JP2004009238A - ソーワイヤ製造方法及びソーワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】固定砥粒式ソーワイヤの製造方法に関するもので、鋼線に対する砥粒の固着力が高く、かつ、製造工程での線材の線速を高めて、その生産性を向上できる新たな製造工程を工夫すること。
【解決手段】鋼線10を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒2aを鋼線表面に付着させ、砥粒2aが付着している鋼線表面に銀ロウを塗布し、銀ロウを塗布した鋼線10を銀ロウ軟化温度に加熱し、その後冷却し、冷却後、表面を研削してCBN砥粒10bの一部を突出させるソーワイヤ製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】鋼線10を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒2aを鋼線表面に付着させ、砥粒2aが付着している鋼線表面に銀ロウを塗布し、銀ロウを塗布した鋼線10を銀ロウ軟化温度に加熱し、その後冷却し、冷却後、表面を研削してCBN砥粒10bの一部を突出させるソーワイヤ製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、半導体、シリコンウエハ、水晶、磁器材料などで代表される電気部品材料などの高価な素材を切断するのに用いられるソーワイヤの製造方法及びソーワイヤに関するものであり、その生産性を改良して生産コストを低減することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年細い金属線の表面にダイヤモンドなどの微細な砥粒を固着した固定砥粒式ソーワイヤが使用されはじめている。この従来の固定砥粒式ソーワイヤには、例えば金属線を伸線加工して細径化し、これにレジンボンド(熱硬化性樹脂)を積層して、上記レジンボンド層によって、その表面に密にダイヤモンド砥粒やCBN砥粒、硬質微細繊維などの硬質微片(以下これを砥粒という)を固着したもの、或いは、メッキ層に砥粒を埋設して固着したものがある。前者の固定砥粒式ソーワイヤの製造方法は砥粒を混入させたレジンボンドの中に鋼線を通過させることでその表面に砥粒を混入したレジンボンドを付着させ、これを冷却硬化させる方法であり、後者の固定砥粒式ソーワイヤの製造方法はメッキ液(Niメッキ液等)に砥粒を浮遊させておいてメッキ(電気メッキ)処理時にメッキ層に砥粒が付着するようにする方法である。
【0003】
前者の場合は混入した砥粒のレジンボンド中での分布が不均一であると、ソーワイヤ表面に付着した砥粒分布が不均一になり、また、後者の場合はメッキ液中の砥粒分布が不均一であると付着した砥粒分布が不均一になることが避けられず、さらに前者の場合は砥粒の金属線表面への固着力が必ずしも十分でないために、使用中に砥粒が脱落してその分布が粗になり、その結果ソーワイヤの切削性能が低下するという問題がある。
【0004】
後者の場合は、砥粒の金属線表面への固着力は十分で、したがって、長時間に亘って切削性能が保持されるが、メッキ液に浮遊させた砥粒を十分な固着力で固着、保持するために必要な厚さにメッキ層を形成しなければならず、メッキ液中の砥粒を十分な固着力で付着するためには細径の金属線をメッキ液中を微速で通過させなければならないから、メッキ液槽の通過時間が長くなるので、メッキ処理を施すための線材の線速が遅く、したがって、ソーワイヤの生産性が著しく低く、その生産コストが高いという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、従来のソーワイヤの製造方法のいずれとも根本的に異なり、砥粒に対する固着力が高くかつ製造工程での線材の線速を高めて、その生産性を向上できる、新たな製造方法を工夫することをその課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【解決手段1】
上記課題解決のための第1の製造方法は、次の(イ)〜(ハ)によって構成されるものである。
(イ)鋼線を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を鋼線表面に付着させること、
(ロ)砥粒が付着している鋼線表面に銀ロウを塗布し、銀ロウを塗布した鋼線を銀ロウ軟化温度に加熱し、その後冷却すること、
(ハ)冷却後、表面を研削してCBN砥粒の一部を突出させること。
なお、因みにいえば、銀ロウは銅合金、金、銀、鉄などの接着に用いられる硬ロウの一種であって、Cu・Zn・Ag系合金を主体とするもので、融点が700℃前後であり、極めて強力な接着力を発揮するものとして従来周知慣用のロウ付け材である。
【0007】
【作用】
所定の線径に伸線された鋼線を電磁コイルの中を通すことで鋼線は磁化される。他方、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒それ自体は磁性がないが、鉄メッキを施すことで磁性が付与されるので、磁化した鋼線に磁力で吸着される。なお、ソーワイヤにおける砥粒分布密度は、磁化された鋼線の磁力の加減によって調整される。
