JP2004003680A - 差動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】   高負荷時においても十分な差動制限作用が得られ、しかも差動状態と差動制限状態とを適正に切替可能な差動装置を提供する。
【解決手段】 デフケース11内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けた左右1対のプレッシャーリング12であって、内径をサイドギヤ15よりも大径に設定した左右1対のプレッシャーリング12と、両プレッシャーリング12の車軸方向両側に配置した1組のクラッチ手段16と、両プレッシャーリング12間のクリアランス17が狭くなる方向へ両プレッシャーリング12を付勢する付勢手段18と、差動時におけるピニオンシャフト13とデフケース11間の相対回転トルクの増大に応じて、両プレッシャーリング12間のクリアランス17が増大する方向へ、付勢手段18の付勢力に抗してプレッシャーリング12を操作し、クラッチ手段16を作動させる操作手段19とを備えた。
【選択図】  図1

Description

 本発明は、差動制限機能を有する差動装置に関する。
 自動車の差動装置として、片側の車輪のみが空転しようとしたときに、クラッチ手段を介して他方の車輪に対しても十分な回転力が伝達されるようになした差動制限機能を有する差動装置(リミテッドスリップデファレンシャル)が、例えば片側の車輪が氷や雪、ぬかるみ等に乗って該車輪が空転し、他方の車輪に対して十分に回転力が伝達されなくなることを防止したり、旋回や急発進時等における車体の尻振り現象を防止するために広く採用されている。
 例えば、特許文献1、特許文献2には、図8に示すような差動装置100が記載されている。この差動装置100は、デフケース101内に車軸102の方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けた1対のプレッシャーリング103と、プレッシャーリング103間に軸端を保持させた状態で車軸102と直交状に設けたピニオンシャフト104と、ピニオンシャフト104に回転自在に設けたピニオンギヤ105と、左右の車軸102の軸端に相対回転不能にそれぞれ設けた1対のサイドギヤ106であって、ピニオンギヤ105を挟んでその両側においてピニオンギヤ105に噛合する1対のサイドギヤ106と、差動時におけるピニオンシャフト104とデフケース101間の相対回転トルクの増大に応じて、プレッシャーリング103間のクリアランス107が大きくなる方向へプレッシャーリング103を操作する操作手段108と、1対のプレッシャーリング103の車軸方向両側に配置したクラッチ手段109であって、プレッシャーリング103により操作されてクリアランス107が大きくなるにしたがって左右の車軸102の差動を制限するクラッチ手段109とを備えている。
 操作手段108としては、種々の形状のものが提案されているが、例えば、ピニオンシャフト104の軸端に一方の対角線を車軸方向に設定した四角形状のカム部110を形成し、プレッシャーリング103にカム部110に係合する略V字状のカム溝111を形成したものが採用されている。
 また、この差動装置100では、ピニオンシャフト104とデフケース101間に相対回転トルクが発生して操作手段108によりプレッシャーリング103間のクリアランス107が広くなることにより、クラッチ手段109が作動して左右の車輪の差動が制限されることになるが、通常時には両プレッシャーリング103のクリアランス107が設定間隔に復帰するように、両クラッチ手段109の車軸方向外側に皿バネ等の弾性部材112を配置させて、クラッチ手段109の複数のクラッチ板113を介してプレッシャーリング103を相互に接近する方向へ付勢するように構成されている。
特公昭55−27980号公報 特開昭58−221046号公報
 ところで、このような差動装置100においては、差動制限状態においてクラッチ手段109により左右の車輪の差動が確実に制限されるようにするため、クラッチ板113の摩擦圧接部分の面積を十分に確保する必要がある。しかし、デフケース101のサイズは差動装置100と自動車側の各種機器との位置関係からの制約を受けて、現状のものよりも大きく設定することが困難であることから、クラッチ板113の枚数を増やしたりサイズを大きく設定して、現状よりも十分な差動制限作用を得ることが至難であった。
 特に、横置きエンジン車においては、縦置きエンジン車と比較して、エンジンやその周辺部品のレイアウトからの制約が更に厳しく、デフケースの形状や容量が大幅に制約され、例えば図9に示す差動装置120のように、デフケース121の右部を縮径させる必要があり、クラッチ手段122の摩擦圧接部分の面積を十分に大きく設定することが困難で、しかも摩擦圧接力を高めるため弾性部材123の付勢力を高めると、前述のように低速旋回時等において差動状態が得られなくなることから、十分な差動制限作用を得ることが不可能であった。
 また、差動装置100においては、基本的には、車庫入れや縦列駐車などのための低速旋回時には小回りが利くように差動状態となり、片輪空転時や急発進時、高速、高負荷時における旋回時には、安定した所期性能が得られるような差動制限状態となることが好ましい。
 しかし、前記差動装置100の弾性部材112は、クラッチ板113を介してプレッシャーリング103を相互に接近する方向へ付勢する関係上、付勢力を弱く設定した場合には、操作手段108によりクラッチ手段109が操作され易くなって、低速旋回時においても差動制限状態になることがあり、差動状態が安定せず、また付勢力を強くすると、操作手段108は差動可能な状態となるが、弾性部材112の付勢力によりクラッチ板113が常時摩擦圧接されて、実質的に差動制限状態になることから、結局は低速旋回時における差動状態を安定して確保できない。つまり、低速旋回時に小回りが利かなくなったり、差動制限状態と差動状態とが交互に切り替わる所謂チャタリング現象が発生し、操縦性が低下したり、チャタリング時の衝撃により差動装置100及びその周辺装置に悪影響をおよぼすという問題があった。
