JP2004015553A - 同期制御方法と装置およびそれを用いた同期再生装置およびテレビジョン受信装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイムスタンプ精度判定部12は、入力されたタイムスタンプと自走タイムスタンプの時間差から入力されたタイムスタンプの精度の判定結果として、これらの時間差の許容値を設定し、出力する。同期処理部14は、入力されたタイムスタンプと自走タイムスタンプの時間差を許容値と比較する。これらの時間差が許容時間差の範囲外の場合、画像データをスキップおよびリピートする指示の情報を出力する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、画像情報と音声情報を含むストリームを復号するときの画像と音声の同期技術に関する。さらにこの同期技術を有する再生装置、テレビジョン受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大量の情報を高速に処理するためには、データの圧縮・伸長技術が不可欠である。この技術としてMPEG(Moving Picture Expert Group)方式が挙げられる。MPEGは3つのパートから構成されている。「MPEGシステムパート」は、画像データと音声データの多重化構造等を規定する。「MPEGビデオパート」は、画像データの高能率符号化方式等を規定する。「MPEGオーディオパート」は、音声データの高能率符号化方式等を規定する。さらにMPEGは、主として適応領域に応じてMPEG1、MPEG2、MPEG4などに分類される。
【0003】
MPEGにおける符号化から復号までの流れは以下の通りである。MPEGシステム符号化器(以下、符号化器)は、画像データと音声データ間の連係を保ちながらそれぞれMPEGビデオパートとMPEGオーディオパートに準拠して符号化を行い、MPEGビデオストリーム(以下、画像ストリーム)とMPEGオーディオストリーム(以下、音声ストリーム)を生成する。次に、マルチプレクサは、MPEGシステムパートに準拠して画像ストリームと音声ストリームの時分割多重化を行い、ひとつのMPEGシステムストリーム(以下、システムストリーム)を作成する。このシステムストリームは、伝送媒体を介して伝送されるか、または記録媒体に記録される。
デマルチプレクサは、システムストリームを画像ストリームと音声ストリームに分離する。次に、MPEGシステム復号器(以下、復号器)は、各ストリームを個別に復号して、画像データと音声データを生成する。画像データはディスプレイへ出力され、音声データはD/Aコンバータ及び低周波増幅器を介してスピーカへ出力される。
【0004】
復号器では、画像データと音声データの同期再生に関して、「リップシンク」を考慮する必要がある。リップシンクとは、ディスプレイに映し出されている画像と音声の同期がとれていることである。画像と音声にずれが生じ、その差が人間の感覚の検知限界以上になると、聴覚者は違和感を覚える。
画像データと音声データを同期再生するために、通常、復号器はシステムストリーム中のタイムスタンプを使用する。MPEGシステムにおいて、このタイムスタンプには、一般にPTS(Presentation Time Stamp)とDTS(Decoding Time Stamp)の2種類がある。PTSは、再生出力の時刻を管理するための情報であり、通常90kHzのクロックで計測した値が32ビット長で表される。復号器では、PTSと基準クロックであるSTC(System Time Clock)が一致したときに、各ストリームを復号し、再生出力を生成する。一方、DTSは復号開始時刻を管理するための情報である。DTSはその値がPTSと異なる場合のみ付加される。なお、STCは、システムストリーム中のSCR(System Clock Reference)を使用して、符号化器が意図した値にセットおよび校正される。
【0005】
従来の復号器では一般に、画像ストリームは、SCRと画像用PTS(以下、PTS−V)によって与えられたタイミングで復号される。また音声ストリームは、SCRと音声用PTS(以下、PTS−A)によって与えられたタイミングで復号される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の通り、復号器で画像データと音声データの同期再生を行うために、一般には、システムストリーム中のタイムスタンプが使用される。この場合、符号器で付加されるタイムスタンプの精度はリップシンクのずれを生じない程度の正確性を必要とする。しかし、実際には符号化器の設計や部品精度その他の事情により、精度の悪いタイムスタンプも存在する。さらに、ひとつのシステムストリームは多数の番組で構成されているが、番組ごとに符号化器または編集方法が異なるため、システムストリームには千差万別の精度を持つタイムスタンプが含まれる。
