JP2004006236A - ポリ(シアノテレフタリデン)の可溶性前駆体とその作成方法 - Google Patents

ポリ(シアノテレフタリデン)の可溶性前駆体とその作成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリ(シアノテレフタリデン)に対する可溶性前駆体とその作成方法を提供する。
【解決手段】あるクラスのPPV誘導体を作成する方法は、PPV誘導体の可溶性前駆体を作成する段階と、その可溶性前駆体をPPV誘導体に転換する段階とを含む。この転換は、減圧下で、約25℃から400℃の温度範囲での熱処理か、または酸触媒の紫外線放射処理のいずれかを実行することを含む。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は発光ダイオードなどの光電子デバイスに使用する有機ポリマー材料に関し、さらに詳しくはポリ(フェニレン・ビニレン)誘導体とその新しい作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機半導体の発光デバイスと違い、ポリマー発光デバイスは一般にシンプルで比較的製造が容易でしかも安価である。また多様な色や広域デバイスが容易に得られる。しかし、発光デバイスで使用される先行技術のポリマーにおける1つの大きな問題は、それらのほとんどが比較的量子効率が低いことである。たとえば、ポリ(フェニレン・ビニレン)(PPV)は、LED用途に対して最も研究されているポリマーの一つであり、n接点金属電極としてマグネシウムを用いた場合、エレクトロルミネセンス(EL)の量子効率は約0.06%である。そのため、問題は、ポリマーの蛍光効率を向上させて、ポリマー発光デバイスが実際に役立つものにすることである。
【0003】
有機ポリマー、具体的にはポリ(フェニレン・ビニレン)(PPV)におけるエレクトロルミネセンスの最初の報告以来、各種のポリマーがエレクトロルミネセンスを呈することが示された。しかし、良好なエレクトロルミネセント効率を達成するためには、ほとんどの場合、電子注入接点として、カルシウム,マグネシウム,リチウムなどの仕事関数の低い金属を使用する必要が認められている。仕事関数の低い金属は通常、空中劣化を被りやすく、加工や封入が難しいので、加工がしやすくて環境での安定性が極めて良好なアルミニウムなどの仕事関数の高い金属を、電子注入接点として使用することができれば、大きな利点となろう。
【0004】
1993年、ケンブリッジ大学のグループが、ポリ(シアノテレフタリデン)(CN−PPV)のいくつかの可溶性誘導体、ジアルコキシCN−PPVから作られる発光デバイスが、内部エレクトロルミネセント量子効率4%を有すると報告した。さらに重要なことは、電子注入接点として、アルミニウムなど、より高い仕事関数の金属を用いたLEDが、マグネシウム,カルシウムなど仕事関数の低い金属を用いたものと同じくらい、電子注入接点としての効率が良いことが認められた。ジアルコキシCN−PPVの高い電子親和力は、アルミニウムからの電子の注入を可能にするものであり、著しい向上が確信されている。
【0005】
上記先行技術は、安定した接点を有するポリマー発光デバイスを開発する上で重要な段階となってはいるが、ピークが約710nmの先行技術のポリマーの発光は、可視スペクトルでは人間の眼には感知しにくい領域に入る。このため、先行技術のポリマーは表示目的に役立てるのが難しい。
【0006】
この問題は、未ドープ(pristine)CN−PPVを使用して部分的に解決できる。未ドープCN−PPVは、電子親和力がさらに高い上に、表示用途にとってより望ましい低い発光波長を有する。
【0007】
CN−PPVの作成は、1960年に、Lenzとその共同研究者による、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)の熱的安定性を有するポリマー探索の中で初めて開示された。