JP2004012091A - 加熱冷却装置及び加熱冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率的な加熱及び冷却を行ない、加熱及び冷却に要する時間を短縮することが可能な加熱冷却装置を提供する。
【解決手段】被温調物体(12)の温度調整を行なう加熱冷却装置において、被温調物体(12)に近接させた温調側電極(17)、温調側電極(17)に一側端部を接触させた熱電素子(18,19)、及び熱電素子(18,19)の他側端部に接触した吸放熱側電極(20)を有する熱電モジュール(21)と、熱電素子(18,19)の側面に冷却風(16)を当てて冷却する冷却ファン(15)などの冷却機構とを備え、前記冷却機構を、被温調物体(12)を冷却する際には動作させ、被温調物体(12)を加熱する際には止めるようにしたことを特徴とする加熱冷却装置及びこの加熱冷却装置を用いて被温調物体(12)の温調を行なう温度調整方法。
【選択図】 図1
【解決手段】被温調物体(12)の温度調整を行なう加熱冷却装置において、被温調物体(12)に近接させた温調側電極(17)、温調側電極(17)に一側端部を接触させた熱電素子(18,19)、及び熱電素子(18,19)の他側端部に接触した吸放熱側電極(20)を有する熱電モジュール(21)と、熱電素子(18,19)の側面に冷却風(16)を当てて冷却する冷却ファン(15)などの冷却機構とを備え、前記冷却機構を、被温調物体(12)を冷却する際には動作させ、被温調物体(12)を加熱する際には止めるようにしたことを特徴とする加熱冷却装置及びこの加熱冷却装置を用いて被温調物体(12)の温調を行なう温度調整方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被温調物体の温度調整を行なう加熱冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱電モジュールを用いてウェハなどの被温調物体の温度を制御する加熱冷却装置が知られている。
図19は、従来技術に係る加熱冷却装置の正面図を示しており、以下図19に基づいて従来技術を説明する。
図19において、例えばポリイミドなどの樹脂フィルムからなる載置ベース14上には突起13が設けられ、突起13上にはウェハなどの被温調物体12が搭載されている。
樹脂フィルムの下部には、熱電モジュール21の温調側電極17が接触している。熱電モジュール21は、p型熱電素子18とn型熱電素子19とを交互に配設し、その上部同士及び下部同士を、温調側電極17及び吸放熱側電極20で、それぞれ接続したものである。吸放熱側電極20の下部には、放熱ベース35が固定され、放熱ベース35には放熱フィン34が接触している。
【0003】
熱電素子18,19に、所定の1方向(以下、加熱方向と言う)に電流を通電することにより、温調側電極17が昇温され、被温調物体12を加熱する。このとき、吸放熱側電極20は周囲環境の熱を吸い上げるため、吸熱の役目を果たしている。
また、熱電素子18,19に、加熱方向とは逆の方向(以下、冷却方向と言う)に電流を流すことにより、温調側電極17が冷却され、被温調物体12を冷却する。このとき、放熱フィン34にその下方に配置された冷却ファン15から冷却風16を吹きつけることにより、被温調物体12から熱電モジュール21が奪った熱を、吸放熱側電極20を介して外気に放出する。
【0004】
また他の従来技術によれば、図20に示すように、放熱フィン34及び冷却ファン15の代わりに、密封型の水冷ジャケット36を放熱ベース35に接触させ、その内部に冷却水や代替フロンなどの冷却流体37を流している。これにより、吸放熱側電極20を冷却し、被温調物体12の冷却を行なっている。
【0005】
図21に、加熱/冷却サイクルの一例をグラフで示す。横軸が時間tであり、縦軸が載置ベース14の温度Tである。
図21に示すように、まず時刻t0に、被温調物体12を載置ベース14に載置する。このとき、載置ベース14は、予め冷却温度T1(例えば70度)に保持されている。時刻t1から加熱を開始し、時間Δt1が経過して時刻t2に載置ベース14が加熱温度T2(例えば140度)まで到達すると、載置ベース14を加熱温度T2で所定の高温保持時間Δt2だけ保持する。
そして時刻t3に冷却を開始し、時間Δt3が経過して時刻t4に被温調物体12が冷却温度T1に到達すると、冷却温度T1で所定の低温保持時間Δt4だけ保持する。
そして時刻t5に、加熱及び冷却を終えた被温調物体12を載置ベース14から除去し、時刻t6に、新たな被温調物体12を載置ベース14に載せて、同様の加熱/冷却を行なうようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術には、次に述べるような問題がある。
例えば、被温調物体12がウェハであるような場合に、加熱/冷却の1サイクルに要する時間を短縮することにより、単位時間あたりのウェハの製造量を増加したいという要望がある。
図21に示した加熱/冷却サイクルにおいて、高温保持時間Δt2及び低温保持時間Δt4は予め定められており、変えることは難しい。従って、加熱/冷却の1サイクルに要する時間を短縮するためには、加熱に要する加熱時間Δt1及び冷却に要する冷却時間Δt3の少なくともいずれか一方を短縮させる必要がある。
また、ウェハ上で生じる化学反応を正確に制御するためにも、ウェハが加熱温度T2及び冷却温度T1以外の温度状態にある、加熱時間Δt1及び冷却時間Δt3を、なるべく短縮することが望ましい。
【0007】
熱電モジュール21は、加熱方向に電流を流すことにより、吸放熱側電極20の熱を奪って温調側電極17へ移動させ、被温調物体12の加熱を行なう。
ところが、前記従来技術によれば、吸放熱側電極20には放熱フィン34や冷却ジャケット36が接触しているため、吸放熱側電極20の熱容量が大きなものとなっている。その結果、吸放熱側電極20の熱を短時間で奪うことが困難となっている。
【0008】
また冷却時には、温調側電極17の熱を奪って吸放熱側電極20へ移動させることにより、被温調物体12の冷却を行なう。このとき、吸放熱側電極20の熱を、冷却フィン34や冷却ジャケット36を介して放熱させることになるが、吸放熱側電極20と冷却フィン34や冷却ジャケット36との接触面積が小さく、効率的な冷却を行なうことが難しい。また、両者の間に絶縁のためのグリース等を介在させなければならないため、伝熱効率が低下して、冷却のために大きな電流を流さなければならなくなる。
【0009】
即ち、従来技術においては、加熱時間Δt1又は冷却時間Δt3を短縮することはいずれも困難であり、そのためには大電流を流す必要があるという問題がある。
さらには、冷却時においては、被温調物体12の温度を正確に冷却温度T1にする必要があるが、冷却フィン34や冷却ジャケット36の熱容量が大きいために、冷却が止まらずに被温調物体12温度が冷却温度T1より下がるオーバーシュートが起きることがある。
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、効率的な加熱及び冷却を行ない、加熱及び冷却に要する時間を短縮することが可能な加熱冷却装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、本発明は、
被温調物体の温度調整を行なう加熱冷却装置において、
被温調物体に近接させた温調側電極、温調側電極に一側端部を接触させた熱電素子、及び熱電素子の他側端部に接触した吸放熱側電極を有する熱電モジュールと、
熱電素子の側面を冷却する冷却機構とを備えている。
これにより、吸放熱側電極に加えて、熱電素子の側面からも熱が放熱されるので、冷却時の効率が向上する。
【0011】
また本発明は、
前記冷却機構が絶縁性流体を流す流体駆動装置であり、
流体駆動装置は、熱電素子の側面に絶縁性流体を供給することにより、熱電素子の側面を冷却している。
これにより、熱電素子の側面と絶縁性流体とが接触して熱が奪われるので、効率の良い放熱が可能である。
【0012】
また本発明は、
前記絶縁性流体が液体である。
例えば、揮発性冷媒などを用いることにより、熱電素子の側面から絶縁性流体放熱効率が熱を効率的に奪うことができる。
【0013】
また本発明は、
前記絶縁性流体が気体である。
気体を用いることにより、液体を回収するための設備などの手間が不要であり、簡単な構成によって効率の良い冷却を実現可能である。
【0014】
また本発明は、
前記流体駆動装置が、冷却風を熱電素子の側面に流す送風機である。
送風機のみによって冷却を行なうことができ、装置の構成が簡単になる。
【0015】
また本発明は、
前記冷却機構が、熱電素子の吸放熱側電極側の端部から、温調側電極側の端部に向けて絶縁性流体を流す流体駆動装置である。
