JP2004009096A - レーザ溶接装置 - Google Patents

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村上 恭一
Yoichi Umahara
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Abstract

【課題】深い開先内でもプラズマを確実に除去することができるレーザ溶接装置を提供する。
【解決手段】レーザビーム1を被溶接材15に照射することにより溶接を行うとともに、レーザビーム1を照射する際に発生するプラズマ2を吹き飛ばすためのアシストガス21を噴射するアシストガスノズル3を有するレーザ溶接装置において、アシストガスノズル3の先端部11は任意の角度に調整可能になっている。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被溶接物にレーザビームを照射することにより溶接を行うレーザ溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ溶接においては、レーザビームのエネルギー密度が非常に高いため、溶接部に形成された溶融池に激しい蒸発現象が発生し、金属蒸気が電離した状態のプラズマが発生することが知られている。これを一般的なレーザ溶接における溶融池近傍の現象を模式的に拡大して示す図6により詳細に説明する。被溶接材15にレーザビーム1を照射して溶接を行う場合、レーザビーム1のエネルギー密度が非常に高いため、溶接部に形成された溶融池12に激しい蒸発現象が発生し、この蒸発反力により液層は押し下げられてキーホール14を形成すると同時に金属蒸気が電離した状態のプラズマ2が発生する。なお、13は凝固部である。このプラズマ2は、レーザビーム1を吸収し屈折させることが確認されている。このためこのプラズマ2を除去あるいはレーザビーム1の照射位置から遠ざける必要がある。
【0003】
一方、従来よりレーザ溶接装置においては、レーザ溶接を行う際に溶接部の酸化を防止するために不活性ガスを供給するようになっている。従来のこの種のレーザ溶接装置を一例を図7により具体的に説明する。図7は従来のレーザ溶接装置の一例を示す縦断面図である。図7に示すように、加工ヘッド20内のレーザビーム1を被溶接物15に集光して照射してレーザ溶接を行う際に、溶接部7の酸化を防ぐために、シールドボックス16中にアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを供給している。不活性ガスの供給系は,矢印18で示すようにレーザビーム1の光路と同軸に流す形式と、矢印17で示すようにシールドボックス16内に供給する形式の通常2系統に大別することができる。なお、19は加工ヘッド20の移動方向を示している。このようなアシストガス利用レ−ザにおいても、レーザ照射部にはプラズマが発生し、このプラズマがレーザ光を吸収したり、屈折させるため溶接ビードが蛇行したり、十分な溶接部が得られないなどの問題が生じていた。またシールドガスに不活性ガスを用いた場合、ガス巻き込みにより気孔の発生が生じ易い。特に深い開先内での溶接の場合、シールドが不十分なためにビード表面が酸化して、灰色もしくは黒色を呈するなど溶接品質上好ましくない現象が発生していた。
【0004】
そこで、例えば特開平7−136791号公報に見られるように、加工ヘッドをX−Y軸に沿って移動可能にするとともに、アシストガスノズルを上記のX−Y軸に従属するX′−Y′軸に沿って位置調整整可能にし、レーザビームの照射点にアシストガスの吹き付け位置を合わせように位置調整してプラズマを除去することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば原子炉内での補修を想定した場合、種々の開先形状となる可能性があり、多層盛りの必要が生じてくる。特に深い開先内で溶接部位が凹凸がある場合、アシストガスノズルの位置をX′−Y′軸に沿って移動させるだけでは確実にプラズマを除去することは難しい。
【0006】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、深い開先内でもプラズマを確実に除去することができるレーザ溶接装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、第1の手段は、レーザビームを被溶接材に照射することにより溶接を行うとともに、前記レーザビームの照射部に発生するプラズマを吹き飛ばすためのアシストガスを噴射するアシストガスノズルを有するレーザ溶接装置において、前記アシストガスノズルの先端部を任意の角度に可動に支持する支持手段を備えていることを特徴とする。これにより前記アシストガスノズルの先端部は任意の角度でアシストガスをプラズマに吹き付けることができる。
【0008】
前記目的を達成するため、第2の手段は、第1の手段にさらに、溶接部のビード表面をシールドするためのシールドガスを噴射するためパイプ状のシールドガスノズルを更に備えていることを特徴とする。
【0009】
前記目的を達成するため、第3の手段は、第2の手段における前記シールドガスノズルは、溶接方向に対して前記レーザビームの後側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
