JP2004009842A - ストラット型サスペンション装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバのスムーズなストロークを阻害するサイドフォースを効果的に低減することができるストラット型サスペンション装置を提供すること。
【解決手段】ストラット型サスペンション装置において、アッパーインシュレータ9を、ピストンロッド2aの上部に固定される内筒9aと、該内筒9aの外周側に設けられる外筒9bと、前記内筒9aと外筒9bとのそれぞれに固着されるマウントラバー9cと、を有して構成し、かつ、前記アッパーインシュレータ9の内外筒9a,9bを、車体パネル8への取り付け前の状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに交差する傾斜配置とし、アッパーインシュレータ弾性中心Fの上方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両外方に向き、アッパーインシュレータ弾性中心Fの下方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両内方に向く設定とした。
【選択図】 図1
【解決手段】ストラット型サスペンション装置において、アッパーインシュレータ9を、ピストンロッド2aの上部に固定される内筒9aと、該内筒9aの外周側に設けられる外筒9bと、前記内筒9aと外筒9bとのそれぞれに固着されるマウントラバー9cと、を有して構成し、かつ、前記アッパーインシュレータ9の内外筒9a,9bを、車体パネル8への取り付け前の状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに交差する傾斜配置とし、アッパーインシュレータ弾性中心Fの上方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両外方に向き、アッパーインシュレータ弾性中心Fの下方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両内方に向く設定とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストラット型サスペンション装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
ストラット型サスペンション装置は、その構造上、アクスル部材に働く前後方向の力と左右方向の力をショックアブソーバで受け持つため、ショックアブソーバのピストン摺動部に大きなサイドフォースが作用する場合がある。このサイドフォースによりショックアブソーバにフリクション(摺動摩擦抵抗)が生じてスムーズなショックアブソーバストロークが確保出来なくなり、乗り心地や操縦安定性能の低下を招くことになる。
【0003】
このサイドフォースは、例えば、特開平9−86125号公報に記載されているように、コイルスプリングをショックアブソーバとオフセットして配置することにより減少できることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のストラット型サスペンション装置にあっては、コイルスプリングをショックアブソーバに対し大きくオフセット配置することで、サイドフォースのゼロ化を目指すものである。このため、種々の設計上の制約により、コイルスプリングのショックアブソーバに対するオフセット量を十分に取れない場合には、サスペンションのサイドフォースを十分にキャンセルすることができないという問題があった。例えば、限られた車幅寸法で車室内空間を広く確保したい場合、サスペンションが配置されるタイヤハウスの占有空間をなるべく狭く抑えたいという設計要求がある。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバのスムーズなストロークを阻害するサイドフォースを効果的に低減することができるストラット型サスペンション装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、ストラット型サスペンション装置において、アッパーインシュレータを、ピストンロッドの上部に固定される内筒と、該内筒の外周側に設けられる外筒と、前記内筒と外筒とのそれぞれに固着される弾性部材と、を有して構成し、かつ、前記アッパーインシュレータの内外筒を、車体への取り付け前の状態において、内筒の軸線と外筒の軸線とが互いに交差する傾斜配置とし、軸線交差位置の上方では外筒の軸線に対し内筒の軸線が車両外方に向き、軸線交差位置の下方では外筒の軸線に対し内筒の軸線が車両内方に向く設定とした。
【0007】
ここで、「アッパーインシュレータ」は、ショックアブソーバへの入力とコイルスプリングへの入力に対し、入力集中型アッパーインシュレータと入力分散型アッパーインシュレータに分けられるが、本発明については何れの型のアッパーインシュレータにも適用可能である。
【0008】
【発明の効果】
本発明にあっては、車体への取り付け時に、互いに交差する傾斜配置とした内筒の軸線と外筒の軸線とを一致させることにより弾性部材がこじられ、アッパーインシュレータにこじりモーメントが発生する。このこじりモーメントを、アッパーインシュレータにかかる横力を低減する方向、あるいは、零に近づける方向に発生させることで、ショックアブソーバのピストンロッドを案内するガイド部に働くサイドフォースを低減することが可能である。
【0009】
よって、アッパーインシュレータにこじりモーメントを発生させるだけで、レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバのスムーズなストロークを阻害するサイドフォースを効果的に低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のストラット型サスペンション装置を実現する実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例のストラット型サスペンション装置を示す正面図である。図1において、1はコイルスプリング、2はショックアブソーバ、2aはピストンロッド、2bはショックアブソーバ外筒、2cはピストン、3はアッパースプリングシート、4はロアスプリングシート、5はアクスル(アクスル部材)、6はロアリンク、7はロードホイール、8は車体パネル、9はアッパーインシュレータである。