 このため、付勢力の設定が大変難しく、例えばスポーツ走行を前提とした競技用の車両においては、低速旋回時における操縦性をある程度犠牲にして、弾性部材112の付勢力を高めに設定し、高速、高負荷時に十分な差動制限状態が得られるように構成しているのが実状である。
 本発明の目的は、高負荷時においても十分な差動制限作用が得られ、しかも差動状態と差動制限状態とを適正に切替可能な差動装置を提供することである。
 本出願人は、クラッチ手段における摩擦圧接部分の面積を極力増大させるべく鋭意検討した結果、図8、図9に示す差動装置100,120において、プレッシャーリング103の側壁部103aを省略して、側壁部103aの厚さt内にクラッチ板を配置することが可能であるとの発想を得て、本発明を完成させるに至った。
 本発明に係る第1の差動装置は、左右の車軸を回転中心としてエンジンからの駆動力により回転するデフケースと、前記左右の車軸の軸端に相対回転不能にそれぞれ設けた左右1対のサイドギヤと、前記左右のサイドギヤの外周側をそれぞれ覆うようにして、デフケース内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けた左右1対のプレッシャーリングであって、少なくとも一方のプレッシャーリングの内径をサイドギヤよりも大径に設定した左右1対のプレッシャーリングと、前記左右のプレッシャーリング間に軸端を保持させて車軸と直交状に設けたピニオンシャフトと、前記左右のサイドギヤに噛合するピニオンシャフトに回転自在に設けた少なくとも1対のピニオンギヤと、前記両プレッシャーリングの車軸方向両側に配置した1組のクラッチ手段であって、デフケースに車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に内嵌した第1クラッチ板と、サイドギヤのスリーブ部に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌した第2クラッチ板とを有し、両クラッチ板を交互に配置して両クラッチ板間の摩擦により、デフケースとサイドギヤとの相対回転を制限することで左右の車軸の差動を制限可能なクラッチ手段と、前記両プレッシャーリング間のクリアランスが狭くなる方向へ両プレッシャーリングを付勢する付勢手段と、差動時におけるピニオンシャフトとデフケース間の相対回転トルクの増大に応じて、両プレッシャーリング間のクリアランスが増大する方向へ、付勢手段の付勢力に抗してプレッシャーリングを操作し、クラッチ手段を作動させる操作手段とを備えたものである。
 この第1の差動装置においては、左右の車輪の回転抵抗が同じである場合には、ピニオンギヤ、サイドギヤ、ピニオンシャフト、プレッシャーリングがデフケースと一体的に回転して、左右の車輪が同速で回転するが、両車輪の回転抵抗が異なる場合には、デフケースに作用する回転力の一部でピニオンがサイドギヤに噛合しながら公転し、回転抵抗の少ない側の車輪の回転速度が回転抵抗の大きい側の車輪の回転速度よりも速くなる差動状態、またはクラッチ手段を介してサイドギヤとデフケースとの相対回転が制限されて、デフケースに作用する回転トルクの一部が回転抵抗の大きな車輪側に分配される差動制限状態に切替られる。
 より具体的には、左右の車輪の回転抵抗が異なる場合には、操作手段によりピニオンシャフトとデフケース間の相対回転トルクに応じて、両プレッシャーリング間のクリアランスが増大する方向への操作力が、両プレッシャーリングに作用するが、この操作手段による操作力が、クリアランスを減少させようとする付勢手段による付勢力よりも小さい場合には、クリアランスが変化せず、通常の差動状態が得られ、付勢力よりも大きくなると、それに応じて両プレッシャーリングのクリアランスが増大し、クラッチ手段のクラッチ板同士が摩擦圧接されて、左右の車軸の差動が制限されることになる。
 ところで、この第1の差動装置では、少なくとも一方のプレッシャーリングの内径をサイドギヤよりも大径に設定しているので、プレッシャーリングを軸方向に薄肉に構成することが可能となり、その分収容可能なクラッチ板の枚数を増やすことが可能となる。尚、一方のプレッシャーリングの内径だけをサイドギヤよりも大径に設定してもよいが、収容するクラッチ板の枚数を極力増やすため、左右のプレッシャーリングの内径をサイドギヤよりも大径に設定することが好ましい。
 本発明に係る第2の差動装置は、左右の車軸を回転中心としてエンジンからの駆動力により回転するデフケースと、前記一方のサイドギヤの外周側を覆うようにして、デフケース内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けたプレッシャーリングであって、内径をサイドギヤよりも大径に設定したプレッシャーリングと、前記プレッシャーリングとそれに対面するデフケースのリング対向面間に軸端を保持させた状態で車軸と直交状に設けたピニオンシャフトと、前記左右のサイドギヤに噛合するピニオンシャフトに回転自在に設けた少なくとも1対のピニオンギヤと、前記プレッシャーリングのリング対向面とは反対側に配置したクラッチ手段であって、デフケースに車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に内嵌した第1クラッチ板と、サイドギヤのスリーブ部に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌した第2クラッチ板とを有し、両クラッチ板を交互に配置して両クラッチ板間の摩擦により、デフケースとサイドギヤとの相対回転を制限することで左右の車軸の差動を制限可能なクラッチ手段と、前記プレッシャーリングとリング対向面間のクリアランスが狭くなる方向へプレッシャーリングを付勢する付勢手段と、差動時におけるピニオンシャフトとデフケース間の相対回転トルクの増大に応じて、プレッシャーリングとリング対向面間のクリアランスが増大する方向へ、付勢手段の付勢力に抗してプレッシャーリングを操作し、クラッチ手段を作動させる操作手段とを備えたものである。