前記目的を達成するため、第4の手段は、第2あるいは第3の手段における前記シールドガスノズルは、多孔質焼結金属で作られており、前記シールドガスはそれらの孔から噴射することを特徴とする。
【0011】
前記目的を達成するため、第5の手段は、第4の手段における前記多孔質焼結金属の孔径を50〜500ミクロンに設定したことを特徴とする。
【0012】
前記目的を達成するため、第6の手段は、第1の手段において、アシストガスノズルを溶接方向に対してレーザビームと並列もしくは後側に配置し、横方向もしくは後方側からアシストガスをプラズマに吹き付けて吹き飛ばすように構成したことを特徴とする。
【0013】
このようにアシストガスノズルを溶接方向に対してレーザビームと並列もしくは後側に配置してプラズマを横方向もしくは後方から吹き飛ばすようにし、その後流側にシールドガスノズルを配置すると、シールドガス中への大気(空気)の巻き込みが防止され、溶接ビード表面の酸化を確実に防止することができる。これにより、プラズマは十分に除去されるので、健全な溶接部を高能率で形成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、上述した従来技術の構成と同等とみなせる各部には同一参照番号を付し、重複する説明は適宜省略する。図1は本発明の一実施の形態におけるレーザ溶接装置の一例を示す縦断面図、図2は開先内での溶接状況を説明するための模式図、図3はアシストガスノズル先端部の模式図で、(a)は溶接部前方が平坦の場合のノズル位置を、(b)は溶接部前方が凸状になっている場合のノズル位置を、そして(c)は溶接部前方が凹状になっている場合のノズル位置を示しており、図4はアシストガスノズルとシールドガスノズル近傍部を説明するための拡大模式図である。
【0015】
この実施の形態においては、加工ヘッド20からのレーザビーム1の先端部に形成されたプラズマ2を吹き飛ばすためのアシストガスノズル3を矢印8で示す溶接進行方向に対してレーザビーム1と並列もしくは後方側の位置に設置している。このアシストガスノズル3の先端部11は、図3に示すように、溶接部7周辺の凹凸の形状に応じて任意の角度に変更することができる支持手段によって支持する構造としている。なお、任意に角度に設定(変更)する支持構造自体は機構的に種々の装置が考えられるので、ここでは、機能のみを示し詳細な構成については説明を省略する。以下、同様。
【0016】
すなわち、例えば原子炉内での補修を想定した場合、種々の開先形状となる可能性があり多層盛りの必要が生じてくる。特に深い開先内で溶接部位が凹凸を有し、遠隔操作が必須条件となる場合が多い。このような条件下ではカメラのモニタを通して溶接ビードを監視しながら溶接が続行される。平坦で連続したきれいなビード及びビード外観が要求されるため、図1はそのような観点からレーザビーム1先端部に形成されたプラズマ2を吹き飛ばすためのアシストガスノズル3を溶接進行方向に対してレーザビーム1と並列もしくは後方側の位置に設置している。アシストガスノズル3の先端部11は、その一例を図3に示したように溶接部周辺の凹凸の形状に応じて任意の角度に変更できる支持構造とした。そして、溶接部7の前方が平坦な場合は、図3の(a)に示すように、先端部11をほぼ水平にしてアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスであるアシストガス21を水平に噴射させて、プラズマ2を吹き飛ばしている。また、溶接部7の前方に突起物があり凸状となっているような場合は、図3の(b)に示すように、先端部11を上方に傾けて、アシストガス21を上方に向かって噴出させ、プラズマ2を吹き飛ばす。逆に、溶接部7の前方が凹状になっている場合は、図3の(c)に示すように、先端部11を下方に傾けて、アシストガス21を下方に噴出させて、凹状部内のプラズマを吹き飛ばす。このようにして溶接部位の周辺の形状に応じてアシストガスノズル3の先端部11の角度を任意の角度に変更可能な支持構造としている。
【0017】
さらに、アシストガスノズル3の先端部11からのアシストガスは通常窒素ガスを使用し、30[l/min]程度の流量でレーザビーム1の横方向もしくは後方側からプラズマ2に吹き付けて吹き飛ばすことによって、欠陥のない健全な溶接部7を得るようにしている。このシールドガス成分およびガス流量については特に限定するものではないが、溶接条件、開先形状および被溶接材15の材質などに応じて選定する必要がある。
【0018】
また、本実施の形態においては、図1に示すように、ワイヤトーチ4を矢印8で示す溶接方向に対してレーザビーム1より前方側に配置し、レーザビーム1の先端部に添加ワイヤ22を2.0〜6.0[m/min]の速度で送給している。さらに,きれいなビード形状及びビード外観を得るために、ビード表面をシールドしている。シールドは、矢印8で示す溶接方向に対してレーザビーム1の後方側に多孔質焼結合金製のガスノズルパイプ5を付設し、このガスノズルパイプ5から溶接部7の表面に層流としてシールドガス6を流すことにより行っている。ガスノズルパイプ5は、50〜500ミクロンの細孔を無数有したものであり、シールドガスとしては窒素ガスを用い、20[l/min]のガス流量としている。
【0019】
