JP2004013371A - コイン識別装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コインの材質、形状、表面の微細な凹凸模様に基づくコイン固有の信号を、瞬時に且つ正確に検出してコインの種別や真偽を高精度に識別することができるコイン識別装置を提供するものである。
【解決手段】被識別物である硬貨2が通過するコイン通過部3と、このコイン通過部3に対向して、硬貨2の侵入側に配置され、渦電流を硬貨表面に発生させる永久磁石4と、この永久磁石4の硬貨排出側に隣接し、コイン通過部3に対向して設けられた磁気インピーダンスセンサ5と、このセンサ5のインピーダンス変化を検出する検出回路6と、この検出回路6に接続され、この検出データと基準データを比較して硬貨2の種別を判定する判定回路7とからなるものである。
【選択図】 図1
【解決手段】被識別物である硬貨2が通過するコイン通過部3と、このコイン通過部3に対向して、硬貨2の侵入側に配置され、渦電流を硬貨表面に発生させる永久磁石4と、この永久磁石4の硬貨排出側に隣接し、コイン通過部3に対向して設けられた磁気インピーダンスセンサ5と、このセンサ5のインピーダンス変化を検出する検出回路6と、この検出回路6に接続され、この検出データと基準データを比較して硬貨2の種別を判定する判定回路7とからなるものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は硬貨や遊戯用コインなどのコインを識別するセンサ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のコイン識別装置は、硬貨の大きさや重量、及び厚みを計測して、その種類毎に識別すると共に、真偽の選別を行っている。この方法は、最も一般的な安価な方法であるが、表面形状を判別できないため偽造硬貨による詐欺を受けや易く、特に自動販売機等の無人販売設備においては、旧500円硬貨と類似の外国硬貨の重量を同じに変造した偽造硬貨による詐欺事件が多発した。このため、自動販売機で旧500円硬貨の使用を停止する対策が採られたり、新たな500円硬貨が発行されるなど大きな社会問題にまで発展した。
【0003】
またコイルを利用した硬貨の材質判別による方法などの電磁気的な手段を併用するなどの対策が採られているが、材質判別は日本における硬貨が1円を除いてはすべて銅系の合金であることから、簡便で瞬時に判別することが難かしく、根本的な解決策がなかった。
【0004】
一方、硬貨の表面形状を識別する方法は、硬貨の加工が非常に高精度で、その偽造が難しいことから、真偽の判別に非常に有効である。しかしながら、自動販売機などで使用する場合、投入口から投入された硬貨が移動している状態で、その表面の微細な凹凸模様を判別することが難しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を改善するため、コインの材質、形状、表面の微細な凹凸模様などに基づくコイン固有の信号を、瞬時に且つ正確に検出してコインの種別や真偽を高精度に識別することができるコイン識別装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載のコイン識別装置は、被識別物であるコインが通過するコイン通過部と、このコイン通過部に対向して、コインの侵入側に配置され、渦電流をコイン表面に発生させる磁石と、この磁石のコイン排出側に隣接し、コイン通過部に対向して設けられた磁気インピーダンスセンサと、このセンサのインピーダンス変化を検出する検出回路と、この検出回路に接続され、この検出データと基準データを比較してコインの種別を判定する判定回路とからなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2記載のコイン識別装置は、磁気インピーダンスセンサが、コイン通過部に対向する部分を除いて磁気遮蔽体で囲まれていることを特徴とするものである。請求項3記載のコイン識別装置は、磁石が永久磁石または電磁石で形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載のコイン識別装置は、コイン通過部が、コインを転動させながら通過する傾斜面で構成されていることを特徴とするものである。請求項5記載のコイン識別装置は、コイン通過部が、コインを搬送するベルトコンベアで形成されていることを特徴とするものである。請求項6記載のコイン識別装置は、コイン通過部が、コインを落下させるコイン落下筒で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
