JP2004003261A - 土留め用かご枠構造物 - Google Patents

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【課題】面倒な補強対策を講じることなく、土砂を中詰材に使用して優れた耐変形性を備えた土留め用かご枠構造物を開発する。
【解決手段】土留め用かご枠構造物1の内部に充填する中詰材3の間に、中詰材3の横変形に対して摩擦抵抗力を生じて変形を抑制しようとする面状材料2を水平に介在させる。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、数段高さに段積みして擁壁や堰堤を構築する土留め用かご枠構造物に係り、特に荷重に対する耐変形性を備えた土留め用かご枠構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のかご枠構造物は、それ自体では外力および自重に対して形状の変形を抑制するような強度を備えておらず、その抑制は、専らかご枠内部に中詰材として充填する栗石等のせん断抵抗力に期待するものであった。
【0003】
しかし、近年は、栗石の不足や現場発生土の処理を目的として、この種のかご枠構造物の中詰材に、土砂を使用するケースが多くなってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、土砂は栗石に比べてせん断抵抗力が小さく、これをそのまま土留め用かご枠構造物の中詰材として使用した場合には、かご枠構造物の変形や段積みの崩壊を生じるおそれがある。
【0005】
このため、土砂を中詰材として使用する場合には、かご枠構造物自体を補強したり、あるいは土砂に混和物(セメント、石灰等)を混ぜて中詰材のせん断抵抗力を高める等の強化対策が必要であり、材料費の増加や現場での施工性の低下が問題となっていた。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、かご枠構造物を補強したり、土砂に混和物を混ぜたりする必要がなく、しかも土砂を中詰材に使用して、外力や自重に対する高いせん断抵抗力が得られる耐変形性を備えた土留め用かご枠構造物の提供を目的とする。
【0007】
【課題を達成するための手段】
上記目的を達成する本発明の土留め用かご枠構造物は、内部に充填する中詰材の間に、中詰材の横変形に対して摩擦抵抗力を生じて変形を抑制しようとする面状材料を介在させてなるものである。
【0008】
すなわち本発明は、かご枠構造物の中詰材の間に面状材料を水平に介在させておくことにより、中詰材のせん断抵抗力を大きくしようとするものであって、図1に示すように、かご枠構造物1に鉛直荷重(上段かご枠構造物の自重)が加わると、中詰材3が矢印で示すように横方向に変形しようとし、それにより中詰材3に介在させた面状材料2と中詰材3との接触面に摩擦抵抗が生じる。これが面状材料2に伝達して、面状材料の引張り強さにより中詰材3の横変形を抑制しようとするせん断抵抗力が矢印で示すように発生するという現象を利用してかご枠構造物の耐変形機能を高めたものである。なお、図2に示すように、かご枠構造物1に水平荷重(土圧)が加わった場合でも、前記同様に中詰材3が横変形することにより、面状材料2には、これを抑制しようとするせん断抵抗力が発生する。
【0009】
本発明において、面状材料2とは、摩擦抵抗力があり、かつ引張り耐力を備えた金属製、樹脂製、化学繊維製の板状あるいはシート状の材料を云い、具体的には溶接金網、エキスパンドメタル、ジオグリット、織布、不織布等を指す。
【0010】
また、面状材料2は、図7(a)(b)に示すように、その両側または片側の端部を結合金具7でかご枠構造物1に結合することによって中詰材3間に水平に介在させてもよい。この場合には、中詰材3の変形を抑制するだけでなく、かご枠構造物1自体の変形を抑制する補強材としての効果が得られる。
【0011】
織布、不織布等の化学繊維製の面状材料であってシート状のものを使用する場合は、図8に示すように、中詰材3を当該シート状の面状材料で包み込むようにしてもよい。これにより、中詰材3が変形しようとするときの水平方向の抑止効果だけでなく、鉛直方向にも面状材料の引張り力により変形を抑止しようとする効果が得られる。
【0012】
さらに、図11に示すように、面状材料2が透水性を有する織布、不織布等の化学繊維材である場合は、中詰材3の水分が面状材料2に矢印で示すように吸水されてかご枠構造物1の外部へ排出されるから、中詰材3のせん断抵抗力を一層高める効果が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図3は、本発明に係る土留め用カゴ枠構造物の好ましい実施の形態であり、1はかご枠構造物を、2は中詰材3間に介在させた面状材料を、それぞれ示している。
【0014】
すなわち、かご枠構造物1は、ひし形金網や溶接金網、エキスパンドメタル等で形成された箱型の容器であり、その内部に栗石や土砂等の中詰材3を充填してブロック化したものを所要高さに段積みすることにより、擁壁や堰堤に構築するものである。
【0015】
図示例において、かご枠構造物1の内部に充填された中詰材3は土砂であり、その上下間に複数の面状材料2がほぼ等間隔で水平に介在させてある。これらの面状材料2には、金属製の溶接金網やエキスパンドメタル、樹脂製のジオグリット、化学繊維製の織布、不織布などの摩擦抵抗力があり、かつ引張り耐力を備えた板状またはシート状の材料が使用されるが、図示例では、厚さ1cm程度の板状不織布(フェルト)をかご枠構造物1の底面とほば同じ大きさに形成して使用している。