本実施の形態によるレーザ溶接装置によって溶接を行うと、深い開先9内では多層肉盛ビード10となるが,深い開先9内で溶接部位周辺に凹凸のある形状でも図3で説明したようにアシストガスノズル3の先端部11を任意の角度に可変可能な構造としたことにより、プラズマ2を十分に除去することができるため、平坦で連続的なきれいなビード形状および金色、銀色もしくは白色系のきれいなビード外観が形成可能となる。また、レーザビーム1の先端部に形成されたプラズマ2に対してプラズマ2の後方側からアシストガス21を吹き付けるので、プラズマ2の位置はレーザビーム先端部から離れた位置で吹き飛ばされることになる。したがって、レーザビーム1がプラズマ2に吸収されることもなく,健全な肉盛ビード10が形成される。また、その後方側に付設したガスノズルパイプ5の下部からはシールドガス6が層流として肉盛ビード表面を覆い、そのシールドガス6の一部は溶接進行方向前方へ吹き付けたアシストガス21により溶接進行方向前方へ引き寄せられる結果、肉盛ビード表面の広範囲をシールドする効果が生じるためさらにシールド効果を増大させることができる。
【0020】
上述のように構成されたレーザ溶接装置と従来のレーザ溶接装置による溶接状態を観察したところ、図5に示すような結果になった。図5は従来法と本発明によるレーザ溶接におけるビード外観および断面形状を模式的に示す図である。この図5に示すように、ビード外観はシールド効果の増大により、従来は黒色もしくはグレー色であったものが金色、銀色もしくは白色系の良好なビードが形成できた。一方、溶込み形状については、多層肉盛の補修を想定した場合,レーザ溶接の一般的な溶込み形状であるワインカップ状の深溶込みは必要としないことから、期待する浅溶込みのビード形状が形成できた。これらの溶込み形状は特に限定するものではないが、任意の溶込み形状を作製することが可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、プラズマを吹き飛ばすためのアシストガスノズルはその先端が任意の角度に調整可能になっているので、溶接方向前方の溶接部の形状に合わせて、先端部の角度を調整することにより、深い開先内でも確実にレーザ照射部に発生するプラズマを除去することができ、ビード表面の酸化が防止でき、溶接品質を高め、溶接能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるレーザ溶接装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】開先内での溶接状況を説明するための模式図である。
【図3】アシストガスノズル先端部の模式図で、(a)は溶接部前方が平坦の場合のノズル位置を、(b)は溶接部前方が凸状になっている場合のノズル位置を、そして(c)は溶接部前方が凹状になっている場合のノズル位置を示す。
【図4】アシストガスノズルとシールドガスパイプ近傍部を説明するための拡大模式図である。
【図5】従来法と本発明によるレーザ溶接におけるビード外観および断面形状を模式的に示す図である。
【図6】一般的なレーザ溶接における溶融池近傍の現象を模式的に拡大して示す図である。
【図7】従来のレーザ溶接装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 レーザビーム
2 プラズマ
3 アシストガスノズル
5 ガスノズルパイプ
6 シールドガス
7 溶接部
9 開先
11 先端部
15 被溶接材
20 加工ヘッド
21 アシストガス

Claims (7)

  1. レーザビームを被溶接材に照射することにより溶接を行うとともに、前記レーザビームの照射部に発生するプラズマを吹き飛ばすためのアシストガスを噴射するアシストガスノズルを有するレーザ溶接装置において、
    前記アシストガスノズルの先端部を任意の角度で可動に支持する支持手段を備えていることを特徴とするレーザ溶接装置。
  2. 溶接部のビード表面をシールドするためのシールドガスを噴射するためのパイプ状のシールドガスノズルを更に備えていることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  3. 前記シールドガスノズルは、溶接方向に対して前記レーザビームの後側に配置されていることを特徴とする請求項2記載のレーザ溶接装置。
  4. 前記シールドガスノズルは、多孔質焼結金属で作られており、前記シールドガスはそれらの孔から噴射することを特徴とする請求項2または3に記載のレーザ溶接装置。
  5. 前記多孔質焼結金属の孔径は50〜500ミクロンに設定されていることを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
  6. 前記アシストガスノズルは、溶接方向に対してレーザビームと並列に配置され、横方向からアシストガスをプラズマに吹き付けることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  7. 前記アシストガスノズルは、溶接方向に対してレーザビームの後側に配置され、後方側からアシストガスをプラズマに吹き付けることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
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