更に請求項7記載のコイン識別装置は、被識別物であるコインに対向して配置され、時間変化する磁場を発生させてコイン表面に渦電流を発生させる電磁石と、この電磁石に隣接し、コインに対向して設けられた磁気インピーダンスセンサと、このセンサのインピーダンス変化を検出する検出回路と、この検出回路に接続され、この検出データと基準データを比較してコインの種別を判定する判定回路とからなることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。図1はコイン識別装置1を示すもので、被識別物である硬貨2が通過するコイン通過部3と、このコイン通過部3に対向して、硬貨2の侵入側に配置された永久磁石4と、この永久磁石4のコイン排出側に隣接し、コイン通過部3に対向して設けられられた磁気インピーダンスセンサ5と、このセンサ5のインピーダンス変化を検出する検出回路6と、この検出回路6に接続された判定回路7とから構成されている。
【0011】
前記コイン通過部3は図2に示すように、傾斜面8で形成され、投入口から投入された硬貨2が自重により転動しながらコイン識別装置1を通過するようになっている。また永久磁石4のコイン排出側に隣接して配置された磁気インピーダンスセンサ5は、コイン通過部3に対向する部分を除いて高透磁率物質で形成された磁気遮蔽体10で囲まれている。
【0012】
磁気インピーダンスセンサ5は、外部磁場に対する透磁率μmの変化に起因するインピーダンスZの変化を検出するセンサである。次にこのセンサの動作原理について説明すると、一般に、金属のワイヤや薄膜線に高周波電流を直接通電すると、内部の抵抗と自己インダクタンス等による高周波抵抗(インピーダンス)Zによって電圧降下と位相変化が発生する。例として、厚さd、幅W、長さlの平板薄膜磁性体(抵抗率ρ、透磁率μ m)のインピーダンスZの値は、各周波数ωでかつ充分に高周波数の時には式1の関係が成立する(参照:「磁気センサ理工学」39P毛利佳年雄著)。
【0013】
【式1】
【0014】
この効果は磁気インピーダンス効果といわれており、磁性アモルファスのワイヤや軟磁性薄膜などの外部磁場に対する透磁率μmの変化に起因するインピーダンスZの変化は、10−7T以下の磁場(地磁気は10−5T)の検出が可能であることが知られている。この磁気インピーダンス効果を応用して、磁気インピーダンスセンサ5は、外部磁場を受ける環境に磁性アモルファスを配置し、ここに高周波電流を通電して、インピーダンスZの変化を検出するものである。
【0015】
つまり、永久磁石4から発生する磁場中を高速で硬貨2が通過すると、電磁誘導作用により、硬貨表面の形状や材質、大きさなどに起因して変化する高周波の渦電流が発生する。この渦電流の発生による磁場の変化を、磁気インピーダンスセンサ5で硬貨2の表面を走査して検出する。また磁気インピーダンスセンサ5には高周波電流を通電し、硬貨2による磁場の変化を、透磁率μ mの変化、すなわちインピーダンスZの変化として検出回路6で検出することにより、硬貨表面の形状や材質、大きさなどに起因する磁場の変化を検出するものである。
【0016】
またこの検出回路6で検出したインピーダンスZの変化を電圧変化としてアナログ出力する。検出回路6に接続された判定回路7では、硬貨2の種類に応じて、時間の経過による電圧波形をアナログデータとして予め記録されている標準波形のアナログデータと、検出した電圧波形のアナログ出力と対比して硬貨2の種類を判別するものである。
【0017】
上記構成のコイン識別装置では、硬貨2が投入口からコイン通過部3に投入されると、コイン通過部3は傾斜面8で形成されているので、硬貨2が自重により転動しながらコイン識別装置1を通過する。この時、先ず永久磁石4の磁場の中を、硬貨2が回転しながら横切る事により、電磁誘導作用により硬貨2の表面近傍に渦電流が発生する。この渦電流は表皮深さ内で流れる表面電流であるので、複雑なコインの表面形状や材質、大きさなどにより影響を大きく受ける。
