JP2004014062A - 光ディスクの製造方法及び光ディスク - Google Patents
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Abstract
【課題】スピンコート法での膜厚均一性向上、及び塗布量低減による裏廻りやミスト付着などの塗布欠陥防止。
【解決手段】スピンコートする前にあらかじめ、最終的に形成される保護膜の1.1〜10倍の膜厚を有する連続した塗布膜を形成し、塗布量に対して最終的に形成される保護膜の量を10%以上にすることで、均一な膜厚を得る。また、塗布量を低減させることで、スピンコート時のミストの発生などを抑制して塗布欠陥を防止する。
【選択図】 図1
【解決手段】スピンコートする前にあらかじめ、最終的に形成される保護膜の1.1〜10倍の膜厚を有する連続した塗布膜を形成し、塗布量に対して最終的に形成される保護膜の量を10%以上にすることで、均一な膜厚を得る。また、塗布量を低減させることで、スピンコート時のミストの発生などを抑制して塗布欠陥を防止する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクに均一な膜厚の塗布膜を効率良く形成する光ディスクの製造方法および光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年書き換え可能を特徴とする光磁気ディスクが上市され、コンピューターのコード情報や画像などのデータファイルの記録に応用されつつある。更に、モバイルコンピューターの普及や、情報の多様化に伴い、小型大容量の光磁気ディスクが要求されてきている。
【0003】
光ディスクの製造方法においては、一般的に、樹脂基板上に記録膜を形成した後に、スピンコート方式により保護膜を形成している。
【0004】
スピンコート方式は、基板内周に材料をドーナツ状に塗布した後、高速回転により基板全面に均一な塗布膜を形成する方法であり、主に塗布液の粘度や塗布量と、回転条件を設定することにより任意の塗布膜厚を得られる特徴があり、生産性が優れていると考えられている。しかしながら、小型大容量化に伴って保護膜の高品位化が要求されるにしたがって、様々な塗布欠陥や製造上の問題点が確認されている。特に、基板上に塗布する材料の利用効率が悪く、均一な膜厚の塗布膜を形成するために、過剰な量の塗布が必要であり、塗布膜として最終的に残るのは塗布量のわずか1〜2%程度以下であった。このため、スピンコート中に過剰な塗布液が基板から飛散し、飛散した塗布液が基板の回転によって生じる気流などによりミストとなり、基板の裏面や表面に付着する欠陥の発生や、基板から飛散した塗布液がスピンナーカップの壁などに衝突した後に跳ね返り、基板に再付着する欠陥が発生しやすく、製造歩留りが悪化することがあった。
【0005】
コンパクトディスクなどの光ディスク分野では、記録膜の腐食防止や機械的保護を目的として保護膜が形成されるが、膜厚の均一性の要求が低いため、粘度などの塗布液の性状や回転条件などスピンコータの運転条件を最適化することにより、上記塗布欠陥が比較的少なかった。しかも、スピンコートで飛散した保護膜材料を回収して再利用することが可能であり、材料の利用効率によるコストアップの問題がなかった。
【0006】
一方、光磁気ディスク分野では、コンパクトディスクなどに比べて記録膜が腐食しやすいため、使用できる塗布液が特定のものに限定されてしまい、塗布液の性状の最適化は制限されることがあった。
【0007】
更に、高密度化高速化に伴って、磁界変調方式の光磁気ディスクが研究されてきている。磁界変調方式を行う場合には、保護膜上に浮上式あるいは摺動式の磁気ヘッドが配置されるため、保護膜に潤滑性向上材やフィラーなどを添加することが行われる。磁界変調方式の保護膜は、記録膜と磁気ヘッドの間隔を一定にするため、より均一な膜厚の保護膜が要求されている。このため、過剰の材料を塗布して長時間高速回転させることで均一な膜厚を形成することが行われている。しかし、飛散した材料を回収して再利用することは、記録膜の耐腐食性の観点で不純物の混入を防ぐ必要があり、また、磁気ヘッドの摺動性の観点でも添加剤の添加量を一定に保つ必要があるため、技術的に困難であった。更に、高価な材料の利用効率が1%にも満たない場合もあり、コストアップと共に、飛散した材料の再付着や材料の裏廻りによる欠陥も増大するため、生産性に問題があった。
【0008】
すなわち、磁界変調方式の光磁気ディスクなどにおいては、使用できる材料が限定され、塗布液の塗布量や回転条件などのスピンコータ運転条件を中心に欠陥の少ない製造条件の選定しているため、欠陥を防止及び材料の利用効率を向上させることが困難であった。
【0009】
そこで、均一な膜厚の塗布膜を形成する方法として、材料を基板上にスパイラル状または同心円状に塗布することが考えられている。内周部のみにドーナツ状に塗布する方法に比べて、未塗布領域などの塗布欠陥が発生しにくくなり、大径基板に有効な方法であるが、塗布量は、内周にドーナツ状に塗布した場合と同等か若干低減できる程度のため、上記ミストの付着などの欠陥防止には効果がなかった。また、同様に実開平1−143121号公報や特開平5−269425号公報や特開平10−79336号公報に、スピンコート法における、塗布ノズルを複数設ける方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記従来方法では、塗布時の膜厚の均一化と、塗布の時間短縮及び高粘度材料での塗布時間短縮に着眼しているため、基板上に塗布された材料は、スパイラル状または同心円状に塗布されており、低速回転中に材料を基板全面にぬり広げる方法である。このため、上記従来の問題と同様に、内周部のみに一つのノズルで塗布する方法に比べて膜厚の均一性が向上するものの、材料の塗布量低減に関する考慮がなされておらず、過剰に材料を塗布しているため、材料の裏廻りやミストの再付着などの欠陥を抑制する効果がなかった。
【0011】
また、基板上に塗布する材料を低減させる方法として、特開平8−332436号公報に直線塗布方法で塗布した後に、スピンコート法により塗布膜を形成する方法が提案されている。
【0012】
しかしながら、上記方法では、直線塗布方法として、ロールコート法、バーコート法、カーテンフロート法、ダイコート法、スプレーコート法またはノズルコート法を提案しているが、カラーフィルター基板などの大型角型基板の場合は直線塗布方法による効果が得られるものの、中心孔を有する円形基板や内周部に凹凸形状を有する基板の場合は、内周及び外周端部まで材料を塗布することになり、材料がはみ出してしまい基板搬送時の基板保持部を汚染し生産上問題があった。また、基板全面に材料を塗布するため、基板の外観品位も悪くなっていた。更に、上記従来方法では、直線方向への塗布しか考慮されておらず、円形基板などの所定の領域のみに塗布することが技術的に困難であり、直線塗布方法を円形基板に使用するには、非形成領域をマスクする必要があり、生産上問題があった。また、直線塗布方法の問題点として、塗布開始位置と終了位置近傍での膜厚制御が困難であることがわかっている。このため、ミニディスクなどの小径ディスクで直線塗布方法により塗布した場合は、塗布開始位置から終了位置までの距離が短いため、直線塗布方式の欠点である塗布開始時と終了時の膜厚変動の影響を受けて、均一な膜厚を形成することが困難であった。
【0013】
更に、中心孔を有する基板で均一な塗布膜を形成する方法として、特開2000−135467号公報に、スピンコート法による塗布において、ラインジェット型のヘッドから材料を塗布する方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、上記従来方法では、ラインジェットとしてピエゾ素子などの圧電素子により、材料を吐出している方法であるため、使用可能な材料が非常に限定されることがわかった。例えば、上記提案の実施例に示されるように、シアニン色素を2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶剤に2.5%重量濃度で溶解したもの、あるいは、LSIなどの製造工程で使われるレジストなどの塗布材料である。このように溶剤が主成分の低粘度材料に限定されるため、光ディスクの保護膜に使われる紫外線硬化型樹脂などの高粘度樹脂材料は技術的に困難であった。更に、塗布液供給方法として、ピエゾ素子などの圧電素子を用いた場合、圧電素子の経時変化によって塗布量が変動して、塗布不良などの問題が発生しやすい上に、圧電素子の寿命及びランニングコストを考慮すると、生産性が懸念されている。
【0015】