 この第2の差動装置においては、基本的には請求項1記載の差動装置と同様に、左右の車輪の回転抵抗が同じである場合には、ピニオンギヤ、サイドギヤ、ピニオンシャフト、プレッシャーリングがデフケースと一体的に回転して、左右の車輪が同速で回転するが、両車輪の回転抵抗が異なる場合には、デフケースに作用する回転力の一部でピニオンがサイドギヤに噛合しながら公転し、回転抵抗の少ない側の車輪の回転速度が回転抵抗の大きい側の車輪の回転速度よりも速くなる差動状態、またはクラッチ手段を介してサイドギヤとデフケースとの相対回転が制限されて、デフケースに作用する回転トルクの一部が回転抵抗の大きな車輪側に分配される差動制限状態に切替られる。
 より具体的には、左右の車輪の回転抵抗が異なる場合には、操作手段によりピニオンシャフトとデフケース間の相対回転トルクに応じて、プレッシャーリングとリング対向面間のクリアランスが増大する方向への操作力が、プレッシャーリングに作用するが、この操作手段による操作力が、クリアランスを減少させようとする付勢手段による付勢力よりも小さい場合には、クリアランスが変化せず、通常の差動状態が得られ、付勢力よりも大きくなると、それに応じてプレッシャーリングとリング対向面間のクリアランスが増大し、クラッチ手段のクラッチ板同士が摩擦圧接されて、左右の車軸の差動が制限されることになる。
 また、プレッシャーリングの内径をサイドギヤよりも大径に設定しているので、プレッシャーリングを軸方向に薄肉に構成することが可能となり、その分収容可能なクラッチ板の枚数を増やすことが可能となる。
 更に、この第2の差動装置においては、クラッチ手段を1つだけ組み込めばよいので、差動装置の組立性を向上できるとともに、スペース的に余裕の有る側にクラッチ手段を組み込むことが可能となり、差動装置を小型に構成しつつ、クラッチ板のサイズを極力大きく設定して、摩擦圧接力を高めることが可能となる。このためこの差動装置は、デフケースの形状やサイズに対する制約の厳しい、横置き対応のエンジンに好適に採用することが可能となる。尚、このようにクラッチ手段を1つだけ設ける場合には、一方のサイドギヤとデフケースとの相対回転は、クラッチ手段により直接的に制限され、他方のサイドギヤとデフケースとの相対回転は、ピニオン及び一方のサイドギヤを介してクラッチ手段により制限されることになる。
 ここで、前記サイドギヤのスリーブ部に相対回転不能に外嵌するカラーを設け、このカラーに第2クラッチ板を軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌装着することが好ましい。即ち、サイドギヤのスリーブ部にスプライン等を形成して、これに第2クラッチ板を軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に組み付けることも可能であるが、サイドギヤのギヤ部までスプラインを形成することが加工上困難であるので、別部材からなるカラーをサイドギヤのスリーブ部に組み付けて、これに第2クラッチ板を外嵌装着させることが好ましい。
 また、この場合には、前記カラーをサイドギヤと略同径で且つプレッシャーリングの内径よりも小径に構成し、カラーの一端部をプレッシャーリング内に挿入することが好ましい。このように構成すると、サイドギヤのギヤ部側において、第2クラッチ板がカラーから脱落することを確実に防止できる。
 前記付勢手段として、クラッチ手段を介することなくクリアランスが狭くなる方向へプレッシャーリングを付勢する付勢手段を設けることが好ましい。この場合には、付勢手段の付勢力を高く設定してもクラッチ手段のクラッチ板が摩擦圧接することはなく、差動状態から差動制限状態への切替タイミングは、操作手段の操作力と付勢手段の付勢力にのみ依存したものとなるので、付勢手段の付勢力を適正に設定することで、低速旋回時においては確実に差動状態が得られ、高速、高負荷での旋回時においては確実に差動制限状態が得られるように構成することが可能となる。
 本発明に係る第1の差動装置によれば、基本的には差動制限機能を有する従来の差動装置と同様に作動するのであるが、プレッシャーリングの内径をサイドギヤよりも大径に設定するという簡単な構成により、該プレッシャーリングの車軸方向の厚さを従来の差動装置よりも薄肉にして、その分クラッチ板の枚数を増やし、クラッチ板の摩擦圧接部分を増やして、高負荷時においても十分な差動制限作用を得ることが可能となる。
 本発明に係る第2の差動装置によれば、第1の差動装置と同様の効果が得られる。加えて、この第2の差動装置によれば、クラッチ手段を1つだけ組み込めばよいので、差動装置の組立性を向上できるとともに、スペース的に余裕の有る側にクラッチ手段を組み込むことが可能となり、差動装置を小型に構成しつつ、クラッチ板のサイズを極力大きく設定して、摩擦圧接力を高めることが可能となる。したがってこの差動装置は、デフケースの形状やサイズに対する制約の厳しい、横置きタイプのエンジンに好適に採用できる。
 ここで、サイドギヤのスリーブ部に相対回転不能に外嵌するカラーを設け、このカラーに第2クラッチ板を軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌装着すると、サイドギヤのギヤ部までスプラインを形成することが可能となり、クラッチ板の組み付け枚数を極力増やせるので好ましい。
 また、カラーをサイドギヤと略同径で且つプレッシャーリングの内径よりも小径に構成し、カラーの一端部をプレッシャーリング内に挿入すると、サイドギヤのギヤ部側において、第2クラッチ板がカラーから脱落することを確実に防止できる。