これにより、他の熱電素子を通って温まった絶縁性流体ではなく、新鮮で冷たい絶縁性流体がすべての熱電素子に略一様に当たるので、冷却効率が向上し、かつすべての熱電素子が略同一の冷却能力を備える。
【0016】
また本発明は、
吸放熱側電極と被温調物体との間に、被温調物体の温度分布を均一化する均熱板を設けている。
均熱板により、各熱電素子間の熱が均一化され、被温調物体を均一に温調することができる。
さらには、冷却風などが被温調物体に直接当たらず、被温調物体の温度が乱されることなく、均一な冷却又は加熱が可能である。
【0017】
また本発明は、
前記冷却機構を、被温調物体を冷却する際にのみ動作させている。
これにより、加熱時には熱電素子が冷却されないので、素早く温度を上げることが可能となる。
【0018】
また本発明は、熱電モジュールによって被温調物体の温度調整を行なう温度調整方法において、
冷却時には熱電素子の側面を冷却し、加熱時には冷却しないようにしている。
これにより、冷却時間及び加熱時間の両方が短縮される。
【0019】
また本発明は、
冷却時には熱電素子の側面を冷却し、加熱時には冷却しないようにするとともに、
冷却時に、被温調物体が目標の冷却温度から所定温度範囲外の場合には熱電素子の側面を冷却し、被温調物体が目標の冷却温度から所定温度範囲内に近づくと、熱電素子の側面への冷却を鈍化又は停止するようにしている。
これにより、被温調物体の温度を、正確に目標値に合わせることが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
まず、第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の正面図を示している。図1において、例えばポリイミドなどの樹脂フィルムからなる載置ベース14上には突起13が設けられ、突起13上にはウェハなどの被温調物体12が搭載されている。
載置ベース14の下部には、熱電モジュール21の温調側電極17が接触している。熱電モジュール21は、p型熱電素子18とn型熱電素子19とを交互に配設し、その上端部同士及び下端部同士を、温調側電極17及び吸放熱側電極20で、それぞれ接続したものである。
【0021】
加熱冷却装置11は、熱電素子冷却機構として、熱電素子18,19の側面(上端部及び下端部以外の面を側面と総称する)に冷却風16を当てる冷却ファン15を備えている。冷却ファン15は、コントローラ22の指示に基づいて、風量を変更自在となっている。
被温調物体12を冷却する場合には、コントローラ22は冷却ファン15を駆動させ、熱電素子18,19の間に図1中右向きに冷却風16を流す。冷却風16の一部は、熱電素子18,19の間を通り抜けて熱電モジュール21の右方へ出射し、一部は吸放熱側電極20の間から図1中下方へ出射する。
これにより、被温調物体12から奪われた熱が、熱電モジュール21の側面及び吸放熱側電極20から、冷却風16によって周囲環境に放熱される。加熱冷却装置11は、電流線25を介して熱電素子18,19に電流を流すことにより、温調側電極17を介して、被温調物体12を所定のサイクルで加熱/冷却する。載置ベース14の上面又は下面には、温度センサ23が付設され、コントローラ22は、その出力信号に基づいて被温調物体12の温度を検出することが可能である。
【0022】
図2に、図21に示したような加熱/冷却サイクルに基づいて、被温調物体12を加熱/冷却する際のフローチャートを示す。まず時刻t0において、被温調物体12を載置ベース14上に載置する(ステップS10)。上述したように、載置ベース14は、予め冷却温度T1(例えば70度)に保持されている。
時刻t1に、コントローラ22は、熱電素子18,19に対し、所定の1方向(以下、加熱方向と言う)に電流を通電する(ステップS11)。これにより、温調側電極17が昇温され、被温調物体12が加熱される。このとき、冷却ファン15は停止している。
時刻t2に被温調物体12が加熱温度T2に到達すると(ステップS12)、コントローラ22は加熱方向に流す電流を減少させ、被温調物体12を加熱温度T2で保持する(ステップS13)。
【0023】
そして、高温保持時間Δt2が経過して時刻t3になると(ステップS14)、コントローラ22は電流の極性を逆転させ、加熱方向とは逆の方向(以下、冷却方向と言う)に電流を流す(ステップS16)とともに、冷却ファン15を駆動する(ステップS17)。これにより、温調側電極17の温度が下降し、これに伴って被温調物体12が冷却される。
【0024】
コントローラ22は、被温調物体12の温度が冷却温度T1に達すると(ステップS18)、冷却ファン15を停止する(ステップS19)とともに、冷却方向に流す電流を減少させ、被温調物体12を冷却温度T1で保持する(ステップS21)。そして、低温保持時間Δt4が経過すると(ステップS22)、被温調物体12を載せ換え(ステップS23)、加熱/冷却プロセスを終了する。
【0025】
尚、上記のステップS18、S19において、冷却時に被温調物体12の温度が冷却温度T1に達する前に、冷却ファン15を停止するようにしてもよい。例えば、予め閾値を設けて、冷却温度T1からこの閾値内に入ると、冷却ファン15を停止する。これにより、被温調物体12の温度下降の速度を鈍化させ、より精度良く冷却温度T1に近づけることができる。
また、冷却ファン15を即座に停止するのではなく、例えば冷却温度T1に近づくにつれて、徐々に風量を減らすようにしてもよい。このように、冷却ファン15の風量を変えることにより、熱電モジュール21の冷却能力を調整できる。
【0026】
尚、例えば冷却温度T1が被温調物体12の周囲の環境温度に近いような場合には、ステップS19において冷却ファン15を停止させず、ステップS22において冷却温度T1を保持する間も、冷却ファン15を止めないようにするのがよい。これは、冷却ファン15を停止させると、熱電モジュール21によって被温調物体12を周囲の環境温度近傍に正確に熱制御するのが、困難となるためである。これにより、被温調物体12を、周囲の環境温度に近い温度に、正確に温調することが可能となる。
【0027】
以上説明したように第1実施形態によれば、熱電モジュール21を用いた加熱冷却装置11において、熱電素子18,19の側面に冷却ファン15の冷却風16を当てて冷却している。
これにより、吸放熱側電極20のみならず、熱電素子18,19の側面からも、被温調物体12から奪った熱が効率良く放熱される。さらには、冷却風16が温調側電極17からも、熱を奪う。その結果、冷却に要する冷却時間Δt3が短縮化され、被温調物体12が速く冷却されるので、大電流を必要とせずに、加熱/冷却サイクルに要する時間が短縮される。
【0028】
また、冷却風16の風量を制御することにより、熱電モジュール21の冷却能力を上げたり下げたりすることが可能である。即ち、加熱保持状態からは、冷却ファン15の風量を上げることにより、急激に被温調物体12を冷却することが可能である。また、冷却時に被温調物体12が目標温度である冷却温度T1に近づいた場合には、例えば冷却ファン15の風量を下げることにより、オーバーシュートを起こさずに精度良く被温調物体12を冷却温度T1に近づけることができる。
さらには、例えば熱電素子18,19に流す電流を止め、冷却ファン15のみを動かすことによっても、熱電素子18,19があたかも冷却フィンのような働きをして被温調物体12を冷却することができ、冷却のエネルギー効率が良い。
【0029】
また、吸放熱側電極20に、熱容量の大きな水冷ジャケットや空冷フィンを接触させていないので、被温調物体12を加熱する場合に、温調側電極17の温度を短時間で上昇させることができる。しかも、水冷ジャケットや空冷フィンを介しての放熱が殆んどないので、被温調物体12を、より高温まで加熱することが可能となっている。
【0030】
図3に、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図3において、熱電素子18,19はそれぞれ円柱状となっており、熱電素子18,19間を流れる冷却風16の流れが、スムーズになって風量が増加する。これにより、冷却効率が向上する。
図4に、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図4において、熱電素子18,19はそれぞれ平板状となっており、熱電素子18,19間を流れる冷却風16の流れがスムーズになるとともに、熱電素子18,19の表面積が大きく、ここから熱が効率良く放出されて冷却効率が向上する。
さらには、吸放熱側電極20を、平板状ではなく線材で構成するようにすれば、吸放熱側電極20の熱容量が小さくなるので、吸放熱側電極20から熱を容易に放熱させることができ、わずかな冷却風16で効率的な冷却が可能となる。
【0031】
図5に、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図5において、冷却ファン15は熱電モジュール21の下端面(吸放熱側電極20側面)から、冷却風16を吹きつけるようになっている。