更に、スプレーコーティングした後にスピンコート方を行う方法が特表平4−504377号公報及び特開2000−33318号公報に提案されている。スプレー方式では、上記ラインジェット方式と同様に、材料粘度により塗布性能が決まるため、特開2000−33318号公報に示されているように約50mPa.Sの粘度以下の材料しか実用上対応できなかった。また、スプレーの構造上液だれが発生しやすく、塗布ムラや塗布不良の欠陥が発生していた。更に、中心孔を有する円形基板の場合は、上記直線塗布方式と同様に、スプレー塗布時のミストが非形成領域に付着するため、非形成領域にマスクで覆うなどの処置が必要であり、生産性が著しく低下していた。
【0016】
すなわち、上記いずれの方法においても、中心孔を有する基板で、膜厚の均一化と材料の少液化及び高粘度材料に対応させることが困難であり、塗布欠陥などの問題が発生していた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の塗布方法によって解決するのが困難であったスピンコート方式による塗布膜の形成における問題点を解決した、塗布欠陥のない保護膜を形成できる光ディスクの製造方法および光ディスクを提供することを目的とする。
【0018】
すなわち、過剰な塗布液が基板から飛散した後の跳ね返りによる基板への再付着や塗布液ミストの付着、基板裏面への廻りこみによる付着を防止して、塗布液の制約を受けることなく、任意の膜厚で均一な保護膜が形成された、高品位の光ディスク、特に光磁気ディスクを提供することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスクの製造方法および光ディスクは、中心孔を有する円形の基板に形成された記録膜の上に、スピンコート方式により保護膜を形成する光ディスクの製造方法において、あらかじめ所定の領域に保護膜を塗布して最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を形成する第1工程と、第1工程の直後にスピンコート方式により所定の膜厚の保護膜を形成する第2工程とを含み、保護膜材料の塗布量に対して形成される保護膜の量が10%以上であると共に、
【0020】
第1工程の保護膜形成方法が、基板上に設けられた塗布装置により、回転している基板上の内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜を塗布する方法であり、塗布方法がスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法又は、
【0021】
第1工程の保護層形成方法が、内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜材料を塗布する方法であり、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により形成することを特徴とする光ディスクの製造方法及び上記光ディスクの製造方法で製造したことを特徴とする光ディスクである。
【0022】
更に、第1工程で塗布された保護膜膜厚の厚い部分が、薄い部分の1.5倍以内であることを特徴とする光ディスクの製造方法及び上記製造方法で製造したことを特徴とする光ディスクである。
【0023】
基板から飛散した後の跳ね返りによる再付着やミストの付着及び裏廻りなどの欠陥を低減させるには、塗布する材料の量を最小限にすることが極めて有効である。具体的には、材料の利用効率である、塗布量に対して形成される保護膜の量を10〜100%の範囲に設定することが有効であることがわかった。望ましくは、上記塗布量の利用効率を50〜100%の範囲に設定することで欠陥の発生が大幅に抑制できる。すなわち、上記材料の利用効率が10%未満の場合は、膜厚調整がスピンコート運転条件に依存しており、長時間の回転又は高速回転を必要としている。長時間の回転又は高速回転により、飛散する材料の増加及びミスト発生量の増加に伴って欠陥が増加しているものと考えられる。本発明では、スピンコート前の膜厚分布を1.5倍以内に規定することにより、膜厚調整をスピンコート運転条件に依存することなく、スピンコートの長時間回転及び高速回転を必要としない製造方法を考案したものである。
【0024】
塗布する材料を最小限にするには、最終的に形成される保護膜と同様に所定の領域に連続した均一な塗布膜を形成することが重要であり、従来方法では、任意の粘度の材料で均一な塗布膜を形成することができなかった。
【0025】
すなわち、従来方法の複数ノズルにより材料を塗布する方法では、スパイラル状又は同心円状に塗布しているのみであり、塗布量に関する考慮がされておらず、膜厚の均一性及び時間短縮を狙った複数ノズルの方式では、塗布量が1つのノズルを使用した場合と同等或いは、それ以上に増えることがあり、欠陥を防止する効果は得られなかった。
【0026】
また、従来の直線塗布方式により塗布膜を形成する方法では、塗布量を最小に抑える効果があるものの、中心孔を有する円形基板で直線的に塗布することは非形成領域をマスクするなどの技術的な課題が残されており実用化できなかった。
【0027】
更に、ラインジェット型のヘッドを用いて塗布する従来方法では、先に述べたように、特定の低粘度材料しか実用上使えない上に、膜厚精度の向上を狙ったものであり、塗布量低減の考慮がなされておらずミストの付着などの欠陥防止効果が明確に得られなかった。
【0028】
スプレー法により塗布する従来方法では、上記ラインジェット型のヘッドを用いる方法と同様に、特定の低粘度材料しか実用上使えない上に、構造上スプレー部を中心にした正規分布状の塗布量分布を持っているため、均一な膜厚を形成することが困難であり、かつ塗布時に非形成領域をマスクした後に、マスクを除去して高速回転するなどの処置が必要であり、生産性に問題があり実用化できなかった。
【0029】
上記本発明は、光ディスクに用いられる中心孔や内周に段差部を有する基板における、塗布量の低減による塗布欠陥の発生防止効果に着眼したものであり、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を基板上の所定領域に塗布した後スピンコートしているため、上記従来方法で不可能であった、任意の粘度の材料で、均一な塗布膜を最小限の量で形成することができる。具体的には、回転させている基板上にスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法のいずれかの方式による塗布装置により塗布する、または、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により塗布膜を形成した後にスピンコートする方法である。上記スリットコート法は、ダイコート法やカーテンレール法と同様の方式であり、吐出ノズル先端部にスリット部を有する塗布方法であればよく、スリットの長手方向の幅は、基板内周と外周の幅よりも狭い領域で任意に調整することができる。また、スリットの間隔は、塗布膜厚、粘度、基板回転数、基板間距離などに応じて任意に調整できるが、半径方向に沿って間隔を段階的または連続的に変更することが望ましい。すなわち、均一な間隔の場合、内周部が厚くなり、外周部が薄くなるため、過剰な塗布量を形成することになる。具体的には、直径86mmのディスクの場合、内周部の膜厚は外周に比べて約2.8倍になり、基板径が大きいほど差が大きくなる。このため、上記スリットの間隔や塗布圧などを基板の半径方向に応じて変更させて膜厚の差を1.5倍以内にすることが重要である。
【0030】
スピンコートの長時間回転や高速回転をより抑制するには、膜厚の差を1.2倍以下にすることが望ましい。膜厚差が1.5倍を超える場合は、膜厚の均一性がスピンコート条件に依存することになり、かつスピンコート時間や回転数が増大されることになり、その結果欠陥の増加と共にスピンコート法の特徴である、内周が薄く、外周が厚い膜厚分布を形成することになり、膜厚均一性が悪化する。
【0031】
本発明では、従来の直線塗布法で技術的に不可能であった中心孔を有する円形基板に対して、基板の半径方向に塗布装置を配置して、かつ基板を回転させて塗布することにより、所定領域への塗布を可能にしたものである。更に、回転基板上で塗布することにより、スリットコート法の構造上の問題点である、塗布開始時と終了時の膜厚変動の影響をなくして、均一な膜厚の連続膜を形成可能にしたものである。
【0032】
上記ロールコート法は、ロールに塗布又は付着させた塗布液を基板上に転写させる方法であればよく、ロールの幅は、基板内周と外周の幅よりも狭い領域で任意に調整することができる。また、ロールに塗布液を付着させるためのロールとドクターナイフとの間隔は、塗布膜厚、粘度、基板回転数、基板間距離などに応じて任意に調整できるが、上記スリットコートと同様に基板の半径方向に応じて調整することが望ましい。更に、基板内周側と外周側でのロールの回転ずれを防止するために、形成領域の基板半径に応じて内周のロールの直径を小さくして、外周のロール直径を大きくすることができる。上記ロールコート法では、上記スリットコート法と同様に従来の直線塗布法で不可能であった中心孔を有する円形基板への塗布を可能にして、均一な膜厚を有する連続した薄い塗布膜を形成可能にしたものである。