【0012】
また、図1において、10はショックアブソーバ軸線、11はスプリング軸線、12はストラット軸線、13はロアリンク軸線、14はタイヤ鉛直線である。さらに、Aはロアリンク6の車体側ピボット、Bはロアリンク6のアクスル側ピボット、Cはロアリンク軸線13とタイヤ鉛直線14との交点、Dはスプリング軸線11とタイヤ鉛直線14との交点、Eはショックアブソーバ軸線10に垂直でストラットアッパーマウント点Fを通る線とタイヤ鉛直線14との交点、Fはストラットアッパーマウント点、Gはタイヤ中心点、Hはピストンロッド2aのガイド点、Iはピストン2cの中心点である。
【0013】
第1実施例のストラット型サスペンション装置は、コイルスプリング1と、該コイルスプリング1の内側空間部に内挿されたショックアブソーバ2と、ショックアブソーバ外筒2bに取り付けられたアクスル5と、を有して構成された支柱(ストラットという)を、その上端が車両内方に少し傾斜する縦方向配置としている。
【0014】
そして、支柱の上端部(=ショックアブソーバ2を構成するピストンロッド2aの上端部)を、アッパーインシュレータ9を介して車体パネル8に弾性支持し(ストラットアッパーマウント点F)、支柱の下端部(アクスル5の下方に延びる腕部の下端部)をロアリンク6の外端位置にピボット(アクスル側ピボットB)することにより構成されている。
【0015】
前記コイルスプリング1は、そのスプリング軸線11を、車両外方にスプリング反発力を生じさせるように、ショックアブソーバ軸線10に対し傾けたオフセット配置としている。
【0016】
図2は第1実施例のストラット型サスペンション装置のアッパーインシュレータを示す断面図、図3は第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け前の状態を示す図、図4は第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け後の状態を示す図である。
【0017】
前記アッパーインシュレータ9は、ピストンロッド2aの上部にナット20により固定される内筒9aと、該内筒9aの外周側に設けられる外筒9bと、前記内筒9aと外筒9bとのそれぞれに固着されるマウントラバー9c(弾性部材)と、を有して構成される。前記内筒9aには、バウンド時やリバウンド時に外筒9bとの接触干渉を防ぐためのストッパラバー9d,9eが固着されている。前記外筒9bは、車体パネル8に対しボルトナット21により固定されている。
【0018】
そして、前記アッパーインシュレータ9の内筒9aと外筒9bは、図3に示すように、車体パネル8への取り付け前の状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに交差する傾斜配置とし、両軸線22,23が交差するアッパーインシュレータ弾性中心点(=ストラットアッパーマウント点F)の上方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両外方に向き、ストラットアッパーマウント点Fの下方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両内方に向く設定としている。
【0019】
前記アッパーインシュレータ9の内筒9aと外筒9bは、図4に示すように、車体パネル8への取り付け状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに一致するようにし、かつ、内外筒9a,9bの軸線22,23とピストンロッド2aのショックアブソーバ軸線10が一致する設定とされる。
【0020】
すなわち、ショックアブソーバ2のピストンロッド2aに作用する曲げモーメントを相殺するために必要なモーメントを、内筒9aの軸線22が傾斜したアッパーインシュレータ9のこじりを利用して得るようにしたものである。
【0021】
前記アッパーインシュレータ9の内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23との傾斜角θ1と、マウントラバー9cのこじりばね定数Kθは、後で詳しく述べるように、車体パネル8に取り付けた状態で、下記の釣り合い式、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1 ...(1)
ただし、F1:ショックアブソーバ2のガイド部(H)に働くサイドフォース
L1:アッパーインシュレータ弾性中心〜ガイド部の距離(F〜H)
L2:アッパーインシュレータ弾性中心〜ピストンの距離(F〜I)
が成立する設定とされている。
【0022】
次に、作用を説明する。
【0023】
[オフセットコイルスプリングによるフリクション低減作用]
第1実施例のようなストラット型サスペンションの場合、静止状態の上下方向の荷重の釣り合いをベクトルで示せば、図5(イ)に示すように、上下荷重FzをFsとF1とに分け、Fsをコイルスプリングの反力が支えるとし、F1の着力点がタイヤ鉛直線とストラット軸線との交点O’であることから、ストラット上端のストラットアッパーマウント点に生じる横力F2は、
F2=F1・H/L ...(2)
となり、この横力F2がショックアブソーバのピストンロッドを曲げる力となる。このため、ショックアブソーバにフリクション(摺動摩擦抵抗)が生じてスムーズなショックアブソーバストロークが確保出来なくなり、乗り心地や操縦安定性能の低下を招くことになる。
【0024】
これに対し、図5(ロ)に示すように、タイヤ鉛直線とロアリンク延長線との交点をP’とし、この交点P’とストラットアッパーマウント点Qとを結ぶ線に一致するように、コイルスプリングのスプリング軸線を、ショックアブソーバ軸線に対し傾けたオフセット配置とした場合には、上下荷重Fzの分力Fs,F1による曲げモーメントの発生が無く、ストラットアッパーマウント点Qはコイルスプリングの軸方向荷重Fsのみを受けることになる。
