JP2004002799A - ポリアミック酸、ポリイミドフィルム、その製造方法およびフレキシブル回路基板 - Google Patents

ポリアミック酸、ポリイミドフィルム、その製造方法およびフレキシブル回路基板 Download PDF

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Tadashi Ishibashi
石橋 忠司
Kenji Uhara
鵜原 賢治
Hideki Moriyama
森山 英樹
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Abstract

【課題】接着剤を介さずとも金属箔との剥離強度が強いポリイミドフィルム、そのフィルムを容易に製造する方法及びそのフィルムを用いた回路基板を提供する。
【解決手段】銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートをポリアミック酸に含有解させ、これを熱的および/または化学的にイミド化させることにより得られるポリイミドフィルム。このポリイミドフィルムは、表面に金属層を形成したとき、その金属層とフィルムとの剥離強度が初期に2.5N/cm以上あり、かつ150℃240時間の熱処理後に1.5N/cm以上である性質を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミック酸、それからなるポリイミドフィルム、その製造方法およびフレキシブル回路基板に関するものである。更に詳しくは、接着剤を介さずに直接接着した場合、極めて大きな剥離強度を得ることのできるポリイミドフィルム、そのフィルムの製造方法およびそれらを利用したフレキシブル回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドフィルムはその優れた絶縁性と耐熱性から銅箔などの金属層と積層して、フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして幅広く利用されている。
【0003】
ここで、ポリイミドと金属層の積層方法としては、(1)ポリイミドフィルムと金属層を接着剤で接着する、(2)ポリイミドフィルム上にスッパタリング、メッキなどの方法で金属層を形成する(以下「2層タイプ」と言う)、あるいは(3)銅箔上にポリアミック酸ワニスあるいは溶媒可溶なポリイミドワニスを塗布する。(4)銅箔上にポリイミドを熱圧着させる、の4種類の方法が広く知られているが、近年、回路基板の詳細化に従い、高詳細回路の形成しやすい2層タイプの回路基板が広く用いられる様になってきた。
しかしながら、この2層タイプにおいては、ポリイミド表面の剥離強度の低さが問題となっていた。このため、さまざまな電気、物理あるいは化学的処理が試みられたが、これらの処理はその処理工程に多くの試薬、時間、労力などを要すという欠点を有していた。
【0004】
金属化合物を用いたポリイミドの改質としては、錫化合物を含有する接着性と耐久性に優れたポリイミドフィルム(例えば、特許文献1参照)が知られているが、一般に有機錫化合物は環境負荷が大きいため、これを使用したポリイミドフィルムの製造は好ましくない。また、これはポリイミドフィルムと金属層を接着剤で接着するタイプであり、2層タイプの剥離強度については検討されていない。
【0005】
また、ポリアミック酸フィルムをアルミニウム化合物のトルエン溶液に含浸する方法(例えば、特許文献2参照)も知られているが、工程数が増加するため好ましくない。
【0006】
さらに、有機金属化合物を用いたポリイミド成形体の強化方法(例えば、特許文献3参照)についても知られているが、この場合には、ポリイミドフィルムの剥離強度向上については検討がなされていなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−261466号公報
【特許文献2】
特開平11−240106号公報
【特許文献3】
特開平3−160028号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、強い剥離強度を持つポリイミドフィルムを得る事にある。また、本発明の第2の目的は、ポリイミドフィルムの剥離強度を向上させるための処理に多くの試薬、時間、労力などを必要とせず、大量生産に適し、低コストかつ高品質の高剥離強度ポリイミドを得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、本発明のポリアミック酸は、銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを0.01重量%以上10重量%以下含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のポリイミドフィルムは、ポリアミック酸に銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを0.01重量%以上10重量%以下含有させ、これを熱的または化学的にイミド化せしめることによって得られることを特徴とし、そのフィルム表面に金属層を形成したとき、その金属層とフィルムとの剥離強度が初期に2.5N/cm以上あり、かつ150℃240時間の熱処理後に1.5N/cm以上であることが好ましい条件として挙げられる。
(剥離強度:ポリイミドフィルム表面にスパッタリング法により約0.3μmのニッケル、その上に約0.7μmの銅の層を形成し、さらに電解メッキによって約20μmの銅の層を形成する。得られた積層体をJIS C5016−1994に記載の方法で引き剥がした強さを剥離強度とする。)
さらに、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミック酸に銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを含有させ、これを熱的および/または化学的にイミド化することを特徴とする。
【0012】
さらにまた、本発明のフレキシブル回路基板は、上記のポリイミドフィルムに直接金属層を形成することによって得られたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、剥離強度とは次のように定義する。