砥粒が付着している鋼線表面に銀ロウを塗布すると、鋼線表面に付着(磁気吸着)した砥粒が銀ロウ塗布層に埋もれた状態になる。この状態の鋼線を銀ロウ軟化温度に加熱して、銀ロウを一旦溶融させてから冷却すると、銀ロウが鋼線表面に融着し、砥粒の鉄メッキ層と融着するので、砥粒が銀ロウ層を介して鋼線表面にしっかりと固定、保持される。
冷却硬化した銀ロウ層の表面をショットピーニング加工などで研削加工して、CBN砥粒の一部を露出させることによって、表面に多数のCBN砥粒が突出した固定砥粒式ソーワイヤになる。
【0008】
そして鋼線の磁化、鉄メッキされたCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒の鋼線表面への付着は、極めて高速でなされるから、要件(イ)の工程における線速度は高速である。
また、鋼線への銀ロウの塗布は、浸漬、吹き付けなどの種々の塗布法によることができるので、極めて短時間になされ、また、塗布した銀ロウの加熱溶融は加熱炉を通過させるなどによって短時間でなされるから、要件(ロ)の工程における線速度は高速である。
さらに、銀ロウ層の表面研削加工も高速でなされる。
以上のように要件(イ)(ロ)(ハ)の工程はいずれも高速で行われるから、この方法によるソーワイヤの製造は高速であり、また、各工程は全て単純な加工工程であって低コストで行われるから、その製造コストは従来のものに比して極めて低廉である。
【0009】
【実施態様1】
実施態様1は、解決手段1の要件(イ)の鋼線径を0.05〜0.3mmとし、砥粒径を10〜100μmとすることである。
【0010】
【実施態様2】
実施態様2は、解決手段1の要件(イ)の鋼線の断面形状が円形状、楕円形状、長方形状、またはトラック形状であることである。
【0011】
【実施態様3】
実施態様3は、解決手段1の要件(ロ)の工程によって銀ロウ層を加熱軟化させたものを整径ダイスを通して、その銀ロウ層の表面を平滑化し、外径を均一化することである。
【作用】
銀ロウを塗布したときの銀ロウ層の表面は必ずしも平滑でなく、外径も均一ではなく、このままで表面加工すると、線径が均一でなく、砥粒の突出高さが均一でない固定砥粒式ソーワイヤになるが、銀ロウ層を加熱軟化させた状態で整径ダイスを通して、銀ロウ層の表面を平滑化し、外径を均一化することで、最終仕上がりにおける線径、砥粒突出高さを均一にすることができる。
【0012】
【実施態様4】
実施態様4は、解決手段1の要件(ハ)による銀ロウ層研削加工後の銀ロウ層の平均厚さを上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍にすることである。
【作用】
これによって、平均的にみれば、個々の砥粒は、その1/2〜9/10が銀ロウ層に埋まった状態になり、残りの部分が露出することになるので、砥粒によるソーワイヤの高い切削性能を長期間確保することができるとともに、砥粒の脱落を確実に防止することができる。
【0013】
【実施態様5】
実施態様5は、解決手段1の要件(ロ)における銀ロウ層の加熱温度を600〜750℃にすることである。
【作用】
加熱温度が低いと銀ロウ層の鋼線表面及び砥粒の鉄メッキ層との接着力が低下し、加熱温度が高すぎると銀ロウ層が流動、変形してその厚さ、外形の均一性が保たれなくなる。
加熱温度を上記の範囲に選択することによって、砥粒の銀ロウ層による十分な固着力を確保しつつ、固定砥粒式ソーワイヤの外形の均一性を確保することができる。
【0014】
【実施態様6】
実施態様6は、要件(ハ)の、表面研削加工法が、ショットピーニング法あるいは、エッチング法であることである。
【0015】
【解決手段2】
上記課題解決のための第2の製造方法は、次の(イ)〜(ハ)によって構成されるものである。
(イ)鋼線を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を鋼線表面に付着させること、
(ロ)砥粒が付着している鋼線表面にメッキを施すこと、
(ハ)上記メッキによる金属メッキ層表面を研削してCBN砥粒を突出させること。
【0016】
【作用】
所定の線径に伸線された鋼線を電磁コイルの中を通すことで鋼線は磁化される。他方、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒それ自体は磁性がないが、鉄メッキを施すことで磁性が付与されるので、磁化した鋼線に磁力で吸着される。なお、ソーワイヤにおける砥粒分布密度は、磁化された鋼線の磁力の加減によって調整される。
砥粒が付着している鋼線表面にメッキを施すと、鋼線表面に付着した砥粒が金属メッキ層に埋もれた状態になり、砥粒が金属メッキ層を介して鋼線表面にしっかりと固定、保持される。
上記メッキ層の表面をショットピーニング加工などで研削加工して、CBN砥粒の一部を露出させることによって、表面に多数のCBN砥粒が突出した固定砥粒式ソーワイヤになる。
【0017】
そして鋼線の磁化、鉄メッキされたCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒の前記鋼線表面への付着(磁気吸着)は、極めて高速でなされるから、要件(イ)の工程における線速度は高速である。
また、鋼線へのメッキ処理は極めて短時間になされるから、要件(ロ)の工程における線速度は高速である。
さらに、金属メッキ層の表面研削加工も高速でなされる。
