JP3638256B2 - 電子冷却装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、熱電モジュールを用いた電子冷却装置に関し、特に液晶プロジェクションにおける発熱部である液晶パネルや入射側偏光板等を冷却する電子冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ペルチェ効果を有するペルチェ素子からなる熱電モジュールを用いた電子冷却装置が供されている。この電子冷却装置は、構造が極めて簡単でかつ小型という利点があり、冷却装置として注目され、様々の分野で使用されている。
【0003】
図24に、従来の電子冷却装置の一例を示す。この電子冷却装置は、熱電モジュール1と吸熱器である吸熱フィン2および放熱器である放熱フィン3から構成される。熱電モジュール1と吸熱フィン2および放熱フィン3の熱的密着性を上げるため吸熱フィン2および放熱フィン3の間は複数組のねじ4およびナット5で締め付けられている。また、図25のように複数本のねじ6によって締め付けることも可能である。
【0004】
このとき、ねじ4あるいはねじ6を介して高温の放熱フィン3から低温の吸熱フィン2へ熱が移動して、冷却装置の熱効率を劣化させる。そこで、ねじ4あるいはねじ6が直接吸熱フィン2や放熱フィン3と接触しないように、図26のような樹脂製のスペーサ7などを用いている。熱電モジュール1は材質がもろいため、図27に示したベークライトなど衝撃吸収部材8を用いて衝撃を吸収したり、組立時の損壊を防止していることもある。
【0005】
図24では熱電モジュールを1つとしたが、必要な吸熱能力を複数個の熱電モジュールによってまかなう場合もある。そのような場合には図28のように吸熱フィンを熱電モジュールごとにもつことも見受けられる(実開平5−27564参照)。
【0006】
また、熱電モジュール1は熱電変換性能の関係より約4mmと薄くなっているため、高温になる放熱フィンと低温になる吸熱フィンが近接して、放熱フィンの熱が吸熱フィンへ移動するため、吸熱量が低下して熱電モジュールの効率が低下する。そこで、図29のように吸熱用と放熱用の両ブロック9、10を用いてこれらで熱電冷却素子1を挟んで構成している。吸熱用ブロックと放熱用ブロックのどちらかひとつとしてもよい。ブロック9、10の間は複数組のねじ11およびナット12で締め付けられている。また、図30のように複数本のねじ13によって締め付けられているものもある。図31のようにブロック9、10の間をプラスチック製の挟圧具14で挟圧結合したものもある(特願平5−10628参照)。
【0007】
また液晶プロジェクションに組み込まれた液晶パネル及び入射側偏光板などの光学部品では光源ランプから出射された光の一部が熱に変換して高温となるため、部品の特性を維持し、経年劣化を防ぐためには規定された許容温度以下に保つように冷却することが必要である。また光学部品である液晶パネルに埃の付着しない構造であることが望ましい。そこで液晶パネル及び入射側偏光板の冷却装置としては、上述のペルチェ素子による冷却を含めて、下記のような従来技術がある。
【0008】
(1) 空冷方式
冷却用ダクト内に冷却ファンにより、フィルターを通じて外気を取り入れ、前記冷却用ダクト内に配した液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部を冷却し、発熱部を通過し熱を帯びた空気は本体外部に排出する。
【0009】
(2) 液冷方式
液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部に接する透明の冷却用セル内部に液送ポンプにて冷却液を循環送流し、発生した熱を光学部品の外部の放熱フィンに導いて、放熱用ファンにより本体外部に熱を排出する。
【0010】
(3) 蒸発潜熱利用方法
液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部に接する透明の冷却用セル内部に規定温度以下で蒸発する液体冷媒を封入し、発生熱により冷媒が蒸発することで発熱部を冷却し、放熱部では冷媒が凝縮することで熱を光学部品の外部の放熱フィンに導いて、放熱用ファンにより本体外部に熱を排出する。
【0011】
(4) 光透過型熱良導体接着冷却方式
液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部にサファイアガラスなどの光透過型熱良導体を接着することで熱を光学部品の外部の放熱フィンに導いて、放熱用ファンにより本体外部に熱を排出する。
【0012】
(5) ペルチェ素子接着冷却方式
液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部の光の通過しない端部にペルチェ素子の低温端部を伝熱結合させて発熱部を冷却し、ペルチェ素子の高温端部を光学部品の外部の放熱フィンに伝熱結合させて、放熱用ファンにより本体外部に熱を排出する。
【0013】
(6) ペルチェ素子を用いた液冷方式
発熱部である液晶パネルに接する透明の冷却用セル内部に液体冷媒を封入し、昇温した冷媒は自然対流によってペルチェ素子の低温端部が取り付けられたセル上部に上昇して冷却される。ペルチェ素子の高温端部を光学部品の外部の放熱フィンに伝熱結合させて、放熱用ファンにより本体外部に熱を排出する(実開平1−92635参照)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
まず、熱電モジュールを用いた電子冷却装置においては、図24や図25の場合には熱電モジュールをはさんで2本ずつで吸熱フィンと放熱フィンの間のねじ締めを行うとすると、計4本のねじ締めのみの工程となり、製造は極めて簡単であるが、吸熱フィン2と放熱フィン3が近接しているため、周辺の空気を介して高温側から低温側へ熱が移動して熱効率が低下する。そこで、図29,30,31に示すように、吸熱用ブロック9や放熱用ブロック10を用いて吸熱フィン2と放熱フィン3の距離を広くとっているが、ねじ締めに4本づつ用いるとすると、ブロックと放熱フィン、吸熱フィンの間にねじ締めが8カ所、ブロック間でも4カ所必要で、計12本となり、ねじで締め付ける工程が大幅に増すため、製造性が悪いという欠点を有していた。
【0015】
次に液晶プロジェクションの冷却装置において、従来技術に記載したペルチェ素子を利用していない(1)〜(4)で、外気温度が高い場合、液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部の温度を、規定された許容温度以下に冷却するのが困難となる。
【0016】