【0014】
剥離強度の測定はJIS C5016−1994に記載の方法に従う。また、剥離強度はフィルムの厚さによっても影響されるため、測定に用いるフィルムは厚み50μmプラスマイナス10μmの物を使用する。金属層の形成については、スパッタリング法により約0.3μmのニッケル、その上に約0.7μmの銅を形成し、さらに電解メッキによって約20μmの銅を形成する。剥離強度は必要に応じてプラズマ処理、コロナ処理などの電気処理や、物理、化学処理によって、さらに向上させる事が可能である。しかしながら本発明では全く処理を施さない状態で、上記方法により測定した値を剥離強度と定義する。この値はポリイミドフィルムが本質的に有する剥離強度を的確に再現する。
【0015】
剥離強度は大きければ大きいほど好ましく、1.5N/cm未満の場合はフレキシブル回路基板としての使用時に、金属箔層の剥がれ等が生ずる事があるため好ましくない。また、本発明のフレキシブル回路基板は高温を発する半導体などと接触して使用されるため、初期の剥離強度だけでなく、長時間の熱負荷後の剥離強度も重要である。ここで、150℃で240時間の熱処理後に1.5N/cm以上の剥離強度を持つ事は、フレキシブル回路基板としての使用環境で十分な剥離強度を有する事を示す。
【0016】
本発明のポリアミック酸に溶解される金属化合物は、銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートである。これ以外の金属化合物では、得られたポリイミドフィルムが、目的とする剥離強度を示さないか、もしくはポリマーに金属化合物を溶解させた際に急激な粘度上が生じ均一な膜が得られない。
【0017】
本発明のポリアミック酸に溶解される銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートの添加量は、0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上2.0重量%以下の範囲とすることが重要である。すなわち、添加量が上記の範囲未満の場合は、目的とする剥離強度が得られず、上記の範囲を越える場合は、均一なフィルムが得られなくなるため好ましくない。
【0018】
次に、本発明のポリイミドフィルムの構成成分について説明する。
【0019】
本発明のポリイミドフィルムにおけるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とからなるポリアミック酸を前駆体としてなり、次式(I)および(II)に示される繰り返し単位で構成されものである。
【0020】
【化5】
Figure 2004002799
【0021】
【化6】
Figure 2004002799
【0022】
(ただし、式中のR1 は、下記一般式で示される基のいずれかであり、
【0023】
【化7】
Figure 2004002799
【0024】
式中のRおよびR3 は下記一般式で示される基のいずれかである。
【0025】
【化8】
Figure 2004002799
【0026】
また、式中のX:Yのモル比は0:100〜10:90である。)
ポリアミドフィルムの前駆体としてのポリアミック酸を形成する芳香族テトラカルボン酸類の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジンー2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。ポリアミック酸の製造にあたっては、これらの芳香族テトラカルボン酸類の酸無水物が好ましく使用される。
【0027】
同じく前駆体としてのポリアミック酸を形成する芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。
【0028】
また、本発明において、ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0029】
本発明で用いるポリアミック酸の有機溶媒溶液(ポリアミック酸溶液)は、固形分を5〜40重量%を含有するのが好ましく、10〜30重量%を含有するのがより好ましい。またその粘度は、安定した送液のため、ブルックフィールド粘度計による測定値で10〜2000Pa・sの範囲が好ましく、100〜1000Pa・sの範囲がより好ましい。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0030】
本発明においてポリアミック酸を構成する芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とは、それぞれのモル数が大略等しくなる割合で重合されるが、その一方が10モル%の範囲内で他方に対して過剰に配合されることが好ましく、5モル%の範囲内で他方に対して過剰に配合されることもより好ましい。
【0031】
重合反応は、有機溶媒中で撹拌そして/または混合しながら、0〜80℃の温度の範囲で、10分〜30時間連続して進められるのが好ましく、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸類を添加することが好ましい。重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミック酸の有機溶媒溶液を製造するのにとって有効な方法である。
【0032】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加することによって、重合反応の制御を行ってもよい。
【0033】
次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0034】
本発明においては、まず銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナート含有ポリアミック溶液を調製する。
【0035】