以上のように要件(イ)(ロ)(ハ)の工程はいずれも高速で行われるから、この方法によるソーワイヤの製造は高速であり、また、各工程は全て単純な加工工程であって低コストで行われるから、その製造コストは従来のものに比して極めて低廉である。なお、メッキ方法は溶融メッキでも電気メッキでもよい。
【0018】
【実施態様1】
解決手段2の要件(イ)における鋼線の線径、断面形状についての実施態様は解決手段1の実施態様1、実施態様2と同じである。
【0019】
【実施態様2】
実施態様2は、要件(ロ)のメッキがニッケルメッキ、亜鉛メッキ、銅メッキ、又はアルミニウムメッキであるものである。
【0020】
【実施態様3】
実施態様3は、解決手段2における要件(ロ)によるメッキを施したものを整径ダイスを通して、金属メッキ層の外径を均一化することである。
【作用】
メッキによる金属メッキ層の外径は必ずしも均一ではなく、このままで表面加工すると、線径が均一でなく、砥粒の突出高さが均一でない固定砥粒式ソーワイヤになるが、メッキを施したあと、これをダイスを通してその外径を均一化することで、最終仕上がりにおける線径、砥粒突出高さを均一にすることができる。
【0021】
【実施態様4】
実施態様4は、解決手段2の要件(ハ)による金属メッキ層研削加工後の金属メッキ層の平均厚さを上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍にすることである。
【作用】
これによって、平均的にみれば、個々の砥粒は、その1/2〜9/10がメッキ層に埋まった状態になり、残りの部分が露出することになるので、砥粒によるソーワイヤの高い切削性能を長期間確保することができるとともに、砥粒の脱落を確実に防止することができる。
【0022】
【実施例1】
次いで、図面1、図2を参照して、解決手段1の実施例1を説明する。
ソーワイヤの仕様は使用目的によって、その線径が0.05〜0.30mm、砥粒の平均粒径が10〜100μmである等、様々であるが、この実施例は、0.20mmの鋼線、平均粒径 30μmの立方晶窒化ホウ素(CBN)の砥粒2aによるものである。そして、この砥粒2aには鉄メッキを施してある。
線径0.20mmの銅メッキを施した鋼線10を電磁コイル1、CBNパウダー槽2、銀ロウ塗布槽3、加熱炉4、整径ダイス5、冷却装置6に順次送入通過させ、さらに、ショットピーニング法による研削装置7を通過させる。これによって鋼線10が電磁コイル1で磁化され、CBNパウダー槽2において鋼線10の表面に砥粒2aが磁気吸着され、銀ロウ塗布槽3で銀ロウが塗布される。そして、加熱炉4で銀ロウ塗布層10aがほぼ700℃に加熱されて溶融され、その直後に整径ダイス5を通過し、これによって銀ロウ塗布層10aの外径が整径され、冷却装置6で冷却硬化される。そして研削装置7を通過する間に、冷却硬化した銀ロウ塗布層の表層部が研削されて、砥粒10bの一部が露出される。これによって砥粒分布がほぼ均等で、線径が均一なソーワイヤ11になる。
【0023】
この製造方法における鋼線10の加熱炉4を出るときの上記銀ロウ塗布層の温度が700℃(制御範囲± 5℃)になるように、加熱炉4内の温度がコントロールされている。加熱炉4による加熱方法としては通常の電気炉による加熱でもよく、高周波誘導加熱によることもできる。
平均粒径 30μmの砥粒2aがCBNパウダー槽2に堆積されていて、そのほぼ中間位置を鋼線10が通過するようにしている。このCBNパウダー槽2の通過長さLは線速度、砥粒粒径等に関係するので一概には決められないが、要するに鋼線表面に均一にかつ十分に砥粒2aが磁力吸着されるように調整すればよい。
【0024】
CBNパウダー槽2に空気を吹き込んで砥粒2a(CBNパウダー)を浮遊させ、浮遊層の中を磁化された鋼線10を通過させるようにすることもできる。この場合、CBNパウダー槽2のCBNパウダー量、吹き込まれる風速、風量を加減することで、CBNパウダーの浮遊密度が調整され、浮遊密度を調整することによって、鋼線10表面へのCBNパウダー(砥粒)の付着密度が調整される。
【0025】
加熱炉4で銀ロウ塗布層10aが加熱軟化した状態で整径ダイス5を通過させてその表面を平滑化し、外径を均一化する。整径ダイス5は、要するに、銀ロウ塗布層で被覆した鋼線10を通過させることでその外面を均等に加圧して銀ロウ塗布層10aの表面を均す作用を奏するものであればよい。この例は、入り口が大径で出口が小径の円錐ダイス孔を備えているものである。
鋼線10の断面形状は円形、楕円形、トラック形、長方形など様々な形状のものがある。例えば楕円形の場合は、加圧手段の加圧面(例えば整径ダイス5のダイス孔の内面)の形状を楕円形状にすればよい。
【0026】
鋼線10の銀ロウ塗布層表面温度は、冷却装置(空冷装置)6の出口でほぼ700℃に冷却されており、ショットピーニングによる研削装置7で銀ロウ塗布層を研削する。
銀ロウ塗布層10aの研削法として、ショットピーニング法、エッチング法等を採用できるが、ショットピーニングによる場合は、研削能力が高く、実施の形態として最も望ましい。
【0027】
【実施例2】
次いで、解決手段2の実施例を図3、図4を参照して説明する。
この実施例2は、実施例1と同様に、0.20mmの鋼線、平均粒径 30μmの立方晶窒化ホウ素(CBN)の砥粒2aによるものである。そして、この砥粒2aには鉄メッキを施してある。
