JP2004008956A - 厚膜部除去装置及びそれを用いた厚膜部除去方法 - Google Patents

厚膜部除去装置及びそれを用いた厚膜部除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】連続的に搬送される帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時、コータが帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を適切に除去する厚膜部除去装置およびそれを用いた厚膜部除去方法の提供。
【解決手段】連続的に搬送する帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時に、塗布位置から下流側で、かつ塗膜乾燥部の上流側に配置され、該コータが該帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を除去する厚膜部除去装置において、ロール状に巻かれた拭き取り部材と、該拭き取り部材を前記帯状支持体に押し込む押し込みローラと、前記拭き取り部材の巻き取りローラと、前記拭き取り部材の巻き取り機構とを有し、該押し込みローラが自己清掃機構を有することを特徴とする厚膜部除去装置。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続搬送される帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時に塗布面に発生する厚膜部の厚膜部除去装置およびそれを用いた厚膜部除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
写真用フィルム、印画紙等の写真感光材料、写真製版材料、磁気記録材料、熱現像感光材料、感圧記録材料や易接着性、易滑性、ガス遮断性、防湿性、制電性、インク受容性等の機能を付与する各種材料の製造において、連続走行するプラスチックフィルム等の長尺可撓性支持体に塗布液を塗布する工程では、種々の塗布装置が用いられており、例えば、グラビアコータ、キスロールコータ、ナイフコータ、スライドコータ、カーテンコータ、エクストルージョンコータ等が知られている。中でも、エクストルージョンコータを用いた塗布方法は、他の塗布方法に比べ、高速塗布速度域で安定で、良好な塗布均一性が得られることから、現在広く用いられている。
【0003】
このようなコータを用いた塗布法により、連続的に搬送される帯状支持体上に塗布を行なう場合、塗布開始時、塗布終了時あるいは塗布中において、コータが帯状支持体と相対的に接触、離間する際に規定の塗布膜厚より厚い領域、いわゆる厚膜部が発生し易くなる。一般に、この厚膜部領域の厚みは、塗布中の規定の塗布膜厚に比較して1.5倍以上となり、極端な場合は10倍近くになることもある。
【0004】
この厚膜部を残したまま支持体搬送を行なうと、塗布工程の下流側に配置した乾燥工程で乾燥不良を生じ、未乾燥状態のままガイドロールと接触することによりロールの汚染を生じ、この汚染部は正常な塗布面に再付着し、製品欠陥の原因となる。さらにロールの汚染が蓄積してゆくと支持体の搬送不良や破断など重大な問題を生じることもある。更に、巻き取り部でロール状に積層された後、再び積層ロールより繰り出す際に、未乾燥部分での表裏面の接着により、支持体の破断等の致命的なトラブルを招く結果となる。
【0005】
上記のような塗布方法において、厚膜部の厚みを規制する手段の一つとして、塗膜にスムーザと呼ばれる膜厚規制手段を直接押し付ける手段が種々開示されている。最も一般的なスムーザは、円筒状の金属棒、表面に不織布などの若干の塗布液吸引機能を持った棒状のスムーザを塗膜に押し付けることにより行われる。この時、スムーザと支持体の接触位置は支持体を背面からロール支持している位置とする場合と、支持ロールと支持ロールの間の、いわゆるフリースパンで行なう場合の2種類がある。また、1つのスムーザでは膜厚規制の効果が薄い場合は複数のスムーザを直列に使用することもある。
【0006】
