JP2004008095A - ヒトインターフェロンβ遺伝子導入植物。 - Google Patents

ヒトインターフェロンβ遺伝子導入植物。 Download PDF

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浅岡 良太
Hiromitsu Moriyama
森山 裕充
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Abstract

【課題】ヒトインターフェロンβを発現する植物、ならびにその植物からのヒトインターフェロンβの製造方法を提供すること。
【解決手段】ヒトインターフェロンβのタンパク質をコードするcDNAを導入した植物形質転換用ベクターを含む植物形質転換用アグロバクテリウムで、ヒトインターフェロンβのタンパク質をコードするcDNAを導入した、ニコチアナ属植物、および、その植物からヒトインターフェロンβを得る。  植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクターに、ヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAを導入した植物形質転換用ベクター、およびさらにヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAが本来のシグナル配列を保持することを特徴とする植物形質転換用ベクターを用いる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトインターフェロンβ遺伝子導入植物を製造する方法およびヒトインターフェロンβの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
サイトカインは免疫調節作用を持つ生理活性物質で、医薬、動物薬用途で注目されている。中でも、本発明に用いるヒトインターフェロンβはヒト由来サイトカインの一種で、ヒトの疾患である膠芽腫、髄芽腫、亜急性硬化性全脳炎やB型・C型肝炎に有効な治療薬として頻用されている。
【0003】
これまでサイトカインは、動物細胞、酵母、大腸菌、カイコを用いて生産されてきたが、それらの培養、生産には、特別な施設が必要で、多大なコストがかかる。特に、動物細胞培養によってサイトカインを生産する場合、培養中に動物に病原性のある微生物に汚染される危険性がある。汚染されたサイトカインが動物に投与された場合は、投与により病気となり生命が危ぶまれるので、より安全で確実なサイトカインを生産する方法が求められている。
【0004】
これらの問題点を解決する手段の一つとして、大量生産が容易で、動物に病原性のある微生物に感染することのない、植物でのサイトカイン生産が考えられる。現在、従来の古典的な育種法により改良するのではなく、遺伝子操作技術により植物を改良し、さらに新たな形質または有用形質をも付与することが可能となっている。例えば、これまでに、耐病性、除草剤耐性、日持ちなどが改良された植物が、植物に外来遺伝子を導入することにより創製され、利用されている。外来遺伝子を植物に導入する方法としては、物理的手法による導入法と生物を利用する導入法がある。
【0005】
物理的手法には、ポリエチレングリコール法(PEG法)、電子穿孔(エレクトロポレーション)法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法がある。これらの方法は、単子葉、双子葉の両植物体に適用できる点で有用性が高い。しかし、ポリエチレングリコール法とエレクトロポレーション法では、細胞壁が障害となるため、プロトプラストを用いなければならない上、導入された遺伝子の植物細胞の染色体DNAへの組込み頻度が低いことが問題である。また、プロトプラストを用いずに、カルスや組織を用いたマイクロインジェクション法では、針の太さや組織の固定等に関して困難が多い。組織を用いたパーティクルガン法でも、変異がキメラの形で出現してくる等の問題がある。また、これら物理的手法では、一般に、導入された遺伝子が核ゲノムに不完全な状態で多コピーの遺伝子として組込まれやすい。遺伝子が多コピー導入されると、その遺伝子が不活化されるジーンサイレンシングという現象が見られる場合が多く、遺伝子が導入されても、発現しない場合がある。
【0006】