【0025】
すなわち、コイルスプリングをオフセット配置した場合には、車両外方にスプリング反発力を生じ、この反発力がピストンロッドを曲げる力を打ち消す力となり、ショックアブソーバのフリクションが低減される。
【0026】
この結果、図5(ロ)に示すオフセット配置のコイルスプリングの場合、図5(イ)の場合に比べ、ショックアブソーバのストロークがスムーズとなり、乗り心地や操縦安定性能を向上させることができる。
【0027】
[オフセットアッパーインシュレータによるフリクション低減作用]
まず、第1実施例のストラット型サスペンションの全体に働く外力は、図6に示すように、
・Fg:接地荷重
・FL:リンク軸力
・Fs:スプリング力の車体からの反力
・Fu:ストラットアッパーマウント点にかかる横力
以上の4つの力である。
【0028】
ロアリンク6のアクスル側ピボットB点まわりのモーメントの釣り合いを考えると(簡易計算)、
Fg・Lw−Fu・L=0 ...(3)
となり、(3)式により、ストラットアッパーマウント点にかかる横力Fuは、
Fu=Fg・(Lw/L) ...(4)
となる。
【0029】
次に、図7を用いて第1実施例にて提案するオフセットアッパーインシュレータを用いない場合のピストンロッドの釣り合いを考える。
ピストンロッドには、サイドフォースF1,F2,Fuの3つの力が働いており、それぞれのサイドフォースF1,F2,Fuは、ピストンロッドに垂直に働いている。これらのモーメントの釣り合いにより、
Fu+F2=F1 ...(5)
L2・F2−L1・F1=0 ...(6)
となる。(5),(6)式により、
F1=L2・Fu/(L2−L1) ...(7)
F2=L1・Fu/(L2−L1) ...(8)
となる。(7),(8)式により、F1=F2=0となるためには、Fu=0となればよい。ストラットアッパーマウント点にかかる横力Fuは、
Fu=(b/a)×(sinθs/cosθd)
×(1/{cosθs−(b/a)sinθs・tanθd−(1+b/a)sinθs・tanφ})・Fg ...(9)
となる。この(9)式において、横力Fu=0とするためには、b=0とならなければならない。
【0030】
しかし、オフセットコイルスプリングでは、レイアウト上の制約があるため、図5(ロ)に示すように、横力Fu=0とすることは難しい。
【0031】
これに対し、オフセットコイルスプリングと、第1実施例にて提案する内外筒9a,9bを傾斜配置(オフセット配置)したアッパーインシュレータ9と、の併用により効率良く横力Fu=0を実現することが可能である。
【0032】
すなわち、ピストンロッド2aには、図8に示すように、サイドフォースF1,F2,Fuの3つの力とこじりモーメントTuが働いている。これらのモーメントの釣り合いにより、
Fu+F2=F1 ...(10)
L2・F2−L1・F1−Tu=0 ...(11)
となる。(10),(11)式により、横力Fuについて解くと、
Fu={F1(L2−L1)−Tu}/L2 ...(12)
ただし、F1:ショックアブソーバ2のガイド部(H)に働くサイドフォース
F2:ショックアブソーバ2のピストン部(I)に働くサイドフォース
L1:アッパーインシュレータ弾性中心〜ガイド部の距離(F〜H)
L2:アッパーインシュレータ弾性中心〜ピストンの距離(F〜I)
となる。この(12)式で、横力Fu=0にするためには、
F1(L2−L1)=Tu ...(13)
とすればよい。ここで、アッパーインシュレータ9に働くこじりモーメントTuは、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23との傾斜角をθ1とし、マウントラバー9cのこじりばね定数をKθとしたとき、
Tu=Kθ・θ1 ...(14)
であらわされる。この(13)式と(14)式により、上記(1)式、つまり、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1 ...(1)
が得られる。
【0033】
よって、内外筒9a,9bを傾斜配置(オフセット配置)したアッパーインシュレータ9を車体パネル8に取り付けた状態で、上記の釣り合い式(1)が成立する設定とすれば、ショックアブソーバ2に対し互いに逆向きに働く2つのモーメントが等価なものとなり、アッパーインシュレータ9に作用する横力Fuのキャンセル(Fu=0)を実現することが可能になる。しかも、マウントラバー9cのこじりばね定数Kθを上げることにより、小さな傾斜角θ1にてこじりモーメントFuを小さくすることが可能であるため、レイアウト自由度が増える。
【0034】
この結果、ショックアブソーバ2に加わるサイドフォースF1,F2の低減が実現され、これに伴いショックアブソーバ2のフリクションが低減され、ショックアブソーバ2のストロークがスムーズとなり、オフセットコイルスプリングのみに比べ、高いレイアウト自由度を維持しながら、さらに乗り心地や操縦安定性能を向上させることができる。
【0035】
次に、効果を説明する。
第1実施例のストラット型サスペンション装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0036】