また(1)の空冷方式では、フィルターに埃が詰まった場合に圧力損失が増大することから冷却空気の風量が低下し、発熱部の温度が高くなる恐れがある。フィルターの洗浄あるいは交換を頻繁に行うことで防止は可能であるが、ユーザーの負担は増大する。またフィルターの目よりも細かい埃の混入およびフィルター交換時における冷却用ダクト内への埃の混入により液晶パネルに埃が付着して画像が乱れるという問題がこの方式の場合の大きな課題である。液晶プロジェクションでは投影画像が液晶パネルの大きさに比べて非常に大きく拡大されるため、微細な埃であっても問題となり得る。
【0017】
(2)〜(4)の場合は、液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部に外部の空気が接触しないため埃の付着する恐れはない。
【0018】
しかし(2)の液冷方式の場合は、液中の微細な気泡や液送ポンプの摩擦等で生じた微細な塵が液晶パネル表面上を通過する際にその影が投影画像中に生じる可能性がある。また液冷方式の場合は液漏れという課題が常に存在する。
【0019】
(3)の蒸発潜熱利用方式はポンプを使用しないために構造が簡単であるが、やはり、発熱部での冷媒の蒸発時に生ずる気泡が投影画面の影となるのが課題である。
【0020】
(4)の光透過型熱良導体接着冷却方式では気泡等の課題は解決されているが、この方式に使用されるサファイアガラス等は現在非常に高価であり、実用には不向きである。
【0021】
(5)のペルチェ素子接着冷却方式では、ペルチェ素子の接着面に近い液晶パネルの端部は効率よく冷却されるが、液晶パネル表面のガラスは熱伝導率が低いため、液晶パネルの中央部が高温になるという課題がある。
【0022】
(6)のペルチェ素子を用いた液冷方式では、液の循環は自然対流によるため効率のよい冷却効果は望めない。また被冷却面が液晶パネルの片面のみであるため、液晶パネル裏面及び入射側偏光板からの発熱の処理に課題がある。特に入射側偏光板は液晶パネルから数mmの近い位置にあり、液晶パネルの数倍の大きな発熱量を有するため、液晶パネルに与える熱量の大きさ及び、入射側偏光板の耐熱温度等の問題から発熱処理については慎重に対処する必要がある。
【0023】
本発明の目的は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、冷却性能と製造性にすぐれた電子冷却装置を提供することである。
また本発明の目的は、外気温度が高くなった場合でも液晶パネルおよび入射側偏光板の温度を規定された許容温度以下に冷却することができ、特に、液晶パネルへの埃の付着が防止できる電子冷却装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、外気取入口に配置した埃除去用フィルターと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に前記埃除去用フィルターを介して送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための凸状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
凸部と平面部とを有し、
前記凸部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記凸部に前記低温端部が接触されかつ平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記凸部に前記高温端部が接触されかつ平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、冷却用ファンによって取り入れ吸熱器によって冷却された外気を、冷却用ダクトを通じて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部に送って冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置である。
また本発明は、液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、外気取入口に配置した埃除去用フィルターと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に前記埃除去用フィルターを介して送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器 と放熱器とを接続するための断面Z状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
一方の平面部と他方の平面部とを有し、
前記一方の平面部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記一方の平面部に前記低温端部が接触されかつ他方の平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記一方の平面部に前記高温端部が接触されかつ他方の平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、冷却用ファンによって取り入れ吸熱器によって冷却された外気を、冷却用ダクトを通じて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部に送って冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置である。
【0025】
また本発明は、液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ効果を有するペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための凸状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
凸部と平面部とを有し、
前記凸部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記凸部に前記低温端部が接触されかつ平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記凸部に前記高温端部が接触されかつ平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、吸熱器によって冷却された空気を冷却用ファンによって冷却用ダクト内で循環させて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部を送って冷却し、前記発熱部を通過して熱せられた空気を再度吸熱器入口に導き冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置である。
また本発明は、液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ効果を有するペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための断面Z状のモジュールベースとを有し、