他方、生物を利用して遺伝子を導入する方法には、アグロバクテリウム法がある。この方法は、20kbp以上のDNAを大きな再編成なしに染色体に導入できること、導入される遺伝子のコピー数が、数コピーと少ないこと、及び再現性が高いこと等、多くの利点がある。アグロバクテリウムAgrobacterium tumefaciensが植物に感染すると、病原性として腫瘍形成が起きるが、最近では、腫瘍形成にはアグロバクテリウムが保持するTiプラスミド上に存在するvir領域にコードされた遺伝子群(vir遺伝子群)とT−DNA遺伝子が関与していることが明らかとなっている。植物感染に際し、アグロバクテリウムは植物の分泌するフェノール系物質を感染シグナルとして受け取るとvir遺伝子群の転写は活性化され、その結果、vir遺伝子群にコードされた数個のタンパク質がTiプラスミド上のT−DNA遺伝子の切り出し、移行、組み込みに機能することが知られている。組み込まれたT−DNA遺伝子は病原性を持ち、腫瘍形成が起きる。アグロバクテリウム法はTiプラスミドを植物形質転換用ベクターとして改良し、T−DNA遺伝子領域の一部を植物に導入する遺伝子に置き換え、アグロバクテリウムを植物に感染させることで植物に遺伝子を導入する方法である。単子葉植物ではフェノール系物質を植物が合成しないため、アグロバクテリウムは自然界では感染しづらく、アグロバクテリウム法による形質転換植物作出の際はアグロバクテリウム感染時にアセトシリンゴンを添加する必要があり操作が煩雑であるが、双子葉植物では、植物自身がそのようなフェノール系物質の合成機構を備えているため、葉片(リーフディスク)をアグロバクテリウム培養液に1分程度浸すだけで感染が成立するため、容易に遺伝子を導入することができ、再現性も高い。中でもNicotiana属植物はアグロバクテリウムの感染が容易で、多くの遺伝子導入例が知られている。
【0007】
以上の技術の発展として、従来、動物細胞、酵母、大腸菌などの微生物を用いて生産されてきたサイトカインなどの医療用タンパク質が、それらをコードする遺伝子を植物に導入することで、植物で生産できるようになってきた。医療用タンパク質の、植物での生産についての詳細な考察は、例えば、フイッシャー・アールら「モレキュラーファーミングオブファーマシューティカルプロテイン」(Fischer R,et al.,”Molecular farming of pharmaceutical  proteins”,Transgenic Reserch,vol.9,2000)のpp.279−299にみることができ、そこに関連参考文献が引用されている。
【0008】
インターフェロンβを発現する植物については公知例があり、エデェルバウム・オーら「ジャーナルオブインターフェロンリサーチ1992年12号6巻pp449−453」(J interferon Res 1992 12(6):449−453 Edelbaum O et al.,)には詳細な記載がされている。しかし、上記公知例に基づいてインターフェロンβを発現する植物を作出するにはいくつかの難点がある。まず、公知例ではヒト染色体ゲノムライブラリーからイントロンのない、ヒトインターフェロンβDNAを抽出し、植物ゲノムに導入しているが、ヒトインターフェロンβタンパク質をコードする遺伝子領域以外のヒト由来遺伝子を結果的に導入しており、導入する遺伝子が目的遺伝子より大きくなることでクローン化のステップが煩雑になっている。そして、植物形質転換用ベクターは、植物で機能するプロモーターが付加されていない植物形質転換用ベクターを使用しているので、植物で機能するプロモーターが付加された植物形質転換用ベクターを使用するときと比べて、導入する遺伝子に植物で機能するプロモーターとターミネーターを付加させる必要があり、操作が多くなっている。また、植物形質転換用アグロバクテリウムを製造する際、公知例では大腸菌を介した方法(トリペアレンタルメイティング法)を用いているが、アグロバクテリウムと大腸菌2種類の計3種類の菌培養が求められ、操作が煩雑になっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、ヒト疾患の治療を目的とした、ヒトインターフェロンβを低コストかつ安全に有効な、ヒトインターフェロンβ遺伝子導入植物を、簡便に提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、ヒトインターフェロンβのタンパク質をコードする遺伝子を植物に導入する際、ヒトインターフェロンのコード領域のcDNAを植物形質転換用ベクターに導入し、エレクトロポレーション法で形質転換した植物形質転換用アグロバクテリウムを用いて植物を形質転換することで、より簡便にヒトインターフェロンβ遺伝子導入植物を作出できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち本発明は、ヒトインターフェロンのコード領域のcDNAが導入された植物、植物形質転換用ベクターにヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAが導入された植物形質転換用ベクター、エレクトロポレーションを用いて上記植物形質転換用ベクターで形質転換することを特徴とする植物形質転換用アグロバクテリウム、および上記植物よりヒトインターフェロンβを採取することを特徴とするヒトインターフェロンβの製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の方法は、ヒトインターフェロンβ遺伝子導入植物に関する。