(1)コイルスプリング1と、該コイルスプリング1の内側空間部に内挿されたショックアブソーバ2と、ショックアブソーバ外筒2bに取り付けられたアクスル5と、を有して構成された支柱を車両内方に傾斜する縦方向配置とし、ショックアブソーバ2のピストンロッド2aの上部を、アッパーインシュレータ9を介して車体パネル8に対し弾性支持したストラット型サスペンション装置において、前記アッパーインシュレータ9を、ピストンロッド2aの上部に固定される内筒9aと、該内筒9aの外周側に設けられる外筒9bと、前記内筒9aと外筒9bとのそれぞれに固着されるマウントラバー9cと、を有して構成し、かつ、前記アッパーインシュレータ9の内外筒9a,9bを、車体パネル8への取り付け前の状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに交差する傾斜配置とし、アッパーインシュレータ弾性中心Fの上方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両外方に向き、アッパーインシュレータ弾性中心Fの下方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両内方に向く設定としたため、レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバ2のスムーズなストロークを阻害するサイドフォースF1,F2を効果的に低減することができる。
【0037】
(2)アッパーインシュレータ9の内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23との傾斜角θ1と、マウントラバー9cのこじりばね定数Kθは、車体パネル8に取り付けた状態で、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1 ...(1)
の式が成立する設定としたため、アッパーインシュレータ9に作用する横力Fuのキャンセルを実現することが可能になり、ショックアブソーバ2の高いフリクション低減を達成することができる。
【0038】
(3)アッパーインシュレータ9は、車体パネル8に取り付けた状態で、内外筒9a,9bの軸線22,23とピストンロッド2aのショックアブソーバ軸線10が一致する設定としたため、アッパーインシュレータ9へのショックアブソーバ軸線方向入力Fsに伴うマウントラバー9cのこじり変形による不安定な挙動を抑制することが可能になり、車両の操縦安定性及び乗り心地の向上を図ることができる。
【0039】
(4)コイルスプリング1のスプリング軸線11を、車両外方にスプリング反発力を生じさせるように、ショックアブソーバ軸線10に対し傾けたオフセット配置とした、つまり、オフセットによるアッパーインシュレータ9とオフセットによるコイルスプリング1との併用構造を採用したため、下記の▲1▼〜▲3▼に列挙する効果が得られる。
▲1▼アッパーインシュレータ9のこじり傾斜角θ1またはこじりばね定数Kθを極端に大きくすることなく済むため、サスペンション組み付け作業性に影響を及ぼすことがない。
▲2▼レイアウト(設計)の自由度が向上する。言い換えると、ストラット型サスペンション装置を全車種に適用可能で、エンジンルームやトランクルームやコンテナルーム内のスペース確保とタイヤサイズ要望との両立が可能である。
▲3▼効率良くショックアブソーバ2に加わるサイドフォースF1,F2のキャンセルを行うことができるため、ショックアブソーバ2のフリクションの低減が図られ、操縦安定性能や乗り心地性能の向上を期待できる。特に、微振動時におけるフリクション影響による減衰力不足(スティック・スリップ現象)が解消され、操縦安定性能の向上効果が大きくなる。
【0040】
以上、本発明のストラット型サスペンション装置を第1実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この第1実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0041】
例えば、第1実施例では、オフセットアッパーインシュレータとオフセットコイルスプリングとの併用例を示したが、オフセットアッパーインシュレータのみを適用したものも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のストラット型サスペンション装置を示す正面図である。
【図2】第1実施例のストラット型サスペンション装置のアッパーインシュレータを示す断面図である。
【図3】第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け前の状態を示す図である。
【図4】第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け後の状態を示す図である。
【図5】ストラット型サスペンション装置においてオフセットコイルスプリングによるフリクション低減作用を説明する図である。
【図6】第1実施例のストラット型サスペンション装置におけるジオメトリ諸元の記号及び各ジオメトリをあらわすサスペンション概略図である。
【図7】ストラット型サスペンション装置のショックアブソーバに働く力の関係を示す図である。
【図8】第1実施例のオフセットアッパーインシュレータを有するストラット型サスペンション装置のショックアブソーバに働く力の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 コイルスプリング
2 ショックアブソーバ
2a ピストンロッド
2b ショックアブソーバ外筒
2c ピストン
3 アッパースプリングシート
4 ロアスプリングシート
5 アクスル(アクスル部材)
6 ロアリンク
7 ロードホイール
8 車体パネル
9 アッパーインシュレータ
9a 内筒
9b 外筒
9c マウントラバー(弾性部材)
10 ショックアブソーバ軸線
11 スプリング軸線
12 ストラット軸線
13 ロアリンク軸線
14 タイヤ鉛直線
A ロアリンク6の車体側ピボット
B ロアリンク6のアクスル側ピボット
C ロアリンク軸線13とタイヤ鉛直線14との交点
D スプリング軸線11とタイヤ鉛直線14との交点
E ショックアブソーバ軸線10に垂直でストラットアッパーマウント点Fを通る線とタイヤ鉛直線14との交点
F ストラットアッパーマウント点
G タイヤ中心点
H ピストンロッド2aのガイド点
I ピストン2cの中心点
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストラット型サスペンション装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