【0018】
また永久磁石4からの磁場の影響は、永久磁石4と硬貨2との距離が近いほど大きいことから、硬貨表面の凸部2aと凹部2bとでは渦電流発生量が異なっている。従って、これらの渦電流の総合により、発生した全渦電流はコイン全体で非常に複雑なパターンをもった磁場を発生する。
【0019】
この複雑なパターンをもった磁場は、硬貨2の種類に応じて固有のパターンを示し、この磁場を磁気インピーダンスセンサ5で、硬貨2の表面を走査する事により、硬貨2による磁場の変化による磁気インピーダンスセンサ5の透磁率μ mの変化、すなわちインピーダンスZの変化として検出回路6で検出する。このインピーダンスZの変化による電圧変化をアナログ変換し、これと判定回路7に予め記録されている標準波形のアナログデータとを比較することにより、各硬貨2の判別を行なうことができる。
【0020】
また磁気インピーダンスセンサ5は、コイン通過部3に対向する部分を除いて高透磁率物質で形成された磁気遮蔽体10で囲まれているので、図3に示すように永久磁石4からの磁束は、磁気遮蔽体10が帰磁路となり永久磁石4による磁場の直接的影響を防止することができる。つまり磁気遮蔽体10で囲まれていないと図4のように永久磁石4の磁場を直接、磁気インピーダンスセンサ5が受けてしまい、硬貨2から発生する渦電流による磁場だけを検出できなくなるからである。
【0021】
図1および図2に示す本発明のコイン識別装置1を使用して、新500円硬貨2をコイン通過部3に投入し、傾斜面8を転動させて測定したところ、検出回路6からの電圧波形は図5に示すようになった。また形状が似ている韓国ウォン硬貨の場合について識別したところ電圧波形は図6に示すようになり、両者の電圧波形の特徴は大きく異なっており、真偽を容易に判別することができた。
【0022】
また100円硬貨2の場合についても識別したところ電圧波形は図7に示すようになり、更に10円硬貨2の場合の電圧波形は図8に示すようになり、硬貨2の種別により、電圧波形はそれぞれ特有のピークを示し判別が可能であった。
【0023】
また磁気インピーダンス効果は1000m/minまでの高速度に対応できることから、通常の使用状態ではあらゆる速度条件に対応することが可能であり、図2に示すように傾斜面8を硬貨2が転動しながら移動しても識別が可能であるばかりでなく、コイン通過部3が、コインを落下させるコイン落下筒で形成され、コイン識別装置1の前方を硬貨2が落下しても識別が可能である。更にコイン通過部3を、硬貨2を搬送するベルトコンベアで形成したものでも良い。
【0024】
また上記説明では、磁石として永久磁石4を用いた場合について示したが電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合は、供給電流を制御することにより磁場の強度を変化させて、コイン識別装置1の識別感度を調整することができる。
【0025】
図9は本発明の他の実施の形態を示すもので、このコイン識別装置1は、被識別物である硬貨2はテーブル12の上にセットされている。このテーブル12の上方には移動機構13が、テーブル12に沿って水平に移動するようになっている。この移動機構13には、テーブル12に対向して電磁石14が設けられ、これは高周波電源15に接続されている。
【0026】
この電磁石14の硬貨排出側に隣接して、磁気インピーダンスセンサ5が設けられ、ここにセンサ5のインピーダンス変化を検出する検出回路6が接続され、更にこの検出データと基準データを比較して硬貨2の種別を判定する判定回路7が設けられている。なお磁気インピーダンスセンサ5は、図1と同様に、テーブル12に対向する部分を除いて高透磁率物質で形成された磁気遮蔽体10で囲まれている。
【0027】
上記構成のコイン識別装置1は、高周波電源15が電磁石14に高周波の電流を供給すると、電磁石14からパルス磁場が発生する。硬貨2はテーブル12の上にセットされ移動しないが、移動機構13が硬貨2の上方を走査しながら移動することにより、電磁石14から発生する高周波のパルス磁場中を硬貨2が通過して、この時の電磁誘導作用により、硬貨表面の形状や材質、大きさなどに起因して変化する高周波の渦電流が硬貨2の表面近傍に発生する。