線径0.20mmの銅メッキ層で被覆した鋼線10を電磁コイル1、CBNパウダー槽2、ニッケルメッキ槽13、整径ダイス5に順次送入通過させ、さらに、ショットピーニング法による研削装置7を通過させる。これによって鋼線10が電磁コイル1で磁化され、CBNパウダー槽2において鋼線10の表面に砥粒2aが磁気吸着され、ニッケルメッキ槽13で溶融ニッケルメッキが施される。その直後に整径ダイス5を通過させ、これによってニッケルメッキ層10cの外径を整径する。そして研削装置7を通過する間に、ニッケルメッキ層10cの表層部が研削されて、砥粒10bの一部が露出される。これによって砥粒分布がほぼ均等で、線径が均一なソーワイヤ14になる。
【0028】
この製造方法における鋼線10は平均粒径 30μmの砥粒2a(CBNパウダー)が堆積されているCBNパウダー槽2のほぼ中間位置を通過するようにしている。このCBNパウダー槽2の通過長さLは線速度、砥粒粒径等に関係するので一概には決められないが、要するに鋼線表面に均一にかつ十分に砥粒が磁力吸着されるように調整すればよい。
【0029】
CBNパウダー槽2に気体を吹き込んで砥粒2a(CBNパウダー)を浮遊させ、浮遊層の中を磁化された鋼線10を通過させるようにすることもできる。この場合、CBNパウダー槽2のCBNパウダー量、吹き込まれる風速、風量を加減することで、CBNパウダーの浮遊密度が調整され、浮遊密度を調整することによって、鋼線10表面への砥粒2aの付着密度が調整される。
【0030】
ニッケルメッキ層10cで被覆された鋼線10を整径ダイス5を通過させてその表面を平滑化し、外径を均一化する。整径ダイス5は、要するに、ニッケルメッキ層10cで被覆した鋼線10を通過させることでその外面を均等に加圧してニッケルメッキ層10cの表面を均す作用を奏するものであればよい。この例は、入り口が大径で出口が小径の円錐ダイス孔を備えているものである。
鋼線10の断面形状は円形、楕円形、トラック形、長方形など様々な形状のものがある。例えば楕円形の場合は、加圧手段の加圧面(例えば整径ダイス5のダイス孔の内面)の形状を楕円形状にすればよい。
【0031】
整径ダイス5でその表面、外径を整えられた鋼線10のニッケルメッキ層10cをショットピーニングによる研削装置7で研削する。この研削法として、ショットピーニング方法、エッチング等を採用できるが、ショットピーニングによる場合は、研削能力が高く、実施形態として最も望ましい。
【0032】
【発明の効果】
以上のとおり、この第1番目の発明は、適宜の方法で製造した細径の鋼線を磁化し、鉄メッキしたCBN砥粒を鋼線表面に磁気吸着させ、その後、銀ロウを塗布し、銀ロウ塗布層を加熱溶融させ、冷却することによって銀ロウ被覆層を介して上記砥粒を鋼線に固着させ、その後、銀ロウ被覆層の表層を研削して、砥粒の一部を露出させることによって、銀ロウの固着力を利用して砥粒を鋼線に固着、保持させるものであるから、ソーワイヤの製造方法が簡単になり、また、ソーワイヤの製造工程での線速を高速にして生産性を向上させることができるので、ソーワイヤの製造コストを低下させることができる。
また、この発明の製造方法によるソーワイヤにおいては、砥粒が硬化した銀ロウにその一部が埋め込まれた状態で固着、保持されるので、砥粒に対する保持力が強く、砥粒の脱落がなく、長期にわたって優れた切削性能が保持される。
【0033】
第2番目の発明は、金属メッキ層を介して上記砥粒を鋼線に固着させ、その後、金属メッキ層の表層を研削して、砥粒の一部を露出させることによって、金属メッキ層の固着力を利用して砥粒を鋼線に固着、保持させるものであるからソーワイヤの製造方法が簡単になり、また、ソーワイヤの製造工程での線速を高速にして生産性を向上させることができるので、ソーワイヤの製造コストを低下させることができる。
また、この発明の製造方法によるソーワイヤにおいては、砥粒が硬化した金属メッキ層にその一部が埋め込まれた状態で固着、保持されるので、砥粒に対する保持力が強く、砥粒の脱落がなく、長期にわたって優れた切削性能が保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の模式図である。
【図2】図1のX−X断面の拡大図である。
【図3】実施例2の模式図である。
【図4】図2のX−X断面の拡大図である。
【符号の説明】
1・・・電磁コイル
2・・・CBNパウダー槽(砥粒槽)
2a・・・CBNパウダー(砥粒)
3・・・銀ロウ槽(銀ロウ塗布槽)
4・・・加熱炉
5・・・整径ダイス
6・・・冷却装置
7・・・研削装置
10・・・鋼線
10a・・・銀ロウ塗布層
10b・・・砥粒
10c・・・ニッケルメッキ層
11,14・・・ソーワイヤ
13・・・ニッケルメッキ槽
【産業上の利用分野】
この発明は、半導体、シリコンウエハ、水晶、磁器材料などで代表される電気部品材料などの高価な素材を切断するのに用いられるソーワイヤの製造方法及びソーワイヤに関するものであり、その生産性を改良して生産コストを低減することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年細い金属線の表面にダイヤモンドなどの微細な砥粒を固着した固定砥粒式ソーワイヤが使用されはじめている。この従来の固定砥粒式ソーワイヤには、例えば金属線を伸線加工して細径化し、これにレジンボンド(熱硬化性樹脂)を積層して、上記レジンボンド層によって、その表面に密にダイヤモンド砥粒やCBN砥粒、硬質微細繊維などの硬質微片(以下これを砥粒という)を固着したもの、或いは、メッキ層に砥粒を埋設して固着したものがある。前者の固定砥粒式ソーワイヤの製造方法は砥粒を混入させたレジンボンドの中に鋼線を通過させることでその表面に砥粒を混入したレジンボンドを付着させ、これを冷却硬化させる方法であり、後者の固定砥粒式ソーワイヤの製造方法はメッキ液(Niメッキ液等)に砥粒を浮遊させておいてメッキ(電気メッキ)処理時にメッキ層に砥粒が付着するようにする方法である。
