JP2004005206A - 道路状況撮影装置、交通管制設備及び交通管制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率良くかつ経済的にカメラを道路に高密度に設置することができる道路状況撮影装置を提供する。
【解決手段】道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に道路状況を撮影するためのカメラが設置されている。
【選択図】 図2
【解決手段】道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に道路状況を撮影するためのカメラが設置されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は道路状況撮影装置、交通管制設備及び交通管制方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速道路の交通管制のためには、道路状況の情報の収集が不可欠である。道路状況収集としては、渋滞判定、所要時間計測などを目的とした交通流計測(マクロ情報計測)と、交通流異常の検出を目的とした監視(ミクロ情報計測)が行われている。
前者の交通流計測には、高速道路の路線上に500m間隔で設置された超音波式車両検知器が用いられている。超音波式車両検知器は、路線上から超音波を発射し反射波によって車を検知する。車両検知器によって検出されたデータは、交通管制センターのコンピュータに送信され、交通量や速度、時間占有率などを算出する処理が行われて渋滞状況が判定される。
【0003】
後者の交通流異常の検出には、カメラと画像処理装置から構成される突発事象検出システムが用いられている。この突発事象検出システムは、ミクロ情報として車両挙動の計測を行い、見通しの悪い急カーブやトンネル部などで発生する事故等に代表される交通障害事象を自動的に検出するシステムである。この突発事象検出システムは、事故多発地点に限定的に設置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
交通流(マクロ情報)と車両挙動(ミクロ情報)の計測は、ともに高度化が要求されているが、超音波式車両検知器による交通流計測は、計測の精度が低いという問題がある。具体的には、超音波式車両検知器は、(a)地点速度を利用しているため車両の低速度領域での平均速度の誤差の発生、(b)平均車長を用いて速度を算出するため平均速度の誤差の発生、(c)スポットセンサであるため車両の車線変更などの走行軌跡変化による検知ミス、(d)時空間的に連続な交通流計測ができない、などの問題がある。
【0005】
そこで、道路状況の情報の高度化のために、超音波式車両検知器に代えて、突発事象検出システムの如きカメラを用いた画像処理システムを採用することが考えられる。
しかし、カメラで交通流を含めた道路情報を検出しようとする場合、突発事象検出システムのように少数のカメラを道路に限定的に設置するというわけにはいかず、高速道路の全区間に膨大な数のカメラを高密度(例えば、数十メートル毎)に設置する必要がある。
【0006】
ところが、道路状況を撮影するには路面から十分高い位置にカメラを設置する必要があるため、膨大な数のカメラを設置するには、膨大な数のカメラ用支柱が必要となる。膨大な数のカメラ用支柱の設置が必要となれば、その設置コストも非常に高くなり、設置工事にも長期間を要することになり、実現が困難である。本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、効率良くかつ経済的にカメラを道路に高密度に設置することができる道路状況撮影装置を提供し、高度化された交通管制設備、交通管制方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記目的は、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に道路状況を撮影するためのカメラが設置されていることで達成される。つまり、カメラを道路に設置されている照明柱に設けたため、カメラを効率良くかつ経済的に道路に設置することができる。しかも、照明柱の明かりを撮影用の明かりとして利用できるため、好ましい撮影環境が得られる。
また、前記照明柱は、照明灯具と当該照明灯具を支持する支柱部とを有し、前記カメラは、前記照明灯具に隣接して設けられているのが好ましい。さらには、前記カメラは前記照明柱と共用の電源で動作するのが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る交通管制設備は、道路に設置された複数のカメラによって撮影された画像に映っている個々の車両を認識して道路上の車両の挙動をコンピュータで再現する交通管制設備であって、前記カメラは、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に設置されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係る交通管制設備は、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に設置されたカメラによって道路状況を撮影し、撮影された画像に映っている個々の車両の認識を画像処理により行い、カメラが設置されている区間の道路構造マップ上に車両の挙動を再現することをことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の管制設備及び管制方法が適用される道路構造物1(以下、単に道路ともいう)を例示している。この道路構造物1は、高架式であり、地中の図示しない基礎構造部に支持された橋脚2の上部に設置された橋げた3を介して床版4が設けられている。この床版4の表面は舗装され走行路面とされている。走行路面の左右の車線を区切るための中央分離帯5が設けられている。また、走行路面の左右両側には高欄6,6が設けられている。
【0010】