【0007】
本発明者はこうした状況下、以下の課題を認識するに至った。タイムスタンプによる同期を厳密に運用し、画像と音声のタイムスタンプが少しでもずれれば即座に再同期させるとすると、タイムスタンプの精度の悪いストリームでは、そのタイムスタンプをもとに判断する限り画像と音声のずれが大きいため、頻繁にこれらの再同期が行わる。そのため、再同期によって画像や音声のスキップやリピートが多く生じ、再生される画像の動きや音声がかえって不自然なものになるという課題があった。また、タイムスタンプによる同期を粗く運用し、画像と音声のタイムスタンプが大きくずれたときのみ再同期させるとすると、タイムスタンプの精度の良いストリームでも画像と音声のタイムスタンプの同期が不十分になるため、再生された画像と音声にずれが生じるという課題があった。
【0008】
本発明はこれらの課題を解決するためになされたものであり、その目的は、タイムスタンプの精度に対して適応的な同期処理を行うことである。すなわち、タイムスタンプが高精度の場合、タイムスタンプを有効利用して正確に画像と音声の同期をとることである。一方、タイムスタンプが低精度の場合、あまり有効でないタイムスタンプへの依存を減らし、画像と音声の再同期を減少させることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様は、同期制御装置に関する。この装置は、取得したストリームに含まれるタイムスタンプの精度を判定するタイムスタンプ精度判定部と、判定結果に応じて同期の処理を行う同期処理部とを含む。
「タイムスタンプの精度」とは、符号化器で付加されるタイムスタンプの値に含まれる誤差の程度を意味する。この誤差が大きい場合、タイムスタンプのタイミングをもとに復号しても、再生された画像と音声にずれが生じる。
「同期」とは、本来再生時における画像と音声のタイミングが一致していることである。ここでは、それを実現する技術に関連して、複数種のタイムスタンプが示すタイミングやそのタイムスタンプを生成するもとになったクロックの周波数が概略一致していることも含むものとする。
この装置によれば、ストリームに含まれるタイムスタンプの精度を判定し、その結果にあわせて処理を変更するため、タイムスタンプの精度に応じた適応的な同期処理が可能である。
【0010】
タイムスタンプ精度判定部は、ストリームに含まれるタイムスタンプと所定の基準となるタイムスタンプの時間差が単調増加または単調減少した場合に、ストリームに含まれるタイムスタンプの精度の判定を中止し、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプが同期していないと予備的に判断してもよい。その結果、後述のごとく必要に応じて装置内部のクロック周波数を調整してもよい。また、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプの時間差より、ストリームに含まれるタイムスタンプの精度を定めてもよい。また、時間差の追跡結果をもとに、判定結果として時間差に関する許容値を設定し、これを同期処理部へ出力してもよい。
【0011】
「ストリームに含まれるタイムスタンプ」とは、ストリーム中に存在する情報に対するタイムスタンプであり、例えば画像や音声に関するタイムスタンプである。
「基準となるタイムスタンプ」には、ストリームに含まれるタイムスタンプと当該装置で生成されるタイムスタンプが含まれる。
「単調増加または単調減少」とは、ある値が一定時間の間連続して増加または減少する状態を意味するが、ここではさらに巨視的に増加または減少する状態も含むものとする。このとき、微視的な変化を無視してもよい。
「時間差に関する許容値」とは、例えば、タイムスタンプの精度が悪くなればその範囲が大きくなり、またタイムスタンプの精度が良くなればその範囲が小さくなる性質を有する値である。
【0012】
この装置によれば、ストリームに含まれるタイムスタンプの精度の判定結果として、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプの時間差に関する許容値を設定し、後の処理をこの許容値にもとづいて行わせる。この許容値はタイムスタンプの精度の変化に追従して変化するため、タイムスタンプの精度に応じた適応的な同期処理が可能である。
【0013】
同期処理部は、時間差が許容値よりも小さい場合に、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプが同期していると判断してもよい。また、許容値が所定の値より大きい場合に、ストリームに含まれるタイムスタンプの進行速度の平均値をもとに同期を制御してもよい。