CN−PPVは500℃まで熱的に安定しており、不溶性および不融性を原因とする加工上の利便性の欠如が、実際の用途の開発を妨げた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリ(フェニレン・ビニレン)とその誘導体を作成する新しい前駆体ルート(route)方法を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、発光デバイスに使用するCN−PPVに対して加工可能な新しいクラスの前駆体を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、発光デバイスに使用するCN−PPVに対して加工可能な新しいクラスの前駆体を作成する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、安定した電子注入接点を有する発光デバイスに使用するCN−PPVに対して加工可能な新しいクラスの前駆体を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記およびその他の問題、ならびに上記およびその他の目的は、PPV誘導体の可溶性前駆体の作成、および可溶性前駆体のPPV前駆体への転換を含む、PPV誘導体を作成する方法によって実質的に解決され、実現される。この転換には、減圧下での約25℃から400℃の温度範囲にわたる熱処理か、または酸触媒紫外線放射処理のいずれかの実行が含まれる。
【0013】
上記およびその他の問題、ならびに上記およびその他の目的はさらに、基板の平らな表面の上に第1の導電形を有する第1導電層を形成する段階,PPV誘導体の可溶性前駆体を作成する段階,第1導電層の上で可溶性前駆体の層を支える段階,可溶性前駆体の層をPPV誘導体に転換する段階,PPV誘導体材料層の上に第2の導電形を有する第2導電層を配置し、第2導電層がn接点として金属を含む段階を含む、有機発光デバイスの製造方法によって実質的に解決され、実現される。
【0014】
上記およびその他の問題、ならびに上記およびその他の目的はさらに、第1の導電形を有する第1導電層,第1導電層の上に配置される第1キャリヤ輸送材料層,第1キャリヤ輸送材料層の上に発光層として配置されるPPV誘導体材料層,およびPPV誘導体材料層の上に第2の導電形を有する第2導電層で、第2導電層はn接点として金属を含む第2導電層を含む、有機発光デバイスにおいて実質的に解決され、実現される。
【0015】
【実施例】
ポリ(フェニレン・ビニレン)(PPV)とその誘導体は一般に、熱処理または放射処理によって、スルホニウム塩前駆ポリマー(2)から合成される。前駆ポリマー(2)は、arylene−p−bis(メチレン・ハロゲン化スルホニウム)(1)を、水酸化ナトリウムなどの塩基と、以下に示すような反応で(表示番号を含む)重合することによって作成される。しかし、シアノ基の強い電子求引性のために、CN−PPVは従来の前駆体方法によっては得られない。
【0016】
【化1】
Figure 2004006236
先行技術では、CN−PPVとその誘導体は、芳香族ジアルデヒド(3)と芳香族ジアセトニトリル(4)のクネーベナーゲル凝縮重合作用によって、一般に、以下に示す(表示番号を含む)反応に従って作成される。
【0017】
【化2】
Figure 2004006236
CN−PPVは加工しにくいポリマーであるので、先行技術では、有機溶剤に必要な可溶性を達成するために、長いアルコキシル基はCN−PPVの骨格鎖に組み込まれている。しかし、可溶性の利得と共に、上記アルコキシル基はまた、CN−PPVの電子構造を変化させ、具体的にはバンド・ギャップ幅、CN−PPVのHOMOおよびLUMOエネルギー・レベルを変化させる。その結果、ジアルコキシルCN−PPVの発光がCN−PPVに関して、人間の眼に感知しにくい深に赤色領域にシフトされる。CN−PPVの電子構造を阻害せずに必要な加工性を得て、光の放射が表示目的で所望の領域に入るようにすることは明らかに利点があろう。
【0018】
ここに開示する戦略は、新しい前駆体ルートの使用であり、これには、加工可能な前駆ポリマーの作成と、その後の前駆ポリマーから共役ポリマーへの転換を伴う。前駆ポリマー・ルート方法の利点は、前駆ポリマーを、最終的に共役ポリマーに転換される前に、膜やファイバなど所望の物理的形状に鋳造できることである。そのため、実際の用途向けに加工できない以前の既知のポリマーも利用できる。
【0019】
一般に、前駆ポリマー・ルートを介してPPV誘導体を作成する新しい方法は、以下の2つの段階によって構成される:1)前駆ポリマーの作成;2)前駆ポリマーのPPV誘導体への転換。
【0020】
前駆ポリマーの作成は、塩基を有するp−キシレン誘導体(10)の低温での脱プロトン化;芳香族ジアルデヒド(11)の添加による中間ポリマーの作成;有機捕捉試薬を用いて中間ポリマー(12)を捕捉して可溶性前駆ポリマー(13)を形成することを含む。前駆ポリマーを作成する反応工程を下記のスキームIに示す(表示番号を含む)。