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熱伝導性の高い材料から成り、
一方の平面部と他方の平面部とを有し、
前記一方の平面部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記一方の平面部に前記低温端部が接触されかつ他方の平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記一方の平面部に前記高温端部が接触されかつ他方の平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、吸熱器によって冷却された空気を冷却用ファ ンによって冷却用ダクト内で循環させて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部を送って冷却し、前記発熱部を通過して熱せられた空気を再度吸熱器入口に導き冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置である。
【0026】
【0027】
また本発明は、吸熱器と冷却用ファンの間を、ダクト断熱材によって断熱したことを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記発熱部は、液晶パネルと入射側偏光板であり、この発熱部の空気出口の空気温度及び吸熱器の空気出口の空気温度のうち1点あるいは両点の温度を温度センサで検出し、その温度検出値をもとに前記発熱部の温度を予測し、ペルチェ素子に流す電流及び冷却用ファンの回転数を制御することを特徴とする。
【0029】
また本発明は、前記発熱部は、液晶パネル及び入射側偏光板であり、この発熱部で光を透過しない部分の温度を温度センサで検出し、その温度検出値をもとに前記発熱部の温度を予測し、ペルチェ素子に流す電流及び冷却用ファンの回転数を制御することを特徴とする。
【0030】
また本発明は、前記冷却空気として、熱伝導率の良いヘリウムあるいはネオンなどのガスを、埃を取り除いた状態で、冷却ダクト内に封入することを特徴とする。
【0031】
【作用】
本発明に従えば、ペルチェ素子に対して直流電流より所定の方向に電流を流すと、ペルチェ効果によってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器を通じて、冷却用ファンによって吸い込まれた冷却用の空気から吸熱し、低温度になった冷却空気は冷却用ダクトを通じて液晶パネルおよび偏光板などの発熱部に導かれ、これらを冷却する。
【0032】
本発明に従えば、冷却空気を内部循環型の閉サイクルとした場合、外気との冷却空気の入れ替わりがないため液晶パネル表面に埃が付着しない。
【0033】
【0034】
本発明に従えば、吸熱器から冷却用ファンまでダクト断熱材51で冷却用ダクトが断熱されている場合、外気から冷却用ダクトへの熱侵入がなく、効率よく冷却できる。
【0035】
本発明に従えば、液晶プロジェクションの使用時において、液晶パネルおよび入射側偏光板である発熱部の発熱温度に対応して、ペルチェ素子に流す電流および吸熱器の風量を調整することにより、これらの光学部品の発熱部の温度が規定された許容温度以下に保たれる。
【0036】
本発明に従えば、冷却空気としてヘリウム、ネオン等の熱伝導率の良いガスを使用した場合にはペルチェ素子への消費電力が少ない状態で冷却される。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図を参照して説明する。図1は、本発明に係る電子冷却装置の前提となる構成を示す断面図であり、図2は、その上面図である。この電子冷却装置は、ペルチェ冷却効果を有するペルチェ素子からなる熱電モジュール1、熱伝導性の高い、例えばアルミニウム、マグネシウム、銅、銀などで作られたモジュールベース15、低温側吸熱器としての吸熱フィン2、高温側放熱器としての放熱フィン3から構成される。熱電モジュール1、モジュールベース15、吸熱フィン2、放熱フィン3の間には接触熱抵抗を減らすために熱伝導性グリースを塗布してもかまわない。
【0038】
モジュールベース15は、平板のアルミニウムなどを図1の断面図のように折り曲げて製作したもので、図2のように凸部1aの長さL1は熱電モジュール1の長さLpよりねじ締め分だけ大きくした長さで、平面部とも称する底部15b、15cの長さL2よりも短い。熱電モジュール1はモジュールベース15の凸部15aの上に放熱側1bがモジュールベース15に接するように置かれ、凸部15aの幅W1は熱電モジュール1の幅Wpと等しくした。モジュールベース15の幅Wは放熱フィン3の幅Wfhと等しく、底部15b、15cの幅W2、W3と同じ幅とした。モジュールベース15の長さL2は放熱フィン3の長さLfhと同じにした。モジュールベース15の厚さは厚いほど望ましいが、製造性、後で述べるモジュールベース15の高さとの関係から決定する。
【0039】
電子冷却装置の熱収支は熱電モジュール1の吸熱性能、吸熱フィン2の吸熱量及び放熱フィン3の放熱量から次のいくつかの式であらわすことができる。熱電モジュール1の低温側温度Tcと高温側温度Thおよび熱電モジュール1に流れた電流値Iから、吸熱量Qc、電圧V、消費電力Wについて、次の関係を得る。
【0040】
Qc=n(αITc−1/2I2R−K(Th−Tc))
V=n(IR+α(Th−Tc))
W=VI
ここで、nは熱電モジュールの全素子数、αはゼーベック係数、Rは素子抵抗、Kは熱コンダンタンスである。
【0041】
このとき、吸熱フィン2ではQcと同じ熱量をTacの温度の空気から吸熱するから、
Qc=Kc(Tac−Tfc)
で表される。ここで、Tfcは吸熱フィン2の代表温度、Kcは熱コンダンタンスである。
【0042】
一方、放熱フィン3では吸熱量Qcと消費電力Wを放熱する必要があるから、
Qc+W=Kh(Tfh−Tah)
である。ここで、Tfhは放熱フィン3の代表温度、Tahは放熱フィン3を通過する空気温度、Khは放熱フィン3の熱コンダクタンスである。あらかじめ、必要な吸熱量Qcや電流値Iや熱電モジュール1の低温側温度Tcは熱電モジュール1の仕様や目標性能から決定されているのが一般的であり、熱電モジュール1の高温側温度Thや電圧V、消費電力Wを求めることができる。
【0043】
電子冷却装置の設計条件として、吸熱フィン2への吸入空気温度Tac、放熱フィン3への流入空気温度Tahがあらかじめ分かっているとすると、それぞれの代表温度Tfc、Tfhが決まり、必要な熱コンダクタンスが決定される。吸熱フィン2の代表温度Tfcは熱電モジュール1の吸熱側温度Tcより高く、放熱フィン3の代表温度Tfhは放熱側温度Thより低くなるが、その値は接触熱抵抗や熱移動を考慮して、実験や経験的に決める。熱コンダクタンスは,フィンを通過する風速から決定される熱透過率とフィン表面積の積であるから、ファンの風量、前面通過面積などを考慮してフィンの仕様が決定される。