例えば、特開平2−229572号公報には、塗布ヘッドよりも下流側に設置したスムーザを用いて膜厚を規制する方法が、特開平5−168999号公報や特開平6−99123号公報には、塗布ヘッドよりも下流側に設置した掻き落とし用ロールをスムーザとして用いて厚膜部を除去する方法が、特開平11−138091号公報には、塗布ヘッドよりも下流側に設置した掻き落とし用ブレードをスムーザとして用いて厚膜部部分を除去する方法が開示されている。
【0007】
厚膜部の厚みを規制する他の手段としては、塗布開始時のコーターへの送液手段、コーターと支持体との接触、離間時の動作を規定した方法が開示されている。例えば、特開昭62−95169号公報には、エクストルージョンコータを用いた押し出し塗布において、塗布開始時は塗布ヘッドが支持体に接触してから塗布液の押し出しを開始し、塗布終了時には、塗布液の押し出しを停止した後、塗布ヘッドを支持体から離間させることにより、厚膜部の発生を防止する方法が開示されている。
【0008】
特開平1−249169号公報には、コーティングロッドあるいはコーティングローラを用いた塗布において、コーターへの塗布液の送液を塗布開始直前と塗布終了直前に、一時的に停止する方法が開示されている。
【0009】
特開平3−296467号公報にはエクストルージョンコータを用いた押し出し塗布において、コーターヘッドの支持体搬送方向上流側エッジを支持体に接触させた後に塗布液の押し出しを開始し、次にコーターヘッドの支持体搬送方向下流側エッジを支持体に接触させることにより、塗布開始時の厚膜部の発生を防止する方法が開示されている。
【0010】
特開平7−185449号公報には、エクストルージョンコータを用いた押し出し塗布において、塗布ヘッドと支持体の接触離間方法が開示されている。更に、厚膜部の厚みを規制する他の手段として、特開平7−299410号公報には、厚膜部に洗浄液を吹き付けて厚膜部と共に吸引する手段が開示されている。
【0011】
しかしながら、これらの方法にはそれぞれ固有の問題を有する。例えば、塗膜にスムーザと呼ばれる膜厚規制手段を直接押し付ける手段では、膜厚規制時にスムーザ自身に付着した塗布液が乾燥、飛散して正常な塗布面に再付着し、製品欠陥の原因となる。また、スムーザに付着した塗布液が、乾燥後に再び膜厚規制手段として塗膜に押し付けると、先に乾燥していた塗膜の凹凸により部分的に膜厚規制量が異なり、厚膜部のままスムーザを通過してゆく部分が生じる。スムーザに付着した塗布液の除去は、スムーザを拭き取る方法が一般的であるが、塗布液に速乾性の有機溶媒を使用している場合では、拭き取り作業時には既に乾燥しており、拭き取りには有機溶剤を浸透させた布などで拭き取りを行なう必要がある。この時、有機溶剤を使用することによる作業者の吸気、あるいは作業に使用する布などから発塵による塗膜故障を生じさせる要因となる。また、スムーザを支持体と接触させている間は、支持体とスムーザの間でせき止められていた塗膜が蓄積してゆくため、スムーザを支持体から離間させるときも支持体上に厚膜部を形成してしまうという問題点を有している。
【0012】
塗布開始直前に送液を停止する手段では、特に、エクストルージョンコータを用いている場合は、一度送液を停止するとコーターヘッド部や塗布液を塗布幅に押し広げながら供給するスリット内部で塗布液の乾燥が生じ、コーターヘッドを支持体と接触した後、送液を再開しても乾燥させてしまった部分から塗膜上に筋状のムラが生じるなどの塗布故障が発生しやすくなる。
【0013】
厚膜部に洗浄液を吹き付けて厚膜部と共に吸引する手段では、厚膜部除去作業後、安定部を塗布している際に吸引した塗布液の吸引部での乾燥により目詰まりを起こし、連続して吸引できないことがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記状況に鑑みなされたもので、その目的は、連続的に搬送される帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時、コータが帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を適切に除去する厚膜部除去装置およびそれを用いた厚膜部除去方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記の構成により達成された。