【0021】
【化3】
Figure 2004006236
ここで、pは水素、またはシアノ,ニトロ,フルオリドなどの電子求引基である。RXは有機捕捉試薬で、以下に詳述する。RからRは、各位置の置き換えの可能性を表し、それぞれ水素または炭化水素基、またはシアノ,ニトロ,ハロゲン,ハロアルキル,ハロアルコキシ,アルコキシル,アミド,アミノ,スルホニル,カルボニル,オキシカルボニルなどの官能基を表し、RとRが一緒、RとRが一緒、RとRが一緒、RとRが一緒になって、縮合ベンゾ環を形成できる。また、nは、1個のポリマー分子内の反復単位の平均数である。
【0022】
p−キシレン誘導体の脱プロトン化に使用される塩基の選択は、個々のp−キシレン誘導体の酸性度に左右される。概して、p−キシレン誘導体の酸性度が弱いほど、必要な塩基の塩基度が強くなる。一例として、p−キシレン誘導体を脱プロトン化するのに使用できる以下の塩基材料は、塩基度を昇順に並べたものである:NaOH<ROK<CHSOCHLi<NaNH<NaH<PhLi<CHLi。p−キシレンの酸性度は、置換基が、フェニル環またはベンジル位のいずれかに、ニトロ,シアノ,スルホネート,カルボキシル基など電子求引機能を有する場合は低下する。p−キシレン誘導体の酸性度も、フェニル環内の1つまたは複数の炭素原子を、窒素などより高い電子親和力を有する原子と置き換えることによって低下でき、その結果、ピリジンまたはピラジン誘導体を生じる。
【0023】
重合温度は、不溶性の共役ポリマーの発生をもたらす中間材料の反応がほとんどなくなるように制御される。一般に、重合温度は、約0℃以下が好ましい。
【0024】
有機捕捉試薬RXはたとえば、無水カルボン酸,カルボン酸塩化物,アルキル・スルホニル・クロリド,カルボン酸エステル,またはキサントゲン酸エステルを含む。利用できる有機捕捉試薬の2,3の具体例を挙げると、無水酢酸,トリフルオロ無水酢酸,酢酸塩(acetic chloride),メタンスルホニル・クロリド,二硫化炭素/よう化メチルである。有機捕捉試薬の選択は、結果として生じる前駆ポリマーの所望の溶解度、および有機捕捉試薬(RX)と中間ポリマー(12)との反応によって形成されるエステル脱離基が、前駆ポリマーを完全共役PPV誘導体に転換する工程で排除しやすいことによって決まる。
【0025】
前駆ポリマーは一般に、N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,N−メチルピロリドン,ヘキサメチル燐酸トリアミドなど極性非プロトン溶媒に溶け、テトラヒドロフラン,ジメトキシエタン,ジエチレン・グリコール・ジメチルエーテルなどのエーテル非プロトン性溶媒にも一部溶ける。また、前駆ポリマーは、1)水を入れたテトラヒドロフラン溶液、2)水を入れたN−メチルピロリドン;3)メタノールを入れたN−メチルピロリドンに、連続沈澱させることによって精製され、ついで、大量のメタノール,エチル・エーテルで洗浄される。
【0026】
前駆ポリマー(13)の転換は、熱処理、または酸触媒による紫外線放射処理によって実施される。この化学反応プロセスを下記のスキームIIに示す。
【0027】
【化4】
Figure 2004006236
ここで、可溶性前駆ポリマー(13)はスキームIからのものでRからR,P,RおよびnはスキームIと同一である。
【0028】
熱処理において、転換温度は、前駆ポリマー内のエステル脱離基に依存して、約25℃から400℃の範囲をとり、エステル脱離基は、前駆ポリマーの作成において有機捕捉試薬(RX)によって形成される。好適な転換温度は約120℃から300℃である。転換温度が120℃より低い場合には、前駆ポリマーは通常、エステル脱離基の早期排除により室温では安定しない。他方、転換温度が300℃以上の場合には、エステル脱離基は通常、転換の間に完全には排除されず、結果として、部分的な共役誘導体を生じる。加えて、高温(>300℃)のプロセスは、有機半導体デバイスの製造を複雑化する。それは、関与する有機材料が通常、温度許容度に限界があるためである。
【0029】