 付勢手段として、クラッチ手段を介することなくクリアランスが狭くなる方向へプレッシャーリングを付勢する付勢手段を設けると、差動状態から差動制限状態への切替タイミングが、操作手段の操作力と付勢手段の付勢力にのみ依存したものとなるので、付勢手段の付勢力を適正に設定することで、低速旋回時においては確実に差動状態が得られ、高速、高負荷での旋回時においては確実に差動制限状態が得られるように構成することが可能となる。
 以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
 図1,図2に示すように、この差動装置10は、左右の車軸1を回転中心としてエンジンからの駆動力により回転するデフケース11と、左右の車軸1の軸端に相対回転不能にそれぞれ設けた左右1対のサイドギヤ15と、左右のサイドギヤ15の外周側をそれぞれ覆うようにして、デフケース11内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けた左右1対のプレッシャーリング12であって、内径D1をサイドギヤ15の外径D2よりも大径に設定した左右1対のプレッシャーリング12と、左右のプレッシャーリング12間に軸端を保持させて車軸1と直交状に設けたピニオンシャフト13と、左右のサイドギヤ15に噛合するピニオンシャフト13に回転自在に設けた少なくとも1対のピニオンギヤ14と、両プレッシャーリング12の車軸方向両側に配置した1組のクラッチ手段16であって、デフケース11に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に内嵌した第1クラッチ板31と、サイドギヤ15のスリーブ部15aに相対回転不能に外嵌固定したカラー29を介して車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌した第2クラッチ板32とを有し、両クラッチ板31,32を交互に配置して両クラッチ板31,32間の摩擦により、デフケース11とサイドギヤ15との相対回転を制限することで左右の車軸1の差動を制限可能なクラッチ手段16と、両プレッシャーリング12間のクリアランス17が狭くなる方向へ両プレッシャーリング12を付勢する付勢手段18と、差動時におけるピニオンシャフト13とデフケース11間の相対回転トルクの増大に応じて、両プレッシャーリング12間のクリアランス17が増大する方向へ、付勢手段18の付勢力に抗してプレッシャーリング12を操作し、クラッチ手段16を作動させる操作手段19とを備えている。
 デフケース11は蓋部材20とケース本体21とに分割構成され、蓋部材20はケース本体21の左端部に形成したフランジ部22に固定されている。蓋部材20とは反対側においてフランジ部22にはリングギヤ23が固定され、このリングギヤ23は、エンジンから延びる駆動軸2に設けたドライブピニオン3に噛合されている。また、デフケース11には、蓋部材20とケース本体21の右壁とを貫通して左右の車軸1の軸端が同軸状に挿通され、デフケース11は、ドライブピニオン3とリングギヤ23とを介してエンジンからの駆動力により、車軸1を回転中心として回転駆動されるように構成されている。
 ケース本体21の内周面にはその全長にわたって車軸方向に延びる複数本の条溝24が周方向に設定間隔おきに形成され、ケース本体21内には左右1対のリング状のプレッシャーリング12が部分球面状の内面側を対面させて設けられている。両プレッシャーリング12の外周面には条溝24に係合する突条25がそれぞれ形成され、両プレッシャーリング12は、突条25と条溝24との係合により、車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能にケース本体21内に設けられている。尚、デフケース11のサイズや形状は適用する車両に応じて任意に設定可能である。また、条溝24及び突条25は、デフケース11に対してプレッシャーリング12を車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に案内できる構成であれば、任意の断面形状に形成できるし、その本数も図に示す差動装置10では8本設けたが任意に設定可能である。
 両プレッシャーリング12間に形成されるギヤ室26内には略十文字状のピニオンシャフト13が設けられ、ピニオンシャフト13には車軸1と直交方向へ延びる4本の軸部13aが形成され、各軸部13aにはピニオンギヤ14が回転自在に支持されている。ピニオンギヤ14の個数は、任意に設定可能であるが少なくとも1対設けることになる。
 図2,図3,図6に示すように、ピニオンシャフト13の各軸端にはカム部27が形成され、両プレッシャーリング12の周壁の対面側部分には、各カム部27に対応させてカム溝28がそれぞれ形成され、ピニオンシャフト13は、各軸部13aのカム部27が両プレッシャーリング12のカム溝28間に挟持されることによりギヤ室26内に支持されている。尚、カム部27とカム溝28とで操作手段19が構成されるが、これについては後述する。
 図1〜図5に示すように、ギヤ室26内にはピニオンギヤ14を挟んでその両側においてピニオンギヤ14に噛合する1対のサイドギヤ15が設けられ、左右の車軸1はプレッシャーリング12を貫通してギヤ室26内へ突入され、左右のサイドギヤ15は左右の車軸1の軸端にスプライン嵌合等により相対回転不能にそれぞれ連結されている。両サイドギヤ15には車軸1に沿ってプレッシャーリング12を貫通して外方へ延びるスリーブ部15aが一体的に形成され、スリーブ部15aにはその略全長にわたってカラー29が相対回転不能にスプライン嵌合され、カラー29の外周部には車軸方向に延びるスプライン29aが全長にわたって形成されている。尚、スリーブ部15aとカラー29とは、相対回転不能であればスプライン嵌合に代えて、キーとキー溝や条溝と突条等を介して結合してもよいし、溶接等により結合してもよい。