【0028】
この硬貨2に渦電流が流れると、硬貨2から非常に複雑なパターンをもった磁場を発生する。この磁場を磁気インピーダンスセンサ5で走査する事により、磁気インピーダンスセンサ5の透磁率μ mが変化し、これをインピーダンスZの変化として検出回路6で検出し、この検出電圧をアナログ変換して、判定回路7で予め記録されている標準波形のアナログデータと比較することにより、各硬貨2の判別を行なうことができる。
【0029】
また磁気インピーダンスセンサ5は微細加工プロセスを利用することで薄膜化による小型化が容易である。磁気インピーダンス効果は、渦電流が発生するあらゆる金属で成り立つことから、銅貨、アルミニウム貨、ニッケル貨等の金属硬貨や遊戯用コインなどの判別にも適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明に係る請求項1記載のコイン識別装置によれば、磁石により渦電流をコイン表面に発生させ、この渦電流により磁場を発生させ、この磁場の変化を磁気インピーダンスセンサで検出することにより、コインの材質、形状、表面の微細な凹凸模様に基づくコイン固有の信号を、瞬時に且つ高精度に識別することができる。更に磁気インピーダンスセンサは、微細加工プロセスで製造することができるので、センサの小型化、軽量化、低コスト化が可能である。
【0031】
また請求項2記載のコイン識別装置によれば、磁気インピーダンスセンサが、コイン通過部に対向する部分を除いて磁気遮蔽体で囲まれているので、隣接する磁石からの磁場による影響を防止して、コインから発生する磁場を検出して高精度に識別することができる。
【0032】
また請求項3記載のコイン識別装置によれば、コインに渦電流を発生させる磁石が永久磁石または電磁石で形成され、特に電磁石で形成したものは感度の調整が容易である。
【0033】
また請求項4記載のコイン識別装置によれば、コイン通過部が、傾斜面で構成されているので、コインが自重により転動して、効率よく渦電流を発生させることができる。また請求項5記載のコイン識別装置によれば、コイン通過部が、コインを搬送するベルトコンベアで形成されているので、ベルトコンベアの搬送速度を調整することにより識別感度の調整をすることができる。
【0034】
また請求項6記載のコイン識別装置によれば、コイン通過部が、コインを落下させるコイン落下筒で形成されているので装置の構造を簡素化することができる。更に請求項7記載のコイン識別装置によれば、コインをテーブルの上にセットして移動させないで識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態によるコイン識別装置の平面図である。
【図2】図1のコイン識別装置を示す正面図である。
【図3】磁石からの磁場の影響を、磁気インピーダンスセンサを囲んだ磁気遮蔽体で遮蔽している状態を示す説明図である。
【図4】磁気インピーダンスセンサが磁石からの磁場の影響を受けている状態を示す説明図である。
【図5】コイン識別装置により検出した、500円硬貨の電圧波形図である。
【図6】コイン識別装置により検出した、韓国ウォン硬貨の電圧波形図である。
【図7】コイン識別装置により検出した、100円硬貨の電圧波形図である。
【図8】コイン識別装置により検出した、10円硬貨の電圧波形図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるコイン識別装置の正面図である。
【符号の説明】
1 コイン識別装置
2 硬貨
3 コイン通過部
4 永久磁石
5 磁気インピーダンスセンサ
6 検出回路
7 判定回路
8 傾斜面
10 磁気遮蔽体
12 テーブル
13 移動機構
14 電磁石
15 高周波電源
【発明の属する技術分野】
本発明は硬貨や遊戯用コインなどのコインを識別するセンサ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のコイン識別装置は、硬貨の大きさや重量、及び厚みを計測して、その種類毎に識別すると共に、真偽の選別を行っている。この方法は、最も一般的な安価な方法であるが、表面形状を判別できないため偽造硬貨による詐欺を受けや易く、特に自動販売機等の無人販売設備においては、旧500円硬貨と類似の外国硬貨の重量を同じに変造した偽造硬貨による詐欺事件が多発した。このため、自動販売機で旧500円硬貨の使用を停止する対策が採られたり、新たな500円硬貨が発行されるなど大きな社会問題にまで発展した。