上記実施例で概説した新しい前駆体ルートは、CN−PPVなど、電子求引基を有するPPV誘導体の作成に特に有用である。電子求引基を有するPPV誘導体は通常、高い電子親和力を有し、そのため、有機発光デバイスにおいて、電子注入材料および電子輸送材料として使用するのに適している。一般に、新規の前駆体ルートによって作成されるポリマーは、先行技術のスルホニウム前駆体ルートからは作成できない。たとえ、一部のポリマーがクネーベナーゲル縮合重合作用によって作成できても、加工しにくいポリマーしか得られない。
【0030】
PPV誘導体の合成のために、上記の前駆体ルートに従うことによって、有機溶剤に溶ける新しいクラスのCN−PPVの前駆体が提供される。下記のスキームIIIを参照して、CN−PPV前駆体の新しい合成手法が、具体例を用いて説明される。等量のテレフタルアルデヒドとp−フェニレンジアセトニトリルは、以下のように、縮合重合作用を受ける。
【0031】
【化5】
Figure 2004006236
重合作用は、0℃以下の温度でテトラヒドロフラン溶液中に、t−ブトキサイド・カリウムなどの塩基材料が存在する中で進行する;中間ポリマー(21)は、スキームIIIでRXとして表示される有機捕捉試薬を多量に添加することによって捕捉され、前駆ポリマー(22)を提供する。CN−PPV前駆体合成のための塩基と捕捉試薬の選択の原理は、スキームIで述べたことと同じである。捕捉試薬の例を2,3挙げると、無水酢酸,トリフルオロ無水酢酸,CS/CHIなどがある。
【0032】
前駆ポリマー(22)は、N,N−ジメチルアセトアミド,ジメチルスルホキシド,N−メチルピロリディノンなどの極性非プロトン性溶媒に溶け、またテトラヒドロフラン,ジメトキシエタン,ジエチレン・グリコール・ジメチルエーテルなどのエーテルの非プロトン性溶媒に部分的に溶ける。前駆ポリマー(22)の膜は、極性またはエーテルの非プロトン性溶媒溶液の1つから、基板の上に回転コーティングされて、スキームIVに示すように、高温の真空状態でCN−PPVに転換される。
【0033】
【化6】
Figure 2004006236
本発明はまた、アルミニウムなど安定した金属接点を有する有機発光デバイスにおける、前述の実施例の前駆体ルート方法に由来するCN−PPVの使用も含む。
【0034】
具体的に図を参照して、発光デバイス(LED)110は、簡略化された断面図である。一般にLED110は基板111を含み、基板はこの実施例では、比較的平らな上部表面を有するガラス板である。導電層112は、基板111の平らな表面の上に蒸着されて、比較的一様な電気接点を形成する。正孔輸送材料から成る層113は、導電層112の表面上に蒸着される。本発明の前駆体方法によって得られるPPV誘電体層114は、層113の表面上に蒸着される。ついで、第2導電層115が、層114の上部表面の上に蒸着されて、第2電気接点を形成する。
【0035】
この実施例において、層114は、本発明の前駆体の方法によって得られるPPV誘導体から構成されるので、導電層115は比較的高い仕事関数の金属で形成でき、この実施例ではアルミニウムである。なじみの薄い仕事関数の低いいくつかの金属よりも寧ろアルミニウムを使用できることは、デバイス製造プロセスを大幅に単純化する。
【0036】
ポリマー層114内で生じる光は、層113,112,および基板111または層114を通して放射できると理解すべきであるが、本発明の実施例では、導電層112は、導電ポリアニリン(PANI)、indium−tin−oxide(ITO)などの有機もしくは非有機導体によって形成され、これらは、可視光線を実質的に透過し、放射光が、図では基板111を通して下方に存在するようにする。
【0037】
また、図では、LED110は、ポテンシャル・ソース(potential source)117によって、層112と115の間に電位が印加される。この実施例では、導電層112はP形接点であり、導電層115はN形接点である。ポテンシャル・ソース117の負端子は、導電層115と電気的に接続され、正端子は導電層112と接続される。電子はN形接点から蛍光PPV誘導体層114に注入され、P形接点から注入される正孔は層113を通して、蛍光PPV誘導体層114へと輸送され、ここで、電子と正孔が再結合した後、フォトンが放射される。
【0038】
一般に、有機正孔輸送材料層113は選択的なものであることを理解されたい。しかしながら、有機LED110が層113を省くことによって変更される場合には、デバイスは依然動作するが、動作効率は低下する。
【0039】

本発明はさらに以下の例によって説明される。これらは、本発明の具体的実施例を表すことを意図したものであるが、その適用範囲を限定するものではない。