走行面の下方には、中央分離帯5の下方位置にケーブルラック7が設けられている。このケーブルラック7には、光ファイバーケーブルや電力ケーブルなどが収納されており、道路と並行に延びる通信網と電力供給網が敷設されている。
中央分離帯5には、走行路面を照らすための照明柱8が設けられている。照明柱8は、走行路面の長さ方向に沿って等間隔で設けられている。これらの照明柱8は通常、約30m間隔で設置されている。
図2に示すように、照明柱8は、中央分離帯5から上部に延びる支柱部9と、支柱部9の上部に設けられた照明灯具10とを備えている。
【0011】
照明灯具10は、左右中央の本体ケーシング11と、本体ケーシング11の左右両側に設けられたランプ部12,12とを備えている。ランプ部12,12はそれらの下面が発光面12a,12aであり、中央分離帯5の上方から左右の走行路面を照らすことができるようになっている。
照明灯具10は、ランプ部12を発光させるための電力供給を走行路面の下に延設された前記電力供給網から得ており、中央分離帯5の下方位置に敷設された電力ケーブルから支柱部9の内部又は外部を通ってランプ部12,12に至る電力供給ケーブルが設けられている。
【0012】
道路に設けられている多数の照明柱8のうち、いくつかの照明柱8には、道路状況を撮影するためのカメラ13が設けられている。照明柱8にカメラ13を設けることで本発明の道路状況撮影装置が構成されている。このカメラ13はCCDカメラであり、本体ケーシング11に設けられている。CCDカメラ13は本体ケーシング11に内蔵されており、本体ケーシング11に設けられた撮影窓14を介して道路状況を撮影できるようになっている。
図3に示すように、カメラ13は、照明柱8一本おきに設けられている。つまり、各カメラ13は約60m間隔で設けられている。また、カメラ13は走行路面の長さ方向に向けられており、図3の原画像(例)に示すように道路の長さ方向が画像の奥行き方向となっている画像を撮影することができる。なお、隣接するカメラ13,13の視野は重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。
【0013】
以上のように、道路状況を撮影するカメラ13を照明柱8に設けたため、カメラ13設置のための支柱を高速道路に新たに設置することなくカメラ13を効率良くかつ経済的に高速道路に設置することができる。すなわち、従来も突発事象検出システムのために阪神高速道路では事故の発生しやすい数ヶ所にカメラを設けていたが、従来においてはカメラを設置するために専用の支柱も設置しており、1台のカメラを設置するにもコスト高であった。このため、専用の支柱が必要とされるカメラを阪神高速道路の全区間(200km以上)に約60m間隔で設置しようとすれば、莫大な費用が必要であり、実現の妨げになっていたが、高速道路に備わっている照明柱を利用することで、コストを大幅に低減することができ実現可能となった。
【0014】
しかも、照明柱は、一部山岳地域を除いて約30m間隔で高密度でかつ等間隔で設置されていることから、多数のカメラ13を高密度で設置するのに非常に適している。
また、照明灯具10を点灯させるための電力供給ケーブルがカメラ13近傍まで延びていることから、照明柱8に設けられたカメラ13の動作電源をこの電力供給ケーブルから得ることができる。つまり、照明灯具10とカメラ13の電源は共用化でき、カメラを設置する際の電気配線工事も非常に容易である。
【0015】
そして、カメラ13はランプ部12に隣接するように照明灯具10に設けられているので、ランプ部12の明かりを撮影用の明かりとして利用でき、好ましい撮影環境となる。なお、カメラ13は照明灯具10の近傍に隣接して設けてもよい。
さらに、カメラ13によって撮影した道路状況の画像データは、高速道路に設けられた通信網(光ファイバーケーブル)を利用して送信でき、さらに光ファイバーケーブルは中央分離帯5の下を通っているため、配線工事も容易である。
【0016】
なお、図2及び図3では、1本の照明柱8にカメラ13を1台設けたものを示したが、1本の照明柱8にカメラ13を複数台設置してもよい。例えばカメラ13を2台設置する場合、一方のカメラ13を走行路面の長さ方向一方側に向けるとともに、他方のカメラ13を走行路面の長さ方向他方側に向けて撮影範囲を広くとってもよい。また、複数台のカメラ13を同方向に向けて撮影精度を向上させてもよい。
さらに、照明柱8は、中央分離帯5に設けられていなくともよく、走路路面の左右両側に設けられていてもよい。
【0017】
CCDカメラ13によって撮影された画像にはコンピュータによる画像処理が施され、画像に映る車両の認識が行われる。この画像処理の結果、車両の大きさ、車両の位置、車両の速度、加速度、車両の種類、車両の色、車両の向き、回転速度などの情報が得られる。
画像処理は、カメラ13への入力画像がA/D変換された後に行われる。車両の認識のための画像処理アルゴリズム15における各処理は、図4に示すフローチャートに従って行われる。
【0018】
画像処理アルゴリズムにおける処理としては、まず画像補正S1が行われる。画像補正S1としては、カメラのレンズによる歪みの補正や入力画像に含まれるノイズの除去をするためのスムージング処理が行われる。さらにカメラ13は屋外に設置されているため、撮影時刻により画像の輝度はばらつきが大きくなる。コントラストが小さい場合は、コントラスト強調の処理を行ってもよい。
次の処理として、必要な場合には座標変換S2が行われる。画像上に検出するべき物体が存在し、その物体の空間上の位置を認識する場合は、画像が空間そのものでない以上、何らかの座標変換が必要となる。座標変換にはいくつかのパターンがある。まずは、実際の空間とカメラがとらえた画像とで座標の対応付けを行わなければならない。本発明の場合、カメラの設置が屋外であり、道路や風の振動を受けるため、殆どの画像についておこなうべきである。なお、1台のカメラでとらえた画像から座標を算出する場合は、画像が2次元情報であるので、予め3次元座標の情報が与えられていなければならない。また、道路を斜め上から撮影する場合には遠近の差が生じるので、遠近の差がなくなるように変換処理を行う場合もある。また、道路については平坦な直線区間だけでなく、勾配(車両進行方向及びその直角方向)や曲線の区間も存在するため、それらを考慮した変換処理が必要となる。