【0003】
またコイルを利用した硬貨の材質判別による方法などの電磁気的な手段を併用するなどの対策が採られているが、材質判別は日本における硬貨が1円を除いてはすべて銅系の合金であることから、簡便で瞬時に判別することが難かしく、根本的な解決策がなかった。
【0004】
一方、硬貨の表面形状を識別する方法は、硬貨の加工が非常に高精度で、その偽造が難しいことから、真偽の判別に非常に有効である。しかしながら、自動販売機などで使用する場合、投入口から投入された硬貨が移動している状態で、その表面の微細な凹凸模様を判別することが難しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を改善するため、コインの材質、形状、表面の微細な凹凸模様などに基づくコイン固有の信号を、瞬時に且つ正確に検出してコインの種別や真偽を高精度に識別することができるコイン識別装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載のコイン識別装置は、被識別物であるコインが通過するコイン通過部と、このコイン通過部に対向して、コインの侵入側に配置され、渦電流をコイン表面に発生させる磁石と、この磁石のコイン排出側に隣接し、コイン通過部に対向して設けられた磁気インピーダンスセンサと、このセンサのインピーダンス変化を検出する検出回路と、この検出回路に接続され、この検出データと基準データを比較してコインの種別を判定する判定回路とからなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2記載のコイン識別装置は、磁気インピーダンスセンサが、コイン通過部に対向する部分を除いて磁気遮蔽体で囲まれていることを特徴とするものである。請求項3記載のコイン識別装置は、磁石が永久磁石または電磁石で形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載のコイン識別装置は、コイン通過部が、コインを転動させながら通過する傾斜面で構成されていることを特徴とするものである。請求項5記載のコイン識別装置は、コイン通過部が、コインを搬送するベルトコンベアで形成されていることを特徴とするものである。請求項6記載のコイン識別装置は、コイン通過部が、コインを落下させるコイン落下筒で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
更に請求項7記載のコイン識別装置は、被識別物であるコインに対向して配置され、時間変化する磁場を発生させてコイン表面に渦電流を発生させる電磁石と、この電磁石に隣接し、コインに対向して設けられた磁気インピーダンスセンサと、このセンサのインピーダンス変化を検出する検出回路と、この検出回路に接続され、この検出データと基準データを比較してコインの種別を判定する判定回路とからなることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。図1はコイン識別装置1を示すもので、被識別物である硬貨2が通過するコイン通過部3と、このコイン通過部3に対向して、硬貨2の侵入側に配置された永久磁石4と、この永久磁石4のコイン排出側に隣接し、コイン通過部3に対向して設けられられた磁気インピーダンスセンサ5と、このセンサ5のインピーダンス変化を検出する検出回路6と、この検出回路6に接続された判定回路7とから構成されている。
【0011】
前記コイン通過部3は図2に示すように、傾斜面8で形成され、投入口から投入された硬貨2が自重により転動しながらコイン識別装置1を通過するようになっている。また永久磁石4のコイン排出側に隣接して配置された磁気インピーダンスセンサ5は、コイン通過部3に対向する部分を除いて高透磁率物質で形成された磁気遮蔽体10で囲まれている。
【0012】