【0016】
1)連続的に搬送する帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時に、塗布位置から下流側で、かつ塗膜乾燥部の上流側に配置され、該コータが該帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を除去する厚膜部除去装置において、ロール状に巻かれた拭き取り部材と、該拭き取り部材を前記帯状支持体に押し込む押し込みローラと、前記拭き取り部材の巻き取りローラと、前記拭き取り部材の巻き取り機構とを有し、該押し込みローラが自己清掃機構を有することを特徴とする厚膜部除去装置。
【0017】
2)前記拭き取り部材の幅が帯状支持体上の塗布幅に対して10〜20mm広いことを特徴とする1)に記載の厚膜部除去装置。
【0018】
3)前記拭き取り部材が押し込みローラにより帯状支持体と接触した後、帯状支持体と平行に走行しながら厚膜部を除去することを特徴とする1)又は2)に記載の厚膜部除去装置。
【0019】
4)前記押し込みローラは、回転速度制御手段を有していることを特徴とする1)に記載の厚膜部除去装置。
【0020】
5)前記押し込みローラは、軸方向位置移動手段を有していることを特徴とする1)に記載の厚膜部除去装置。
【0021】
6)1)〜5)の何れか1項に記載の厚膜部除去装置を用い、連続的に搬送する帯状支持体にコータを用い塗布液を塗布する時に、該コータが該帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を除去することを特徴とする厚膜部除去方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる実施の形態を図1〜図5を参照し説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1は、厚膜部除去装置により厚膜部を除去している状態の一例を示す概略斜視図である。
【0024】
図中、1は厚膜部除去装置を示し、2はバックロール3及びサポートロール5に支持されて、連続的に搬送(図中の矢印方向)される帯状支持体4に塗布液を塗布するコータを示す。コータ2とバックロール3上の帯状支持体4との接点が塗布位置Pである。
【0025】
101は厚膜部除去装置1の本体のフレームを示し、103は拭き取り部材102をロール状にした元巻きロールを示し、104は拭き取り部材102を巻き取る巻き取りローラを示し、105は拭き取り部材102を帯状支持体4に押し込み、帯状支持体4と接触させる押し込みローラを示す。元巻きロール103、巻き取りローラ104及び押し込みローラ105はそれぞれフレームに回転可能に軸支されている。
【0026】
押し込みローラ105、元巻きロール103及び巻き取りローラ104は何れも着脱可能に設けられており洗浄可能となっている。
【0027】
拭き取り部材102の巻き取り機構は、フレーム101に回転可能に取り付けられている巻き取りローラ104の駆動用のモータ104aと、フレーム101に回転可能に取り付けられている元巻きロール103から巻き取りローラ104の回転に伴い繰り出される拭き取り部材102に弛みが発生しない様に繰り出し量を規制するためのブレーキ103aとを有している。
【0028】
拭き取り部材102が繰り出された時、弛みが発生しない様にするためには、拭き取り部材102の巻き取り張力を拭き取り部材102の繰り出し張力の1.2〜2.5倍の間に設定することが好ましい。繰り出し張力に対する巻き取り張力が1.2倍未満では、拭き取り部材の種類によっては弛みが発生する場合がある。2.5倍を越える場合は、拭き取り部材にかかる負荷が過度となり、拭き取り部材の種類によっては厚膜部吸引能力が低下する場合もある。拭き取り部材の巻き取り張力及び繰り出し張力は、概ね1m幅当たり10〜200N程度が好ましい。
【0029】