【0003】
前者の場合は混入した砥粒のレジンボンド中での分布が不均一であると、ソーワイヤ表面に付着した砥粒分布が不均一になり、また、後者の場合はメッキ液中の砥粒分布が不均一であると付着した砥粒分布が不均一になることが避けられず、さらに前者の場合は砥粒の金属線表面への固着力が必ずしも十分でないために、使用中に砥粒が脱落してその分布が粗になり、その結果ソーワイヤの切削性能が低下するという問題がある。
【0004】
後者の場合は、砥粒の金属線表面への固着力は十分で、したがって、長時間に亘って切削性能が保持されるが、メッキ液に浮遊させた砥粒を十分な固着力で固着、保持するために必要な厚さにメッキ層を形成しなければならず、メッキ液中の砥粒を十分な固着力で付着するためには細径の金属線をメッキ液中を微速で通過させなければならないから、メッキ液槽の通過時間が長くなるので、メッキ処理を施すための線材の線速が遅く、したがって、ソーワイヤの生産性が著しく低く、その生産コストが高いという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、従来のソーワイヤの製造方法のいずれとも根本的に異なり、砥粒に対する固着力が高くかつ製造工程での線材の線速を高めて、その生産性を向上できる、新たな製造方法を工夫することをその課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【解決手段1】
上記課題解決のための第1の製造方法は、次の(イ)〜(ハ)によって構成されるものである。
(イ)鋼線を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を鋼線表面に付着させること、
(ロ)砥粒が付着している鋼線表面に銀ロウを塗布し、銀ロウを塗布した鋼線を銀ロウ軟化温度に加熱し、その後冷却すること、
(ハ)冷却後、表面を研削してCBN砥粒の一部を突出させること。
なお、因みにいえば、銀ロウは銅合金、金、銀、鉄などの接着に用いられる硬ロウの一種であって、Cu・Zn・Ag系合金を主体とするもので、融点が700℃前後であり、極めて強力な接着力を発揮するものとして従来周知慣用のロウ付け材である。
【0007】
【作用】
所定の線径に伸線された鋼線を電磁コイルの中を通すことで鋼線は磁化される。他方、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒それ自体は磁性がないが、鉄メッキを施すことで磁性が付与されるので、磁化した鋼線に磁力で吸着される。なお、ソーワイヤにおける砥粒分布密度は、磁化された鋼線の磁力の加減によって調整される。
砥粒が付着している鋼線表面に銀ロウを塗布すると、鋼線表面に付着(磁気吸着)した砥粒が銀ロウ塗布層に埋もれた状態になる。この状態の鋼線を銀ロウ軟化温度に加熱して、銀ロウを一旦溶融させてから冷却すると、銀ロウが鋼線表面に融着し、砥粒の鉄メッキ層と融着するので、砥粒が銀ロウ層を介して鋼線表面にしっかりと固定、保持される。
冷却硬化した銀ロウ層の表面をショットピーニング加工などで研削加工して、CBN砥粒の一部を露出させることによって、表面に多数のCBN砥粒が突出した固定砥粒式ソーワイヤになる。
【0008】
そして鋼線の磁化、鉄メッキされたCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒の鋼線表面への付着は、極めて高速でなされるから、要件(イ)の工程における線速度は高速である。
また、鋼線への銀ロウの塗布は、浸漬、吹き付けなどの種々の塗布法によることができるので、極めて短時間になされ、また、塗布した銀ロウの加熱溶融は加熱炉を通過させるなどによって短時間でなされるから、要件(ロ)の工程における線速度は高速である。
さらに、銀ロウ層の表面研削加工も高速でなされる。
以上のように要件(イ)(ロ)(ハ)の工程はいずれも高速で行われるから、この方法によるソーワイヤの製造は高速であり、また、各工程は全て単純な加工工程であって低コストで行われるから、その製造コストは従来のものに比して極めて低廉である。
【0009】
【実施態様1】
実施態様1は、解決手段1の要件(イ)の鋼線径を0.05〜0.3mmとし、砥粒径を10〜100μmとすることである。
【0010】
【実施態様2】
実施態様2は、解決手段1の要件(イ)の鋼線の断面形状が円形状、楕円形状、長方形状、またはトラック形状であることである。
【0011】
【実施態様3】
実施態様3は、解決手段1の要件(ロ)の工程によって銀ロウ層を加熱軟化させたものを整径ダイスを通して、その銀ロウ層の表面を平滑化し、外径を均一化することである。
【作用】
銀ロウを塗布したときの銀ロウ層の表面は必ずしも平滑でなく、外径も均一ではなく、このままで表面加工すると、線径が均一でなく、砥粒の突出高さが均一でない固定砥粒式ソーワイヤになるが、銀ロウ層を加熱軟化させた状態で整径ダイスを通して、銀ロウ層の表面を平滑化し、外径を均一化することで、最終仕上がりにおける線径、砥粒突出高さを均一にすることができる。