【0040】
例1
前駆ポリマー(22)(R=CHCO)のアセテート誘導体の以下の合成を使用すれば、(22)のすべてのカルボン酸エステル誘導体を作成できる。
【0041】
300mLの乾燥テトラヒドロフラン中の40mmolのt−ブトキサイド・カリウム(Eastman Kodak Company)溶液は、15分間アルゴンでパージ(purge)され、一方、ドライ・アイス/シクロヘキサノン浴で−30から−40℃に冷却される。この溶液には、アルゴンの下で25mLの乾燥テトラヒドロフラン中の20mmolの1,4ーフェニレン・ジアセトニトリル(Aldrich ChemicalCompany)の溶液が添加される。この反応混合物は暗褐色に変わる。反応混合物は半時間−30から−40℃で撹拌された後、これに、アルゴン下で撹拌しながら、テトラヒドロフラン20mLの中の20mmolのテレフタルアルデヒド(Fluka Chemical Company)の溶液がシリンジで添加される。結果の混合物は、2時間にわたり−30から−40℃で重合させる。最後に、8mLの無水酢酸(Fisher Scientific company)がこの重合混合物に添加される。反応混合物は一晩撹拌させておく。その間、反応温度は室温まで徐々に上昇する。反応混合物は、400mLの脱イオン水を入れたビーカーの中に注ぎ入れられる。ろ過によって収集された黄色っぽい個体は、400mLの脱イオン水と400mLの2ープロパノールによって連続的に洗浄される。粗ポリマーはさらに、最少量のテトラヒドロフラン(少量のN−メチル−2−ピロリドンをポリマーの溶解を促進するために添加してもよい)の中に再度溶かし、脱イオン水に再度沈澱させることによって精製される。ろ過によって収集された最終ポリマーは、メタノール,エチル・エーテルで洗浄され、真空状態で乾燥されて70から80%の収量を得る。
【0042】
前駆ポリマーの構造は、赤外HとC13NMRや紫外・可視分光法、元素分析データによって確認される。
例2
前駆ポリマー(22)(R=CHSCS)のメチル・キサントゲン酸塩誘導体の以下の合成を使用して、(22)のすべての他のキサントゲン酸エステル誘導体を作成できる。
【0043】
300mLの乾燥テトラヒドロフラン中の40mmolのt−ブトキサイドの溶液(Eastman Kodak Comapany)は、15分間アルゴンでパージ(purge)され、一方、ドライ・アイス/シクロヘキサノン浴で−30から−40℃に冷却される。この溶液に、アルゴンの下で25mLの乾燥テトラヒドロフラン中の20mmolの1,4−フェニレン・ジアセトニトリル(Aldrich Chemical Company)の溶液が添加される。反応混合物は暗褐色に変わる。この反応混合物が半時間で−30から−40℃で撹拌された後、アルゴン下で撹拌しながら、シリンジを通して、20mLのテトラヒドロフランの中の20mmolのテレフタルアルデヒド(Fluka Chemical Company)の溶液が添加される。結果の混合物は、2時間にわたり−30から−40℃で重合させ、その後、50mmolの二硫化炭素(Aldrich Chemical Company)が添加される。反応混合物は煉瓦色に変わり、2時間にわたり室温で撹拌させておく。最後に、50mmolのよう化メチル(Aldrich Chemical Company)が反応混合物に添加される。この反応は室温で一晩撹拌される。明るい褐色の溶液が得られる。反応混合物はついで、600mLの脱イオン水が入っているビーカーの中に注ぎ入れられる。ろ過によって収集される黄色っぽいオレンジ色の個体は、400mLの脱イオン水と400mLの2ープロパノールによって連続して洗浄される。粗ポリマーはさらに、微量のテトラヒドロフラン(少量のN−メチル−2−ピロリドンを添加してポリマーの溶解を促進してもよい)の中に再度溶かし、脱イオン水に再度沈澱させることによって精製される。ろ過によって収集される最終ポリマーは、メタノール,エチル・エーテルで洗浄され、真空下で乾燥されて80%の収量を得る。
【0044】
前駆ポリマーの構造は、赤外HおよびC13NMRや紫外・可視分光法、元素分析データによって確認される。
例3
前駆ポリマー(22)(R=CHCO)のアセテート誘導体をCN−PPVに転換する以下の条件は、前駆ポリマー(22)のほとんどのエステル誘導体の転換に対応できる。
【0045】