【0044】
このような熱設計にもとづいて、吸熱フィン2と放熱フィン3の仕様は決定されているものとして本構成の説明を続ける。
【0045】
従来例の図24では、吸熱フィン2と放熱フィン3は熱電モジュール1の高さHpで向かいあっている。ここで、吸熱フィン2の底面面積が放熱フィン3の底面面積より小さいものとすると、向かいあった面積は
Wfc×Lfc−Wp×Lp
である。このとき、間の空気層が動かないものとすると、空気の熱伝導率λを用いて高温側から低温側への熱移動QL1は
QL1=λ/Hp×(Tfh−Tfc)×(Wfc×Lfc−Wp×Lp)
なる関係となる。
【0046】
図29のように吸熱用ブロック9や放熱用ブロック10を用いたときにはブロックの幅、長さが熱電モジュール1と同じと仮定すると、吸熱用ブロック9の高さHbc,放熱用ブロック10の高さHbhを用いて、
なる関係となる。
【0047】
吸熱フィン2、放熱フィン3の温度Tfc2、Tfh2はブロック内での温度勾配、フィンと熱電モジュール1の接触抵抗を考慮したものであるから、
QL2<QL1
とするには、
(Tfh2−Tfc2)/(Hp+Hbc+Hbh)<(Tfh−Tfc)/Hp
を満たすブロックの高さHbc、Hbhとする必要がある。十分にブロックの熱伝導率がよく、接触抵抗も無視することができ、Tfh2=Tfh、Tfc2=Tfcとみなすことができれば、ブロックの高さに相当する熱移動を減少させることができることは明白である。
【0048】
本構成に同様の考えを適用し、モジュールベース15の温度をThとすると、
である。ここで、βは吸熱フィンの面積のうち、モジュールベース15と高さHpで向かいあっている比率である。βを1とすると図3と同じ熱移動量となる。理想的にβを0とするとQL3は次のようになる。
【0049】
QL3=λ/(Hp+H)×(Tf−Tfc)×(Wfc×Lfc−Wp×Lp)
このとき、QL3<QL1とするには
(Th−Tfc)/(Hp+H)<(Tfh−Tfc)/Hp
となり、モジュールベース15の高さHに相当する熱移動量を減少させることができる。
【0050】
次にブロックを用いたときと比較する。HをHbc+Hbhとなるように設定し、接触抵抗などを無視すると、Tf−TfcはTfh2−Tfc2とみなすことができ、QL3=QL2となる。一方、放熱フィン3と熱電モジュール1の熱的接触はモジュールベース15の接触面積Lfh×(Wfh−W1)を介して行われるのに対して、アルミブロックを用いたときにはLp×Wpとなり、本構成のモジュールベース15を用いた時の方が熱的効率が優れていることは明らかである。
【0051】
放熱フィン3とモジュールベース15は平面部15bと15cで、締結手段であるねじ18あるいはねじとナットで締め付けられる。その位置および個数も締め付け強度を考慮して決定する。
【0052】
ねじ締め個所はモジュールベース15と高温側放熱フィン3、吸熱フィン2の結合にそれぞれ4本の計8本であり、アルミブロックを用いた場合に比べ、ねじ締め個所を減少させることができ、製造性を高めることができる。
【0053】
このように、この電子冷却装置ではアルミブロックを用いたときのように、吸熱フィン2と放熱フィン3の距離を広げ、熱移動を抑えることができ、またねじ締め工程も少なく、平板を曲げるだけの簡単な構造で、製造も容易となる利点を持つ。
【0054】
吸熱側と放熱側の熱的接触を防止するため、図3に示すように、取り付け部材が用いられている。モジュールベース15の凸部15aと吸熱フィン2のねじ締め箇所にベークライトで作られた取り付け部材16を配し、モジュールベース15と吸熱フィンをねじ17で締め付けた。取り付け部材16の材質は熱伝導性が低く、堅く、もろいまたは弾力性のある素材、例えば硬質ゴム等を用いれば、ベークライトでなくてもかまわない。取り付け部材16は上部が細くなっており、モジュールベース15の凸部15aには外径d1より小さく、取り付け部材16の上細部外径d2より大きな穴が開けられている。取り付け部材16の上細部の高さHtは熱電モジュール1の高さと等しいか、それより短くする。上細部へは吸熱フィン2からねじ17で締め付けた。取り付け部材16の位置および個数は締め付け強度を考慮して決定する。
【0055】
熱伝導性の低い材質で取り付け部材16を製作すると、ねじはモジュールベースに接触することなく、吸熱フィン2とモジュールベース15の間の熱移動を抑えることができ、しいては放熱フィン3から吸熱フィン2への熱移動を抑えることになる。また、取り付け部材16は堅く、もろいまたは弾力性のある素材で形成されているので、製造時締めすぎによる損傷や衝撃から熱電モジュール1を保護することができる。
【0056】
この構成では、一般に放熱フィン3と吸熱フィン2では、放熱フィン3の底面面積が大きいから、熱電モジュール1の放熱側1bがモジュールベース15と接するようにしたが、吸熱側1aがモジュールベース15に接してもかまわない。
【0057】
熱的な効率を考えると図2のようにモジュールベース15の凸部15aの中央に熱電モジュール1を置くのが望ましいが、設置上の理由などにより中央になくてもかまわない。複数個の熱電モジュールを用いるときには熱的な分布を考慮して図4のように熱電モジュール1を凸部に配置することも可能である。一般的にはモジュールベース15の平面部の幅W2、W3は等しくした方が伝熱の面から望ましいが、電子冷却装置の取り付け位置の関係から異なってもかまわない。
【0058】
吸熱フィン2とモジュールベース15は凸部15aで、従来例の図29において説明したように、取り付け部材16を使わないで、締結手段としてねじあるいはねじとナットを用いて締めつけてもかまわない。放熱フィン3は図5のように取り付け部材16の底面にねじ19で締め付けてもかまわない。図1では取り付け部材16は放熱フィン3と接触するようにしているが、接触していなくてもかまわないし、例えば図6のようにねじ20が貫通してナットのように締め付ける構造でもかまわない。
【0059】
モジュールベース15は凸形状としたが、図7のように曲げ角度を大きくした形にしてもかまわない。このようにすると凸形状に比べ、衝撃をモジュールベース15が吸収することができ、信頼性を高めることができる。
【0060】
本構成では図1のように放熱フィン3とモジュールベース15の接触部は平面部15b、15cに限られているが、図8のように凸部15aの一部をさらに折り曲げた形状とし、平面部15d,15eも接触させると、放熱フィン3とモジュールベース15の接触面積を大きくすることができる。また、どこにおいても図1の断面形状となるように凸部15aを長くしてもかまわない。このときには吸熱フィン2とモジュールベース12の向かい合う部分の面積が大きくなり、高温側から低温側への熱移動を増加するが、製造がより容易になる。
【0061】
熱電モジュール1は凸部に設置してきたが、吸熱フィン2、放熱フィン3の大きさの関係より、図5のように平面部において複数個設置してもかまわない。