【0033】
上記塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルとは、従来の複数ノズルを設ける方法と異なって、基板上に塗布された塗布液が塗布直後で連続膜となるようにノズルを配置している。すなわち、ノズル間隔は、少なくとも塗布直後の塗布液の基板半径方向への広がり幅よりも狭い間隔で配置している。ノズルの配列は、直線配列、複数の平行配列、千鳥状の配列が可能であり、各ノズルの内径は少量塗布を行うために安定塗布が得られる範囲でできる限り細いノズルを用いることが有効である。また、ノズルの配置間隔及び本数は、基板サイズや回転数や材料粘度及び材料の濡れ広がり性を考慮して任意に設定できるが、最終的に形成される保護膜の形成領域と同等領域を薄い膜厚で塗布することが望ましく、半径方向の膜厚分布を最小にするために、外周側でノズル本数を増やす、又はノズル径を大きくする及び塗布圧を大きくするなどの方法により塗布量を調整することが重要である。また、塗布量を最小限にするためには、不連続の吐出を行い、基板上で連続膜になるように設定することもできる。
【0034】
上記方法により、従来の方法では、スパイラル状または同心円状に多量の材料が塗布されて不連続または連続な塗布膜が形成されていたが、最小の塗布量で連続した薄膜を形成することを可能にしたものである。
【0035】
上記スクリーン印刷法は、直線塗布法の1種であるが、内周及び外周端部などの非形成領域をマスクして塗布膜を形成できればよく、シルクスクリーン印刷などの印刷法が可能である。従来の直線塗布法では、不可能であった、中心孔を有する円形基板に塗布膜を形成可能にしたものである。
【0036】
上記本発明の方法によれば、中心孔を有する基板で所定領域に必要最小限の塗布を行った後にスピンコート法により最適な膜厚及び膜厚分布の保護膜を形成したものであり、従来対応できなかった様々な粘度の材料の場合でも、均一な膜厚の保護膜を形成することができ、しかも塗布量が最小に抑えられているため、スピンコート中に基板から飛散する過剰な塗布液の量が極めて少なく、ミストの付着などの塗布欠陥を防止することができた。
【0037】
以上、本発明を整理して要約すれば以下の構成に集約できる。
【0038】
(1)中心孔を有する円形の基板に形成された記録膜の上に、スピンコート方式により保護膜を形成する光ディスクの製造方法において、あらかじめ所定の領域に保護膜材料を塗布して、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を形成する第1工程と、第1工程の直後にスピンコート方式により所定の膜厚の保護膜を形成する第2工程とを含み、保護膜材料の塗布量に対して形成される保護膜の量が10%以上であることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【0039】
(2)第1工程の保護膜形成方法が、基板上に設けられた塗布装置により、回転している基板上の内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜を塗布する方法であり、塗布方法がスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法であることを特徴とする前記(1)記載の光ディスクの製造方法。
【0040】
(3)第1工程の保護層形成方法が、内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜材料を塗布する方法であり、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により形成することを特徴とする前記(1)記載の光ディスクの製造方法。
【0041】
(4)第1工程の保護膜塗布方法がスリット法、ロールコート法及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルと保護膜材料を塗布する方法及びスクリーン印刷法であり、第1工程で塗布された保護膜膜厚の厚い部分が、薄い部分の1.5倍以内であることを特徴とする前記(2)または(3)記載の光ディスクの製造方法。
【0042】
(5)前記(1)ないし(4)いずれか記載の製造方法により製造したことを特徴とする光ディスク。
【0043】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
第1図は本実施例に係る光ディスクの保護膜塗布用スピンコータの模式断面図である。
【0044】
基板1として厚さ1.2mm、外径86mm、内径15mm、中心部に外形20mm、高さ1.2mmの凸部を有するポリカーボネイト樹脂基板を用いて、基板上に記録膜2を成膜した。記録膜は、必要に応じて複数の積層からなる光磁気記録膜と、記録膜の上下に無機の保護膜および反射膜をスパッタリングあるいは蒸着により形成することができる。
【0045】
上記基板1の記録膜2を上側にして、基板を保持するターンテーブル3上に配置して、基板をターンテーブルの中心部近傍で真空孔4より吸着させた。第1図a)に基板を配置した状態を示した。
【0046】
次いで、ターンテーブルを20rpmの低速で回転させて、塗布液として100mPa・Sの粘度を有する紫外線硬化型樹脂6を用いて、基板上に配置したスリット方式の塗布ノズルユニット5を所定の位置に移動させて、塗布液を塗布した。塗布状態を第1図b)に示した。このとき、塗布エリアの最内周を半径15mmにして、最外周を半径42mmに設定した。スリットの間隔は、内周側で10μm、外周側で28μmに連続的に間隔を広げている。また、スリットヘッドと基板との間隔は75μmに設定した。上記塗布は基板の1回転で終了できるように設定した。塗布完了の状態を第1図c)に示した。
【0047】
次いで、所定の膜厚を得る為に、500rpmの高速回転数で2秒間保持して、基板上の過剰な塗布液を飛散させて除去すると共に、全面均一な膜厚を得た。必要に応じて、回転数を多段制御して、膜厚の均一化と基板外周部近傍における過剰な塗布液を飛散除去させることができる。スピンコート後の保護膜形成状態を第1図d)に示した。
【0048】
更に、紫外線を照射して上記紫外線硬化方樹脂を硬化させて光ディスクを製造した。
【0049】
上記スリットコート法での塗布後の膜厚は、内周で11μm、外周で11μmであり、最終的に形成された保護膜の膜厚は、内周で10μm、外周で10μmであった。また、スリットコート直後では、塗布開始部と終了部に膜厚変動が発生しており、外観不良があったものの、スピンコートを行うことで、上記膜厚変動部がレベリングされて外観不良がなくなっていた。更に、上記塗布量は、約0.053gであり、最終的に形成された保護膜の重量は、約0.051gで、塗布量に対して形成された保護膜の量は約96%であった。
【0050】
更に、基板から飛散する材料がわずか0.002g程度であり、飛散する材料を抑えることでミスト付着などの塗布欠陥が発生していない光ディスクを安定に生産することができた。しかも、高価な材料の利用効率が高く、生産コストを抑えることができた。
【0051】
上記実施例では、スピンコート前の内周と外周の膜厚差を抑えることで、スピンコートによる膜厚調整を短時間で行うことができ、かつ均一な膜厚を容易に得ることが可能になった。
【0052】
(実施例2)
上記塗布ユニットとしてロールコーター方式の塗布を行ったこと以外は実施例1と同様にして光ディスクを製造した。スピンコート条件は、実施例1と同様に、500rpmの回転数で2秒間保持した。上記ロールコーターのロール直径は、内周側の塗布領域部で直径30mm、外周側の塗布領域で直径84mmの円錐上のロールを用いて、内周と外周の移動距離による塗布ずれを防止した。また、塗布膜厚を決定するドクターナイフとロールとの間隔は、15μmで一定の間隔に設定した。
【0053】
上記塗布後の膜厚は、内周側で11〜30μm、外周側で11〜30μmであり、最終的に形成された保護膜膜厚は、内周で10μm、外周で10μmであった。ロールコーター方式による塗布直後は、ロール方向にスジ状の膜厚変動による外観不良が発生していたが、スピンコートにより膜厚がレべリングされて外観不良がなくなっていた。また、塗布量は、約0.12gであり、最終的に形成された保護膜の重量は、約0.051gで、塗布量に対して形成された保護膜の量は約43%であった。
【0054】
更に、基板から飛散する材料が約0.07gであり、ミスト付着などの塗布欠陥は発生していなかった。
【0055】
(実施例3)