図1に示したように冷却風16を横から当てるようにすると、上流側の熱電素子18,19はよく冷却されるが、下流側では冷却風16の温度が上がって冷却能力が落ちるということがある。これに対して、熱電モジュール21の下面から、冷却風16を吹きつけることにより、各熱電素子18,19に対して略同一温度の冷却風16を流せるので、冷却能力が均一化する。
尚、図5のような軸流式の冷却ファン15は、中央部の風量が大きく、周辺部の風量が小さいため、中央部が、より強く冷却されることがある。冷却を均一にするためには、例えば複数の冷却ファン15を備え、中央部と周辺部との風量を略均一化させるとよい。尚、図5においては、冷却風16を下から吹きつけるようにしているが、吸込型の冷却ファン15を用いて、冷却風16を下に向けて吸い込むようにしてもよい。
【0032】
また、図5のように冷却風16が不均一になるような場合には、図6に示すように加熱冷却装置11を、同心円状の複数の熱電モジュール21A〜21Dで構成する。そして、個々の熱電モジュール21A〜21Dに流す電流を、コントローラ22でそれぞれ独立に制御する。
個々の熱電モジュール21A〜21Dには、温度センサ23A〜23Dが取り付けられており、コントローラ22は、温度センサ23A〜23Dの測定値に基づき、それぞれの熱電モジュール21A〜21Dに流す電流量を制御することにより、均一な冷却を行なうようにしている。このような場合は、例えば熱電モジュール21Aに流れる冷却風16の流量が多いため、過冷却となりがちであるので、熱電モジュール21Aに流す冷却方向の電流を減少させる。
【0033】
また図7に示すように、複数の熱電モジュール21A〜21Fを配置し、横方向から冷却ファン15によって、冷却風16を吸い込むようにしてもよい。例えば、冷却風16の風量や温度が変わっても、温度センサ23A〜23Fの出力信号に基づいてそれぞれの熱電モジュール21A〜21Fに流す電流を制御することにより、略均一な冷却が可能である。
例えば、熱電モジュール21Cに流れる冷却風16が最も冷たいために、この部位が過冷却となりがちであるので、熱電モジュール21Cに流す冷却方向の電流を減少させる。
即ち本実施形態は、複数の熱電モジュールと、これらの熱電モジュールに流す電流を個別に制御自在なコントローラを備えている。これにより、例えば冷却風の流れによって熱電モジュールの冷却能力に差が生じても、各熱電モジュールごとに電流量を制御することにより、均一な冷却が可能である。
【0034】
図8に、冷却ファン15の代わりに、例えば側面に複数の小孔27を設けたチューブ26を用いて、冷却風16を熱電素子18,19の側面に吹きつける場合の構成例を示す。説明のために、温調側電極17は省略する。
チューブ26は、気体、例えば高圧空気の詰まった空気ボンベ28に、コントローラ22の指示に基づいて流量可変の可変流量バルブ29を介して接続されている。コントローラ22は、可変流量バルブ29の開度を調整して冷却風16の流量を変えることにより、冷却能力を制御できる。これにより、チューブ26の長手方向に流量が略均一な冷却風16を、熱電素子18,19に送ることができる。
【0035】
尚、高圧空気源としては、空気ボンベ28に限られるものではなく、例えばコンプレッサーなどでもよい。さらには空気に限らず、窒素やヘリウムなどを吹きつけてもよい。窒素は清浄であるから、ウェハが汚損されることがない。また、ウェハの周囲環境に酸素を含まないようにしたい場合に好適である。ヘリウムは熱伝導率が良好であるので、冷却効率が高いという利点がある。
或いは、チューブ26から気体を吹きつけるのではなく、チューブ26に排気ポンプなどを繋いで、この小孔27から冷却風16を吸い込むことにより、熱電素子18,19の側面に冷却風16が当たるようにしてもよい。
また、このようなチューブ26を用いる場合に、側方からではなく、下方から吹きつけたり吸い込んだりするようにしてもよい。
【0036】
次に、第2実施形態を説明する。
図9に、第2実施形態に係る加熱冷却装置11の構成図を示す。図9において加熱冷却装置11は、被温調物体12の温度を均一にするための、均熱板24を備えている。
均熱板24には、複数の開口部30が設けられ、この開口部30を熱電素子18,19が貫通している。開口部30は、熱電素子18,19と略同一形状となっており、開口部30の内周部に、熱電素子18,19の外周部がほぼ隙間なく接触するようになっている。
均熱板24は、絶縁性でかつ良熱伝導性を有する材質、例えば窒化アルミ(AlN)や、アルミニウムの表面にアルマイト処理のような絶縁処理を行なったものなどが好適である。
【0037】
このように電気的に絶縁させた均熱板24を、熱電素子18,19に熱的に接触させることにより、熱電素子18,19間で熱が互いに伝わり、均熱板24に接触している部位同士の温度差が小さくなる。その結果、温調側電極17の温度が均一化され、被温調物体12を均一に加熱/冷却することが可能となっている。
このとき、開口部30と熱電素子18,19との間に、熱伝導性の良好なグリース等を介在させると、両者の間の熱伝導性がさらに高まって、熱分布がより均一化される。
【0038】
図10に、第2実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図10において、加熱冷却装置11の均熱板24は、温調側電極17に接触している。これにより、温調側電極17間で熱が伝わり、温調側電極17の温度が均一化され、被温調物体12を均一に加熱/冷却することが可能となっている。
或いは、温調側電極17の一部又は全部を、均熱板24の内部に埋め込むようにしてもよい。
さらには、冷却風16が、熱電素子18,19の側面のより多くの面積に吹きつけられて熱を奪うので、冷却効率も向上する。
【0039】
図11に第2実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図11において、均熱板24には、熱電素子18,19の外周部よりも大きな複数の開口部30が設けられ、この開口部30を熱電素子18,19が貫通している。この場合は、均熱板24は熱電素子18,19に接触しないので、絶縁物である必要はない。
これにより、冷却ファン15によって冷却風16を吹きつけた際に、冷却風16が、載置ベース14、被温調物体12、又は温調側電極17に当たって、被温調物体12が不均一に冷却されたり冷え過ぎたりすることが少ない。
尚、図9や図10に示したような加熱冷却装置11においても、同様に冷却風16は載置ベース14、被温調物体12、及び温調側電極17に当たることが少なく、被温調物体12の不均一な冷却や冷え過ぎを防止する効果がある。
【0040】
尚、本実施形態は、冷却温度T1が70度、加熱温度T2が140度といったように、いずれも周囲の環境温度よりも高い温度範囲で用いる場合に、特に有効である。
図12に、熱電素子の温度分布の説明図を示す。均熱板24近傍の温度をTk、冷却風16の温度(≒周囲の環境温度)をT0とする。このとき、図12に示すように、T0<T1<Tkであるから、温度Tkよりも高くなっている熱電素子18,19の側面に、低温の冷却風16が当たることにより、熱が奪われる。これにより、被温調物体12は、好適に冷却される。
【0041】
ところが、図13に示すように、例えば冷却温度T1が5度など、冷却風16の温度T0よりも低いような場合には、均熱板24の温度Tk及び熱電素子18,19の側面の温度は、冷却風16の温度T0とほぼ同じか、わずかに高い程度にまでしか冷却されることがない。そのため、冷却温度T1を保つためには、より大量の電流が必要となり、冷却効率が低下するとともに、冷却に要する時間が長期化する。
或いは、冷却温度T1が零下などになり、冷却風16との温度差がさらに大きいような場合には、熱電素子18,19の側面は、吹きつける冷却風16によって温められることになる。その結果、被温調物体12の温度が上昇し、被温調物体12を冷却温度T1にすることも困難となる。
【0042】
次に、第3実施形態を説明する。
上記の各実施形態においては、熱電素子18,19及び吸放熱側電極20を冷却する際に、大気を用いて行なっていたが、本実施形態においては、代替フロンなどの絶縁性の流体を用いて行なう。或いは、フロリナート(スリーエム社登録商標)や、ガルデン(アウジモント社登録商標)などの冷媒でもよい。
図14に、第3実施形態に係る加熱冷却装置11の構成例を示す。図14において、熱電モジュール21の下方には、絶縁性流体32を噴水のように噴き上げて熱電モジュール21に吹きつける、熱電素子冷却機構としての噴射装置31が配置されている。冷却時には、この噴射装置31から、絶縁性流体32を熱電モジュール21に吹きつけることにより、冷却風16を流したときと同様に、冷却の時間を短縮することができる。このような場合においても、図9〜図11に示したような均熱板は有効である。