105aは押し込みローラ105の回転速度制御手段である駆動用のモータを示す。厚膜部除去時においては押し込みローラ105の周速度は、拭き取り部材の張力を安定に保つため拭き取り部材の巻き取り速度と同じにすることが好ましい。押し込みローラ105のローラ軸(不図示)は、スプライン軸より構成されており移動手段(不図示)により押し込みローラ105の軸方向に移動が可能となっている。尚、移動手段としては、例えばエアシリンダ、電動スライダ等が挙げられる。
【0030】
6は厚膜部除去装置1のスライド機構を示し、601はスライド軸を示し、602はスライダを示す。これにより厚膜部除去装置1が待機位置(不図示)から押し込みローラ105を帯状支持体4に押し込む位置まで移動することが可能となる。
【0031】
厚膜部除去装置1は拭き取り部材102が帯状支持体4と平行に走行するように本図には示されていない塗布装置のフレームに配設されている。
【0032】
拭き取り部材102の幅は帯状支持体上の塗布幅に対して10〜20mm広いことが好ましい。10mm未満の場合は、拭き取り部材の走行状態によっては、帯状支持体4上の厚膜部を除去することが出来なくなる危険があり、20mmを越えた場合は、帯状支持体4上の厚膜部の除去に関与しない部分が出来、拭き取り部材の種類によっては余分の経費が掛かかる場合がある。
【0033】
拭き取り部材102の走行方向は帯状支持体4の搬送方向と同じ方向であっても、逆の方向であってもかまわない。
【0034】
厚膜部除去装置1は、塗布位置と下流側にある乾燥部(不図示)との間の帯状支持体が支持されていない、所謂フリースパン状態にある位置に配置されている。帯状支持体4がフリースパン状態にある位置に厚膜部除去装置1を配置することで、押し込みローラ105により拭き取り部材102を帯状支持体4へ押し込むことが可能となり、拭き取り部材102が厚膜部の塗布液を吸収するために必要な接触面積を確保することが出来るため好ましい。
【0035】
次に押し込みローラ105の自己清掃機構による押し込みローラ105の清掃方法につき説明する。
【0036】
押し込みローラ105の自己清掃機構は、押し込みローラ105の回転速度制御手段である駆動用のモータ105aと、エアシリンダ、電動スライダ等の移動手段により軸方向の移動を可能にするスプライン軸を有する押し込みローラ105とを有している。
【0037】
本発明の厚膜部除去装置では、布材に浸透した塗布液が押し込みロールに付着する場合がある。特に、拭き取り部材の消費を最小限に抑えるため、拭き取り部材の単位面積当たりの塗布液の吸引能力一杯の巻き取り速度で拭き取り部材を搬送した場合は、拭き取り部材に吸収された塗布液が、拭き取り部材の押し込みローラ側より滲み出し、押し込みローラに付着する場合がある。又、拭き取り部材の幅が塗布幅に満たない場合など、拭き取り部材を塗布幅方向に複数配置し多連として使用する場合にはロール材間の境目から浸み出た塗布液が押し当てローラーに付着する場合がある。押し込みローラに付着した塗布液は厚膜部除去装置が停止している時に拭き取り部材と押し込みローラの張り付きの原因となり、再び厚膜部除去装置を運転し拭き取り部材を繰り出し、巻き取ろうとすると押し込みロールに拭き取り部材が巻き付き、正しく巻き取りが出来ず厚膜部除去が出来なくなることがある。又、張り付いた拭き取り部材が押し当てローラーから剥がれる時発塵し、ゴミ付着の故障の原因の一つになる場合がある。
【0038】
これらのことから押し込みローラを常に清掃しておくことが塗布故障防止のため必要であり、この時に押し込みローラの自己清掃機構である押し込みローラに取り付けてある駆動用のモータにより、拭き取り部材を搬送させた状態で、押し込みローラの周速度制御を行うことで清掃することが可能である。清掃時の押し込みローラの周速度は拭き取り部材の巻き取り速度に対して30〜50%が好ましい。30%未満では、拭き取り部材の種類によっては吸収速度が不安定となり、押し込みローラの洗浄が不安定となる場合がある。50%を越した場合は、拭き取り部材が無駄になり、拭き取り部材の種類によっては経費が掛かる場合がある。
【0039】
押し込みローラの清掃は厚膜部除去が終了毎に、且つ終了後直ぐに行うことが好ましい。具体的な清掃方法を以下に説明する。
【0040】