「タイムスタンプの進行速度」とは、タイムスタンプの値の時間変化率である。これは、ふたつの基準時間t1とt2におけるタイムスタンプの値をそれぞれTS(t1)とTS(t2)とした場合、TS(t2)−TS(t1)をt2−t1で除算して求められる。
【0014】
基準となるタイムスタンプは当該装置にて局所的に生成されたものであってもよい。その場合、基準となるタイムスタンプは、ストリームに含まれているタイムスタンプではなく、当該装置で生成されているため、一定のタイミングで処理することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、同期制御方法に関する。この方法は、タイムスタンプが付与されたストリームを取得するステップと、取得したストリームのタイムスタンプの精度を判定するステップと、判定結果に応じて以降の処理内容を変更するステップとを含む。
精度の判定は、ストリームに含まれるタイムスタンプと所定の基準となるタイムスタンプの時間差をもとに行われてもよい。また、精度を判定するステップは、時間差の追跡結果をもとに、判定結果として時間差に関する許容値を設定し、出力してもよい。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、同期再生装置に関する。この装置は、同期制御装置と、ストリームを取得し、同期制御装置に備えられた同期処理部による処理結果を受けてストリームを復号する復号部とを含む。
「復号部」とは、符号化された信号を符号化される前の信号に変換する部分であるが、ここでは復号のために必要なタイミング同期、クロック生成などの処理を行う部分も含むものとする。この装置によれば、タイムスタンプの精度に応じた適応的な同期処理のもと復号が行われるので、自然な画像と音声の再生が可能である。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、テレビジョン受信装置に関する。受信した放送波を復調してストリームを生成する受信ブロックと、同期再生装置と、復号部により復号されたストリームをもとに音声を出力する音声出力部と、復号部により復号されたストリームをもとに画像を表示する画像表示部とを含む。
「放送波」とは、放送衛星、通信衛星、地上波テレビジョン送信装置などが送信する画像、音声、文字などの情報の伝送を目的とした電波を意味するが、ここではさらに無線回線における電波だけでなく有線回線を伝達する信号も含むものとする。
この装置によれば、タイムスタンプの精度に応じた適応的な同期処理のもと復号が行われるので、自然な画像と音声の再生が可能なテレビジョン受信装置を実現できる。
【0018】
同期処理部は、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプが同期していないと判断した場合に、ストリームに含まれる画像の出力を制御することにより同期を制御してもよい。タイムスタンプ精度判定部または同期処理部は、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプが同期していないと判断した場合に、ストリームに含まれるタイムスタンプをもとに出力を制御してもよい。タイムスタンプ精度判定部または同期処理部は、ストリームに含まれるタイムスタンプと基準となるタイムスタンプが同期していないと判断した場合に、送信側と受信側のクロックタイミングを同期させてもよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る同期再生装置100の構成図である。同期再生装置100は、タイムスタンプ抽出部10、復号器16、同期制御装置200を有する。また同期制御装置200は、タイムスタンプ精度判定部12、同期処理部14を有する。
【0021】
タイムスタンプ抽出部10は、入力されたシステムストリームからタイムスタンプを選択する。図2は、システムストリームの一例である。ひとつのシステムストリームには画像ストリームと音声ストリームが多重化されており、ヘッダHおよびパケットV1、V2、A1、V3、A2・・・を含む。ここで、V1、V2等は画像ストリームを構成するパケットであり、A1、A2等は音声ストリームを構成するパケットである。ここでは、V1とA1の先頭にPTS−VとPTS−Aが付加されている。図1のタイムスタンプ抽出部10はタイムスタンプ精度判定部12と同期処理部14へPTS−Vを出力する。
【0022】