ストラット型サスペンション装置は、その構造上、アクスル部材に働く前後方向の力と左右方向の力をショックアブソーバで受け持つため、ショックアブソーバのピストン摺動部に大きなサイドフォースが作用する場合がある。このサイドフォースによりショックアブソーバにフリクション(摺動摩擦抵抗)が生じてスムーズなショックアブソーバストロークが確保出来なくなり、乗り心地や操縦安定性能の低下を招くことになる。
【0003】
このサイドフォースは、例えば、特開平9−86125号公報に記載されているように、コイルスプリングをショックアブソーバとオフセットして配置することにより減少できることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のストラット型サスペンション装置にあっては、コイルスプリングをショックアブソーバに対し大きくオフセット配置することで、サイドフォースのゼロ化を目指すものである。このため、種々の設計上の制約により、コイルスプリングのショックアブソーバに対するオフセット量を十分に取れない場合には、サスペンションのサイドフォースを十分にキャンセルすることができないという問題があった。例えば、限られた車幅寸法で車室内空間を広く確保したい場合、サスペンションが配置されるタイヤハウスの占有空間をなるべく狭く抑えたいという設計要求がある。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバのスムーズなストロークを阻害するサイドフォースを効果的に低減することができるストラット型サスペンション装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、ストラット型サスペンション装置において、アッパーインシュレータを、ピストンロッドの上部に固定される内筒と、該内筒の外周側に設けられる外筒と、前記内筒と外筒とのそれぞれに固着される弾性部材と、を有して構成し、かつ、前記アッパーインシュレータの内外筒を、車体への取り付け前の状態において、内筒の軸線と外筒の軸線とが互いに交差する傾斜配置とし、軸線交差位置の上方では外筒の軸線に対し内筒の軸線が車両外方に向き、軸線交差位置の下方では外筒の軸線に対し内筒の軸線が車両内方に向く設定とした。
【0007】
ここで、「アッパーインシュレータ」は、ショックアブソーバへの入力とコイルスプリングへの入力に対し、入力集中型アッパーインシュレータと入力分散型アッパーインシュレータに分けられるが、本発明については何れの型のアッパーインシュレータにも適用可能である。
【0008】
【発明の効果】
本発明にあっては、車体への取り付け時に、互いに交差する傾斜配置とした内筒の軸線と外筒の軸線とを一致させることにより弾性部材がこじられ、アッパーインシュレータにこじりモーメントが発生する。このこじりモーメントを、アッパーインシュレータにかかる横力を低減する方向、あるいは、零に近づける方向に発生させることで、ショックアブソーバのピストンロッドを案内するガイド部に働くサイドフォースを低減することが可能である。
【0009】
よって、アッパーインシュレータにこじりモーメントを発生させるだけで、レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバのスムーズなストロークを阻害するサイドフォースを効果的に低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のストラット型サスペンション装置を実現する実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例のストラット型サスペンション装置を示す正面図である。図1において、1はコイルスプリング、2はショックアブソーバ、2aはピストンロッド、2bはショックアブソーバ外筒、2cはピストン、3はアッパースプリングシート、4はロアスプリングシート、5はアクスル(アクスル部材)、6はロアリンク、7はロードホイール、8は車体パネル、9はアッパーインシュレータである。
【0012】
また、図1において、10はショックアブソーバ軸線、11はスプリング軸線、12はストラット軸線、13はロアリンク軸線、14はタイヤ鉛直線である。さらに、Aはロアリンク6の車体側ピボット、Bはロアリンク6のアクスル側ピボット、Cはロアリンク軸線13とタイヤ鉛直線14との交点、Dはスプリング軸線11とタイヤ鉛直線14との交点、Eはショックアブソーバ軸線10に垂直でストラットアッパーマウント点Fを通る線とタイヤ鉛直線14との交点、Fはストラットアッパーマウント点、Gはタイヤ中心点、Hはピストンロッド2aのガイド点、Iはピストン2cの中心点である。
【0013】
第1実施例のストラット型サスペンション装置は、コイルスプリング1と、該コイルスプリング1の内側空間部に内挿されたショックアブソーバ2と、ショックアブソーバ外筒2bに取り付けられたアクスル5と、を有して構成された支柱(ストラットという)を、その上端が車両内方に少し傾斜する縦方向配置としている。
【0014】
そして、支柱の上端部(=ショックアブソーバ2を構成するピストンロッド2aの上端部)を、アッパーインシュレータ9を介して車体パネル8に弾性支持し(ストラットアッパーマウント点F)、支柱の下端部(アクスル5の下方に延びる腕部の下端部)をロアリンク6の外端位置にピボット(アクスル側ピボットB)することにより構成されている。
【0015】
前記コイルスプリング1は、そのスプリング軸線11を、車両外方にスプリング反発力を生じさせるように、ショックアブソーバ軸線10に対し傾けたオフセット配置としている。
【0016】
図2は第1実施例のストラット型サスペンション装置のアッパーインシュレータを示す断面図、図3は第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け前の状態を示す図、図4は第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け後の状態を示す図である。
【0017】