回転粘度計で測定した25℃における粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下程度のポリアミック酸溶液中に、銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを添加することにより、ポリアミック酸に対し0.01重量%以上10重量%以下の濃度で溶解もしくは分散させた状態となす。なお、ここで使用するポリアミック酸溶液は、予め重合したポリアミック酸溶液であっても、銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを添加し溶解させる際に順次重合したものであってもよい。
【0036】
ポリイミドに銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを添加する方法としては、口金押し出し前にこれらを単層ポリアミド酸フィルム中に添加する方法、口金押し出し前に二層以上に積層された積層ポリアミド酸フィルムの少なくとも最外層にこれらを混練りする方法、および口金押し出し後にこれらを添加した塗布液を塗布する方法などが挙げられる。
【0037】
また、有機金属化合物をポリアミック酸に添加することにより、ポリアミック酸の粘度が上昇し製膜性が低下するため、粘度の上昇を防ぐゲル化防止剤を添加することが知られている。しかし、銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートはポリアミック酸に添加したしても粘度が上昇しないか、もしくは粘度の上昇が遅いため、ゲル化防止剤を添加する必要はない。しかし、少量のゲル化防止剤を添加することや、口金押し出し直前に添加することは有効な手段である。
【0038】
本発明においてポリアミック酸溶液を得るための反応手順としては、有機極性溶媒中に芳香族ジアミンを添加し溶解したのち、芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加する方法、または有機極性溶媒中に芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加したのち、芳香族ジアミンを添加する方法などいずれの方法でも可能である。このとき芳香族テトラカルボン酸に無水物と芳香族ジアミンの添加量は、実質的に等モルとすることができる。
【0039】
本発明のポリイミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0040】
前記ポリアミック酸溶液を支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得る。次いで、得られたポリアミック酸フィルムの端部を固定し、200℃以上400℃以下の温度で熱処理を行うことにより多層ポリイミドゲルフィルムを得るのが好ましい。
【0041】
なお、ここでいう支持体とは、ガラス、金属、高分子フィルムなど平面を有し、ポリアミック酸をこの上にキャストした場合に、キャストされたポリアミック酸を支持することができるものを意味する。
【0042】
また、キャストとは、ポリアミック酸を支持体上に展開することを意味する。キャストの一例としては、バーコート、スピンコート、あるいは任意の空洞形状を有するパイプ状物質からポリアミック酸を押し出し、支持体上に展開する方法が挙げられる。
【0043】
得られたポリアミック酸をイミド化閉環環化させて芳香族ポリイミドフィルムにする際には、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法、あるいはその両者を併用した閉環法のいずれで行ってもよい。
【0044】
化学閉環法で使用する脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0045】
また触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン類などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0046】
本発明のポリイミドフィルムは3〜250μmであることが望ましい。すなわち、厚みが3μm未満では形状を保持することが困難となり、また250μmを越えると屈曲性に欠けるため、フレキシブル回路基板用途には不向きである。
【0047】
ポリイミドフィルムは、延伸および未延伸のものをいずれも使用することができる。また、加工性改善などを目的として10重量%以下の無機質または有機質の添加物を含有することも可能である。
【0048】
金属の蒸着手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム法およびイオンプレーティング法などを用いることができる。剥離強度の観点からスパッタリング法が望ましいが、他の方法でもかまわない。また蒸着を行う金属はチタン、ニッケル、クロム等があげられるが、金属種は特に限定するものではない。
【0049】
この金属蒸着層は、公知の蒸着手段を用いて形成可能であり、その厚みは0.1〜5μmの範囲が好適である。
【0050】
本発明のポリイミドフィルム積層体において、上記金属蒸着層上に形成される金属メッキ層は公知の電解メッキあるいは無電解メッキを用いて形成可能であり、その厚みは1〜50μmの範囲が好適である。この金属メッキは銅が望ましいが、その他の金属でもかまわない。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、実施例中、剥離強度は次の方法で評価した。
[粘度]
ポリアミド酸の粘度は回転粘度計で測定した。粘度計としては、ビスメトロン(単一円筒型回転粘度計、型式VS−A1、芝浦システム株式会社製)を用いた。
【0052】
[剥離強度]
試料フィルムにスパッタリング法により約0.3μmのニッケル、その上に約0.7μmの銅を蒸着し、さらに電解メッキによって約20μmの銅を形成した試料片を作製した。得られた試料片を150℃で240時間加熱した。この熱処理前後の剥離強度をJIS C5016−1994に記載の方法に従い測定し、それぞれ初期値および熱処理後の剥離強度とした。