【0062】
低温側吸熱器として吸熱フィン2、高温側放熱器として放熱フィン3を用いて説明を行ってきたが、他の放熱手段、吸熱手段でもかまわない。例えば、液晶表示装置に、この電子冷却装置を用いて、バックライトを吸熱器とすることも考えられる。バックライトを有する液晶表示装置では、バックライトと液晶パネルが密着しており、バックライトの発熱および液晶パネルで吸収されたバックライト光の発熱によって、液晶パネルの温度が上昇する。液晶表示装置が高温の環境で使われるとき、液晶パネルの温度がその耐熱温度を越え、液晶パネルが劣化する。そこで、温度を抑制するためにファンで放熱を促進するようにしているが、空冷では冷却能力に限界がある。バックライトと液晶パネルの間に冷却液を封入した放熱手段を有する冷却容器を挿入する方法も提案されているが、液漏れの危険性、光学特性の劣化から採用事例はほとんど見受けられない。
【0063】
そこで図9のように熱電モジュール1によってバックライト21裏面を冷却する。これはバックライト21に電子冷却装置を接触させたものである。発熱体であるバックライト21とアルミニウムの厚さ2mmのモジュールベース15はモジュールベース15の同じ幅の平面部15b、15cで帯状のバンド22とねじ23でバックライト21に締め付けることにより密着させた。バックライト21、モジュールベース15の幅と長さは等しい。モジュールベース15の凸部15aには40mm×40mmの熱電モジュール1の低温側1aが密着している。高温側1bは高温側放熱フィン3と接触しており、放熱フィン3とモジュールベース15は取り付け部材16を介してねじ25で締め付けた。取り付け部材16は熱電モジュール1から6mm離れた長さ方向の位置に2本づつとりつけた。取り付け部材16はバックライト21に底面が接する高さとした。このようにすると、バックライト21の構造を大きく変化させることなく、熱電モジュール1を用いて液晶パネル24を本構成の作用によって効果的に冷却することができる。
【0064】
以上に述べた構成では凸状のモジュールベース15を用いたが、図10のように断面Z状のモジュールベース26でもかまわない。このとき、熱電モジュール1は平面部26aあるいは26bに設置されるが、設置方法などは上記構成とかわらない。吸熱フィンと放熱フィンの大きさがほとんど変わらないような場合、凸状モジュールベースとしなくてもこの方法により同じ効果を得ることができ、モジュールベースの折り曲げ個所を減らせ、製造性を高めることができる。
【0065】
さて図11は、本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第1実施例を示す構成図である。フィルター31は、外気取り入れ口付近に位置し、吸熱フィン33および冷却すべき光学部品に埃が付着するのを防止している。冷却用ファン34によってフィルター31から取り入れられた冷却空気38は、冷却用ダクト35の中を通過する時に吸熱フィン33によって冷却される。吸熱フィン33はペルチェ素子32の低温端面32aに伝熱結合しているが、ペルチェ素子32は直流電源32cから直流電流を受け、低温端面32aより吸熱し、高温端面32bより放熱する。ここで高温端面32bに伝熱結合した放熱フィン36から放熱用ファン37によって取り入れられた外気に対して放熱することにより強制空冷される。
【0066】
冷却空気38は、図12の光学部品群に導かれる。この光学部品群は、フレネルレンズ39、出射側偏光板40、液晶パネル41、マイクロレンズ41a、入射側偏光板42、ディンプルシェイプトレンズ43、UV−IRフィルタ44、投射レンズ45、光源ランプ46などで構成されるが、発熱部である液晶パネル41は耐熱温度が60℃前後と低く、もう1つの発熱部である入射側偏光板42は耐熱温度が70℃前後と液晶パネル41よりも上限温度は高いが、発熱量は液晶パネル41の数倍あるため、共に十分な冷却が必要である。特に入射側偏光板42は発熱量が大きいため、入射側偏光板42とディンプルシェイプトレンズ43の間にも冷却空気38を送る必要があり、また高温の光源ランプに近いディンプルシェイプトレンズ43とUV−IRフィルタ44の間も冷却した方が効率が良いため光学系内部の冷却用ダクト側壁としてUV−IRフィルタ44を使用している。入射側偏光板42の発熱量が少ない場合は、ディンプルシェイプトレンズ43あるいは入射側偏光板42を冷却用ダクト側壁として使用する。
【0067】
なお後に述べるように、光学系内部の冷却用ダクト壁として入射側偏光板42あるいは液晶パネル41を使い、入射側偏光板42の片面あるいは入射側偏光板42のすべてと液晶パネル41の片面を他の冷却手段で冷却するという方式もある。またもう片方の冷却用ダクト壁としては発熱量の非常に小さい出射側偏光板40を使えば壁の外からの放熱については自然対流あるいは放熱用ファン37や光源ランプ冷却用ファン(図示していない)の分岐流で十分まかなうことができる。このような光学系内部のダクト壁を用いることにより、液晶パネル41および入射側偏光板42の温度を規定された温度以下に低下させることができる。
【0068】
図13にこの冷却装置の実験結果を示す。ペルチェ素子を使用しない空冷タイプの冷却装置による実験結果は、入射側偏光板の最高温度が25.7℃、入射側偏光板の平均温度が18.3℃、液晶パネルの最高温度が15.2℃、液晶パネルの平均温度が10.5℃であったため、ペルチェ素子への入力を増加させると共に空冷タイプとの比較において冷却効果があがっていくことがわかる。
【0069】
図14は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第2実施例を示す構成図である。液晶パネル41からの冷却空気38の冷却用ダクト35を吸熱フィン33の空気入口部に接続し、冷却空気38を循環させる構造にすることにより、フィルター31を取り除くことができ、液晶パネル41表面に埃を付着させることなく、冷却を行うことができる。この密閉タイプの実験結果を図15に示す。この場合も、ペルチェ素子への入力を増加させると共に、空冷タイプとの比較において冷却効果があがっていくことがわかる。
【0070】
【0071】
【0072】
図16は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第3実施例を示す構成図である。吸熱フィン33で外気温度以下に冷却された冷却空気38に対する熱侵入を防ぐため、吸熱フィン33と冷却用ファン34の間の冷却用ダクト35は断熱材51で断熱することが効率の良い冷却につながる。冷却用ファン34はそれ自体が発熱体であり、液晶パネルの入口付近は光源ランプからの熱を受けて高温になっているため断熱はしない方が良い。冷却用ダクト35の厚みを厚くすることや、吸熱フィン33と被冷却物である液晶パネル及び入射側偏光板の間の冷却用ダクト35の長さを短くすることでも同様の効果が得られる。
【0073】
