JP2004003423A - 送風機 - Google Patents

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Abstract

【課題】丸軸状のシャフトが圧入されると共にファンと係合する樹脂製のキャップを備える送風機において、当該キャップに割れが生じてしまう危険性を低下させ、かつ、キャップによる回り止めトルクが不足してしまう恐れを低下させる。
【解決手段】キャップ30のうち挿入穴31aの内径面に、挿入穴31aの内径が拡大する拡大部31cを設ける。これにより、挿入穴31a内径面のうち主に拡大部31c以外の面が、シャフト21の圧入による圧縮応力を受けることとなり、この応力による変形は、拡大部31cに逃げるように変形することとなるので、圧入代の増大に伴う圧入荷重の増大の割合を小さくでる。よって、キャップ30の成形精度等による圧入代ばらつきに起因した、キャップ割れの危険性低下と、回り止めトルク不足の恐れを低下できる。
【選択図】    図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂製ファンを回転駆動する送風機に関し、特にファンとシャフトとの固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の送風機では、樹脂製のファンに丸軸状のシャフトを圧入すると共に、樹脂製のキャップにシャフトを圧入し、ファンとキャップとを係合させることにより、キャップにてファンがシャフトに対して回転するのを防止する、すなわち回り止めを行うようになっている。なお、キャップのうちシャフトが圧入される挿入穴は、真円形状に形成されており、挿入穴の内径寸法は次のように設定されている。
【0003】
すなわち、キャップの圧入代を大きくすると回り止めトルクを大きくできるが、その反面、圧入代が大きすぎると圧入荷重の増大によりキャップに割れが生じてしまう。従って、上記挿入穴の内径寸法は、回り止めトルクを確保しつつ割れが生じないような寸法に設定されている。
【0004】
図7中の点線は、上記樹脂製キャップにおける圧入代と、回り止めトルクおよび圧入荷重との関係を示すものであり、この点線に示すキャップの特性に基づいて上記圧入代を設定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、キャップの成形精度等による寸法ばらつきにより、圧入代が設定された寸法よりも大きくなってしまった場合には、キャップ割れの危険性が生じることとなる。また、圧入代が設定された寸法よりも小さくなってしまった場合には、回り止めトルクが不足してしまう恐れが生じることとなる。
【0006】
そして、圧入代の増大に伴う圧入荷重の増大の割合が大きいほど、すなわち、図7中の点線の傾きが大きいほど、キャップの寸法ばらつきにより上述のキャップ割れの危険性および回り止めトルク不足の恐れが高くなる。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、丸軸状のシャフトが圧入されると共にファンと係合する樹脂製のキャップを備える送風機において、当該キャップに割れが生じてしまう危険性を低下させ、かつ、キャップによる回り止めトルクが不足してしまう恐れを低下させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、駆動手段(20)によって回転駆動される丸軸状のシャフト(21)と、シャフト(21)が圧入された樹脂製のファン(10)と、シャフト(21)が圧入されると共にファン(10)と係合する樹脂製のキャップ(30)とを備え、キャップ(30)にてファン(10)がシャフト(21)に対して回転するのを防止するようにした送風機において、キャップ(30)のうちシャフト(21)が圧入される挿入穴(31a)の内径面に、挿入穴(31a)の内径が拡大する拡大部(31c)を設けたことを特徴としている。
【0009】
これにより、キャップ(30)の挿入穴(31a)内径面のうち主に拡大部(31c)以外の面が、シャフト(21)の圧入による圧縮応力を受けることとなり、この応力による変形は、拡大部(31c)に逃げるように変形することとなるので、圧入代の増大に伴う圧入荷重の増大の割合を小さくできる。よって、キャップ(30)の成形精度等による圧入代ばらつきに起因した、キャップ割れの危険性低下と、キャップ(30)の回り止めトルク不足の恐れを低下できる。