上記塗布ユニットとして、複数のノズルユニットにより塗布を行ったことと、スピンコート回転数を1000rpmの高速回転で3秒間保持したこと以外は、実施例1と同様にして光ディスクを製造した。上記複数のノズルユニットは、基板の半径方向に対して略扇形に複数のノズルを千鳥状に配置した。また、ノズル上部に各ノズルと連結された液だめ部を形成している。塗布量の調節機構は、塗布量を安定に保つために高精度の制御が求められるため、複数のノズルに対して、複数の薬液配管及び圧力調整機構を設けて、個々のノズル毎に塗布量調節を行うことも可能であるが、ノズル毎の塗布量最適化が可能になる反面、複雑な機構を伴うため、基板径に応じて外周側のノズルを多くしたノズル配列にすることが望ましい。
【0056】
また、上記複数のノズルユニットでは、最小の塗布量で再現性良く連続膜が形成されれば良く、連続滴下及び1滴毎に不連続に滴下を行うことができる。本実施例では、粘度100mPa・Sの紫外線硬化型樹脂を用いて連続的に同心円状に塗布を行った。塗布圧力は0.5kg/cm2に設定した。基板上に塗布された樹脂は、半径方向に約5mmの幅で樹脂が広がっており、ノズルのピッチを最大5mmに設定することで、基板上に形成される塗布膜は連続した膜が得られた。更に外周は内周の2.8倍の塗布量が得られるようにノズルピッチを設定している。また、塗布時間は、基板が1〜10回転程度の範囲で塗布が完了できれば良く、特に不連続に滴下する塗布方法の場合では、基板上の塗布膜が連続膜になるようにかつ最小の塗布量になるように設定した。更に、最小の塗布量で基板上に連続膜を形成するために、基板の回転数調節を行うことや、気体を吹き付けて材料を広げることができる。
【0057】
上記塗布方法で形成された塗布膜は、スピンコート前で内周側が50μm、外周側が50μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周10μm、外周10μmであった。塗布量は、約0.25gで最終的に形成された保護膜重量は約0.051gであり、塗布量に対して形成された保護膜の量は、約20%であった。上記実施例1及び2に比較して、塗布量の増大に伴って、裏廻りやミストの再付着などの欠陥がわずかながら発生しているものの実用上支障のないレベルの欠陥であり、装置構成が大幅に簡略化されることにより生産性が向上した。
【0058】
(実施例4)
上記塗布ユニットとして、シルクスクリーン印刷法による塗布を行ったこと以外は、実施例1と同様にして光ディスクを製造した。上記シルクスクリーン印刷法では、基板中心部近傍の保護膜非形成領域と基板外周部近傍の非形成領域をマスクしたシルクスクリーンを用いて塗布を行った。上記マスクを形成することで内周部の凹凸を非形成領域として保護膜を塗布しないことができ、任意の領域のみに塗布することが可能である。また、本実施例では、粘度100mPa・Sの紫外線硬化型樹脂を用いているが、シルクスクリーン法では粘度の制約が少なく、通常のノズル塗布やスリット塗布では安定塗布が困難な1000mPa・Sを超える高粘度材料安定においても再現性良く塗布することができた。
【0059】
スピンコート条件は、実施例1と同様に、500rpmの回転数で2秒間保持した。
【0060】
上記塗布方法で形成された塗布膜は、スピンコート前で内周側が11〜15μm、外周側が11〜15μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周10μm、外周10μmであった。塗布量は、約0.07gで最終的に形成された保護膜重量は約0.051gであり、塗布量に対して形成された保護膜の量は、約72%であった。
【0061】
上記シルクスクリーン印刷法では、スクリーンを介して材料を押し広げる方法のため、直線塗布方法と同様に塗布方向に沿って膜厚分布が悪化しているものの、膜厚の最小値と最大値の差が1.5倍以内に形成されているため、スピンコート後の膜厚分布は良好であった。更に、スピンコート中に飛散する材料がわずか0.02g程度であり、欠陥が発生しなかった。
【0062】
(比較例1)
上記塗布ユニットとして、直線塗布法としてスリットコート法により直線的に塗布を行ったこと以外は、実施例1と同様にして光ディスクを製造した。スピンコート条件は、実施例1と同様に500rpmの回転数で2秒間保持した。上記スリットコート法は、基板をステージに置き、基板上にスリットコート塗布ユニットを配置して、塗布ユニットを左右に移動させることで基板前面に保護膜を形成した。その結果、基板中心部近傍の凹凸部に樹脂材料が流れ込み、スピンコート時に凹凸部から樹脂材料が流れ出すことによりスジ状の塗布欠陥が多発した。更に、基板外周部及び内周部にも樹脂材料がはみ出しているために、搬送装置などの基板保持部が汚染されて生産上問題があった。
【0063】
スピンコート前での膜厚は、内周側が9〜15μm、外周側が9〜20μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周側が9〜13μm、外周側が9〜20μmであった。また、塗布量は、約0.55gであり、形成された保護膜の重量は約0.05gであり、塗布量に対する形成された量は、約9%であった。
【0064】
上記方法では、形成領域での塗布膜厚を最適化しても、スリットコート方式の問題である、塗布開始部と終了部の膜厚制御が困難であるために塗布量が増大していることと、凹凸を有する円形基板を用いたことにより、スリットの開口幅に対して基板サイズが塗布方向に応じて変動するために、基板外周近傍及び凹凸部に材料が引き込まれて塗布量が増大したものと考えられる。
【0065】
上記方法では、約0.5gの過剰な材料がスピンコート時に基板から飛散するため、裏廻りやミストの再付着が増大して良品を得ることができなかった。
【0066】
(比較例2)
上記塗布ユニットとして、複数ノズルによる塗布方法において塗布圧力を5kg/cm2に設定して基板が1回転する内に塗布を完了させたことと、スピンコート回転数を4000rpmの高速回転で10秒間保持したこと以外は、実施例3と同様にして光ディスクを製造した。上記複数ノズルによる塗布方法では、ノズルピッチを5mmで等間隔に設定した。また、塗布時間の短縮及び塗布膜の膜厚分布の改善にのみ着眼して、連続的な塗布に設定した。その結果、内周部では、基板上で連続膜が形成されているものの、外周部では不連続な塗布膜になっていた。
【0067】
上記方法でのスピンコート前の膜厚は、内周側が600μm、外周側が0〜300μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周側が10μm、外周側が20μmであった。また、塗布量は、約3.0gであり、形成された保護膜の重量は約0.06gであり、塗布量に対する形成された量は、約2%であった。
【0068】
上記方法では、塗布時間が短縮されるものの、スピンコートの回転時間及び回転数を増加させる必要があった。その結果、約1.4gの過剰な材料がスピンコート時に基板から飛散することになり、裏廻りやミストの付着が増大して良品を得ることができなかった。
【0069】
更に、スピンコートする前の塗布膜が連続膜でないために、未塗布領域の発生による不良品が多くなると共に、膜厚調整がスピンコート運転条件に依存することにより、スピンコート法の問題点である外周での膜厚が増加傾向にあり、膜厚分布が悪化していた。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有する連続膜を形成する工程と、スピンコート方式により所定の膜厚を形成する工程を含み、塗布量に対して最終的に形成される保護膜の量を10%以上にすることで、材料の粘度の制約を受けることなく、スピンコート時に過剰な塗布材料が飛散することで生じるミストの発生を抑制して、裏廻りやミストの付着及び跳ね返りの再付着の欠陥を防止することができ、かつ均一な膜厚の保護膜を安定して生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る光ディスクの保護膜塗布用スピンコータの模式断面図、a)はターンテーブル上に記録膜を形成した基板をセットした状態、b)は実施例1のスリット塗布ユニットにより塗布を行っている状態、c)はスリット塗布により塗布が完了した状態、d)は、スピンコートを行い保護膜を形成した状態を示した図
【符号の説明】
1 基板
2 記録膜
3 ターンテーブル
4 真空孔
5 スリット塗布ユニット
6 保護膜材料
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクに均一な膜厚の塗布膜を効率良く形成する光ディスクの製造方法および光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年書き換え可能を特徴とする光磁気ディスクが上市され、コンピューターのコード情報や画像などのデータファイルの記録に応用されつつある。更に、モバイルコンピューターの普及や、情報の多様化に伴い、小型大容量の光磁気ディスクが要求されてきている。