タイムスタンプ精度判定部12は、PTS−Vと復号器16で生成されたタイムスタンプ(以下、自走TS)の時間差をもとにPTS−Vの精度の判定結果としてPTS−Vと自走TSの時間差に関する許容値を出力する。ここで、自走TSとは、システムストリームから得た情報とSTCから生成されるタイムスタンプである。システムストリームから得た情報とは、例えば画像ならば30枚/秒、音声ならば44.1kHzなどである。PTS−Vと自走TSの時間差とPTS−Vの精度の関係は図7に示される。図は2種類のPTS−Vと自走TSの時間差を○印と×印で示す。図中の○印の各点は、×印の各点と比較してばらつきが小さく、時間差0付近に存在する。このとき、○印で表されたPTS−Vの精度は、×印で表されたものより一般に高いといえる。なぜなら、一般に正確なタイミングを有するSTCと既知の情報から生成される自走TSに近いタイムスタンプを有するからである。さらに図1のタイムスタンプ精度判定部12は、図7に示されるこれらのデータをもとにPTS−Vと自走TSの時間差に関する許容値(以下、許容時間差)を設定し、これを許容時間差情報70として同期処理部14へ出力する。この設定方法は後述する。
【0023】
同期処理部14は、PTS−Vと自走TSの時間差を許容時間差と比較する。これらの時間差が許容時間差の範囲内にある場合、PTS−Vと自走TSの同期のずれは無視できるものとし、復号器16へは何の情報も出力しない。一方、PTS−Vと自走TSの時間差が許容時間差の上限値よりも大きい場合、PTS−Vと自走TSの同期のずれが大きく、画像データの出力が遅れているものとし、復号器16へ復号時に画像データをスキップする指示の情報を出力する。また、一方、PTS−Vと自走TSの時間差が許容時間差の下限値よりも小さい場合、画像データの出力が進んでいるものとし、復号器16へ復号時に画像データをリピートする指示の情報を出力する。ここで一般に、音声データは画像データよりスキップやリピートなどのタイミング調整によって不自然感が大きくなるため、音声データのタイミング調整は行わないものとしている。そのため、PTS−Aと自走TSのずれは基本的に無視している。
【0024】
復号器16は、画像ストリームと音声ストリームをそれぞれ画像データと音声データに復号する。最初のシステムストリームが入力されたときに、その中のPTS−VとPTS−Aより画像データと音声データの出力を同期させる。その後は、自走TSにより与えられたタイミングで復号を行う。同期処理部14からスキップ・リピート情報72の指示を受けた場合、復号器16はそれに従って画像データをスキップまたはリピートし、画像データと音声データの同期を維持する。最終的に復号器16は、復号された画像データと音声データを出力する。
【0025】
図3は、画像ストリームの同期制御処理の手順を示す図である。復号器16は、PTS−VとPTS−Aを使用して画像データ出力と音声データ出力を同期させる(S10)。タイムスタンプ精度判定部12は、PTS−Vと自走TSの時間差から許容時間差を設定する(S12)。同期処理部14は、PTS−Vと自走TSの時間差が許容時間差の範囲にあるか否かを判定し、その結果に応じた処理を行う(S14)。以上の処理は、画像ストリームが終了するまで繰り返し行われる(S16のN)。これより許容時間差の値は逐次更新される。
【0026】
図4は、精度判定処理(S12)の手順を示す図である。タイムスタンプ精度判定部12は、PTS−Vと自走TSの時間差を計算する(S20)。この値が図8のように、単調増加あるいは単調減少する場合(S22のY)、復号器16において再びPTS−VとPTS−Aを使用して画像データ出力と音声データ出力を再同期させる(S24)。精度を判定する以前に、PTS−Vと自走TSが同期していないと考えられるからである。一方、単調増加あるいは単調減少しない場合(S22のN)、PTS−Vと自走TSの時間差からPTS−Vの精度に対応した許容時間差を設定する(S26)。図9は、PTS−Vと自走TSの時間差対時間を示す図である。この図の中で許容時間差は最小値T1と最大値T2の幅を有する。T1とT2の値は、例えば、それまで測定した時間差の最小値と最大値の80%値であってもよいし、すべての時間差から統計的に導出した値であってもよい。T1とT2は許容時間差情報70として、同期処理部14に出力される(S28)。
【0027】
図5は、同期判定処理(S14)の手順を示す図である。同期処理部14は、PTS−Vと自走TSの時間差Tを計算する(S30)。タイムスタンプ精度判定部12から許容時間差を示すT1とT2を入力する(S32)。時間差TをT1およびT2と比較する。その結果、TがT1<T<T2となる値であれば、PTS−Vと自走TSの同期のずれは無視できるものとする(S34のY)。一方、T>T2またはT<T1の場合(S34のN)、前者では、画像データの出力が遅れているものとし、復号器16へ復号時に画像データをスキップする指示の情報をスキップ・リピート情報72として出力する。また、後者では、画像データの出力が進んでいるものとし、復号器16へ復号時に画像データをリピートする指示の情報をスキップ・リピート情報72として出力する(S36)。