【0019】
さらに、次の処理として、差分処理S3が行われる。差分処理S3は画像内の物体を抽出する際の基本となるアルゴリズムであり、背景差分、時間差分、空間差分の3種類の方法があり、いずれの処理方法も採用できる。
背景差分は、予め認識された背景画像と任意の時刻で撮影された画像とで輝度の差分をとる方法である。時間差分は時間的に最も近接する2枚の画像間で輝度の差分をとる方法である。また、空間差分は1枚の画像内で近接する画素との輝度差を数値化する方法である。
【0020】
続いて、検出対象の輪郭または領域の抽出処理S4が行われる。上記の差分処理S3の結果、検出対象の輪郭または領域が抽出できるが、抽出の際には多くの場合2値化処理が行われる。
抽出処理S4により画像中に物体が存在することが判定でき、さらに、その物体を検出対象として認識する処理S5が行われる。道路状況の画像の場合、主な検出対象は車両であるが、車両以外にも検出対象としては、車両通交の障害となる落下物または飛来物、影、路面反射などを含めるのがよい。対象を認識する処理S5の流れとしては、1つの物体とみなす範囲を決め、次にそれぞれの物体が何であるかを判定すればよい。物体を区別する最も簡単な方法は、1つの物体とみなされる範囲の大きさから判定する方法である。
【0021】
対象の認識処理S5の後、必要であれば座標変換S6が行われる。ここでの座標変換S6は主に対象の位置を検出するための座標変換である。その後、対象の追跡処理S7が行われる。この対象の追跡処理S7は、検出対象となっている物体が時間とともにどのように変化を追跡するための処理である。追跡処理S7を行うために、ある時点で得られた画像から検出された物体にはIDが付けられる。そして、その直後に得られた画像と比較が行われ、同定された物体には同一のIDがつけられる。
【0022】
物体の同定には、抽出処理後の画像または入力信号に近い状態にある画像で時間的に最も近接した2枚の画像において形状及び画像内での位置が最も近いものを同一物体とみなせばよい。また、過去の物体の移動量から次の画像におけるその物体の位置を推測し、その位置を中心に同一物体を探索する方法でもよい。なお、画像撮影のサンプリング周期が十分に短ければ、検出対象自体の遠近差や向きの変化等による形状変化は少なく、移動速度が車両程度の物体であれば移動量も限られているため、単純な方法でも追跡は可能である。
【0023】
以上の画像処理により、認識された物体の大きさや、物体の位置の情報が得られる。また、異なる2つの時刻において同定された物体の位置がわかれば速度と加速度を算出することができる。さらに、認識された物体の大きさや形状から車両の種類(普通車、大型車など)を区別することができるし、カラー方式のカメラ13を用いれば車両の色を検出することもできる。
また、検出された物体が車両の場合、その形状は通常、直方体として認識され、直方体の長手方向を車両の向きとして検出できる。さらに走行車両がカーブしているときには車両の向きが変化するので向き(角度)の変化量を時間で割ることにより回転速度が算出できる。
【0024】
以上の画像処理15は、道路の所定区間ごとに設置された端末コンピュータ(図示省略)によって行われる。端末コンピュータは高速道路において約2km毎に設置されており、複数台のカメラ13の入力画像を処理することができる。端末コンピュータでの画像処理により得られた車両データは高架下の光ファイバ通信網を利用して管制センターに設置されているホストコンピュータに送信される。
観測対象となる路線(以下、観測区間ともいう)に設置された複数のカメラから送られてきた車両データは、ホストコンピュータに集約される。例えば、カメラ13を阪神高速道路の全路線に設置し、全路線を観測対象とすることができる。全路線を観測対象とする場合、カメラ13の設置台数は膨大になるが、画像処理は端末コンピュータ側で行われるため、ホストコンピュータの処理負担及び通信量は軽減できる。なお、ホストコンピュータの処理能力や通信網の通信容量を十分に大きくできれば、端末コンピュータを省略することもできる。
【0025】
ホストコンピュータでは、複数のカメラにより得られる画像から観測区間における車両の動きを再現するために、複数のカメラから得られた車両データから同一の車両を判定する処理が行われる。同一車両の判定は、ある車両の複数のカメラ視野にまたがる動きを再現するために必要であり、図5及び図6に例示するように行われる。
図5において右側の長円で示される「カメラ1」の視野V1と、左側の長円で示される「カメラ2」の視野V2とがあった場合、車両Aがカメラ1の視野V1から外れたときに、車両Aの動きを追跡するためには、車両進行方向の先にあるカメラ2で視認された車両のうちどの車両が車両Aであるかを推定しなければならない。この推定が同一車両の判定処理である。
【0026】
ここで、図5に示すようにカメラ2に視認された移動体として「車両?1」と「車両?2」とが認識されると(図6のA1)、これら車両?1及び車両?2の情報(位置、速度、車種など)が上記画像処理により車両データとして取得される(図6のA2)。
また、カメラ1から外れた移動体(車両A)の情報(位置、速度、加速度、車種など)を基に(図6のA3)、時間差を考慮して、現在の車両Aの情報の推定を行い、カメラ2の視野における車両Aの推定位置、推定速度、車種情報などの期待値分布を求める(図6のA4)。
【0027】
例えば、現在の車両Aの位置の期待値分布が図5のGで示す曲線のようになった場合、車両?1が車両Aである確率X1と車両?2が車両Aである確率X2がそれぞれ求められ、確率の最も高い車両?1が車両Aであると推定される(図6のA5)。また、車両?1が車両Aである確率は、前記の推定速度、推定車種なども用いた総合評価で算出することができる。
車両?1が車両Aであると推定されると、車両?1には車両Aと同一の車両IDが付けられる。以上の処理によって、カメラ1で視認された車両Aとカメラ2で視認された車両?1とは同一の車両としてコンピュータ上で取り扱われ、観測区間を複数のカメラで観察しても、各カメラの視野にまたがって時間的に連続した個々の車両の挙動を得ることができる。