【0043】
図15に、第3実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図14において、吸放熱側電極20及び熱電素子18,19の例えば長さの2分の1程度が、熱電素子冷却機構としての冷却槽33に漬けられている。冷却槽33の上部は開放され、冷却槽33の内部には、絶縁性流体32が入っている。冷却時には、絶縁性流体32を流しながら、熱電素子18,19に電流を冷却方向に流すことにより、冷却風16を流したときと同様に、冷却の時間を短縮することができる。
また、加熱時には絶縁性流体32を冷却槽33の外部に出してしまうか、或いは冷却槽33を引き下げるなどの方法により、吸放熱側電極20に絶縁性流体32を接触させないことにより、吸放熱側電極20の熱容量が小さくなって、迅速な加熱が可能である。
【0044】
図16に、第4実施形態に係る加熱冷却装置11の構成例を示す。図16において、吸放熱側電極20の下部には放熱フィン34が設けられている。冷却時には、冷却ファン15から図16中上向きに冷却風16を送ることにより、前記各実施形態と同様に熱電素子18,19の側面を冷却するばかりでなく、放熱フィン34を介して、吸放熱側電極20からの放熱をも高効率化することが可能となっている。
但しこの場合においては、図19で説明した従来技術のように、加熱時に吸放熱側電極20の熱容量が大きく、加熱に時間がかかるという課題については解決されていないが、上記各実施形態と同様に、冷却に要する時間を短縮できるという利点はある。
【0045】
図17に、第5実施形態に係る加熱冷却装置11の構成例を示す。図17において、吸放熱側電極20の下部には、放熱ベース35が固定され、放熱ベース35には放熱フィン34が接触している。そして、放熱フィン34に冷却風16Aを送る第1冷却ファン15Aと、熱電素子17,18の側面に冷却風16Bを送る第2冷却ファン15Bとを備えている。
冷却開始時には、第1、第2冷却ファン15A,15Bをいずれも駆動させ、放熱フィン34及び熱電素子18,19の側面を両方冷却することにより、冷却効率を上げて冷却時間を短縮させる。或いは第1冷却ファン15Aのみを駆動してもよい。
また、冷却中に被温調物体12の温度が周囲の環境温度よりも低くなった場合には、第2冷却ファン15Bのみを停止させることにより、第2冷却ファン15Bの冷却風16Bが被温調物体12に当たって被温調物体12が温められることを防止する。或いは冷却温度T1が周囲の環境温度よりも低い場合には、最初から第2冷却ファン15Bを停止させ第1冷却ファン15Aのみを用いて冷却してもよい。
【0046】
図18には、第5実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図18においては、水冷ジャケット36を放熱ベース35に接触させて、水冷ジャケット36を流れる冷却流体37により、吸放熱側電極20を冷却している。そして、熱電素子17,18の側面に冷却風16を送る冷却ファン15をも備えている。
これにより、図17に示した構成例と同様に、冷却時には水冷ジャケット36及び冷却ファン15を用いて、吸放熱側電極20及び熱電素子17,18の側面を冷却する。また、被温調物体12の温度が周囲の環境温度よりも低くなった場合には、冷却ファン15を停止させることにより、冷却ファン15の冷却風16が被温調物体12に当たって被温調物体12が温められることを防止する。
【0047】
尚、本発明は、冷却温度T1が70度、加熱温度T2が140度といったように、いずれも室温よりも高い温度範囲で用いる場合に、特に有効である。
即ち、冷却温度T1が例えば5度といった室温より低い温度の場合には、冷却風16が被温調物体12や載置ベース14に当たると、冷却時にかえって温度が上昇してしまうようなことがある。これに対して、冷却温度T1が70度のような場合には、冷却風16が被温調物体12や載置ベース14に当たっても、冷却がさらに進行し、冷却時間Δt3が短縮される。
【0048】
また本発明によれば、冷却ファン15を熱電モジュール21側から冷却風16を吸い込むように動作させるとよい。これにより、熱電素子18,19間が周囲の圧力よりも低圧となるので、熱電素子18,19に付着していた微小なパーティクルが、周囲に吹き飛ばされることが少なく、ウェハなどの汚損が少ない。
【0049】
本発明は、従来のように吸放熱側電極20を通じて冷却するだけではなく、熱電素子18,19を直接冷却することにより、冷却効果をさらに向上させているものである。従って、熱電素子18,19の冷却効果を向上させるものであれば、上述したような実施形態に限られるものではなく、熱電素子18,19の側面のみならず他の場所を冷却してもよい。
尚、熱電素子18,19を直接冷却する際には、冷却効果が向上するだけの面積を冷却する必要がある。このとき例えば、4面あるすべての側面を冷却するという技術に限られるものではなく、側面のうち幾つかの面を冷却するものでもよい。或いは側面のうち、吸放熱側電極20近傍の、例えば1割以上の面積を冷却することにより、冷却効果が向上するものであればそれでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る加熱冷却装置の正面図。
【図2】被温調物体を加熱/冷却する際のフローチャート。
【図3】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図4】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図5】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図6】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図7】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図8】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図9】第2実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図10】第2実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図11】第2実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図12】第2実施形態に係る熱電素子の温度分布の説明図。
【図13】第2実施形態に係る熱電素子の温度分布の説明図。
【図14】第3実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図15】第3実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図16】第4実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図17】第5実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図18】第5実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図19】従来技術に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図20】従来技術に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図21】加熱/冷却サイクルの一例を示すグラフ。
【符号の説明】
11:加熱冷却装置、12:被温調物体、13:突起、14:載置ベース、15:冷却ファン、16:冷却風、17:温調側電極、18:p型熱電素子、19:n型熱電素子、20:吸放熱側電極、21:熱電モジュール、22:コントローラ、23:温度センサ、24:均熱板、25:電流線、26:チューブ、27:小孔、28:空気ボンベ、29:可変流量バルブ、30:開口部、31:噴射装置、32:絶縁性流体、33:冷却槽、34:放熱フィン、35:放熱ベース、36:水冷ジャケット、37:冷却流体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、被温調物体の温度調整を行なう加熱冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱電モジュールを用いてウェハなどの被温調物体の温度を制御する加熱冷却装置が知られている。
図19は、従来技術に係る加熱冷却装置の正面図を示しており、以下図19に基づいて従来技術を説明する。
図19において、例えばポリイミドなどの樹脂フィルムからなる載置ベース14上には突起13が設けられ、突起13上にはウェハなどの被温調物体12が搭載されている。