【0010】
なお、請求項2に記載の発明のように、拡大部(31c)を、円弧形状に形成して好適である。また、請求項3に記載の発明のように、拡大部(31c)を、多角形状に形成して好適である。また、請求項4に記載の発明のように、挿入穴(31a)を多角形形状に形成し、当該多角形の角部を拡大部(31c)とするようにして好適である。
【0011】
請求項5に記載の発明では、キャップ(30)には、シャフト(21)の軸方向に延びてファン(10)側の端面にて開口すると共に、シャフト(21)の周方向に沿って等間隔に配置された複数の空洞部(33)が形成され、複数の空洞部(33)の間には、キャップ(30)における空洞部(33)よりも内周側部位と前記空洞部(33)よりも外周側部位とを連結する連結部(34)が形成され、拡大部(31c)は、挿入穴(31a)の内径面のうち連結部(34)に対応する部位に設けられていることを特徴としている。
【0012】
これにより、キャップ(30)の挿入穴(31a)内径面のうち拡大部(31c)以外の面は、空洞部(33)に対応する部位に配置されることとなる。そして、当該拡大部(31c)以外の面における、シャフト(21)の圧入による圧縮応力による変形は、拡大部(31c)のみならず、空洞部(33)にも逃げるように変形することとなるので、圧入代の増大に伴う圧入荷重の増大の割合をより一層小さくできる。
【0013】
請求項6に記載の発明では、シャフト(21)の材質を金属製とし、シャフト(21)を挿入穴(31a)に圧入していない状態におけるキャップ(30)の回転中心から拡大部(31c)の内面までの長さ寸法(R1)を、シャフト(21)の半径寸法(R2)よりも長く設定し、シャフト(21)を挿入穴(31a)に圧入した状態で、シャフト(21)の外面と拡大部(31c)の内面との間に所定の空間(S)が形成されるようにしたことを特徴としている。
【0014】
これによれば、所定の空間(S)に入り込んだ空気中に含まれる水分等により、金属製のシャフト(21)の表面に錆が生じやすくなる。そして、当該錆の発生によりシャフト(21)表面の面祖度が上がって、シャフト(21)がキャップ(30)に対して滑りにくくなり、上述の回り止めトルクを大きくできる。
【0015】
因みに、樹脂製キャップ(30)の材質に、例えばポリアミドのガラス強化材等、引張強度の高い樹脂を採用した場合には、樹脂材料のクリープ特性による特性劣化や経時劣化等により回り止めトルクが大幅に低減してしまう。よって、このような樹脂をキャップ(30)の材質に採用した場合に上記請求項6に記載の発明を用いて好適である。
【0016】
また、請求項6の発明において、請求項7に記載の発明のように拡大部(31c)を複数設けるようにすれば、シャフト(21)の錆発生箇所を複数にできるので、回り止めトルクをより一層大きくできる。
【0017】
また、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発明において、請求項7に記載の発明のように拡大部(31c)を複数設けるようにすれば、シャフト(21)圧入時の拡大部(31c)に逃げる上述の変形が、複数箇所で生じることとなるので、圧入代の増大に伴う圧入荷重の増大の割合をより一層小さくできる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る送風機を車両用空調装置の遠心式送風機に適用したものであって、図1は本実施形態に係る遠心式送風機(以下、送風機という)の断面図、図2は図1のファン10およびキャップ30とシャフト21との嵌合部分の拡大図、図3は図2のキャップ30単体を示す断面図、図4は図3のA矢視図、図5は図3のB矢視図、図6は図4の部分拡大図である。
【0021】
図1において、送風機は、回転軸C方向から吸入した空気を径外方側に向けて吹き出す遠心式多翼ファン(以下、ファンという)10と、ファン10を回転駆動する電動モータ20と、電動モータ20の回転力をファン10に伝達するキャップ30を備えている。
【0022】
駆動手段に相当する電動モータ20は、駆動シャフト(以下、シャフトという)21を備え、このシャフト21は、金属製(例えばS45C)で断面が丸軸状に形成されている。なお、従来より、シャフト21を断面D形状に切削加工して回り止めとする構造の送風機があるが、本実施形態では、上述のように丸軸状に形成することにより、D形状における切削加工を廃止してコストダウンを図ると共に、シャフト21の回転軸Cに対する重量バランスを均等にして振動、騒音の低減を図っている。