厚膜部除去作業が終了し、拭き取り部材が厚膜部から離れ、厚膜部除去装置が待機位置に戻る時に、拭き取り部材の巻き取り速度は厚膜部除去時の速度を維持し、押し込みローラの周速度を厚膜部除去時の拭き取り部材の巻き取り速度に対して30〜50%とすることで拭き取り部材と押し込みローラの表面が相対速度を持つようになり、拭き取り部材で押し込みローラの表面に付着した塗布液を拭き取ることが可能となる。この時、押し込みローラの回転方向は拭き取り部材の搬送方向と同じであっても、逆であってもかまわない。
【0041】
又、拭き取り部材を塗布幅方向に複数配置し多連として使用した場合は、上記の清掃動作をしながら押し込みローラをエアシリンダ、電動スライダ等の移動手段により拭き取り部材の幅方向(軸方向)に10〜20mm移動させ押し込みローラの表面を拭き取る。これにより複数の拭き取り部材間の境目に当たる押し込みローラの表面も有効に清掃できる。清掃後は押し込みローラは初期位置に戻る。
【0042】
図2は図1のA−A′に沿った概略断面図である。
図中の符号は図1と同義である。厚膜部除去装置1は通常は、待機位置(図中の破線で示される位置)に待機しており、厚膜部除去時に待機位置より押し込みローラ105を帯状支持体4に押し込む位置までスライド機構6により移動し、厚膜部除去が終了した後、待機位置に戻る様に本図には示されていない塗布装置のフレームに配設されている。
【0043】
厚膜部除去装置1が移動するタイミングは、厚膜部が発生し易くなるコータ2が帯状支持体4と相対的に接触、離間する塗布開始時及び塗布終了時である。塗布開始時とは、塗布を開始する時全てを対象とし、塗布終了時とは、最初に塗布を開始し事故もなく塗布が終了する時及び塗布中において塗布異常が発生し、塗布を中断する時も含めて対象とする。
【0044】
尚、塗布開始(中断後の塗布再開も含む)時は厚膜部を除去するため、厚膜部除去装置1の移動のタイミングとしては、次の2通りの場合が挙げられる。
【0045】
1)塗布開始点が厚膜部除去装置の配設位置に接近した時、厚膜部除去装置を破線位置から実線位置に移動させる。
【0046】
2)塗布を開始する前に予め帯状支持体に、厚膜部除去装置を破線位置から実線位置に移動させる。
【0047】
塗布終了(中断の塗布終了も含む)時は厚膜部を除去するため、厚膜部除去装置1の移動のタイミングとしては、塗布終了点が厚膜部除去装置の配設位置に接近した時、厚膜部除去装置を破線位置から実線位置に移動することが挙げられる。
【0048】
本発明の厚膜部除去装置を使用し、厚膜部を除去する具体的ステップについては後述する。
【0049】
厚膜部除去装置を塗膜から離間させる速度及び塗膜へ接触させる速度は、拭き取り部材と塗膜との接触、離間時に空気を巻き込むことで発生する発泡を抑止するために、何れも0.07m/秒以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05m/秒である。
【0050】
拭き取り部材102の巻き取り速度は、拭き取り部材102の帯状支持体への接触面積が厚膜部除去の面積に対して20〜60%が好ましく、より好ましくは30〜50%になるように設定することが好ましい。20%未満の場合は拭き取り部材の種類によっては、吸収量が不足し厚膜部除去が不十分となる場合がある。60%を越えた場合は、拭き取り部材の種類によっては静電気が帯電し危険となる場合がある。
【0051】
押し込みローラ105は帯状支持体4に拭き取り部材102を押し込んだ時、帯状支持体4の面と拭き取り部材102を介して接触する押し込みローラ105の面は均一な押圧力で接触することが厚膜部を均一に除去することから必要であり、撓み量が0〜2mmであることが望ましい。
【0052】
押し込みローラ105としては、ニッケルクロムメッキを施した鋼材、ステンレス等のロールの表面に布材のすべり防止、塗膜に対し均一に接触させる観点から、表面にゴムライニングした素材を用いることが好ましい。ライニングされたゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等を挙げることができる。
【0053】