【0028】
観測区間における個々の車両の挙動は、予めメモリに記憶されている道路構造データ20と重ね合わされる。道路構造データ20は、車線の位置や分合流構造などの道路構造を示すデータである。道路構造データ20への車両挙動の重ね合わせは、道路構造データ上の位置座標とカメラで認識された個々の車両の画像上の位置座標とを整合させることで行える。時間的に変化する個々の車両の挙動はデータベースに記憶され、事後的な利用が可能とされている。
図7は道路構造を図形表示した道路構造マップ20上の車両の挙動をコンピュータモニタで再現した状態を示している。図8は、阪神高速道路1号環状線を中心とした道路構造マップ20における車両の挙動をモニタで再現した状態を示している。図7及び図8中、黒い長方形が車両を示している。
【0029】
モニタでは、図7のように一部の区間を拡大表示したり、図8のように路線全体を表示するために、表示尺度を拡大縮小切替自在とされており、様々な状態で交通状況を把握できる。また、車両の挙動はリアルタイムで表示される。
従来の管制センタにおいても、道路マップを用いた渋滞表示などは行われているが、従来の渋滞表示は、道路のある区間が渋滞しているか否かを道路マップ上でランプ表示するだけであるため、個々の車両の挙動は不明であった。しかし図7や図8のように個々の車両の挙動が再現されるリアルタイムシミュレーションにより、リアルタイムで観測区間における全車両位置や挙動を把握できる。
【0030】
図9は、上記のような道路状況の把握による交通管制のプロセスを示しており、照明柱8に設置されたカメラ13から道路状況(路面状況)の画像を取得し(図9のB1)、画像処理15により車両データを取得し(車両情報の数値化;図9のB2)、ホストコンピュータにおいて観測区間である全路線分の車両データと道路構造データ20を合成しコンピュータ上に再現する(図9のB3)のは前述の通りである。
以上のようにして得られた観測区間の個々の車両データ(全通行車両データ)は、非常に有用であり、「自車両位置、自車両速度、障害物情報、路面情報、先行車情報」などとして、AHS(Advanced Cruise−Assist Highway Systems;走行支援システム)への情報提供に用いられる他、全通行車両データから現在の交通状態を評価することにより渋滞の発生や事故の発生を認識することができる(図9のB4)。交通状態の評価は従来の突破事象検出システムを使用して異常走行パターンを検出することができ、渋滞や事故の発生情報は利用者に提供される(図9のB7)。なお、利用者への情報提供は、VICS(Vehicle Information and Communication System;道路交通情報通信システム)や電光掲示板を介して行われ、安全運転の支援や利用者サービスができる
また、現在の全通行車両データから交通流解析システムにより、今後の交通状況を予測することもできる(図9のB5)。渋滞の予報も利用者へ情報提供される(図9のB7)。また、通行車両状況の予測に基づき、交通制御を行うこともできる(図9のB6)。例えば、入口閉鎖などの交通制御を行った場合の、今後の通行量の変化を交通流解析システムによりシミュレーションし、全交通量が最大となるように交通制御を最適化したり、適切な交通規制を行うことができる。
【0031】
車両データの活用法をまとめると次のようになる。
まず、得られた車両データの性格としては、個々の車両データに着目すると、個々の車両の位置、大きさ、速度ベクトル等のミクロ情報として捉えられるが、カメラが全路線上に展開されていることから全路線の車両分布情報であるマクロ情報としても捉えることもできる。
マクロ情報(全線の車両分布情報)の活用としては、▲1▼渋滞の発生パターンの分析と原因解明に寄与でき、渋滞予測や渋滞対策が可能になる、▲2▼事故の発生パターンの分析と原因解明に寄与でき、交通安全対策が可能となる、▲3▼交通量、速度、密度の相互関係を精度良く捕らえることができ、合理的な処理対策が可能となる、▲4▼分合流部における交通導流パターンの分析ができ、分合流部における渋滞や事故の対策が可能となる、▲5▼車線の引き方と交通導流パターンの分析ができ、渋滞や事故を最小限に抑える車線の引き方などの対策が可能となる、▲6▼相対速度のばらつきと断面交通量の関係の分析ができ、規制速度の検討が可能となる。
【0032】
ミクロ情報(個別車両の数値情報)の活用としては、▲1▼自車両の位置、速度ベクトル、路肩との位置関係などのミクロ情報を車両側に与えることにより、AHSの支援となる、▲2▼前後の車輌のミクロ情報と自車のミクロ情報との関係、また落下物などの情報を相互に通信することにより安全運転の支援を行うことができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、道路状況を撮影するカメラを道路に設置されている照明柱に設けたため、カメラを効率良くかつ経済的に道路に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高架式高速道路の構造図である。
【図2】照明柱の斜視図である。
【図3】照明柱に設けたカメラによる撮影のイメージ図である。
【図4】カメラで撮影した画像の画像処理アルゴリズムのフローチャートである。
【図5】複数のカメラにより撮影された画像間で車両の同一性を判定するための概念図である。
【図6】車両の同一性を判定するためのプロセス図である。
【図7】道路構造マップにおける車両挙動のモニタへの表示イメージ図である。
【図8】阪神高速道路1号環状線を中心とした道路構造マップにおける車両挙動のモニタへの表示イメージ図である。
【図9】交通管制プロセス図である。
【符号の説明】
1 道路
5 中央分離帯
8 照明柱
9 支柱部
10 照明灯具
13 カメラ
20 道路構造データ
【発明の属する技術分野】
本発明は道路状況撮影装置、交通管制設備及び交通管制方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速道路の交通管制のためには、道路状況の情報の収集が不可欠である。道路状況収集としては、渋滞判定、所要時間計測などを目的とした交通流計測(マクロ情報計測)と、交通流異常の検出を目的とした監視(ミクロ情報計測)が行われている。