【0023】
ファン10は、シャフト21が圧入される略円筒状のファンボス部11と、ファンボス部11に連結されてシャフト21と一体に回転する複数枚の翼(ブレード)12を有している。因みに、ファンボス部11及びブレード12は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂にて一体成形されている。
【0024】
図2に示すように、ファンボス部11においてその外周側で且つキャップ30側の部位には、キャップ30の脚部32を受け入れる4つの凹部13を備えている。また、各凹部13の表面のうち回転軸Cに近い側で且つ径方向外側に向いている面には、先端部が脚部32の内周面に密着する突起部14が1つずつ形成されている。
【0025】
この突起部14は、ファンボス部11の外周面から脚部32に向かって突出すると共に回転軸C方向に延びており、また、回転軸Cに対して垂直な断面で見たときに、脚部32側に向かって先端が細くなった3角形になっている。
【0026】
キャップ30は、ファン10よりも固い樹脂よりなり、より詳細には、例えばポリアミドのガラス強化剤のような引っ張り強度の高い樹脂よりなる。このキャップ30は、図2〜図5に示すように、シャフト21が圧入される円筒状のキャップボス部31と、このキャップボス部31の外周側からファンボス部11側に向かって延びて凹部13に嵌合される4つの脚部32とを備えている。
【0027】
そして、図中の符号31aは、キャップボス部31に形成された挿入穴を示しており、この挿入穴31aにシャフト21が圧入されている。また、図中の符号31bは、キャップボス部31のうち挿入穴31aのファン10側端部に形成されたテーパ面を示しており、このテーパ面31bによりシャフト21の挿入穴31aへの挿入圧入を案内するようになっている。
【0028】
また、図2中の符号21aは、シャフト21先端に形成されたテーパ面を示しており、このテーパ面21aによりシャフト21の挿入穴31aへの挿入圧入を案内するようになっている。
【0029】
また、図3〜6に示すように、挿入穴31aの内径面には、挿入穴31aの内径Dが拡大する拡大部31cが設けられている。この拡大部31cは、図3に示すように、挿入穴31a全体にわたって回転軸Cの方向に延びるように形成されている。また、拡大部31cは、図4〜6に示すように、円弧形状に形成されている。
【0030】
また、拡大部31cは、図4に示すようにシャフト21の周方向に沿って等間隔に複数配置されており、挿入穴31aの内径面のうち後述する連結部34に対応する部位に設けられている。本実施形態では拡大部31cを8個設けている。なお、挿入穴31aの内径寸法Dの設定については、後に詳述する。
【0031】
また、キャップボス部31には、回転軸C方向に延びてファンボス部11側の端面にて開口する8個の空洞部33が形成されており、これらの空洞部33は周方向に沿って等間隔に配置されている。空洞部33の間には、キャップボス部31における空洞部33よりも内周側部位と空洞部33よりも外周側部位とを連結する連結部34が形成されている。また、シャフト21が圧入されるキャップボス部31の厚さt1を脚部32の厚さt2よりも大きくしている。
【0032】
上記送風機の組み付けに際しては、まず、ファン10とキャップ30が仮固定される。ここで、突起部14が形成されたファン10は、脚部32を凹部13に嵌合させると、突起部14の各先端部が塑性変形する。そして、突起部14の各先端部が脚部32に密着し、ファン10とキャップ30が仮固定される。
【0033】
この仮固定後、ファン10とキャップ30にシャフト21が圧入される。この圧入により、シャフト21からの回転力は、直接ファン10に伝達されると共に、脚部32と凹部13が係合しているため、キャップ30を介してファン10に伝達される。但し、圧入後におけるキャップ30とシャフト21との回り止めトルクが、ファン10とシャフト21との回り止めトルクよりも大きくなるように、接触面圧や接触面積等が設定されており、従って、シャフト21からの回転力は、主にキャップ30を介してファン10に伝達される。
【0034】
ここで、挿入穴31aの内径寸法Dは次のように設定されている。すなわち、キャップボス部31の圧入代を大きくすると回り止めトルクを大きくできるが、その反面、圧入代が大きすぎると圧入荷重の増大によりキャップ30に割れが生じてしまう。従って、挿入穴31aの内径寸法Dは、回り止めトルクを確保しつつ割れが生じないような寸法に設定されている。