前記アッパーインシュレータ9は、ピストンロッド2aの上部にナット20により固定される内筒9aと、該内筒9aの外周側に設けられる外筒9bと、前記内筒9aと外筒9bとのそれぞれに固着されるマウントラバー9c(弾性部材)と、を有して構成される。前記内筒9aには、バウンド時やリバウンド時に外筒9bとの接触干渉を防ぐためのストッパラバー9d,9eが固着されている。前記外筒9bは、車体パネル8に対しボルトナット21により固定されている。
【0018】
そして、前記アッパーインシュレータ9の内筒9aと外筒9bは、図3に示すように、車体パネル8への取り付け前の状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに交差する傾斜配置とし、両軸線22,23が交差するアッパーインシュレータ弾性中心点(=ストラットアッパーマウント点F)の上方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両外方に向き、ストラットアッパーマウント点Fの下方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両内方に向く設定としている。
【0019】
前記アッパーインシュレータ9の内筒9aと外筒9bは、図4に示すように、車体パネル8への取り付け状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに一致するようにし、かつ、内外筒9a,9bの軸線22,23とピストンロッド2aのショックアブソーバ軸線10が一致する設定とされる。
【0020】
すなわち、ショックアブソーバ2のピストンロッド2aに作用する曲げモーメントを相殺するために必要なモーメントを、内筒9aの軸線22が傾斜したアッパーインシュレータ9のこじりを利用して得るようにしたものである。
【0021】
前記アッパーインシュレータ9の内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23との傾斜角θ1と、マウントラバー9cのこじりばね定数Kθは、後で詳しく述べるように、車体パネル8に取り付けた状態で、下記の釣り合い式、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1 ...(1)
ただし、F1:ショックアブソーバ2のガイド部(H)に働くサイドフォース
L1:アッパーインシュレータ弾性中心〜ガイド部の距離(F〜H)
L2:アッパーインシュレータ弾性中心〜ピストンの距離(F〜I)
が成立する設定とされている。
【0022】
次に、作用を説明する。
【0023】
[オフセットコイルスプリングによるフリクション低減作用]
第1実施例のようなストラット型サスペンションの場合、静止状態の上下方向の荷重の釣り合いをベクトルで示せば、図5(イ)に示すように、上下荷重FzをFsとF1とに分け、Fsをコイルスプリングの反力が支えるとし、F1の着力点がタイヤ鉛直線とストラット軸線との交点O’であることから、ストラット上端のストラットアッパーマウント点に生じる横力F2は、
F2=F1・H/L ...(2)
となり、この横力F2がショックアブソーバのピストンロッドを曲げる力となる。このため、ショックアブソーバにフリクション(摺動摩擦抵抗)が生じてスムーズなショックアブソーバストロークが確保出来なくなり、乗り心地や操縦安定性能の低下を招くことになる。
【0024】
これに対し、図5(ロ)に示すように、タイヤ鉛直線とロアリンク延長線との交点をP’とし、この交点P’とストラットアッパーマウント点Qとを結ぶ線に一致するように、コイルスプリングのスプリング軸線を、ショックアブソーバ軸線に対し傾けたオフセット配置とした場合には、上下荷重Fzの分力Fs,F1による曲げモーメントの発生が無く、ストラットアッパーマウント点Qはコイルスプリングの軸方向荷重Fsのみを受けることになる。
【0025】
すなわち、コイルスプリングをオフセット配置した場合には、車両外方にスプリング反発力を生じ、この反発力がピストンロッドを曲げる力を打ち消す力となり、ショックアブソーバのフリクションが低減される。
【0026】
この結果、図5(ロ)に示すオフセット配置のコイルスプリングの場合、図5(イ)の場合に比べ、ショックアブソーバのストロークがスムーズとなり、乗り心地や操縦安定性能を向上させることができる。
【0027】
[オフセットアッパーインシュレータによるフリクション低減作用]
まず、第1実施例のストラット型サスペンションの全体に働く外力は、図6に示すように、
・Fg:接地荷重
・FL:リンク軸力
・Fs:スプリング力の車体からの反力
・Fu:ストラットアッパーマウント点にかかる横力
以上の4つの力である。
【0028】
ロアリンク6のアクスル側ピボットB点まわりのモーメントの釣り合いを考えると(簡易計算)、
Fg・Lw−Fu・L=0 ...(3)
となり、(3)式により、ストラットアッパーマウント点にかかる横力Fuは、
Fu=Fg・(Lw/L) ...(4)
となる。
【0029】
次に、図7を用いて第1実施例にて提案するオフセットアッパーインシュレータを用いない場合のピストンロッドの釣り合いを考える。
ピストンロッドには、サイドフォースF1,F2,Fuの3つの力が働いており、それぞれのサイドフォースF1,F2,Fuは、ピストンロッドに垂直に働いている。これらのモーメントの釣り合いにより、
Fu+F2=F1 ...(5)
L2・F2−L1・F1=0 ...(6)
となる。(5),(6)式により、
F1=L2・Fu/(L2−L1) ...(7)
F2=L1・Fu/(L2−L1) ...(8)
となる。(7),(8)式により、F1=F2=0となるためには、Fu=0となればよい。ストラットアッパーマウント点にかかる横力Fuは、
Fu=(b/a)×(sinθs/cosθd)
×(1/{cosθs−(b/a)sinθs・tanθd−(1+b/a)sinθs・tanφ})・Fg ...(9)
となる。この(9)式において、横力Fu=0とするためには、b=0とならなければならない。
【0030】
しかし、オフセットコイルスプリングでは、レイアウト上の制約があるため、図5(ロ)に示すように、横力Fu=0とすることは難しい。