前者の交通流計測には、高速道路の路線上に500m間隔で設置された超音波式車両検知器が用いられている。超音波式車両検知器は、路線上から超音波を発射し反射波によって車を検知する。車両検知器によって検出されたデータは、交通管制センターのコンピュータに送信され、交通量や速度、時間占有率などを算出する処理が行われて渋滞状況が判定される。
【0003】
後者の交通流異常の検出には、カメラと画像処理装置から構成される突発事象検出システムが用いられている。この突発事象検出システムは、ミクロ情報として車両挙動の計測を行い、見通しの悪い急カーブやトンネル部などで発生する事故等に代表される交通障害事象を自動的に検出するシステムである。この突発事象検出システムは、事故多発地点に限定的に設置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
交通流(マクロ情報)と車両挙動(ミクロ情報)の計測は、ともに高度化が要求されているが、超音波式車両検知器による交通流計測は、計測の精度が低いという問題がある。具体的には、超音波式車両検知器は、(a)地点速度を利用しているため車両の低速度領域での平均速度の誤差の発生、(b)平均車長を用いて速度を算出するため平均速度の誤差の発生、(c)スポットセンサであるため車両の車線変更などの走行軌跡変化による検知ミス、(d)時空間的に連続な交通流計測ができない、などの問題がある。
【0005】
そこで、道路状況の情報の高度化のために、超音波式車両検知器に代えて、突発事象検出システムの如きカメラを用いた画像処理システムを採用することが考えられる。
しかし、カメラで交通流を含めた道路情報を検出しようとする場合、突発事象検出システムのように少数のカメラを道路に限定的に設置するというわけにはいかず、高速道路の全区間に膨大な数のカメラを高密度(例えば、数十メートル毎)に設置する必要がある。
【0006】
ところが、道路状況を撮影するには路面から十分高い位置にカメラを設置する必要があるため、膨大な数のカメラを設置するには、膨大な数のカメラ用支柱が必要となる。膨大な数のカメラ用支柱の設置が必要となれば、その設置コストも非常に高くなり、設置工事にも長期間を要することになり、実現が困難である。本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、効率良くかつ経済的にカメラを道路に高密度に設置することができる道路状況撮影装置を提供し、高度化された交通管制設備、交通管制方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記目的は、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に道路状況を撮影するためのカメラが設置されていることで達成される。つまり、カメラを道路に設置されている照明柱に設けたため、カメラを効率良くかつ経済的に道路に設置することができる。しかも、照明柱の明かりを撮影用の明かりとして利用できるため、好ましい撮影環境が得られる。
また、前記照明柱は、照明灯具と当該照明灯具を支持する支柱部とを有し、前記カメラは、前記照明灯具に隣接して設けられているのが好ましい。さらには、前記カメラは前記照明柱と共用の電源で動作するのが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る交通管制設備は、道路に設置された複数のカメラによって撮影された画像に映っている個々の車両を認識して道路上の車両の挙動をコンピュータで再現する交通管制設備であって、前記カメラは、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に設置されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係る交通管制設備は、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に設置されたカメラによって道路状況を撮影し、撮影された画像に映っている個々の車両の認識を画像処理により行い、カメラが設置されている区間の道路構造マップ上に車両の挙動を再現することをことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の管制設備及び管制方法が適用される道路構造物1(以下、単に道路ともいう)を例示している。この道路構造物1は、高架式であり、地中の図示しない基礎構造部に支持された橋脚2の上部に設置された橋げた3を介して床版4が設けられている。この床版4の表面は舗装され走行路面とされている。走行路面の左右の車線を区切るための中央分離帯5が設けられている。また、走行路面の左右両側には高欄6,6が設けられている。
【0010】
走行面の下方には、中央分離帯5の下方位置にケーブルラック7が設けられている。このケーブルラック7には、光ファイバーケーブルや電力ケーブルなどが収納されており、道路と並行に延びる通信網と電力供給網が敷設されている。
中央分離帯5には、走行路面を照らすための照明柱8が設けられている。照明柱8は、走行路面の長さ方向に沿って等間隔で設けられている。これらの照明柱8は通常、約30m間隔で設置されている。
図2に示すように、照明柱8は、中央分離帯5から上部に延びる支柱部9と、支柱部9の上部に設けられた照明灯具10とを備えている。
【0011】
照明灯具10は、左右中央の本体ケーシング11と、本体ケーシング11の左右両側に設けられたランプ部12,12とを備えている。ランプ部12,12はそれらの下面が発光面12a,12aであり、中央分離帯5の上方から左右の走行路面を照らすことができるようになっている。
照明灯具10は、ランプ部12を発光させるための電力供給を走行路面の下に延設された前記電力供給網から得ており、中央分離帯5の下方位置に敷設された電力ケーブルから支柱部9の内部又は外部を通ってランプ部12,12に至る電力供給ケーブルが設けられている。
【0012】