【0003】
光ディスクの製造方法においては、一般的に、樹脂基板上に記録膜を形成した後に、スピンコート方式により保護膜を形成している。
【0004】
スピンコート方式は、基板内周に材料をドーナツ状に塗布した後、高速回転により基板全面に均一な塗布膜を形成する方法であり、主に塗布液の粘度や塗布量と、回転条件を設定することにより任意の塗布膜厚を得られる特徴があり、生産性が優れていると考えられている。しかしながら、小型大容量化に伴って保護膜の高品位化が要求されるにしたがって、様々な塗布欠陥や製造上の問題点が確認されている。特に、基板上に塗布する材料の利用効率が悪く、均一な膜厚の塗布膜を形成するために、過剰な量の塗布が必要であり、塗布膜として最終的に残るのは塗布量のわずか1〜2%程度以下であった。このため、スピンコート中に過剰な塗布液が基板から飛散し、飛散した塗布液が基板の回転によって生じる気流などによりミストとなり、基板の裏面や表面に付着する欠陥の発生や、基板から飛散した塗布液がスピンナーカップの壁などに衝突した後に跳ね返り、基板に再付着する欠陥が発生しやすく、製造歩留りが悪化することがあった。
【0005】
コンパクトディスクなどの光ディスク分野では、記録膜の腐食防止や機械的保護を目的として保護膜が形成されるが、膜厚の均一性の要求が低いため、粘度などの塗布液の性状や回転条件などスピンコータの運転条件を最適化することにより、上記塗布欠陥が比較的少なかった。しかも、スピンコートで飛散した保護膜材料を回収して再利用することが可能であり、材料の利用効率によるコストアップの問題がなかった。
【0006】
一方、光磁気ディスク分野では、コンパクトディスクなどに比べて記録膜が腐食しやすいため、使用できる塗布液が特定のものに限定されてしまい、塗布液の性状の最適化は制限されることがあった。
【0007】
更に、高密度化高速化に伴って、磁界変調方式の光磁気ディスクが研究されてきている。磁界変調方式を行う場合には、保護膜上に浮上式あるいは摺動式の磁気ヘッドが配置されるため、保護膜に潤滑性向上材やフィラーなどを添加することが行われる。磁界変調方式の保護膜は、記録膜と磁気ヘッドの間隔を一定にするため、より均一な膜厚の保護膜が要求されている。このため、過剰の材料を塗布して長時間高速回転させることで均一な膜厚を形成することが行われている。しかし、飛散した材料を回収して再利用することは、記録膜の耐腐食性の観点で不純物の混入を防ぐ必要があり、また、磁気ヘッドの摺動性の観点でも添加剤の添加量を一定に保つ必要があるため、技術的に困難であった。更に、高価な材料の利用効率が1%にも満たない場合もあり、コストアップと共に、飛散した材料の再付着や材料の裏廻りによる欠陥も増大するため、生産性に問題があった。
【0008】
すなわち、磁界変調方式の光磁気ディスクなどにおいては、使用できる材料が限定され、塗布液の塗布量や回転条件などのスピンコータ運転条件を中心に欠陥の少ない製造条件の選定しているため、欠陥を防止及び材料の利用効率を向上させることが困難であった。
【0009】
そこで、均一な膜厚の塗布膜を形成する方法として、材料を基板上にスパイラル状または同心円状に塗布することが考えられている。内周部のみにドーナツ状に塗布する方法に比べて、未塗布領域などの塗布欠陥が発生しにくくなり、大径基板に有効な方法であるが、塗布量は、内周にドーナツ状に塗布した場合と同等か若干低減できる程度のため、上記ミストの付着などの欠陥防止には効果がなかった。また、同様に実開平1−143121号公報や特開平5−269425号公報や特開平10−79336号公報に、スピンコート法における、塗布ノズルを複数設ける方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記従来方法では、塗布時の膜厚の均一化と、塗布の時間短縮及び高粘度材料での塗布時間短縮に着眼しているため、基板上に塗布された材料は、スパイラル状または同心円状に塗布されており、低速回転中に材料を基板全面にぬり広げる方法である。このため、上記従来の問題と同様に、内周部のみに一つのノズルで塗布する方法に比べて膜厚の均一性が向上するものの、材料の塗布量低減に関する考慮がなされておらず、過剰に材料を塗布しているため、材料の裏廻りやミストの再付着などの欠陥を抑制する効果がなかった。
【0011】
また、基板上に塗布する材料を低減させる方法として、特開平8−332436号公報に直線塗布方法で塗布した後に、スピンコート法により塗布膜を形成する方法が提案されている。
【0012】
しかしながら、上記方法では、直線塗布方法として、ロールコート法、バーコート法、カーテンフロート法、ダイコート法、スプレーコート法またはノズルコート法を提案しているが、カラーフィルター基板などの大型角型基板の場合は直線塗布方法による効果が得られるものの、中心孔を有する円形基板や内周部に凹凸形状を有する基板の場合は、内周及び外周端部まで材料を塗布することになり、材料がはみ出してしまい基板搬送時の基板保持部を汚染し生産上問題があった。また、基板全面に材料を塗布するため、基板の外観品位も悪くなっていた。更に、上記従来方法では、直線方向への塗布しか考慮されておらず、円形基板などの所定の領域のみに塗布することが技術的に困難であり、直線塗布方法を円形基板に使用するには、非形成領域をマスクする必要があり、生産上問題があった。また、直線塗布方法の問題点として、塗布開始位置と終了位置近傍での膜厚制御が困難であることがわかっている。このため、ミニディスクなどの小径ディスクで直線塗布方法により塗布した場合は、塗布開始位置から終了位置までの距離が短いため、直線塗布方式の欠点である塗布開始時と終了時の膜厚変動の影響を受けて、均一な膜厚を形成することが困難であった。
【0013】
更に、中心孔を有する基板で均一な塗布膜を形成する方法として、特開2000−135467号公報に、スピンコート法による塗布において、ラインジェット型のヘッドから材料を塗布する方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、上記従来方法では、ラインジェットとしてピエゾ素子などの圧電素子により、材料を吐出している方法であるため、使用可能な材料が非常に限定されることがわかった。例えば、上記提案の実施例に示されるように、シアニン色素を2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶剤に2.5%重量濃度で溶解したもの、あるいは、LSIなどの製造工程で使われるレジストなどの塗布材料である。このように溶剤が主成分の低粘度材料に限定されるため、光ディスクの保護膜に使われる紫外線硬化型樹脂などの高粘度樹脂材料は技術的に困難であった。更に、塗布液供給方法として、ピエゾ素子などの圧電素子を用いた場合、圧電素子の経時変化によって塗布量が変動して、塗布不良などの問題が発生しやすい上に、圧電素子の寿命及びランニングコストを考慮すると、生産性が懸念されている。
【0015】
更に、スプレーコーティングした後にスピンコート方を行う方法が特表平4−504377号公報及び特開2000−33318号公報に提案されている。スプレー方式では、上記ラインジェット方式と同様に、材料粘度により塗布性能が決まるため、特開2000−33318号公報に示されているように約50mPa.Sの粘度以下の材料しか実用上対応できなかった。また、スプレーの構造上液だれが発生しやすく、塗布ムラや塗布不良の欠陥が発生していた。更に、中心孔を有する円形基板の場合は、上記直線塗布方式と同様に、スプレー塗布時のミストが非形成領域に付着するため、非形成領域にマスクで覆うなどの処置が必要であり、生産性が著しく低下していた。
【0016】
すなわち、上記いずれの方法においても、中心孔を有する基板で、膜厚の均一化と材料の少液化及び高粘度材料に対応させることが困難であり、塗布欠陥などの問題が発生していた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の塗布方法によって解決するのが困難であったスピンコート方式による塗布膜の形成における問題点を解決した、塗布欠陥のない保護膜を形成できる光ディスクの製造方法および光ディスクを提供することを目的とする。
【0018】