[実施例1]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル38.48g(190mmol)、N,N’−ジメチルアセトアミド320.00gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。さらに30分から1時間後にかけてピロメリット酸二無水物40.27g(185mmol)を数回に分けて投入した。1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)22.01gを30分かけて滴下し、さらに1時間撹拌した。ここで得られたポリアミック酸の粘度は260Pa・sであった。
【0053】
得られたポリアミック酸100.00gと、銅アセチルアセトナート0.13g(0.50mmol)とを、株式会社キーエンス社製ハイブリットミキサーを用いて5分撹拌した。N,N’−ジメチルアセトアミド10.00gを加え、更に5分撹拌した。このポリアミック酸混合物の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃で1時間加熱し、自己保持性のポリアミック酸フィルムを得た。得られたフィルムを、200℃30分、300℃30分、400℃5分で熱処理を行い、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0054】
[実施例2]
実施例1と同様の手順で得られたポリアミック酸の100.00gと銅アセチルアセトナート0.26g(1.00mmol)を5分撹拌した。N,N’−ジメチルアセトアミド15.00gを加え、更に5分撹拌した。このポリアミック酸混合物の一部をポリエステルフィルム上に取り、均一な膜を形成する。実施例1と同様の手順により、このポリアミック酸混合物フィルムから、ポリイミドフィルムを得た。
【0055】
[実施例3]
実施例1と同様の手順で得られたポリアミック酸の100.00gと鉄アセチルアセトナート0.18g(0.51mmol)を5分撹拌した。このポリアミック酸混合物の一部をポリエステルフィルム上に取り、均一な膜を形成する。実施例1と同様の手順により、このポリアミック酸混合物フィルムから、ポリイミドフィルムを得た。
【0056】
[実施例4]
実施例1と同様の手順で得られたポリアミック酸の100.00gと鉄アセチルアセトナート0.35g(1.00mmol)を5分撹拌した。このポリアミック酸混合物の一部をポリエステルフィルム上に取り、均一な膜を形成する。実施例1と同様の手順により、このポリアミック酸混合物フィルムから、ポリイミドフィルムを得た。
【0057】
[比較例1]
実施例1記載のポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃で1時間加熱し、自己保持性のポリアミック酸フィルムを得た。得られたフィルムを300℃20分、400℃5分で熱処理を行いポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0058】
[比較例2]
実施例1記載のポリアミック酸の100.00gと表1に示すパラジウムアセチルアセトナート0.304g(1.0 mmol)を5分撹拌した。撹拌の後、急激にポリマーの粘度が上昇し、ポリマーの流動性が失われて、均一なフィルムを得ることができなかった。
【0059】
【表1】
Figure 2004002799
【0060】
表1の結果から明らかなように、本発明のポリイミドフィルム(実施例1〜4)は、比較例1のポリイミドフィルムに比べて、接着力が著しく改質されたものである。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリイミドフィルムは、フィルム表面に直接形成した金属層の剥離強度が初期に2.5N/cm以上あり、かつ150℃で240時間の熱処理後に1.5N/cm以上の剥離強度を持つことができる。

Claims (6)

  1. 銅アセチルアセトナートおよび/または鉄アセチルアセトナートを0.01重量%以上10重量%以下含有することを特徴とするポリアミック酸。
  2. 請求項1のポリアミック酸溶液を製膜した後、これを熱的および/または化学的にイミド化することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 請求項2によって得られるポリイミドフィルム。
  4. フィルム表面に直接金属層を形成したとき、その金属層とフィルムとの剥離強度が初期に2.5N/cm以上あり、かつ150℃240時間の熱処理後に1.5N/cm以上である性質を有することを特徴とする請求項3のポリイミドフィルム。
  5. 下記一般式(I)および(II)で示される構造単位を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のポリイミドフィルム。
    Figure 2004002799
    Figure 2004002799
    (ただし、式中のR1 は、下記一般式で示される基のいずれかであり、
    Figure 2004002799
    式中のR2 およびR3 は下記一般式で示される基のいずれかである。
    Figure 2004002799
    また、式中のX:Yのモル比は0:100〜10:90である。)
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムに金属層が形成されて得られたフレキシブル回路基板。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006175634A (ja) * 2004-12-21 2006-07-06 Nippon Steel Chem Co Ltd 金属−ポリイミド基板
JP2007154077A (ja) * 2005-12-06 2007-06-21 Nitta Ind Corp ポリイミド合成用組成物及びポリイミドの製造方法
KR101517122B1 (ko) 2013-05-27 2015-05-04 엘에스엠트론 주식회사 화합물 박막 태양전지
KR101521273B1 (ko) * 2013-05-27 2015-05-18 엘에스엠트론 주식회사 화합물 박막 태양전지

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