本明細書において、ヒトインターフェロンβ遺伝子とはヒトインターフェロンβのタンパク質のコード領域を保持する遺伝子である。具体例として、ヒト染色体ライブラリーより得られたヒトインターフェロンβ遺伝子、ヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAが挙げられるが、中でも、インビボジェン社(Invivogen社)より購入できるヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAが導入されたプラスミドを鋳型にしてPCR法によって得られるヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAであることが好ましい。
【0014】
植物は、ヒトインターフェロンβ遺伝子のcDNAを導入できるものであれば何でも良いが、仮に食用植物を使用した場合、ヒトインターフェロンβ遺伝子のcDNAが導入された植物は食用として出荷される可能性があり、ヒトインターフェロンβの医薬用途を目的とした本発明の場合、非常に危険である。よって、本発明に使用する植物は食用として利用されない植物が好ましく、本発明においてはニコチアナ(Nicotiana)属に属する植物が好ましい。Nicotiana属植物とは、タバコ(ニコチアナ・タバカム)の仲間の植物で、分類学上バレイショ、トマト、ナスなどのナス科に属すものの、食用に用いられることはない。Nicotiana属植物の例として、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・ベンタミアーナ(Nicotiana benthamiana)、ニコチアナ・シルベストリス(Nicotianasylvestris)、ニコチアナ・グルチノーサ(Nicotiana glutinosa)、等が挙げられる。このうち、本発明においては園芸作物として圃場での作付け実績があり、また植物体が非常に大きく成長するため大量にタンパク質が回収されうる、ニコチアナ・タバカムが好ましく使用される。
【0015】
ヒトインターフェロンβ遺伝子のcDNAは、当該分野での公知の方法により、タバコ(ニコチアナ・タバカム)に導入される。植物への遺伝子の導入方法の例としては、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法(PEG法)、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法などが挙げられる。タバコは双子葉植物であることからアグロバクテリウムが容易に感染することができ、かつ他の方法と異なり特殊な設備を必要としないのでアグロバクテリウム法が頻繁にタバコへの遺伝子導入法として採用されており、再現性も高い。よって、本発明においてはアグロバクテリウム法を用いることが好ましい。
【0016】
植物の形態は培養細胞、培養組織、培養器官、または植物体のいずれの形態であってもよい。本発明においては大量のタンパク質が回収され、植物の育成に太陽エネルギーと大気中の二酸化炭素が利用できる、植物体の形態が好ましい。
【0017】
ヒトインターフェロンβ遺伝子のcDNAは、植物形質転換用ベクターに組み込んで植物形質転換に使用されうる。ここでいう植物形質転換用ベクターとは、植物に遺伝子を導入する際に必要とするベクターである。このようなベクターは様々な種類があり、植物形質転換の手法によって使い分けされうる。例えば、エレクトロポレーション法やパーティクルガン法では大腸菌で使用されるプラスミドベクターが転用される。アグロバクテリウム法はアグロバクテリウムの形質転換ベクターの違いで、中間ベクター法とバイナリーベクター法の2種類の方法に大きく分類され、それぞれの使用する植物形質転換用ベクターが異なる。中間ベクター法は、植物に導入する遺伝子を組み込んだベクター(中間ベクター)を常法により調製し、これを、Tiプラスミド上に病原性を消失させたT−DNAをもつアグロバクテリウムに導入すると、相同組み換えにより植物に導入する遺伝子がT−DNA領域に導入されアグロバクテリウムが形質転換される、という方法で、植物形質転換用ベクターは、病原性を消失させたT−DNAをもつTiプラスミドである。バイナリーベクター法は、アグロバクテリウムにおける複製起点と共に必要に応じて大腸菌における複製起点を有し、T−DNAの境界配列の間に介在させた、植物に導入する遺伝子を含むベクター(バイナリーベクター)を常法により調製し、これをT−DNAが欠失したTiプラスミドを有するアグロバクテリウムに導入することでアグロバクテリウムを形質転換する方法で、植物形質転換用ベクターはバイナリーベクターである。本発明においては、形質転換する植物はタバコ(ニコチアナ・タバカム)であるので、植物形質転換法はアグロバクテリウム法であることが好ましい。また、中間ベクター法とバイナリーベクター法を比較すると、中間ベクター法では、植物形質転換用ベクターへの、植物に導入する遺伝子の組み込みはアグロバクテリウム内での相同組み換えに依存しており、アグロバクテリウム形質転換が非常に不安定であるが、バイナリーベクター法では試験管内で植物に導入する遺伝子を組み込んだ植物形質転換用ベクターでアグロバクテリウムを形質転換するので、安定的にアグロバクテリウムの形質転換が可能である。よって、本発明においては、アグロバクテリウム形質転換法はバイナリーベクター法が好ましく、植物形質転換用ベクターはバイナリーベクターであることが好ましい。