なお第2実施例に記載した冷却装置の冷却用ダクト35の仕様については、冷却空気38の風量が大きく、液晶パネル41および入射側偏光板42の入口付近における冷却空気38の温度が冷却用ダクト35の外部の空気温度と同程度であり、その他の部分で冷却用ダクト35の外部の空気温度よりも冷却空気38の温度を高く設定した仕様の製品では、冷却用ダクト35から回りの空気に対して放熱し易いように冷却用ダクト35に放熱フィンを付けたり、冷却用ダクト35を薄くしたりすることにより、効率の良い冷却が可能となる。逆に冷却空気38の風量が小さく、吸熱フィン33と被冷却物である液晶パネル41および入射側偏光板42の間の部分で、冷却空気38の温度が冷却用ダクト35回りの空気温度よりも低くなっている仕様の製品では、この部分は先に述べたのと同様に断熱したり長さを短くして熱漏洩を受ける面積を小さくすることで効率の良い冷却が可能となる。
【0074】
図17は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第4実施例を示す構成図である。まず温度センサとして液晶パネル41や入射側偏光板42の出口の第1温度センサ52によって冷却空気38の温度を予測し、その値から液晶パネル41や入射側偏光板42の最高温度を推定する簡易な方法や、温度測定点をもう1点増やし、吸熱フィン33出口の第2温度センサ53によって冷却空気38の温度を測定することで精度良く液晶パネル41や入射側偏光板42の最高温度を推定する方法がある。また冷却空気38の温度を測定する以外にも、液晶パネル41及び入射側偏光板42の光の通らない端部である第3温度センサ54及び第4温度センサ55によって端部温度を検出することで液晶パネル41及び入射側偏光板42の最高温度を推定できる。
【0075】
図18は第4実施例の温度制御におけるペルチェ素子32、冷却用ファン34、放熱用ファン37の制御方法を示すフローチャートの1例である。これらの要素の制御としてはON、OFF以外に、電流値を様々に変化させることによるきめ細かな制御が可能であるが、実用的には簡単な制御で十分な場合が多い。そこで、ここではペルチェ素子32についてはON、OFFと強冷、中冷、弱冷の3種類、冷却用ファン34については、ON、OFFと高回転、低回転、2種類、放熱用ファン37については、ON、OFFのみの制御とし、使用条件に応じて実験で最適な制御を採用するものとする。次に温度スイッチについては、液晶パネル41温度あるいは入射側偏光板42温度tのどちらかが最高許容温度aを越えた時点で温度スイッチAが働くものとする。また、液晶パネル41温度あるいは入射側偏光板42温度tのどちらもがある決められた温度b以下になった場合は過剰冷却であると判断して温度スイッチBが働くものとする。
【0076】
図18のフローチャートは高効率な冷却を可能とするものである。一般的にペルチェ素子32の消費電力は冷却用ファン34の消費電力よりも格段に高いため、騒音を無視すれば、ペルチェ素子32の消費電力を抑えて、冷却用ファン34を高回転で作動させた方が高効率となる。制御の流れであるが、図18に示したとおり、ペルチェ素子32は強冷、冷却用ファンは高回転で運転し、温度スイッチBが作動すれば、ペルチェ素子32の中冷、弱冷、冷却用ファン低回転の順に一段階ずつ冷却度を下げていく。温度スイッチAが働いた場合は、これとは逆の順に冷却度を上げていく。冷却度が最強モードにおいて温度スイッチAが作動した場合は、光源ランプ46はOFFし、冷却装置も一定時間作動した後に停止する。冷却度の各段階においてタイムラグを設けたのは、検知温度が安定するのを待つためである。本体の電源をONした場合に冷却度が最強モードでスタートするのは、タイムラグを含む冷却制御の遅れによって、外気温が高温時などに長時間、温度スイッチAが作動したままの状態になることを避けるためである。
【0077】
図19のフローチャートは静音型の冷却を可能とするものである。図18とは冷却装置ON時に冷却用ファン34が低回転で作動するという点で異なっている。温度スイッチAが作動した場合には、冷却用ファン34が高回転で作動する。温度スイッチBが作動した場合には、ペルチェ素子32を中冷、弱冷の順に一段階ずつ冷却度を下げていく。
【0078】
図20は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第5実施例を示す構成図である。これは、ペルチェ素子32の消費電力を低減するために、ペルチェ素子32で冷却すべき光学部品を耐熱温度の低い液晶パネル41と入射側偏光板42の片面に限定した実施例である。出射側偏光板40と入射側偏光板42とを冷却空気の通る送風経路として使用しているため、ペルチェ素子の冷却能力は小さくできる。送風経路が狭くなるため冷却用ファンは高静圧型のものを使用する必要がある。実施例では、液晶パネル用冷却ファン34aと入射側偏光板冷却ファン34bの2つのファンが同軸によって1つのモータで駆動される例を示している。なおペルチェ素子32は、特に高温端面32bより放出される熱量がかなり大きいため、冷却に必要な能力の半分のものを2枚使用して放熱フィン36に均等に熱が伝わるような位置に配置している。
【0079】
図21は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第6実施例を示す構成図である。同じくペルチェ素子32の消費電力低減のためペルチェ素子32で冷却すべき光学部品を液晶パネル41の表面にのみ限定した例である。作動時に焦点は液晶パネル11表面にあり、マイクロレンズ41aには微小な埃が付着してもさほどの問題にはならないため、液晶パネル41のみを密閉構造中でペルチェ素子32によって冷却した例である。この場合は発熱量は大きいが、耐熱温度の高い入射側偏光板42からの放熱をすべて外気を取り入れた空冷で行うためにペルチェ素子32の消費電力はかなり低減できる。
【0080】
図22は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第7実施例を示す構成図である。これは冷却用ファン34aを隙間の狭い液晶パネル41および入射側偏光板42入口付近から上部の吸熱フィン33の近くに移動した例であり、大きなファンを設置できることから風量を増大させ、冷却能力を上げることができる。入射側偏光板冷却用ファン34bにより入射側偏光板冷却用ダクト35aを通じて入射側偏光板42の壁外面を冷却する。
【0081】
図23は本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第8実施例を示す構成図である。これは同軸ファンを使用するかわりに入射側偏光板を冷却する送風により、羽根車56を回転させ、冷却用ダクト35内部の空気も同軸の羽根車56によって循環させようとするものである。なお第2実施例に記載した電子冷却装置において冷却空気としては、水分と埃を取り除いた空気を使用するのが最も経済的であるが、前述のように、熱伝導率の良いヘリウムやネオンなどを使用することにより、より効率の良い冷却が可能となる。