【0035】
因みに、本実施形態において上述のように内径寸法Dを設定すると、挿入穴31aにシャフト21を圧入した状態においては、シャフト21の外面と拡大部31cの内面とはキャップ30の変形により接触することとなる。
【0036】
図7中の実線は、本実施形態のキャップ30における圧入代と、回り止めトルクおよび圧入荷重との関係を示すものであり、この実線に示すキャップ30の特性に基づいて上記圧入代を設定している。なお、図7中の×印は、キャップ30に割れが生じたときの圧入代を示すものである。
【0037】
以上により、本実施形態では、キャップ30のうち挿入穴31aの内径面に、挿入穴31aの内径が拡大する拡大部31cを設けているので、挿入穴31a内径面のうち主に拡大部31c以外の面が、シャフト21の圧入による圧縮応力を受けることとなり、この応力による変形は、拡大部31cに逃げるように変形することとなる。よって、図7の実線に示すように圧入代の増大に伴う圧入荷重の増大の割合を小さくできる。すなわち、図7中の実線の傾きを小さくできる。
【0038】
よって、キャップ30の成形精度等による圧入代ばらつきに起因した、キャップ割れの危険性低下と、キャップ30の回り止めトルク不足の恐れを低下できる。より具体的には、図7中の点線に示す挿入穴31aを真円形状に形成した従来のキャップ30では、設定圧入代L1に対する圧入代ばらつき範囲内にてキャップ割れが生じていたのに対し、本実施形態のキャップ30では、設定圧入代L2に対する圧入ばらつき範囲外にてキャップ割れが生じることが、本発明者による実験により確認された。
【0039】
しかも、本実施形態によれば、キャップ割れが生じたときの圧入荷重および回り止めトルクを、従来のキャップにおけるキャップ割れが生じたときの圧入荷重および回り止めトルクに比べて、高めることができることが、図7に示す実験結果により確認できる。
【0040】
また、本実施形態では、回転力を伝達するキャップ30をファン10よりも固い樹脂にて形成しているため、キャップ30とシャフト21との接触面圧を十分高くして圧入強度を高めることができ、また、シャフト21が圧入されるキャップボス部31の厚さt1を脚部32の厚さt2よりも大きくしているため、キャップ30とシャフト21との接触面圧を十分高くして圧入強度を高めることができ、それらが相俟って、大きな回転力をシャフト21からファン10に伝達することができる。従って、安い樹脂にてキャップ30を形成しても十分な回り止めトルクを確保可能であり、安い樹脂の使用により低コスト化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、空洞部33を設けているので、樹脂の特性であるひけを防止でき、ひけの防止によるキャップ30の強度アップにより、キャップ30とシャフト21との接触面圧を十分高くして圧入強度を高めることができ、回り止めトルクをさらにアップさせることができる。
【0042】
また、突起部14の各先端部を変形させて脚部32に密着させるようにしているため、厳しい寸法精度を設定することなく、ファン10とキャップ30とを仮固定することができる。従って、ファン10とキャップ30とを仮固定した状態でシャフト21を圧入することにより、シャフト21の圧入工程を1回で済ませることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図8ないし図12に基づいて本実施形態を以下に説明する。図8は、キャップ30単体を示す図3のB矢視図、図9は、キャップ30にシャフト21を圧入した状態を示す図2のE矢視図、図10は図9のF部拡大図、図11はシャフト21単体を示す正面図、図12は本実施形態の回り止めトルク性能と第1実施形態の回り止めトルク性能とを比較説明する図である。
【0044】
図8中の2点鎖線はシャフト21の外形を示す仮想線であり、当該図8に示すように、シャフト21を挿入穴31aに圧入していない状態における、キャップ30の回転中心から拡大部31cの内面までの長さ寸法R1を、シャフト21の半径寸法R2よりも長く設定している。
【0045】