【0028】
同期処理部14は、画像データのスキップとリピートによって、自走TSがPTS−Vに一致するように処理を行う。例えば、PTS−Vと自走TSの時間差の間に表示される画像データをスキップしたり、PTS−Vと自走TSの時間差の間で同一の画像データをリピートして表示する指示をする。しかし、PTS−Vの精度が悪い場合、自走TSをPTS−Vに一致させても再生される画像と音声にずれが生じる可能性がある。PTS−V自体の誤差が大きいと考えられるためである。この場合、自走TSをPTS−Vではなく、PTS−Vの進行速度の平均値から決定される値に一致させるよう処理を行う。この値は、図10において点線で示される。この点線は、プロットされた各点の平均的な値を示し、例えば各点の最小二乗法により求められる。この点線を時間で微分したものが、PTS−Vの進行速度の平均値である。
【0029】
上記のPTS−Vの精度が悪いとの判断は、同期処理部の中の比較部(図示せず)によって、例えば、T2とT1の差とあらかじめ定められている値との比較によりなされる。また、上記のPTS−Vの進行速度の平均値から決定される値は、同期処理部の中の計算部(図示せず)によって、計算される。
【0030】
図6は、音声ストリームの同期制御処理の手順を示す図である。復号器16は、PTS−AとPTS−Vを使用して音声データ出力と画像データ出力を同期させる(S40)。その後、復号器16は、音声ストリームが記録されているバッファの状態を確認する(S42)。このバッファは、例えば、メインメモリやハードディスクである。このバッファがオーバーフローまたはアンダーフローしている場合(S44のY)、S40と同様にPTS−AとPTS−Vを使用して音声データ出力と画像データ出力を再同期させる(S46)。バッファがオーバーフローしている場合は、音声データの出力が遅れ、アンダーフローしている場合は、音声データの出力が進んでいると考えられるからである。以上の処理は、音声ストリームが終了するまで繰り返し行わる(S48のN)。この処理は、バッファにおける音声ストリームの記録量を監視しているだけのため、容易に実施できる。
【0031】
このように本実施の形態によれば、タイムスタンプの精度に応じて適応的に許容時間差を決定し、それをもとに画像データと音声データの同期を判定しているため、タイムスタンプの精度に対して最適な同期処理を行うことができる。すなわち、タイムスタンプの精度が良ければ、許容時間差の範囲を狭くし、正確に画像と音声を同期させる。タイムスタンプの精度が悪ければ、許容時間差の範囲を広くし、画像と音声の再同期を減少させる。また基準となるタイムスタンプを復号器内部で一般に精度の高いSTCと既知の情報から生成しているため、安定した動作が可能である。さらに、システムストリームに含まれるタイムスタンプの精度が悪い場合、基準タイムスタンプがタイムスタンプの進行速度の平均値から決定される値に一致するように、データのスキップとリピートする時間を調節していることから、システムストリームに含まれるタイムスタンプの誤差の影響を軽減することが可能である。
【0032】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2に係る同期再生装置110の構成図である。同期再生装置110は、タイムスタンプ抽出部10、復号器16、同期制御装置200、システムクロック同期処理部18を有する。このうち、タイムスタンプ抽出部10、復号器16、同期制御装置200は図1と同一である。図12はシステムクロック同期処理部18の構成図である。システムクロック同期処理部18は、クロックデータ抽出部60、減算器62、LPF(ローパスフィルタ:Low Pass Filter)64、VCXO(電圧制御水晶発振器:VoltageControlled Crystal Oscillator)66、カウンタ68を有する。
【0033】
システムクロック同期処理部18は、復号器における基準クロックSTC74を符号化器が意図した値にセットおよび校正し、出力する。自走TSは復号器16でこのSTC74をもとに、例えば分周により生成される。また、システムクロック同期処理部18は、図に示されていないがタイムスタンプ精度判定部12からの指示により、PTS−Vと自走TSの時間差が単調増加または単調減少する場合に、STC74の再同期を行う。
【0034】