【0016】
面状材料2を中詰材3間に介在させるには、まず、図4(a)に示すように、かご枠構造物1を所定位置に設置して、ショベル4等で中詰材3を投入する。このときの中詰材3の投入厚Wは、転圧可能な厚さ、一般的には30cm程度である。次に、図4(b)に示すように、投入した中詰材3を震動ランマー5等で転圧して締固める。次に、図4(c)に示すように、締固めた中詰材3の上に面状材料2を敷設する。この図4(a)〜(c)の作業をかご枠構造物1の天端まで繰り返すことにより、複数の面状材料2を中詰材3の間にほぼ等間隔で水平に介在させることができる。
【0017】
このようにして、複数の面状材料2を間に介在させた中詰材3を天端まで充填したかご枠構造物1は、ブロックを形成し、これを必要段数に段積みして、図5に示すような擁壁や、図6に示すような堰堤に構築される。なお、図6に示す堰堤の場合は、その中心のコア部分6にも面状材料2を介在させることにより、該コア部分6の中詰材2の横変形に対する安定化を図ることができる。
【0018】
図7は、本発明の他の実施の形態であり、かご枠構造物1の中詰材3間に介在させる面状材料2が、その端部を結合金具7によりかご枠構造物1に接合して設けられている例である。同図(a)は面状材料2の両側端部を結合金具7によりかご枠構造物1に結合した場合、同図(b)は面状材料2の片側端部を結合金具7によりかご枠構造物1に結合した場合を示しており、いずれの場合も、面状材料2は、中詰材3の横変形を抑制するだけでなく、かご枠構造物1自体の変形を抑制する補強材の役目をもする。結合金具7については、面状材料2の種類により種々考えられるが、面状材料2をかご枠構造物1に強固に結合するものであれば、どのような構造のものでもよい。
【0019】
図8は、やはり本発明の他の実施の形態であり、中詰材3を織布あるいは不織布等の化学繊維製のシート状面状材料2で包み込んだ例である。この場合には、外力等により変形しようとする中詰材3の水平方向の抑止効果だけでなく、中詰材3の鉛直方向の変形に対しても、面状材料の引張り力により変形を抑止する効果が得られる。シート状の面状材料2で中詰材3を包み込む方法としては、同図に示すような中詰材3全体を包み込む場合のほか、図9に示すように、中詰材3をU字形に包み込む方法や、あるいは図10に示すように、中詰材3をJ字形に包み込む方法が考えられる。
【0020】
また、図3〜図10のいかなる実施形態においても、中詰材3に介在された面状材料2が透水性を有する織布や不織布等の化学繊維材料である場合は、図11に示すように、中詰材3の水分が転圧やかご枠構造物1の自重の影響などで面状材料2に矢印で示すように吸水されてかご枠構造物1の外部へ排出されるから、中詰材3のせん断抵抗力を一層高める効果が得られる。
【0021】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明の土留め用かご枠構造物は、その内部に充填する中詰材の間に面状材料を介在させておくだけで、外圧に対するかご枠構造物の耐変形強度を著しく高めることができる。
【0022】
したがって、中詰材として、せん断抵抗力の小さい土砂を使用する場合でも、従来のようにかご枠構造物自体の補強加工や、土砂にセメント等の混和物を混ぜてせん断抵抗力を高めるといった面倒な強化対策を講じる必要がなく、コストが低減し、かつ施工性を大きく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のかご枠構造物の原理を説明する正面図である。
【図2】本発明のかご枠構造物の原理を説明する正面図である。
【図3】本発明のかご枠構造物の正面図である。
【図4】本発明に係る面状材料を中詰材間に介在させる手順を説明する正面図である。
【図5】本発明かご枠構造物により構築される擁壁を示す断面図である。
【図6】本発明かご枠構造物により構築される堰堤を示す正面図である。
【図7】面状材料をかご枠構造物に結合した例を示す正面図であり、(a)は面状材料の両側端部を結合した場合を、(b)は面状材料の片側端部を結合した場合を示す。
【図8】中詰材を面状材料で包み込む例を示す正面図である。
【図9】中詰材を面状材料で包み込む他の例を示す正面図である。
【図10】中詰材を面状材料で包み込む他の例を示す正面図である。
【図11】面状材料が透水性材料である例を示す正面図である。
【符号の説明】
1 かご枠構造物
2 面状材料
3 中詰材
6 コア部分
7 結合金具

Claims (5)

  1. 内部に充填する中詰材の間に、中詰材の横変形に対して摩擦抵抗力を生じて変形を抑制しようとする面状材料を介在させてなる土留め用かご枠構造物。
  2. 面状材料は、摩擦抵抗力があり、かつ引張り耐力を備えた金属製、樹脂製、化学繊維製の板状またはシート状材料である請求項1に記載の土留め用かご枠構造物。
  3. 面状材料は、その端部をかご枠構造物に結合して中詰材間に介在させる請求項1又は2に記載の土留め用かご枠構造物。
  4. 内部に充填する中詰材を、その横変形に対して摩擦抵抗力を生じて変形を抑制しようとする面状材料で包み込んでなる土留め用かご枠構造物。
  5. 面状材料は、化学繊維製のシート状材料である請求項4に記載の土留め用かご枠構造物。
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