【0018】
バイナリーベクターには、植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されていないバイナリーベクターと、植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクター(pBI121:Clontech社)がある。植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されていないバイナリーベクターを用いて植物形質転換する場合、導入する遺伝子に予め植物で機能するプロモーターとターミネーターを付加させてから、バイナリーベクターに遺伝子を組み込む必要があるが、植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクターを用いて植物形質転換する場合は、遺伝子を植物で機能するプロモーターとターミネーターの間に組み込むだけでよく、操作が簡便になる。よって、本発明においては、植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクターを使用することが好ましい。植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクターの例として、pBI121(Clontech社)が挙げられる。
【0019】
植物で機能するプロモーターやターミネーターなどの制御配列には、細胞の環境に関わらず構成的に遺伝子の発現を促すものの他、環境に応じて誘導的に遺伝子の発現を促すものや、組織特異的に遺伝子の発現を促すものなどがある。以上のような制御配列は、対象とする宿主植物の種類や形質転換植物の利用形態に応じて適宜選択し利用できる。例えば、植物に導入した遺伝子を、その植物体の全体に渡って構成的に発現させるとその植物の生育が悪影響を受ける場合がある。このような問題は、誘導的もしくは組織特異的な制御配列の利用により回避できる。本発明においては、ヒトインターフェロンβ遺伝子の構成的な発現は植物に何ら影響を及ぼさないという公知例があるので、細胞の環境に関わらず遺伝子発現を促す構成的な制御配列が好ましい。具体例としては、35Sプロモーターが挙げられる。また、植物で機能するターミネーターとしては、NOSターミネーターが頻用されている。よって、本発明に使用する、植物で機能するプロモーターとターミネーターは、35SプロモーターとNOSターミネーターであることが好ましく、それらはバイナリーベクターpBI121(Clontech社)に付加されている。
【0020】
さらに植物に導入する遺伝子はそのコード配列の末端または内部にシグナルペプチドまたは細胞内小器官への局在化シグナルをコードする配列を付加することもできる。この発明で対象とするヒトインターフェロンβは糖鎖が付加した分泌タンパク質であり、斯かる分泌タンパク質は、通常本来的にN末端部にシグナルペプチドを有している。このような分泌タンパク質を植物で発現させる場合、本来のシグナルペプチドを利用できる一方、シグナルペプチドとして、他の起源のもの、例えば、酵母のα因子における当該箇所を利用すると、形質転換植物体内でタンパク質は糖鎖修飾され、より安定して細胞外に分泌される場合がある。したがって、目的に応じて適宜選ばれるシグナルペプチドをコードする配列を導入遺伝子に付加、もしくは置換してよい。また、分泌タンパク質に糖鎖修飾を必要としない場合、もしくは糖鎖修飾させない場合はシグナルペプチドをコードする配列を欠失させてもよい。分泌タンパク質は細胞内小器官への局在化シグナルを利用することにより、タンパク質の活性を損なうことなく、細胞内での安定な発現が達成される場合もある。しかし、本発明においては、ヒトインターフェロンβはヒト疾患の治療薬としての用途を目的としているので、正確なタンパク質の発現が求められる。シグナル配列を他の生物起源由来の配列に置換した、または、細胞内小器官への局在化シグナルを付加させた場合、正確なタンパク質の発現を損なう可能性がある。よって、本発明では、シグナル配列を保持したヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAを植物形質転換用ベクターに導入して、植物形質転換することが好ましい。
【0021】