 両プレッシャーリング12の車軸方向両側においてサイドギヤ15のスリーブ部15aにはカラー29を介してクラッチ手段16がそれぞれ外装されている。左右のクラッチ手段16は、第1クラッチ板31と第2第2クラッチ板32とを交互に配置したもので、第1クラッチ板31はデフケース11の条溝24を介して車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能にデフケース11に内嵌され、第2クラッチ板32はカラー29のスプライン29aを介して車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能にスリーブ部15aに外嵌され、クラッチ板31,32同士が圧接されると、隣接するクラッチ板31,32間に生じる摩擦力に応じて、デフケース11とサイドギヤ15との相対回転が制限されるように構成されている。クラッチ板31,32の枚数は任意に設定可能であるが、少なすぎると差動制限機能が十分に発揮できないので、デフケース11のサイズの許すかぎり多数設けることが好ましい
 本発明の特徴とする構成は、サイドギヤ15のギヤ部15bとクラッチ板31,32間にプレッシャーリング12が実質的に配置されないようにして、差動装置10に収容可能なクラッチ板31,32の枚数を極力増やす点にあり、これを実現するため、プレッシャーリング12の内径D1はサイドギヤ15のギヤ部15bの外径D2よりも多少大径、好ましくは外径D3よりも多少大径に設定されている。
 また、カラー29からの第2クラッチ板32のギヤ部15b側への脱落を防止するため、カラー29の外径D4はサイドギヤ15の外径D3よりも多少大径に構成されるとともに、プレッシャーリング12の内径D1はこのカラー29の外径D4よりも多少大径に構成され、カラー29の端部をプレッシャーリング12内に挿入することで、第2クラッチ板32の脱落が防止されている。
 このようにプレッシャーリング12の内径をサイドギヤ15及びカラー29よりも大径に設定することで、プレッシャーリング12を従来のものよりも車軸方向に薄肉に構成して、プレッシャーリング12の車軸方向の外端面とサイドギヤ15のギヤ部15bの車軸方向の外端面とが略面一になるようになして、クラッチ手段16のクラッチ板31,32をギヤ部15bに極力接近配置することが可能となり、その分クラッチ板31,32の組付け枚数を増やして、クラッチ板31,32の摩擦圧接部分を増やし、高負荷時においても十分な差動制限作用を得ることになる。
 尚、本実施例では、サイドギヤ15とカラー29とを分割構成したが、一体構成することも可能である。但し、スリーブ部15aに対して第2クラッチ板32を軸方向に移動自在に支持するため、スリーブ部15aの外周部にはスプラインを形成することになるが、ギヤ部15b付近においてスリーブ部15aにスプラインを形成することが困難となり、その分組付可能なクラッチ板31,32の枚数が少なくなるので、スプラインのピッチをサイドギヤ15の歯のピッチと同じに設定し、サイドギヤ15の歯から連続的に軸方向外方側へ延びるスプライン歯を形成することが好ましい。
 蓋部材20及びケース本体21の右壁部には溝部42が形成され、両クラッチ手段16の外側において溝部42内にはクラッチ板31,32をプレッシャーリング12側へそれぞれ付勢する皿バネ33が設けられている。この皿バネ33は、クラッチ板31,32間の遊びを無くす目的で設けたものであり、クラッチ板31,32間に摩擦力がほとんど作用しない程度の付勢力に設定されている。但し、皿バネ33は、クラッチ手段16を略遊び無く組み付けることが可能な場合には、省略してもよい。また、本実施例では、クラッチ板31,32の枚数を極力増やすため、溝部42内に皿バネ33を収容したが、溝部42を形成しないで設けることも可能である。
 両プレッシャーリング12間には両者を相互に接近する方向へ付勢する付勢手段18が設けられている。具体的には、プレッシャーリング12にはピニオンシャ不と13の隣接する軸部13aの軸端間において貫通孔34が形成され、この貫通孔34には両プレッシャーリング12にわたって延びるロッド部材35が装着されている。ロッド部材35は両プレッシャーリング12が最も接近した状態、つまり両プレッシャーリング12間のクリアランス17が最小になったときにおいても、プレッシャーリング12外へ突出しない長さに設定され、ロッド部材35の端部には鍔部36が形成されている。ロッド部材35の右部及び左部には圧縮コイルバネからなる弾性部材37がそれぞれ外装され、両プレッシャーリング12は、弾性部材37の付勢力によりロッド部材35を介して相互に接近する方向へ常時付勢されている。
 尚、付勢手段18は、両プレッシャーリング12をクラッチ手段16を介することなく相互に接近する方向へ付勢可能に構成されていれば、任意の構成のものを、両任意の位置に任意の個数設けることが可能である。例えば、ロッド部材35に代えて一端部に螺子部を形成したロッド部材を用い、ロッド部材の一端部を一方のプレッシャーリング12に螺合させてもよい。この場合には付勢手段18Aの組立作業が容易になるので好ましい。また、この場合には、隣接するロッド部材の螺子部が逆向きに配置されるようにロッド部材を設けることも可能である。圧縮コイルバネからなる弾性部材37に代えて、皿バネや合成ゴム等からなる弾性部材を用いてもよいし、引張りバネ等を用いて両プレッシャーリング12を相互に接近する方向へ引っ張ってもよい。更に、デフケース11とプレッシャーリング12間に付勢手段を設けることも可能である。
 また、前述のように、プレッシャーリング12のうちのピニオンシャフト13の隣接する軸端間に設けると、軸端間のデッドスペース内に配置させることが可能となり、プレッシャーリング12及びデフケース11を径方向に小型に構成できるとともに、ピニオンシャフト13の軸端をデフケース11の内面付近まで延長して、次に説明する操作手段19のカム部27とカム溝28との接触面積を増大できるので、カム部27とカム溝28間に作用する相対回転トルクによる、これらの両部材の摩耗や破損を効果的に防止でき、差動装置の耐久性を向上できる。但し、付勢手段18のロッド部材35をプレッシャーリング12のうちのピニオンシャフト13の軸端外方側に位置するように設けることも可能である。また、このような付勢手段18を設けることが好ましいが、付勢手段18を省略して、皿バネ33により左右のプレッシャーリング12を相互に接近する方向へ付勢するように構成した差動装置に対しても本発明を同様に適用することが可能である。