【0082】
【発明の効果】
以上の記述で明らかなように、本発明の電子冷却装置は熱電モジュールと放熱器あるいは吸熱器の間に凸状のまたは断面Z状のモジュールベースを用いたことを特徴とし、それによって冷却性能や熱効率の向上を図りつつ、製造が容易になる効果を持つ。
【0083】
本発明によれば、ペルチェ素子で外部から取り入れた空気を冷却し、低温の冷却空気を液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部に送風することにより、外気温度が高くなった場合でも液晶パネル及び偏光板などの温度を規定された許容温度以下に冷却することができる。なお空気温度が下がることにより、若干風量が低下しても冷却が可能なことから騒音値の低減につながる。またフィルターを細かくすることができ、埃付着の恐れが減少する。
【0084】
本発明によれば、冷却用ダクト内部の空気として外気を取り入れる代わりに埃除去用のフィルターを取り除き、液晶パネル及び入射側偏光板などの出口の空気を再度吸熱器入口に導き、ペルチェ素子で冷却した空気を内部で循環させながら液晶パネル及び偏光板などの発熱部に送風することで、外気温度が高くなった場合でも液晶パネル及び入射側偏光板などの温度を規定された許容温度以下に冷却することができ、かつ、液晶パネルへの埃の付着を防止することができる。
【0085】
本発明によれば、凸状のモジュールベースまたは断面Z状のモジュールベースを用いることによって、吸熱部と放熱部との距離を広げ、熱移動を抑えることができ、冷却性能や 熱効率の向上を図ることができる。またたとえばねじ締め工程が少なく平板を曲げるだけの簡単な構造で実現することもでき、製造が容易になる。
【0086】
本発明によれば、吸熱器と冷却用ファンの間の冷却用ダクトをダクト断熱材51によって断熱することにより、冷却空気に対して外部から熱侵入することなく、液晶パネルおよび入射側偏光板などの発熱部を効率よく冷却することができる。
【0087】
本発明によれば、液晶パネル及び偏光板出口の空気温度及び吸熱器出口の空気温度のうち1点あるいは両点の温度を温度センサで検出し、その温度検出値をもとに液晶パネル及び入射側偏光板の温度を予測し、ペルチェ素子に流す電流及び冷却用ファンの回転数を制御することで、効率よく液晶パネルおよび入射側偏光板などの発熱部を冷却することができる。
【0088】
本発明によれば、液晶パネル及び入射側偏光板端部の光を通過しない部分の温度を温度センサで検出し、その温度検出値をもとに液晶パネル及び入射側偏光板の温度を予測し、ペルチェ素子に流す電流及び冷却用ファンの回転数を制御することで、効率よく液晶パネルおよび入射側偏光板などの発熱部を冷却することができる。
【0089】
本発明によれば、密閉型の冷却装置において、熱伝導率の良いヘリウムあるいはネオンなどのガスを、埃を取り除いた状態で冷却ダクト内部に封入することで、液晶パネルおよび入射側偏光板などの発熱部を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の前提となる電子冷却装置を示す断面図である。
【図2】 その電子冷却装置の上面図である。
【図3】 取り付け部材を用いたねじ締めつけ部の部分拡大図である。
【図4】 複数の熱電モジュールを用いた電子冷却装置の実施例の断面図である。
【図5】 モジュールベースの平面部に熱電モジュールを取り付けた電子冷却装置の実施例の断面図である。
【図6】 取り付け部材をナットとした電子冷却装置の実施例の断面図である。
【図7】 モジュールベースの曲げを大きくした本発明の他の前提となる電子冷却装置の断面図である。
【図8】 モジュールベースの凸部を折り曲げて放熱フィンに接触させた本発明のさらに他の前提となる電子冷却装置の上面図である。
【図9】 液晶表示装置の冷却に用いた本発明の他の前提となる電子冷却装置の断面図である。
【図10】 断面Z状のモジュールベースを用いた本発明の他の前提となる電子冷却装置の断面図である。
【図11】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第1実施例を示す構成図である。
【図12】 液晶パネル及び入射側偏光板などの発熱部を含む光学部品の構成図である。
【図13】 この電子冷却装置の入射側偏光板及び液晶パネルの温度上昇を示すグラフである。
【図14】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第2実施例を示す構成図である。
【図15】 この電子冷却装置の入射側偏光板及び液晶パネルの温度上昇を示すグラフである。
【図16】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第3実施例を示す構成図である。
【図17】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第4実施例を示す構成図である。
【図18】 第4実施例の制御方法を示すフローチャートである。
【図19】 第4実施例の他の制御方法を示すフローチャートである。
【図20】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第5実施例を示す構成図である。
【図21】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第6実施例を示す構成図である。
【図22】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第7実施例を示す構成図である。
【図23】 本発明に係る液晶プロジェクションの電子冷却装置の第8実施例を示す構成図である。
【図24】 ねじとナットで締め付けた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図25】 ねじで締め付けた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図26】 スペーサを用いたねじとナットで締め付けた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図27】 衝撃吸収部材を用いたねじとナットで締め付けた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図28】 複数の熱電モジュールを用いた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図29】 ブロックを用いた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図30】 ブロックをねじで締め付けた従来の電子冷却装置の断面図である。
【図31】 ブロックを挟圧具で締め付けた従来の電子冷却装置の断面図である。
【符号の説明】
1 熱電モジュール
2 吸熱フィン