磁気インピーダンスセンサ5は、外部磁場に対する透磁率μmの変化に起因するインピーダンスZの変化を検出するセンサである。次にこのセンサの動作原理について説明すると、一般に、金属のワイヤや薄膜線に高周波電流を直接通電すると、内部の抵抗と自己インダクタンス等による高周波抵抗(インピーダンス)Zによって電圧降下と位相変化が発生する。例として、厚さd、幅W、長さlの平板薄膜磁性体(抵抗率ρ、透磁率μ m)のインピーダンスZの値は、各周波数ωでかつ充分に高周波数の時には式1の関係が成立する(参照:「磁気センサ理工学」39P毛利佳年雄著)。
【0013】
【式1】
【0014】
この効果は磁気インピーダンス効果といわれており、磁性アモルファスのワイヤや軟磁性薄膜などの外部磁場に対する透磁率μmの変化に起因するインピーダンスZの変化は、10−7T以下の磁場(地磁気は10−5T)の検出が可能であることが知られている。この磁気インピーダンス効果を応用して、磁気インピーダンスセンサ5は、外部磁場を受ける環境に磁性アモルファスを配置し、ここに高周波電流を通電して、インピーダンスZの変化を検出するものである。
【0015】
つまり、永久磁石4から発生する磁場中を高速で硬貨2が通過すると、電磁誘導作用により、硬貨表面の形状や材質、大きさなどに起因して変化する高周波の渦電流が発生する。この渦電流の発生による磁場の変化を、磁気インピーダンスセンサ5で硬貨2の表面を走査して検出する。また磁気インピーダンスセンサ5には高周波電流を通電し、硬貨2による磁場の変化を、透磁率μ mの変化、すなわちインピーダンスZの変化として検出回路6で検出することにより、硬貨表面の形状や材質、大きさなどに起因する磁場の変化を検出するものである。
【0016】
またこの検出回路6で検出したインピーダンスZの変化を電圧変化としてアナログ出力する。検出回路6に接続された判定回路7では、硬貨2の種類に応じて、時間の経過による電圧波形をアナログデータとして予め記録されている標準波形のアナログデータと、検出した電圧波形のアナログ出力と対比して硬貨2の種類を判別するものである。
【0017】
上記構成のコイン識別装置では、硬貨2が投入口からコイン通過部3に投入されると、コイン通過部3は傾斜面8で形成されているので、硬貨2が自重により転動しながらコイン識別装置1を通過する。この時、先ず永久磁石4の磁場の中を、硬貨2が回転しながら横切る事により、電磁誘導作用により硬貨2の表面近傍に渦電流が発生する。この渦電流は表皮深さ内で流れる表面電流であるので、複雑なコインの表面形状や材質、大きさなどにより影響を大きく受ける。
【0018】
また永久磁石4からの磁場の影響は、永久磁石4と硬貨2との距離が近いほど大きいことから、硬貨表面の凸部2aと凹部2bとでは渦電流発生量が異なっている。従って、これらの渦電流の総合により、発生した全渦電流はコイン全体で非常に複雑なパターンをもった磁場を発生する。
【0019】
この複雑なパターンをもった磁場は、硬貨2の種類に応じて固有のパターンを示し、この磁場を磁気インピーダンスセンサ5で、硬貨2の表面を走査する事により、硬貨2による磁場の変化による磁気インピーダンスセンサ5の透磁率μ mの変化、すなわちインピーダンスZの変化として検出回路6で検出する。このインピーダンスZの変化による電圧変化をアナログ変換し、これと判定回路7に予め記録されている標準波形のアナログデータとを比較することにより、各硬貨2の判別を行なうことができる。
【0020】
また磁気インピーダンスセンサ5は、コイン通過部3に対向する部分を除いて高透磁率物質で形成された磁気遮蔽体10で囲まれているので、図3に示すように永久磁石4からの磁束は、磁気遮蔽体10が帰磁路となり永久磁石4による磁場の直接的影響を防止することができる。つまり磁気遮蔽体10で囲まれていないと図4のように永久磁石4の磁場を直接、磁気インピーダンスセンサ5が受けてしまい、硬貨2から発生する渦電流による磁場だけを検出できなくなるからである。
【0021】
図1および図2に示す本発明のコイン識別装置1を使用して、新500円硬貨2をコイン通過部3に投入し、傾斜面8を転動させて測定したところ、検出回路6からの電圧波形は図5に示すようになった。また形状が似ている韓国ウォン硬貨の場合について識別したところ電圧波形は図6に示すようになり、両者の電圧波形の特徴は大きく異なっており、真偽を容易に判別することができた。