 操作手段19は、図3、図6に示すように、ピニオンシャフト13の4つの軸部13aの軸端に設けたカム部27と、両プレッシャーリング12の対面部にそれぞれ形成したカム溝28とで構成されている。カム部27は、軸部13aの中心を含む車軸直交面に対して鏡面対称に略ハ字状に形成した1対の操作面38と、軸部13aの中心を挟んで操作面38とは反対側に形成した略車軸方向に延びる当接面39とを備えている。カム溝28は、操作面38に適合した形状の傾斜カム面40と、当接面39に適合した形状の係止面41とで略直角三角形状に形成されている。
 そして、図6(a)に示す状態から、ピニオンシャフト13がプレッシャーリング12に対して、図6(a)において上方へ微少相対回転すると、図6(b)に示すように、両プレッシャーリング12が操作面38と傾斜カム面40とを介して相互に離間する方向へ移動するが、図6(a)において下方へ微少相対回転しようとした場合には、当接面39が係止面41に係止されて、両プレッシャーリング12とピニオンシャフト13との相対回転が規制される。但し、操作手段19としては、ピニオンシャフト13とデフケース11間の相対回転トルクにより、両プレッシャーリング12を相互に離間する方向へ操作可能なものであれば任意の構成のものを採用できる。例えば、従来技術の欄において例示したように、カム部27として一方の対角線を略車軸方向に配置させた略四角形状や略菱形状のカム部27を形成し、カム溝28としてカム部に適合する略V字状のカム溝を形成したものを採用してもよい。
 次に、差動装置10の作動について説明する。
 この差動装置10では、左右の車輪の回転抵抗が同じである場合には、ピニオンギヤ14、サイドギヤ15、ピニオンシャフト13、プレッシャーリング12がデフケース11と一体的に回転して、左右の車輪が同速で回転する。
 また、前進走行時において一方の車輪の回転抵抗が少なくなると、基本的には、デフケース11に作用する回転力の一部でピニオンギヤ14がサイドギヤ15に噛合しながら公転し、回転抵抗の少ない側の車輪が回転抵抗の大きい側の車輪よりも回転速度が速くなる差動状態になるが、高速、高負荷時には、サイドギヤ15とデフケース11との相対回転が、クラッチ手段16のクラッチ板31,32同士の摩擦圧接力により制限される差動制限状態となり、低速時における旋回性を向上しつつ、高速、高負荷時における操縦性を十分に確保できることになる。
 より具体的には、前進走行時に左右の車輪の回転抵抗に差が発生した場合には、図6(a)に示すように、操作手段19によりピニオンシャフト13とデフケース11間に相対回転トルクPが発生し、この相対回転トルクPにより、カム部27の操作面38とカム溝28の傾斜カム面40を介して、両プレッシャーリング12を相互に離間する方向への操作力Fが両プレッシャーリング12に作用し、図6(b)に示すように、ピニオンシャフト13とデフケース11とが相対的に微小回転しようとして、カム部27の操作面38とカム溝28の傾斜カム面40との接触位置がずれることにより、クリアランス17が増大しようとする。
 一方、両プレッシャーリング12には付勢手段18により相互に接近させようとする付勢力が常時作用しているので、操作手段19の操作力Fが付勢手段18の付勢力よりも小さいときには、図6(a)に示すように、最小のクリアランス17が維持されて差動状態となり、操作力Fが付勢力よりも大きくなると、図6(b)に示すように、力の差分に応じてクリアランス17が大きくなって、両プレッシャーリング12の側面でクラッチ板31,32が押圧され、クラッチ板31,32同士が摩擦圧接されることで差動制限状態になる。
 また、この差動装置10では、クラッチ手段16を経由することなく、両プレッシャーリング12を付勢手段18により相互に接近する方向へ付勢するので、差動状態から差動制限状態への切替タイミングは、操作手段19の操作力Fと付勢手段18の付勢力にのみ依存したものとなり、付勢手段18の付勢力を適正に設定することで、低速旋回時においては確実に差動状態が得られ、高速、高負荷での旋回時においては確実に差動制限状態が得られるように構成することが可能となる。
 一方、後退走行時において一方の車輪の回転抵抗が少なくなると、ピニオンシャフト13とデフケース11間に相対回転トルクが発生しても、この相対回転トルクはカム部27の当接面39がカム溝28の係止面41で係止されて両者の相対的な微少回転が規制されるので、最小のクリアランス17が維持された状態となり、差動制限状態になることはない。但し、後退走行時におても、前進走行時と同様に、差動状態と差動制限状態とが切り替わるように構成することも可能である。この場合には、例えば操作手段19として、前述のようにカム部を菱形状や四角形状に形成し、カム溝をカム部に適合した略V字状に形成したものを採用することになる。
 次に、横置きタイプのエンジンの差動装置10Aに本発明を適用した場合について説明する。尚、前記実施例と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