クロックデータ抽出部60は、入力されたシステムストリームからSCRを選択する。減算器62は、SCRとSTC74の差を計算する。LPF64はこの差の高周波の雑音成分を除去する。その結果は電圧値で表され、符号化器と復号器のSTCの差に比例する。
VCXO66は、電圧値に応じた周波数の信号を発振する。この信号は、カウンタ68によりSTC74に変換される。STC74は、例えば、MPEG1で90kHz、MPEG2で27MHzである。STC74は復号器16に入力され、自走TSが生成される。
【0035】
図8に示すようなPTS−Vと自走TSの時間差が単調増加あるいは単調減少する場合、これらの周波数自体が一致していない可能性がある。そのとき、図11のシステムクロック同期処理部18でSTC74を再同期させ、PTS−Vと自走TSの周波数を一致させることが、有効であると考えられる。なぜなら、あるタイミングでPTS−Vと自走TSを同期させても、これらの周波数が一致していないので、次第に同期もずれるからである。図4のS24のステップで以上の処理が行われる。
このように本実施の形態によれば、基準タイムスタンプとシステムストリーム中のタイムスタンプの周波数を同期させることが可能である。
【0036】
(実施の形態3)
図13は、実施の形態3に係る同期再生装置120の構成図である。同期再生装置120は、タイムスタンプ抽出部20、復号器22、同期制御装置210を有する。また、同期制御装置210はタイムスタンプ精度判定部12、同期処理部14を有する。
【0037】
タイムスタンプ抽出部20は、入力されたシステムストリームからPTS−AとPTS−Vを選択し、これらを同期制御装置210に出力する。
同期制御装置210におけるタイムスタンプ精度判定部12と同期処理部14は、図1と同一である。しかし、タイムスタンプ精度判定部12と同期処理部14は共にPTS−Vと自走TSの時間差でなく、PTS−VとPTS−Aの時間差を計算し、この値をもとに、図4と図5に示す精度判定処理と同期判定処理を行う。
復号器22は、図1と同様に、画像ストリームと音声ストリームをそれぞれ画像データと音声データに復号する。復号処理は、自走TSまたはPTS−Aのタイミングで行われる。
【0038】
このように本実施の形態によれば、時間差を計算するときの基準タイムスタンプにPTS−Aを使用しているため、PTS−VとPTS−Aの時間差の検出が確実である。さらに、PTS−VとPTS−Aの時間差から許容時間差を決定し、それをもとに画像データと音声データの同期を判定しているため、タイムスタンプの精度に対して適応的に同期処理を行うことができる。
【0039】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4に係る同期再生装置130の構成図である。同期再生装置130は、音声タイムスタンプ抽出部24、画像タイムスタンプ抽出部26、音声同期制御装置220、画像同期制御装置230、復号器16を有する。また、音声同期制御装置220は音声タイムスタンプ精度判定部28、音声同期処理部30を有し、画像同期制御装置230は画像タイムスタンプ精度判定部32、画像同期処理部34を有する。このうち復号器16は、図1と同一であり、画像タイムスタンプ抽出部26、画像タイムスタンプ精度判定部32、画像同期処理部34は図1のタイムスタンプ抽出部10、タイムスタンプ精度判定部12、同期処理部14と名称は異なるが同一である。ここで図14は、図1と異なり、同期制御装置200を画像ストリームだけでなく音声ストリームにも適用している。
【0040】
音声タイムスタンプ抽出部24は、入力されたシステムストリームからPTS−Aを選択し、音声タイムスタンプ精度判定部28と音声同期処理部30に出力する。
音声タイムスタンプ精度判定部28と音声同期処理部30は、図1のタイムスタンプ精度判定部12と同期処理部14と同様の処理を行う。しかし、これらは共にPTS−Vと自走TSの時間差でなく、PTS−Aと自走TSの時間差を計算し、この値をもとに、図4と図5に示す精度判定処理と同期判定処理を行う。復号器16は音声ストリームと画像ストリームを復号し、音声データと画像データを出力する。このとき、音声データに対しても音声同期処理部30からの指示にもとづきスキップとリピート処理を施す。
【0041】
このように本実施の形態によれば、音声データについてもPTS−Aの精度に応じて適応的に許容時間差を決定し、それをもとに画像データと音声データの同期を判定しているため、音声データもタイムスタンプの精度に対して最適な同期処理を行うことができる。
【0042】
(実施の形態5)