植物形質転換用ベクターで形質転換した、植物形質転換用アグロバクテリウムの代表的な製造方法としては、トリペアレンタルメイティング法、凍結融解法とエレクトロポレーション法の3種類が知られている。トリペアレンタルメイティング法では、まず当該分野で公知の方法を用いて植物形質転換用ベクターで大腸菌の形質転換体を作る。その後、得られた植物形質転換用ベクターを保持する大腸菌と、植物形質転換用ベクターを大腸菌からアグロバクテリウムに伝達する伝達性プラスミドを保持した大腸菌、そしてアグロバクテリウムの3種類の菌を混ぜて、植物形質転換用アグロバクテリウムを製造するという方法で、「植物バイオテクノロジーII」(山田康之、岡田吉美編、1991年、東京化学同人)のpp.155に詳細が記載されている。トリペアレンタルメイティング法は3種類の菌を必要とするため、操作が煩雑になるという難点がある。凍結融解法は、液体窒素中で急速冷凍後、−80℃で保存したアグロバクテリウムを溶解し、植物形質転換用ベクターを加えることで、植物形質転換用アグロバクテリウムを製造するという方法で、「植物バイオテクノロジーII」(山田康之、岡田吉美編、1991年、東京化学同人)のpp.164に詳細が記載されている。凍結融解法はトリペアレンタルメイティング法よりも簡便ではあるが、急速冷凍作業は難易度が高く、形質転換効率も悪い。エレクトロポレーション法はアグロバクテリウム培養液に植物形質転換用ベクターを加え、電気的刺激を与えることでアグロバクテリウムは植物形質転換用ベクターを取り込み、植物形質転換用アグロバクテリウムを製造する方法である。エレクトロポレーション法は特別な装置(エレクトロポレーター)を必要とするものの、簡便かつ効率よく植物形質転換用アグロバクテリウムを製造できる。よって、本発明においては、簡便かつ効率よく植物形質転換用アグロバクテリウムを製造できる、エレクトロポレーション法を採用することが好ましい。
【0022】
形質転換植物は、当該分野で公知の方法により、目的遺伝子の導入が確認されうる。このような確認方法としては、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、PCR法が挙げられる。
【0023】
形質転換植物が、導入した遺伝子がコードするタンパク質を発現しているかどうかは当該分野での公知の方法により確認されうる。タンパク質の発現検定法の例としては、ELISA法、ウエスタンブロッティング法が挙げられる。また、発現するヒトインターフェロンβは抗ウイルス活性を持つので、植物抽出タンパク質の抗ウイルス活性を検定することでタンパク質の発現を確認できる。ヒトインターフェロンを発現する植物の抽出タンパク質の抗ウイルス活性を調べる場合、水疱性口内炎ウイルス(VSV)とヒト由来FL5−1細胞を用いた実験系が利用されている。
【0024】
得られた形質転換植物は、培養細胞の状態で維持されてもよいし、種子、果実、葉、根、茎、花などの部分であってもよい。
【0025】
得られた形質転換植物を育成して、タンパク質を抽出など方法により採取することで、活性のあるヒトインターフェロンβを得ることができる。タンパク質を抽出する植物器官は根、茎、花、葉が考えられるが、本発明の場合、光合成を行いうる器官である葉であることが好ましい。葉の中でも、光合成産物供給能を有する葉部位(source)とsourceより光合成産物の供給を受ける葉部位(sink)に分けられる。両部位の間には、source部位はデンプン分解酵素や脂質分解酵素の活性が見られ、sink部位では活性が見られないという違いがある。一般的にsource部位がsink部位よりも葉は大きく、大量のタンパク質を抽出できる。よって本発明の場合、葉の中でもsource部位の葉よりタンパク質を抽出することが好ましい。ヒトインターフェロンβは、当該分野で公知のインターフェロン精製法で抽出タンパク質より分離、精製されることができる。
【0026】
【実施例】
実施例1:植物形質転換用ベクターへのヒトインターフェロンβ遺伝子(以下、hIFN−βと記載)のcDNAのクローニング
植物形質転換用ベクターは、アグロバクテリウム法で形質転換する際に頻用されるバイナリーベクターのpBI121(Clontech社)を利用した。まず、hIFN−βのcDNAが挿入されたプラスミドpORF−hIFN−β(Invivogen社)を鋳型として、5’側には制限酵素BamHI認識配列が付加したプライマーと、3’側には制限酵素SacI認識配列が付加したプライマーを用いて、LA−taqポリメラーゼ(宝酒造)でPCRにより増幅したhIFN−βのcDNA断片を得た。La−taqポリメラーゼで増幅した遺伝子断片は3’側にアデニン塩基が余計に付加されるという特徴があるので、このような遺伝子断片を簡便にクローン化できるプラスミドpBlue−TEasy(Novagen社)にクローニングし、プラスミドpBlue−TEasyhIFN−βを構築した。PCRのプライマーを配列番号1、配列番号2に示す。
【0027】