 図7に示すように、この差動装置10Aは、左右の車軸1を回転中心としてエンジンからの駆動力により回転するデフケース11Aと、一方のサイドギヤ15の外周側を覆うようにして、デフケース11A内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けたプレッシャーリング12であって、内径をサイドギヤ15よりも大径に設定したプレッシャーリング12と、プレッシャーリング12とそれに対面するデフケース11Aのリング対向面45間に軸端を保持させた状態で車軸1と直交状に設けたピニオンシャフト13と、左右のサイドギヤ15,15Aに噛合するピニオンシャフト13に回転自在に設けた少なくとも1対のピニオンギヤ14と、プレッシャーリング12のリング対向面45とは反対側に配置したクラッチ手段16であって、デフケース11Aに車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に内嵌した第2クラッチ板31と、サイドギヤ15のスリーブ部15aに車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌した第2クラッチ板32とを有し、両クラッチ板31,32を交互に配置して両クラッチ板31,32間の摩擦により、デフケース11Aとサイドギヤ15,15Aとの相対回転を制限することで左右の車軸1の差動を制限可能なクラッチ手段16と、プレッシャーリング12とリング対向面45間のクリアランス17Aが狭くなる方向へプレッシャーリング12を付勢する付勢手段18Aと、差動時におけるピニオンシャフト13とデフケース11A間の相対回転トルクの増大に応じて、プレッシャーリング12とリング対向面45間のクリアランス17Aが増大する方向へ、付勢手段18Aの付勢力に抗してプレッシャーリング12を操作し、クラッチ手段16を作動させる操作手段19Aとを備えている。
 デフケース11Aは、ケース本体21Aの右部を縮径させた形状に構成され、前記実施例における右側のプレッシャーリング12と、右側のクラッチ手段16と、右側の皿バネ33とが省略されて、左側のプレッシャーリング12とケース本体21Aの右部間にギヤ室26Aが形成され、このギヤ室26A内にピニオンシャフト13とピニオンギヤ14とサイドギヤ15、15Aとが装着されている。また、前記実施例における右側のサイドギヤ15に代えて、スリーブ部15aにスプラインが形成されてないサイドギヤ15Aが採用され、このサイドギヤ15Aはケース本体21Aの右部に回転自在に装着されている。
 ケース本体21Aのうちのプレッシャーリング12の右端に対面する部分にはリング対向面45が車軸1と直交状に形成され、ピニオンシャフト13の軸端には、前記実施例におけるカム部27の右半部を切り欠いたカム部27Aがそれぞれ設けられ、ピニオンシャフト13は、カム部27Aがプレッシャーリング12に形成したカム溝28とケース本体21Aのリング対向面45間に挟持されることにより、プレッシャーリング12とケース本体21A間に支持されている。
 操作手段19Aは、カム溝28とカム部27Aとで構成されている。この操作手段19Aは、基本的には、前述の操作手段19と同様に機能し、ピニオンシャフト13とデフケース11A間に相対回転トルクが発生すると、プレッシャーリング12がリング対向面45から相互に離間する方向へ操作され、プレッシャーリング12とリング対向面45間のクリアランス17Aが増大するように構成されている。
 付勢手段18Aは、ロッド部材35Aと、圧縮コイルバネからなる弾性部材37Aとを備え、ロッド部材35Aの左端部には鍔部36が形成され、右部には螺子部が形成されている。そして、ロッド部材35Aに弾性部材37Aを外装した状態で、プレッシャーリング12に形成した貫通孔にロッド部材35Aを挿通させて、ケース本体21Aに締結固定され、プレッシャーリング12は、この付勢手段18Aによりリング対向面45側、即ちプレッシャーリング12とリング対向面間のクリアランス17Aが狭くなる側へ常時付勢されている。尚、この付勢手段18Aの個数や配置は、前記実施例と同様に任意に設定可能である。
 この差動装置10Aにおいては、前記差動装置10と同様に、エンジンの駆動軸2Aからの回転力が、ドライブピニオン3A及びリングギヤ23Aを介してデフケース11Aに伝達され、左右の車輪の回転抵抗が同じである場合には、ピニオンギヤ14、サイドギヤ15,15A、ピニオンシャフト13、プレッシャーリング12がデフケース11Aと一体的に回転して、左右の車輪が同速で回転する。また、前進走行時において一方の車輪の回転抵抗が少なくなると、基本的には、デフケース11Aに作用する回転力の一部でピニオンギヤ14がサイドギヤ15,15Aに噛合しながら公転し、回転抵抗の少ない側の車輪が回転抵抗の大きい側の車輪よりも回転速度が速くなる差動状態になるが、高速、高負荷時には、操作手段19Aによりプレッシャーリング12がリング対向面45から離間する方向へ移動して、クラッチ手段16のクラッチ板31,32同士の摩擦圧接力により、サイドギヤ15,15Aとデフケース11Aとの相対回転が制限される差動制限状態となり、低速時における旋回性を向上しつつ、高速、高負荷時における操縦性を十分に確保できることになる。尚、右側のサイドギヤ15Aにはクラッチ手段16が設けられていないが、差動制限時におけるサイドギヤ15Aとデフケース11Aとの差動は、ピニオンギヤ14と左側のサイドギヤ15を介してクラッチ手段16により制限されることになる。
 また、クラッチ手段16を経由することなく、プレッシャーリング12を付勢手段18Aによりリング対向面45側へ付勢するので、差動状態から差動制限状態への切替タイミングは、操作手段19Aの操作力と付勢手段18Aの付勢力にのみ依存したものとなり、付勢手段18Aの付勢力を適正に設定することで、低速旋回時においては確実に差動状態が得られ、高速、高負荷での旋回時においては、差動制限状態が確実に得られるように構成することが可能となる。
 更に、前記差動装置10と同様のプレッシャーリング12とサイドギヤ15とカラー29とを用いているので、従来の差動装置と比較してプレッシャーリング12を車軸方向に薄肉に構成して、その分クラッチ板31,32の枚数を増やすことが可能となる。
差動装置の横断面図(図2のI-I線断面図) 図1のII-II線断面図 プレッシャーリング及びそれに組み付けられる部材の正面図 プレッシャーリング及びそれに組み付けられる部材のの側面図 サイドギヤ及びカラーの斜視図 操作手段の作動説明図 他の構成の差動装置の図1相当図 従来技術に係る差動装置の横断面図 従来技術に係る他の構成の差動装置の横断面図