すなわち、過剰な塗布液が基板から飛散した後の跳ね返りによる基板への再付着や塗布液ミストの付着、基板裏面への廻りこみによる付着を防止して、塗布液の制約を受けることなく、任意の膜厚で均一な保護膜が形成された、高品位の光ディスク、特に光磁気ディスクを提供することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスクの製造方法および光ディスクは、中心孔を有する円形の基板に形成された記録膜の上に、スピンコート方式により保護膜を形成する光ディスクの製造方法において、あらかじめ所定の領域に保護膜を塗布して最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を形成する第1工程と、第1工程の直後にスピンコート方式により所定の膜厚の保護膜を形成する第2工程とを含み、保護膜材料の塗布量に対して形成される保護膜の量が10%以上であると共に、
【0020】
第1工程の保護膜形成方法が、基板上に設けられた塗布装置により、回転している基板上の内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜を塗布する方法であり、塗布方法がスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法又は、
【0021】
第1工程の保護層形成方法が、内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜材料を塗布する方法であり、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により形成することを特徴とする光ディスクの製造方法及び上記光ディスクの製造方法で製造したことを特徴とする光ディスクである。
【0022】
更に、第1工程で塗布された保護膜膜厚の厚い部分が、薄い部分の1.5倍以内であることを特徴とする光ディスクの製造方法及び上記製造方法で製造したことを特徴とする光ディスクである。
【0023】
基板から飛散した後の跳ね返りによる再付着やミストの付着及び裏廻りなどの欠陥を低減させるには、塗布する材料の量を最小限にすることが極めて有効である。具体的には、材料の利用効率である、塗布量に対して形成される保護膜の量を10〜100%の範囲に設定することが有効であることがわかった。望ましくは、上記塗布量の利用効率を50〜100%の範囲に設定することで欠陥の発生が大幅に抑制できる。すなわち、上記材料の利用効率が10%未満の場合は、膜厚調整がスピンコート運転条件に依存しており、長時間の回転又は高速回転を必要としている。長時間の回転又は高速回転により、飛散する材料の増加及びミスト発生量の増加に伴って欠陥が増加しているものと考えられる。本発明では、スピンコート前の膜厚分布を1.5倍以内に規定することにより、膜厚調整をスピンコート運転条件に依存することなく、スピンコートの長時間回転及び高速回転を必要としない製造方法を考案したものである。
【0024】
塗布する材料を最小限にするには、最終的に形成される保護膜と同様に所定の領域に連続した均一な塗布膜を形成することが重要であり、従来方法では、任意の粘度の材料で均一な塗布膜を形成することができなかった。
【0025】
すなわち、従来方法の複数ノズルにより材料を塗布する方法では、スパイラル状又は同心円状に塗布しているのみであり、塗布量に関する考慮がされておらず、膜厚の均一性及び時間短縮を狙った複数ノズルの方式では、塗布量が1つのノズルを使用した場合と同等或いは、それ以上に増えることがあり、欠陥を防止する効果は得られなかった。
【0026】
また、従来の直線塗布方式により塗布膜を形成する方法では、塗布量を最小に抑える効果があるものの、中心孔を有する円形基板で直線的に塗布することは非形成領域をマスクするなどの技術的な課題が残されており実用化できなかった。
【0027】
更に、ラインジェット型のヘッドを用いて塗布する従来方法では、先に述べたように、特定の低粘度材料しか実用上使えない上に、膜厚精度の向上を狙ったものであり、塗布量低減の考慮がなされておらずミストの付着などの欠陥防止効果が明確に得られなかった。
【0028】
スプレー法により塗布する従来方法では、上記ラインジェット型のヘッドを用いる方法と同様に、特定の低粘度材料しか実用上使えない上に、構造上スプレー部を中心にした正規分布状の塗布量分布を持っているため、均一な膜厚を形成することが困難であり、かつ塗布時に非形成領域をマスクした後に、マスクを除去して高速回転するなどの処置が必要であり、生産性に問題があり実用化できなかった。
【0029】
上記本発明は、光ディスクに用いられる中心孔や内周に段差部を有する基板における、塗布量の低減による塗布欠陥の発生防止効果に着眼したものであり、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を基板上の所定領域に塗布した後スピンコートしているため、上記従来方法で不可能であった、任意の粘度の材料で、均一な塗布膜を最小限の量で形成することができる。具体的には、回転させている基板上にスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法のいずれかの方式による塗布装置により塗布する、または、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により塗布膜を形成した後にスピンコートする方法である。上記スリットコート法は、ダイコート法やカーテンレール法と同様の方式であり、吐出ノズル先端部にスリット部を有する塗布方法であればよく、スリットの長手方向の幅は、基板内周と外周の幅よりも狭い領域で任意に調整することができる。また、スリットの間隔は、塗布膜厚、粘度、基板回転数、基板間距離などに応じて任意に調整できるが、半径方向に沿って間隔を段階的または連続的に変更することが望ましい。すなわち、均一な間隔の場合、内周部が厚くなり、外周部が薄くなるため、過剰な塗布量を形成することになる。具体的には、直径86mmのディスクの場合、内周部の膜厚は外周に比べて約2.8倍になり、基板径が大きいほど差が大きくなる。このため、上記スリットの間隔や塗布圧などを基板の半径方向に応じて変更させて膜厚の差を1.5倍以内にすることが重要である。
【0030】
スピンコートの長時間回転や高速回転をより抑制するには、膜厚の差を1.2倍以下にすることが望ましい。膜厚差が1.5倍を超える場合は、膜厚の均一性がスピンコート条件に依存することになり、かつスピンコート時間や回転数が増大されることになり、その結果欠陥の増加と共にスピンコート法の特徴である、内周が薄く、外周が厚い膜厚分布を形成することになり、膜厚均一性が悪化する。
【0031】
本発明では、従来の直線塗布法で技術的に不可能であった中心孔を有する円形基板に対して、基板の半径方向に塗布装置を配置して、かつ基板を回転させて塗布することにより、所定領域への塗布を可能にしたものである。更に、回転基板上で塗布することにより、スリットコート法の構造上の問題点である、塗布開始時と終了時の膜厚変動の影響をなくして、均一な膜厚の連続膜を形成可能にしたものである。
【0032】
上記ロールコート法は、ロールに塗布又は付着させた塗布液を基板上に転写させる方法であればよく、ロールの幅は、基板内周と外周の幅よりも狭い領域で任意に調整することができる。また、ロールに塗布液を付着させるためのロールとドクターナイフとの間隔は、塗布膜厚、粘度、基板回転数、基板間距離などに応じて任意に調整できるが、上記スリットコートと同様に基板の半径方向に応じて調整することが望ましい。更に、基板内周側と外周側でのロールの回転ずれを防止するために、形成領域の基板半径に応じて内周のロールの直径を小さくして、外周のロール直径を大きくすることができる。上記ロールコート法では、上記スリットコート法と同様に従来の直線塗布法で不可能であった中心孔を有する円形基板への塗布を可能にして、均一な膜厚を有する連続した薄い塗布膜を形成可能にしたものである。
【0033】
上記塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルとは、従来の複数ノズルを設ける方法と異なって、基板上に塗布された塗布液が塗布直後で連続膜となるようにノズルを配置している。すなわち、ノズル間隔は、少なくとも塗布直後の塗布液の基板半径方向への広がり幅よりも狭い間隔で配置している。ノズルの配列は、直線配列、複数の平行配列、千鳥状の配列が可能であり、各ノズルの内径は少量塗布を行うために安定塗布が得られる範囲でできる限り細いノズルを用いることが有効である。また、ノズルの配置間隔及び本数は、基板サイズや回転数や材料粘度及び材料の濡れ広がり性を考慮して任意に設定できるが、最終的に形成される保護膜の形成領域と同等領域を薄い膜厚で塗布することが望ましく、半径方向の膜厚分布を最小にするために、外周側でノズル本数を増やす、又はノズル径を大きくする及び塗布圧を大きくするなどの方法により塗布量を調整することが重要である。また、塗布量を最小限にするためには、不連続の吐出を行い、基板上で連続膜になるように設定することもできる。
【0034】