【0031】
これに対し、オフセットコイルスプリングと、第1実施例にて提案する内外筒9a,9bを傾斜配置(オフセット配置)したアッパーインシュレータ9と、の併用により効率良く横力Fu=0を実現することが可能である。
【0032】
すなわち、ピストンロッド2aには、図8に示すように、サイドフォースF1,F2,Fuの3つの力とこじりモーメントTuが働いている。これらのモーメントの釣り合いにより、
Fu+F2=F1 ...(10)
L2・F2−L1・F1−Tu=0 ...(11)
となる。(10),(11)式により、横力Fuについて解くと、
Fu={F1(L2−L1)−Tu}/L2 ...(12)
ただし、F1:ショックアブソーバ2のガイド部(H)に働くサイドフォース
F2:ショックアブソーバ2のピストン部(I)に働くサイドフォース
L1:アッパーインシュレータ弾性中心〜ガイド部の距離(F〜H)
L2:アッパーインシュレータ弾性中心〜ピストンの距離(F〜I)
となる。この(12)式で、横力Fu=0にするためには、
F1(L2−L1)=Tu ...(13)
とすればよい。ここで、アッパーインシュレータ9に働くこじりモーメントTuは、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23との傾斜角をθ1とし、マウントラバー9cのこじりばね定数をKθとしたとき、
Tu=Kθ・θ1 ...(14)
であらわされる。この(13)式と(14)式により、上記(1)式、つまり、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1 ...(1)
が得られる。
【0033】
よって、内外筒9a,9bを傾斜配置(オフセット配置)したアッパーインシュレータ9を車体パネル8に取り付けた状態で、上記の釣り合い式(1)が成立する設定とすれば、ショックアブソーバ2に対し互いに逆向きに働く2つのモーメントが等価なものとなり、アッパーインシュレータ9に作用する横力Fuのキャンセル(Fu=0)を実現することが可能になる。しかも、マウントラバー9cのこじりばね定数Kθを上げることにより、小さな傾斜角θ1にてこじりモーメントFuを小さくすることが可能であるため、レイアウト自由度が増える。
【0034】
この結果、ショックアブソーバ2に加わるサイドフォースF1,F2の低減が実現され、これに伴いショックアブソーバ2のフリクションが低減され、ショックアブソーバ2のストロークがスムーズとなり、オフセットコイルスプリングのみに比べ、高いレイアウト自由度を維持しながら、さらに乗り心地や操縦安定性能を向上させることができる。
【0035】
次に、効果を説明する。
第1実施例のストラット型サスペンション装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0036】
(1)コイルスプリング1と、該コイルスプリング1の内側空間部に内挿されたショックアブソーバ2と、ショックアブソーバ外筒2bに取り付けられたアクスル5と、を有して構成された支柱を車両内方に傾斜する縦方向配置とし、ショックアブソーバ2のピストンロッド2aの上部を、アッパーインシュレータ9を介して車体パネル8に対し弾性支持したストラット型サスペンション装置において、前記アッパーインシュレータ9を、ピストンロッド2aの上部に固定される内筒9aと、該内筒9aの外周側に設けられる外筒9bと、前記内筒9aと外筒9bとのそれぞれに固着されるマウントラバー9cと、を有して構成し、かつ、前記アッパーインシュレータ9の内外筒9a,9bを、車体パネル8への取り付け前の状態において、内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23とが互いに交差する傾斜配置とし、アッパーインシュレータ弾性中心Fの上方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両外方に向き、アッパーインシュレータ弾性中心Fの下方では外筒9bの軸線23に対し内筒9aの軸線22が車両内方に向く設定としたため、レイアウト上の制約を与えることのないコンパクトな構成により、ショックアブソーバ2のスムーズなストロークを阻害するサイドフォースF1,F2を効果的に低減することができる。
【0037】
(2)アッパーインシュレータ9の内筒9aの軸線22と外筒9bの軸線23との傾斜角θ1と、マウントラバー9cのこじりばね定数Kθは、車体パネル8に取り付けた状態で、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1 ...(1)
の式が成立する設定としたため、アッパーインシュレータ9に作用する横力Fuのキャンセルを実現することが可能になり、ショックアブソーバ2の高いフリクション低減を達成することができる。
【0038】
(3)アッパーインシュレータ9は、車体パネル8に取り付けた状態で、内外筒9a,9bの軸線22,23とピストンロッド2aのショックアブソーバ軸線10が一致する設定としたため、アッパーインシュレータ9へのショックアブソーバ軸線方向入力Fsに伴うマウントラバー9cのこじり変形による不安定な挙動を抑制することが可能になり、車両の操縦安定性及び乗り心地の向上を図ることができる。
【0039】
(4)コイルスプリング1のスプリング軸線11を、車両外方にスプリング反発力を生じさせるように、ショックアブソーバ軸線10に対し傾けたオフセット配置とした、つまり、オフセットによるアッパーインシュレータ9とオフセットによるコイルスプリング1との併用構造を採用したため、下記の▲1▼〜▲3▼に列挙する効果が得られる。
▲1▼アッパーインシュレータ9のこじり傾斜角θ1またはこじりばね定数Kθを極端に大きくすることなく済むため、サスペンション組み付け作業性に影響を及ぼすことがない。
▲2▼レイアウト(設計)の自由度が向上する。言い換えると、ストラット型サスペンション装置を全車種に適用可能で、エンジンルームやトランクルームやコンテナルーム内のスペース確保とタイヤサイズ要望との両立が可能である。