【0022】
また100円硬貨2の場合についても識別したところ電圧波形は図7に示すようになり、更に10円硬貨2の場合の電圧波形は図8に示すようになり、硬貨2の種別により、電圧波形はそれぞれ特有のピークを示し判別が可能であった。
【0023】
また磁気インピーダンス効果は1000m/minまでの高速度に対応できることから、通常の使用状態ではあらゆる速度条件に対応することが可能であり、図2に示すように傾斜面8を硬貨2が転動しながら移動しても識別が可能であるばかりでなく、コイン通過部3が、コインを落下させるコイン落下筒で形成され、コイン識別装置1の前方を硬貨2が落下しても識別が可能である。更にコイン通過部3を、硬貨2を搬送するベルトコンベアで形成したものでも良い。
【0024】
また上記説明では、磁石として永久磁石4を用いた場合について示したが電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合は、供給電流を制御することにより磁場の強度を変化させて、コイン識別装置1の識別感度を調整することができる。
【0025】
図9は本発明の他の実施の形態を示すもので、このコイン識別装置1は、被識別物である硬貨2はテーブル12の上にセットされている。このテーブル12の上方には移動機構13が、テーブル12に沿って水平に移動するようになっている。この移動機構13には、テーブル12に対向して電磁石14が設けられ、これは高周波電源15に接続されている。
【0026】
この電磁石14の硬貨排出側に隣接して、磁気インピーダンスセンサ5が設けられ、ここにセンサ5のインピーダンス変化を検出する検出回路6が接続され、更にこの検出データと基準データを比較して硬貨2の種別を判定する判定回路7が設けられている。なお磁気インピーダンスセンサ5は、図1と同様に、テーブル12に対向する部分を除いて高透磁率物質で形成された磁気遮蔽体10で囲まれている。
【0027】
上記構成のコイン識別装置1は、高周波電源15が電磁石14に高周波の電流を供給すると、電磁石14からパルス磁場が発生する。硬貨2はテーブル12の上にセットされ移動しないが、移動機構13が硬貨2の上方を走査しながら移動することにより、電磁石14から発生する高周波のパルス磁場中を硬貨2が通過して、この時の電磁誘導作用により、硬貨表面の形状や材質、大きさなどに起因して変化する高周波の渦電流が硬貨2の表面近傍に発生する。
【0028】
この硬貨2に渦電流が流れると、硬貨2から非常に複雑なパターンをもった磁場を発生する。この磁場を磁気インピーダンスセンサ5で走査する事により、磁気インピーダンスセンサ5の透磁率μ mが変化し、これをインピーダンスZの変化として検出回路6で検出し、この検出電圧をアナログ変換して、判定回路7で予め記録されている標準波形のアナログデータと比較することにより、各硬貨2の判別を行なうことができる。
【0029】
また磁気インピーダンスセンサ5は微細加工プロセスを利用することで薄膜化による小型化が容易である。磁気インピーダンス効果は、渦電流が発生するあらゆる金属で成り立つことから、銅貨、アルミニウム貨、ニッケル貨等の金属硬貨や遊戯用コインなどの判別にも適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明に係る請求項1記載のコイン識別装置によれば、磁石により渦電流をコイン表面に発生させ、この渦電流により磁場を発生させ、この磁場の変化を磁気インピーダンスセンサで検出することにより、コインの材質、形状、表面の微細な凹凸模様に基づくコイン固有の信号を、瞬時に且つ高精度に識別することができる。更に磁気インピーダンスセンサは、微細加工プロセスで製造することができるので、センサの小型化、軽量化、低コスト化が可能である。
【0031】
また請求項2記載のコイン識別装置によれば、磁気インピーダンスセンサが、コイン通過部に対向する部分を除いて磁気遮蔽体で囲まれているので、隣接する磁石からの磁場による影響を防止して、コインから発生する磁場を検出して高精度に識別することができる。
【0032】
また請求項3記載のコイン識別装置によれば、コインに渦電流を発生させる磁石が永久磁石または電磁石で形成され、特に電磁石で形成したものは感度の調整が容易である。
