは細胞に有毒ではないが、活性化酵素で変換されるか、又は、他因子と複合体を形成することにより有毒化する。例えば、塩基アナログのアシクロビルやガンシクロビルは、HSV−tkの作用で活性型に変換され、細胞を死滅させる。活性型に変換された分子は、隣接細胞に効率的に輸送され、腫瘍組織の縮小や消滅をもたらす。
【0040】
標的組織や細胞には本質的に制限がない。固形組織は、細胞間輸送の効率の観点から有利であろう。例えば、骨髄、肝、肺、筋、リンパ、腎臓、脾臓、胸腺、膵臓、胎盤、子宮、軟骨、神経、等の組織、皮膚繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、等の細胞が挙げられる。これらの細胞や組織由来の腫瘍細胞、腫瘍組織も含まれる。
【0041】
生理活性物質の細胞内への輸送方法
上述のことから、本発明の方法は、細胞内への輸送にも適用可能である。生理活性物質をHSV UL14タンパク又はその誘導体とともに標的組織に投与することにより、生理活性物質の細胞内への輸送方法でもある。細胞外から細胞内への物質移動にコネクソンが関与しているという明確な証拠はないが、ギャップ結合を利用する輸送に類似のメカニズムが関与する可能性がある。他の輸送メカニズムが関与する場合もある。細胞間輸送の1過程である細胞内への輸送過程が関与し得る場合もある。
【0042】
本発明の組成物の投与法
HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞、及び、必要に応じて、当業者に周知の薬学的に許容される各種添加物、例えば、安定剤、pH調節剤、緩衝液等、を含有する、輸送対象生理活性物質の細胞内への輸送のための組成物は、当業者に周知の種々の方法で投与できる。例えば、注射、カニューレ又はカテーテルを用いた血管への注入、等を使用できる。注射は、腫瘍組織等の標的組織に配送するために、適宜静脈又は動脈が選択される。頭蓋内、腹腔内、脳脊髄液等への注射もあり得る。組織に直接注射することもあろう。例えば、内視鏡等の観察下に腫瘍に直接注射することができる。投与細胞量は、投与の目的、投与細胞、投与物質、標的組織の大きさ、標的までの配送距離、等により定められた効果的量が投与されるであろう。この量は、例えば、患者あたり10〜1010細胞でありうる。必要なら適当な予備試験を行うことができる。細胞培養に関する周知の技術を細胞の生存、ストックのために利用できる。
【0043】
HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質、及び、必要に応じて、当業者に周知の薬学的に許容される各種添加物、例えば、担体、賦形剤、安定剤、溶解補助剤、等を含有する、輸送対象生理活性物質の細胞内への輸送のための組成物は、上述の投与方法に準じた、当業者に周知の方法を使用できる。投与は、直接標的組織に行うこともでき、又は、注射、経口、経腸、等により血流中に投与して標的組織に配送することもできる。経口投与は、例えば、小腸等の粘膜に到達するまでタンパクの分解、変性を阻止する方法、例えば、カプセル封入等の周知の方法、を用いて行うことができる。投与量は、例えば、成人の場合、体重1kg当たり1〜1000mgのHSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質が投与され得る。
【0044】
【実施例】
本発明を試験例及び実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
細胞
アフリカミドリザル腎臓由来のVero細胞は、5%子ウシ血清含有イーグル最小培地に播種した。
【0046】
プラスミド
1)HSV−2 UL14タンパク発現用
HSV−2 UL14のORFは28229ヌクレオチド位置から28888ヌクレオチド位置にある。UL14コーディング領域を、HSV−2HindIIIb断片を含むプラスミドDNAからPCR増幅でクローニングした。PCRプライマーセットは、UL14f(5′GGGCGAATTCATGAGCCGAGACGCC(配列番号1))及びUL14r(5′GACGCTCGAGTCACTCGCCATCGGG(配列番号2))であった。PCRプライマーセットにはEcoRIサイトとXhoIサイトを入れておき、発現プラスミドpET−28a(Novagen)への組み込み位置とした。発現プラスミドpET28−UL14は、IPTG誘導性lacオペレーターとT7ファージプロモーターをもち、UL14停止コドンで翻訳停止する。E.coli BL21に導入してN末端6×Hisタグ化UL14タンパクを発現させた。
2)HSV−2 UL14導入用