元巻きロール103と巻き取りローラ104は押し込みローラにより拭き取り部材が帯状支持体4へ押し込まれ帯状支持体4と接触する面より相対的に離れた位置に配置されており、拭き取り部材102は押し込みローラにより帯状支持体4に押し込まれた箇所のみが帯状支持体4と接触しており他の部分は接触しないで巻き取られる様になっている。
【0054】
このため帯状支持体4の全幅で、拭き取り部材の未使用部分が常に帯状支持体4に接触し、厚膜部の塗布液を吸収し除去する。厚膜部の塗布液を吸収した拭き取り部材102は押し込みローラを通過した後は帯状支持体4に接触しないため、帯状支持体4に影響を与えることがなく、厚膜部を確実に除去し塗布工程の効率向上と品質向上が可能となる。
【0055】
図3は図2のXで示される部分の拡大概略断面図である。
尚、フレームは省略してある。図中、Lは押し込みローラ105により拭き取り部材102を帯状支持体4に押し付ける時の押し込み量を示す。押し込み量とは、本図において、破線で表される帯状支持体4の位置から、拭き取り部材102を介して押し込みローラ105で押し込まれた実線で表される帯状支持体4の位置迄の移動距離をいう。
【0056】
押し込み量Lは5〜50mmが好ましく、更に好ましくは10〜30mmである。押し込み量が5mm以下では、帯状支持体の種類によっては搬送中のばたつきにより、全幅で拭き取り部材が均一に塗膜に接触せず、厚膜部を除去しない危険がある。また、押し込み量が50mmを超えると拭き取り部材にかかる圧力により厚膜部の塗布液の吸収効果が劣化し、拭き取り部材の離間時に厚膜部を生じる危険がある。
【0057】
拭き取り部材102を押し込みローラ105により帯状支持体4に押し込む時、拭き取り部材102と帯状支持体4が接触する位置から帯状支持体4に対して垂直な方向へ拭き取り部材を押し込むことにより、拭き取り部材と塗膜の接触面積が増加することから効率よく厚膜部を除去することが可能となる。
【0058】
次ぎに本発明の厚膜部除去装置を用いて、厚膜部を除去する具体的な方法につき図4、図5で説明する。
【0059】
図4は図1に示す厚膜部除去装置を用いて塗布開始時の厚膜部を除去する一例を示すフロー図である。
【0060】
塗布開始時と塗布終了時に発生する厚膜部を除去する一例をS1〜S8に基づき説明する。
【0061】
S1では、塗布を行うために塗布液流量、塗布速度を設定する。厚膜部除去装置へ拭き取り部材を装着し、拭き取り部材の巻き取り速度、巻き取り張力、繰り出し張力を設定する。
【0062】
S2では、コータを待機位置より塗布位置に移動させ、連続的に搬送している帯状支持体に塗布を開始する。
【0063】
S3では、厚膜部の厚膜部除去装置の配設位置への接近に合わせ、厚膜部除去装置を待機位置より移動させ、拭き取り部材を巻き取りながら押し込みローラにより帯状支持体に押し込む。
【0064】
S4では、厚膜部の塗布液が拭き取り部材により吸収され、厚膜部の除去が行われる。
【0065】
S5では、厚膜部が拭き取り部材と帯状支持体とが接触している箇所を通過した後、直ちに厚膜部除去装置を帯状支持体から離し待機位置に移動する。
【0066】
S6では、押し込みローラの周速を拭き取り部材の巻き取り速度より下げ、拭き取り部材による押し込みローラの清掃を行う。
【0067】
S7では、押し込みローラの清掃終了後、厚膜部除去装置の稼働を停止する。
これで塗布開始時の厚膜部の除去の一連の動作が終了する。
【0068】
S8では、塗布終了時の厚膜部の厚膜部除去装置の配設位置への接近に合わせ、厚膜部除去装置を待機位置から移動させ、拭き取り部材を巻き取りながら押し込みローラにより帯状支持体上に押し込む。
【0069】
以後はS4〜S7のステップを繰り返す。以上で塗布終了時の厚膜部の除去の一連の動作が終了する。
【0070】
図5は図1に示す厚膜部除去装置を用いて厚膜部を除去する他の一例を示すフロー図である。
【0071】
塗布開始時と塗布終了時に発生する厚膜部を除去する他の一例をS1〜S9に基づき説明する。
【0072】
S1では、塗布を行うために塗布液流量、塗布速度を設定する。厚膜部除去装置へ拭き取り部材を装着し、拭き取り部材の巻き取り速度、巻き取り張力、繰り出し張力を設定する。
【0073】