道路に設けられている多数の照明柱8のうち、いくつかの照明柱8には、道路状況を撮影するためのカメラ13が設けられている。照明柱8にカメラ13を設けることで本発明の道路状況撮影装置が構成されている。このカメラ13はCCDカメラであり、本体ケーシング11に設けられている。CCDカメラ13は本体ケーシング11に内蔵されており、本体ケーシング11に設けられた撮影窓14を介して道路状況を撮影できるようになっている。
図3に示すように、カメラ13は、照明柱8一本おきに設けられている。つまり、各カメラ13は約60m間隔で設けられている。また、カメラ13は走行路面の長さ方向に向けられており、図3の原画像(例)に示すように道路の長さ方向が画像の奥行き方向となっている画像を撮影することができる。なお、隣接するカメラ13,13の視野は重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。
【0013】
以上のように、道路状況を撮影するカメラ13を照明柱8に設けたため、カメラ13設置のための支柱を高速道路に新たに設置することなくカメラ13を効率良くかつ経済的に高速道路に設置することができる。すなわち、従来も突発事象検出システムのために阪神高速道路では事故の発生しやすい数ヶ所にカメラを設けていたが、従来においてはカメラを設置するために専用の支柱も設置しており、1台のカメラを設置するにもコスト高であった。このため、専用の支柱が必要とされるカメラを阪神高速道路の全区間(200km以上)に約60m間隔で設置しようとすれば、莫大な費用が必要であり、実現の妨げになっていたが、高速道路に備わっている照明柱を利用することで、コストを大幅に低減することができ実現可能となった。
【0014】
しかも、照明柱は、一部山岳地域を除いて約30m間隔で高密度でかつ等間隔で設置されていることから、多数のカメラ13を高密度で設置するのに非常に適している。
また、照明灯具10を点灯させるための電力供給ケーブルがカメラ13近傍まで延びていることから、照明柱8に設けられたカメラ13の動作電源をこの電力供給ケーブルから得ることができる。つまり、照明灯具10とカメラ13の電源は共用化でき、カメラを設置する際の電気配線工事も非常に容易である。
【0015】
そして、カメラ13はランプ部12に隣接するように照明灯具10に設けられているので、ランプ部12の明かりを撮影用の明かりとして利用でき、好ましい撮影環境となる。なお、カメラ13は照明灯具10の近傍に隣接して設けてもよい。
さらに、カメラ13によって撮影した道路状況の画像データは、高速道路に設けられた通信網(光ファイバーケーブル)を利用して送信でき、さらに光ファイバーケーブルは中央分離帯5の下を通っているため、配線工事も容易である。
【0016】
なお、図2及び図3では、1本の照明柱8にカメラ13を1台設けたものを示したが、1本の照明柱8にカメラ13を複数台設置してもよい。例えばカメラ13を2台設置する場合、一方のカメラ13を走行路面の長さ方向一方側に向けるとともに、他方のカメラ13を走行路面の長さ方向他方側に向けて撮影範囲を広くとってもよい。また、複数台のカメラ13を同方向に向けて撮影精度を向上させてもよい。
さらに、照明柱8は、中央分離帯5に設けられていなくともよく、走路路面の左右両側に設けられていてもよい。
【0017】
CCDカメラ13によって撮影された画像にはコンピュータによる画像処理が施され、画像に映る車両の認識が行われる。この画像処理の結果、車両の大きさ、車両の位置、車両の速度、加速度、車両の種類、車両の色、車両の向き、回転速度などの情報が得られる。
画像処理は、カメラ13への入力画像がA/D変換された後に行われる。車両の認識のための画像処理アルゴリズム15における各処理は、図4に示すフローチャートに従って行われる。
【0018】
画像処理アルゴリズムにおける処理としては、まず画像補正S1が行われる。画像補正S1としては、カメラのレンズによる歪みの補正や入力画像に含まれるノイズの除去をするためのスムージング処理が行われる。さらにカメラ13は屋外に設置されているため、撮影時刻により画像の輝度はばらつきが大きくなる。コントラストが小さい場合は、コントラスト強調の処理を行ってもよい。
次の処理として、必要な場合には座標変換S2が行われる。画像上に検出するべき物体が存在し、その物体の空間上の位置を認識する場合は、画像が空間そのものでない以上、何らかの座標変換が必要となる。座標変換にはいくつかのパターンがある。まずは、実際の空間とカメラがとらえた画像とで座標の対応付けを行わなければならない。本発明の場合、カメラの設置が屋外であり、道路や風の振動を受けるため、殆どの画像についておこなうべきである。なお、1台のカメラでとらえた画像から座標を算出する場合は、画像が2次元情報であるので、予め3次元座標の情報が与えられていなければならない。また、道路を斜め上から撮影する場合には遠近の差が生じるので、遠近の差がなくなるように変換処理を行う場合もある。また、道路については平坦な直線区間だけでなく、勾配(車両進行方向及びその直角方向)や曲線の区間も存在するため、それらを考慮した変換処理が必要となる。
【0019】
さらに、次の処理として、差分処理S3が行われる。差分処理S3は画像内の物体を抽出する際の基本となるアルゴリズムであり、背景差分、時間差分、空間差分の3種類の方法があり、いずれの処理方法も採用できる。
背景差分は、予め認識された背景画像と任意の時刻で撮影された画像とで輝度の差分をとる方法である。時間差分は時間的に最も近接する2枚の画像間で輝度の差分をとる方法である。また、空間差分は1枚の画像内で近接する画素との輝度差を数値化する方法である。
【0020】
続いて、検出対象の輪郭または領域の抽出処理S4が行われる。上記の差分処理S3の結果、検出対象の輪郭または領域が抽出できるが、抽出の際には多くの場合2値化処理が行われる。
抽出処理S4により画像中に物体が存在することが判定でき、さらに、その物体を検出対象として認識する処理S5が行われる。道路状況の画像の場合、主な検出対象は車両であるが、車両以外にも検出対象としては、車両通交の障害となる落下物または飛来物、影、路面反射などを含めるのがよい。対象を認識する処理S5の流れとしては、1つの物体とみなす範囲を決め、次にそれぞれの物体が何であるかを判定すればよい。物体を区別する最も簡単な方法は、1つの物体とみなされる範囲の大きさから判定する方法である。