そして、上記第1実施形態では、挿入穴31aにシャフト21を圧入した状態において、シャフト21の外面と拡大部31cの内面とがキャップ30の変形により接触しているのに対し、本実施形態では、シャフト21を挿入穴31aに圧入した状態で、図9および図10に示すように、シャフト21の外周面と拡大部31cの内面との間に所定の空間Sが形成されるようにしている。
【0046】
これにより、所定の空間Sに入り込んだ空気中に含まれる水分や、所定の空間Sに入り込んだ水滴により、金属製のシャフト21の表面に錆21Sが生じる。図10および図11中の斜線部は上記錆21Sを示している。そして、当該錆21Sの発生によりシャフト21表面の面祖度が上がるので、シャフト21がキャップ30に対して滑りにくくなり、上述の回り止めトルクを大きくできる。
【0047】
なお、このような錆21Sを生じやすくするために、シャフト21の材質に、熱処理されていない所謂生材を用いて好適である。本実施形態ではシャフト21の材質にS45Cを採用し、キャップ30の材質にはポリアミドのガラス強化材を採用している。
【0048】
図12は、本発明者らによるキャップ30の性能評価試験の結果を示す図であり、試験経過時間に対する回り止めトルクN・mの変化を示している。図中の実線は第2実施形態に係るキャップ30の性能を示し、図中の点線は第1実施形態に係るキャップ30の性能を示す。そして、横軸を試験経過時間とし、縦軸を回り止めトルクN・mとしており、大気温度100℃の環境下において送風機の耐久試験を20年間行った場合に、回り止めトルクがどのように変化するかを示している。
【0049】
なお、図12に示す試験データは実際に20年間試験を行ったデータではなく、周知の加速試験により得られたデータである。具体的には、大気温度150℃の環境下において8.4ヶ月間試験を行って得られたデータである。
【0050】
なお、回り止めトルクとは、キャップ30またはシャフト21に回転トルクを徐々に加えていった場合に、キャップ30がシャフト21に対して滑り出してしまうトルクのことを言う。
【0051】
図12に示すように、第1実施形態に係るキャップ30では、試験経過時間とともに回り止めトルクが低下する。そして、20年経過時には試験初期時の回り止めトルクの約0.4倍にまで回り止めトルクが低下してしまうことが確認された。これに対し、本実施形態に係るキャップ30によれば、試験経過時間とともに回り止めトルクが上昇する。そして、20年経過時には試験初期時の回り止めトルクaの約3倍にまで回り止めトルクが上昇することが確認された。
【0052】
以上の試験結果により、第1実施形態に係るキャップ30では、時間経過とともにキャップ30の高温クリープ劣化が促進し、回り止めトルクが低下したと推察される。
【0053】
一方、第2実施形態に係るキャップ30では、確かに高温クリープ劣化は促進していると思われるが、キャップ30がシャフト21に対して滑ろうとしても、シャフト21のうち拡大部31cに対応する部分(錆発生部分)には錆21Sが生じているため、面祖度の高い錆発生部分にてキャップ30の滑りが抑止される。すなわち、高温クリープ劣化による回り止めトルクに対するマイナス要因以上に、錆21Sによる面粗度が上がることによる回り止めトルクに対する効果が発揮され、結果的に回り止めトルクが上昇したと推察される。
【0054】
(第3実施形態)
上記第1および第2実施形態では拡大部31cを円弧形状に形成しているが、図13に示す本実施形態のように、拡大部31cを、3角形状に形成してもよい。
【0055】
(第4実施形態)
上記第1および第2実施形態では拡大部31cを円弧形状に形成しているが、図14に示す本実施形態のように、拡大部31cを、4角形状に形成してもよい。
【0056】
(他の実施形態)
上記第1および第2実施形態では拡大部31cを複数設けているが、本発明の実施にあたり、少なくとも挿入穴31a内面の一カ所に拡大部31cを設けていればよい。
【0057】
また、上記実施形態の拡大部31cは、挿入穴31a内面のうち回転軸C方向(図3の上下方向)全体に亘って延びるように形成されているが、本発明の実施にあたり、挿入穴31a内面のうち回転軸C方向の一部分に拡大部31cを形成するようにしてもよい。
【0058】
また、本発明の実施にあたり、挿入穴31cを多角形形状に形成し、当該多角形の角部を拡大部31cとするようにしてもよい。
【0059】