S2では、厚膜部除去装置を待機位置より移動させ、押し込みローラにより拭き取り部材を帯状支持体に押し込む。
【0074】
S3では、コータを待機位置より塗布位置に移動させ、連続的に搬送している帯状支持体に塗布を開始する。
【0075】
S4では、塗布開始に合わせ、拭き取り部材の巻き取りを開始する。
S5では、厚膜部の塗布液が拭き取り部材により吸収され、厚膜部の除去が行われる。
【0076】
S6では、厚膜部が拭き取り部材と帯状支持体とが接触している箇所を通過した後、直ちに厚膜部除去装置を帯状支持体から離し待機位置に移動する。
【0077】
S7では、押し込みローラの周速を拭き取り部材の巻き取り速度より下げ、拭き取り部材による押し込みローラの清掃を行う。
【0078】
S8では、押し込みローラの清掃終了後、厚膜部除去装置の稼働を停止する。
以上で塗布開始時の厚膜除去の一連の動作が終了する。
【0079】
S9では、塗布終了時の厚膜部の厚膜部除去装置の配設位置への接近に合わせ、厚膜部除去装置を待機位置より移動させ、拭き取り部材を巻き取りながら押し込みローラにより拭き取り部材を帯状支持体上に押し込む。
【0080】
以後はS4〜S8のステップを繰り返す。以上で塗布終了時の厚膜除去の一連の動作が終了する。
【0081】
尚、塗布途中で故障発生で塗布を中断するときに発生する厚膜部の除去は図4、図5に示す塗布終了時の厚膜部の除去と同じステップであり、塗布を再開する場合は図4、図5に示すステップと同じである。
【0082】
本発明の厚膜部除去装置及びそれを用いた厚膜部除去方法は、図1〜図5に示す様に、塗布位置より下流側でかつ塗膜が乾燥する前に配設された厚膜部除去装置により、帯状支持体と平行して拭き取り部材を走行させ、押し込みロールにより連続的に搬送する帯状支持体の全幅に拭き取り部材を押し込むことで厚膜部を除去し、除去後は押し込みロールを清掃することで押し込みロールと拭き取り部材の接着に伴う故障の発生を防止するもので、以下の効果が挙げられる。
【0083】
1)従来公知の金属製スムーザの様に発生した厚膜部を均一にならすのではなく、吸収してしまうため厚膜部の除去性が高い。
【0084】
2)ロール状に巻かれたものを巻き取りながら、厚膜部を除去することで、常に拭き取り部材が更新されるため、連続した厚膜部の除去操作による拭き取り部材の吸収性能の劣化が全く生じない。
【0085】
3)厚膜部を除去する毎に押し込みローラを拭き取り部材により清掃するため、押し込みローラへの拭き取り部材の付着が生じないため、押し込みローラから付着した拭き取り部材の付着を剥がすことにより生じる発塵もなく、押し込みローラへの拭き取り部材の巻き込みがなく管理が容易である。
【0086】
4)塗布開始時及び塗布終了時の厚膜部の除去が可能となり、厚膜部が乾燥工程に持ち込まれることによる故障をなくすことが出来る。
【0087】
本発明に用いる拭き取り部材としては、塗布液に対する十分に吸引能あるいは吸収能を有していること、塗布液に対し変質、劣化等の悪影響を与えないこと、厚膜部除去過程で発塵等による雰囲気の汚染源とならないこと等が重要な要件であり、これらの観点から不織布を用いることが好ましい。素材としては、塗布液に対する耐性等により一概には規定できないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、ポリエステルなどを用いることができる。
【0088】
本発明においては、拭き取り部材で連続的に塗膜の厚膜部を吸引除去するためには、拭き取り部材の塗膜吸収速度が、帯状支持体上に塗設する塗布液の供給速度を大きく上回っている必要がある。
【0089】
拭き取り部材の塗布液吸収速度は、塗布液供給速度の10倍以上が好ましく、拭き取り部材の単位面積当たりの塗布液保持容量が、単位面積当たりの設定塗布量の10倍以上であることが好ましい。
【0090】
拭き取り部材の吸引速度が、安定塗布時における塗布液供給速度の10倍未満、または拭き取り部材の塗布液保持量が、安定塗布時の塗布液量の10倍未満の時は、拭き取り部材の種類によっては塗膜の厚膜部除去が十分に行えず、乾燥限界を超える厚膜部による未乾燥部が発生し、支持体搬送ロールの汚染等を招く危険がある。