Vero培養細胞での発現のためには、UL14ORFをpcDNA3.1(+)(Invitrogen)に挿入したpcDNA3−UL14を作成した。
【0047】
3)HSV−2 UL14アミノ酸欠失体発現用
UL14アミノ酸欠失体発現のために、pcDNA3−UL14Δ20N、pcDNA3−UL14Δ40N、pcDNA3−UL14Δ60N、pcDNA3−UL14Δ80N、pcDNA3−UL14Δ120N、pcDNA3−UL14Δ20C、pcDNA3−UL14Δ40C、を作成した。PCRプライマーは、UL14−20f(5′GAGAAAGCTTTCATGGCCGAGGTGTAC(配列番号3))、UL14−40f(5′GTGAAAGCTTAAATGCCTAGGTTTG(配列番号4))、UL14−60f(5′GAATAAGCTTCGATGCTAAAGTCCC(配列番号5))、UL14−80f(5′TGTGAAGCTTTTATGCTAAAGTCCC(配列番号6))、UL14−120f(5′CAGGAAGCTTAGATGGAAGAGGCCG(配列番号7))、及び、C14r(5′GACGGGATCCTCACTCGCCATCGGG(配列番号8))であった。C末端欠失体のためのプライマーセットは、UL14f(5′GGGCGAATTCATGAGCCGAGACGCC(配列番号9))、と、UL14−20r(5′ATCGGCGATATCACCCGGGGCGGGCTCCGGAG(配列番号10))及びUL14−40r(5′CTTGGGCCTCGAGTGACCCGGCGGC(配列番号11))であった。PCR産物をpcDNA3.1(+)に挿入した。
4)MycN末端タグ化HSV−2 UL14ND81タンパク発現用
Mycエピトープ(Met−Ala−Ser−Met−Gln−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leu(配列番号12))N末端タグ化UL14ND81タンパクを発現するために、pMyc−UL14ND81を、pMycのEcoR1/Xho1サイトに、PCR産物を挿入して構築した。PCRプライマーは、UL14−ND81f(5′GTTAGAATTCGCATGGAAGAGCAAGCGGCGCGA(配列番号13))及び2UL14RXho1(5′GACGCTCGAGATCACTCGCCATCGGGACAGTCCCGCGCGAA(配列番号14))であった。
【0048】
タンパク精製
発現プラスミドpET28−UL14をE.coli BL21DE3(Novagen)にトランスフェクトし、IPTGで誘導して6×Hisタグ化HSV−2 UL14タンパクを発現させた。タンパクはPrep Cell system(BioRad)で精製した。
【0049】
抗体
1)抗UL14タンパクポリクローナル抗体
E.coliで発現させた6×Hisタグ化HSV−2 UL14タンパクを用いてウサギを免疫接種した。MPL+TDM+CWSエマルジョンアジュバント(RIBI ImmunoChem Research)に0.6mgタンパクを含む接種液を剃毛した背中に皮下注射した。初回接種後、3週間に3回更に接種し、最終接種から1週間後、心臓から血液を採取した。血清をアッセイに使用した。
2)抗Mycモノクローナル抗体
Sigma社製マウスモノクローナル抗体を使用した。
【0050】
プラスミドトランスフェクション
製造元(GibcoBRL)の説明書に従ってリポフェクタミンを用いてトランスフェクトした。
免疫蛍光アッセイ
35mm培養皿中のカバースリップ上に生育した細胞を、製造元(GibcoBRL)の説明書に従ってリポフェクタミンを用いてトランスフェクトした。アッセイのためには37℃、24時間インキュベートした。細胞をPBSで洗い、冷アセトンで5分間定着した。細胞を、PBS中10%のろば血清で室温下30分間処理してブロックした。その後、カバースリップをPBSで洗い、ウサギ1次抗体でラベルした。37℃で1時間インキュベートし、PBSでよく洗い、FITC−標識抗ウサギIgG山羊抗体を2次抗体として、37℃、1時間ラベルした。PBSで濯いでからカバースリップをスライドガラスに置き、レーザー走査型顕微鏡で観察した。2重免疫アッセイは、ローダミン標識抗マウスIgG山羊抗体を第二の2次抗体として使用した。
【0051】
ウエスタン分析
細胞溶解物からの変性、可溶化させたタンパクをSDS−PAGE上で電気泳動分離し、PVDF膜(Amersham Japan)に転写した。転写した膜は抗体とインキュベートし、免疫プローブでブロットした。
【0052】
試験例1
ウサギポリクローナル抗体の反応性