樹脂フィルムの下部には、熱電モジュール21の温調側電極17が接触している。熱電モジュール21は、p型熱電素子18とn型熱電素子19とを交互に配設し、その上部同士及び下部同士を、温調側電極17及び吸放熱側電極20で、それぞれ接続したものである。吸放熱側電極20の下部には、放熱ベース35が固定され、放熱ベース35には放熱フィン34が接触している。
【0003】
熱電素子18,19に、所定の1方向(以下、加熱方向と言う)に電流を通電することにより、温調側電極17が昇温され、被温調物体12を加熱する。このとき、吸放熱側電極20は周囲環境の熱を吸い上げるため、吸熱の役目を果たしている。
また、熱電素子18,19に、加熱方向とは逆の方向(以下、冷却方向と言う)に電流を流すことにより、温調側電極17が冷却され、被温調物体12を冷却する。このとき、放熱フィン34にその下方に配置された冷却ファン15から冷却風16を吹きつけることにより、被温調物体12から熱電モジュール21が奪った熱を、吸放熱側電極20を介して外気に放出する。
【0004】
また他の従来技術によれば、図20に示すように、放熱フィン34及び冷却ファン15の代わりに、密封型の水冷ジャケット36を放熱ベース35に接触させ、その内部に冷却水や代替フロンなどの冷却流体37を流している。これにより、吸放熱側電極20を冷却し、被温調物体12の冷却を行なっている。
【0005】
図21に、加熱/冷却サイクルの一例をグラフで示す。横軸が時間tであり、縦軸が載置ベース14の温度Tである。
図21に示すように、まず時刻t0に、被温調物体12を載置ベース14に載置する。このとき、載置ベース14は、予め冷却温度T1(例えば70度)に保持されている。時刻t1から加熱を開始し、時間Δt1が経過して時刻t2に載置ベース14が加熱温度T2(例えば140度)まで到達すると、載置ベース14を加熱温度T2で所定の高温保持時間Δt2だけ保持する。
そして時刻t3に冷却を開始し、時間Δt3が経過して時刻t4に被温調物体12が冷却温度T1に到達すると、冷却温度T1で所定の低温保持時間Δt4だけ保持する。
そして時刻t5に、加熱及び冷却を終えた被温調物体12を載置ベース14から除去し、時刻t6に、新たな被温調物体12を載置ベース14に載せて、同様の加熱/冷却を行なうようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術には、次に述べるような問題がある。
例えば、被温調物体12がウェハであるような場合に、加熱/冷却の1サイクルに要する時間を短縮することにより、単位時間あたりのウェハの製造量を増加したいという要望がある。
図21に示した加熱/冷却サイクルにおいて、高温保持時間Δt2及び低温保持時間Δt4は予め定められており、変えることは難しい。従って、加熱/冷却の1サイクルに要する時間を短縮するためには、加熱に要する加熱時間Δt1及び冷却に要する冷却時間Δt3の少なくともいずれか一方を短縮させる必要がある。
また、ウェハ上で生じる化学反応を正確に制御するためにも、ウェハが加熱温度T2及び冷却温度T1以外の温度状態にある、加熱時間Δt1及び冷却時間Δt3を、なるべく短縮することが望ましい。
【0007】
熱電モジュール21は、加熱方向に電流を流すことにより、吸放熱側電極20の熱を奪って温調側電極17へ移動させ、被温調物体12の加熱を行なう。
ところが、前記従来技術によれば、吸放熱側電極20には放熱フィン34や冷却ジャケット36が接触しているため、吸放熱側電極20の熱容量が大きなものとなっている。その結果、吸放熱側電極20の熱を短時間で奪うことが困難となっている。
【0008】
また冷却時には、温調側電極17の熱を奪って吸放熱側電極20へ移動させることにより、被温調物体12の冷却を行なう。このとき、吸放熱側電極20の熱を、冷却フィン34や冷却ジャケット36を介して放熱させることになるが、吸放熱側電極20と冷却フィン34や冷却ジャケット36との接触面積が小さく、効率的な冷却を行なうことが難しい。また、両者の間に絶縁のためのグリース等を介在させなければならないため、伝熱効率が低下して、冷却のために大きな電流を流さなければならなくなる。
【0009】
即ち、従来技術においては、加熱時間Δt1又は冷却時間Δt3を短縮することはいずれも困難であり、そのためには大電流を流す必要があるという問題がある。
さらには、冷却時においては、被温調物体12の温度を正確に冷却温度T1にする必要があるが、冷却フィン34や冷却ジャケット36の熱容量が大きいために、冷却が止まらずに被温調物体12温度が冷却温度T1より下がるオーバーシュートが起きることがある。
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、効率的な加熱及び冷却を行ない、加熱及び冷却に要する時間を短縮することが可能な加熱冷却装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、本発明は、
被温調物体の温度調整を行なう加熱冷却装置において、
被温調物体に近接させた温調側電極、温調側電極に一側端部を接触させた熱電素子、及び熱電素子の他側端部に接触した吸放熱側電極を有する熱電モジュールと、
熱電素子の側面を冷却する冷却機構とを備えている。
これにより、吸放熱側電極に加えて、熱電素子の側面からも熱が放熱されるので、冷却時の効率が向上する。
【0011】
また本発明は、
前記冷却機構が絶縁性流体を流す流体駆動装置であり、
流体駆動装置は、熱電素子の側面に絶縁性流体を供給することにより、熱電素子の側面を冷却している。
これにより、熱電素子の側面と絶縁性流体とが接触して熱が奪われるので、効率の良い放熱が可能である。
【0012】
また本発明は、
前記絶縁性流体が液体である。
例えば、揮発性冷媒などを用いることにより、熱電素子の側面から絶縁性流体放熱効率が熱を効率的に奪うことができる。
【0013】
また本発明は、
前記絶縁性流体が気体である。
気体を用いることにより、液体を回収するための設備などの手間が不要であり、簡単な構成によって効率の良い冷却を実現可能である。
【0014】
また本発明は、
前記流体駆動装置が、冷却風を熱電素子の側面に流す送風機である。
送風機のみによって冷却を行なうことができ、装置の構成が簡単になる。
【0015】
また本発明は、
前記冷却機構が、熱電素子の吸放熱側電極側の端部から、温調側電極側の端部に向けて絶縁性流体を流す流体駆動装置である。
これにより、他の熱電素子を通って温まった絶縁性流体ではなく、新鮮で冷たい絶縁性流体がすべての熱電素子に略一様に当たるので、冷却効率が向上し、かつすべての熱電素子が略同一の冷却能力を備える。
【0016】
また本発明は、
吸放熱側電極と被温調物体との間に、被温調物体の温度分布を均一化する均熱板を設けている。
均熱板により、各熱電素子間の熱が均一化され、被温調物体を均一に温調することができる。
さらには、冷却風などが被温調物体に直接当たらず、被温調物体の温度が乱されることなく、均一な冷却又は加熱が可能である。
【0017】
また本発明は、
前記冷却機構を、被温調物体を冷却する際にのみ動作させている。
これにより、加熱時には熱電素子が冷却されないので、素早く温度を上げることが可能となる。
【0018】
また本発明は、熱電モジュールによって被温調物体の温度調整を行なう温度調整方法において、
冷却時には熱電素子の側面を冷却し、加熱時には冷却しないようにしている。
これにより、冷却時間及び加熱時間の両方が短縮される。
【0019】
また本発明は、
冷却時には熱電素子の側面を冷却し、加熱時には冷却しないようにするとともに、
冷却時に、被温調物体が目標の冷却温度から所定温度範囲外の場合には熱電素子の側面を冷却し、被温調物体が目標の冷却温度から所定温度範囲内に近づくと、熱電素子の側面への冷却を鈍化又は停止するようにしている。
これにより、被温調物体の温度を、正確に目標値に合わせることが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
まず、第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の正面図を示している。図1において、例えばポリイミドなどの樹脂フィルムからなる載置ベース14上には突起13が設けられ、突起13上にはウェハなどの被温調物体12が搭載されている。
載置ベース14の下部には、熱電モジュール21の温調側電極17が接触している。熱電モジュール21は、p型熱電素子18とn型熱電素子19とを交互に配設し、その上端部同士及び下端部同士を、温調側電極17及び吸放熱側電極20で、それぞれ接続したものである。
【0021】
加熱冷却装置11は、熱電素子冷却機構として、熱電素子18,19の側面(上端部及び下端部以外の面を側面と総称する)に冷却風16を当てる冷却ファン15を備えている。冷却ファン15は、コントローラ22の指示に基づいて、風量を変更自在となっている。