上記方法により、従来の方法では、スパイラル状または同心円状に多量の材料が塗布されて不連続または連続な塗布膜が形成されていたが、最小の塗布量で連続した薄膜を形成することを可能にしたものである。
【0035】
上記スクリーン印刷法は、直線塗布法の1種であるが、内周及び外周端部などの非形成領域をマスクして塗布膜を形成できればよく、シルクスクリーン印刷などの印刷法が可能である。従来の直線塗布法では、不可能であった、中心孔を有する円形基板に塗布膜を形成可能にしたものである。
【0036】
上記本発明の方法によれば、中心孔を有する基板で所定領域に必要最小限の塗布を行った後にスピンコート法により最適な膜厚及び膜厚分布の保護膜を形成したものであり、従来対応できなかった様々な粘度の材料の場合でも、均一な膜厚の保護膜を形成することができ、しかも塗布量が最小に抑えられているため、スピンコート中に基板から飛散する過剰な塗布液の量が極めて少なく、ミストの付着などの塗布欠陥を防止することができた。
【0037】
以上、本発明を整理して要約すれば以下の構成に集約できる。
【0038】
(1)中心孔を有する円形の基板に形成された記録膜の上に、スピンコート方式により保護膜を形成する光ディスクの製造方法において、あらかじめ所定の領域に保護膜材料を塗布して、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を形成する第1工程と、第1工程の直後にスピンコート方式により所定の膜厚の保護膜を形成する第2工程とを含み、保護膜材料の塗布量に対して形成される保護膜の量が10%以上であることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【0039】
(2)第1工程の保護膜形成方法が、基板上に設けられた塗布装置により、回転している基板上の内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜を塗布する方法であり、塗布方法がスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法であることを特徴とする前記(1)記載の光ディスクの製造方法。
【0040】
(3)第1工程の保護層形成方法が、内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜材料を塗布する方法であり、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により形成することを特徴とする前記(1)記載の光ディスクの製造方法。
【0041】
(4)第1工程の保護膜塗布方法がスリット法、ロールコート法及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルと保護膜材料を塗布する方法及びスクリーン印刷法であり、第1工程で塗布された保護膜膜厚の厚い部分が、薄い部分の1.5倍以内であることを特徴とする前記(2)または(3)記載の光ディスクの製造方法。
【0042】
(5)前記(1)ないし(4)いずれか記載の製造方法により製造したことを特徴とする光ディスク。
【0043】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
第1図は本実施例に係る光ディスクの保護膜塗布用スピンコータの模式断面図である。
【0044】
基板1として厚さ1.2mm、外径86mm、内径15mm、中心部に外形20mm、高さ1.2mmの凸部を有するポリカーボネイト樹脂基板を用いて、基板上に記録膜2を成膜した。記録膜は、必要に応じて複数の積層からなる光磁気記録膜と、記録膜の上下に無機の保護膜および反射膜をスパッタリングあるいは蒸着により形成することができる。
【0045】
上記基板1の記録膜2を上側にして、基板を保持するターンテーブル3上に配置して、基板をターンテーブルの中心部近傍で真空孔4より吸着させた。第1図a)に基板を配置した状態を示した。
【0046】
次いで、ターンテーブルを20rpmの低速で回転させて、塗布液として100mPa・Sの粘度を有する紫外線硬化型樹脂6を用いて、基板上に配置したスリット方式の塗布ノズルユニット5を所定の位置に移動させて、塗布液を塗布した。塗布状態を第1図b)に示した。このとき、塗布エリアの最内周を半径15mmにして、最外周を半径42mmに設定した。スリットの間隔は、内周側で10μm、外周側で28μmに連続的に間隔を広げている。また、スリットヘッドと基板との間隔は75μmに設定した。上記塗布は基板の1回転で終了できるように設定した。塗布完了の状態を第1図c)に示した。
【0047】
次いで、所定の膜厚を得る為に、500rpmの高速回転数で2秒間保持して、基板上の過剰な塗布液を飛散させて除去すると共に、全面均一な膜厚を得た。必要に応じて、回転数を多段制御して、膜厚の均一化と基板外周部近傍における過剰な塗布液を飛散除去させることができる。スピンコート後の保護膜形成状態を第1図d)に示した。
【0048】
更に、紫外線を照射して上記紫外線硬化方樹脂を硬化させて光ディスクを製造した。
【0049】
上記スリットコート法での塗布後の膜厚は、内周で11μm、外周で11μmであり、最終的に形成された保護膜の膜厚は、内周で10μm、外周で10μmであった。また、スリットコート直後では、塗布開始部と終了部に膜厚変動が発生しており、外観不良があったものの、スピンコートを行うことで、上記膜厚変動部がレベリングされて外観不良がなくなっていた。更に、上記塗布量は、約0.053gであり、最終的に形成された保護膜の重量は、約0.051gで、塗布量に対して形成された保護膜の量は約96%であった。
【0050】
更に、基板から飛散する材料がわずか0.002g程度であり、飛散する材料を抑えることでミスト付着などの塗布欠陥が発生していない光ディスクを安定に生産することができた。しかも、高価な材料の利用効率が高く、生産コストを抑えることができた。
【0051】
上記実施例では、スピンコート前の内周と外周の膜厚差を抑えることで、スピンコートによる膜厚調整を短時間で行うことができ、かつ均一な膜厚を容易に得ることが可能になった。
【0052】
(実施例2)
上記塗布ユニットとしてロールコーター方式の塗布を行ったこと以外は実施例1と同様にして光ディスクを製造した。スピンコート条件は、実施例1と同様に、500rpmの回転数で2秒間保持した。上記ロールコーターのロール直径は、内周側の塗布領域部で直径30mm、外周側の塗布領域で直径84mmの円錐上のロールを用いて、内周と外周の移動距離による塗布ずれを防止した。また、塗布膜厚を決定するドクターナイフとロールとの間隔は、15μmで一定の間隔に設定した。
【0053】
上記塗布後の膜厚は、内周側で11〜30μm、外周側で11〜30μmであり、最終的に形成された保護膜膜厚は、内周で10μm、外周で10μmであった。ロールコーター方式による塗布直後は、ロール方向にスジ状の膜厚変動による外観不良が発生していたが、スピンコートにより膜厚がレべリングされて外観不良がなくなっていた。また、塗布量は、約0.12gであり、最終的に形成された保護膜の重量は、約0.051gで、塗布量に対して形成された保護膜の量は約43%であった。
【0054】
更に、基板から飛散する材料が約0.07gであり、ミスト付着などの塗布欠陥は発生していなかった。
【0055】
(実施例3)
上記塗布ユニットとして、複数のノズルユニットにより塗布を行ったことと、スピンコート回転数を1000rpmの高速回転で3秒間保持したこと以外は、実施例1と同様にして光ディスクを製造した。上記複数のノズルユニットは、基板の半径方向に対して略扇形に複数のノズルを千鳥状に配置した。また、ノズル上部に各ノズルと連結された液だめ部を形成している。塗布量の調節機構は、塗布量を安定に保つために高精度の制御が求められるため、複数のノズルに対して、複数の薬液配管及び圧力調整機構を設けて、個々のノズル毎に塗布量調節を行うことも可能であるが、ノズル毎の塗布量最適化が可能になる反面、複雑な機構を伴うため、基板径に応じて外周側のノズルを多くしたノズル配列にすることが望ましい。
【0056】
また、上記複数のノズルユニットでは、最小の塗布量で再現性良く連続膜が形成されれば良く、連続滴下及び1滴毎に不連続に滴下を行うことができる。本実施例では、粘度100mPa・Sの紫外線硬化型樹脂を用いて連続的に同心円状に塗布を行った。塗布圧力は0.5kg/cm2に設定した。基板上に塗布された樹脂は、半径方向に約5mmの幅で樹脂が広がっており、ノズルのピッチを最大5mmに設定することで、基板上に形成される塗布膜は連続した膜が得られた。更に外周は内周の2.8倍の塗布量が得られるようにノズルピッチを設定している。また、塗布時間は、基板が1〜10回転程度の範囲で塗布が完了できれば良く、特に不連続に滴下する塗布方法の場合では、基板上の塗布膜が連続膜になるようにかつ最小の塗布量になるように設定した。更に、最小の塗布量で基板上に連続膜を形成するために、基板の回転数調節を行うことや、気体を吹き付けて材料を広げることができる。