抗HSV−2 UL14タンパクウサギポリクローナル抗体の反応性を調べるために、Vero細胞をHSV−1(レーン2及び5)、又は、HSV−2(レーン3及び6)で感染させ、15時間後に全タンパクを回収し、ウエスタン分析した。抗UL14タンパクウサギポリクローナル抗体とインキュベートするか(レーン1〜3)、又は、E.coli細胞溶解物で前処理した抗UL14タンパクウサギポリクローナル抗体とインキュベートした(コントロール)(レーン4〜6)。結果を図2に示した。図中、レーン1及び4は模擬感染である。
未処理抗体はHSV−2感染細胞中に34、33及び28kDaの明瞭なバンドを形成したが(レーン3)、模擬感染(レーン1)及びHSV−1感染(レーン2)には形成しなかった。前処理抗体は目立った変化がなかった(レーン6)。
この結果、抗UL14タンパクウサギポリクローナル抗体はHSV−2 UL14遺伝子産物に特異的であることが確認された。
【0053】
試験例2
UL14タンパクの発現
HSV−2感染細胞でのUL14タンパクの発現を検討するため、Vero細胞を模擬感染(レーン1)、HSV−2感染(レーン2〜9)させた。感染後細胞を300μg/mlACVの存在下に(レーン8及び9)、又は、非存在下に(レーン1〜7)培養し、感染後、3時間後(レーン2)、6時間後(レーン3)、9時間後(レーン4及び8)、12時間後(レーン5)、15時間後(レーン6及び9)及び18時間後(レーン7)に細胞を溶解してタンパクを回収した。タンパクはSDS−PAGEで分離後、抗UL14抗体を用いてウエスタン分析した。結果を図3に示した。
図から、UL14タンパクは感染後9時間で34kDaバンドに現れた。UL14タンパクはしかし、アシクログアノシン(ACV)存在下では感染後15時間たっても現れなかった(レーン9)。UL14タンパク発現はウイルスDNA合成と関連する。
【0054】
試験例3
HSV−2 UL14アミノ酸欠失体の発現
pcDNA3−UL14Δ40N、pcDNA3−UL14Δ80N、pcDNA3−UL14Δ20C、pcDNA3−UL14Δ40C、をそれぞれVero細胞にトランスフェクトし、UL14ND40タンパク(N末端アミノ酸から40アミノ酸欠失体(41−219))、UL14ND80タンパク(N末端アミノ酸から80アミノ酸欠失体(81−219))、UL14CD20タンパク(C末端アミノ酸から20アミノ酸欠失体(1−199))、及び、UL14CD40タンパク(C末端アミノ酸から40アミノ酸欠失体(1−179))を[35S]−メチオニン存在下に発現させた。TNEバッファーを用いて細胞溶解物を調製し、protein−G−sepharoseとUL14抗血清を用いてプロトコルに従って免疫沈降させた。免疫沈降終了後、SDS−PAGEにかけ、増感剤に浸してから、ゲルを乾燥し、フィルムに感光させた。結果を図4に示した。図中、UL14wtは非欠失体である。
28kDaにUL14ND40が、23kDaにUL14ND80が、30kDaにUL14CD20が、26kDaにUL14CD40が、現れた。
【0055】
試験例4
UL14アミノ酸欠失体タンパクの細胞間移動
UL14ND20タンパク(N末端アミノ酸から20アミノ酸欠失体(21−219))、UL14ND40タンパク(N末端アミノ酸から40アミノ酸欠失体(41−219))、UL14ND60タンパク(N末端アミノ酸から60アミノ酸欠失体(61−219))、UL14ND80タンパク(N末端アミノ酸から80アミノ酸欠失体(81−219))、及び、UL14ND120タンパク(N末端アミノ酸から120アミノ酸欠失体(121−219))をそれぞれVero細胞に発現させて細胞間移動を観察した。
以下では典型的に、UL14ND80タンパクの結果を示した。
pcDNA3−UL14Δ80NをVero細胞にトランスフェクトし24時間培養した後、DMSO又はサントカラシンDで処理した。冷アセトン固定後、間接免疫蛍光アッセイをした。結果を図5に示した。
【0056】
蛍光の局在パターンは、すべてのN末端アミノ酸欠失体で大差なかった。蛍光は、同心円状には分布せず、培養液を介した拡散によるものではないことを示した。Vero細胞は、ギャップ結合を形成する。たくさんの近隣細胞で明瞭な蛍光が観察された。マイクロフィラメント形成を阻害するサイトカラシンD処理では、当初にタンパクを発現していると思われる強い蛍光を発する細胞の周囲には殆ど蛍光が観察されなかった。一方、サイトカラシンDの溶媒であるDMSOを添加したときは、近隣細胞で明瞭な蛍光が観察された。サイトカラシンDは細胞間接着阻害効果を持つと考えられている。DMSO及びサントカラシンD処理細胞の蛍光分布の相違から、UL14アミノ酸欠失体タンパクは、細胞からその隣接細胞への細胞間輸送が行われていることが明らかである。特に、ギャップ結合を介した輸送を示唆する。