被温調物体12を冷却する場合には、コントローラ22は冷却ファン15を駆動させ、熱電素子18,19の間に図1中右向きに冷却風16を流す。冷却風16の一部は、熱電素子18,19の間を通り抜けて熱電モジュール21の右方へ出射し、一部は吸放熱側電極20の間から図1中下方へ出射する。
これにより、被温調物体12から奪われた熱が、熱電モジュール21の側面及び吸放熱側電極20から、冷却風16によって周囲環境に放熱される。加熱冷却装置11は、電流線25を介して熱電素子18,19に電流を流すことにより、温調側電極17を介して、被温調物体12を所定のサイクルで加熱/冷却する。載置ベース14の上面又は下面には、温度センサ23が付設され、コントローラ22は、その出力信号に基づいて被温調物体12の温度を検出することが可能である。
【0022】
図2に、図21に示したような加熱/冷却サイクルに基づいて、被温調物体12を加熱/冷却する際のフローチャートを示す。まず時刻t0において、被温調物体12を載置ベース14上に載置する(ステップS10)。上述したように、載置ベース14は、予め冷却温度T1(例えば70度)に保持されている。
時刻t1に、コントローラ22は、熱電素子18,19に対し、所定の1方向(以下、加熱方向と言う)に電流を通電する(ステップS11)。これにより、温調側電極17が昇温され、被温調物体12が加熱される。このとき、冷却ファン15は停止している。
時刻t2に被温調物体12が加熱温度T2に到達すると(ステップS12)、コントローラ22は加熱方向に流す電流を減少させ、被温調物体12を加熱温度T2で保持する(ステップS13)。
【0023】
そして、高温保持時間Δt2が経過して時刻t3になると(ステップS14)、コントローラ22は電流の極性を逆転させ、加熱方向とは逆の方向(以下、冷却方向と言う)に電流を流す(ステップS16)とともに、冷却ファン15を駆動する(ステップS17)。これにより、温調側電極17の温度が下降し、これに伴って被温調物体12が冷却される。
【0024】
コントローラ22は、被温調物体12の温度が冷却温度T1に達すると(ステップS18)、冷却ファン15を停止する(ステップS19)とともに、冷却方向に流す電流を減少させ、被温調物体12を冷却温度T1で保持する(ステップS21)。そして、低温保持時間Δt4が経過すると(ステップS22)、被温調物体12を載せ換え(ステップS23)、加熱/冷却プロセスを終了する。
【0025】
尚、上記のステップS18、S19において、冷却時に被温調物体12の温度が冷却温度T1に達する前に、冷却ファン15を停止するようにしてもよい。例えば、予め閾値を設けて、冷却温度T1からこの閾値内に入ると、冷却ファン15を停止する。これにより、被温調物体12の温度下降の速度を鈍化させ、より精度良く冷却温度T1に近づけることができる。
また、冷却ファン15を即座に停止するのではなく、例えば冷却温度T1に近づくにつれて、徐々に風量を減らすようにしてもよい。このように、冷却ファン15の風量を変えることにより、熱電モジュール21の冷却能力を調整できる。
【0026】
尚、例えば冷却温度T1が被温調物体12の周囲の環境温度に近いような場合には、ステップS19において冷却ファン15を停止させず、ステップS22において冷却温度T1を保持する間も、冷却ファン15を止めないようにするのがよい。これは、冷却ファン15を停止させると、熱電モジュール21によって被温調物体12を周囲の環境温度近傍に正確に熱制御するのが、困難となるためである。これにより、被温調物体12を、周囲の環境温度に近い温度に、正確に温調することが可能となる。
【0027】
以上説明したように第1実施形態によれば、熱電モジュール21を用いた加熱冷却装置11において、熱電素子18,19の側面に冷却ファン15の冷却風16を当てて冷却している。
これにより、吸放熱側電極20のみならず、熱電素子18,19の側面からも、被温調物体12から奪った熱が効率良く放熱される。さらには、冷却風16が温調側電極17からも、熱を奪う。その結果、冷却に要する冷却時間Δt3が短縮化され、被温調物体12が速く冷却されるので、大電流を必要とせずに、加熱/冷却サイクルに要する時間が短縮される。
【0028】
また、冷却風16の風量を制御することにより、熱電モジュール21の冷却能力を上げたり下げたりすることが可能である。即ち、加熱保持状態からは、冷却ファン15の風量を上げることにより、急激に被温調物体12を冷却することが可能である。また、冷却時に被温調物体12が目標温度である冷却温度T1に近づいた場合には、例えば冷却ファン15の風量を下げることにより、オーバーシュートを起こさずに精度良く被温調物体12を冷却温度T1に近づけることができる。
さらには、例えば熱電素子18,19に流す電流を止め、冷却ファン15のみを動かすことによっても、熱電素子18,19があたかも冷却フィンのような働きをして被温調物体12を冷却することができ、冷却のエネルギー効率が良い。
【0029】
また、吸放熱側電極20に、熱容量の大きな水冷ジャケットや空冷フィンを接触させていないので、被温調物体12を加熱する場合に、温調側電極17の温度を短時間で上昇させることができる。しかも、水冷ジャケットや空冷フィンを介しての放熱が殆んどないので、被温調物体12を、より高温まで加熱することが可能となっている。
【0030】
図3に、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図3において、熱電素子18,19はそれぞれ円柱状となっており、熱電素子18,19間を流れる冷却風16の流れが、スムーズになって風量が増加する。これにより、冷却効率が向上する。
図4に、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図4において、熱電素子18,19はそれぞれ平板状となっており、熱電素子18,19間を流れる冷却風16の流れがスムーズになるとともに、熱電素子18,19の表面積が大きく、ここから熱が効率良く放出されて冷却効率が向上する。
さらには、吸放熱側電極20を、平板状ではなく線材で構成するようにすれば、吸放熱側電極20の熱容量が小さくなるので、吸放熱側電極20から熱を容易に放熱させることができ、わずかな冷却風16で効率的な冷却が可能となる。
【0031】
図5に、第1実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図5において、冷却ファン15は熱電モジュール21の下端面(吸放熱側電極20側面)から、冷却風16を吹きつけるようになっている。
図1に示したように冷却風16を横から当てるようにすると、上流側の熱電素子18,19はよく冷却されるが、下流側では冷却風16の温度が上がって冷却能力が落ちるということがある。これに対して、熱電モジュール21の下面から、冷却風16を吹きつけることにより、各熱電素子18,19に対して略同一温度の冷却風16を流せるので、冷却能力が均一化する。
尚、図5のような軸流式の冷却ファン15は、中央部の風量が大きく、周辺部の風量が小さいため、中央部が、より強く冷却されることがある。冷却を均一にするためには、例えば複数の冷却ファン15を備え、中央部と周辺部との風量を略均一化させるとよい。尚、図5においては、冷却風16を下から吹きつけるようにしているが、吸込型の冷却ファン15を用いて、冷却風16を下に向けて吸い込むようにしてもよい。
【0032】
また、図5のように冷却風16が不均一になるような場合には、図6に示すように加熱冷却装置11を、同心円状の複数の熱電モジュール21A〜21Dで構成する。そして、個々の熱電モジュール21A〜21Dに流す電流を、コントローラ22でそれぞれ独立に制御する。
個々の熱電モジュール21A〜21Dには、温度センサ23A〜23Dが取り付けられており、コントローラ22は、温度センサ23A〜23Dの測定値に基づき、それぞれの熱電モジュール21A〜21Dに流す電流量を制御することにより、均一な冷却を行なうようにしている。このような場合は、例えば熱電モジュール21Aに流れる冷却風16の流量が多いため、過冷却となりがちであるので、熱電モジュール21Aに流す冷却方向の電流を減少させる。
【0033】
また図7に示すように、複数の熱電モジュール21A〜21Fを配置し、横方向から冷却ファン15によって、冷却風16を吸い込むようにしてもよい。例えば、冷却風16の風量や温度が変わっても、温度センサ23A〜23Fの出力信号に基づいてそれぞれの熱電モジュール21A〜21Fに流す電流を制御することにより、略均一な冷却が可能である。
例えば、熱電モジュール21Cに流れる冷却風16が最も冷たいために、この部位が過冷却となりがちであるので、熱電モジュール21Cに流す冷却方向の電流を減少させる。