続いて、pBlue−TEasyhIFN−βを制限酵素BamHIとSacIで処理して、hIFN−βのcDNAを切り出し、同時にpBI121(Clontech社)をBamHIとSacIで処理し、挿入されていたGUS遺伝子と入れ換えてpBI121 hIFN−βを構築した。
【0028】
実施例2:hIFN−βのcDNAを植物に導入するための、植物形質転換用アグロバクテリウムの製造
実施例1で構築した植物形質転換用ベクターpBI121 hIFN−βでアグロバクテリウムをエレクトロポレーション法により形質転換して、植物形質転換用アグロバクテリウムを製造した。
【0029】
アグロバクテリウム、Agrobacterium tumefaciens LBA4404株(以下、LBA4404と記載)を25mg/lのストレプトマイシンを含むLB寒天培地で2日間培養し(前々培養)、得られたコロニーを再び25mg/lのストレプトマイシンを含むLB液体培地で1日間培養し(前培養)、得られた培養液1mlをLB液体培地で8時間培養して得られた菌体を遠心分離器で回収した。その後、菌体を1mlの滅菌蒸留水で懸濁し、その内200μlの菌体懸濁液をエレクトロポレーションにかけた。
【0030】
エレクトロポレーションはジーンパルサーII(Bio−Rad社)を用いた。200μlの菌体懸濁液と1μgのpBI121 hIFN−βを混合し、2.3kVの電圧でエレクトロポレーションした後、SOC液体培地を800μlを加え、3時間・30℃で培養して、50mg/lのカナマイシンを含むLB寒天培地上で30℃で3日間培養して得られた単一コロニーを選択することで、植物形質転換用アグロバクテリウムを製造した。得られた植物形質転換用アグロバクテリウムは配列番号1と配列番号2に記載された配列を持つプライマーを用いて、PCRによりhIFN−β遺伝子のcDNA断片が検出されるかを単一コロニーごとに確認した。単一コロニーのうち、4コロニー(Aβ−1、Aβ−2、Aβ−3、Aβ−4)を、LA−taqポリメラーゼによりPCRした。反応条件は94℃で2分間の1ステップを1回、94℃で30秒間・55℃で30秒間・72℃で1分間の3ステップを35回、72℃で1分間の1ステップを1回、で行った。PCR反応産物を、特開2002−17187号公報(0072)欄記載の、分子量マーカーλHindIIIを1kbラダー(New England Biolab社)に変更した条件で、アガロースゲル電気泳動したところ、hIFN−β遺伝子のcDNAと同じ大きさの遺伝子断片が検出された(図2)。遺伝子断片が検出された4つのコロニーのうち、Aβ−1を植物形質転換用アグロバクテリウムとして利用した。
【0031】
実施例3:植物形質転換用アグロバクテリウムによる植物形質転換
本実施例では、pBI121 hIFN−βを含む植物形質転換用アグロバクテリウムを用いてタバコ(Nicotiana tabacum cv. Bright Yellow、以下BYと記載)の形質転換を行った。
【0032】
エレクトロポレーション法により製造した植物形質転換用アグロバクテリウムをBYに、リーフディスク法に従い感染させた。本実施例では、「植物バイオテクノロジーII」(山田康之、岡田吉美編、1991年、東京化学同人)のpp.164−165に記載されている方法を用いた。すなわち、タバコのリーフディスクを滅菌し、植物形質転換用アグロバクテリウムの懸濁液に約30秒浸すことで感染させた。約2日間抗生物質を含まない培地で培養して感染させた後、抗生物質を含む培地に置いて形質転換カルスを選抜した。形質転換カルスは、カナマイシン(50μg/ml)とカルベニシリン(500μg/ml)を含むムラシゲ・スクーグ培地で選抜された。形質転換体は、25℃、16時間照明下で育成された。シューティングしたものは発根培地に移し、発根を誘起した後、鉢上げした。発根培地としては、ムラシゲ・スクーグ培地を使用した。上記の方法で、形質転換植物が2個体(β−1、β−2)得られた。
【0033】
実施例4:形質転換タバコゲノム中のhIFN−β遺伝子のcDNA存在の確認
得られた形質転換タバコにhIFN−β遺伝子のcDNAが挿入されていることを確認するため、PCR法によって、hIFN−β遺伝子のcDNAをタバコゲノムから増幅した。まず、植物ゲノム抽出キット、ISOPLANT(ニッポンジーン)を用いてタバコより核ゲノムを抽出した。アガロースゲル電気泳動で核ゲノムが抽出されたことを確認した後、配列番号1、配列番号2に記された配列のプライマーの組み合わせで、LA−taqポリメラーゼによりPCRした。PCR、アガロース電気泳動を共に実施例2と同じ条件で行ったところ、hIFN−β遺伝子のcDNAと同じ大きさの遺伝子増幅断片が得られた(図3)。さらに、PCR反応で得られた遺伝子断片が植物に導入したhIFN−β遺伝子のcDNAと同じであるかどうかを確認するため、遺伝子断片を回収しプラスミドpBlue−Teasyにクローニングした。得られたプラスミド中の挿入断片を塩基配列解読したところ、導入前の遺伝子と同じ塩基配列を保持していた。
【0034】