3 放熱フィン
15 モジュールベース
16 取り付け部材
Claims (8)
- 液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、外気取入口に配置した埃除去用フィルターと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に前記埃除去用フィルターを介して送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための凸状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
凸部と平面部とを有し、
前記凸部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記凸部に前記低温端部が接触されかつ平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記凸部に前記高温端部が接触されかつ平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、冷却用ファンによって取り入れ吸熱器によって冷却された外気を、冷却用ダクトを通じて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部に送って冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置。 - 液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、外気取入口に配置した埃除去用フィルターと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に前記埃除去用フィルターを介して送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための断面Z状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
一方の平面部と他方の平面部とを有し、
前記一方の平面部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記一方の平面部に前記低温端部が接触されかつ他方の平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記一方の平面部に前記高温端部が接触されかつ他方の平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、冷却用ファンによって取り入れ吸熱器によって冷却された外気を、冷却用ダクトを通じて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部に送って冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置。 - 液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ効果を有するペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための凸状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
凸部と平面部とを有し、
前記凸部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記凸部に前記低温端部が接触されかつ平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記凸部に前記高温端部が接触されかつ平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、吸熱器によって冷却された空気を冷却用ファンによって冷却用ダクト内で循環させて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部を送って冷却し、前記発熱部を通過して熱せられた空気を再度吸熱器入口に導き冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置。 - 液晶プロジェクションの光学部品の発熱部をペルチェ効果により冷却する電子冷却装置において、
ペルチェ効果を有するペルチェ素子と、該ペルチェ素子の直流電源と、ペルチェ素子の高温端部に伝熱結合された放熱器と、該放熱器に送風を行う放熱用ファンと、光学系内にある側壁が前記光学部品の前記発熱部で構成された冷却用ダクトと、冷却用ダクト内にあってペルチェ素子の低温端部に伝熱結合された吸熱器と、該吸熱器に送風を行う冷却用ファンと、ペルチェ素子と吸熱器と放熱器とを接続するための断面Z状のモジュールベースとを有し、
前記モジュールベースは、
熱伝導性の高い材料から成り、
一方の平面部と他方の平面部とを有し、
前記一方の平面部に、ペルチェ素子の低温端部または高温端部が接触され、
前記一方の平面部に前記低温端部が接触されかつ他方の平面部に吸熱部を伝熱結合して構成し、または
前記一方の平面部に前記高温端部が接触されかつ他方の平面部に放熱器を伝熱結合して構成し、
前記ペルチェ素子に電流を流した状態で、吸熱器によって冷却された空気を冷却用ファンによって冷却用ダクト内で循環させて前記冷却用ダクトの前記側壁を構成する前記発熱部を送って冷却し、前記発熱部を通過して熱せられた空気を再度吸熱器入口に導き冷却し、ペルチェ素子からの放熱は放熱用ファンによって取り入れられた外気に対して放熱器より放出することを特徴とする電子冷却装置。 - 吸熱器と冷却用ファンの間を、ダクト断熱材によって断熱したことを特徴とする請求項1〜4のうちの1つに記載の電子冷却装置。
- 前記発熱部は、液晶パネルと入射側偏光板であり、この発熱部の空気出口の空気温度及び吸熱器の空気出口の空気温度のうち1点あるいは両点の温度を温度センサで検出し、その温度検出値をもとに前記発熱部の温度を予測し、ペルチェ素子に流す電流及び冷却用ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1〜5のうちの1つに記載の電子冷却装置。
- 前記発熱部は、液晶パネル及び入射側偏光板であり、この発熱部で光を透過しない部分の温度を温度センサで検出し、その温度検出値をもとに前記発熱部の温度を予測し、ペルチェ素子に流す電流及び冷却用ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1〜5のうちの1つに記載の電子冷却装置。
- 前記冷却空気として、熱伝導率の良いヘリウムあるいはネオンなどのガスを、埃を取り除いた状態で、冷却ダクト内に封入することを特徴とする請求項3または4記載の電子冷却装置。
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