【0057】
試験例5
ヒートショックの併用
試験例4と同様にしてpcDNA3−UL14Δ80NをVero細胞にトランスフェクトし24時間培養した後、トランスフェクト細胞を43℃、30分間のヒートショックにさらした。短時間のヒートショックがタンパクの広がりを大幅に増強した。糸の様に見える蛍光パターンが時には50細胞以上に伸びていることが観察された。蛍光領域が、低倍率顕微鏡視野のおよそ半分を占める様子も観察された。
【0058】
実施例1
Mycペプチドとの融合タンパクの細胞間輸送
pMyc−UL14ND81をVero細胞にトランスフェクトし24時間培養した後、細胞を43℃、30分間のヒートショックにさらした。その後、冷アセトン固定をし、抗UL14ウサギ血清及び抗Mycモノクローナル抗体で二重免疫蛍光アッセイをした。結果を図6に示した。図中、矢印はトランスフェクトした細胞を示す。
【0059】
Mycペプチドとの融合タンパクが、トランスフェクトした細胞から周囲の隣接細胞へ輸送されたことが明らかであった。この輸送は、近傍の細胞からかなり隔たった細胞にも達していた。抗Myc抗体の蛍光は、抗UL14抗体の蛍光よりも弱かった。おそらく、モノクローナル抗体結合部位の数が少ないことが原因であろう。トランスフェクト細胞を中心とした同心円状の局在パターンを示さないことから、単なる拡散による移動でないことがわかる。
【0060】
試験例から、UL14タンパク又はその誘導体が細胞間移動することが確認された。この移動はヒートショックにより顕著に増強される。UL14タンパクのN末端側アミノ酸の欠失体は、少なくとも約120アミノ酸欠失体まで本質的に同一の局在パターンを示した。更に、ペプチドとの融合タンパクの輸送が示された。これらの結果、及び、本明細書の開示の全体から、UL14タンパク又はその誘導体が生理活性物質の細胞への輸送を行うことが示された。
【0061】
適用例
本発明による抗癌生理活性物質の標的組織への輸送
UL14タンパク又はその誘導体を用いて、抗癌生理活性物質を標的細胞及びその周辺細胞に導入する方法は、以下のようにして行うことができる。細胞障害性を細胞内部から示すペプチドをコードする核酸とUL14タンパクのN末端アミノ酸欠失体をコードする核酸とを結合したキメラ遺伝子を発現ベクターに組み込む。それをウイスルベクター、アンプリコン、ジーンガン等で腫瘍細胞組織に導入する。そして、トランスフェクトした細胞内で融合タンパクが発現して融合タンパクが細胞内で産生されるのを待ち、その組織にヒートショックをかけて、トランスフェクトした細胞の周囲の細胞にも該融合タンパクを導入する。
【0062】
【発明の効果】
本発明は、標的細胞又は組織に生理活性物質を効率的に配送することができる細胞内への輸送方法を実現する。
【0063】
【配列表】
Figure 2004016072
Figure 2004016072
Figure 2004016072
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【図面の簡単な説明】
【図1】HSV−2 UL14の遺伝子地図。
【図2】UL14タンパクに対するウサギ抗体の反応特異性を示す図。
【図3】HSV−2感染細胞によるUL14タンパク発現を示す図。
【図4】UL14アミノ酸欠失体の免疫沈降アッセイの図。
【図5】UL14ND80タンパクの細胞間輸送を表す図。
【図6】MYCタグ化UL14ND81タンパクの細胞間輸送を表す図。

Claims (23)

  1. (a)HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞を調製する工程、及び
    (b)前記生理活性物質を配送すべき細胞に、工程(a)で調製された細胞を接触させ、前記HSV UL14タンパク又はその誘導体とともに、前記生理活性物質を前記配送すべき細胞に移動させる工程
    を含むHSV UL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の細胞間輸送方法。
  2. HSV UL14タンパク誘導体は、UL14タンパクのアミノ酸欠失体である請求項1記載の方法。
  3. UL14タンパクのアミノ酸欠失体は、UL14タンパクのN末端アミノ酸を含むN末端側約120個以下のアミノ酸が欠失したものである請求項2記載の方法。
  4. 生理活性物質は、プロドラッグ活性化酵素、毒性タンパク、細胞障害性タンパク、サイトカイン、及び、インターフェロンからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドである請求項1記載の方法。