実施例5:形質転換タバコ抽出タンパクの抗ウイルス活性
hIFN−βは抗ウイルス活性を持つことから、その力価よりhIFN−βの存在を知ることができる。実施例1で得られた形質転換タバコの葉肉組織1gを5mlの20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)を用いて磨砕し、遠心分離して得られた抽出タンパク質を、特開2002−17187号(0091)欄の実施例5.3.2の条件を参考にして抗ウイルス活性を測定した。その結果、形質転換タバコ葉肉組織からは抗ウイルス活性は検出されたが、コントロールとなる非形質転換タバコからはウイルス活性は検出されなかった。結果を表1にまとめる。
【0035】
【表1】
Figure 2004008095
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒトインターフェロンβを、太陽エネルギーと二酸化炭素を利用した光合成反応の一環で生産することができ、かつ動物病原微生物に汚染されることなく回収することができる。
【0037】
【配列表】
<110>Toray Industries Co.,Ltd.
<120>Plant with incorporated human interferon beta gene
<130>51E16850
<160>2
<210>1
<211>31
<212>DNA
<213>Artificial oligonucleotide
<220>
<223> Synthesized oligonucleotide
<400>1
tctggatcca tgaccaacaa gtgtctcctc c
<210>2
<211>32
<212>DNA
<213>Artificial oligocucleotide
<220>
<223>Synthesized oligonucleotide
<400>2
atgagctctc agtttcggag gtaacctgta ag
【図面の簡単な説明】
【図1】hIFN−β遺伝子のcDNAを、植物形質転換用ベクターpBI121へ組み込む方法を示す概略図である。
【図2】pBI121hIFN−βを含む植物形質転換用アグロバクテリウム(Aβ−1、Aβ−2、Aβ−3、Aβ−4)から、PCRによってhIFN−β遺伝子のcDNAを検出した電気泳動図である。
【図3】形質転換植物(β−1、β−2)と非形質転換植物から抽出したタバコゲノムからPCRによりhIFN−β遺伝子のcDNAを検出した電気泳動図である。

Claims (11)

  1. ヒトインターフェロンβのタンパク質をコードするcDNAが導入された植物。
  2. 植物がニコチアナ(Nicotiana)属に属する植物である請求項1に記載の植物。
  3. 植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクターに、ヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAを導入した植物形質転換用ベクター。
  4. ヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAが本来のシグナル配列を保持することを特徴とする請求項4記載の植物形質転換用ベクター。
  5. ヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAが本来のシグナル配列を保持しないことを特徴とする請求項4記載の植物形質転換用ベクター。
  6. 植物で機能するプロモーターとターミネーターが付加されたバイナリーベクターに、ヒトインターフェロンβのコード領域のcDNAを導入する植物形質転換用ベクターの製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか記載の植物形質転換用ベクター、または請求項7記載の製造方法により得られた植物形質転換用ベクターを含む植物形質転換用アグロバクテリウム。
  8. 請求項4〜6のいずれか記載の植物形質転換用ベクター、または請求項7記載の製造方法により得られた植物形質転換用ベクターでエレクトロポレーション法により形質転換する、植物形質転換用アグロバクテリウムの製造方法。
  9. 請求項8記載の植物形質転換用アグロバクテリウム、または請求項9記載の製造方法により得られた植物形質転換用アグロバクテリウムを用いて形質転換した植物。
  10. 請求項1、2、3または10のいずれか1項記載の植物を育成してヒトインターフェロンβを採取することを特徴とするヒトインターフェロンβの製造方法。
  11. 請求項1、2、3または10のいずれか1項記載の植物の、光合成産物供給能を有する葉部位よりヒトインターフェロンβを採取することを特徴とするヒトインターフェロンβの製造方法。
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