【0033】
また請求項4記載のコイン識別装置によれば、コイン通過部が、傾斜面で構成されているので、コインが自重により転動して、効率よく渦電流を発生させることができる。また請求項5記載のコイン識別装置によれば、コイン通過部が、コインを搬送するベルトコンベアで形成されているので、ベルトコンベアの搬送速度を調整することにより識別感度の調整をすることができる。
【0034】
また請求項6記載のコイン識別装置によれば、コイン通過部が、コインを落下させるコイン落下筒で形成されているので装置の構造を簡素化することができる。更に請求項7記載のコイン識別装置によれば、コインをテーブルの上にセットして移動させないで識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態によるコイン識別装置の平面図である。
【図2】図1のコイン識別装置を示す正面図である。
【図3】磁石からの磁場の影響を、磁気インピーダンスセンサを囲んだ磁気遮蔽体で遮蔽している状態を示す説明図である。
【図4】磁気インピーダンスセンサが磁石からの磁場の影響を受けている状態を示す説明図である。
【図5】コイン識別装置により検出した、500円硬貨の電圧波形図である。
【図6】コイン識別装置により検出した、韓国ウォン硬貨の電圧波形図である。
【図7】コイン識別装置により検出した、100円硬貨の電圧波形図である。
【図8】コイン識別装置により検出した、10円硬貨の電圧波形図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるコイン識別装置の正面図である。
【符号の説明】
1 コイン識別装置
2 硬貨
3 コイン通過部
4 永久磁石
5 磁気インピーダンスセンサ
6 検出回路
7 判定回路
8 傾斜面
10 磁気遮蔽体
12 テーブル
13 移動機構
14 電磁石
15 高周波電源
Claims (7)
- 被識別物であるコインが通過するコイン通過部と、このコイン通過部に対向して、コインの侵入側に配置され、渦電流をコイン表面に発生させる磁石と、この磁石のコイン排出側に隣接し、コイン通過部に対向して設けられた磁気インピーダンスセンサと、このセンサのインピーダンス変化を検出する検出回路と、この検出回路に接続され、この検出データと基準データを比較してコインの種別を判定する判定回路とからなることを特徴とするコイン識別装置。
- 磁気インピーダンスセンサが、コイン通過部に対向する部分を除いて磁気遮蔽体で囲まれていることを特徴とする請求項1記載のコイン識別装置。
- 磁石が永久磁石または電磁石で形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイン識別装置。
- コイン通過部が、コインを転動させながら通過する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1記載のコイン識別装置。
- コイン通過部が、コインを搬送するベルトコンベアで形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイン識別装置。
- コイン通過部が、コインを落下させるコイン落下筒で形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイン識別装置。
- 被識別物であるコインに対向して配置され、時間変化する磁場を発生させてコイン表面に渦電流を発生させる電磁石と、この電磁石に隣接し、コインに対向して設けられた磁気インピーダンスセンサと、このセンサのインピーダンス変化を検出する検出回路と、この検出回路に接続され、この検出データと基準データを比較してコインの種別を判定する判定回路とからなることを特徴とするコイン識別装置。
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-
2002
- 2002-06-05 JP JP2002163765A patent/JP2004013371A/ja active Pending
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