前駆ポリマー(22)のアセテート誘導体の膜は、Nーメチル−2−ピロリドン中の前駆体4%溶液を1000rpmで40秒間、ついで、5000rpmで2分間回転コーティングすることによって、厚さ約900オングストロームとなる。
【0046】
この転換を実施するには、この膜を減圧下の真空オーブン内で加熱する。前駆ポリマーのアセテート・エステルのCN−PPVへの完全な転換には、温度が280℃から300℃、−10−5から10−6torr真空で4時間を必要とする。この転換温度は、前駆ポリマー(22)のキサントゲン酸エステル誘導体の場合には、200℃以下に低下できる。
【0047】
前駆ポリマーの構造は、赤外紫外・可視分光法や元素分析によって確認される。
前駆ポリマーのアセテート・エステルを10−6torr真空下で300℃で熱処理して得られるCN−PPVは、ホトルミネセンス・スペクトルで約630nm近辺にピーク放射を有する。ストーク・シフト(stork shift)は異常に大きく、約0.8evである。
例4
有機ELデバイスは以下の方法で製造される。
【0048】
(a)indium tin oxide(ITO)コーテッド・ガラス基板は、商業洗剤により超音波洗浄され、脱イオン水ですすがれ、2−プロパノールとアセトンで脱脂され、ろ過した窒素をブローすることによって乾燥される。
【0049】
(b)ITO層の上に、PPVスルホニウム前駆ポリマーの膜の熱処理によって、300オングストロームのPPVの正孔輸送層が蒸着され、これは、メタノール溶液から回転コーティングによって得られる。
【0050】
(c)電子輸送・放射層としての900オングストロームのCN−PPV層は、前駆ポリマーのアセテート・エステル膜の熱処理によって、PPV層の上に蒸着され、これは、N−メチルピロリドン溶液から回転コーティングによって得られる。
【0051】
(d)発光層の上には、2000オングストロームのアルミニウムが蒸着されて、有機ELデバイスを完成する。
【0052】
動作において、オレンジ赤色光が、アルミニウム層とITO層の間にかけられたちょうど14Vの順バイアスのところで、裸眼で見えるようになる。このデバイスは、測定量子効率(電子当りのフォトン数)が0.1%で、輝度は700cd/mである。
例5
有機ELデバイスは、例4の記載と同様の方法で構築されるが、PPVの正孔輸送層が省かれる点が異なる。
【0053】
動作において、オレンジ赤色光は、アルミニウム層とITO層の間にかけられた16Vの順バイアスのところで裸眼で見えるようになる。デバイスは測定量子効率(電子当りのフォトン数)が0.06%で輝度は600cd/mである。
【0054】
このため、ポリ(フェニレン・ビニレン)とその誘導体を作成する新しい前駆体ルート方法が開示される。さらに、新しい前駆体ルートは、発光デバイスに使用するCN−PPVにとって新しいクラスの加工可能な前駆体と、発光デバイスにおいて加工可能な新しいクラスのCN−PPVの前駆体の新しい作成方法を提供する。また、発光デバイスにおいてCN−PPVの新しい加工可能な前駆体を利用することによって、比較的高い仕事関数の金属が電子注入接点として利用でき、この金属は、(空中劣化を通常被りやすく、加工・封入が難しい仕事関数の低い)以前必要とされた金属に代わって、容易に加工しやすく、周囲に対する安定性が大幅に向上している。そのため、新しい前駆体ルート方法と、発光デバイスにおけるCN−PPVに対する新しいクラスの加工可能前駆体は、製造を簡素化し、効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1つだけの図は、本発明による発光ダイオードの簡略化した断面図を示す。
【符号の説明】
110 発光デバイス(LED)
111 基板
112 導電層
113 キャリヤ輸送材料層
114 PPV誘導体層
115 第2導電層
117 ポテンシャル・ソース

Claims (1)

  1. 第1導電形を有する第1導電層(112);
    前記第1導電層の上に位置する第1キャリヤ輸送材料層(113);
    および前記第1キャリヤ輸送材料層の上に、発光層として配置されるPPV誘導体材料層(114);
    前記発光層の上部に配置される第2導電形を有する第2導電層(115)と;
    によって構成されることを特徴とする有機発光デバイス。
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