  5. HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とは融合タンパクを形成する請求項4記載の方法。
  6. 生理活性物質は、オリゴペプチド、糖、ヌクレオチド、アミノ酸、及び、脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の方法。
  7. 生理活性物質は、標識用化合物、薬剤、医薬、及び、プロドラッグからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の方法。
  8. 生理活性物質は、ポリヌクレオチドである請求項1記載の方法。
  9. ポリヌクレオチドは、ヒト遺伝子、動物遺伝子、微生物遺伝子、ウイルス遺伝子、アンチセンスDNA、及び、アンチセンスRNAからなる群から選択される少なくとも1種である請求項8記載の方法。
  10. 工程(a)は、HSV UL14タンパクのアミノ酸欠失体をコードする核酸及び/又は生理活性ポリペプチドをコードする核酸を、発現可能に細胞に導入するものである請求項1記載の方法。
  11. 工程(a)は、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを細胞外から細胞に導入するものである請求項1記載の方法。
  12. 工程(a)は、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを隣接する他の細胞から導入するものである請求項11記載の方法。
  13. HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞は、前記生理活性物質を配送すべき個体から由来するものである請求項1記載の方法。
  14. HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞は、腫瘍非形成性遺伝子操作繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、骨細胞、腎細胞、及び、ケラチノサイトからなる腫瘍非形成性細胞群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の方法。
  15. 工程(b)は、前記生理活性物質を配送すべき細胞に工程(a)で調製された細胞を、ギャップ結合を介して接触させるものである請求項1記載の方法。
  16. 工程(b)は、細胞へのヒートショックを併用するものである請求項1記載の方法。
  17. (c)標的組織の中の一つ又は複数の細胞に、HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含ませる工程、及び
    (d)工程(c)の細胞に隣接する前記標的組織中の細胞と前記工程(c)の細胞とを接触状態に維持し、HSV UL14タンパク又はその誘導体とともに前記生理活性物質を前記隣接する細胞に移動させる工程、
    を含むHSV UL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の標的組織中への配送を増強する細胞間輸送方法。
  18. 生理活性物質を配送すべき組織は、組織細胞間にギャップ結合を形成することができるものである請求項17記載の方法。
  19. 工程(c)で、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを共有結合又は非共有結合により結合した結合体として細胞に含ませ、工程(d)で前記結合体を隣接する細胞に移動させる請求項17記載の方法。
  20. 工程(c)は、HSV UL14タンパク又はその誘導体と生理活性物質とを標的組織に投与するものである請求項17記載の方法。
  21. (e)生理活性物質をHSV UL14タンパク又はその誘導体とともに標的組織に投与する工程、及び、
    (f)前記生理活性物質をHSV UL14タンパク又はその誘導体とともに前記標的組織中の一つ又は複数の細胞内に移動させる工程
    を含むHSV UL14タンパク又はその誘導体を用いた生理活性物質の細胞内への輸送方法。
  22. HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含む細胞を含有する、輸送対象生理活性物質の細胞内への輸送のための組成物。
  23. HSV UL14タンパク又はその誘導体と輸送対象生理活性物質とを含有する、輸送対象生理活性物質の細胞内への輸送のための組成物。
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