即ち本実施形態は、複数の熱電モジュールと、これらの熱電モジュールに流す電流を個別に制御自在なコントローラを備えている。これにより、例えば冷却風の流れによって熱電モジュールの冷却能力に差が生じても、各熱電モジュールごとに電流量を制御することにより、均一な冷却が可能である。
【0034】
図8に、冷却ファン15の代わりに、例えば側面に複数の小孔27を設けたチューブ26を用いて、冷却風16を熱電素子18,19の側面に吹きつける場合の構成例を示す。説明のために、温調側電極17は省略する。
チューブ26は、気体、例えば高圧空気の詰まった空気ボンベ28に、コントローラ22の指示に基づいて流量可変の可変流量バルブ29を介して接続されている。コントローラ22は、可変流量バルブ29の開度を調整して冷却風16の流量を変えることにより、冷却能力を制御できる。これにより、チューブ26の長手方向に流量が略均一な冷却風16を、熱電素子18,19に送ることができる。
【0035】
尚、高圧空気源としては、空気ボンベ28に限られるものではなく、例えばコンプレッサーなどでもよい。さらには空気に限らず、窒素やヘリウムなどを吹きつけてもよい。窒素は清浄であるから、ウェハが汚損されることがない。また、ウェハの周囲環境に酸素を含まないようにしたい場合に好適である。ヘリウムは熱伝導率が良好であるので、冷却効率が高いという利点がある。
或いは、チューブ26から気体を吹きつけるのではなく、チューブ26に排気ポンプなどを繋いで、この小孔27から冷却風16を吸い込むことにより、熱電素子18,19の側面に冷却風16が当たるようにしてもよい。
また、このようなチューブ26を用いる場合に、側方からではなく、下方から吹きつけたり吸い込んだりするようにしてもよい。
【0036】
次に、第2実施形態を説明する。
図9に、第2実施形態に係る加熱冷却装置11の構成図を示す。図9において加熱冷却装置11は、被温調物体12の温度を均一にするための、均熱板24を備えている。
均熱板24には、複数の開口部30が設けられ、この開口部30を熱電素子18,19が貫通している。開口部30は、熱電素子18,19と略同一形状となっており、開口部30の内周部に、熱電素子18,19の外周部がほぼ隙間なく接触するようになっている。
均熱板24は、絶縁性でかつ良熱伝導性を有する材質、例えば窒化アルミ(AlN)や、アルミニウムの表面にアルマイト処理のような絶縁処理を行なったものなどが好適である。
【0037】
このように電気的に絶縁させた均熱板24を、熱電素子18,19に熱的に接触させることにより、熱電素子18,19間で熱が互いに伝わり、均熱板24に接触している部位同士の温度差が小さくなる。その結果、温調側電極17の温度が均一化され、被温調物体12を均一に加熱/冷却することが可能となっている。
このとき、開口部30と熱電素子18,19との間に、熱伝導性の良好なグリース等を介在させると、両者の間の熱伝導性がさらに高まって、熱分布がより均一化される。
【0038】
図10に、第2実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図10において、加熱冷却装置11の均熱板24は、温調側電極17に接触している。これにより、温調側電極17間で熱が伝わり、温調側電極17の温度が均一化され、被温調物体12を均一に加熱/冷却することが可能となっている。
或いは、温調側電極17の一部又は全部を、均熱板24の内部に埋め込むようにしてもよい。
さらには、冷却風16が、熱電素子18,19の側面のより多くの面積に吹きつけられて熱を奪うので、冷却効率も向上する。
【0039】
図11に第2実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図11において、均熱板24には、熱電素子18,19の外周部よりも大きな複数の開口部30が設けられ、この開口部30を熱電素子18,19が貫通している。この場合は、均熱板24は熱電素子18,19に接触しないので、絶縁物である必要はない。
これにより、冷却ファン15によって冷却風16を吹きつけた際に、冷却風16が、載置ベース14、被温調物体12、又は温調側電極17に当たって、被温調物体12が不均一に冷却されたり冷え過ぎたりすることが少ない。
尚、図9や図10に示したような加熱冷却装置11においても、同様に冷却風16は載置ベース14、被温調物体12、及び温調側電極17に当たることが少なく、被温調物体12の不均一な冷却や冷え過ぎを防止する効果がある。
【0040】
尚、本実施形態は、冷却温度T1が70度、加熱温度T2が140度といったように、いずれも周囲の環境温度よりも高い温度範囲で用いる場合に、特に有効である。
図12に、熱電素子の温度分布の説明図を示す。均熱板24近傍の温度をTk、冷却風16の温度(≒周囲の環境温度)をT0とする。このとき、図12に示すように、T0<T1<Tkであるから、温度Tkよりも高くなっている熱電素子18,19の側面に、低温の冷却風16が当たることにより、熱が奪われる。これにより、被温調物体12は、好適に冷却される。
【0041】
ところが、図13に示すように、例えば冷却温度T1が5度など、冷却風16の温度T0よりも低いような場合には、均熱板24の温度Tk及び熱電素子18,19の側面の温度は、冷却風16の温度T0とほぼ同じか、わずかに高い程度にまでしか冷却されることがない。そのため、冷却温度T1を保つためには、より大量の電流が必要となり、冷却効率が低下するとともに、冷却に要する時間が長期化する。
或いは、冷却温度T1が零下などになり、冷却風16との温度差がさらに大きいような場合には、熱電素子18,19の側面は、吹きつける冷却風16によって温められることになる。その結果、被温調物体12の温度が上昇し、被温調物体12を冷却温度T1にすることも困難となる。
【0042】
次に、第3実施形態を説明する。
上記の各実施形態においては、熱電素子18,19及び吸放熱側電極20を冷却する際に、大気を用いて行なっていたが、本実施形態においては、代替フロンなどの絶縁性の流体を用いて行なう。或いは、フロリナート(スリーエム社登録商標)や、ガルデン(アウジモント社登録商標)などの冷媒でもよい。
図14に、第3実施形態に係る加熱冷却装置11の構成例を示す。図14において、熱電モジュール21の下方には、絶縁性流体32を噴水のように噴き上げて熱電モジュール21に吹きつける、熱電素子冷却機構としての噴射装置31が配置されている。冷却時には、この噴射装置31から、絶縁性流体32を熱電モジュール21に吹きつけることにより、冷却風16を流したときと同様に、冷却の時間を短縮することができる。このような場合においても、図9〜図11に示したような均熱板は有効である。
【0043】
図15に、第3実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図14において、吸放熱側電極20及び熱電素子18,19の例えば長さの2分の1程度が、熱電素子冷却機構としての冷却槽33に漬けられている。冷却槽33の上部は開放され、冷却槽33の内部には、絶縁性流体32が入っている。冷却時には、絶縁性流体32を流しながら、熱電素子18,19に電流を冷却方向に流すことにより、冷却風16を流したときと同様に、冷却の時間を短縮することができる。
また、加熱時には絶縁性流体32を冷却槽33の外部に出してしまうか、或いは冷却槽33を引き下げるなどの方法により、吸放熱側電極20に絶縁性流体32を接触させないことにより、吸放熱側電極20の熱容量が小さくなって、迅速な加熱が可能である。
【0044】
図16に、第4実施形態に係る加熱冷却装置11の構成例を示す。図16において、吸放熱側電極20の下部には放熱フィン34が設けられている。冷却時には、冷却ファン15から図16中上向きに冷却風16を送ることにより、前記各実施形態と同様に熱電素子18,19の側面を冷却するばかりでなく、放熱フィン34を介して、吸放熱側電極20からの放熱をも高効率化することが可能となっている。
但しこの場合においては、図19で説明した従来技術のように、加熱時に吸放熱側電極20の熱容量が大きく、加熱に時間がかかるという課題については解決されていないが、上記各実施形態と同様に、冷却に要する時間を短縮できるという利点はある。
【0045】
図17に、第5実施形態に係る加熱冷却装置11の構成例を示す。図17において、吸放熱側電極20の下部には、放熱ベース35が固定され、放熱ベース35には放熱フィン34が接触している。そして、放熱フィン34に冷却風16Aを送る第1冷却ファン15Aと、熱電素子17,18の側面に冷却風16Bを送る第2冷却ファン15Bとを備えている。
冷却開始時には、第1、第2冷却ファン15A,15Bをいずれも駆動させ、放熱フィン34及び熱電素子18,19の側面を両方冷却することにより、冷却効率を上げて冷却時間を短縮させる。或いは第1冷却ファン15Aのみを駆動してもよい。