【0012】
【実施態様4】
実施態様4は、解決手段1の要件(ハ)による銀ロウ層研削加工後の銀ロウ層の平均厚さを上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍にすることである。
【作用】
これによって、平均的にみれば、個々の砥粒は、その1/2〜9/10が銀ロウ層に埋まった状態になり、残りの部分が露出することになるので、砥粒によるソーワイヤの高い切削性能を長期間確保することができるとともに、砥粒の脱落を確実に防止することができる。
【0013】
【実施態様5】
実施態様5は、解決手段1の要件(ロ)における銀ロウ層の加熱温度を600〜750℃にすることである。
【作用】
加熱温度が低いと銀ロウ層の鋼線表面及び砥粒の鉄メッキ層との接着力が低下し、加熱温度が高すぎると銀ロウ層が流動、変形してその厚さ、外形の均一性が保たれなくなる。
加熱温度を上記の範囲に選択することによって、砥粒の銀ロウ層による十分な固着力を確保しつつ、固定砥粒式ソーワイヤの外形の均一性を確保することができる。
【0014】
【実施態様6】
実施態様6は、要件(ハ)の、表面研削加工法が、ショットピーニング法あるいは、エッチング法であることである。
【0015】
【解決手段2】
上記課題解決のための第2の製造方法は、次の(イ)〜(ハ)によって構成されるものである。
(イ)鋼線を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を鋼線表面に付着させること、
(ロ)砥粒が付着している鋼線表面にメッキを施すこと、
(ハ)上記メッキによる金属メッキ層表面を研削してCBN砥粒を突出させること。
【0016】
【作用】
所定の線径に伸線された鋼線を電磁コイルの中を通すことで鋼線は磁化される。他方、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒それ自体は磁性がないが、鉄メッキを施すことで磁性が付与されるので、磁化した鋼線に磁力で吸着される。なお、ソーワイヤにおける砥粒分布密度は、磁化された鋼線の磁力の加減によって調整される。
砥粒が付着している鋼線表面にメッキを施すと、鋼線表面に付着した砥粒が金属メッキ層に埋もれた状態になり、砥粒が金属メッキ層を介して鋼線表面にしっかりと固定、保持される。
上記メッキ層の表面をショットピーニング加工などで研削加工して、CBN砥粒の一部を露出させることによって、表面に多数のCBN砥粒が突出した固定砥粒式ソーワイヤになる。
【0017】
そして鋼線の磁化、鉄メッキされたCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒の前記鋼線表面への付着(磁気吸着)は、極めて高速でなされるから、要件(イ)の工程における線速度は高速である。
また、鋼線へのメッキ処理は極めて短時間になされるから、要件(ロ)の工程における線速度は高速である。
さらに、金属メッキ層の表面研削加工も高速でなされる。
以上のように要件(イ)(ロ)(ハ)の工程はいずれも高速で行われるから、この方法によるソーワイヤの製造は高速であり、また、各工程は全て単純な加工工程であって低コストで行われるから、その製造コストは従来のものに比して極めて低廉である。なお、メッキ方法は溶融メッキでも電気メッキでもよい。
【0018】
【実施態様1】
解決手段2の要件(イ)における鋼線の線径、断面形状についての実施態様は解決手段1の実施態様1、実施態様2と同じである。
【0019】
【実施態様2】
実施態様2は、要件(ロ)のメッキがニッケルメッキ、亜鉛メッキ、銅メッキ、又はアルミニウムメッキであるものである。
【0020】
【実施態様3】
実施態様3は、解決手段2における要件(ロ)によるメッキを施したものを整径ダイスを通して、金属メッキ層の外径を均一化することである。
【作用】
メッキによる金属メッキ層の外径は必ずしも均一ではなく、このままで表面加工すると、線径が均一でなく、砥粒の突出高さが均一でない固定砥粒式ソーワイヤになるが、メッキを施したあと、これをダイスを通してその外径を均一化することで、最終仕上がりにおける線径、砥粒突出高さを均一にすることができる。
【0021】
【実施態様4】
実施態様4は、解決手段2の要件(ハ)による金属メッキ層研削加工後の金属メッキ層の平均厚さを上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍にすることである。
【作用】
これによって、平均的にみれば、個々の砥粒は、その1/2〜9/10がメッキ層に埋まった状態になり、残りの部分が露出することになるので、砥粒によるソーワイヤの高い切削性能を長期間確保することができるとともに、砥粒の脱落を確実に防止することができる。
【0022】
【実施例1】
次いで、図面1、図2を参照して、解決手段1の実施例1を説明する。
ソーワイヤの仕様は使用目的によって、その線径が0.05〜0.30mm、砥粒の平均粒径が10〜100μmである等、様々であるが、この実施例は、0.20mmの鋼線、平均粒径 30μmの立方晶窒化ホウ素(CBN)の砥粒2aによるものである。そして、この砥粒2aには鉄メッキを施してある。