符号の説明
1   車軸        2   駆動軸
3   ドライブピニオン
10  差動装置      11  デフケース
12  プレッシャーリング
13  ピニオンシャフト  13a 軸部
14  ピニオンギヤ    15  サイドギヤ
15a スリーブ部     15b ギヤ部
16  クラッチ手段    17  クリアランス
18  付勢手段      19  操作手段
20  蓋部材       21  ケース本体
22  フランジ部     23  リングギヤ
24  条溝        25  突条
26  ギヤ室       27  カム部
28  カム溝       29  カラー
29a スプライン     31  クラッチ板
32  クラッチ板     33  皿バネ
34  貫通孔       35  ロッド部材
36  鍔部        37  弾性部材
38  操作面       39  当接面
40  傾斜カム面     41  係止面
42  溝部
2A  駆動軸       3A  ドライブピニオン
10A 差動装置      11A デフケース
15A サイドギヤ     17A クリアランス
18A 付勢手段      19A 操作手段
21A ケース本体     23A リングギヤ
26A ギヤ室       27A カム部
29A スリーブ部     35A ロッド部材
37A 弾性部材      45  リング対向面

Claims (5)

  1.  左右の車軸を回転中心としてエンジンからの駆動力により回転するデフケースと、
     前記左右の車軸の軸端に相対回転不能にそれぞれ設けた左右1対のサイドギヤと、
     前記左右のサイドギヤの外周側をそれぞれ覆うようにして、デフケース内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けた左右1対のプレッシャーリングであって、少なくとも一方のプレッシャーリングの内径をサイドギヤよりも大径に設定した左右1対のプレッシャーリングと、
     前記左右のプレッシャーリング間に軸端を保持させて車軸と直交状に設けたピニオンシャフトと、
     前記左右のサイドギヤに噛合するピニオンシャフトに回転自在に設けた少なくとも1対のピニオンギヤと、
     前記両プレッシャーリングの車軸方向両側に配置した1組のクラッチ手段であって、デフケースに車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に内嵌した第1クラッチ板と、サイドギヤのスリーブ部に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌した第2クラッチ板とを有し、両クラッチ板を交互に配置して両クラッチ板間の摩擦により、デフケースとサイドギヤとの相対回転を制限することで左右の車軸の差動を制限可能なクラッチ手段と、
     前記両プレッシャーリング間のクリアランスが狭くなる方向へ両プレッシャーリングを付勢する付勢手段と、
     差動時におけるピニオンシャフトとデフケース間の相対回転トルクの増大に応じて、両プレッシャーリング間のクリアランスが増大する方向へ、付勢手段の付勢力に抗してプレッシャーリングを操作し、クラッチ手段を作動させる操作手段と、
     を備えた差動装置。
  2.  左右の車軸を回転中心としてエンジンからの駆動力により回転するデフケースと、
     前記一方のサイドギヤの外周側を覆うようにして、デフケース内に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に設けたプレッシャーリングであって、内径をサイドギヤよりも大径に設定したプレッシャーリングと、
     前記プレッシャーリングとそれに対面するデフケースのリング対向面間に軸端を保持させた状態で車軸と直交状に設けたピニオンシャフトと、
     前記左右のサイドギヤに噛合するピニオンシャフトに回転自在に設けた少なくとも1対のピニオンギヤと、
     前記プレッシャーリングのリング対向面とは反対側に配置したクラッチ手段であって、デフケースに車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に内嵌した第1クラッチ板と、サイドギヤのスリーブ部に車軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌した第2クラッチ板とを有し、両クラッチ板を交互に配置して両クラッチ板間の摩擦により、デフケースとサイドギヤとの相対回転を制限することで左右の車軸の差動を制限可能なクラッチ手段と、
     前記プレッシャーリングとリング対向面間のクリアランスが狭くなる方向へプレッシャーリングを付勢する付勢手段と、
     差動時におけるピニオンシャフトとデフケース間の相対回転トルクの増大に応じて、プレッシャーリングとリング対向面間のクリアランスが増大する方向へ、付勢手段の付勢力に抗してプレッシャーリングを操作し、クラッチ手段を作動させる操作手段と、
     を備えた差動装置。
  3.  前記サイドギヤのスリーブ部に相対回転不能に外嵌するカラーを設け、このカラーに第2クラッチ板を軸方向に移動自在で且つ相対回転不能に外嵌装着した請求項1又は2記載の差動装置。
  4.  前記カラーをサイドギヤと略同径で且つプレッシャーリングの内径よりも小径に構成し、カラーの一端部をプレッシャーリング内に挿入した請求項3記載の差動装置。
  5.  前記付勢手段として、クラッチ手段を介することなくクリアランスが狭くなる方向へプレッシャーリングを付勢する付勢手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項記載の差動装置。
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