【0091】
尚、厚膜部除去装置のコンパクト化、ランニングコストの低減の観点から、拭き取り部材の消費は最小限必要な量に止めることが好ましい。従って、拭き取り部材は塗膜と接触する直前に巻き取り動作を開始し、厚膜部が拭き取り部材と帯状支持体との接触する位置を通過した後は直ちに帯状支持体から厚膜部除去装置を離し、拭き取り部材による押し込みロールの清掃を行い、拭き取り部材の巻き取り動作を停止することが好ましい。
【0092】
本発明の厚膜部除去装置の使用に際しては、厚膜部除去装置の移動に伴う振動による塗布膜への影響を避ける、緩衝材を介して塗布装置のフレームに配設することが好ましい。また、拭き取り部材の元巻きロール側に残量不足による使用不能を避けるために使用限界前に警告を出すように設定した残量検出機構を有することが好ましい。残量検出の方法は限定させるものではないが、接触式のリミットスイッチや光学式の変位センサー等を使用することができる。
【0093】
【発明の効果】
連続的に搬送される帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時、コータが帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を適切に除去する厚膜部除去装置およびそれを用いた厚膜部除去方法を提供することが出来、塗布故障が減少し生産効率が向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】厚膜部除去装置により厚膜部を除去している状態の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A′に沿った概略断面図である。
【図3】図2のXで示される部分の拡大概略断面図である。
【図4】図1に示す厚膜部除去装置を用いて塗布開始時の厚膜部を除去する一例を示すフロー図である。
【図5】図1に示す厚膜部除去装置を用いて厚膜部を除去する他の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 厚膜部除去装置
103 元巻きロール
104 巻き取りローラ
105 押し込みローラ
6 スライド機構
601 スライド軸
602 スライダ
L 押し込み量

Claims (6)

  1. 連続的に搬送する帯状支持体上にコータを用い塗布液を塗布する時に、塗布位置から下流側で、かつ塗膜乾燥部の上流側に配置され、該コータが該帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を除去する厚膜部除去装置において、ロール状に巻かれた拭き取り部材と、該拭き取り部材を前記帯状支持体に押し込む押し込みローラと、前記拭き取り部材の巻き取りローラと、前記拭き取り部材の巻き取り機構とを有し、該押し込みローラが自己清掃機構を有することを特徴とする厚膜部除去装置。
  2. 前記拭き取り部材の幅が帯状支持体上の塗布幅に対して10〜20mm広いことを特徴とする請求項1に記載の厚膜部除去装置。
  3. 前記拭き取り部材が押し込みローラにより帯状支持体と接触した後、帯状支持体と平行に走行しながら厚膜部を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の厚膜部除去装置。
  4. 前記押し込みローラは、回転速度制御手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の厚膜部除去装置。
  5. 前記押し込みローラは、軸方向位置移動手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の厚膜部除去装置。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の厚膜部除去装置を用い、連続的に搬送する帯状支持体にコータを用い塗布液を塗布する時に、該コータが該帯状支持体と相対的に接触、離間する際に生じる厚膜部を除去することを特徴とする厚膜部除去方法。
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