線径0.20mmの銅メッキを施した鋼線10を電磁コイル1、CBNパウダー槽2、銀ロウ塗布槽3、加熱炉4、整径ダイス5、冷却装置6に順次送入通過させ、さらに、ショットピーニング法による研削装置7を通過させる。これによって鋼線10が電磁コイル1で磁化され、CBNパウダー槽2において鋼線10の表面に砥粒2aが磁気吸着され、銀ロウ塗布槽3で銀ロウが塗布される。そして、加熱炉4で銀ロウ塗布層10aがほぼ700℃に加熱されて溶融され、その直後に整径ダイス5を通過し、これによって銀ロウ塗布層10aの外径が整径され、冷却装置6で冷却硬化される。そして研削装置7を通過する間に、冷却硬化した銀ロウ塗布層の表層部が研削されて、砥粒10bの一部が露出される。これによって砥粒分布がほぼ均等で、線径が均一なソーワイヤ11になる。
【0023】
この製造方法における鋼線10の加熱炉4を出るときの上記銀ロウ塗布層の温度が700℃(制御範囲± 5℃)になるように、加熱炉4内の温度がコントロールされている。加熱炉4による加熱方法としては通常の電気炉による加熱でもよく、高周波誘導加熱によることもできる。
平均粒径 30μmの砥粒2aがCBNパウダー槽2に堆積されていて、そのほぼ中間位置を鋼線10が通過するようにしている。このCBNパウダー槽2の通過長さLは線速度、砥粒粒径等に関係するので一概には決められないが、要するに鋼線表面に均一にかつ十分に砥粒2aが磁力吸着されるように調整すればよい。
【0024】
CBNパウダー槽2に空気を吹き込んで砥粒2a(CBNパウダー)を浮遊させ、浮遊層の中を磁化された鋼線10を通過させるようにすることもできる。この場合、CBNパウダー槽2のCBNパウダー量、吹き込まれる風速、風量を加減することで、CBNパウダーの浮遊密度が調整され、浮遊密度を調整することによって、鋼線10表面へのCBNパウダー(砥粒)の付着密度が調整される。
【0025】
加熱炉4で銀ロウ塗布層10aが加熱軟化した状態で整径ダイス5を通過させてその表面を平滑化し、外径を均一化する。整径ダイス5は、要するに、銀ロウ塗布層で被覆した鋼線10を通過させることでその外面を均等に加圧して銀ロウ塗布層10aの表面を均す作用を奏するものであればよい。この例は、入り口が大径で出口が小径の円錐ダイス孔を備えているものである。
鋼線10の断面形状は円形、楕円形、トラック形、長方形など様々な形状のものがある。例えば楕円形の場合は、加圧手段の加圧面(例えば整径ダイス5のダイス孔の内面)の形状を楕円形状にすればよい。
【0026】
鋼線10の銀ロウ塗布層表面温度は、冷却装置(空冷装置)6の出口でほぼ700℃に冷却されており、ショットピーニングによる研削装置7で銀ロウ塗布層を研削する。
銀ロウ塗布層10aの研削法として、ショットピーニング法、エッチング法等を採用できるが、ショットピーニングによる場合は、研削能力が高く、実施の形態として最も望ましい。
【0027】
【実施例2】
次いで、解決手段2の実施例を図3、図4を参照して説明する。
この実施例2は、実施例1と同様に、0.20mmの鋼線、平均粒径 30μmの立方晶窒化ホウ素(CBN)の砥粒2aによるものである。そして、この砥粒2aには鉄メッキを施してある。
線径0.20mmの銅メッキ層で被覆した鋼線10を電磁コイル1、CBNパウダー槽2、ニッケルメッキ槽13、整径ダイス5に順次送入通過させ、さらに、ショットピーニング法による研削装置7を通過させる。これによって鋼線10が電磁コイル1で磁化され、CBNパウダー槽2において鋼線10の表面に砥粒2aが磁気吸着され、ニッケルメッキ槽13で溶融ニッケルメッキが施される。その直後に整径ダイス5を通過させ、これによってニッケルメッキ層10cの外径を整径する。そして研削装置7を通過する間に、ニッケルメッキ層10cの表層部が研削されて、砥粒10bの一部が露出される。これによって砥粒分布がほぼ均等で、線径が均一なソーワイヤ14になる。
【0028】
この製造方法における鋼線10は平均粒径 30μmの砥粒2a(CBNパウダー)が堆積されているCBNパウダー槽2のほぼ中間位置を通過するようにしている。このCBNパウダー槽2の通過長さLは線速度、砥粒粒径等に関係するので一概には決められないが、要するに鋼線表面に均一にかつ十分に砥粒が磁力吸着されるように調整すればよい。
【0029】
CBNパウダー槽2に気体を吹き込んで砥粒2a(CBNパウダー)を浮遊させ、浮遊層の中を磁化された鋼線10を通過させるようにすることもできる。この場合、CBNパウダー槽2のCBNパウダー量、吹き込まれる風速、風量を加減することで、CBNパウダーの浮遊密度が調整され、浮遊密度を調整することによって、鋼線10表面への砥粒2aの付着密度が調整される。
【0030】
ニッケルメッキ層10cで被覆された鋼線10を整径ダイス5を通過させてその表面を平滑化し、外径を均一化する。整径ダイス5は、要するに、ニッケルメッキ層10cで被覆した鋼線10を通過させることでその外面を均等に加圧してニッケルメッキ層10cの表面を均す作用を奏するものであればよい。この例は、入り口が大径で出口が小径の円錐ダイス孔を備えているものである。
鋼線10の断面形状は円形、楕円形、トラック形、長方形など様々な形状のものがある。例えば楕円形の場合は、加圧手段の加圧面(例えば整径ダイス5のダイス孔の内面)の形状を楕円形状にすればよい。
【0031】