また、冷却中に被温調物体12の温度が周囲の環境温度よりも低くなった場合には、第2冷却ファン15Bのみを停止させることにより、第2冷却ファン15Bの冷却風16Bが被温調物体12に当たって被温調物体12が温められることを防止する。或いは冷却温度T1が周囲の環境温度よりも低い場合には、最初から第2冷却ファン15Bを停止させ第1冷却ファン15Aのみを用いて冷却してもよい。
【0046】
図18には、第5実施形態に係る加熱冷却装置11の、他の構成例を示す。図18においては、水冷ジャケット36を放熱ベース35に接触させて、水冷ジャケット36を流れる冷却流体37により、吸放熱側電極20を冷却している。そして、熱電素子17,18の側面に冷却風16を送る冷却ファン15をも備えている。
これにより、図17に示した構成例と同様に、冷却時には水冷ジャケット36及び冷却ファン15を用いて、吸放熱側電極20及び熱電素子17,18の側面を冷却する。また、被温調物体12の温度が周囲の環境温度よりも低くなった場合には、冷却ファン15を停止させることにより、冷却ファン15の冷却風16が被温調物体12に当たって被温調物体12が温められることを防止する。
【0047】
尚、本発明は、冷却温度T1が70度、加熱温度T2が140度といったように、いずれも室温よりも高い温度範囲で用いる場合に、特に有効である。
即ち、冷却温度T1が例えば5度といった室温より低い温度の場合には、冷却風16が被温調物体12や載置ベース14に当たると、冷却時にかえって温度が上昇してしまうようなことがある。これに対して、冷却温度T1が70度のような場合には、冷却風16が被温調物体12や載置ベース14に当たっても、冷却がさらに進行し、冷却時間Δt3が短縮される。
【0048】
また本発明によれば、冷却ファン15を熱電モジュール21側から冷却風16を吸い込むように動作させるとよい。これにより、熱電素子18,19間が周囲の圧力よりも低圧となるので、熱電素子18,19に付着していた微小なパーティクルが、周囲に吹き飛ばされることが少なく、ウェハなどの汚損が少ない。
【0049】
本発明は、従来のように吸放熱側電極20を通じて冷却するだけではなく、熱電素子18,19を直接冷却することにより、冷却効果をさらに向上させているものである。従って、熱電素子18,19の冷却効果を向上させるものであれば、上述したような実施形態に限られるものではなく、熱電素子18,19の側面のみならず他の場所を冷却してもよい。
尚、熱電素子18,19を直接冷却する際には、冷却効果が向上するだけの面積を冷却する必要がある。このとき例えば、4面あるすべての側面を冷却するという技術に限られるものではなく、側面のうち幾つかの面を冷却するものでもよい。或いは側面のうち、吸放熱側電極20近傍の、例えば1割以上の面積を冷却することにより、冷却効果が向上するものであればそれでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る加熱冷却装置の正面図。
【図2】被温調物体を加熱/冷却する際のフローチャート。
【図3】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図4】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図5】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図6】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図7】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図8】第1実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図9】第2実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図10】第2実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図11】第2実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図12】第2実施形態に係る熱電素子の温度分布の説明図。
【図13】第2実施形態に係る熱電素子の温度分布の説明図。
【図14】第3実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図15】第3実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図16】第4実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図17】第5実施形態に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図18】第5実施形態に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図19】従来技術に係る加熱冷却装置の構成例を示す説明図。
【図20】従来技術に係る加熱冷却装置の他の構成例を示す説明図。
【図21】加熱/冷却サイクルの一例を示すグラフ。
【符号の説明】
11:加熱冷却装置、12:被温調物体、13:突起、14:載置ベース、15:冷却ファン、16:冷却風、17:温調側電極、18:p型熱電素子、19:n型熱電素子、20:吸放熱側電極、21:熱電モジュール、22:コントローラ、23:温度センサ、24:均熱板、25:電流線、26:チューブ、27:小孔、28:空気ボンベ、29:可変流量バルブ、30:開口部、31:噴射装置、32:絶縁性流体、33:冷却槽、34:放熱フィン、35:放熱ベース、36:水冷ジャケット、37:冷却流体。
Claims (4)
- 被温調物体(12)の温度調整を行なう加熱冷却装置において、
被温調物体(12)に近接させた温調側電極(17)、温調側電極(17)に一側端部を接触させた熱電素子(18,19)、及び熱電素子(18,19)の他側端部に接触した吸放熱側電極(20)を有する熱電モジュール(21)と、
熱電素子(18,19)の側面を冷却する冷却機構とを備えたことを特徴とする加熱冷却装置。 - 請求項1に記載の加熱冷却装置において、
前記冷却機構が、熱電素子(18,19)の吸放熱側電極(20)側の端部から、温調側電極(17)側の端部に向けて絶縁性流体を流す流体駆動装置であることを特徴とする加熱冷却装置。 - 請求項1又は2に記載の加熱冷却装置において、
吸放熱側電極(20)と被温調物体(12)との間に、被温調物体(12)の温度分布を均一化する均熱板(24)を設けたことを特徴とする加熱冷却装置。 - 熱電モジュール(21)によって被温調物体(12)の温度調整を行なう温度調整方法において、
冷却時には熱電素子(18,19)の側面を冷却し、加熱時には冷却しないようにするとともに、
冷却時に、被温調物体(12)が目標の冷却温度(T1)から所定温度範囲外の場合には熱電素子(18,19)の側面を冷却し、被温調物体(12)が目標の冷却温度(T1)から所定温度範囲内に近づくと、熱電素子(18,19)の側面への冷却を鈍化又は停止するようにしたことを特徴とする温度調整方法。
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JP2002169693A JP2004012091A (ja) | 2002-06-11 | 2002-06-11 | 加熱冷却装置及び加熱冷却方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100862720B1 (ko) * | 2007-07-31 | 2008-10-10 | 포아텍 주식회사 | 화학 용액 용기 온도 조절 장치 및 이를 이용한포토레지스트 도포 장치 |
JP2013232623A (ja) * | 2012-04-03 | 2013-11-14 | Panasonic Corp | 熱電変換モジュール |
CN105423444A (zh) * | 2015-12-28 | 2016-03-23 | 杨志强 | 一种新型常温除湿机 |
JP2017069242A (ja) * | 2015-09-28 | 2017-04-06 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 熱電変換装置および恒温装置 |
CN111324021A (zh) * | 2018-12-13 | 2020-06-23 | 夏泰鑫半导体(青岛)有限公司 | 光刻胶剥离设备及晶圆处理方法 |
-
2002
- 2002-06-11 JP JP2002169693A patent/JP2004012091A/ja not_active Withdrawn
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