また、第2実施形態では、シャフト21が挿入穴31aに圧入された状態においては、挿入穴31aに設けられた拡大部31cの部分にて、挿入穴31aとシャフト21との間に隙間Sが形成されているが、本発明の実施にあたり、シャフト21が挿入穴31aに圧入された状態において、キャップ30の拡大部31cがシャフト21の外周面に接触するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る送風機の断面図である。
【図2】図1の送風機の要部を示す拡大断面図である。
【図3】図2のキャップを単体で示す、図4のX−X断面図である。
【図4】図3のA矢視図である。
【図5】図3のB矢視図である。
【図6】図4の部分拡大図である。
【図7】図1ないし図6に示すキャップに係る、圧入代と、回り止めトルクおよび圧入荷重との関係を示す特性図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る送風機のキャップ単体を示す、図3のB矢視図である。
【図9】第2実施形態に係るキャップにシャフトを圧入した状態を示す、図2のE矢視図である。
【図10】図9のF部拡大図である。
【図11】第2実施形態に係るシャフト単体を示す正面図である。
【図12】第2実施形態に係るキャップの回り止めトルク性能を説明する図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る送風機のキャップ単体を示す、図3のB矢視図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る送風機のキャップ単体を示す、図3のB矢視図である。
【符号の説明】
10…ファン、20…電動モータ(駆動手段)、21…シャフト、
30…キャップ、31a…挿入穴、31c…拡大部。

Claims (7)

  1. 駆動手段(20)によって回転駆動される丸軸状のシャフト(21)と、
    前記シャフト(21)が圧入された樹脂製のファン(10)と、
    前記シャフト(21)が圧入されると共に前記ファン(10)と係合する樹脂製のキャップ(30)とを備え、
    前記キャップ(30)にて前記ファン(10)が前記シャフト(21)に対して回転するのを防止するようにした送風機において、
    前記キャップ(30)のうち前記シャフト(21)が圧入される挿入穴(31a)の内径面に、前記挿入穴(31a)の内径が拡大する拡大部(31c)を設けたことを特徴とする送風機。
  2. 前記拡大部(31c)は、円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
  3. 前記拡大部(31c)は、多角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
  4. 前記挿入穴(31a)を多角形形状に形成し、当該多角形の角部を前記拡大部(31c)としたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
  5. 前記キャップ(30)には、前記シャフト(21)の軸方向に延びて前記ファン(10)側の端面にて開口すると共に、前記シャフト(21)の周方向に沿って等間隔に配置された複数の空洞部(33)が形成され、
    前記複数の空洞部(33)の間には、前記キャップ(30)における前記空洞部(33)よりも内周側部位と前記空洞部(33)よりも外周側部位とを連結する連結部(34)が形成され、
    前記拡大部(31c)は、前記挿入穴(31a)の内径面のうち前記連結部(34)に対応する部位に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機。
  6. 前記シャフト(21)の材質を金属製とし、
    前記シャフト(21)を前記挿入穴(31a)に圧入していない状態における前記キャップ(30)の回転中心から前記拡大部(31c)の内面までの長さ寸法(R1)を、前記シャフト(21)の半径寸法(R2)よりも長く設定し、
    前記シャフト(21)を前記挿入穴(31a)に圧入した状態で、前記シャフト(21)の外面と前記拡大部(31c)の内面との間に所定の空間(S)が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の送風機。
  7. 前記拡大部(31c)を複数設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の送風機。
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