【0057】
上記塗布方法で形成された塗布膜は、スピンコート前で内周側が50μm、外周側が50μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周10μm、外周10μmであった。塗布量は、約0.25gで最終的に形成された保護膜重量は約0.051gであり、塗布量に対して形成された保護膜の量は、約20%であった。上記実施例1及び2に比較して、塗布量の増大に伴って、裏廻りやミストの再付着などの欠陥がわずかながら発生しているものの実用上支障のないレベルの欠陥であり、装置構成が大幅に簡略化されることにより生産性が向上した。
【0058】
(実施例4)
上記塗布ユニットとして、シルクスクリーン印刷法による塗布を行ったこと以外は、実施例1と同様にして光ディスクを製造した。上記シルクスクリーン印刷法では、基板中心部近傍の保護膜非形成領域と基板外周部近傍の非形成領域をマスクしたシルクスクリーンを用いて塗布を行った。上記マスクを形成することで内周部の凹凸を非形成領域として保護膜を塗布しないことができ、任意の領域のみに塗布することが可能である。また、本実施例では、粘度100mPa・Sの紫外線硬化型樹脂を用いているが、シルクスクリーン法では粘度の制約が少なく、通常のノズル塗布やスリット塗布では安定塗布が困難な1000mPa・Sを超える高粘度材料安定においても再現性良く塗布することができた。
【0059】
スピンコート条件は、実施例1と同様に、500rpmの回転数で2秒間保持した。
【0060】
上記塗布方法で形成された塗布膜は、スピンコート前で内周側が11〜15μm、外周側が11〜15μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周10μm、外周10μmであった。塗布量は、約0.07gで最終的に形成された保護膜重量は約0.051gであり、塗布量に対して形成された保護膜の量は、約72%であった。
【0061】
上記シルクスクリーン印刷法では、スクリーンを介して材料を押し広げる方法のため、直線塗布方法と同様に塗布方向に沿って膜厚分布が悪化しているものの、膜厚の最小値と最大値の差が1.5倍以内に形成されているため、スピンコート後の膜厚分布は良好であった。更に、スピンコート中に飛散する材料がわずか0.02g程度であり、欠陥が発生しなかった。
【0062】
(比較例1)
上記塗布ユニットとして、直線塗布法としてスリットコート法により直線的に塗布を行ったこと以外は、実施例1と同様にして光ディスクを製造した。スピンコート条件は、実施例1と同様に500rpmの回転数で2秒間保持した。上記スリットコート法は、基板をステージに置き、基板上にスリットコート塗布ユニットを配置して、塗布ユニットを左右に移動させることで基板前面に保護膜を形成した。その結果、基板中心部近傍の凹凸部に樹脂材料が流れ込み、スピンコート時に凹凸部から樹脂材料が流れ出すことによりスジ状の塗布欠陥が多発した。更に、基板外周部及び内周部にも樹脂材料がはみ出しているために、搬送装置などの基板保持部が汚染されて生産上問題があった。
【0063】
スピンコート前での膜厚は、内周側が9〜15μm、外周側が9〜20μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周側が9〜13μm、外周側が9〜20μmであった。また、塗布量は、約0.55gであり、形成された保護膜の重量は約0.05gであり、塗布量に対する形成された量は、約9%であった。
【0064】
上記方法では、形成領域での塗布膜厚を最適化しても、スリットコート方式の問題である、塗布開始部と終了部の膜厚制御が困難であるために塗布量が増大していることと、凹凸を有する円形基板を用いたことにより、スリットの開口幅に対して基板サイズが塗布方向に応じて変動するために、基板外周近傍及び凹凸部に材料が引き込まれて塗布量が増大したものと考えられる。
【0065】
上記方法では、約0.5gの過剰な材料がスピンコート時に基板から飛散するため、裏廻りやミストの再付着が増大して良品を得ることができなかった。
【0066】
(比較例2)
上記塗布ユニットとして、複数ノズルによる塗布方法において塗布圧力を5kg/cm2に設定して基板が1回転する内に塗布を完了させたことと、スピンコート回転数を4000rpmの高速回転で10秒間保持したこと以外は、実施例3と同様にして光ディスクを製造した。上記複数ノズルによる塗布方法では、ノズルピッチを5mmで等間隔に設定した。また、塗布時間の短縮及び塗布膜の膜厚分布の改善にのみ着眼して、連続的な塗布に設定した。その結果、内周部では、基板上で連続膜が形成されているものの、外周部では不連続な塗布膜になっていた。
【0067】
上記方法でのスピンコート前の膜厚は、内周側が600μm、外周側が0〜300μmであり、スピンコート後の膜厚は、内周側が10μm、外周側が20μmであった。また、塗布量は、約3.0gであり、形成された保護膜の重量は約0.06gであり、塗布量に対する形成された量は、約2%であった。
【0068】
上記方法では、塗布時間が短縮されるものの、スピンコートの回転時間及び回転数を増加させる必要があった。その結果、約1.4gの過剰な材料がスピンコート時に基板から飛散することになり、裏廻りやミストの付着が増大して良品を得ることができなかった。
【0069】
更に、スピンコートする前の塗布膜が連続膜でないために、未塗布領域の発生による不良品が多くなると共に、膜厚調整がスピンコート運転条件に依存することにより、スピンコート法の問題点である外周での膜厚が増加傾向にあり、膜厚分布が悪化していた。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有する連続膜を形成する工程と、スピンコート方式により所定の膜厚を形成する工程を含み、塗布量に対して最終的に形成される保護膜の量を10%以上にすることで、材料の粘度の制約を受けることなく、スピンコート時に過剰な塗布材料が飛散することで生じるミストの発生を抑制して、裏廻りやミストの付着及び跳ね返りの再付着の欠陥を防止することができ、かつ均一な膜厚の保護膜を安定して生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る光ディスクの保護膜塗布用スピンコータの模式断面図、a)はターンテーブル上に記録膜を形成した基板をセットした状態、b)は実施例1のスリット塗布ユニットにより塗布を行っている状態、c)はスリット塗布により塗布が完了した状態、d)は、スピンコートを行い保護膜を形成した状態を示した図
【符号の説明】
1 基板
2 記録膜
3 ターンテーブル
4 真空孔
5 スリット塗布ユニット
6 保護膜材料
Claims (5)
- 中心孔を有する円形の基板に形成された記録膜の上に、スピンコート方式により保護膜を形成する光ディスクの製造方法において、あらかじめ所定の領域に保護膜材料を塗布して、最終的に形成される保護膜膜厚の1.1〜10倍の膜厚を有するドーナツ状の連続膜を形成する第1工程と、第1工程の直後にスピンコート方式により所定の膜厚の保護膜を形成する第2工程とを含み、保護膜材料の塗布量に対して形成される保護膜の量が10%以上であることを特徴とする光ディスクの製造方法。
- 第1工程の保護膜形成方法が、基板上に設けられた塗布装置により、回転している基板上の内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜を塗布する方法であり、塗布方法がスリットコート法、ロールコート法、及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルから保護膜材料を塗布する方法であることを特徴とする請求項1記載の光ディスクの製造方法。
- 第1工程の保護層形成方法が、内周及び外周端部を除く所定領域に保護膜材料を塗布する方法であり、内周及び外周の非形成領域をマスクしたスクリーン印刷法により形成することを特徴とする請求項1記載の光ディスクの製造方法。
- 第1工程の保護膜塗布方法がスリット法、ロールコート法及び塗布膜が連続膜になるように形成された複数のノズルと保護膜材料を塗布する方法及びスクリーン印刷法であり、第1工程で塗布された保護膜膜厚の厚い部分が、薄い部分の1.5倍以内であることを特徴とする請求項2または3記載の光ディスクの製造方法。
- 請求項1ないし4いずれか記載の製造方法により製造したことを特徴とする光ディスク。
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