【0021】
対象の認識処理S5の後、必要であれば座標変換S6が行われる。ここでの座標変換S6は主に対象の位置を検出するための座標変換である。その後、対象の追跡処理S7が行われる。この対象の追跡処理S7は、検出対象となっている物体が時間とともにどのように変化を追跡するための処理である。追跡処理S7を行うために、ある時点で得られた画像から検出された物体にはIDが付けられる。そして、その直後に得られた画像と比較が行われ、同定された物体には同一のIDがつけられる。
【0022】
物体の同定には、抽出処理後の画像または入力信号に近い状態にある画像で時間的に最も近接した2枚の画像において形状及び画像内での位置が最も近いものを同一物体とみなせばよい。また、過去の物体の移動量から次の画像におけるその物体の位置を推測し、その位置を中心に同一物体を探索する方法でもよい。なお、画像撮影のサンプリング周期が十分に短ければ、検出対象自体の遠近差や向きの変化等による形状変化は少なく、移動速度が車両程度の物体であれば移動量も限られているため、単純な方法でも追跡は可能である。
【0023】
以上の画像処理により、認識された物体の大きさや、物体の位置の情報が得られる。また、異なる2つの時刻において同定された物体の位置がわかれば速度と加速度を算出することができる。さらに、認識された物体の大きさや形状から車両の種類(普通車、大型車など)を区別することができるし、カラー方式のカメラ13を用いれば車両の色を検出することもできる。
また、検出された物体が車両の場合、その形状は通常、直方体として認識され、直方体の長手方向を車両の向きとして検出できる。さらに走行車両がカーブしているときには車両の向きが変化するので向き(角度)の変化量を時間で割ることにより回転速度が算出できる。
【0024】
以上の画像処理15は、道路の所定区間ごとに設置された端末コンピュータ(図示省略)によって行われる。端末コンピュータは高速道路において約2km毎に設置されており、複数台のカメラ13の入力画像を処理することができる。端末コンピュータでの画像処理により得られた車両データは高架下の光ファイバ通信網を利用して管制センターに設置されているホストコンピュータに送信される。
観測対象となる路線(以下、観測区間ともいう)に設置された複数のカメラから送られてきた車両データは、ホストコンピュータに集約される。例えば、カメラ13を阪神高速道路の全路線に設置し、全路線を観測対象とすることができる。全路線を観測対象とする場合、カメラ13の設置台数は膨大になるが、画像処理は端末コンピュータ側で行われるため、ホストコンピュータの処理負担及び通信量は軽減できる。なお、ホストコンピュータの処理能力や通信網の通信容量を十分に大きくできれば、端末コンピュータを省略することもできる。
【0025】
ホストコンピュータでは、複数のカメラにより得られる画像から観測区間における車両の動きを再現するために、複数のカメラから得られた車両データから同一の車両を判定する処理が行われる。同一車両の判定は、ある車両の複数のカメラ視野にまたがる動きを再現するために必要であり、図5及び図6に例示するように行われる。
図5において右側の長円で示される「カメラ1」の視野V1と、左側の長円で示される「カメラ2」の視野V2とがあった場合、車両Aがカメラ1の視野V1から外れたときに、車両Aの動きを追跡するためには、車両進行方向の先にあるカメラ2で視認された車両のうちどの車両が車両Aであるかを推定しなければならない。この推定が同一車両の判定処理である。
【0026】
ここで、図5に示すようにカメラ2に視認された移動体として「車両?1」と「車両?2」とが認識されると(図6のA1)、これら車両?1及び車両?2の情報(位置、速度、車種など)が上記画像処理により車両データとして取得される(図6のA2)。
また、カメラ1から外れた移動体(車両A)の情報(位置、速度、加速度、車種など)を基に(図6のA3)、時間差を考慮して、現在の車両Aの情報の推定を行い、カメラ2の視野における車両Aの推定位置、推定速度、車種情報などの期待値分布を求める(図6のA4)。
【0027】
例えば、現在の車両Aの位置の期待値分布が図5のGで示す曲線のようになった場合、車両?1が車両Aである確率X1と車両?2が車両Aである確率X2がそれぞれ求められ、確率の最も高い車両?1が車両Aであると推定される(図6のA5)。また、車両?1が車両Aである確率は、前記の推定速度、推定車種なども用いた総合評価で算出することができる。
車両?1が車両Aであると推定されると、車両?1には車両Aと同一の車両IDが付けられる。以上の処理によって、カメラ1で視認された車両Aとカメラ2で視認された車両?1とは同一の車両としてコンピュータ上で取り扱われ、観測区間を複数のカメラで観察しても、各カメラの視野にまたがって時間的に連続した個々の車両の挙動を得ることができる。
【0028】
観測区間における個々の車両の挙動は、予めメモリに記憶されている道路構造データ20と重ね合わされる。道路構造データ20は、車線の位置や分合流構造などの道路構造を示すデータである。道路構造データ20への車両挙動の重ね合わせは、道路構造データ上の位置座標とカメラで認識された個々の車両の画像上の位置座標とを整合させることで行える。時間的に変化する個々の車両の挙動はデータベースに記憶され、事後的な利用が可能とされている。
図7は道路構造を図形表示した道路構造マップ20上の車両の挙動をコンピュータモニタで再現した状態を示している。図8は、阪神高速道路1号環状線を中心とした道路構造マップ20における車両の挙動をモニタで再現した状態を示している。図7及び図8中、黒い長方形が車両を示している。
【0029】
モニタでは、図7のように一部の区間を拡大表示したり、図8のように路線全体を表示するために、表示尺度を拡大縮小切替自在とされており、様々な状態で交通状況を把握できる。また、車両の挙動はリアルタイムで表示される。