▲3▼効率良くショックアブソーバ2に加わるサイドフォースF1,F2のキャンセルを行うことができるため、ショックアブソーバ2のフリクションの低減が図られ、操縦安定性能や乗り心地性能の向上を期待できる。特に、微振動時におけるフリクション影響による減衰力不足(スティック・スリップ現象)が解消され、操縦安定性能の向上効果が大きくなる。
【0040】
以上、本発明のストラット型サスペンション装置を第1実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この第1実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0041】
例えば、第1実施例では、オフセットアッパーインシュレータとオフセットコイルスプリングとの併用例を示したが、オフセットアッパーインシュレータのみを適用したものも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のストラット型サスペンション装置を示す正面図である。
【図2】第1実施例のストラット型サスペンション装置のアッパーインシュレータを示す断面図である。
【図3】第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け前の状態を示す図である。
【図4】第1実施例装置のアッパーインシュレータの車体への取り付け後の状態を示す図である。
【図5】ストラット型サスペンション装置においてオフセットコイルスプリングによるフリクション低減作用を説明する図である。
【図6】第1実施例のストラット型サスペンション装置におけるジオメトリ諸元の記号及び各ジオメトリをあらわすサスペンション概略図である。
【図7】ストラット型サスペンション装置のショックアブソーバに働く力の関係を示す図である。
【図8】第1実施例のオフセットアッパーインシュレータを有するストラット型サスペンション装置のショックアブソーバに働く力の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 コイルスプリング
2 ショックアブソーバ
2a ピストンロッド
2b ショックアブソーバ外筒
2c ピストン
3 アッパースプリングシート
4 ロアスプリングシート
5 アクスル(アクスル部材)
6 ロアリンク
7 ロードホイール
8 車体パネル
9 アッパーインシュレータ
9a 内筒
9b 外筒
9c マウントラバー(弾性部材)
10 ショックアブソーバ軸線
11 スプリング軸線
12 ストラット軸線
13 ロアリンク軸線
14 タイヤ鉛直線
A ロアリンク6の車体側ピボット
B ロアリンク6のアクスル側ピボット
C ロアリンク軸線13とタイヤ鉛直線14との交点
D スプリング軸線11とタイヤ鉛直線14との交点
E ショックアブソーバ軸線10に垂直でストラットアッパーマウント点Fを通る線とタイヤ鉛直線14との交点
F ストラットアッパーマウント点
G タイヤ中心点
H ピストンロッド2aのガイド点
I ピストン2cの中心点
Claims (4)
- コイルスプリングと、該コイルスプリングの内側空間部に内挿されたショックアブソーバと、ショックアブソーバ外筒に取り付けられたアクスル部材と、を有して構成された支柱を縦方向配置とし、前記ショックアブソーバのピストンロッドの上部を、アッパーインシュレータを介して車体に対し弾性支持したストラット型サスペンション装置において、
前記アッパーインシュレータを、ピストンロッドの上部に固定される内筒と、該内筒の外周側に設けられる外筒と、前記内筒と外筒とのそれぞれに固着される弾性部材と、を有して構成し、
かつ、前記アッパーインシュレータの内外筒を、車体への取り付け前の状態において、内筒の軸線と外筒の軸線とが互いに交差する傾斜配置とし、軸線交差位置の上方では外筒の軸線に対し内筒の軸線が車両外方に向き、軸線交差位置の下方では外筒の軸線に対し内筒の軸線が車両内方に向く設定としたことを特徴とするストラット型サスペンション装置。 - 請求項1に記載されたストラット型サスペンション装置において、
前記アッパーインシュレータの内筒の軸線と外筒の軸線との傾斜角θ1と、弾性部材のこじりばね定数Kθは、車体に取り付けた状態で、下記の釣り合い式、
F1(L2−L1)=Kθ・θ1
ただし、F1:ショックアブソーバのガイド部に働くサイドフォース
L1:アッパーインシュレータ弾性中心〜ガイド部の距離
L2:アッパーインシュレータ弾性中心〜ピストンの距離
が成立する設定としたことを特徴とするストラット型サスペンション装置。 - 請求項1または2の何れかに記載されたストラット型サスペンション装置において、
前記アッパーインシュレータは、車体に取り付けた状態で、内外筒の軸線とピストンロッドの軸線が一致する設定としたことを特徴とするストラット型サスペンション装置。 - 請求項1ないし3の何れかに記載されたストラット型サスペンション装置において、
前記コイルスプリングのスプリング軸線を、車両外方にスプリング反発力を生じさせるように、ショックアブソーバ軸線に対し傾けたオフセット配置としたことを特徴とするストラット型サスペンション装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100778079B1 (ko) | 2005-08-08 | 2007-11-21 | 현대모비스 주식회사 | 서스펜션의 스트러트 |
JP2013001180A (ja) * | 2011-06-14 | 2013-01-07 | Toyota Motor Corp | 車両用懸架装置 |
JP2016186332A (ja) * | 2015-03-27 | 2016-10-27 | 富士重工業株式会社 | ストラット式サスペンション装置 |
-
2002
- 2002-06-05 JP JP2002164574A patent/JP2004009842A/ja active Pending
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