図15は、実施の形態5に係るテレビジョン受信装置150の構成図である。テレビジョン受信装置150は、アンテナ48、受信ブロック40、処理ブロック42、再生ブロック44を有する。受信ブロック40は、チューナ46を有する。処理ブロック42はCPU50、メモリ52、同期再生装置100を有する。再生ブロック44は音声出力部54、スピーカ58、表示装置56を有する。ここで、処理ブロック42における同期再生装置100は図1と同一である。
【0043】
受信ブロック40は、アンテナ48を介して放送波を受信する。受信ブロック40に含まれるチューナ46は受信した放送波の中からユーザが選んだチャネルに対して復調を施す。この復調は、例えば、放送衛星を使ったデジタル放送において8PSKである。復調で得られたシステムストリームは、処理ブロック42に出力される。
処理ブロック42の同期再生装置100はCPU50およびメモリ52と連携し、放送局で符号化され送信された画像及び音声ストリームを復号する。同期再生装置100の動作は前述の通りである。同期再生装置100は復号された音声データを音声出力部54へ、復号された画像データを表示装置56へ出力する。音声出力部54は、入力された音声データに所定の処理を施し、最終的に音声をスピーカ58へ出力する。また、表示装置56は、入力された画像データに所定の処理を施し、最終的に画像をモニタ等へ出力する。
このように本実施の形態によれば、タイムスタンプの精度に対して最適な同期処理を行う機能を有するテレビジョン受信装置を実現することが可能である。
【0044】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。そうした変形例をいくつか説明する。
【0045】
実施の形態1では、精度判定処理において許容時間差を逐次更新している。しかし、許容時間差は所定の値を固定的に使用してもよい。例えば、最初に決定されたものを使用することである。要は、同期しているか否かの判断基準がタイムスタンプの精度に対応して定められればよい。
【0046】
実施の形態1では、精度判定処理の先頭においてPTS−Vと自走TSの時間差が単調増加あるいは単調減少する場合に、PTS−VとPTS−Aを使用して画像データ出力と音声データ出力を再同期させている。しかし、単調増加あるいは単調減少する場合に限られず、所定の関数に従う場合に、再同期を行ってもよい。さらにこれらの処理を処理の先頭以外で行ってもよい。要は、PTS−Vと自走TSの周波数が一致していないことが検出できればよい。
【0047】
実施の形態1では、同期判定処理部においてPTS−Vと自走TSの時間差と許容時間差を比較してこれらが同期しているかを判断している。しかし、この判断条件に別の条件が付加されてもよい。複数回の比較結果をもとになされてもよい。例えば、所定回数の時間差が連続して許容時間差の上限値より大きくなった場合に、同期していないと判断してもよい。要は、特定の基準により同期しているか否かの判断がされればよい。
実施の形態1では、画像と音声の同期を判断するために、PTSを使用している。しかし、これはPTSでなくてもよい。例えば、DTSでよい。要は、画像と音声を再生するタイミングが分かればよい。
【0048】
実施の形態4では、音声データの出力における同期処理を画像データと同一のものとしている。しかし、これらは完全に同一である必要はない。例えば、音声データの許容時間差に重み付けを行い、この範囲を測定結果よりも広げることによって、音声データはスキップおよびリピートされにくくしてもよい。要は、自然に画像と音声が再生されればよい。結果として、より自然な再生が実現する。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、タイムスタンプの精度に対して適応的な同期処理を行うことができる。すなわち、タイムスタンプが高精度の場合、タイムスタンプを有効利用して正確に画像と音声の同期をとることができる。一方、タイムスタンプが低精度の場合、あまり有効でないタイムスタンプへの依存を減らし、画像と音声の再同期を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る同期再生装置を示す図である。
【図2】図1の装置に入力されるシステムストリームを示す図である。
【図3】図1の装置による画像ストリームの同期制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図3の手順における精度判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図3の手順における同期判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の装置による音声ストリームの同期制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図1の装置におけるPTS−Vと自走TSの時間差とPTS−Vの精度の関係を示す図である。