従来の管制センタにおいても、道路マップを用いた渋滞表示などは行われているが、従来の渋滞表示は、道路のある区間が渋滞しているか否かを道路マップ上でランプ表示するだけであるため、個々の車両の挙動は不明であった。しかし図7や図8のように個々の車両の挙動が再現されるリアルタイムシミュレーションにより、リアルタイムで観測区間における全車両位置や挙動を把握できる。
【0030】
図9は、上記のような道路状況の把握による交通管制のプロセスを示しており、照明柱8に設置されたカメラ13から道路状況(路面状況)の画像を取得し(図9のB1)、画像処理15により車両データを取得し(車両情報の数値化;図9のB2)、ホストコンピュータにおいて観測区間である全路線分の車両データと道路構造データ20を合成しコンピュータ上に再現する(図9のB3)のは前述の通りである。
以上のようにして得られた観測区間の個々の車両データ(全通行車両データ)は、非常に有用であり、「自車両位置、自車両速度、障害物情報、路面情報、先行車情報」などとして、AHS(Advanced Cruise−Assist Highway Systems;走行支援システム)への情報提供に用いられる他、全通行車両データから現在の交通状態を評価することにより渋滞の発生や事故の発生を認識することができる(図9のB4)。交通状態の評価は従来の突破事象検出システムを使用して異常走行パターンを検出することができ、渋滞や事故の発生情報は利用者に提供される(図9のB7)。なお、利用者への情報提供は、VICS(Vehicle Information and Communication System;道路交通情報通信システム)や電光掲示板を介して行われ、安全運転の支援や利用者サービスができる
また、現在の全通行車両データから交通流解析システムにより、今後の交通状況を予測することもできる(図9のB5)。渋滞の予報も利用者へ情報提供される(図9のB7)。また、通行車両状況の予測に基づき、交通制御を行うこともできる(図9のB6)。例えば、入口閉鎖などの交通制御を行った場合の、今後の通行量の変化を交通流解析システムによりシミュレーションし、全交通量が最大となるように交通制御を最適化したり、適切な交通規制を行うことができる。
【0031】
車両データの活用法をまとめると次のようになる。
まず、得られた車両データの性格としては、個々の車両データに着目すると、個々の車両の位置、大きさ、速度ベクトル等のミクロ情報として捉えられるが、カメラが全路線上に展開されていることから全路線の車両分布情報であるマクロ情報としても捉えることもできる。
マクロ情報(全線の車両分布情報)の活用としては、▲1▼渋滞の発生パターンの分析と原因解明に寄与でき、渋滞予測や渋滞対策が可能になる、▲2▼事故の発生パターンの分析と原因解明に寄与でき、交通安全対策が可能となる、▲3▼交通量、速度、密度の相互関係を精度良く捕らえることができ、合理的な処理対策が可能となる、▲4▼分合流部における交通導流パターンの分析ができ、分合流部における渋滞や事故の対策が可能となる、▲5▼車線の引き方と交通導流パターンの分析ができ、渋滞や事故を最小限に抑える車線の引き方などの対策が可能となる、▲6▼相対速度のばらつきと断面交通量の関係の分析ができ、規制速度の検討が可能となる。
【0032】
ミクロ情報(個別車両の数値情報)の活用としては、▲1▼自車両の位置、速度ベクトル、路肩との位置関係などのミクロ情報を車両側に与えることにより、AHSの支援となる、▲2▼前後の車輌のミクロ情報と自車のミクロ情報との関係、また落下物などの情報を相互に通信することにより安全運転の支援を行うことができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、道路状況を撮影するカメラを道路に設置されている照明柱に設けたため、カメラを効率良くかつ経済的に道路に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高架式高速道路の構造図である。
【図2】照明柱の斜視図である。
【図3】照明柱に設けたカメラによる撮影のイメージ図である。
【図4】カメラで撮影した画像の画像処理アルゴリズムのフローチャートである。
【図5】複数のカメラにより撮影された画像間で車両の同一性を判定するための概念図である。
【図6】車両の同一性を判定するためのプロセス図である。
【図7】道路構造マップにおける車両挙動のモニタへの表示イメージ図である。
【図8】阪神高速道路1号環状線を中心とした道路構造マップにおける車両挙動のモニタへの表示イメージ図である。
【図9】交通管制プロセス図である。
【符号の説明】
1 道路
5 中央分離帯
8 照明柱
9 支柱部
10 照明灯具
13 カメラ
20 道路構造データ
Claims (5)
- 道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に道路状況を撮影するためのカメラが設置されていることを特徴とする道路状況撮影装置。
- 前記照明柱は、照明灯具と当該照明灯具を支持する支柱部とを有し、
前記カメラは、前記照明灯具に、又は前記照明灯具に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の道路状況撮影装置。 - 前記カメラは前記照明柱と共用の電源で動作することを特徴とする請求項1又は2記載の道路状況撮影装置。
- 道路に設置された複数のカメラによって撮影された画像に映っている個々の車両を認識して道路上の車両の挙動をコンピュータで再現する交通管制設備であって、
前記カメラは、道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に設置されていることを特徴とする交通管制設備。 - 道路の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられた照明柱に設置されたカメラによって道路状況を撮影し、
撮影された画像に映っている個々の車両の認識を画像処理により行い、
カメラが設置されている区間の道路構造マップ上に車両の挙動を再現することをことを特徴とする交通管制方法。
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