整径ダイス5でその表面、外径を整えられた鋼線10のニッケルメッキ層10cをショットピーニングによる研削装置7で研削する。この研削法として、ショットピーニング方法、エッチング等を採用できるが、ショットピーニングによる場合は、研削能力が高く、実施形態として最も望ましい。
【0032】
【発明の効果】
以上のとおり、この第1番目の発明は、適宜の方法で製造した細径の鋼線を磁化し、鉄メッキしたCBN砥粒を鋼線表面に磁気吸着させ、その後、銀ロウを塗布し、銀ロウ塗布層を加熱溶融させ、冷却することによって銀ロウ被覆層を介して上記砥粒を鋼線に固着させ、その後、銀ロウ被覆層の表層を研削して、砥粒の一部を露出させることによって、銀ロウの固着力を利用して砥粒を鋼線に固着、保持させるものであるから、ソーワイヤの製造方法が簡単になり、また、ソーワイヤの製造工程での線速を高速にして生産性を向上させることができるので、ソーワイヤの製造コストを低下させることができる。
また、この発明の製造方法によるソーワイヤにおいては、砥粒が硬化した銀ロウにその一部が埋め込まれた状態で固着、保持されるので、砥粒に対する保持力が強く、砥粒の脱落がなく、長期にわたって優れた切削性能が保持される。
【0033】
第2番目の発明は、金属メッキ層を介して上記砥粒を鋼線に固着させ、その後、金属メッキ層の表層を研削して、砥粒の一部を露出させることによって、金属メッキ層の固着力を利用して砥粒を鋼線に固着、保持させるものであるからソーワイヤの製造方法が簡単になり、また、ソーワイヤの製造工程での線速を高速にして生産性を向上させることができるので、ソーワイヤの製造コストを低下させることができる。
また、この発明の製造方法によるソーワイヤにおいては、砥粒が硬化した金属メッキ層にその一部が埋め込まれた状態で固着、保持されるので、砥粒に対する保持力が強く、砥粒の脱落がなく、長期にわたって優れた切削性能が保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の模式図である。
【図2】図1のX−X断面の拡大図である。
【図3】実施例2の模式図である。
【図4】図2のX−X断面の拡大図である。
【符号の説明】
1・・・電磁コイル
2・・・CBNパウダー槽(砥粒槽)
2a・・・CBNパウダー(砥粒)
3・・・銀ロウ槽(銀ロウ塗布槽)
4・・・加熱炉
5・・・整径ダイス
6・・・冷却装置
7・・・研削装置
10・・・鋼線
10a・・・銀ロウ塗布層
10b・・・砥粒
10c・・・ニッケルメッキ層
11,14・・・ソーワイヤ
13・・・ニッケルメッキ槽
Claims (15)
- 鋼線を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を鋼線表面に付着させ、
砥粒が付着している鋼線表面に銀ロウを塗布し、銀ロウを塗布した鋼線を銀ロウ軟化温度に加熱し、その後冷却し、
冷却後、表面を研削してCBN砥粒の一部を突出させるソーワイヤ製造方法。 - 上記鋼線径が0.05〜0.3mm、砥粒径が10〜100μmである請求項1記載のソーワイヤ製造方法。
- 塗布された銀ロウ層を加熱軟化させたものを整径ダイスを通して、その銀ロウ層の表面を平滑化し、外径を均一化する請求項1記載のソーワイヤ製造方法。
- 上記の銀ロウ層研削加工後の銀ロウ層の平均厚さを上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍にする請求項1記載のソーワイヤ製造方法。
- 上記の銀ロウ層の加熱温度が600〜750℃である請求項1記載のソーワイヤ製造方法。
- 鋼線を磁化させ、鉄メッキを施したCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を鋼線表面に付着させ、
砥粒が付着している鋼線表面にメッキを施し、
上記メッキによる金属メッキ層表面を研削してCBN砥粒の一部を突出させるソーワイヤ製造方法。 - 上記の金属メッキがニッケルメッキ、亜鉛メッキ、銅メッキ、又はアルミニウムメッキである請求項6記載のソーワイヤ製造方法。
- 上記金属メッキを施したものを整径ダイスを通して、金属メッキ層の外径を均一化する請求項6記載のソーワイヤ製造方法。
- 上記の金属メッキ層研削加工後の金属メッキ層の平均厚さを上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍にする請求項6記載のソーワイヤ製造方法。
- 鋼線が銀ロウ層で被覆されており、当該銀ロウ層を介して砥粒が鋼線外面に固着、保持されているソーワイヤ。
- 上記鋼線径が0.05〜0.3mm、砥粒径が10〜100μmである、請求項10記載のソーワイヤ。
- 上記銀ロウ層の平均厚さが上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍である請求項10記載のソーワイヤ。
- 鋼線が金属メッキ層で被覆されており、当該金属メッキ層を介して砥粒が鋼線外面に固着、保持されているソーワイヤ。
- 上記の金属メッキがニッケルメッキ、亜鉛メッキ、銅メッキ、又はアルミニウムメッキである請求項13記載のソーワイヤ。
- 上記金属メッキ層の平均厚さが上記砥粒の平均粒径の1/2〜9/10倍である、請求項13記載のソーワイヤ。
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