【図8】図1の装置におけるPTS−Vと自走TSの時間差が単調増加していることを示す図である。
【図9】図1の装置における許容時間差を示す図である。
【図10】図1の装置におけるタイムスタンプの進行速度の平均値を示す図である。
【図11】実施の形態2に係る同期再生装置を示す図である。
【図12】図11の装置におけるシステムクロック同期処理部を示す図である。
【図13】実施の形態3に係る同期再生装置を示す図である。
【図14】実施の形態4に係る同期再生装置を示す図である。
【図15】実施の形態5に係るテレビジョン受信装置を示す図である。
【符号の説明】
10 タイムスタンプ抽出部、 12 タイムスタンプ精度判定部、 14 同期処理部、 16 復号器、 18 システムクロック同期処理部、 20 タイムスタンプ抽出部、22 復号器、 24 音声タイムスタンプ抽出部、 26 画像タイムスタンプ抽出部、 28 音声タイムスタンプ精度判定部、 30 音声同期処理部、 32 画像タイムスタンプ精度判定部、 34 画像同期処理部、 40 受信ブロック、 42 処理ブロック、 44 再生ブロック、 46 チューナ、 48 アンテナ、 50 CPU、 52 メモリ、 54 音声出力部、 56 表示装置、 58 スピーカ、 60 クロックデータ抽出部、 62 減算器、 64 LPF、 66 VCXO、 68カウンタ、 70 許容時間差情報、 72 スキップ・リピート情報、 74 STC、 100 同期再生装置、 110 同期再生装置、 120 同期再生装置、 130 同期再生装置、 150 テレビジョン受信装置、 200 同期制御装置、 210 同期制御装置、 220 音声同期制御装置、
230 画像同期制御装置。
Claims (10)
- 取得したストリームに含まれるタイムスタンプの精度を判定するタイムスタンプ精度判定部と、
判定結果に応じて同期の処理を行う同期処理部と、
を含むことを特徴とする同期制御装置。 - 前記タイムスタンプ精度判定部は、前記ストリームに含まれるタイムスタンプと所定の基準となるタイムスタンプの時間差が単調増加または単調減少した場合に、前記ストリームに含まれるタイムスタンプの精度の判定を中止し、前記ストリームに含まれるタイムスタンプと前記基準となるタイムスタンプが同期していないと予備的に判断することを特徴とする請求項1に記載の同期制御装置。
- 前記タイムスタンプ精度判定部は、前記ストリームに含まれるタイムスタンプと前記基準となるタイムスタンプの時間差より、前記ストリームに含まれるタイムスタンプの精度を定めることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の同期制御装置。
- 前記タイムスタンプ精度判定部は、前記時間差の追跡結果をもとに、前記判定結果として前記時間差に関する許容値を設定し、これを前記同期処理部へ出力することを特徴とする請求項3に記載の同期制御装置。
- 前記同期処理部は、前記時間差が前記許容値よりも小さい場合に、前記ストリームに含まれるタイムスタンプと前記基準となるタイムスタンプが同期していると判断することを特徴とする請求項4に記載の同期制御装置。
- 前記同期処理部は、前記許容値が所定の値より大きい場合に、前記ストリームに含まれるタイムスタンプの進行速度の平均値をもとに同期を制御することを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の同期制御装置。
- 前記基準となるタイムスタンプは当該装置にて局所的に生成されたものであることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の同期制御装置。
- タイムスタンプが付与されたストリームを取得するステップと、
取得したストリームのタイムスタンプの精度を判定するステップと、
判定結果に応じて以降の処理内容を変更するステップと、
を含むことを特徴とする同期制御方法。 - 請求項1から7のいずれかに記載された同期制御装置と、
前記ストリームを取得し、前記同期制御装置に備えられた前記同期処理部による処理結果を受けて前記ストリームを復号する復号部と、
を含むことを特徴とする同期再生装置。 - 受信した放送波を復調してストリームを生成する受信ブロックと、
請求項9に記載された同期再生装置と、
前記復号部により復号されたストリームをもとに音声を出力する音声出力部と、
前記復号部により復号されたストリームをもとに画像を表示する画像表示部と、
を含むことを特徴とするテレビジョン受信装置。
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